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審決分類 |
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 A61H 審判 全部無効 2項進歩性 A61H 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) A61H 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) A61H |
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管理番号 | 1200668 |
審判番号 | 無効2008-800088 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-05-14 |
確定日 | 2009-05-25 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4031304号発明「マッサージ機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯 (1)本件特許第4031304号の請求項1?4に係る発明についての出願は、平成14年7月10日に出願され、平成19年10月26日にそれらの発明について特許権の設定登録がされたものである。 (2)これに対し請求人は、平成20年5月14日に本件無効審判を請求し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出し、本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めた。 (3)被請求人は、平成20年8月12日に答弁書を提出するとともに、訂正請求書を提出して訂正を求めた。 (4)その後請求人より平成20年9月26日付け弁駁書、平成21年2月12日差出日で口頭審理陳述要領書及び証拠方法として甲第8号証ないし甲第10号証が提出され、被請求人から平成21年2月10日付け口頭審理陳述要領書が提出され、平成21年2月19日に口頭審理が実施された。 2 訂正の可否 (2-1)訂正の内容 平成20年8月12日付け訂正請求は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は以下の訂正事項1?3のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。以下同様。) (i)訂正事項1 請求項1の「座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御したことを特徴とするマッサージ機。」との記載を、「座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御するものであり、足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御することを特徴とするマッサージ機。」と訂正する。 (ii)訂正事項2 明細書の段落【0007】を、「【課題を解決するための手段】(1)本発明は、座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御し、足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御することを特徴とする。」と訂正する。 (iii)訂正事項3 明細書の段落【0091】の、「・・・なお、足載部1が上昇限界位置に達した後は、それ以上昇することがないように、足載部用アクチュエータ51などが空転するなどの制御を行うことは当然である。」を、「・・・なお、足載部1が上昇限界位置に達した後は、それ以上上昇することがないように、足載部用アクチュエータ51などが空転するなどの制御を行うことは当然である。」と訂正する。 (2-2)訂正の可否に対する判断 (i)これらの訂正事項について検討すると、上記訂正事項1は、請求項1に「足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始する時は、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御する」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 上記訂正事項2は、訂正事項1に伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。 上記訂正事項3は、「以上昇」が「以上上昇」であるべきことは明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する。 そして、いずれの訂正事項も、訂正後の技術事項が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (ii)したがって、平成20年8月12日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3 請求人の主張 請求人は、訂正後の本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明4」という。)の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明1?3は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明4は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1?4の特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出している。 [証拠方法] 甲第1号証:特許第4031304号公報(本件特許公報) 甲第2号証:特開平9-56766号公報 甲第3号証:特開2002-65786号公報 甲第4号証:特開2000-237256号公報 甲第5号証:特開平2-144012号公報 甲第6号証:特開平11-319010号公報 甲第7号証:平成19年5月16日付拒絶理由通知書 甲第8号証:特開平11-47210号公報(周知の技術の例) 甲第9号証:特開平11-9634号公報(周知の技術の例) 甲第10号証:特開平8-71113号公報 4 被請求人の主張 一方、被請求人は、本件特許発明1?4は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当せず、本件特許発明1?4の特許は無効とされるべきでない旨主張している。 5 本件特許発明 本件特許発明1?4は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御するものであり、足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御することを特徴とするマッサージ機。 【請求項2】 前記足載部の位置を変動可能とし、前記足載部の位置変動に追従して使用者の膝上部分が動くことを防止する移動抵抗手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。 【請求項3】 前記移動抵抗手段は、前記座部の前側上部位置で、使用者の大腿部下部を持ち上げることのできるコブ状隆起形成部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。 【請求項4】 前記移動抵抗手段は、前記座部の左右及び中央にエアセルを配設して構成し、同エアセルにより、使用者の大腿部を左右から押圧して保持可能としたことを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。」 6 甲各号証の記載内容 請求人が本件特許発明1に対する無効理由の根拠とする甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証には、図面と共にそれぞれ次の事項が記載されている。 (甲第2号証) (ア)「【発明の属する技術分野】この発明は、例えば座部、背もたれ部等に設けた複数の袋体にコンプレッサー等からなるエアー供給手段から圧搾空気を給排気して、前記袋体を膨縮してマッサージを行う椅子式エアーマッサージ機等のエアーマッサージ機に関する。」(段落【0001】) (イ)「また、前記椅子本体1には座部2の前方に位置して脚載置台40が設けられている。この脚載置台40は図3に示すように椅子本体1の肘掛け部4内に設けられた前記両支持枠13の前部上方の角部に設けた軸受部13aとこの軸受部13aに取り付けられた押え板13bとによって回動可能に取り付けられた回動軸40aによって上下方向に回動自在に取り付けられている。