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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B62D
審判 全部無効 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正  B62D
審判 全部無効 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明  B62D
審判 全部無効 4号2号請求項の限定的減縮  B62D
管理番号 1200660
審判番号 無効2007-800160  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2009-05-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3175621号「エアバッグ装置付きステアリングホイール」の特許無効審判事件についてされた平成20年 4月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10202号、平成20年10月6日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3175621号の請求項1から8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3175621号は、平成9年3月14日に出願(優先権主張平成8年8月6日)され、平成13年4月6日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、平成19年8月8日に請求人(原田寛)よりその請求項1?8に係る発明について特許無効審判が請求され、これに対して、同年10月26日に被請求人(豊田合成株式会社)より答弁書及び訂正請求書が提出され、これに対して、同年12月10日に請求人より弁駁書が提出されるとともに、平成20年3月7日に請求人より口頭審理陳述要領書が、同日に被請求人より口頭審理陳述要領書及び回答書がそれぞれ提出され、同日に第1回口頭審理が行われ、同年3月17日に請求人及び被請求人より上申書が提出され、同年3月24日に請求人より上申書が提出された。
そして、平成20年4月18日付けで審決がなされ、同年5月27日に被請求人より審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10202号)が提起された。
被請求人は平成20年8月21日に訂正審判(訂正2008-390091号)を請求し、同年10月6日に知的財産高等裁判所は、審決の取消決定をし、事件は審判官に差し戻された。
差戻後の無効審判において、被請求人より平成20年10月27日に訂正請求がなされ、請求人より平成20年12月4日に弁駁書が提出され、被請求人より平成21年1月22日に上申書が提出された。
なお、訂正審判(訂正2008-390091号)は取り下げられたものとみなされる。

第2.訂正の請求について
1.訂正の請求の内容
被請求人が平成20年10月27日付けの訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであり、その内容は以下のとおりである。

訂正事項a
特許第3175621号として設定登録された明細書(以下、特許明細書という。)の【特許請求の範囲】【請求項1】である
「ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段により上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記付勢手段を圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記エアバッグ装置側に、前記インフレーターの外方に突出する複数の取付片部が、配置され、
前記取付片部の下方に配置される台本体部と、該台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる接続片と、を備えた支持プレートが、前記取付片部と前記台本体部との間に、前記付勢手段と前記規制部材とを配置させて、前記エアバッグ装置側に組み付けられ、
前記エアバッグ装置が、前記接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記付勢手段が、全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され、
前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、
前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左緑、右杆部の右縁及び後杆部の後緑の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され、
前記エアバッグ装置が、前記左及び右の接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(G)の高さがあることであることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項b
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項2】 である
「全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記付勢手段が、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「全ての前記コイルぱねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねが、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項c
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項3】 である
「前記付勢手段の全てが、全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「前記コイルばねの全てが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項d
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項5】である
「前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる側壁部と、を備えて構成され、前記各取付片部が、前記天井壁部の下面側で、前記側壁部より外方へ突出するように、配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「前記パッド側壁部が略六角筒形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項e
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項7】 である
「前記支持プレートが、前記各台本体部を相互に連結する連結杆部を備えて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「前記連結杆部が平面から見てU字状であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項f
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項8】 である
「前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の縁から上方へ延び、上端から外方へ延ばして前記各取付片部を設けた連結板部と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」を、
「前記各取付片部の上面にナットが溶着されており、該ナットに前記規制部材としての鍔付ボルトが下方から螺合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」と訂正する。

訂正事項g
特許明細書の段落【0016】【課題を解決するための手段】の
「本発明に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段により上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記付勢手段を圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記エアバッグ装置側に、前記インフレーターの外方に突出する複数の取付片部が、配置され、
前記取付片部の下方に配置される台本体部と、該台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる接続片と、を備えた支持プレートが、前記取付片部と前記台本体部との間に、前記付勢手段と前記規制部材とを配置させて、前記エアバッグ装置側に組み付けられ、
前記エアバッグ装置が、前記接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記付勢手段が、全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とする。」を、
「本発明に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周緑付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左緑、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され、
前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、
前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左緑、右杆部の右緑及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され、
前記エアバッグ装置が、前記左及び右の接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(G)の高さがあることであることを特徴とする。」と訂正する。

訂正事項h
特許明細書の段落【0017】 の
「そして、全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記付勢手段は、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置させることが望ましい。」を、
「そして、全ての前記コイルぱねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねは、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置させることが望ましい。」と訂正する。

訂正事項 i
特許明細書の段落【0018】 の
「さらに、前記付勢手段の全てを、全ての前記付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置させることが望ましい。」を
「さらに、前記コイルばねの全てを、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置させることが望ましい。」と訂正する。

訂正事項j
特許明細書の段落【0019】 【発明の効果】の
「本発明に係るステアリングホイールでは、少なくとも1つの付勢手段が、全ての付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されている。」を、
「本発明に係るステアリングホイールでは、バッグホルダによるパッドの保持は、バッグホルダの横板部の前縁側と後緑付近の左右両側の3箇所から延びる3つのパッド側壁部を、筒形状のパッド側壁部の内周面側に止めることにより行うことができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、前記板金製の支持プレートを備えており、前記左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部により相互に連結される台本体部であって、かつ該連結杆部の前記3箇所から、左、右及び後の連結板部の外側を、横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部を経て、該3つの縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延びる左、右及び後の3つの台本体部の箇所のみにおいて、該支持プレートを含んで構成されるホーンスイッチ機構にエアバッグ装置を支持させることができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、その後、エアバッグ装置をホーンスイッチ機構に支持させたならば、ホーンスイッチ機構における支持プレートの、前記横板部の下方で前後方向に延びる左杆部及び右杆部から下方へ設けられた左及び右の接続片をステアリングホイール本体に止めれば、ホーンスイッチ機構をステアリングホイール本体に接続させることができ、ステアリングホイールを組み立てることができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、少なくとも1つのコイルばねが、全てのコイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されている。」と訂正する。

訂正事項k
特許明細書の段落【0020】 の
「そのため、重心高さ位置付近に配置されていない1つの付勢手段を回転モーメントの中心とすれば、エアバッグ装置等の重心Gの横方向への揺動は、その揺動の力をP、重心Gと重心高さ位置付近に配置されている付勢手段との高さ方向の距離をLとして、重心高さ位置付近に配置されている付勢手段に対して、P×Lの回転モーメントを作用させることとなる。」を、
「そのため、重心高さ位置付近に配置されていない1つのコイルばねを回転モーメントの中心とすれば、エアバッグ装置等の重心Gの横方向への揺動は、その揺動の力をP、重心Gと重心高さ位置付近に配置されているコイルばねとの高さ方向の距離をLとして、重心高さ位置付近に配置されているコイルばねに対して、P×Lの回転モーメントを作用させることとなる。」と訂正する。

訂正事項l
特許明細書の段落【0021】 の
「しかし、この回転モーメントPLは、Lが零に近いため、重心高さ位置付近に配置されている付勢手段に対して、圧縮させる作用を生じさせ難いことから、ばね荷重の低い付勢手段を使用したり、あるいは、付勢手段の設置数を少なくして、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減させても、スイッチ本体を導通させることを防止することができる。」を、
「しかし、この回転モーメントPLは、Lが零に近いため、重心高さ位置付近に配置されているコイルばねに対して、圧縮させる作用を生じさせ難いことから、ばね荷重の低いコイルばねを使用したり、あるいは、コイルばねの設置数を少なくして、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減させても、スイッチ本体を導通させることを防止することができる。」と訂正する。

訂正事項m
特許明細書の段落【0022】 の
「したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、重量のあるエアバッグ装置がホーンスイッチ機構の付勢手段に支持されて配置されていても、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することができるため、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングを良好にすることができる。」を、
「したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、重量のあるエアバッグ装置がホーンスイッチ機構のコイルぱねに支持されて配置されていても、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することができるため、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングを良好にすることができる。」と訂正する。

訂正事項n
特許明細書の段落【0023】の
「そして、エアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置される付勢手段の中央付近を、その重心高さ位置に配置させるようにすれば、一層、既述のLを零に近づけることができることから、ばね荷重の低い付勢手段を使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減でき、さらに、全ての付勢手段をエアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置させれば、各付勢手段を回転モーメントの中心として、各々の回転モーメントを考慮した際、それらの各回転モーメントを全て零付近に抑えることができるため、一層、ばね荷重の低い付勢手段を使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減できることから、共に、一層のホーンスイッチ機構の操作フィーリングの向上に寄与することができる。」を、
「そして、エアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置されるコイルばねの中央付近を、その重心高さ位置に配置させるようにすれば、一層、既述のLを零に近づけることができることから、ばね荷重の低いコイルばねを使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減でき、さらに、全てのコイルばねをエアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置させれば、各コイルばねを回転モーメントの中心として、各々の回転モーメントを考慮した際、それらの各回転モーメントを全て零付近に抑えることができるため、一層、ばね荷重の低いコイルばねを使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減できることから、共に、一層のホーンスイッチ機構の操作フィーリングの向上に寄与することができる。」と訂正する。

訂正事項o
特許明細書の段落【0029】の
「パッド34は、合成樹脂製として、エアバッグ31の膨張時に所定部位を破断させる天井壁部34aと、天井壁部34aの外周緑付近から下方へ延びる略六角筒形状の側壁部34bと、を備えて構成されている。側壁部34bの内周面には、所定位置に、後述するバッグホルダ35の側壁部37に設けられた係止爪37aを係止させる係止溝34cが形成されている。また、天井壁部34aの下面には、後述するバッグホルダ35の取付片部39に当接する複数のリブ(図符号省略)が形成されている。」を、
「パッド34は、合成樹脂製として、エアバッグ31の膨張時に所定部位を破断させる天井壁部34aと、天井壁部34aの外周縁付近から下方へ延びる略六角筒形状の側壁部34bと、を備えて構成されている。天井壁部34aにはパッド側壁部34bより左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分がある。側壁部34bの内周面には、所定位置に、後述するバッグホルダ35の側壁部37に設けられた係止爪37aを係止させる係止溝34cが形成されている。また、天井壁部34aの前記突出部分の下面には、後述するバッグホルダ35の取付片部39に当接する複数のリブ(図符号省略)が形成されている。」と訂正する。

訂正事項p
特許明細書の段落【0031】の
「バッグホルダ35は、板金製として、中央にインフレーター本体部33aを下方から挿入可能な挿通孔36aを備えた横板部36と、横板部36の前縁側や後縁付近の左右両側から断面V字状に延びる側壁部37と、横板部36の左右両緑や後縁から上方へ延びる3つの連結板部38と、を備えて構成されている。」を
、「バッグホルダ35は、板金製として、中央にインフレーター本体部33aを下方から挿入可能な挿通孔36aを備えた横板部36と、横板部36の前縁側や後縁付近の左右両側の3箇所から断面V字状に延びる3つのバッグホルダ側壁部37と、横板部36の左右両縁や後緑の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部38と、を備えて構成されている。3つのバッグホルダ側壁部37と3つの連結板部38とは、横板部36の周方向に1つずつ交互に配置されている。」と訂正する。

訂正事項q
特許明細書の段落【0033】の
「各連結板部38の上端には、外方へ横方向に延びる取付片部39が形成され、各取付片部39には、ナット39bを溶着させた取付孔39aが形成されている。これらの各取付片部39は、エアバッグ装置30をホーンスイッチ機構40に連結する部位となるとともに、ホーンスイッチ機構40の可動側部材48の一部を構成する部位となる。そしてまた、バッグホルダ35には、ホーン作動回路の正極側に導通するように、図示しないリード線が結線されている。」を、
「前記左、右及び後の各連結板部38の上端には、外方へ横方向に延びて、天井壁部34aの前記左、右及び後の突出部分の下面側でパッド側壁部34bより外方へ突出した左、右及び後の取付片部39が形成され、各取付片部39には、ナット39bを溶着させた取付孔39aが形成されている。これらの各取付片部39は、エアバッグ装置30をホーンスイッチ機構40に連結する部位となるとともに、ホーンスイッチ機構40の可動側部材48の一部を構成する部位となる。そしてまた、バッグホルダ35には、ホーン作動回路の正極側に導通するように、図示しないリード線が結線されている。」と訂正する。

