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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800056 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1200665
審判番号 無効2006-80213  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-23 
確定日 2009-05-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3117971号「ダイボンディング材及び接着方法」の特許無効審判事件についてされた平成20年 4月15日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10196号 平成21年 1月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3117971号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成 7年 7月 6日 国内優先出願(特願平7-171154号)
平成 8年 7月 8日 原出願(特願平9-505008号)
平成11年 9月 2日 分割出願(特願平11-248802号)
平成12年 2月21日 本件分割出願(特願2000-43233号)
平成12年10月 6日 特許権の設定登録
平成13年 6月15日 特許異議の申立
平成14年 7月23日 訂正請求
平成14年12月24日 特許異議決定(訂正を認め特許維持)
平成18年10月23日 無効審判請求
平成19年 1月 9日 被請求人:訂正請求書、答弁書提出
平成19年 2月19日 請求人:弁駁書提出
平成19年 6月28日 請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成19年 6月28日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成19年 6月28日 口頭審理
平成19年 6月28日 請求人:上申書提出
平成19年 8月24日付 無効審判審決(審判請求成立)
平成19年10月 4日 知的財産高等裁判所出訴
(平成19年(行ケ)第10336号)
平成19年12月19日 本件特許に係る訂正審判請求
(訂正2007-390142号)
平成19年12月27日 差し戻し決定(無効審判審決取消)
平成20年 1月16日付 訂正請求のための期間指定通知
平成20年 3月14日 請求人:弁駁書提出
平成20年 4月15日付 無効審判審決(審判請求成立)
平成20年 5月23日 知的財産高等裁判所出訴
(平成20年(行ケ)第10196号)
平成21年 1月27日 無効審判審決取消


II.訂正の適否についての判断
被請求人は平成20年 1月16日付訂正請求のための期間指定通知に対して訂正請求をしなかったので、被請求人が行った平成19年12月19日付の訂正審判請求(訂正2007-390142号)は、特許法第134条の3第5項の規定により、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書又は図面を援用した訂正の請求とみなされ、また、先にした平成19年 1月 9日付訂正請求は、特許法第134条の2第4項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
そして、訂正の請求とみなされた平成19年12月19日付の訂正審判請求(訂正2007-390142号)は、本件明細書の記載を、その訂正審判の請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、次の訂正事項を含むものである。

<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって、
接着部分に均一に付けて用いられるものであり、
ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるものであり、
接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm2で上記半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を上記支持部材に接着することができ、
上記支持部材は、ダイパッド部を有するリードフレーム、又は、配線基板であり、
吸水率が0.9体積%以下であり、残存揮発分が3.0重量%以下である、有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。」

<訂正事項2>
特許請求の範囲の請求項2を次のとおりに訂正する。
「【請求項2】 飽和吸湿率が0.5体積%以下である請求項1記載のフィルム状ダイボンディング材。」

<訂正事項3>
特許請求の範囲の請求項3を削除し、請求項4を請求項3に繰り上げて、新たな請求項3を次のとおりに訂正する。
「【請求項3】 半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって、
接着部分に均一に付けて用いられるものであり、
ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるものであり、
接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm2で上記半導体素子を上記支持部材に接着することができ、
上記支持部材は、ダイパッド部を有するリードフレーム、又は、配線基板であり、
飽和吸湿率が0.5体積%以下であり、残存揮発分が3.0重量%以下である、有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。」

<訂正事項4>
特許請求の範囲の請求項5?8を削除し、請求項9?17をそれぞれ繰り上げて、新たな請求項4?12を、次のとおりに訂正する。
「【請求項4】 さらにエポキシ樹脂を含み、
上記エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、及び、脂環式エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれかである請求項1?3のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項5】 充填材をさらに含む請求項1?4のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材を用いて支持部材と半導体素子とを接着する接着方法。
【請求項7】 上記接着の条件が、接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm2である請求項6記載の接着方法。
【請求項8】 上記接着温度は150?250℃であり、上記接着時間は2秒未満であり、上記接着圧力は4gf/mm2以下である請求項7記載の接着方法。
【請求項9】 上記接着時間は1.5秒以下であり、上記接着圧力は0.3?2gf/mm2である請求項8記載の接着方法。
【請求項10】 上記接着することのできる温度は150?250℃であり、上記接着することのできる時間は2秒未満であり、上記接着することのできる圧力は4gf/mm2以下である請求項1又は3記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項11】 上記接着することのできる時間は1.5秒以下であり、上記接着することのできる圧力は0.3?2gf/mm2である請求項10記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項12】 単一の層からなることを特徴とする請求項1?5、10及び11のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。」