・・・」(段落【0013】) (ウ)「また、前記椅子本体1の両肘掛け部4内には上記実施の形態と同様に一対の支持枠13、13が設けられており、この両支持枠13の前部上方の角部に設けた軸受部13aとこの軸受部13aに取り付けられた押え板13bとによって回動可能に取り付けられた回動軸40aによって上下方向に回動自在に取り付けられて脚載置台140が設けられている。・・・そして、前記両側壁141a、141bにはエアーコンプレッサー30からのエアーの給排気によって膨縮する袋体146a、146bが配設されている。また、前記中央壁141cの両側には前記袋体146a、146bにそれぞれ対向してエアーコンプレッサー30からのエアーの給排気によって膨縮する袋体147a、147bが配設されている。・・・」(段落【0030】) (エ)「・・・つまり脚載置台140を下方に回動させる際には脚部を袋体146aと147aおよび146bと147bによって圧縮した状態として、また、脚載置台140を上方に回動させる際は袋体146aと147aおよび146bと147bを収縮させ脚部を弛緩させた状態として、脚載置台140を回動させることにより膝部の屈伸と脚部の圧縮弛緩とをなすモードである。なお、脚載置台140を下方に回動させる際には脚部を袋体146aと147aおよび146bと147bによって圧縮した状態とすることは、マッサージと同時に脚部あるいは膝部近傍の筋肉が引っ張られいわゆるストレッチ効果が生じ、これによってマッサージ効果が高められるものであり、また、袋体146aと147aおよび146bと147bによる脚部の圧縮を急速に解除して弛緩状態とすることは圧縮状態時に圧縮されていた血管が急速に解放されることから血行つまり血液の流れが促進され、この点からもマッサージ効果が高められるものである。」(段落【0040】) 上記記載事項からみて、甲第2号証には次の発明が記載されている。 「座部の前方に位置して、エアーの吸排気によって膨縮してマッサージ効果を有する袋体を配設した脚載置台が設けられたエアーマッサージ機において、脚載置台を下方に回動させる際には脚部を袋体によって圧縮した状態として、また、脚載置台を上方に回動させる際は袋体を収縮させ脚部を弛緩させた状態として、脚載置台を回動させることにより膝部の屈伸と脚部の圧縮弛緩とをなすモードを備えたエアーマッサージ機。」 (甲第3号証) (オ)「【発明の属する技術分野】本発明は、空気袋の膨張収縮により人体の下腿部のマッサージを行う椅子型のマッサージ機に関するものである。」(段落【0001】) (カ)「そして、本実施形態においては、人体のふくらはぎ部5を圧迫するための空気袋1a乃至足底部6を圧迫するための空気袋1bの膨張収縮に合わせて足のせ台2を起倒させるように制御されるのであるが、例えば、足のせ台2の空気袋1a乃至空気袋1bを膨張させた状態の信号(電気的信号)を受けてモータ25を駆動して図8(a)(b)のように足のせフレーム部20を回動して図6(a)(b)のように人体の膝及び足首の伸縮開放運動を効果的に行うものである。この場合、足のせ台2の空気袋1a乃至空気袋1bを膨張させた状態でモータ25の正転・逆転を繰り返すようにしてもよく、繰り返した場合には人体の膝及び足首の伸縮開放運動を繰り返して行えるものである。」(段落【0020】) (甲第10号証) (キ)「【産業上の利用分野】本発明は肘または膝の関節の機能に障害を有する患者の、腕または脚の関節の屈伸訓練装置の制御方法に関する。」(段落【0001】) (ク)「・・・訓練中に患者の屈伸機能が向上して屈伸端で前記回動アームに作用する反力が、ダイレクトティーチング時に設定した反力よりも低下すると、該反力の低下を告げる前記ロードセルの信号を入力して、前記制御回路が出力する信号によって前記モータの回動範囲、従って前記回動アームの回動範囲が拡大し、訓練中に患者の屈伸機能が低下して屈伸端で前記回動アームに作用する反力が、ダイレクトティ-チング時に設定した反力よりも上昇すると、反力の上昇を告げるロードセルの信号を入力して前記制御回路が出力する信号によって前記モータの回動範囲、従って前記回動アームの回動範囲が縮小して、前記ロードセルが最初に感知した反力を保つ制御。」(段落【0006】) (ケ)「図3及び図4は屈伸訓練のため、腕に与える屈伸角度の例を示す。図3において、患者が(A)に示す様に自力では120度しか屈伸できないときは療法士又は医師は回動アーム2に固定した患者の腕を、(B)に示す様に関節に無理を生ずることなく反力Fが腕に生じる120+α度屈伸させてダイレクトティーチングを行い、モータ駆動によって120+α度で屈伸を繰返すうちに、関節の可動域が改善されて図4に示す様に屈伸端における反力が、ダイレクトティーチングの際生じた反力Fよりも小さいF1 に低下したとき、そのまま屈伸を繰返しても訓練効果がないので、関節の屈伸訓練装置の本発明の制御方法では、屈伸端における反力F1 を感知したロードセル4の出力が制御回路9に入力され、制御回路9の出力によって、モータ8の回動角度が拡大され、回動アーム2はβ度回動範囲が120+α+β度に拡大される。図示しないが脚の屈伸訓練を行う場合も同様である。・・・」(段落【0012】) 7 当審の判断 (1)本件特許発明1について (i)対比 本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、後者の「座部の前方に位置して」は前者の「座部の前側に」に相当し、以下同様に、「脚載置台」は「足載部」に、「エアーマッサージ機」は「マッサージ機」に、それぞれ相当する。また、後者の「マッサージ効果を有する袋体」も脚部に対しても作用するから「足マッサージ用のエアセル」に相当している。そして、後者の「袋体」もエアーの吸排気によって膨縮するものであるから、「脚載置台を下方に回動させる際には脚部を袋体によって圧縮した状態として、また、脚載置台を上方に回動させる際は袋体を収縮させ脚部を弛緩させた状態として、脚載置台を回動させることにより膝部の屈伸と脚部の圧縮弛緩とをなすモードを備え」ることは、「前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御する」ことに相当している。 そうすると、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とは、本件特許発明1の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御するマッサージ機。 (相違点) 本件特許発明1においては、「足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御する」のに対し、甲第2号証に記載された発明においては、そのような制御を行っていない点。 (ii)判断 上記相違点について検討する。 甲第10号証には、上記記載事項及び図面からみて、 「関節の屈伸訓練装置において、訓練中に患者の屈伸機能が向上して屈伸端で前記回動アームに作用する反力が、ダイレクトティーチング時に設定した反力よりも低下すると、該反力の低下を告げる前記ロードセルの信号を入力して、前記制御回路が出力する信号によって前記モータの回動範囲、従って前記回動アームの回動範囲が拡大」して「前記ロードセルが最初に感知した反力を保つ」点、 及び屈伸角度の具体例として、 「患者が自力では120度しか屈伸できないときは関節に無理を生ずることなく反力Fが腕に生じる120+α度屈伸させてダイレクトティーチングを行い、モータ駆動によって120+α度で屈伸を繰返すうちに、関節の可動域が改善されて屈伸端における反力が、ダイレクトティーチングの際生じた反力Fよりも小さいF1 に低下したとき、制御回路9の出力によって、モータ8の回動角度が拡大され、回動アーム2はβ度回動範囲が120+α+β度に拡大される」点、及び 「脚の屈伸訓練を行う場合も同様である」点、が記載されている。 しかしながら甲第10号証には、「足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始する」こと、及びそのときは、「下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御する」こと自体について記載がなく、それを示唆する記載もない。 そして、他の甲第3?9号証にも、上記相違点についての記載もそれを示唆する記載もない。 請求人はこの点に関して、甲第10号証に記載された「屈伸訓練装置では、回動アームの位置は時間の関数として記憶されており、回動アームの回動角度を増して屈伸範囲を拡大していき、下降開始位置を徐々に上げている。」、「甲第10号証には、脚を同じ回動角度で屈伸し続けると、脚からの反力が低下し、低下した反力を増加させるべく回動角度を段階的に増して屈伸範囲を徐々に大きくすることが記載されている。」