訂正事項r
特許明細書の段落【0036】の
「支持プレート42は、板金製として、図2・3・5に示すように、平面から見てU字状の連結杆部43と、連結杆部43の左右両縁と後縁とから上方へ延びて上端から外方へ延びる支持台部44と、を備えて構成されている。」を、
「支持プレート42は、板金製として、図2・3・5に示すように、平面から見てU字状の連結杵部43と、連結杆部43の左右両縁と後縁とから上方へ延びて上端から外方へ延びる支持台部44と、を備えて構成されている。連結杆部43は、横板部36の下方で、インフレーター33の左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む。」と訂正する。

訂正事項s
特許明細書の段落【0037】の
「各支持台部44は、連結杆部43から上方へ延びる縦板部44aと、縦板部44aの上端から外方へ延びる台本体部44bと、から構成され、台本体部44bの中央には、円形の孔の対称的な位置の両縁に略直角三角形の孔の斜辺側を付けたような組付孔44cが形成され、さらに、組付孔44cの両側には、小径の円形状の係止孔44dが形成されている。」を、
「各支持台部44は、連結杆部43から上方へ延びる縦板部44aと、縦板部44aの上端から外方へ延びる台本体部44bと、から構成されている。縦板部44aは、連結杆部43の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、左、右及び後の連結板部38の外側を、横板部36よりも上方へ垂直に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部44aを含む。台本体部44bは、左、右及び後の縦板部44aの上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、パッド側壁部34bより外方で左、右及び後の取付片部39の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部44bを含む。台本体部44bの中央には、円形の孔の対称的な位置の両縁に略直角三角形の孔の斜辺側を付けたような組付孔44cが形成され、さらに、組付孔44cの両側には、小径の円形状の係止孔44dが形成されている。」と訂正する。

訂正事項t
特許明細書の段落【0038】の
「また、連結杆部43における左右両側の縦板部44a付近には、下方へ切下げられた接続片45が設けられ、各接続片45には、支持プレート42をスポーク部芯金25L・25Rにボルト58止めさせるためのナット46が固着されている。」を、
「また、連結杆部43における左右両側である前記左杆部及び右杆部の縦板部44a付近には、下方へ切下げられた左及び右の接続片45が設けられ、各接続片45には、支持プレート42をスポーク部芯金25L・25Rにボルト58止めさせるためのナット46が固着されている。」と訂正する。

訂正事項u
特許明細書の段落【0047】の
「さらに、このように形成した各スイッチ構成体Hは、支持グロメット47の係止板部47aを支持プレート42の支持台部44における台本体部44bの組付孔44cにバヨネット結合させて、さらに、予め、組み立てておいたエアバッグ装置30のバッグホルダ35における各取付片部39を各スイッチ構成体Hの上方に配置させ、鍔付ボルト56を、下方から各スイッチ構成体Hに挿通させて、取付片部39のナット39bに螺合させれば、ホーンスイッチ機構40にエアバッグ装置30が支持されることとなる。」を、
「さらに、このように形成した各スイッチ構成体Hは、支持グロメット47の係止板部47aを支持プレート42の支持台部44における台本体部44bの組付孔44cにバヨネット結合させて、さらに、予め、組み立てておいたエアバッグ装置30のバッグホルダ35における各取付片部39を各スイッチ構成体Hの上方に配置させ、鍔付ボルト56を、下方から各台本体部44b及び各スイッチ構成体Hに挿通させて、取付片部39のナット39bに螺合させれば、ホーンスイッチ機構40にエアバッグ装置30が支持されることとなり、支持プレート42は左、右及び後の台本体部44bの箇所のみでエアバッグ装置30側に組み付けられることとなる。」と訂正する。

訂正事項v
特許明細書の段落【0059】の
「さらにまた、少なくとも1つのコイルばね55が、重心Gの高さと略等しい高さに配置されれば(言い変えれば、ステアリングホイール内に配置された状態でのその1つのコイルばね55の上端または下端から、そのコイルばね55の上下方向の長さの5割程度の範囲までに重心Gの高さが配置されれば)、既述の回転モーメントPLの値を低減できるため、従来例よりホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することが可能となる。勿論、上記範囲内を超えれば、エアバッグ装置の揺動によるホーンの不要な作動を防止するため、ばね荷重を高くしなければならず、本発明の効果を得難くなる。」を、
「さらにまた、少なくとも1つのコイルばね55が、重心Gの高さと略等しい高さに配置されれば(言い変えれば、ステアリングホイール内に配置された状態でのその1つのコイルばね55の上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばね55の上下方向の長さの5割程度の範囲までに重心Gの高さが配置されれば)、既述の回転モーメントPLの値を低減できるため、従来例よりホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することが可能となる。勿論、上記範囲内を超えれば、エアバッグ装置の揺動によるホーンの不要な作動を防止するため、ばね荷重を高くしなければならず、本発明の効果を得難くなる。」と訂正する。

訂正事項w
特許明細書の段落【0060】の
「さらに、実施形態では、付勢手段としてコイルばね55を例示したが、板ばねを利用するように構成しても良い。」を削除する。

2.訂正の適否
訂正事項aについて
訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「付勢手段」について、「コイルばね」に限定し、
「エアバッグ装置付きステアリングホイール」について、「前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があ」る点、「前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され」る点、及び、「前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、」る点をそれぞれ追加し、
「インフレーターの外方に突出する複数の取付片部」について、「前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部」に限定し、
「前記取付片部の下方に配置される台本体部と、該台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる接続片と、を備えた支持プレート」を、「板金製であり、前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレート」に限定し、
「支持プレートが、前記取付片部と前記台本体部との間に、前記付勢手段と前記規制部材とを配置させて、前記エアバッグ装置側に組み付けられ」を、「支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され」に限定し、
ステアリングホイール本体に止める接続片を、前記「左及び右の」接続片に限定し、
「該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(g)の高さがあることである」を記載して、「略等しい高さ」を明りょうにしようとするものである。
上記訂正事項aのうち、「略等しい高さ」以外の発明特定事項に係る訂正については、下位概念化又は構成要件の直列的付加により、その内容を限定するものであり、「略等しい高さ」の発明特定事項に係る訂正については、その用語の意義を明確化するものであることが明らかであるから、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項aは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項b、cについて
訂正事項b、cは、訂正前の請求項2、3に記載された発明の発明特定事項である「付勢手段」について、「コイルばね」に下位概念化するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項b、cは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項dについて
訂正事項dは、訂正前の請求項5に記載された発明の発明特定事項である「パッド」に関し、「前記パッド側壁部が略六角筒形状をなしている」ことを追加するものである。 そして、訂正前の請求項5から削除された事項については、上記訂正事項aにより、請求項5が引用する請求項1の発明特定事項に追加されているから、上記訂正事項dは、実質的に、訂正後の請求項1に記載の「パッド」について、「前記パッド側壁部が略六角筒形状をなしている」点を限定するものであることは明らかである。してみれば、上記訂正事項dは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項dは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項eについて
訂正事項eは、訂正前の請求項7に記載された発明の発明特定事項である「支持プレート」について、「前記連結杆部が平面から見てU字状である」点を追加するものである。
そして、訂正前の請求項7から削除された事項については、上記訂正事項aにより、請求項7が引用する請求項1の発明特定事項に追加されているから、上記訂正事項eは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項eは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項fについて
訂正事項fは、訂正前の請求項8に記載された発明の発明特定事項に関し、さらに「前記各取付片部の上面にナットが溶着されており、該ナットに前記規制部材としての鍔付ボルトが下方から螺合されている」の事項を限定しようとするものであり、上記訂正事項fは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項fは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項g?wについて
訂正事項g?wは、それぞれ、上記各訂正事項による特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項g?wは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、並びに、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、結論のとおり訂正を認める。

第3.請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件優先権主張日前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、又は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下「無効理由1」という。)、また、本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件優先権主張日前に頒布された甲2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づき、又は、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下「無効理由2」という。)、さらに、本件特許に係る特許出願は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たすものではない(以下「無効理由3」という。)から、本件特許は無効とすべきものであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。

甲第1号証:英国特許出願公開第2270657号明細書
甲第2号証:特開平7-17407号公報
甲第3号証:実願平2-33988号(実開平3-123751号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平6-64545号公報
甲第5号証:特開平10-71923号公報
甲第6号証:特開平7-61314号公報
甲第7号証:特公平6-67711号公報
甲第8号証:米国特許3887215号明細書
甲第9号証:特開平5-278550号公報

第4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、本件特許の請求項1?8に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、又は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件特許の請求項1?8に係る発明は、甲2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づき、又は、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、さらに、本件特許に係る特許出願は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たすものであるから、請求人の主張にはいずれも理由がないと主張し、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。

乙第1号証:平成12年3月24日付け意見書(本件特許の特許出願に係るもの)
乙第2号証:審判便覧54-10

第5.本件特許発明
本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。)は、上記のとおり本件訂正が認められたため、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に被断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され、
前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、
前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され、
前記エアバッグ装置が、前記左及び右の接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(G)の高さがあることであることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項2】全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねが、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項3】前記コイルばねの全てが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項4】前記各台本体部が、前記ステアリングホイール本体のスポーク部に当接支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項5】前記パッド側壁部が略六角筒形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項6】前記各台本体部に、前記固定側接点が配置され、前記各取付片部に、前記可動側接点が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項7】前記連結杆部が平面から見てU字状であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項8】前記各取付片部の上面にナットが溶着されており、該ナットに前記規制部材としての鍔付ボルトが下方から螺合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。」

第6.甲第1号証ないし甲第4号証の記載事項
1.甲第1号証:英国特許出願公開第2270657号明細書
(訳文は、記載事項(1-3)、(1-7)については請求人提出のものを、記載事項(1-5)については被請求人提出のものを、記載事項(1-1)、(1-2)、(1-4)、(1-6)については請求人提出のものに当審において一部修正を施したものを、それぞれ採用する。)

(1-1)明細書第1ページ第3?5行には、
「THE PRESENT INVENTION relates to a steering wheel assembly and more particularly relates to a steering wheel assembly which incorporates an air-bag unit.」
(訳)「この発明は、ステアリングホイール装置、より詳しくは、エアバッグユニットを内蔵したステアリングホイール装置に関する。」
との記載がある。

(1-2)明細書第4ページ第3?23行には、
「The circular boss 5 supports three substantially radially outwardly extending spokes 7. Each spoke 7 is located at a height above the upper surface of the boss 5 and thus each spoke 7 is associated with a root 8、 the inner surface of which defines an upstanding side wall 9 extending upwardly from the upper surface of the boss 5. The upper part of each spoke 7 is recessed 10 adjacent the root to accommodate a cover 11 as will be described hereinafter in greater detail. A counter-sunk bore 12 is provided extending from the under-side of each spoke into the recess 10.
An air-bag assembly 13 is provided which is mounted in position above the upper surface of the boss 5、 extending into the space effectively defined between the three upstanding side walls 9 defined by the three spokes 7. The air-bag unit 13 is provided with a cover 11. The cover 11 has an upper surface 14 of generally circular form adapted to lie spaced above the boss 5、 the cover having three substantially radially outwardly extending projections 15 which are aligned with the recesses 10 formed in the spokes 7.」
(訳)「円形のボス5は、実質的に、半径方向外方に延在するスポーク7を支持している。各スポーク7は、ボス5の上面上に所定の高さで配置され、したがって、各スポーク7は、その内面がボス5の上面から上方に延在した起立側壁9を区画する基体部8と協働する。各スポーク7の上部には、以下で詳しく説明するように、カバー11を収容するため、基体部に隣接して凹部10が形成されている。逆向き凹孔12が各スポークの下側から凹部10内に延在して設けられている。
エアバッグ装置13は、ボス5の上面上の所定の位置に、3つのスポーク7で画成された3つの起立側壁9間に効果的に画成された空間に延在して取り付けられている。エアバッグユニット13は、カバー11を備えている。カバー11は、ボス5から間隔を隔てて配置されるのに適合した略円形形状の上面14を有し、カバーは、スポーク7に形成された凹部10と整合した実質的に半径方向外方に延在する3つの突部15を有している。」との記載がある。