上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「フィルム状ダイボンディング材」について、「支持部材」に「接着」される「半導体素子」の面を「ワイヤボンディングされる面の裏面」とし、「接着部分に均一に付けて用いられるもの」とし、材料を「ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるもの」とし、「吸水率」を「0.9体積%以下」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項2は、訂正前の請求項2の「飽和吸湿率」について、「0.5体積%以下」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除し、訂正前の請求項4を請求項3に繰り上げ、「フィルム状ダイボンディング材」について、「支持部材」に「接着」される「半導体素子」の面を「ワイヤボンディングされる面の裏面」とし、「接着部分に均一に付けて用いられるもの」とし、材料を「ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるもの」とし、「飽和吸湿率」を「0.5体積%以下」と訂正するものであるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項4は、訂正前の請求項5?8を削除し、訂正前の請求項9?17をそれぞれ繰り上げて、新たな請求項4?12とし、引用する請求項を訂正したものであるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正事項1?4は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものでもない。
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


III.本件発明
本件特許第3117971号の請求項1?12に係る発明(以下、「本件発明1?12」という。)は上記のとおり訂正が認められるから、訂正の請求とみなされた平成19年12月19日付の訂正審判請求書に添付された全文訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記II.訂正の適否についての判断<訂正事項1>?<訂正事項4>参照)。


IV.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1?12の特許を無効とするとの審決を求め、その理由として、以下の<無効理由1(特許法第29条第2項違反)>及び<無効理由2(特許法第36条第4項)>の2点により、本件発明1?12の特許は無効とされるべきものであると主張する。

<無効理由1(特許法第29条第2項違反)>
本件発明1?12は、本件原出願の優先権主張日前に頒布された甲第1号証?甲第10号証、甲第12号証に記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1?12の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

<無効理由2(特許法第36条第4項)>
本件明細書及び図面の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件発明1?12の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである。

なお、請求人の主張する無効理由2は、訂正前の請求項3および5についての「ピール強度」についてのものを含むものであったが、上記訂正請求によって、特許請求の範囲において「ピール強度」に関する構成が無くなったことから、本件特許請求の範囲における、特許を受けようとする発明が明確でないという理由で特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとする無効理由については解消したものとした。

そして、その証拠方法として下記甲号各証、審判請求書に添付して参考例1を、又口頭審理陳述要領書に添付して下記参考例2?参考例12をそれぞれ提出している。
なお、請求人は、審判請求書に添付して甲第11号証を、口頭審理陳述要領書に添付して甲第13号証?甲第23号証を、それぞれ提出しているが、口頭審理の際に順に「参考例1」?「参考例12」に整理された(第1回口頭審理調書の請求人側項目2参照)。
また、請求人の主張する新規性違反(第29条第1項違反)は、口頭審理の際に取下げられた(第1回口頭審理調書の請求人側項目4参照)。


(1)甲第1号証:特開平6-145639号公報
(2)甲第2号証:特開平6-264035号公報
(3)甲第3号証;特開平6-218880号公報
(4)甲第4号証:特開平6-256733号公報
(5)甲第5号証:特開平5-152355号公報
(6)甲第6号証:特開平4-234472号公報
(7)甲第7号証:特開平3-105932号公報
(8)甲第8号証:米国特許第5,296,074号明細書(1994年3月22日)
(9)甲第9号証:特開平4-227782号公報
(10)甲第10号証:「日立化成テクニカルレポート」(平成7年1月発行、第24号、第25?28頁)
(11)参考例1:三井化学株式会社 機能材料研究所 大枝靖雄氏が甲第2号証の実施例1の実験に基づいて作成した実験報告書
(12)甲第12号証:神戸大学名誉教授 中前勝彦氏による鑑定意見書
(13)参考例2:JIS K 6849-1994(接着剤の引張り接着強さ試験方法)
(14)参考例3:JIS K 6850-1994(接着剤の引張りせん断接着強さ試験方法)
(15)参考例4:JIS K 6852-1994(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)
(16)参考例5:JIS K 6853-1994(接着剤の割裂接着強さ試験方法)
(17)参考例6:JIS K 6854-1994(接着剤のはく離接着強さ試験方法)
(18)参考例7:岩波 理化学辞典 第3版、岩波書店(1978年5月20日)、第8頁、第152頁、第334?335頁、第1284頁
(19)参考例8:日本ジーイープラスチックス ホームページ、データシート<URL:http://www.geplastics.co.jp/jpn/product_portfolio/ultem/datasheet/1000.html>
(20)参考例9:米国特許第4783695号(1988年11月8日)
(21)参考例10:化学大辞典 7 初版、共立出版株式会社(昭和36年10月30日)、第731?733頁
(22)参考例11:化学大辞典 9 初版、共立出版株式会社(昭和37年7月31日)、第144頁
(23)参考例12:化学大辞典 5 初版、共立出版株式会社(昭和36年4月15日)、第286?287頁


V.被請求人の主張
被請求人は、本件発明1?12は、いずれの甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明1?12の特許は、特許法第29条第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、本件特許無効の審判は成り立たない旨主張している。
また、被請求人は、口頭審理陳述要領書に添付して下記乙第2号証を提出し、本件のピール強度測定装置は、本件出願当時、被請求人以外の半導体組立メーカーにおいて使用されていた測定装置である旨主張し、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものであるから、本件特許無効の審判は成り立たない旨主張している。