、「甲第10号証の屈伸訓練装置は、膝を屈伸するものであり、その構成を膝を屈伸させてマッサージするマッサージ機に適用することに何ら困難性がない。」と主張し、甲第2号証に記載された発明に甲第10号証に記載された発明を適用することにより、相違点の後段に係る本件特許発明1の発明特定事項に想到することが容易である旨の主張をしている。 しかしながら、甲第10号証に記載された屈伸訓練装置は、関節の機能からみても、また図面からも明らかなように、腕や脚を屈する方向の角度を変化させるものであって、伸ばす方向の角度を変化させることを意図していないから、甲第10号証に記載された技術事項を甲第2号証に記載された発明に適用しても、「足が水平状態となる位置(伸ばす方向)に至るように制御する」ことにはならない。 仮に甲第2号証に記載された発明に適用する際に、脚を伸ばす方向の角度変化に用いることができるとしても、甲第10号証に記載された屈伸訓練装置は、上記記載事項に示されるとおり、ダイレクトティーチング時に設定した反力を保つために回動アームの回動範囲を拡大するが、そもそも回動端の位置を変化させることを目的としていないから、甲第10号証には、「下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御する」点に想到させうるような開示はない。 したがって、上記請求人の主張は採用できない。 また、請求人は足が水平状態となる位置を除く初期位置から足載部が下降を開始する点について、甲第3号証に記載されていると共に周知の技術であると主張している。 しかしながら、請求人の根拠とする甲第3号証の図8(b)は、フレーム部20が水平位置よりやや傾いた状態で位置しているものであるが、上記記載事項(カ)からみて、図8(b)は図6(b)と対応しており、足部で言えば水平状態となっているから、足が水平状態となる位置を除く初期位置から足載部が下降を開始する点が記載されているとは言えない。 また、周知の技術であることを示す証拠として提出された甲第8号証に記載された足載置台50は、水平状態と垂直状態とに位置する点が記載されているのみであるし、同じく甲第9号証に記載された脚載置台50は、マッサージ中に回動するものではないから、いずれも、足が水平状態となる位置を除く初期位置から足載部が下降を開始する点を開示しているとは言えず、この点が周知の技術であるとも言えない。 よって、この点についての請求人の主張も採用できない。 以上の点からみて、本件特許発明1は、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、他の甲各号証を考慮しても、本件特許発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件特許発明2?4について 本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を引用し、さらにその発明特定事項を限定し、あるいは他の発明特定事項を付加したものである。本件特許発明1が甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明1の発明特定事項を全て具備した本件特許発明2及び3は、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、他の甲各号証を考慮しても、本件特許発明2及び3は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 本件特許発明4についても、同様に甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証、甲第10号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、他の甲各号証を考慮しても、本件特許発明4は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 8 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1?4の特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 マッサージ機 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御するものであり、足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御することを特徴とするマッサージ機。 【請求項2】 前記足載部の位置を変動可能とし、前記足載部の位置変動に追従して使用者の膝上部分が動くことを防止する移動抵抗手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。 【請求項3】 前記移動抵抗手段は、前記座部の前側上部位置で、使用者の大腿部下部を持ち上げることのできるコブ状隆起形成部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。 【請求項4】 前記移動抵抗手段は、前記座部の左右及び中央にエアセルを配設して構成し、同エアセルにより、使用者の大腿部を左右から押圧して保持可能としたことを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、足載部を具備するマッサージ機に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、図15に示すように、座部200と背もたれ部300とを備え、同背もたれ部300をリクライニング可能とするとともに、前記座部200に、所謂オットマンと呼ばれる足載部100を上下位置決め自在に連設したマッサージ機Bがあった。400は背もたれ部300内に上下移動自在に配設したマッサージユニットであり、腰、背中、肩、首などのマッサージが可能である。 【0003】 かかるマッサージ機Bに設けられた足載部100は、通常、使用者の両足を包み込めるように凹状に形成するとともに、中央部に比較的厚めの仕切壁110を突設して左右の足をそれぞれ独立して保持可能とし、さらに、図示しないエアセルやバイブレータなどの足用マッサージ装置を設け、前記したマッサージユニット400による腰、背中、肩、首のマッサージに加えて、足(膝下)のマッサージを可能としたものが多い。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、上記した従来のマッサージ機Bにおける足載部100によるマッサージに関しては、背もたれ部300に設けたマッサージユニットによる腰、背中、肩、首のマッサージ機能の付け足し的なものでしかなく、足を効果的にマッサージするための工夫などが考慮されたものではなかった。 【0005】 また、上記従来のマッサージ機Bでは、通常の腰掛け姿勢で腰のマッサージを行う場合、腰が前方に移動しがちであり、マッサージ力が腰に十分に加わらない場合があった。 【0006】 本発明は、上記課題を解決することのできるマッサージ機を提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】 (1)本発明は、座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御し、足が水平状態となる位置を除く初期位置に停止した足載部が前記初期位置から下降を開始するときは、下降して上昇する1サイクルの間に、足載部の下降時間より上昇時間を長くするように差をつけて、その差だけ前記初期位置よりも上昇した位置に足載部を復帰させ、かかるサイクルの繰り返しによって足載部を足が水平状態となる位置に至るように制御することを特徴とする。 【0008】 (2)本発明は、上記(1)のマッサージ機において、前記足載部の位置を変動可能とし、前記足載部の位置変動に追従して使用者の膝上部分が動くことを防止する移動抵抗手段を設けたことを特徴とする。 【0009】 (3)本発明は、上記(2)のマッサージ機において、前記移動抵抗手段は、前記座部の前側上部位置で、使用者の大腿部下部を持ち上げることのできるコブ状隆起形成部を設けて構成したことを特徴とする。 【0010】 (4)本発明は、上記(2)のマッサージ機において、前記移動抵抗手段は、前記座部の左右及び中央にエアセルを配設して構成し、同エアセルにより、使用者の大腿部を左右から押圧して保持可能としたことを特徴とする。 【0013】 【発明の実施の形態】 本発明は、座部の前側に、足用マッサージ機能部を備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記足用マッサージ機能部の駆動中に、前記足載部位置を変動可能としたものである。 