(1-3)明細書第5ページ第10?15行には、
「・・・when the air-bag unit is activated、 the air-bag is inflated and the cover 11 will break in the lines of relatively weakness of the metal reinforcing element 16、 consequently forming the cover into three flaps 21 which open to permit the egress of the inflating air-bag.」
(訳)「エアバッグユニットが作動すると、エアバッグが膨張し、かつカバー11は、金属補強要素16の比較的弱いラインで破断し、その結果、カバーを開放して膨張するエアバッグが出て行けるようにカバーを3個のフラップ21に形成する。」
との記載がある。

(1-4)明細書第5ページ第22?32行には、
「The air-bag unit 22 comprises an outer metal housing 23 to which is secured a gas generator unit 24 by means of a plurality of bolts 25、 with part of the gas generator unit 26 projecting downwardly through an aperture 27 formed in the metal housing 23. Part of an air-bag 28 which is shown、 schematically、 as being folded、 is trapped between the upper part 24 of the air-bag unit and the lower part of the metal housing 23. The metal housing 23 is provided with three upwardly and outward extending lugs 29 each secured by way of a bolt 30 to one of the lugs 18 of the metal reinforcing element 11.」
(訳)「エアバッグユニット22は、複数のボルト25によってガス発生ユニット24が取り付けられた外側金属ハウジング23を含み、ガス発生ユニット26の一部は、金属ハウジング23に形成された孔27を通して下方に突出している。エアバッグ28の一部は、折り畳まれたものとして模式的に示されているように、エアバッグユニットの上部24と金属ハウジング23の下部との間に収納されている。金属ハウジング23は、上方及び外方に延び、各々がボルト30により金属補強要素11の突部18の一つに固着されている3つの突部29を備えている。」
との記載がある。

(1-5)明細書第6ページ第1?7行には、
「At a position opposite one of the spokes 7 of the wheel、 as illustrated in Figures 1 and 4、 the housing 23 for the gas generator carries a projecting apertured lug 31、 and the metal reinforcing element 16 carries a projecting tongue 32 which is inserted through the aperture in the lug 31. This arrangement forms a virtual hinge for one of the flaps 21.」
(訳)「図1及び4に示すように、ガス発生器用のハウジング23は、ホイールの複数のスポーク7のうちの一つのスポーク7の反対側の位置において、突出した孔付きラグ31を坦持しており、かつ金属補強要素16は、ラグ31の孔に嵌入された突出舌部32を坦持している。この構成は、複数のフラップ21のうちの一つのフラップ21のためのヒンジを形成する。」
との記載がある。

(1-6)明細書第6ページ第8行?第7ページ第14行には、
「Figure 5 illustrates the connection between the steering wheel 1 and the unit 13.
Initially it is to be noted that the steering wheel is actually reinforced by a metal element 33 which extends across the base of the counter-sunk bore 12. Part of this metal element、 34 is located at a position spaced from the nut 30. It is to be noted that the nut 30 is mounted on a threaded stud 35 which is formed integrally with the cover 11.
The connecting unit 19 which extends between the lug 18 and the counter-sunk bore 12 comprises a cylindrical insulating element 36 having a flanged upper end、 the flanges engaging part of the lug 18 adjacent an aperture through which the rest of the cylindrical body passes. The cylindrical body extends through an aperture formed in a metal insert 33 to extend into the counter-sunk bore 12. A flanged sleeve 37 is mounted over the lower end of the cylindrical member 36、 the flanged sleeve extending up through the aperture in the metal portion 33、 with the flanges engaging the lower surface of the metal portion 33 within the counter-sunk bore 12. A bolt 38 and washer 39 are provided、 the bolt being inserted into a threaded central passage 40 provided in the elongate member 36. The washer 39 engages the flanges 37. A helical compression spring 40 surrounds the cylindrical member 36、 the upper end engaging an insulating washer 41 located between the spring 40 and the metal of the lug 18.
It is to be appreciated that the above described arrangement comprises a resilient connection between the unit 13 and the steering wheel 1、 which is electrically insulated. Thus a downward pressure on the cover will case、 the spring 40 to be compressed and will cause the elongate element to move downwardly thus moving the head of the bolt 38 downwardly within the counter-sunk bore 12.
It will also be appreciated that downward movement of the cover will bring the stud 35 into contact with the exposed portion 34 of the metal insert 33 provided in the steering wheel. This may be used to complete an electric circuit、 actuating the horn.」
(訳)「図5は、ステアリングホイール1とユニット13の間の連結部を示している。
最初に、ステアリングホイールは、逆向き凹穴12の基部を横断して伸びる金属要素33によって実際に補強されているということに留意されたい。この金属要素33の一部34は、ナット30から間隔を隔てた所定の位置に配置されている。ナット30は、カバー11と一体に形成されたネジ付きスタッド35上に取り付けられていることに留意されたい。
突部18と逆向き凹穴12間に延在する接続ユニット19は、フランジ付きの上端部を有する円筒状の絶縁要素36を包含しており、そのフランジは、円筒体の残部が貫通する穴に隣接する突部18の一部と係合している。円筒体は、金属インサート33に形成された孔を通して逆向き凹孔12中に延在している。フランジ付きスリーブ37は、円筒状部材36の下端部上に取り付けられ、フランジ付きスリーブは、金属部分33の孔を通して上方に延び、フランジは、逆向き凹孔12内で金属部分33の下面と係合している。ボルト38とワッシャ39が設けられており、ボルトは、細長い部材36中に設けられたネジ付きの中央通路40中に挿入されている。ワッシャ39は、フランジ37に係合する。螺旋状圧縮ばね40が円筒状部材36を囲繞し、その上端は、ばね40と突部18の金属間に配置された絶縁ワッシャ41と係合している。
上述の装置は、ユニット13とステアリングホイール1間の、電気的に絶縁された弾性連結部を包含することに留意されたい。したがって、カバーを下方に押圧することで、ばね40を圧縮し、細長い部材を下降させ、それによって、逆向き凹孔12内でボルト38のヘッドを下降させる。
カバーの下降によりスタッド35がステアリングホイールに設けられた金属インサート33の露出部分34と接触することも留意されたい。これは、電気回路を完成させ、ホーンを作動するのに用いられる。」
との記載がある。

(1-7)明細書第7ページ第15?24行には、
「It is to be noticed that in the embodiment described above、 the air-bag unit is mounted in position under the cover primarily by means of three fixing nuts、 such as the nuts 30 each of which co-operate with a stud 35 which is formed integrally with the cover 11. It is thus to be noted that if the air-bag unit 22 is not provided、 the cover 11 can still be mounted on the steering wheel、 and a stud 35 will still be present substantially aligned with each spoke、 thus ensuring that the horn function will still operate.」
(訳)「以上で説明した実施例において、エアバッグユニットは、主に各々カバー11と一体に形成されたスタッド35と協働するナット30のような3つの固定ナットによって、カバーの下方の所定位置に配置されることに留意されたい。したがって、仮にエアバッグユニット22が設けられなくとも、なおカバー11をステアリングホイールに取り付けることができ、かつ、なおスタッドは、各スポークと実質的に整合状態となり、したがって、なおホーン機能が働くことに留意されたい。」
との記載がある。

2.甲第2号証:特開平7-17407号公報
(2-1)第2ページ第1欄第2?13行には、
「【請求項1】 ステアリング装置の操舵ハンドルに複数箇所において操舵回転軸線方向と平行に移動可能に係合された係止部材を介することにより、前記回転軸線方向には所定距離相対移動可能で同軸線と直角方向相対移動及び同軸線回りの相対回動は規制して前記操舵ハンドル中央のハブ部上側に設けられ、かつ同ハブ部から離間する向きに弾性的に付勢されたホーンパッドの取付構造において、前記操舵ハンドルに対する前記係止部材の係合箇所のうち少なくとも3箇所を結ぶ平面を、前記ホーンパッド及びこれに固定された部材の重心位置に接近して配置したことを特徴とする操舵ハンドルのホーンパッド取付構造。」
との記載がある。

(2-2)第2ページ第2欄第9?38行には、
「【発明が解決しようとする課題】操舵ハンドルのチルト位置調整機構を備えた車両のホーン装置では、図1に示すように、操舵ハンドル20はチルトダウン位置20Aとチルトアップ位置20Bの間で移動する。チルトダウンして位置20Aに達したときにストッパなどにより操舵ハンドル20の移動が急に停止すると、図10に示すように、ホーンパッドPの重心(係止体25等の固定された部分を含む重心)PGにはチルトダウン方向の慣性力Fが発生する。通常のホーン装置では、図7及び図10に示すように、係止ピン26に係止される係止体25と重心PGの間にはオフセット距離Lがあるので、この慣性力FによりホーンパッドPには、図10において時計回転方向となる回転モーメントが加わる。これによりホーンパッドPは左側の係止ピン26と係止体25の間の係合箇所を中心として回動し、右側の接点33、34が接触して警報スイッチ32が閉じ、予想外のときにホーンの不意鳴りが発生するという問題がある。チルトアップして操舵ハンドル20が位置20Bに達したときは、ホーンパッドPが逆向きに回動して同様の問題が生じる。
【0005】またホーンパッドPの重心PGには、車両の走行中に路面の凹凸による上下方向加速度により、図1及び図10に示す鉛直線VP方向の慣性力VFが生じる。この慣性力VFは前記オフセット距離Lがあるため、図10に示すように係止ピン26と係止部材25の間の各係合箇所付近またはその外側を通り、このため前述と同様、ホーンパッドPを係止ピン26と係止体25の間の係合箇所を中心として回動させるモーメントを生じ、これによってもホーンの不意鳴りが発生することがあるという問題がある。」
との記載がある。

(2-3)第2ページ第2欄第50行?第3ページ第3欄第6行には、
「また、スプリング27の付勢力を強くしたり、あるいは接点33、34の間のギャップG(図13参照)を広げて、前述のような原因によるホーンの不意鳴りを防止することも考えられる。しかしこれらの解決手段ではホーンを作動させるときの操作力あるいは操作ストロークが増大するので、ホーンパッドPの操作性が悪くなるという問題がある。」との記載がある。

(2-4)第3ページ第3欄第46行?同ページ第4欄第4行には、
「請求項1の発明によれば、操舵ハンドルに対する係止部材の係合箇所のうち少なくとも3箇所を結ぶ平面がホーンパッドの重心に接近して配置されているので、ホーンパッドの重心に加わる前述の慣性力により生じるこれらの係合箇所を中心とするモーメントは僅かであり、従ってホーンパッドを操舵ハンドルのハブ部から離間する向きに付勢する弾性力を特に増大させなくても、この慣性力によりホーンパッドが回動することはない。」
との記載がある。

(2-5)第3ページ第4欄第50行?第4ページ第5欄第15行には、
「ウレタン発泡体等により形成されたホーンパッドPには、金属板の両端部をL形に折曲した左右1対の係止体25が取付ねじ28により固定されている。操舵ハンドル20のハブ部22の芯金24には、方形に配置された4本の係止ピン26が圧入または螺合等により、操舵ハンドル20の操舵回転軸線WCと平行に立設固定されている。ホーンパッドPは、係止体25両端の折曲部に設けた穴に各係止ピン26を挿入することにより、ホイールリング部21の中央部に回転軸線WC方向に所定距離移動可能に設けられる。係止体25は、各係止ピン26に巻回されて芯金24との間に介装された圧縮コイルスプリング27により、係止ピン26先端のフランジ26aに弾性的に当接され、これにより不作動状態では、ホーンパッドPは図3及び図4に示すようにハブ部22から最も離間された位置に弾性的に付勢される。」
との記載がある。