なお、被請求人は、答弁書に添付して乙第1号証、口頭審理陳述要領書に添付して乙第3号証を提出しているが、前述した取り下げられた理由に対する実験成績証明書であり、本件と直接関係のない実験結果であるので、口頭審理の際にそれぞれ順に「参考資料1」、「参考資料2」となったものである(第1回口頭審理調書の被請求人側の項目3参照)。


(1)乙第2号証:納入仕様書(平成7年11月29日付)

VI.甲第1号証の記載事項
(1)甲第1号証:特開平6-145639号公報
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)式(I) (略)
で表されるテトラカルボン酸二無水物、の含量が全テトラカルボン酸二無水物の70モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンを反応させて得られるポリイミド樹脂、及び(B)導電性フィラー、を含有してなる導電性接着フィルム。」
(1b)「【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。
合成例 1
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン41g(0.1モル)及びジメチルアセトアミド150gをとり、攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)41g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で3時間反応させたのち、キシレン30gを加え、N2ガスを吹き込みながら150℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去した。その反応液を水中に注ぎ、沈澱したポリマーを濾過により採り、乾燥してポリイミド樹脂(A1)を得た。
【0041】合成例 2
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン43.2g(0.1モル)及びN-メチル-2-ピロリドン150gをとり、攪拌した。ジアミンの溶解後、室温で、1,4-(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)43.8g(0.1モル)を加えた。5℃以下で5時間反応させ、無水酢酸20.4g(0.2モル)及びピリジン15.8g(0.2モル)を加え、1時間室温で攪拌した。この反応液を水中に注ぎ、沈澱したポリマーを濾過により採り、乾燥してポリイミド樹脂(A2)を得た。
【0042】合成例 3
温度計、攪拌機、塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン32.8g(0.08モル)、3,3′,5,5′-テトラメチル-4,4′-ジアミノジフェニルメタン5.08g(0.02モル)及びジメチルアセトアミド100gをとり、攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)41.8g(0.08モル)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物6.44g(0.02モル)を少量ずつ添加した。添加終了後、氷浴中で3時間、更に室温で4時間反応させた後、無水酢酸25.5g(0.25モル)及びピリジン19.8g(0.25モル)を添加し、2時間室温で攪拌した。その反応液を水中に注ぎ、沈澱したポリマーを濾過により採り、乾燥してポリイミド樹脂(A3)を得た。」
(1c)「【0012】本発明で使用されるジアミンとしては、・・・、
【0013】・・・、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、・・・等の芳香族ジアミンを挙げることができる。」


VII.当審の判断
上記平成20年(行ケ)第10196号判決において、知的財産高等裁判所は、以下のとおり判示している。
なお、当該判決における甲1公報?甲9公報、甲1発明及び本件発明は、それぞれ上記甲第1号証?甲第9号証、甲1号証に記載された発明及び本件発明1?12を総称した発明である。


【引用例の認定について】
「甲1公報には,ポリイミド樹脂の合成に関して,
・合成例1(段落【0040】)として,ジアミン:2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンと,テトラカルボン酸二無水物:1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)との合成によるポリイミド樹脂(A1) が,
・合成例2(段落【0041】)として,ジアミン:ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホンと,テトラカルボン酸二無水物:1,4-(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)との合成によるポリイミド樹脂( A2)が,
・合成例3(段落【0042】)として,ジアミン:2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン及び 3,3′, 5,5′-テトラメチル-4,4′-ジアミノジフェニルメタンと,テトラカルボン酸二無水物:1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物との合成によるポリイミド樹脂(A3)が,
それぞれ挙げられているものの,本件発明1?12に係るポリイミドFと同様のモノマー組成(ジアミン:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとテトラカルボン酸二無水物:1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)とから合成)に合致するものは見当たらない」
「そして,ポリイミド樹脂のモノマー組成として何を選択するかにより,合成された樹脂の特質が変化し得ることは,甲1公報が合成例1?3という複数のポリイミド樹脂を挙げた上でこれを用いた実施例を掲げ,本件発明に係る明細書がポリイミドAないしFという複数のポリイミド樹脂を比較対照していることからも明らかである。
そうすると,甲1公報と本件明細書におけるポリイミド樹脂を比較するに当たり,それらのモノマー組成の差異を捨象することは許されないというべきであって,ジアミンの一種であるとの共通性ないしテトラカルボン酸二無水物の一部が合致することのみを根拠として甲1公報の合成例3のポリイミド樹脂がポリイミドFに等しいものと認定することは,誤りといわざるを得ない」

進歩性について】
「…甲1発明と本件発明の技術思想は必ずしも一致するものではない上,甲1公報には本件発明の効果(吸水率,残存揮発分及び飽和吸湿率を改善し,さらにはリフロークラックの発生を防止するとの効果)との関係でポリイミドFという特定のモノマー組成を採用することの技術的意義については教示も示唆もなく,また,甲2公報ないし甲9公報をみても,上記のような観点でポリイミドFという特定のモノマー組成に着目した教示も示唆も見当たらない。
そうすると,これら甲1公報ないし甲9公報の記載を前提とすれば,甲1発明のポリイミド樹脂に代えて,甲1公報に記載されたジカルボン酸及びジアミンの中から,特定の各1種を選択し,本件発明に係るポリイミドFを採用することは,当業者が容易に想到できるものではない」