【0014】 すなわち、足載部において、単に足をマッサージするのではなく、マッサージ中に足載部の位置を移動、すなわち位置変動させるようにして多様なマッサージ形態を実行可能とし、足のマッサージ効果をより高めるようにしている。 【0015】 足用マッサージ機能部としては、エアセルやバイブレータなどから構成することができる。 【0016】 上記構成において、足用マッサージ機能部の駆動中に、例えば、上記足載部を上下若しくは左右に首振り可能とすることができる。 【0017】 例えば、上記足用マッサージ機能部によるマッサージを行っているときに、足載部を上下に首振りさせた場合、足は屈伸運動することになるので、マッサージとの複合作用によって血行促進が図られマッサージ効果が向上する。 【0018】 また、足載部の上下首振りによって足が屈伸されることにより、マッサージ機能部とマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになるので、足載部と座部との連結角度を大きくする(足が伸びた状態)につれて、マッサージ機能部は、足に対して足首側から大腿部側へ相対的に移動することになる。したがって、マッサージ中に足載部の位置を移動させることで、足首から大腿部にかけてマッサージ施療を移動させながら実行することができ、広範囲のマッサージが可能となる。当然ながら、足載部と座部との連結角度を小さくすれば(足が曲がった状態)、マッサージ機能部は、上述した場合とは逆に、足に対して大腿部側から足首側へ相対的に移動することになる。 【0019】 このように、足用マッサージ機能部の駆動中に、前記足載部位置を変動可能とすることによって、広範囲にわたる効果的な足マッサージが可能となる。 【0020】 特に、足用マッサージ機能部がエアセルで構成されている場合、エアセルを膨らませて足をホールド状態として、その後に足載部を移動させるようにすれば、足の伸ばし効果も生起することになり、より多彩な足マッサージが可能となる。 【0021】 また、足載部を左右に首振りさせた場合でも、やはりマッサージ機能部とマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになり、マッサージ範囲を拡張することが可能となり、さらに、上体は動かずに、足のみが横方向へ動くことで、足の付け根近傍のほぐし効果が得られる。 【0022】 ところで、足載部の位置変動によってマッサージ効果を高める場合、その効果をより高めるためには、下肢における膝上部分までが足載部に追従して移動する動作を抑制することが好ましい。そのために、上記足載部の位置変動に追従して使用者の膝上部分が動くことを防止する移動抵抗手段を設けることが好ましい。 【0023】 かかる移動抵抗手段としては、膝上の大腿部を左右から挟んで保持したり、座部の大腿部の裏面側に位置する個所にコブ状の隆起を形成して、大腿部の動きを規制するなどの手段が考えられる。かかる移動抵抗手段により、マッサージ対象となる足への負荷が軽くなりすぎることを防止して、マッサージ効果をより高めることができる。 【0024】 また、上記足載部の位置変動の形態としては、足載部を前後スライド可能とすることもできる。 【0025】 この場合においても、マッサージ機能部とマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになる。 【0026】 したがって、足載部の前方移動距離を大きくするにつれて(離隔方向へのスライド量が大)、マッサージ機能部は、足に対して大腿部側から足首部側へ相対的に移動することになり、逆に、足載部を座部に近接するように移動すれば(離隔方向へのスライド量は小)、マッサージ機能部は、逆に足に対して足首側から大腿部側へ相対的に移動することになり、このように足載部を往復スライド動作させることで、足首から大腿部にかけてマッサージ施療を移動させながら広範囲の足マッサージを実行することができる。 【0027】 このように、足用マッサージ機能部の駆動中に、前記足載部位置をスライドさせて変動することによっても、やはり多彩な足マッサージが可能となるのである。そして、この場合であっても、足用マッサージ機能部をエアセルで構成した場合、エアセルを膨らませて足をホールド状態として、その後に足載部をスライドさせることで、足の伸ばし効果も生起する。 【0028】 ところで、足載部位置の変動という態様は、上述してきた首振り動作やスライド動作のみに限定されるものではなく、様々な態様が考えられる。 【0029】 また、上述したマッサージ機において、足用マッサージ機能部をエアセルで構成した場合、足のマッサージ効果を増大させるために、下記の制御を実行することができる。 【0030】 すなわち、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御するものである。 【0031】 この場合、足載部の降下中は、しっかりとホールドされた足は伸ばされる方向に負荷が加わることになり、このときに足伸ばし効果が生起されるが、その後、足のホールド状態を解除して緊張を解いた状態で足載部は上昇するので、ここでは使用者は足を含めてリラックスした状態となっている。このように、足載部の下降、上昇の間に足に対する緊張度合い、すなわち足への押圧力が大きく変化するので、前記足伸ばし効果をより増大させるとともに、足に対して常に負荷が加わることもないので快適な使用感を得ることができる。 【0032】 また、例えば揉み玉などを具備するマッサージ機能部を備えた背もたれ部が座部の後側に連設されているマッサージ機とした場合、下記の制御を実行することで、特に腰のマッサージ効果を増大させることができる。 【0033】 すなわち、前記背もたれ部のマッサージ機能部を駆動して腰をマッサージする際に、(a)前記座部のエアセルに給気して膨張させ、大腿部を上方移動させるか、若しくは大腿部をホールドして腰の移動を阻止する制御、(b)前記足載部のエアセルに給気して膨張させ、足をホールドして腰の移動を阻止する制御のうち、少なくともいずれか一方の制御を実行するものである。 【0034】 この場合、いずれの制御を実行するにしても、あるいは両方の制御を同時に実行するにしても、使用者の身体が前方へ、すなわち腰マッサージのために加えられる力の作用方向へ逃げることがなくなるので、効果的な腰マッサージを行うことができる。 【0035】 【実施例】 (第1実施例) 以下、本発明の第1実施例を、図面を参照しながら説明する。図1に本第1実施例に係るマッサージ機Aの側面視による説明図、図2は同マッサージ機Aの要部を示す説明図、図3は同要部における動作説明図である。 【0036】 図1に示すように、マッサージ機Aは、座部2の前端部に足載部1を、後端部に背もたれ部3をそれぞれ連設した構成としており、座部2の下部には同座部2を支持する基台部4を設けている。前記座部2、足載部1、背もたれ部3は、それぞれクッション材を合皮などの表面カバーで覆った構成とし、使用者Mが座したときの快適性を高めている。 【0037】 なお、図1中、M1は使用者の足、21は座部2の両側に設けた肘掛であり、その前側上面には本マッサージ機Aの操作系全般を司る操作パネルPを配設している。なお、同操作パネルPは着脱式のリモコンタイプであってもよい。41は前記基台部4の下部に設けた脚部、41aは同脚部41の後端に設けたキャスタである。 【0038】 また、前記基台部4内には、前記座部2の裏面から下方向けて支持アーム22を突設しており、同支持アーム22の先端部に設けた座部用枢支部22aを中心に座部2を揺動自在に支持している。すなわち、水平面に対する傾斜角度が変化するように前記座部2を可動とするものであり、座部2は前高後低方向あるいは前低後高方向にその姿勢を変動することができる。 【0039】 かかる座部2の後端に連設された前記背もたれ部3は、水平面(椅子設置面G)に対する角度が可変となるように、座部2との枢支連結部11を中心に上下回動可能となっている。すなわち、背もたれ部3は所謂リクライニング自在に構成されている。 【0040】 また、足載部1についても、座部2との枢支連結部10を中心に上下首振り可能、すなわち上下方向へ回動自在に構成している。10aは足載部1に基端を取付け、他端部を前記枢支連結部10に回動自在に連結した略L字状の連結アームである。 【0041】 前記足載部1及び前記背もたれ部3の回動動作、さらに前記座部2の姿勢変動を実現するために、本実施例では、前記基台部4内に足載部1、座部2、背もたれ部3の保持姿勢を変更可能な姿勢変位機構5を配設している。そして、図示しない制御部に電気的に接続した前記操作パネルPの操作によって、同姿勢変位機構5を駆動して前記足載部1、座部2、及び背もたれ部3を所望する姿勢に動かせるようにしている。 