(2-6)第4ページ第5欄第20?29行には、
「この第1実施例では、各係止部材25両端の折曲部は、図3及び図4に示すように、回転軸線WCの軸線方向においてホーンパッドPの重心PGとほゞ同一位置となるように配置され、これにより重心PGは操舵ハンドル20に固定された係止ピン26と係止部材25の間の4つの係合箇所を結ぶ平面上に位置される。なお重心PGは4つの係合箇所を結ぶ平面上に厳密に位置させる必要はなく、多少距離(各係合箇所の間の距離に比して充分小さい距離)ならばこの平面から離れてもよい。」
との記載がある。

3.甲第3号証:実願平2-33988号(実開平3-123751号)のマイクロフィルム
(3-1)明細書第1ページ第18行?第2ページ第1行には、
「本考案は、自動車のエアバッグ装置に関し、特にステアリングハンドルに装着されたエアバッグモジュールにホーンスイッチをモジュール化したものに関する。」
との記載がある。

(3-2)明細書第4ページ第18行?第5ページ第7行には、
「本考案に係る自動車のエアバッグ装置は、ステアリングホイールにエアバッグモジュールの側方にホーンスイッチを配設してなる自動車エアバッグ装置において、上記エアバッグモジュールはその基板を介してステアリングホイールに装着され、上記基板にはホーンスイッチ側へ延びる延設部が設けられ、上記延設部にはホーンスイッチの受け板が固着され、上記ホーンスイッチがエアバッグモジュールにサブアッセンブリされているものである。」との記載がある。

(3-3)明細書第6ページ第4?6行には、
「上記ホーンスイッチがエアバッグモジュールにサブアッセンブリされているので、ホーンスイッチの組付け性が向上する。」
との記載がある。

(3-4)明細書第8ページ第18行?第9ページ第20行には、
「第1図?第4図に示すように、エアバッグモジュール20は、基板21と、インフレータ(ガス発生器)とイグナイタ(発火用機器)とを含むインフレータユニット22と、折り畳まれたエアバッグ23と、合成樹脂製のカバー部材24とを備え、基板21上にインフレータユニット22とエアバッグ23とカバー部材24とをサブアッセンブリしてモジュール化され、このエアバッグモジュール20がステアリングホイール1の4つのスポーク部10・11にボルト25を介して組付けられている。
上記基板21は、概ね矩形状の鋼板部材の4隅部に4つの延設部26・29を延設してなり・・・各延設部26にはスポーク部10の取付座12に当接する取付部27が形成され、・・・各延設部29にはスポーク部11の取付座に当接する取付部が形成され・・・」
との記載がある。

(3-5)明細書第10ページ第2?3行には、
「上記基板21の外周縁に沿って下向きの補強用のフランジ部31が形成され」
との記載がある。

(3-6)明細書第11ページ第6?12行には、
「このカバー部材24はステアリングホイール1のホイール本体5以外の部分の上面を覆う上面壁35と、上面壁35の下面に一体形成され且つエアバッグ23の外周側を覆う周壁36と、周壁36に一体形成され且つカバー部材24を基板21に固定する為のフランジ部37とを備えている。」
との記載がある。

(3-7)明細書第11ページ第13?18行には、
「上記上面壁35の内面側には、第1図・第2図に示すようにエアバッグ23の展開時に破断する破断溝38が略H字状に形成され、上面壁35には左右1対のスポーク部10の上面側を覆う延長部39と・・・が形成されている。」
との記載がある。

(3-8)明細書第11ページ第19行?第12ページ第4行には、
「上記周壁36はエアバッグ23の展開時にエアバッグ23内のガス圧がホーンスイッチ50へ作用したり或いはエアバッグ23がホーンスイッチ50に引掛かったりするのを防ぐ為のもので、展開時エアバッグ23は周壁36で案内されて円滑に展開する。」
との記載がある。

(3-9)明細書第12ページ第5?8行には、
「上記フランジ部37は基板21の外周縁部に沿って基板21の略全周に亙って形成され、基板21の外周縁部のフランジ部31にリベット41やビスで固着されている。」
との記載がある。

(3-10)明細書第12ページ第13?18行には、
「第2図に示すように、基板21の上部の左右1対の延設部26及びカバー部材24の上部の左右1対の延長部29は周壁部36よりも側方へ延長されており、右側の延設部26と延長部39との間及び左側の延設部26と延長部39との間に夫々ホーンスイッチ50が組付けられている。」
との記載がある。

(3-11)明細書第13ページ第11?14行には、
「延長部39を押圧すると、導電板52と導電板54とが接触するので、ホーンスイッチ50がONとなり、警笛が作動するようになっている。」
との記載がある。

(3-12)明細書第17ページ第10行?第18ページ第1行には、
「ステアリングホイール1Cは、・・・3つのスポーク部10・11Cが設けられ、これらスポーク部10・11Cにエアバッグモジュール20Cが組付けられ、インフレータユニット22の下側には3つのスポーク部10・11C上へ夫々延びる延設部26C・29Cを有する第1基板21Bが設けられ、インフレータユニット22の外周側には第2基板21Cが設けられ、インフレータユニット22は第2基板21Cに挿嵌固着され・・・」
との記載がある。

(3-13)明細書第18ページ第5?9行には、
「スポーク部10上へ延びる延設部26Cには第1別実施例の基板延設部材26Aと同様にスポーク部10にボルト25で固定される取付部27Aと、ホーンスイッチ50Cの受け板部51Aが形成されている。」
との記載がある。

(3-14)明細書第18ページ第13?18行には、
「上記第1基板21Bの基板本体部21bは、略円形状で、インフレータユニット22の下側に所定間隔空けて配設され、基板本体部21bから立ち上げられた4つのブラケット部21cの各上端部が第2基板21Cの下面にボルト71で固定されている。」
との記載がある。

4.甲第4号証:特開平6-64545号公報
(4-1)第2ページ第1欄第49行?同ページ第2欄第2行には、
「本発明は、アエバッグ式の拘束システムを装備した操舵ハンドル内に組み込まれたクラクション用スイッチの改良に関する。」
との記載がある。

(4-2)第3ページ第3欄第48?50行には、
「エアバッグ・モジュール・カバーを取り付けるために、前記第2開口の外側に放射状に取付け手段が設置されている。」
との記載がある。

(4-3)第3ページ第4欄第23?45行には、
「図1に示されているように、操舵ハンドル・アセンブリ10は、リム12とスポーク14とエアバッグ式拘束システム16とを具えている。図1のA-A線に沿う図2は、クラクション用スイッチ・アセンブリ20を示すエアバッグ・モジュール18の断面図を表している。図を簡略化するためにエアバッグ・クッションは示されていない。このエアバッグ・モジュール18は、膨張器26を収容する第1開口24を有するモジュール・ハウジング22(以後、第1支持プレートと称する)と、第2開口28とを具えている。エアバッグ・モジュール18は、更に第3開口32を有する第2支持プレート30を具えている。このモジュール・ハウジング22は、ナット36等に確保された固定手段34によって、第2支持プレート30に結合されている。中央領域に第4開口40を有する弾性的セパレータ手段38が、モジュール・ハウジング22と第2支持プレート30との間に設けられている。クラクション用スイッチ手段42が、モジュール・ハウジング22と第2支持プレート30の間の、第2支持プレート26の接点44上に設けられている。このクラクション用スイッチ手段42は、モジュール・ハウジング22の底部に取付けられた突起部46と第2支持プレート30の接点44との間で押圧されることによって作動する。」
との記載がある。

(4-4)第3ページ第4欄第46?49行には、
「第2支持プレート30は、補強された縁48と、図3に示されているようなエアバッグ・モジュール18を操舵ハンドル・アセンブリ10に取付けるための取付け用支持部50とを具えている。」
との記載がある。

(4-5)第4ページ第5欄第17?31行には、
「固定手段34、好ましくは締付けボルトがモジュール・ハウジング22の各第2開口28を貫通している。弾性的セパレータ手段38はスプリング等でもよいが、合成ゴム系材料、高分子材料等の弾性エラストマ材料で作られたワッシャ又は円板の使用が好ましい。このエラストマ材料は定常的な圧縮に耐え得ると共に、弾性を保持可能であることが必要である。この弾性的セパレータ手段38は、モジュール・ハウジング22と第2支持プレート30との間に設置される。固定手段34はモジュール・ハウジング22の第2開口28、弾性的セパレータ手段38の第4開口40及び第2支持プレート30の第3開口32を貫通し、ナット36等で固定される。この弾性的セパレータ手段38は締付けナット36によって予備圧縮され、クラクション・スイッチ手段42が誤って作動しないようにされている。」
との記載がある。

(4-6)第4ページ第5欄第38?45行には、
「自動車を運転する際に、運転者はカバー16を押し下げることによって本発明のクラクション用スイッチ・アセンブリを作動させることができる。カバー16に加えられた力は弾性的セパレータ手段38を圧縮し、モジュール・ハウジング22に取付けられた突起部46をクラクション用スイッチ手段42に押しつけ、これに接続されている外部動力源(図示しない)によってクラクションを作動させる。」
との記載がある。

第7.当審の判断(無効理由1について)
1.引用発明の認定(甲第1号証に記載された発明)
上記記載事項(1-1)?(1-7)及び第1?5図の記載からみて、甲第1号証には、「ステアリングホイール1の上部に、3つの接続ユニット19の螺旋状圧縮ばね40により上方へ付勢されて支持され、かつ、前記3つの接続ユニット19の円筒状の絶縁要素36、フランジ付きスリーブ37、ボルト38及びワッシャ39によって、前記ステアリングホイール1側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置13が配置され、
該エアバッグ装置13が、膨張可能に折り畳まれたエアバッグ28、該エアバッグ28に膨張用ガスを供給するガス発生ユニット24、26、折り畳まれた前記エアバッグ28を覆うカバー11、及び、前記エアバッグ28・ガス発生ユニット24、26・カバー11を保持する金属ハウジング23、を備えて構成され、
前記カバー11を押し下げることにより、前記螺旋状圧縮ばね40を圧縮させて、前記エアバッグ装置13側に配置されるネジ付きスタッド35を、前記ステアリングホイール1側に配置される金属インサート33の露出部分34に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置を内蔵したステアリングホイール装置であって、
前記カバー11が、前記エアバッグ28の膨張時に破断するライン20を備えた略円形形状の上面14と、を備えて構成され、前記上面14には外方へ突出した3つの突部15があり、
前記金属ハウジング23が、前記ガス発生ユニット24、26を挿入可能な孔27と、複数のスポーク7のうちの一つのスポーク7の反対側の位置において、金属補強要素14の突出舌部32と協働して複数のフラップ21のうちの一つのフラップ21のためのヒンジを形成する孔付きラグ31と、上方へ延びる3つの突部29と、を備えて構成され、
前記3つの突部29の各々が、前記カバー11の金属補強要素14の突部18の一つに前記ネジ付きスタッド35及びナット30により固着され、
前記3つの突部29の各々に、前記ガス発生ユニット24、26の外方に突出する部分が形成されるとともに、前記突部29の当該部分が、前記ネジ付きスタッド35が取り付けられ、前記突部18と固着される部分であって、前記上面14の突部15の下面側で外方へ突出するように、配置され、
前記突部18と前記金属インサート33との間に、前記螺旋状圧縮ばね40と前記円筒状の絶縁要素36、前記フランジ付きスリーブ37、前記ボルト38及び前記ワッシャ39から構成される前記接続ユニット19を配置させて、前記金属インサート33が、前記エアバッグ装置13側に組み付けられ、
前記エアバッグ装置13が、前記ステアリングホイール1の上部に配置される構成としている、エアバッグ装置を内蔵したステアリングホイール装置。」
が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という)。