実施可能要件について】
「この点,審決は「本件発明においては,フィルム状ダイボンディング材の特定要素の一つとして『ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上である』とし,該ピール強度を,明細書段落【0084 】及び図2に示された装置によって測定したとしている。」(審決39頁9行?13行)との認定を前提に,本件発明1?12が実施可能要件を欠くと判断したものであるが,前記2のとおり,本件発明1?12は「ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上である」ことを特定要素とするものでないことは明らかである(なお,本件訂正前における特許請求の範囲の記載〔平成14年7月23日付け訂正請求に基づくものであり,平成14年12月24日付け特許異議決定において訂正が認められたもの。甲17 〕においては,その請求項3,5 に「ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上である」との記載があったものの,本件訂正により請求項3,5 はいずれも削除されている。)
そうすると,審決の指摘する事項について「発明」の実施可能が問題となるものではなく,審決の上記判断は前提において誤りがあるといわざるを得ない」

当審の審理は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、上記平成20年(行ケ)第10196号判決の判断である上記判示事項に拘束されるものである。

よって、
1)本件発明1?12は、本件原出願の優先権主張日前に頒布された甲第1号証?甲第10号証、甲第12号証に記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1?12の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである、
および、
2)本件明細書及び図面の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件発明1?12の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである、
との、請求人のいずれの主張も採用できない。