【0042】 かかる姿勢変位機構5は、図示するように、座部2と脚部41との間を座部用アクチュエータ52により連結するとともに、前記支持アーム22の中央近傍には、先端を足載部1に連結した足載部用アクチュエータ51と、先端を背もたれ部3に連結した背もたれ部用アクチュエータ53の各基端部を枢着している。51aは足載部用アクチュエータ51の先端部と足載部1との連結部、52aは座部用アクチュエータ52と座部2との枢支連結部、53aは背もたれ部用アクチュエータ53の先端部と背もたれ部3との連結部、54は前記足載部用アクチュエータ51と背もたれ用アクチュエータ53との共通枢支部である。 【0043】 なお、上記各アクチュエータ51,52,53は、空気圧や油圧によるシリンダ機構、あるいはモータとラックアンドピ二オンなどからなる機構など適宜採用することができる。あるいは、姿勢変位機構5全体をリンク機構などによる機械式とすることも可能である。 【0044】 本マッサージ機Aでは、主たるマッサージ動作を実行するマッサージユニット6を、上記背もたれ部3内に図示しない昇降用モータにより上下昇降自在に配設している。図中、61はマッサージユニット6の昇降を案内するガイドレールである。また、背もたれ部3の表面側には、図示しない複数のエアセルを配設し、エアの給排により膨縮してエアマッサージを行えるようにしている。 【0045】 前記マッサージユニット6内には、使用者Mに直接当接して多彩なマッサージ動作を行う揉み玉駆動ユニット7を収納配設しており、同揉み玉駆動ユニット7は、左右一対の施療子である揉み玉71,71を図示しない叩きモータにより前後方向に揺動させることによって行う叩き機能と、前記揉み玉71,71をこれも図示しない揉み用モータによって偏心回動させることによって行う揉み機能とを実行可能としている。しかも、同揉み玉駆動ユニット7は、同じく図示しない進退用モータにより、背もたれ部3の表側(使用者と接する側)に向けて進退移動可能に構成されており、強力な指圧動作、複雑な3D揉み動作を実行可能としている。 【0046】 なお、かかるマッサージユニット6の昇降量、揉み玉駆動ユニット7の進退量及び揉み玉71,71の回動量は、前記した操作パネルPを介して制御可能としている。 【0047】 さらに、本マッサージ機Aは、足載部1に足用マッサージ機能部としてのエアセルSを配設しており、前記マッサージユニット6により使用者Mの腰、背中、肩、首の上肢をマッサージ可能とするとともに、足についてもエアセルSによりエアマッサージを実行可能としている。前記エアセルSは、背もたれ部3に配設したエアセル同様、図示しないエアポンプに所要の制御弁などを介して連通連結しており、前記操作パネルを操作することでエアを給排し、エアセルSの膨縮によりエアマッサージが可能となっている。 【0048】 本実施例においては、エアセルSによるエアマッサージは操作パネルPの操作によって行えるが、このとき、エアセルSの給排タイミングが適宜設定されたマッサージプログラムを呼び出してマッサージを実行することも、またエアセルSの給排タイミングを手動により任意に決定することも可能となっている。 【0049】 ところで、本実施例における足載部1は、従来技術の項で説明したマッサージ機B(図15参照)同様、使用者Mの両足M1,M1を包み込めるように凹状に形成するとともに、中央部に比較的厚めの仕切壁を突設し、さらに、同仕切壁内側にも前記エアセルSを配設している。したがって、左右の足M1をそれぞれ独立して保持可能であり、なおかつ足M1の両側からエアセルSにより押圧可能な構成としている。なお、足載部1の構成としては、上述の構成が好ましいところではあるが、これに限定されるものではなく、例えば平板状の構成であってもよい。 【0050】 上記構成のマッサージ機Aにおいて、本発明の要旨となるのは、前記足用マッサージ機能部の駆動中に、前記足載部1の位置を変動可能としたことにある。 【0051】 すなわち、前記した図示しない制御部内には、足載部1の位置変動制御プログラムが格納されており、操作パネルPの操作によって足用マッサージ機能部として設けた前記エアセルSによるエアマッサージを実行した場合、制御部は前記位置変動制御プログラムを呼び出して実行し、所定のタイミングで足載部1の位置を変動させるようにしている。 【0052】 本実施例では、足載部1の初期位置が例えば座部2に対して略45°の位置であれば(図1参照)、図2の矢印fで示すように降下方向へ回動させ、さらに所定時間経過すると下降位置から略水平方向まで足載部1を上昇方向へ回動させる、所謂首振り動作を行うようにしている。なお、この上下方向への首振り動作における上昇方向と降下方向への切替えを含む回動タイミングなどについては、適宜設定することができる。 【0053】 このように、足載部1において、単に足M1をマッサージするのではなく、マッサージ中に足載部1の位置を移動、すなわち位置変動させることにより、以下に説明するように、足M1のマッサージ効果をより高めることができる。 【0054】 すなわち、上述したように、エアセルSによるエアマッサージを行っているときに、足載部1を上下に首振りさせた場合、足は屈伸運動することになり、この屈伸運動とマッサージとの複合作用によって血行促進が図られ、マッサージ効果が向上するのである。 【0055】 また、足載部1の上下首振りによって足が屈伸された場合、エアセルSとマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになるので、足載部1と座部2との連結角度を小さくする(足が曲がる状態)につれて、エアセルSは、足に対して大腿部側から足首側へ相対的に移動することになる。したがって、マッサージ中に足載部1の位置を移動させることで、足首から大腿部にかけて施療個所を移動させながらマッサージすることができ、広範囲のマッサージが可能となるのである。なお、本実施例では、足載部1は所定のタイミングで首振り動作するようにしているので、足載部1と座部2との連結角度が漸次変化することになり、施療個所も足載部1の位置変化に応じて変化する。 【0056】 かかる施療個所が変動する様子を図3に示す。 【0057】 図中、○で示したのは、エアセルSの略中心位置であり、この中心位置をエアセルSによる施療位置とする。一方、×で示したのは、足載部1が略水平となるまで上方へ回動した位置(実線αで示す位置)においてのエアセルSによる足M1の施療個所である。足載部1が略水平位置(実線αで示す位置)にあるときは、エアセルSの略中心位置(エアセルSによる施療位置)○と、足M1から見た実際の施療個所Xは当然重なっている。 【0058】 しかし、足載部1が降下方向へ回動して、例えば図3における足載部1と座部2との連結角度が小さい位置(実線βで示す位置)に至った場合、施療位置○は足M1に対して相対的にずれており、足M1に対して大腿部側から足首側へ相対的に移動していることが分かる。 【0059】 すなわち、足載部1と座部2との連結角度が小さくなる(足が曲がる状態)につれて(矢印f1)、エアセルSは、足M1に対して実質的に大腿部側から足首側へ相対的に移動する。逆に、足載部1と座部2との連結角度が大きくなる(足が伸びる状態)につれて(矢印f2)、エアセルSは、足M1に対して実質的に足首側から大腿部側へ相対的に移動することになる。 このように、エアセルSによるマッサージ中に、前記足載部1の位置を変動可能とすることによって、エアセルSが足M1に対して実施的に移動するために、より広範囲にわたる足マッサージが可能となるとともに、足M1は屈伸運動を行う結果となって血行促進が図られることになり、より効果的な足マッサージが行えるのである。 【0060】 さらに、本マッサージ機Aによれば、次のような効果をも生起する。 【0061】 すなわち、図3の実線αで示す位置でエアセルSを膨らませ、足M1をしっかりとホールド状態として、その後に足載部1を図3の実線βで示す位置に移動させた場合、足M1はエアセルSで両側からしっかりとホールドされており、なおかつ同エアセルSの位置は足首側へと実施的に移動しようとすることから、足M1の伸ばし効果が生起されることになる。 【0062】 したがって、通常、単に押圧力によるマッサージしか行えないエアセルSを用いていながらも、足伸ばしという新たなマッサージ形態を提供することができるようになり、かかる足伸ばしを含めた複合的な多彩なマッサージを実現することができる。 【0063】 ところで、足載部1の位置を変動させることによってマッサージ効果を高めるためには、下肢における膝上部分の移動を抑制すれば、より効果的である。 【0064】 そのために、本実施例では、足載部1の位置変動に追従して使用者Mの膝上部分M2が動くことを防止する移動抵抗手段を設けている。 【0065】 かかる移動抵抗手段として、例えば、前記座部用アクチュエータ52を利用して、足載部1を下げるときに、座部2の前側を持ち上げて後方へ傾けることが考えられる。