2.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「ステアリングホイール1」、「螺旋状圧縮ばね40」、「円筒状の絶縁要素36、フランジ付きスリーブ37、ボルト38及びワッシャ39」、「エアバッグ28」、「ガス発生ユニット24、26」、「カバー11」、「金属ハウジング23」、「エアバッグ装置を内蔵したステアリングホイール装置」、「エアバッグ28の膨張時に破断するライン20」、「略円形形状の上面14」、「突部15」、「孔27」は、それぞれ、本件特許発明1の「ステアリングホイール本体」、「付勢手段としてのコイルばね」、「規制部材」、「袋状のエアバッグ」、「インフレーター」、「パッド」、「バッグホルダ」、「エアバッグ装置付きステアリングホイール」、「エアバッグの膨張時に破断する部位」、「天井壁部」、「突出部分」、「挿通孔」に相当する。

また、引用発明の「3つの接続ユニット19」は、「螺旋状圧縮ばね40」及び「円筒状の絶縁要素36、フランジ付きスリーブ37、ボルト38及びワッシャ39」という構成要素からみて、本件特許発明1の「ホーンスイッチ機構」の一部を構成するものであって、引用発明の「ネジ付きスタッド35」、「金属インサート33の露出部分34」、「金属インサート33」は、それぞれ、本件特許発明1の「ホーンスイッチ機構」における「可動側接点」、「固定側接点」、「エアバッグ装置の支持手段」としての機能を有することは明らかであるから、引用発明は、実質的に、本件特許発明1の「ホーンスイッチ機構」を備えるものである。

また、引用発明の「金属ハウジング23」は、甲第1号証の図1及び4の記載からみれば、実質的に、「前記ガス発生ユニット24、26を挿入可能な孔27」を備えた「横板部」を備えて構成されることは明らかであり、引用発明の「3つの突部29」は、甲第1号証の図1、4及び5の記載からみれば、「金属ハウジング23」の「横板部の縁の3箇所から」上方へ延びるものであって、「横板部の周方向に配置され」るものであることが明らかである。

また、引用発明の「突部29」は、上記のとおり、「横板部の縁」から延びるものであり、かつ、「ガス発生ユニット24、26の外方に突出する部分」を有しているから、本件特許発明1の「連結板部」に相当すると認められる。

また、引用発明の「前記3つの突部29の各々が、前記カバー11の金属補強要素14の突部18の一つに前記ネジ付きスタッド35及びナット30により固着され」は、「バッグホルダが、パッドに止められ」る限りにおいて、本件特許発明1の「前記複数のバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められ」と共通する。

また、引用発明の「(3つの突部29の各々に形成された)ガス発生ユニット24、26の外方に突出する部分」は、「インフレーターの外方に突出する(複数の)部分」である限りにおいて、本件特許発明1の「インフレーターの外方に突出する(複数の)取付片部」と共通する。

さらに、引用発明の「金属インサート33」は、「エアバッグ装置の支持手段」である限りにおいて、本件特許発明1の「前記パッド側壁部より外方で前記取付片部の下方に配置される台本体部と、該台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる接続片と、を備えた支持プレート」と共通するとともに、引用発明の「前記突部18と前記金属インサート33との間に、前記螺旋状圧縮ばね40と前記円筒状の絶縁要素36、前記フランジ付きスリーブ37、前記ボルト38及び前記ワッシャ39から構成される前記接続ユニット19を配置させ」る点は、「エアバッグ装置とエアバッグ装置の支持手段との間に、コイルばねと規制部材とを配置させ」る限りにおいて、本件特許発明1の「前記取付片部と前記台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させ」る点と共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明は、
「ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には外方へ突出した3つの突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の縁の複数箇所から上方へ延びる複数の連結板部と、を備えて構成され、前記複数の連結板部が、前記横板部の周方向に配置され、
前記バッグホルダが、前記パッドに止められ、
前記複数の連結板部に、前記インフレーターの外方に突出する複数の部分が、前記天井壁部の突出部分の下面側で外方へ突出するように、配置され、 前記エアバッグ装置の支持手段が、前記エアバッグ装置と前記エアバッグ装置の支持手段との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記エアバッグ装置側に組み付けられ、
前記エアバッグ装置が、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成としている、エアバッグ装置付きステアリングホイール。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明1ではパッドに関し、前記エアバッグの膨張時に被断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があるのに対して、
引用発明ではパッドに関し、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部とを備えて構成され、前記天井壁部には外方へ突出した3つの突出部分があるが突出する方向については記載がなく、天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部を有していない点。

[相違点2]
本件特許発明1ではバッグホルダに関し、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置されるのに対して、
引用発明ではバッグホルダに関し、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の縁の複数箇所から上方へ延びる複数の連結板部と、を備えて構成され、前記複数の連結板部が、前記横板部の周方向に配置されているが、それ以外の点に関しては明らかではない点。

[相違点3]
本件特許発明1では、前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われるのに対して、
引用発明では、前記バッグホルダが、前記パッドに止められているが、保持の具体的手段が異なっている点。

[相違点4]
本件特許発明1では、エアバック装置の支持に関し、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杵部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、前記連結杆部の左部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持されているのに対して、
引用発明では、ホーンスイッチ機構にエアバック装置は支持されているが、支持するための支持プレートを用いておらず、また、上記のような具体的な構成は記載されていない点。

[相違点5]
本件特許発明1では、エアバッグ装置が、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成に関し、少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心の高さがあることであるのに対して、
引用発明では、エアバッグ装置が、ステアリングホイール本体の上部に配置されているが、それ以外の点に関しては特に記載がない点。

(2)相違点についての判断
[相違点1について]
引用発明においても、パッドの天井壁部には左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があることは第3図からも明らかである。
また、天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部に関しては、甲第3号証には、カバー部材24が、エアバッグ23の展開時に破断する破断溝38を備えた上面壁35と、該上面壁35の外周縁付近から下方へ延びるエアバッグ23の外周側を覆う周壁36と、を備えて構成され、前記上面壁35には、前記周壁36より外方へ突出した延長部39があり、前記上面壁35の延長部39の下面側で当該周壁36より外方にホーンスイッチ50が配置される点が記載されているものと認められる(上記記載事項(3-6)、(3-7)、(3-10)及び第1?4図参照。)。そして、甲第3号証の「周壁36」は、それぞれ本件特許発明1の「筒形状のパッド側壁部」に相当するから、甲第3号証には、パッドの天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部が記載されているものと認められる。
そして、甲第3号証の周壁36は、エアバッグ23の展開時にエアバッグ23内のガス圧がホーンスイッチ50へ作用したり、エアバッグ23がホーンスイッチ50に引っ掛かったりするのを防ぎ、円滑に展開するようエアバッグ23を案内するものであるところ(上記記載事項(3-8))、エアバッグの円滑な展開という課題は、同じく、エアバッグ装置付きステアリングホイールに係る引用発明にも内在しているということができるから、甲第3号証の上記記載事項を引用発明に適用することは、当業者が適宜容易になし得ることである。

[相違点2について]
引用発明においても、バッグホルダは、インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の縁の複数箇所から上方へ延びる複数の連結板部とを備えており、複数の連結板部が、前記横板部の周方向に配置されており、第4図を参照すれば連結部の数は3つである。
そして、引用発明においても、3つの連結板部(突部29)は、金属ハウジング23の横板部の周方向であって、3つのスポーク7に対応する位置に配置されているから、本件特許発明1のように、3つのバッグホルダ側壁部と3つの連結板部とを、横板部の周方向に1つずつ交互に配置されるようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることにすぎない。

[相違点3について]
引用発明においても、バッグホルダはパッドに止められており、その際保持するための具体的手段として、バッグホルダ側壁部をパッド側壁部の内周面側に止めた構成を複数のスポーク部間に配置する点は、周知の事項である(例えば、甲第3号証の上記記載事項(3-5)、(3-6)、(3-9)及び第1?4図、甲第4号証の上記記載事項(4-2)及び図1、2、米国特許第5508481号明細書の第2欄第60?67行及び第2?6図参照。)。
してみれば、引用発明において、カバー11を金属ハウジング23に保持するため、突部29がカバー11の金属補強要素14の突部18にネジ付きスタッド35及びナット30により固着される構成に代えて、上記周知の事項に係る構成を採用することに格別の困難性はないというべきである。

[相違点4について]
本件特許発明1では、エアバッグ装置をホーンスイッチ機構に支持するに際し、支持プレートを用いて支持している。
引用発明においては、支持プレートを用いていないが、ステアリングホイールにエアバッグ装置を組み付ける台本体部と、ステアリングホイール本体に止められる接続部ないし接続片とを備えた支持プレートは、周知の事項であり(例えば、甲第4号証の上記記載事項(4-1)?(4-6)及び図2、3、6(第2支持プレート30)参照)、そのような支持プレートを用いてエアバッグ装置をホーンスイッチ機構に支持することは当業者が容易になし得ることである。
そして、支持プレートの材質として板金製とすることは周知の事項であるし、支持プレートの詳細な形状は3箇所で支持される構造を詳細に限定したものであるが、このような限定は、エアバッグ装置をホーンスイッチ機構に支持するに際し、支持プレートを用いて支持しているということ以上の格別の技術的思想を開示するものではなく、本件特許明細書の実施例の記載や図面から読み取った事項から単に限定したものにすぎず、まさに設計事項というべきものである。

[相違点5について]
本件特許発明1の課題は本件特許明細書の記載によれば概略以下のようなものである。
従来のステアリングホイールでは、ホーンスイッチ機構が重量のあるエアバッグ装置の下方の左右両側に配置されて、エアバッグ装置を左右両側の下方からホーンスイッチ機構のコイルばねで揺動可能に支持する構造となっていた。したがって、ホーンスイッチ機構の付勢手段として、ばね荷重の低いコイルばねを使用すれば、車両の振動等でエアバッグ装置が横方向に揺動して傾斜し易くなり、不必要にホーンスイッチ機構をオンさせてしまう場合が生ずる。
そのため、ホーンスイッチ機構の付勢手段としてのコイルばねとしては、ばね荷重の高いものが使用されることとなって、ホーンスイッチ機構の操作荷重が大きくなり、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングが悪くなっていた。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、重量のあるエアバッグ装置がホーンスイッチ機構の付勢手段に支持されて配置されていても、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングが良好となるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供することを目的とする。
そして、この課題を解決するために、本発明に係るステアリングホイールでは、少なくとも1つの付勢手段が、全ての付勢手段により上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置したものである。
そのため、重心高さ位置付近に配置されている付勢手段に対して、圧縮させる作用を生じさせ難いことから、ばね荷重の低い付勢手段を使用したり、あるいは、付勢手段の設置数を少なくして、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減させても、スイッチ本体を導通させることを防止することができるというものである。