VIII.むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1?12に係る発明の特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ダイボンディング材及び接着方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって、
接着部分に均一に付けて用いられるものであり、
ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるものであり、
接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm^(2)で上記半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を上記支持部材に接着することができ、
上記支持部材は、ダイパッド部を有するリードフレーム、又は、配線基板であり、
吸水率が0.9体積%以下であり、残存揮発分が3.0重量%以下である、有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。
【請求項2】飽和吸湿率が0.5体積%以下である請求項1記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項3】半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって、
接着部分に均一に付けて用いられるものであり、
ポリイミド樹脂を主体とし、前記ポリイミド樹脂は、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるものであり、
接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm^(2)で上記半導体素子を上記支持部材に接着することができ、
上記支持部材は、ダイパッド部を有するリードフレーム、又は、配線基板であり、
飽和吸湿率が0.5体積%以下であり、残存揮発分が3.0重量%以下である、有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。
【請求項4】さらにエポキシ樹脂を含み、
上記エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、及び、脂環式エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれかである請求項1?3のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項5】充填材をさらに含む請求項1?4のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材を用いて支持部材と半導体素子とを接着する接着方法。
【請求項7】上記接着の条件が、接着温度100?350℃、接着時間0.1?20秒、接着圧力0.1?30gf/mm^(2)である請求項6記載の接着方法。
【請求項8】上記接着温度は150?250℃であり、上記接着時間は2秒未満であり、上記接着圧力は4gf/mm^(2)以下である請求項7記載の接着方法。
【請求項9】上記接着時間は1.5秒以下であり、上記接着圧力は0.3?2gf/mm^(2)である請求項8記載の接着方法。
【請求項10】上記接着することのできる温度は150?250℃であり、上記接着することのできる時間は2秒未満であり、上記接着することのできる圧力は4gf/mm^(2)以下である請求項1又は3記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項11】上記接着することのできる時間は1.5秒以下であり、上記接着することのできる圧力は0.3?2gf/mm^(2)である請求項10記載のフィルム状ダイボンディング材。
【請求項12】単一の層からなることを特徴とする請求項1?5、10及び11のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子をダイボンディング材を用いてリードフレーム等の支持部材に接着し、樹脂封止した半導体装置及び半導体装置の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子をリードフレームに接着させる方法としては、リードフレーム上にダイボンディング材料を供給し半導体素子を接着する方法が用いられてきた。
【0003】
これらの材料としては、例えばAu-Si共晶、半田、樹脂ペーストなどが知られている。この中で、Au-Si共晶は高価かつ弾性率が高く又接着部分を加振する必要があるという問題がある。半田は融点温度以上の温度に耐えられずかつ弾性率が高いという問題がある。
【0004】
樹脂ペーストでは銀ペーストが最も一般的であり、銀ペーストは、他材料と比較して最も安価で耐熱信頼性が高く弾性率も低いため、IC、LSIのリードフレームの接着材料として最も多く使用されている。
【0005】
電子機器の小型・薄型化による高密度実装の要求が、近年、急激に増加してきており、半導体パッケージは、従来のピン挿入型に代わり、高密度実装に適した表面実装型が主流になってきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この表面実装型パッケージは、リードをプリント基板等に直接はんだ付けするために、赤外線リフローやベーパーフェーズリフロー、はんだディップなどにより、パッケージ全体を加熱して実装される。
【0007】
この際、パッケージ全体が210?260℃の高温にさらされるため、パッケージ内部に水分が存在すると、水分の爆発的な気化により、パッケージクラック(以下リフロークラックという)が発生する。
【0008】
このリフロークラックは、半導体パッケージの信頼性を著しく低下させるため、深刻な問題・技術課題となっている。
【0009】
ダイボンディング材に起因するリフロークラックの発生メカニズムは、次の通りである。半導体パッケージは、保管されている間に(1)ダイボンディング材が吸湿し、(2)この水分がリフローはんだ付けの実装時に、加熱によって水蒸気化し、(3)この蒸気圧によってダイボンディング層の破壊やはく離が起こり、(4)リフロークラックが発生する。
【0010】
封止材の耐リフロークラック性が向上してきている中で、ダイボンディング材に起因するリフロークラックは、特に薄型パッケージにおいて、重大な問題となっており、耐リフロークラック性の改良が強く要求されている。
【0011】
従来最も一般的に使用されている銀ペーストでは、チップの大型化により、銀ペーストを塗布部全面に均一に塗布することが困難になってきていること、ペースト状であるため接着層にボイドが発生し易いことなどによりリフロークラックが発生し易い。
【0012】
本発明は、フィルム状有機ダイボンディング材を使用し、リフロークラックが発生せず、信頼性に優れる半導体装置及びその製造法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、フィルム状有機ダイボンディング材を用いる。これはたとえばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料を主体にした(有機材料に金属フィラー、無機質フィラーを添加したものも含む)フィルム状のもので、リードフレーム等の支持部材上にフィルム状有機ダイボンディング材を加熱した状態で圧着させ、更にフィルム状有機ダイボンディング材に半導体素子を重ねて加熱圧着させるものである。すなわち樹脂ペーストをフイルム化することによって接着部分に均一にダイボンディング材料を付けようとするものである。
【0014】
図1は、本発明の半導体装置の製造工程の一例を示すものである。
フィルム状有機ダイボンディング材1はロールからカッター2で所定の大きさに切断される(図1(a))。
フィルム状有機ダイボンディング材1は熱盤7上でリードフレーム5のダイパッド部6に圧着子4で圧着される(図1(b))。圧着条件は、温度100?250℃、時間0.1?20秒、圧力4?200gf/mm^(2)が好ましい。
【0015】
ダイパッド部6に貼付られたフィルム状有機ダイボンディング材1に半導体素子8を載せ加熱圧着(ダイボンド)する(図1(c))。ダイボンドの条件は、温度100?350℃、時間0.1?20秒、圧力0.1?30gf/mm^(2)が好ましく、温度150?250℃、時間0.1秒以上2秒未満、圧力0.1?4gf/mm^(2)がより好ましく、温度150?250℃、時間0.1秒以上1.5秒以下、圧力0.3?2gf/mm^(2)が最も好ましい。
その後ワイヤボンド工程(図1(d))を経て、半導体素子の樹脂封止工程(図1(e))を経て、半導体装置を製造する。9は封止樹脂である。
【0016】
例えば、本発明のフィルム状有機ダイボンディング材は、ポリイミド、エポキシ樹脂等の有機材料、必要に応じて金属フィラー等の添加物等の材料を有機溶媒に溶解・分散させ塗工用ワニスとし、この塗工用ワニスを二軸延伸ポリプロピレンフィルム等のキャリアフィルムに塗工し溶剤を揮発させキャリアフィルムから剥離して製造する。このようにすれば、自己支持性のあるフィルムが得られる。
【0017】
本発明は、半導体装置のリフロークラックの発生とフィルム状有機ダイボンディング材の物性・特性との間に相関関係があることを見い出し、リフロークラックの発生とフィルム状有機ダイボンディング材の特性の関係を詳細に検討した結果なされたものである。
【0018】
本願の第一の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に吸水率が1.5vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0019】
本願の第二の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に飽和吸湿率が1.0vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0020】
本願の第三の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に残存揮発分が3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0021】
本願の第四の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に250℃における弾性率が10MPa以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0022】
本願の第五の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に、半導体素子を支持部材に接着した段階でダイボンディング材中及びダイボンディング材と支持部材の界面に存在するボイドがボイド体積率10%以下であるフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0023】
本願の第六の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材として、半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ以上のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0024】
本願の第七の発明は、半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し、半導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて、ダイボンディング材に、半導体素子の面積と同等以下の面積を有し半導体素子を支持部材に接着した段階で半導体素子の領域からダイボンディング材がはみ出さない、すなわち、半導体素子と支持部材との間からはみ出さない、フィルム状の有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
【0025】
これらの発明において、支持部材にフィルム状有機ダイボンディング材を貼り付ける段階で、吸水率が1.5vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、飽和吸湿率が1.0vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、残存揮発分が3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、250℃における弾性率が10MPa以下のフィルム状有機ダイボンディング材がそれぞれ使用される。
【0026】
第一の発明で使用される吸水率が1.5vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、第二の発明で使用される飽和吸湿率が1.0vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、第四の発明で使用される250℃における弾性率が10MPa以下のフィルム状有機ダイボンディング材及び第六の発明で使用される半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ以上のフィルム状有機ダイボンディング材は、フィルム状有機ダイボンディングの組成、例えばポリイミド等のポリマーの構造や銀等のフィラー含量を調整することにより製造することができる。