かかる手段によれば、足載部1が下降する際に、座部2の前側が上方移動するので、膝上が前方へ移動することを十分に規制することが可能となる。 【0066】 本実施例では、膝上の動きをより確実に規制するために、図1?図3に示すように、座部2の前側上部位置で、使用者Mの大腿部下部を持ち上げることのできるコブ状隆起形成部8を設けている。 【0067】 このコブ状隆起形成部8は、給排されて膨縮する隆起用エアセルS1を座部2内に設け、前記隆起用エアセルS1が膨張したときに、図2に示すように、座部2の表面を隆起させて大腿部下部の裏側に当接させ、大腿部をやや持ち上げた状態で保持する機能を有するものである。 【0068】 このように、隆起用エアセルS1の膨張によるコブ状隆起8aが形成されることによって、これが堰のように機能し、足M1が足載部1の動きに追従して移動する際に、膝上部分までも動くことを可及的に防止し、上記した足伸ばし効果などを十分に生起することが可能となる。 【0069】 また、移動抵抗手段としては、図4に示す構成を採用することもできる。図4(a)は移動抵抗手段における他の例を示す側面視による説明図、図4(b)は同平面視による説明図である。 【0070】 図示するように、この例においては、使用者Mの大腿部を左右方向から押圧して保持可能とした座部用エアセルS2を座部2に配設している。すなわち、同座部用エアセルS2は、図4(b)に示すように、座部2の左右及び中央に配設されており、左右の足M1,M1それぞれを左右からホールド可能としている。図中、1aは足載部1の中央仕切壁、2aは座部2の左右に設けたエアセル配設部であり、同エアセル配設部2aは、座部2の中央へせりだして使用者Mの大腿部に近接するようにして、座部用エアセルS2で大腿部を確実に押圧してホールドできるようにしている。 【0071】 かかる構成によっても、座部用エアセルS2を膨張させることで、足M1が足載部1の動きに追従して移動する際に、膝上部分までも動くことを可及的に防止し、上記した足伸ばし効果などを十分に生起することが可能となる。 【0072】 また、上述してきたエアセルS1,S2を用いた二例の移動抵抗手段は、エアマッサージ用にも兼用できるとともに、給気源などについても足マッサージ用エアセルSと共用化できる。 【0073】 移動抵抗手段のさらなる他の例として、図5に示す構成も考えられる。 【0074】 これは、前述したコブ状隆起8aを機械的に形成可能としたものである。 【0075】 すなわち、図示するように、足載部1と座部2との枢支連結部10に連結している連結アーム10aの先端を後方へ伸延させて座部押圧用レバー部10bを形成し、足載部1が下降回動する際に、同座部押圧用レバー部10bが座部2を下方から押し上げて、座部2内のクッション材を介してコブ状隆起8aを形成するようにしている。 【0076】 かかる構成によっても、やはり、足M1が足載部1の動きに追従して移動する際に、膝上部分までも動くことを可及的に防止し、上記した足伸ばし効果などを十分に生起することが可能となる。 【0077】 ここで、上述した足伸ばし効果を生起させるための制御の一例を、図6を参照しながら以下に説明する。図6では、本マッサージ機Aが前記したエアセルS及び隆起用エアセルS1を具備するものとした場合において、かかるエアセルS,S1の給排タイミングと足載部1の上下首振りタイミングを示したタイミングチャートである。また、上記してきたエアセルSとして、ここでは足の下側を押圧対象とする足下用のエアセルSと、足の上側を押圧対象とする足上用のエアセルS’とに区分して説明する。 【0078】 図6に示すように、フェーズ(Phase)1では、エアポンプを駆動して先ず足下用のエアセルSに給気してこれを膨張させ、使用者Mの足首辺りを押圧する。 【0079】 フェーズ2で一端エアポンプの駆動が停止するが、エアセルSは膨張状態が維持されている。これまでに要する時間T1は略8秒程度とする。 【0080】 そして、フェーズ3においてエアポンプを再度駆動し、足上用のエアセルS’に給気して膨張させ、使用者Mのふくらはぎ辺りを押圧する。エアポンプの再駆動時間T2は略7秒程度とするが、エアポンプの駆動が停止しているフェーズ4?6の間はエアセルS’の膨張状態は維持される。これまでは、使用者Mは足載部1において、足首部分、ふくらはぎ部分がしっかりと押圧された状態となっている。 【0081】 エアセルS’に給気するためのエアポンプの駆動が停止して略1秒(フェーズ4)経過すると、足載部1の下降を開始する(フェーズ5)。ここでは、下降時間T3を1.5秒に設定している。 【0082】 このとき、使用者Mの足M1は足載部1にしっかりとホールドされた状態となっているので、足載部1の下降動作によって足M1が下方へ引っ張られることになり、足伸ばし効果が生起される。 【0083】 足載部1が前記の下降時間T3をかけて降下した位置で停止して所定時間T4(ここでは略2秒とする)すると(フェーズ6)、エアポンプが駆動してエアセルS,S’の排気を開始するとともに、隆起用エアセルS1への給気を開始し、前記エアセルS,S’による足M1の押圧を解除する一方、隆起用エアセルS1を膨張させて大腿部(もも)を上方へ押し上げる(フェーズ6?10)。 【0084】 この間(フェーズ6?10)において、エアポンプが駆動を開始して略1秒経過し、エアセルS,S’による足M1の押圧が確実に解除されると(フェーズ7)足載部1の上昇が開始される(フェーズ8)。このときの上昇時間は、下降時間T3と同時間としてもよいが、ここでは、上昇時間T5を2秒としている。 【0085】 足載部1が前記上昇時間T5をかけて上昇した位置で停止した後、エアポンプが停止されるまでの間(フェーズ9)、隆起用エアセルS1は膨張しつつ大腿部を押し上げているが、エアポンプの駆動が停止してもわずかの間は膨張状態が維持されている(フェーズ10)。 【0086】 その後、エアポンプが再度駆動して、隆起用エアセルS1の排気が行われて萎み、大腿部は自重によって降下する(フェーズ11)。そして、フェーズ12の所定時間をおいて、フェーズ1に戻り、これまでの動作が繰り返されていく。 【0087】 このように、上述した制御によれば、足載部1の降下中は、足M1をエアセルS,S’によってしっかりとホールドしているので、充分に足M1が伸ばされて足伸ばし効果が生起される一方、足載部1を上昇させる場合は、足M1のホールド状態を解除して緊張を解いた状態としているので、ここでは使用者Mは足M1を含めてリラックスした状態となる。、かかる足M1に対する緊張度合いの大きな変化を繰り返していくことから、足伸ばし効果をより増大させるとともに、足M1に対して常に負荷が加わることはなく、快適な足マッサージが可能となる。 【0088】 ところで、足M1の伸ばし作用は、足M1が水平状態にある位置から略15°程度下降させたときに最も効果があるとされている。 【0089】 すなわち、足伸ばし作用を実行するための足載部1の動作は、足M1が水平状態となる位置、すなわち、足載部1の上昇限界位置から下降する動作を実行するように制御することが望ましい。 【0090】 そこで、本実施例では、上述したように、足載部1の下降時間T3と上昇時間T5とに差をつけて、上昇時間T5>下降時間T3となるように制御することによって、足載部1が上下首振り動作を繰り返す間に、足M1が必ず略水平状態となるようにしている。 【0091】 すなわち、足載部1の初期位置がいかなる位置にあっても、下降して上昇する1サイクルの間に、上昇時間T5と下降時間T3の差の分だけ初期位置よりも上昇した位置に復帰することになる。したがって、かかる下降、上昇のサイクルを繰り返す間に、足載部1は上昇限界位置、すなわち、足M1が略水平状態となる位置に至るのである。なお、足載部1が上昇限界位置に達した後は、それ以上上昇することがないように、足載部用アクチュエータ51などが空転するなどの制御を行うことは当然である。 【0092】 また、上述した制御によれば、足下用のエアセルS、足上用のエアセルS’ともに排気が開始されるタイミング(フェーズ7)に合わせて隆起用エアセルS1の膨張が開始されるようにしたが、図6の隆起用エアセルS1の動作タイミング中、破線で示すように、当該隆起用エアセルS1の膨張開始をエアセルS,S1がまだ膨張を維持していて、足M1を押圧している際に行うように制御することがより望ましい。 【0093】 すなわち、足M1の下降時には、大腿部が上方へ押し上げられた状態とするもので、隆起用エアセルS1の作用により、下肢部分のずれが防止されることになって、足伸ばし効果をより増大させることが可能となる。 【0094】 次に、本実施例のマッサージ機Aの変形例として、図7?図10に示した構成について説明する。 