以上の点を考慮しつつ、相違点5について検討する。
甲第2号証には、操舵ハンドルのホーンパッド取付構造において、ホーンパッドPの重心PGに生じる慣性力によりホーンパッドPに加わる回転モーメントによって、予想外のときにホーンの不意鳴りが発生するという問題を解決するとともに、ホーン不意鳴りの解決手段として、ホーンパッドPを弾性的に付勢するスプリングの付勢力を強くした場合、ホーンを作動させるときの操作力が増大して、ホーンパッドPの操作性が悪化するという問題を解決するために、操舵ハンドル20に固定された係止ピン26とホーンパッドPに固定された係止部材25の間の4つの係合箇所を結ぶ平面を、ホーンパッドPの重心(係止部材25等の固定された部分を含む重心)PGの位置に配置した点が記載されている(上記記載事項(2-1)?(2-6))。
ここで、「係止ピン26と係止部材25の間の係合箇所」とは、係止ピン26先端のフランジ26aと係止部材25の当接部分であり(上記記載事項(2-5))、当該当接部分は、甲第2号証の図3?5の記載からみて、ホーンパッドPを弾性的に付勢する圧縮コイルスプリング27の係止部材25に当接する端部とほぼ等しい高さに配置されていると認められる。また、係止部材25等の固定された部分を含むホーンパッドPは、4つの圧縮コイルスプリング27により、操舵ハンドル20から離間する向きに付勢されている。
してみれば、甲第2号証には、4つの圧縮コイルスプリング27の係止部材25に当接する端部が、全ての圧縮コイルスプリング27により操舵ハンドル20から離間する向きに付勢されるホーンパッドPの重心PGの高さとほぼ等しい高さに配置されている点が記載されているものと認められる。そして、甲第2号証の「圧縮コイルスプリング27」、「係止部材25に当接する端部」、「操舵ハンドル20から離間する向き」、「ホーンパッドP」、「重心PGの高さ」は、本件特許発明1の「コイルばね」、「上端」、「上方」、「部品」、「合計重量の重心の高さ」にそれぞれ相当するとともに、甲第2号証の圧縮コイルスプリング27は、操舵ハンドル20に配置された状態において、その「上端」が「重心PGの高さ」とほぼ等しい高さに配置されていることから、実質的に、圧縮コイルスプリング27が「重心PGの高さ」と本件特許発明1で定義される「略等しい高さ」に配置されることは明らかである。
そして、引用発明のエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいても、甲第2号証のものと同様に、予想外のホーンの不意鳴りを防止するとともに、ホーンパッドを付勢するスプリングの付勢力を低減して、ホーンパッドの操作性を良好なものとするという課題があることは、例えば、実願平4-93552号(実開平6-53325号)のCD-ROMの段落【0002】?【0008】に記載されているとおり明らかであり、引用発明に甲第2号証の上記記載事項を適用して、3つの螺旋状圧縮ばね40が、全ての螺旋状圧縮ばね40により上方へ付勢される部品(エアバッグ装置13)の合計重量の重心の高さと「略等しい高さ」に配置されるように構成することに格別の困難性はなく、当業者が容易になし得たことである。
そして、略等しい高さに関し、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心の高さがあることとすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。

したがって、本件特許発明1は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に「全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねが、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置されている」という事項を付加するものである。
甲第2号証のものは、予想外のホーンの不意鳴りを防止するため、ホーンパッドPの重心PGに加わる回転モーメントを最小化するものであるから、引用発明に甲第2号証の記載事項を適用して、3つの螺旋状圧縮ばね40がエアバッグ装置13の重心の高さと略等しい高さに配置されるように構成するに当たり、エアバッグ装置13の重心に加わる回転モーメントを最小化するために、エアバッグ装置13の重心の高さの配置を螺旋状圧縮ばね40の高さとの関係で最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
よって、本件特許発明2は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1に「前記コイルばねの全てが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されている」という事項を付加するものであるが、かかる事項は、実質的に、甲第2号証に記載されたものである。
してみれば、本件特許発明3は、本件特許発明2についての判断と同様に、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1?3のいずれかに「前記各台本体部が、前記ステアリングホイール本体のスポーク部に当接支持されている」という事項を付加するものであるところ、一般的に、ステアリングホイールにおいて、ホーンスイッチの支持手段の受け板部をスポーク部に当接支持させて、当該受け板部の支持力を高めることは、周知の事項であり(例えば、実願平1-48151号(実開平2-139174号)のマイクロフィルムの第10ページ第13?17行及び第1図、実願平1-48150号(実開平2-139173号)のマイクロフィルムの第14ページ第2?5行及び第1図、特開平6-144241号公報の図1(ホーンボタン支持ブラケット17の上部折曲げ片17aがスポーク部の被覆層8の段部に当接支持されていると認められる。)参照。)、台本体部をスポークに当接支持させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
してみれば、本件特許発明4は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1?4のいずれかに「パッド側壁部が略六角筒形状をなしている」という事項を付加するものであるが、パッド側壁部の形状をどのようなものとするかは当業者が適宜容易に定め得ることである。
よって、本件特許発明5は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1?5のいずれかに「前記各台本体部に、前記固定側接点が配置され、前記各取付片部に、前記可動側接点が配置されている」という事項を付加するものであるところ、引用発明の3つの突部29のラグ突出部分を「取付片部」に相当する構成にするとともに、引用発明に、「ホーンスイッチ支持手段」として、甲第3号証の延設部スイッチ支持部分を採用して、「支持プレート」を構成すれば、「台本体部」たる「受け板部51A」に固定側接点が配置され、「取付片部」たる「ラグ突出部分」に可動側接点が配置される構成となることは、明らかであるから、本件特許発明6の上記事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。
よって、本件特許発明6は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1?6のいずれかに「連結杆部が平面から見てU字状である」という事項を付加するものであるが、連結杆部の形状は連結されるものの配置によって自ずと定まるものであり、U字状とすることに何ら困難性を見いだすことはできない。
よって、本件特許発明7は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

