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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F |
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管理番号 | 1200815 |
審判番号 | 不服2007-31168 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-19 |
確定日 | 2009-07-13 |
事件の表示 | 特願2003-148471「高分子化合物及びポジ型レジスト材料の製造方法並びにパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日出願公開、特開2004-354417〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成15年5月27日の出願であって、平成19年7月18日付けで通知された拒絶の理由に対して、同年9月18日付けで手続補正がなされたが、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正書がなされたものであって、その後、当審の審尋に対し、平成21年4月13日付けで回答書が提出されたものである。 そして、平成19年11月19日付けの手続補正は、誤記の訂正および補正前の請求項1ないし3を削除し、補正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を新たに請求項1ないし3とし、補正前の請求項4を引用する請求項5ないし8を新たに請求項4ないし7としたものであるから、請求項の削除に該当するものであり、請求項の削除、誤記の訂正を目的とするものである。 したがって、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成19年11月19日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「下記一般式(1) 【化1A】 (上式中、R^(1)は水素原子、アルキル基又はアシル基を表し、R^(2)とR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1?4のアルキル基又は少なくとも1つのフッ素原子を含む炭素数1?4アルキル基を表し、R^(5)はハロゲン、アルキル基、オキソアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を表し、R^(7)は酸不安定性基を表し、R^(4)とR^(6)とR^(8)はそれぞれ独立して炭素数3?20の直鎖状、分岐状、環状もしくは有橋環式のアルキレン基、又は炭素数6?20のアリーレン基を示す。) に示す(A)モノマーユニットと(B)モノマーユニットと(C)モノマーユニットとからなる一群から選ばれる少なくとも1つを含んでなる高分子化合物で、ガラス転移温度(Tg) が100℃以上である、ポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法であって、下記一般式(2) 【化1B】 (上式中、Xは同一又は異種の炭素数1?10のアルキル基、アリール基、トリフルオロプロピル基、ヒドロキシ基、炭素数1?4のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、同一化合物内の3つのX基のうち少なくとも2つがヒドロキシ基、炭素数1?4のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、シランとの反応のときにクロロシランを用いる場合は、ヒドロキシル基とクロロシランとが反応するので、有機側鎖中のヒドロキシル基はアセチル化又はピバロイル化しておく。) から選ばれる対応するモノマーを加水分解縮合させポリシルセスキオキサンを得た後、該ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、得られたポリシルセスキオキサンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネノン(DBN)からなる一群から選ばれる強塩基触媒の存在下で熟成させるポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法。」 2.引用刊行物記載の発明 (1)刊行物1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2として引用された特開2002-308990号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線の大部分は当審にて付与した。) (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 その酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の酸解離性基含有ポリシロキサンであって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量と数平均分子量との比が2.5以下であることを特徴とするポリシロキサン。 【請求項2】 下記一般式(1)で表される化合物あるいは該化合物が部分縮合した直鎖状もしくは環状のオリゴマー、および下記一般式(2)で表される化合物あるいは該化合物が部分縮合した直鎖状もしくは環状のオリゴマーからなる群の少なくとも1種の成分を、酸性触媒の存在下で重縮合させる工程を有することを特徴とする、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の酸解離性基含有ポリシロキサンの製造方法。 