【0027】
また、第三の発明で使用される残存揮発分が3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材及び第五の発明で使用される半導体素子を支持部材に接着した段階でダイボンディング材中及びダイボンディング材と支持部材の界面に存在するボイドがボイド体積率10%以下であるフィルム状有機ダイボンディング材は、フィルム状有機ダイボンディングの製造条件、例えば乾燥温度、乾燥時間等を調整することにより製造することができる。
【0028】
半導体素子としては、IC、LSI、VLSI等の一般の半導体素子が使用される。本発明は、半導体素子の大きさが、縦5mm横5mm以上のものに特に好適に使用される。支持部材としては、ダイパッド部を有するリードフレーム、セラミック配線板、ガラス-ポリイミド配線板等の配線基板等が使用される。図3にダイパッド部を有するリードフレームの一例の平面図を示す。図3に示すリードフレーム40は、ダイパッド部41を有する。
【0029】
フィルム状有機ダイボンディング材は、単一層のものだけでなく多層構造のものも使用される。
本発明では、フィルム状有機ダイボンディング材は上記の物性・特性の二以上を兼ね備えることができる。
兼ね備えることが好ましい物性・特性としては、例えば
(1)飽和吸湿率が1.0vol%以下かつ残存揮発分が3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材、
(2)飽和吸湿率が1.0vol%以下かつ半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ以上のフィルム状有機ダイボンディング材、
(3)残存揮発分が3.0wt%以下、かつ、半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ以上のフィルム状有機ダイボンディング材、
(4)飽和吸湿率が1.0vol%以下、残存揮発分が3.0wt%以下かつ半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ以上のフィルム状有機ダイボンディング材
である。
【0030】
本発明では、フィルム状有機ダイボンディング材の上記の物性・特性は使用目的に応じ、任意の組み合わせをとることができる。
【0031】
また、(1)?(4)のフィルム状有機ダイボンディング材又は上記の物性・特性を任意組み合わせたフィルム状有機ダイボンディング材を、半導体素子の面積と同等以下の面積を有し半導体素子を支持部材に接着した段階で半導体素子の大きさからはみ出さないようなフィルム状有機ダイボンディング材として使用することが好ましい。
【0032】
本発明の半導体装置は、半導体装置実装のはんだリフロー時においてリフロークラックの発生を回避することができ、信頼性に優れる。
【0033】
本発明のフィルム状有機ダイボンディング材の有機材料として、ポリイミド樹脂が好ましい。
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3-(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4-(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5-(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6-(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7-(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8-(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9-(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12-(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16-(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18-(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フエナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ-ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二無水物)スルホン、ビシクロ-(2,2,2)-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフイド二無水物、1,4-ビス(2-ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3-ビス(2-ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物等があり、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0034】
またポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3′-ジアミノジフェニルエーテル、3,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、3,3′-ジアミノジフェニルメタン、3,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3′-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4′-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4′-ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3′-ジアミノジフェニルスルホン、3,4′-ジアミノジフェニルスルホン、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、3,3′-ジアミノジフェニルスルフイド、3,4′-ジアミノジフェニルスルフイド、4,4′-ジアミノジフェニルスルフイド、3,3′-ジアミノジフェニルケトン、3,4′-ジアミノジフェニルケトン、4,4′-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2′-(3,4′-ジアミノジフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-(3,4′-ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3′-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4′-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4′-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフエノキシ)フエニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルフイド、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフイド、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等の芳香族ジアミンや、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン等があり、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させてポリイミドを得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0?50℃で反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
【0036】
ポリイミドは、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は120℃?250℃で熱処理する方法や化学的方法を用いて行うことができる。
【0037】
本発明のフィルム状有機ダイボンディング材の有機材料として、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、脂環型のエポキシ樹脂が使用される。
【0038】
上記したように、本発明の半導体装置の製造法においては、ダイボンドの条件は、温度100?350℃、時間0.1?20秒、圧力0.1?30gf/mm^(2)が好ましく、温度150?250℃、時間0.1秒以上2秒未満、圧力0.1?4gf/mm^(2)がより好ましく、温度150?250℃、時間0.1秒以上1.5秒以下、圧力0.3?2gf/mm^(2)が最も好ましい。
【0039】
フィルム状有機ダイボンディング材の250℃における弾性率が10MPa以下のフィルムを使用すれば、温度150?250℃、時間0.1秒以上2秒未満、圧力0.1?4gf/mm^(2)の条件でダイボンディングを行い、十分なピール強度(例えば、0.5Kgf/5×5mmチップ以上の強度)を得ることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。以下の実施例において用いられるポリイミドは、いずれも等モルの酸無水物とジアミンとを溶媒中で混合し加熱することにより重合させて得られる。以下の各実施例において、ポリイミドAは、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)とビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタンとから合成されるポリイミドであり、ポリイミドBは、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとから合成されるポリイミドであり、ポリイミドCは、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)とビス(4-アミノ-3,5-ジイソプロピルフェニル)メタンとから合成されるポリイミドであり、ポリイミドDは、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるポリイミドであり、ポリイミドEは、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)および1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)の等モル混合物と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるポリイミドであり、ポリイミドFは、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるポリイミドである。
【0041】
<実施例1>
表1に示すポリイミド100g及びエポキシ樹脂10gに、有機溶媒280gを加えて溶解させる。ここに、銀粉を所定量加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0042】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、表1に示す組成、吸水率のフィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
【0043】
リードフレームのタブ上に、表1のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱して貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、温度300℃、圧力12.5gf/mm^(2)、時間5秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFP(Quad Flat Package)パッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0044】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0045】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
【0046】
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表1に示す。なお、銀ペーストは、日立化成工業株式会社製「エピナール」(商品名)を使用した。
【0047】
【表1】