9.本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1?7のいずれかに「前記各取付片部の上面にナットが溶着されており、該ナットに前記規制部材としての鍔付ボルトが下方から螺合されている」という事項を付加するものであるが、固着手段として周知の手段に限定したものであるから、本件特許発明8の上記事項のように構成することに何ら困難性を見いだすことはできない。
してみれば、本件特許発明8は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8.むすび
以上のとおり、本件特許発明1?8は、引用発明、甲第2及び3号証の記載事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、請求人が主張する無効理由2及び3について判断するまでもなく、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エアバッグ装置付きステアリングホイール
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され、
前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、
前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され、
前記エアバッグ装置が、前記左及び右の接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(G)の高さがあることであることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項2】全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねが、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項3】前記コイルばねの全てが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項4】前記各台本体部が、前記ステアリングホイール本体のスポーク部に当接支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項5】前記パッド側壁部が略六角筒形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項6】前記各台本体部に、前記固定側接点が配置され、前記各取付片部に、前記可動側接点が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項7】前記連結杆部が平面から見てU字状であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【請求項8】前記各取付片部の上面にナットが溶着されており、該ナットに前記規制部材としての鍔付ボルトが下方から螺合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に装着されるエアバッグ装置付きのステアリングホイールに関し、詳しくは、エアバッグ装置がホーンスイッチ機構の付勢手段に支持されて配置されているステアリングホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のエアバッグ装置がホーンスイッチ機構に支持されて配置されているステアリングホイールとしては、図1に示すものが知られている(実開平2-143734号公報参照)。
【0003】
このステアリングホイールW0では、ステアリングホイール本体1の中央上部に、ホーンスイッチ機構10を介在させてエアバッグ装置4が配置されていた。なお、ステアリングホイール本体1とは、ステアリングホイールW0の内で、エアバッグ装置4とホーンスイッチ機構10以外の部位を言う。
【0004】
エアバッグ装置4は、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ5、エアバッグ5に膨張用ガスを供給するインフレーター6、折り畳まれたエアバッグ5を覆うパッド7、及び、エアバッグ5・インフレーター6・パッド7を保持するバッグホルダ8、を備えて構成されていた。
【0005】
ホーンスイッチ機構10は、バッグホルダ8の左右両側の下方にそれぞれ前後方向に配置されていた。なお、図1は、ステアリングホイールW0の前後方向の断面図である。
【0006】
各ホーンスイッチ機構10は、ステアリングホイール本体1としての芯金2に接続されて前後方向の端部に固定側接点14・14を配置させた板金製の固定側部材11と、固定側部材11の上方に配置されて前後方向の端部に可動側接点15・15を配置させた板金製の可動側部材12と、を備えるとともに、可動側部材12と固定側部材11との間に、可動側部材12を上方へ付勢する付勢手段としてのコイルばね16・16を配置させ、さらに、可動側部材12の固定側部材11からの離隔距離を規制するための規制部材として、可動側部材12から芯金2に螺合される鍔付ボルト19を備えて構成されていた。
【0007】
なお、各可動側部材12は、ホーン作動回路の正極側に導通するように、図示しないリード線が結線され、各固定側部材11は、芯金2を介してホーン作動回路の負極側に導通するように構成されていた。
【0008】
そして、一対の固定側接点14と可動側接点15とは、スイッチ本体13を構成することとなっていた。
【0009】
また、コイルばね16や鍔付ボルト19は、所定の絶縁スペーサ17・18やゴム環20によって、可動側部材12と固定側部材11とを絶縁させて配置されていた。
【0010】
さらに、各可動側部材12には、バッグホルダ8をボルト止めする図示しない取付片が形成されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のステアリングホイールW0では、ホーンスイッチ機構10が重量のあるエアバッグ装置4の下方の左右両側に配置されて、エアバッグ装置4を左右両側の下方からホーンスイッチ機構10のコイルばね16で揺動可能に支持する構造となっていた。
【0012】
したがって、ホーンスイッチ機構10の付勢手段として、ばね荷重の低いコイルばね16を使用すれば、車両の振動等でエアバッグ装置4が横方向に揺動して傾斜し易くなり、不必要にホーンスイッチ機構10をオンさせてしまう場合が生ずる。
【0013】
すなわち、全てのコイルばね16(従来例では合計4個のコイルばね16)により上方へ付勢されて支持される部材、すなわち、エアバッグ装置4や可動側部材12の合計重量の重心Gが、コイルばね16より遥かに高く(30mm以上)上方に配置されているため、例えば、前方側のコイルばね16Fを回転モーメントの中心とすれば、重心Gの横方向における後方側への揺動は、その揺動の力をP、重心Gとコイルばね16Fとの高さ方向の距離をLとすれば、後方側のコイルばね16Bに対して、P×Lの回転モーメントを作用させることとなる。この回転モーメントPLは、コイルばね16Bを圧縮させて、後方側の可動側接点15Bを固定側接点14Bに接触させることとなり、スイッチ本体13Bを導通させる事態を招く虞れがある。
【0014】
そのため、ホーンスイッチ機構10の付勢手段としてのコイルばね16としては、ばね荷重の高いものが使用されることとなって、ホーンスイッチ機構10の操作荷重が大きくなり、ホーンスイッチ機構10の操作フィーリングが悪くなっていた。
【0015】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、重量のあるエアバッグ装置がホーンスイッチ機構の付勢手段に支持されて配置されていても、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングが良好となるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体の上部に、ホーンスイッチ機構の複数の付勢手段としてのコイルばねにより上方へ付勢されて支持され、かつ、前記ホーンスイッチ機構の複数の規制部材によって、前記ステアリングホイール本体側からの離隔距離を規制されたエアバッグ装置が配置され、
該エアバッグ装置が、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、折り畳まれた前記エアバッグを覆うパッド、及び、前記エアバッグ・インフレーター・パッドを保持するバッグホルダ、を備えて構成され、
前記ホーンスイッチ機構が、前記パッドを押し下げることにより、前記コイルばねを圧縮させて、前記エアバッグ装置側に配置される可動側接点を、前記ステアリングホイール本体側に配置される固定側接点に、接触させることにより、ホーンを作動させるように構成されたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、
前記パッドが、前記エアバッグの膨張時に破断する部位を備えた天井壁部と、該天井壁部の外周縁付近から下方へ延びる筒形状のパッド側壁部と、を備えて構成され、前記天井壁部には前記パッド側壁部より左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分があり、
前記バッグホルダが、前記インフレーターを挿入可能な挿通孔を備えた横板部と、該横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのバッグホルダ側壁部と、該横板部の左縁、右縁及び後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部と、を備えて構成され、前記3つのバッグホルダ側壁部と前記3つの連結板部とが、前記横板部の周方向に1つずつ交互に配置され、
前記3つのバッグホルダ側壁部が、前記筒形状のパッド側壁部の内周面側に止められることにより、バッグホルダによるパッドの保持が行われ、
前記エアバッグ装置側に、前記左、右及び後の連結板部の上端から外方へ延びて、前記インフレーターの外方に突出するとともに、前記天井壁部の左、右及び後の突出部分の下面側で前記パッド側壁部より外方へ突出した左、右及び後の3つの取付片部が、配置され、
板金製であり、
前記横板部の下方で、前記インフレーターの左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部と、
前記連結杆部の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、前記左、右及び後の連結板部の外側を、前記横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部と、
前記左、右及び後の縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、前記パッド側壁部より外方で前記左、右及び後の取付片部の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部と、
前記連結杆部の左杆部及び右杆部から下方へ設けられ、前記台本体部の下方に配置されて前記ステアリングホイール本体に止められる左及び右の2つの接続片と、
を備えて構成され、もって前記連結杆部が前記左、右及び後の台本体部を相互に連結している、前記ホーンスイッチ機構の一部を構成する支持プレートが、前記左、右及び後の取付片部と前記左、右及び後の台本体部との間に、前記コイルばねと前記規制部材とを配置させて、前記左、右及び後の台本体部の箇所のみで前記エアバッグ装置側に組み付けられることにより、ホーンスイッチ機構にエアバッグ装置が支持され、
前記エアバッグ装置が、前記左及び右の接続片を前記ステアリングホイール本体に止めることにより、前記ステアリングホイール本体の上部に配置される構成として、
少なくとも1つの前記コイルばねが、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されており、該略等しい高さとは、ステアリングホイール内に配置された状態での少なくとも1つのコイルばねの上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばねの上下方向の長さの5割の範囲までに、前記重心(G)の高さがあることであることを特徴とする。
【0017】
そして、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置された前記コイルばねは、上下方向の中央付近の高さを、前記重心の高さに一致させて配置させることが望ましい。
【0018】
さらに、前記コイルばねの全てを、全ての前記コイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置させることが望ましい。
【0019】
【発明の効果】
本発明に係るステアリングホイールでは、バッグホルダによるパッドの保持は、バッグホルダの横板部の前縁側と後縁付近の左右両側の3箇所から延びる3つのパッド側壁部を、筒形状のパッド側壁部の内周面側に止めることにより行うことができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、前記板金製の支持プレートを備えており、前記左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む連結杆部により相互に連結される台本体部であって、かつ該連結杆部の前記3箇所から、左、右及び後の連結板部の外側を、横板部よりも上方へ直角に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部を経て、該3つの縦板部の上端から左外方、右外方及び後外方へ延びる左、右及び後の3つの台本体部の箇所のみにおいて、該支持プレートを含んで構成されるホーンスイッチ機構にエアバッグ装置を支持させることができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、その後、エアバッグ装置をホーンスイッチ機構に支持させたならば、ホーンスイッチ機構における支持プレートの、前記横板部の下方で前後方向に延びる左杆部及び右杆部から下方へ設けられた左及び右の接続片をステアリングホイール本体に止めれば、ホーンスイッチ機構をステアリングホイール本体に接続させることができ、ステアリングホイールを組み立てることができる。
また、本発明に係るステアリングホイールでは、少なくとも1つのコイルばねが、全てのコイルばねにより上方へ付勢される部品の合計重量の重心の高さと略等しい高さに配置されている。
【0020】
そのため、重心高さ位置付近に配置されていない1つのコイルばねを回転モーメントの中心とすれば、エアバッグ装置等の重心Gの横方向への揺動は、その揺動の力をP、重心Gと重心高さ位置付近に配置されているコイルばねとの高さ方向の距離をLとして、重心高さ位置付近に配置されているコイルばねに対して、P×Lの回転モーメントを作用させることとなる。
【0021】
しかし、この回転モーメントPLは、Lが零に近いため、重心高さ位置付近に配置されているコイルばねに対して、圧縮させる作用を生じさせ難いことから、ばね荷重の低いコイルばねを使用したり、あるいは、コイルばねの設置数を少なくして、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減させても、スイッチ本体を導通させることを防止することができる。
【0022】
したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、重量のあるエアバッグ装置がホーンスイッチ機構のコイルばねに支持されて配置されていても、ホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することができるため、ホーンスイッチ機構の操作フィーリングを良好にすることができる。
【0023】
そして、エアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置されるコイルばねの中央付近を、その重心高さ位置に配置させるようにすれば、一層、既述のLを零に近づけることができることから、ばね荷重の低いコイルばねを使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減でき、さらに、全てのコイルばねをエアバッグ装置等の重心高さ位置付近に配置させれば、各コイルばねを回転モーメントの中心として、各々の回転モーメントを考慮した際、それらの各回転モーメントを全て零付近に抑えることができるため、一層、ばね荷重の低いコイルばねを使用する等してホーンスイッチ機構の操作荷重を低減できることから、共に、一層のホーンスイッチ機構の操作フィーリングの向上に寄与することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
実施形態のステアリングホイールW1は、図2?4に示すように、円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されるボス部Bと、リング部Rとボス部Bとを連結する3本のスポーク部Sと、を備えて構成され、構成部品上では、ステアリングホイール本体21と、ボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置30と、ステアリングホイール本体21に接続されてエアバッグ装置30を支持するホーンスイッチ機構40と、から構成されている。
【0026】
ステアリングホイール本体21とは、エアバッグ装置30とホーンスイッチ機構40とを除いた部位を言い、リング部R・ボス部B・スポーク部Sの各部を連結するように配置される芯金22を備えて、芯金22におけるリング部芯金23とリング部芯金23側の各スポーク部芯金25とには、合成樹脂製の被覆層26が被覆されている。ボス部Bの部位の芯金24は、図示しないステアリングシャフトと接続される鋼製のボス24aと、ボス24aの周囲を覆ってリング部芯金23やスポーク部芯金25と一体的に形成されるアルミニウム合金等からなる被覆部24bと、から構成されている。なお、後方側のスポーク部芯金25Bは、ボス部芯金24の被覆部24b側に対して2又状に分れて連結されている。また、ステアリングホイール本体21は、ボス部Bの下部を覆うように、芯金22にねじ止めされるロアカバー27を備えている。
【0027】