【化1】 〔一般式(1)および一般式(2)において、A^(1 )およびA^(2 )は相互に独立に酸により解離する酸解離性基を有する1価の有機基を示し、R^(1 )およびR^(2 )は相互に独立に炭素数1?10の1価の飽和炭化水素基または炭素数1?10のハロゲン化飽和炭化水素基を示し、R^(3 )は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のハロゲン化アルキル基、炭素数6?20の1価の芳香族炭化水素基または炭素数6?20の1価のハロゲン化芳香族炭化水素基を示す。〕 【請求項3】 (イ)請求項1記載のアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の酸解離性基含有ポリシロキサンおよび(ロ)感放射線性酸発生剤を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。」 (1b)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、193nm以下の波長において透明性が高く、高感度であり、かつドライエッチング耐性、現像性、基板への接着性等にも優れた感放射線性樹脂組成物を与えるポリシロキサン、該ポリシロキサンの製造方法、および該ポリシロキサンを含有する感放射線性樹脂組成物を提供することにある。」 (1c)「【0034】本発明においては、シラン化合物(5)?(7)あるいはそれらの部分縮合物の群の少なくとも1種、好ましくはシラン化合物(5)あるいはその部分縮合物を、シラン化合物(1)および/またはシラン化合物(2)あるいはそれらの部分縮合物と共縮合させることにより、得られるポリシロキサン(イ)の分子量およびガラス転移温度(Tg)を制御でき、また193nm以下、特に157nmの波長における透明性をさらに向上させることができる。シラン化合物(5)、シラン化合物(6)、シラン化合物(7)あるいはそれらの部分縮合物の合計使用量は、全シラン化合物に対して、通常、99モル%以下、好ましくは5?95モル%、さらに好ましくは10?90モル%である。この場合、前記合計使用量が99モル%を超えると、レジストとしての解像度が低下する傾向がある。 【0035】本発明におけるポリシロキサンの製造方法は、前記シラン化合物を、酸性触媒の存在下で重縮合させる工程を有する点に特徴がある。このように酸性触媒を用いることにより、加水分解反応を伴う重縮合反応が均一かつ速やかに起こり、原料シラン化合物中のSi-OR^(1) 基、Si-OR^(2) 基等の加水分解性基が加水分解されないでポリマー中に残存することがなくなるため、該加水分解性基による放射線の吸収が極めて少なくなる。したがって、193nm以下の波長における放射線透過率に関しても、塩基性条件下で重縮合するより、酸性条件下で重縮合する方が有利となる。しかも、酸性条件下で重縮合反応を行うことにより、分子量分布が狭いポリシロキサン(イ)を得ることができ、このようなポリシロキサン(イ)を用いて得られる感放射線性樹脂組成物は、遠紫外線領域以下の短波長の放射線で露光した際に、ネガ化が起こり難くなり、レジストパターンの基板への接着性が改善され、また露光後に一般的な現像液で現像を行う場合にも、レジスト被膜がより均一に溶解する結果、より微細でかつより良好な形状のレジストパターンが形成されるという利点を有する。この特徴は特に193nm以下の波長で露光を行った際に顕著に現れる。」 (1d)「【0037】また、本発明においては、シラン化合物を酸性触媒の存在下で重縮合させたのち、塩基性触媒を加えてさらに反応を進行させることが好ましい。このような反応を行なうことにより、酸性条件下において不安定な酸解離性基を有するシラン化合物を用いた場合にも、架橋反応を生起させることができ、分子量およびガラス転移温度(Tg)が高く、良好な特性を示すポリシロキサン(イ)を得ることが可能となる。また、塩基性条件下での反応条件を調節することにより架橋度をコントロールして、得られるポリシロキサンの現像液に対する溶解性を調整することもできる。 【0038】前記塩基性触媒のうち、無機塩基類としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。」 (1e)「【0047】また、前記重縮合反応に際しては、反応系に水を添加することもできる。この場合の水の添加量は、シラン化合物の全量100重量部に対して、通常、10,000重量部以下である。さらに、前記重縮合反応に際しては、得られるポリシロキサン(イ)の分子量を制御し、また安定性を向上させるために、ヘキサメチルジシロキサンを添加することもできる。ヘキサメチルジシロキサンの添加量は、シラン化合物の全量100重量部に対して、通常、500重量部以下、好ましくは50重量部以下である。この場合、ヘキサメチルジシロキサンの添加量が500重量部を超えると、得られるポリマーの分子量が小さくなり、ガラス転移温度(Tg)が低下する傾向がある。前記重縮合における反応温度は、通常、-50?300℃、好ましくは20?100℃であり、反応時間は、通常、1分?100時間程度である。」 (1f)「【0074】レジストパターンの形成方法 以下に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する方法について説明する。