【0048】
吸水率測定方法は、つぎの通りである。
50×50mmの大きさのフィルムをサンプルとし、サンプルを真空乾燥機中で、120℃、3時間乾燥させ、デシケータ中で放冷後、乾燥重量を測定しM1とする。サンプルを蒸留水に室温で24時間浸せきしてから取り出し、サンプル表面をろ紙でふきとり、すばやく秤量してM2とする。
【0049】
[(M2-M1)/(M1/d)]×100=吸水率(vol%)
として、吸水率を算出した。dはフィルム状有機ダイボンディング材の密度である。
【0050】
<実施例2>
表2に示すポリイミド100g及びエポキシ樹脂10gに、有機溶媒280gを加えて溶解させる。ここに、銀粉を所定量加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0051】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、表2に示す組成、飽和吸湿率のフィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
【0052】
リードフレームのタブ上に、表2のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、No.1?6および比較例では、温度300℃、圧力12.5gf/mm^(2)、時間5秒で、No.7?10では、温度230℃、圧力0.6gf/mm^(2)、時間1秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFPパッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0053】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0054】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
【0055】
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表2に示す。なお、銀ペーストは、日立化成工業株式会社製「エピナール」(商品名)を使用した。
【0056】
【表2】

【0057】
飽和吸湿率測定方法は、つぎの通りである。
直径100mmの円形フィルム状有機ダイボンディング材をサンプルとし、サンプルを真空乾燥機中で、120℃、3時間乾燥させ、デシケータ中で放冷後、乾燥重量を測定しM1とする。サンプルを85℃、85%RHの恒温恒湿槽中で吸湿してから取り出し、すばやく秤量して秤量値が一定になったとき、その重量をM2とする。
【0058】
[(M2-M1)/(M1/d)]×100=飽和吸湿率(vol%)
として、飽和吸湿率を算出した。dはフィルム状有機ダイボンディング材の密度である。
【0059】
<実施例3>
ポリイミドF100g及びエポキシ樹脂10gに、溶媒としてジメチルアセトアミド140g、シクロヘキサノン140gを加えて溶解させる。ここに、銀粉74gを加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0060】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で80℃から120℃の温度に加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、表3に示す残存揮発分のダイボンディングフィルムを製造した。ただし、120℃より乾燥温度が高い場合には、OPPフィルム上で80℃、30分乾燥させた後、フィルム状有機ダイボンディング材をOPPフィルムからはく離し、これを鉄枠にはさんで固定してから、乾燥機中であらためて加熱し、乾燥させた。
【0061】
リードフレームのタブ上に、表3のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、温度230℃、圧力0.6gf/mm^(2)、時間1秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFPパッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0062】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0063】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
【0064】
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表3に示す。なお、銀ペーストは、日立化成工業株式会社製「エピナール」(商品名)を使用した。
【0065】
【表3】

【0066】
残存揮発分測定方法は、つぎの通りである。
50×50mmの大きさのフィルム状有機ダイボンディング材をサンプルとし、サンプルの重量を測定しM1とし、サンプルを熱風循環恒温槽中で200℃2時間加熱後、秤量してM2とし、
[(M2-M1)/M1]×100=残存揮発分(wt%)
として、残存揮発分を算出した。
【0067】
<実施例4>
ポリイミドD100g及びエポキシ樹脂10gに、溶媒としてジメチルアセトアミド140g、シクロヘキサノン140gを加えて溶解させる。ここに、銀粉74gを加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0068】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で80℃から120℃の温度に加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、表5に示すボイド体積率のダイボンディングフィルムを製造した。
【0069】
ただし、120℃より乾燥温度が高い場合には、OPPフィルム上で80℃30分乾燥させた後、フィルム状有機ダイボンディング材をOPPフィルムからはく離し、これを鉄枠にはさんで固定してから、乾燥機中であらためて加熱し、乾燥させた。
【0070】
ここで、ボイド体積率とは、半導体素子を支持部材に接着した段階でダイボンディング材中及びダイボンディング材と支持部材の界面に存在するボイドのボイド体積率である。
【0071】
リードフレームのタブ上に、表4のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、温度300℃、圧力12.5gf/mm^(2)、時間5秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFPパッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0072】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0073】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
【0074】
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表4に示す。なお、銀ペーストは、日立化成工業株式会社製「エピナール」(商品名)を使用した。
【0075】
【表4】