【0095】 図7に示したものは、足載部1を上下首振りさせるために、上記した足載部用アクチュエータ51に代えて、エアバッグ55を用いたものである。 【0096】 すなわち、エアバッグ55を、足載部1の裏面と基台部4の前面との間に介設して、エアの給排によって足載部1を上下回動可能としている。 【0097】 エアバッグ55の駆動源となるエアポンプなどは、各エアセルS,S1などと共用可能である。また、本変形例では、エアバッグ55を蛇腹状に形成しているが、特にその形態などについては限定するものではない。 【0098】 図8に示した変形例は、足載部1の回動動作を機械的に行うようにしたもので、ここでは、足載部1と座部2とを、自動車のリクライニング装置などに採用されるギヤ機構56を介して連結し、ギヤ56aの回転によって足載部1を上下回動可能としている。 【0099】 この例においては、ギヤ56aは足載部1を上方へ押し上げる方向へ付勢されており、ギヤ56aに噛合するギアストッパ56bによって所望位置で足載部1を停止保持することができるようにしている。56cはギヤストッパ56bの操作部に連動連結した連結材である。なお、足載部1の回動を機械式で行う場合の構成は、本例に限定されるものではなく、適宜の機構を採用することができる。 【0100】 ところで、上述してきた足載部1は、使用者Mの左右の足M1,M1を載置する部分が一体的な構成としたものであったが、図9に示す変形例では、足載部1を左右に分離させた構成とし、左右の足M1,M1を独立して載置可能とするととも、左右独立して上下首振り可能とした構成としている。1’,1’は左右の分離足載部である。そのために、本実施例においては、両分離足載部1’にそれぞれ対応するように、足載部用アクチュエータ51を2本独立させて配設している。 【0101】 かかる構成とすることにより、左右の足M1,M1は交互に上下することになるので、歩行状態のような自然な動きとなり、使用者Mはリラックスした楽な状態で足M1のマッサージを効果的に行うことができる。 【0102】 さらに、足載部1を首振り動作させる場合、上下方向のみではなく、図10に示すように、左右に首振り可能とすることもできる。 【0103】 図10に示した例では、図9で示した例と同様に、足載部1を左右分離させた左右の分離足載部1’,1’から構成している。 【0104】 そして、エアセルSによるエアマッサージに合わせて、各分離足載部1’を左右に首振り可能としている。この場合、首振りの振幅としては適宜幅に設定すればよいが、首振りピッチを小さく設定して、あたかも足M1が左右方向に振動するように動作させれば、エアセルSによるエアマッサージに加えて、振動マッサージも複合可能となり、多彩なマッサージが実現できる。しかも、この場合もエアセルSと足M1のマッサージ個所との位置関係が前述したように相対的に若干変化することになり、マッサージ範囲を拡張することが可能となる。 【0105】 なお、この例では、足載部1を左右分離させたものとしたが、通常の一体の足載部1であってもよい。かかる構成で足載部1を左右に首振りさせた場合、同様にマッサージ範囲を拡張することが可能となる。 【0106】 また、上述してきたように足載部1を左右首振りさせた場合、上体は動くことなく、両足が横方向へ往復動することで、股関節など、足の付け根近傍のほぐし効果が得られる。 【0107】 (参考例1) 次に、参考例に係るマッサージ機Aについて、図11を参照しながら説明する。なお、以下に説明する参考例においては、先の実施例と同一構成要素については同一符号を付して、ここでの説明は省略する。 【0108】 本参考例は、上記足載部1の位置変動の形態として、足載部1を前後スライド可能としたものである。 【0109】 図11に示した例では、足載部1と座部2との枢支連結部10を可動式としたもので、同枢支連結部10を専用アクチュエータ57のロッド先端に設けた構成としている。 【0110】 すなわち、専用アクチュエータ57は、スプリングなどの弾性部材57aにより付勢された進退ロッド57bを外管57cに摺動自在に収納配設したもので、足載部用アクチュエータ51を進退動作させると、枢支連結部10も追従して進退動作し、足載部1の傾斜などは変らずに前後スライドするようにしている。 【0111】 足M1をマッサージするためにエアセルSを駆動している間に、足載部1を前後にスライドさせた場合、先に説明した実施例同様、やはりエアセルSとマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになり、足載部1の前方移動につれて(離隔方向へのスライド量が大きくなる)、エアセルSは足M1に対して大腿部側から足首部側へ相対的に移動することになり、逆に、足載部1を座部2に近接するように移動すれば(離隔方向へのスライド量が小さくなる)、エアセルSは、逆に足M1に対して足首側から大腿部側へ相対的に移動することになり、このように足載部1を前後スライド動作させることでも、足首から大腿部にかけて、マッサージ施療を移動させながら広範囲の足M1マッサージが可能となる。 【0112】 足載部1を前後スライドさせるための機構としては、図12に示すものであってもよい。 【0113】 これは、足載部用アクチュエータ51と協働する同一構成の進退用アクチュエータ58を配設したものである。この進退用アクチュエータ58と足載部用アクチュエータ51とは同期して駆動することにより、足載部1の姿勢を保持したまま前後スライドさせることができる。 【0114】 以上説明してきたように、本参考例のようにエアセルSの駆動中に足載部1の位置をスライドさせて変動することによっても、やはり多彩な足マッサージが可能となる。そして、この場合であっても、エアセルSを膨らませて足M1をホールド状態として、その後に足載部1を前後スライドさせることで、足M1の伸ばし効果を生起させることができる。 【0115】 なお、本参考例においても、第1実施例同様に足載部1を左右独立した分離足載部1’,1’から構成することができる。 【0116】 (第2実施例) 次に、図13を参照しながら、第2実施例に係るマッサージ機Aについて説明する。 【0117】 本実施例では、図13に示すように、基台部4内に収納配設した姿勢変位機構5に新たにシリンダからなるアクチュエータを2本追加して、足載部1をより多彩に位置変動可能としたものである。 【0118】 追加されるアクチュエータとしては、座部2の下面に基端を回動自在に連結するとともに、先端を足載部用アクチュエータ51の中途に回動自在に連結した支持用アクチュエータ59と、前記足載部用アクチュエータ51の下方位置に配設され、基端を支持アーム22に回動自在に連結し、先端を足載部1に回動自在に連結した第2足載部用アクチュエータ60としている。60aは第2足載部用アクチュエータ60と足載部1との連結部である。 【0119】 本実施例における足載部1は、足載部用アクチュエータ51と第2足載部用アクチュエータ60とで構成されたリンクにより支持されており、両アクチュエータ51,60によって、足載部1の前進動作、上下回動動作を自由に実行することができる。そして、足載部1の上下方向における位置保持については、両アクチュエータ51,60を介して、前記支持用アクチュエータ59によって規制されており、同支持用アクチュエータ59の駆動によって、足載部1の基本高さについても変更することができる。 【0120】 したがって、使用者Mの体格などによって、足載部1の基本高さを自由に代えることができ、エアセルSによりエアマッサージを行いながら、足載部1を自由に回動動作させたり、スライド動作させたりして、足M1のマッサージをより効果的に行うことができる。 【0121】 なお、本第2実施例においても、第1実施例同様に足載部1を左右独立した分離足載部1’,1’から構成することができる。 【0122】 (参考例2) 次に、他の参考例に係るマッサージ機Aの足載部1について、図14を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施例においては、上述してきた各実施例と同一構成要素については同一符号を付して、ここでの説明は省略する。 【0123】 本参考例では、足載部1を左右独立した分離足載部1’,1’から構成し、両分離足載部1’,1’の隣り合う壁部1a’,1a’同士を上部で枢支連結するとともに、その下方にアクチュエータとして、蛇腹状の足載部回動用エアセルS3を介設している。12は分離足載部1’,1’同士の枢支連結部であり、蝶番などを用いることができる。 【0124】 分離足載部1’は、片足M1を包み込むように断面視凹状に形成して、底部、左右側壁の各内面にマッサージ用のエアセルSをそれぞれ配設した構成としており、各分離足載部1’は、前記枢支連結部12を中心にして、足載部回動用エアセルS3の膨張限界までそれぞれ上方へ回動可能に支持されている。 