エアバッグ装置30は、膨張可能に折り畳まれた袋状のエアバッグ31、エアバッグ31に膨張用ガスを供給するインフレーター33、折り畳まれたエアバッグ31を覆うパッド34、及び、エアバッグ31・インフレーター33・パッド34を保持するバッグホルダ35、を備えて構成されている。
【0028】
インフレーター33は、上部にガス吐出口33bを備えた略円柱状の本体部33aと、本体部33aの外周面から突出するフランジ部33cと、を備えて構成されている。
【0029】
パッド34は、合成樹脂製として、エアバッグ31の膨張時に所定部位を破断させる天井壁部34aと、天井壁部34aの外周縁付近から下方へ延びる略六角筒形状の側壁部34bと、を備えて構成されている。天井壁部34aにはパッド側壁部34bより左外方、右外方及び後外方へ突出した左、右及び後の突出部分がある。側壁部34bの内周面には、所定位置に、後述するバッグホルダ35の側壁部37に設けられた係止爪37aを係止させる係止溝34cが形成されている。また、天井壁部34aの前記突出部分の下面には、後述するバッグホルダ35の取付片部39に当接する複数のリブ(図符号省略)が形成されている。
【0030】
バッグホルダ35によるエアバッグ31とインフレーター33との保持は、エアバッグ31内に配置される円環状のリテーナ32が下方へ延びる図示しない複数のボルトを備え、これらのボルトをエアバッグ31・バッグホルダ35・インフレーター33のフランジ部33cに貫通させてナット止めすることにより、行なっている。また、バッグホルダ35によるパッド34の保持は、パッド側壁部34bのリベット60止めと、係止爪37aの係止溝34cへの係止と、により行なっている。
【0031】
バッグホルダ35は、板金製として、中央にインフレーター本体部33aを下方から挿入可能な挿通孔36aを備えた横板部36と、横板部36の前縁側や後縁付近の左右両側の3箇所から断面V字状に延びる3つのバッグホルダ側壁部37と、横板部36の左右両縁や後縁の3箇所から上方へ直角に延びる左、右及び後の3つの連結板部38と、を備えて構成されている。3つのバッグホルダ側壁部37と3つの連結板部38とは、横板部36の周方向に1つずつ交互に配置されている。
【0032】
各側壁部37には、パッド側壁部34bの係止溝34cに係止される係止爪37aが形成され、また、パッド側壁部34bをリベット60止めする際の図示しない取付孔が形成されている。
【0033】
前記左、右及び後の各連結板部38の上端には、外方へ横方向に延びて、天井壁部34aの前記左、右及び後の突出部分の下面側でパッド側壁部34bより外方へ突出した左、右及び後の取付片部39が形成され、各取付片部39には、ナット39bを溶着させた取付孔39aが形成されている。これらの各取付片部39は、エアバッグ装置30をホーンスイッチ機構40に連結する部位となるとともに、ホーンスイッチ機構40の可動側部材48の一部を構成する部位となる。そしてまた、バッグホルダ35には、ホーン作動回路の正極側に導通するように、図示しないリード線が結線されている。
【0034】
ホーンスイッチ機構40は、スポーク部芯金25に接続される固定側部材41と、固定側部材41の上方に配置される可動側部材48と、固定側部材41と可動側部材48との間に配置されて可動側部材48を上方へ付勢する付勢手段としてのコイルばね55と、可動側部材48の固定側部材41からの離隔距離を規制する規制部材としての鍔付ボルト56と、を備えて構成されている。
【0035】
固定側部材41は、実施形態の場合、左右のスポーク部芯金25L・25Rにボルト58止めされる支持プレート42と、支持グロメット47と、固定側接点材51と、から構成されている。
【0036】
支持プレート42は、板金製として、図2・3・5に示すように、平面から見てU字状の連結杆部43と、連結杆部43の左右両縁と後縁とから上方へ延びて上端から外方へ延びる支持台部44と、を備えて構成されている。連結杆部43は、横板部36の下方で、インフレーター33の左外方、右外方及び後外方をそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向に延び、板厚方向が上下方向である左杆部、右杆部及び後杆部を一体として含む。
【0037】
各支持台部44は、連結杆部43から上方へ延びる縦板部44aと、縦板部44aの上端から外方へ延びる台本体部44bと、から構成されている。縦板部44aは、連結杆部43の左杆部の左縁、右杆部の右縁及び後杆部の後縁の3箇所から、左、右及び後の連結板部38の外側を、横板部36よりも上方へ垂直に延び、板幅方向がそれぞれ前後方向、前後方向及び左右方向である左、右及び後の3つの縦板部44aを含む。台本体部44bは、左、右及び後の縦板部44aの上端から左外方、右外方及び後外方へ延び、板厚方向が上下方向であり、パッド側壁部34bより外方で左、右及び後の取付片部39の下方に配置される左、右及び後の3つの台本体部44bを含む。台本体部44bの中央には、円形の孔の対称的な位置の両縁に略直角三角形の孔の斜辺側を付けたような組付孔44cが形成され、さらに、組付孔44cの両側には、小径の円形状の係止孔44dが形成されている。
【0038】
また、連結杆部43における左右両側である前記左杆部及び右杆部の縦板部44a付近には、下方へ切下げられた左及び右の接続片45が設けられ、各接続片45には、支持プレート42をスポーク部芯金25L・25Rにボルト58止めさせるためのナット46が固着されている。
【0039】
支持グロメット47は、図6に示すように、ポリアセタール等の絶縁性を有した合成樹脂から略円筒形状に形成されており、下部に各支持台部44の組付孔44cの開口形状に対応した係止板部47aが配置されるとともに、係止板部47aの上部には、組付孔44cの円弧状の部位に対応した凹溝47cが形成されて構成されている。なお、係止板部47aの上面には、係止孔44dに挿入される突起47bが形成されている。また、支持グロメット47には、外周面の対称的な位置に、一対ずつの係止段部47dと凹溝47eとが形成されている。一対の係止段部47dは、後述する固定側接点材51を係止する部位となり、一対の凹溝47eは、後述する絶縁スペーサ49の係止爪49bを下方へ移動可能に配置させる部位となる。
【0040】
固定側接点材51は、ばね鋼から形成されて、円環状の固定側接点52と、固定側接点52の外周縁の対称的な位置から下方へ延びる係止片部51aと、各係止片部51aの下端から湾曲して延びるばね片部51cと、を備えて構成されている。各係止片部51aには、支持グロメット47の係止段部47dに係止されるように、内側に突出する係止爪51bが形成されている。固定側接点材51の各ばね片部51cは、係止板部47aを支持台部44の組付孔44cに挿入して支持グロメット47を90°回転させ、係止板部47aの突起47bを支持台部44の係止孔44dに挿入させるように、バヨネット結合させる際、支持台部44における台本体部44bの上面側の組付孔44c周縁を押圧して、係止板部47aの上面を台本体部44bの下面側の組付孔44c周縁に圧接する作用を行なうものである。
【0041】
固定側接点52は、固定側接点材51の各係止爪51bを支持グロメット47の係止段部47dに係止させた際、支持グロメット47の上端面に配置されることとなる。また、固定側接点材51の固定側接点52は、支持プレート42がスポーク部芯金25R・25Lにボルト58止めされる際、固定側接点材51のばね片部51c・支持プレート42・芯金25R・25Lを介して、ホーン作動回路の負極側に導通することとなる。
【0042】
可動側部材48は、実施形態の場合、バッグホルダ35の各取付片部39と、絶縁スペーサ49と、可動側接点材53と、から構成されている。
【0043】
絶縁スペーサ49は、ポリアセタール等の絶縁性を有した合成樹脂から略円筒状に形成されて、図6に示すように、上部外周面に鍔状に突出するばね座49aと、下部から下方へ突出する2本の係止爪49bと、内周面の3箇所の位置に形成された図示しない係止段部と、を備えて構成されている。各係止爪49bは、支持グロメット47の凹溝47eに配置されて、支持グロメット47に取り付けられた固定側接点材51の円環状の固定側接点52に対して下方への移動を許容されて係止されることとなる。また、図示しない係止段部は、後述する可動側接点材53を係止するものである。
【0044】
可動側接点材53は、ばね鋼から形成され、円環状の基部53aと、基部53aの外周縁の3箇所から下方へ延びる係止片部53bと、各係止片部53bの下端から外方へ延びる可動側接点54と、を備えて構成されている。各係止片部53bには、絶縁スペーサ49の図示しない係止段部に係止される係止爪53cが外側へ突出するように形成されている。
【0045】
各可動側接点54は、可動側接点材53の各係止爪53cを絶縁スペーサ49の図示しない係止段部に係止させた際、絶縁スペーサ49の下端面に配置されることとなる。
【0046】
そして、スイッチ本体50を構成する固定側接点51と可動側接点54とを含めて、実施形態の場合、支持グロメット47、絶縁スペーサ49、及び、コイルばね55は、予め、組み付けられてスイッチ構成体Hを形成することとなる。このスイッチ構成体Hは、支持グロメット47に固定側接点材51を組み付けるとともに絶縁スペーサ49に可動側接点材53を組み付け、コイルばね55の下端を支持グロメット47の係止板部47aに当て、コイルばね55の上端を絶縁スペーサ49のばね座49aに当てて、絶縁スペーサ49の各係止爪49bを支持グロメット47の凹溝47e内に挿入させ、固定側接点材51の固定側接点52に係止させれば、形成することができる。
【0047】
さらに、このように形成した各スイッチ構成体Hは、支持グロメット47の係止板部47aを支持プレート42の支持台部44における台本体部44bの組付孔44cにバヨネット結合させて、さらに、予め、組み立てておいたエアバッグ装置30のバッグホルダ35における各取付片部39を各スイッチ構成体Hの上方に配置させ、鍔付ボルト56を、下方から各台本体部44b及び各スイッチ構成体Hに挿通させて、取付片部39のナット39bに螺合させれば、ホーンスイッチ機構40にエアバッグ装置30が支持されることとなり、支持プレート42は左、右及び後の台本体部44bの箇所のみでエアバッグ装置30側に組み付けられることとなる。
【0048】
なお、エアバッグ装置30は、既述したように、エアバッグ31内にリテーナ32を配置させて、エアバッグ31を折り畳むとともに、リテーナ32から延びる図示しないボルトをバッグホルダ35・インフレーターフランジ部33cに挿通させてナット止めし、さらに、パッド側壁部34bの各係止溝34cにバッグホルダ側壁部37の係止爪37aを係止させて、パッド側壁部34bをバッグホルダ側壁部37にリベット60止めすれば、エアバッグ装置30を組み立てておくことができる。
【0049】
その後、エアバッグ装置30をホーンスイッチ機構40に支持させたならば、ホーンスイッチ機構40における支持プレート42に設けられた各接続片45をスポーク部芯金25L・25Rに当て、芯金25L・25Rの裏面側から芯金25L・25Rを挿通させてボルト58を各接続片45のナット46に螺合させれば、ホーンスイッチ機構40をステアリングホイール本体21に接続させることができ、ステアリングホイールW1を組み立てることができる。
【0050】
なお、この組立時には、ステアリングホイール本体21は、予め、ボス部芯金24のボス24aを車両のステアリングシャフトに接続させておく。
【0051】
また、各スイッチ構成体Hの可動側接点54は、鍔付ボルト56をナット39bに螺合させた際、バッグホルダ35の取付片部39における取付孔39a周縁に可動側接点材53の基部53aが圧接されることにより、図示しないリード線を介して、ホーン作動回路の正極側に導通することとなる。また、各スイッチ構成体Hの固定側接点52は、支持プレート42がスポーク部芯金25R・25Lにボルト58止めされる際、固定側接点材51のばね片部51c・支持プレート42・芯金25R・25Lを介して、ホーン作動回路の負極側に導通することとなる。
【0052】
そして、このようにホーンスイッチ機構40がステアリングホイール本体21に接続された際には、実施形態の場合、固定側部材41を構成する支持プレート42の支持台部44における台本体部44bの外方へ延びる先端が、それぞれ、ステアリングホイール本体21における各スポーク部芯金25の被覆層26に当接支持されるように、構成されている。
【0053】
さらに、実施形態の場合、支持プレート42における各支持台部44の台本体部44bとバッグホルダ35の各取付片部39とを各スポーク部Sの被覆層26の近傍に配置させる形状により、各スイッチ構成体Hのコイルばね56の配置が、全てのコイルばね56により上方へ付勢されて支持される部品、すなわち、実施形態の場合にはエアバッグ装置30(エアバッグ31・リテーナ32・インフレーター33・パッド34・バッグホルダ35・リード線等)・可動側部材48(取付片部39・絶縁スペーサ49・可動側接点材53)・鍔付ボルト56の合計重量の重心Gの高さに、各コイルばね56の上下方向の中央部分を一致させるように構成されている。
【0054】
そのため、実施形態のステアリングホイールW1では、図2に示すように、1つのコイルばね55Bを回転モーメントの中心とすれば、エアバッグ装置30等の重心Gの横方向への揺動は、その揺動の力をP、重心Gと重心Gの高さ位置に配置されているコイルばね55Aとの高さ方向の距離をLとして、そのコイルばね55Aに対して、P×Lの回転モーメントを作用させることとなるが、この回転モーメントPLは、Lが零であるため、コイルばね55Aに対して、圧縮させる作用を生じさせ難いことから、コイルばね55Aとして、ばね荷重の高いものを使用しなくとも、不必要にスイッチ本体50を導通させることを防止することができる。そして、他のコイルばね55B・55Cも同様に、エアバッグ装置30等の揺動による回転モーメントが小さくなるため、ばね荷重の低いものが使用可能となる。
【0055】
したがって、実施形態のステアリングホイールW1では、重量のあるエアバッグ装置30がホーンスイッチ機構40の付勢手段としてのコイルばね55に支持されて配置されていても、ばね荷重の低いコイルばね55を使用することが可能となるため、ホーンスイッチ機構40の操作フィーリングを良好にすることができる。ちなみに、実施形態の場合には、従来と略同じ重量のエアバッグ装置30を使用しても、ホーン操作時の操作荷重を従来の2/3に低減することができた。
【0056】
なお、通常のホーン操作は、エアバッグ装置30におけるパッド34の天井壁部34aを押し下げることにより行ない、その際には、各ホーンスイッチ構成体Hのコイルばね55が圧縮されて、付勢手段としてのコイルばね55を間にして、エアバッグ装置30側となる可動側接点材53の可動側接点54が、ステアリングホイール本体21側となる固定側接点材51の固定側接点52に接触し、ホーンが作動することとなる。
【0057】
また、実施形態では、ホーンスイッチ機構40における全てのコイルばね55の上下方向の中央部位を、全てのコイルばね55により上方へ付勢される部品の合計重量の重心Gの高さに一致させた場合を示したが、各コイルばね55の上下端の間の範囲内に重心Gが配置されるように、各スイッチ構成体Hの配置を上下させても良い。この場合は、実施形態の効果までは得られないものの、従来例よりホーンスイッチ機構40の操作荷重を低減することが可能となる。
【0058】
さらに、少なくとも1つのコイルばね55の上下端の間の範囲内に、重心Gを配置させ、他のコイルばね55の上下端の間に重心Gを配置させないように構成しても良い。この場合は、上記変形例の効果までは得られないものの、従来例よりホーンスイッチ機構40の操作荷重を低減することが可能となる。
【0059】
さらにまた、少なくとも1つのコイルばね55が、重心Gの高さと略等しい高さに配置されれば(言い変えれば、ステアリングホイール内に配置された状態でのその1つのコイルばね55の上端から上下方へまたは下端から上下方へ、そのコイルばね55の上下方向の長さの5割程度の範囲までに重心Gの高さが配置されれば)、既述の回転モーメントPLの値を低減できるため、従来例よりホーンスイッチ機構の操作荷重を低減することが可能となる。勿論、上記範囲内を超えれば、エアバッグ装置の揺動によるホーンの不要な作動を防止するため、ばね荷重を高くしなければならず、本発明の効果を得難くなる。
【0060】
【図面の簡単な説明】
【図1】
従来例を示すステアリングホイールの断面図である。
【図2】
本発明に係る一実施形態のステアリングホイールの断面図であり、図4のII-II部位を示す。
【図3】
同実施形態のステアリングホイールの断面図であり、図4のIII-III部位を示す。
【図4】
同実施形態の平面図である。
【図5】
同実施形態で使用する固定側部材の支持プレートを示す平面図である。
【図6】
同実施形態で使用するスイッチ構成体の分解斜視図である。
【符号の説明】
1・21…ステアリングホイール本体、
4・30…エアバッグ装置、
10・40…ホーンスイッチ機構、
11・41…固定側部材、
12・48…可動側部材、
13・50…スイッチ本体、
14・52…固定側接点、
15・54…可動側接点、
16・55…(付勢手段)コイルばね、
19・56…(規制部材)鍔付ボルト、
G…重心、
W0・W1…ステアリングホイール。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-03-31 
結審通知日 2009-04-02 
審決日 2009-04-14 
出願番号 特願平9-61000
審決分類 P 1 113・ 573- ZA (B62D)
P 1 113・ 572- ZA (B62D)
P 1 113・ 121- ZA (B62D)
P 1 113・ 574- ZA (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小関 峰夫久島 弘太郎大谷 謙仁  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 高木 彰
金丸 治之
登録日 2001-04-06 
登録番号 特許第3175621号(P3175621)
発明の名称 エアバッグ装置付きステアリングホイール  
代理人 松原 等  
代理人 小原 英一  
代理人 松原 等  

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