【0076】
ボイド体積率測定方法は、つぎの通りである。
リードフレームとシリコンチップとをフィルム状有機ダイボンディング材で接着し、サンプルを作成し、軟X線装置を用いて、サンプル上面から観察した画像を写真撮影した。写真のボイドの面積率を画像解析装置によって測定し、上面から透視したボイドの面積率=ボイドの体積率(%)とした。
【0077】
<実施例5>
表5に示すポリイミド100g及びエポキシ樹脂10gに、有機溶媒280gを加えて溶解させる。ここに、銀粉を所定量加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0078】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム;二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、表5に示す組成、ピール強度のフィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
【0079】
ここでピール強度は、半導体素子を支持部材にフィルム状有機ダイボンディング材を介して接着した段階でのフィルム状有機ダイボンディング材のピール強度である。
【0080】
リードフレームのタブ上に、表5のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、No.1?5については、温度300℃、圧力12.5gf/mm^(2)、時間5秒で、No.6?10については、温度230℃、圧力0.6gf/mm^(2)、時間1秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFPパッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0081】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0082】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
なお、ピール強度はつぎのようにして測定した。
リードフレームのタブ表面等の半導体素子を支持する支持部材に、5×5mmの大きさのシリコンチップ(試験片)をフィルム状有機ダイボンディング材をはさんで接着したものを、240℃の熱盤上に、20秒間保持し、図2に示すように、プッシュプルゲージを用いて、試験速度0.5mm/分でピール強度を測定した。図2において、21は半導体素子、22はフィルム状有機ダイボンディング材、23はリードフレーム、24はプッシュプルゲージ、25は熱盤である。尚、この場合は240℃、20秒間に保持して測定したが、半導体装置の使用目的によって半導体装置を実装する温度が異なる場合は、その半導体装置実装温度で保持して測定する。
【0085】
<実施例6>
ポリイミドE100g及びエポキシ樹脂10gに、有機溶媒280gを加えて溶解させる。ここに、銀粉を所定量加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0086】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム;二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、フィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
【0087】
リードフレームのタブ上に、表6の大きさのフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、温度300℃、圧力12.5gf/mm^(2)、時間5秒で、半導体素子をマウントし、ワイヤボンディングを行い、封止材(日立化成工業株式会社製、商品名CEL-9000)でモールドし、半導体装置を製造した(QFPパッケージ14×20×1.4mm、チップサイズ8×10mm、42アロイリードフレーム)。
【0088】
封止後の半導体装置を85℃、85%RHの恒温恒湿器中で168時間処理した後、IRリフロー炉で240℃、10秒加熱する。
【0089】
その後、半導体装置をポリエステル樹脂で注型し、ダイヤモンドカッターで切断した断面を顕微鏡で観察して、次式によりリフロークラック発生率(%)を測定し、耐リフロークラック性を評価した。
(リフロークラックの発生数/試験数)×100=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表6に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
<実施例7>
ポリイミドF100g及びエポキシ樹脂10gに、有機溶媒280gを加えて溶解させる。ここに、銀粉を所定量加えて、良く撹拌し、均一に分散させ、塗工用ワニスとする。
【0092】
この塗工ワニスをキャリアフィルム(OPPフィルム;二軸延伸ポリプロピレン)上に塗工し、熱風循環式乾燥機の中で加熱して、溶媒を揮発乾燥させ、フィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
【0093】
リードフレームのタブ上に、表7の250℃での弾性率のフィルム状有機ダイボンディング材を160℃で加熱貼付け、フィルム状有機ダイボンディング材を貼り付けたリードフレームへ、表7のダイボンディング条件で、半導体素子をマウントしたところ、表7のピール強度であった。
【0094】
【表7】

【0095】
フィルム弾性率(MPa)測定法:
(株)東洋精機製作所社製レオログラフソリッドS型を用いて、昇温速度5℃/min,周波数10Hzで、動的粘弾性を測定し、250℃における貯蔵弾性率E’を弾性率とした。
ピール強度測定法:
実施例5と同じである。
【0096】
【発明の効果】
本発明は、フィルム状有機ダイボンディング材を使用し、リフロークラックが発生せず、信頼性に優れる半導体装置及びその製造法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【図2】プッシュプルゲージを用いてピール強度を測定する方法を説明する正面図である。
【図3】ダイパッド部を有するリードフレームの一例の平面図である。
【符号の説明】
1…フィルム状有機ダイボンディング材、2…カッター、4…圧着子、5…リードフレーム、6…ダイパッド部、7…熱盤、8…半導体素子、9…封止樹脂、21…半導体素子、22…フィルム状有機ダイボンディング材、23…リードフレーム、24…プッシュプルゲージ、25…熱盤、40…リードフレーム、41…ダイパッド部。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-08-09 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2007-08-24 
出願番号 特願2000-43233(P2000-43233)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (H01L)
P 1 113・ 536- YA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川真田 秀男  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 徳永 英男
國方 康伸
登録日 2000-10-06 
登録番号 特許第3117971号(P3117971)
発明の名称 ダイボンディング材及び接着方法  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 三好 秀和  
代理人 牧村 浩次  
代理人 三好 秀和  

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