【0125】 かかる構成により、マッサージ用のエアセルSにエアを供給して足M1のエアマッサージを行いながら、足載部回動用エアセルS3にもエアを供給すれば、前記枢支連結部12を中心にして、分離足載部1’,1’がそれぞれ上方へ跳ね上がることになる。 【0126】 このとき、使用者Mの足M1の載置姿勢が一定であれば、足M1を中心に、すなわち足M1の周囲に沿ってマッサージ用のエアセルSが分離足載部1’とともに回動して施療位置を変化させることができるので、足M1の周囲の略全体にわたってマッサージすることが可能となる。 【0127】 また、マッサージ用のエアセルSによる押圧力を高めて、足M1を十分に保持した状態にしておき、その後、各分離足載部1’を上述したように回動すれば、足M1が捻られることになる。この足M1に対する捻り作用により、新たなマッサージ効果が期待できることになる。さらに、この捻り作用により、O脚を矯正する効果も期待できる。 【0128】 また、本参考例によれば、分離足載部1’を回動させることによって、足M1の周方向における所望の施療位置に合わせてマッサージ用エアセルSを当接させることができる。したがって、従来のように、足M1の脛近傍についてマッサージすることは殆ど不可能であったものが、本実施例の構成を採用することで可能となる。 【0129】 このように、本参考例によれば、足M1の周囲略全体にわたってのマッサージが行えるようになり、特に、脛近傍の従来マッサージし難い個所についてもマッサージが可能となり、足M1のマッサージ効果を著しく向上させることができるとともに、捻り作用という新たなマッサージ形態の提供も可能となる。 【0130】 なお、分離足載部1’に設けた足用マッサージ機能部としてエアセルSを用いた構成としたが、特にエアセルSに限定するものではなく、バイブレータなど、マッサージ機能を備えるものであれば何を用いても構わない。 【0131】 また、分離足載部1’を回動させるためのアクチュエータとしても、上記した足載部回動用エアセルS3に限定するものではなく、分離足載部1’をそれぞれ回動可能とした機構であれば何を採用しても構わない。 【0132】 しかし、本参考例では、足用マッサージ機能部としてエアセルSを用い、かつ分離足載部1’を回動させるためのアクチュエータとして足載部回動用エアセルS3を用いていることから、エアセルS,S3の給気源となる給気ポンプなどを共通の駆動源とすることができ、マッサージ機Aとしての構成の複雑化、大型化を回避できるという効果を奏する。 【0133】 ところで、上記してきた各実施例では、足載部1の動作に違いがあるが、本マッサージ機Aでは、背もたれ部3に配設したマッサージユニット6によって、使用者Mの腰、背中、肩、首の上肢をマッサージできることには変りがない。 【0134】 本マッサージ機Aでは、特に腰をマッサージする際に、より効果的なマッサージが行えるように、以下の制御のいずれか1つ、あるいは両方を同時に実行するようにしている。 【0135】 すなわち、1つは(a)前記座部2に設けた隆起用エアセルS1、あるいは座部用エアセルS2に給気して膨張させ、大腿部を上方移動させるか、若しくは大腿部をホールドして腰の移動を阻止する制御であり、もう1つは、(b)前記足載部1のエアセルSに給気して膨張させ、足M1をホールドして腰の移動を阻止する制御である。 【0136】 いずれの制御を単独で実行しても、あるいは同時に実行しても、マッサージユニット6の揉み玉71,71が腰を押圧する場合、使用者Mは下肢部分の動きが制約されているために、揉み玉71,71の作用方向に身体が逃げることがなくなり、揉み玉71,71の押圧力などを腰でしっかりと受け止めることになるので、腰のマッサージ効果が著しく増大する。 【0137】 【発明の効果】 本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。 【0138】 (1)本発明では、座部の前側に、足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連設したマッサージ機において、前記エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に前記足載部を降下させ、足のホールド状態を解除した後に前記足載部を上昇させるように制御したことにより、足載部の下降、上昇の間に足に対する押圧力が大きく変化するので、足伸ばし効果をより増大させるとともに、足に対して常に負荷が加わることもないので快適な使用感を得ることができる。 【0139】 (2)本発明では、前記足載部の位置を変動可能とし、前記足載部の位置変動に追従して使用者の膝上部分が動くことを防止する移動抵抗手段を設けたことにより、足載部位置が変動することで、マッサージ機能部とマッサージ個所との位置関係が相対的に若干変化することになり、足における広範囲のマッサージが可能となる。また、下肢における膝上部分の動きが抑制され、マッサージ対象となる膝下部分への負荷が軽くなりすぎることを防止でき、マッサージ効果をより高めることができる。 【0140】 (3)本発明では、前記移動抵抗手段は、前記座部の前側上部位置で、使用者の大腿部下部を持ち上げることのできるコブ状隆起形成部を設けて構成したことにより、コブ状隆起8が堰のように機能し、足M1が足載部1の動きに追従して移動する際に、膝上部分までも動くことを可及的に防止し、上記した足伸ばし効果などを十分に生起することが可能となる。 【0141】 (4)本発明では、前記移動抵抗手段は、前記座部の左右及び中央にエアセルを配設して構成し、同エアセルにより、使用者の大腿部を左右から押圧して保持可能としたことにより、足が足載部の動きに追従して移動する際に、膝上部分までも動くことを可及的に防止し、足伸ばし効果などを十分に生起することが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1実施例に係るマッサージ機の説明図である。 【図2】同マッサージ機の要部を示す説明図である。 【図3】同要部における動作説明図である。 【図4】移動抵抗手段における他の例を示す説明図である。 【図5】移動抵抗手段における他の例を示す説明図である。 【図6】第1実施例におけるマッサージ機の変形例を示す説明図である。 【図7】エアポンプの駆動タイミングと、エアセルの膨張・収縮、足載部の下降・上昇との関係を示すタイミングチャートである。 【図8】第1実施例におけるマッサージ機の変形例を示す説明図である。 【図9】第1実施例におけるマッサージ機の変形例を示す説明図である。 【図10】第1実施例におけるマッサージ機の変形例を示す説明図である。 【図11】参考例に係るマッサージ機を示す説明図である。 【図12】同参考例に係るマッサージ機の変形例を示す説明図である。 【図13】第2実施例に係るマッサージ機を示す説明図である。 【図14】参考例に係るマッサージ機の説明図である。 【図15】従来のマッサージ機の説明図である。 【符号の説明】 A マッサージ機 S エアセル(足用マッサージ機能部) 1 足載部 2 座部 3 背もたれ部 5 姿勢変位機構 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-03-30 |
結審通知日 | 2009-04-01 |
審決日 | 2009-04-14 |
出願番号 | 特願2002-201819(P2002-201819) |
審決分類 |
P
1
113・
832-
YA
(A61H)
P 1 113・ 841- YA (A61H) P 1 113・ 121- YA (A61H) P 1 113・ 854- YA (A61H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 望月 寛 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
増沢 誠一 中島 成 |
登録日 | 2007-10-26 |
登録番号 | 特許第4031304号(P4031304) |
発明の名称 | マッサージ機 |
代理人 | 上野 康成 |
代理人 | 辻本 希世士 |
代理人 | 神吉 出 |
代理人 | 森田 拓生 |
代理人 | 種市 傑 |
代理人 | 辻本 一義 |
代理人 | 神吉 出 |
代理人 | 上野 康成 |
代理人 | 森田 拓生 |
代理人 | 特許業務法人有古特許事務所 |
代理人 | 辻本 一義 |
代理人 | 窪田 雅也 |
代理人 | 種市 傑 |
代理人 | 種市 傑 |
代理人 | 辻本 一義 |
代理人 | 神吉 出 |
代理人 | 森田 拓生 |
代理人 | 辻本 希世士 |
代理人 | 窪田 雅也 |
復代理人 | 石田 祥二 |
代理人 | 窪田 雅也 |
代理人 | 辻本 希世士 |
代理人 | 上野 康成 |