本発明の感放射線性樹脂組成物においては、露光により酸発生剤(ロ)から酸が発生し、その酸の作用によって、ポリシロキサン(イ)中の酸解離性基が解離して、例えばカルボキシル基を生じ、その結果レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め加熱処理を行ったのち、所定のレジストパターンを形成するように該レジスト被膜に露光する。その際に使用される放射線としては、F_(2 )エキシマレーザー(波長157nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)あるいはKrFエキシマレーザー(波長248nm)が好ましい。本発明においては、露光後に加熱処理を行うことが好ましい。」 (1g)「【0080】合成例2(シラン化合物(1)の合成) ・・・(中略;当審注)・・・下記式(12)で表される化合物と同定された。この化合物を、化合物(12)とする。 ・・・(中略;当審注)・・・ 【0081】 【化9】 〔式(12)において、ケイ素原子はテトラシクロ[ 4.4.0.1^(2,5) .1^(7,10) ]ドデカン環の3-位あるいは4-位に結合している。〕 【0082】合成例3(シラン化合物(5)の合成) ・・・(中略;当審注)・・・下記式(13)で表される化合物と同定された。この化合物を、化合物(13)とする。 ・・・(中略;当審注)・・・ 【0083】 【化10】 〔式(13)において、ケイ素原子はビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプタン環の2-位あるいは3-位に結合している。〕 【0084】合成例4(シラン化合物(1)の合成) ・・・(中略;当審注)・・・下記式(14)で表される化合物と同定された。この化合物を、化合物(14)とする。 ・・・(中略;当審注)・・・ 【0085】 【化11】 〔式(14)において、ケイ素原子はビシクロ[ 2.2.1 ]ヘプタン環の2-位あるいは3-位に結合している。〕」 (1h)「【0090】実施例3(ポリシロキサン(イ)の合成) 撹拌機、還流冷却器、温度計を装着した3つ口フラスコに、化合物(12)3.84g、化合物(13)7.93g、メチルトリエトキシシラン3.22g、4-メチル-2-ペンタノン10.5g、1.75重量%しゅう酸水溶液3.32gを加えて、撹拌しつつ、80℃で6時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷して反応を停止したのち、分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、ポリマー8.2gを得た。このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm(CH_(2 )C(CF_(3))_(2 )基)、1.4ppm(t-ブチル基)、0.2ppm(SiCH_(3) 基)。 IR :1700cm^(-1)(エステル基)、1213cm^(-1)(C-F結合)、1151cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :2,100。 Mw/Mn:1.6 このポリマーを、ポリシロキサン(イ-3)とする。 【0091】実施例4(ポリシロキサン(イ)の合成) 撹拌機、還流冷却器、温度計を装着した3つ口フラスコに、化合物(12)3.84g、化合物(13)7.93g、メチルトリエトキシシラン3.22g、4-メチル-2-ペンタノン15.0g、1.75重量%しゅう酸水溶液3.32gを加えて、撹拌しつつ、80℃で2時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷して反応を停止したのち、分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、Mw1,600のポリマー10gを得た。次いで、このポリマーを4-メチルー2-ペンタノン23gに溶解し、蒸留水4.9g、トリエチルアミン6.9gを加えて、窒素気流中40℃で加温した。2時間経過後、反応溶液を氷冷しつつ撹拌したのち、しゅう酸5.7gを蒸留水200gに溶解した水溶液を加えて撹拌を続けた。その後、反応溶液を分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、ポリマー10.1gを得た。このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm(CH_(2) C(CF_(3))_(2) 基)、1.4ppm(t-ブチル基)、0.2ppm(SiCH_(3) 基)。 IR :1700cm^(-1)(エステル基)、1213cm^(-1)(C-F結合)、1151cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :2,600。 Mw/Mn:1.3 このポリマーを、ポリシロキサン(イ-4)とする。 【0092】実施例5(ポリシロキサン(イ)の合成) 撹拌機、寒流冷却器、温度計を装着した3つ口フラスコに、化合物(13)3.83g、化合物(14)1.17g、4-メチル-2-ペンタノン2.50g、1.75重量%しゅう酸水溶液0.80gを加えて、撹拌しつつ、40℃で10時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷して反応を停止したのち、分液ロートに移して水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、半固形状のポリマー3.65gを得た。このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm((CH_(2) C(CF_(3))_(2) 基)、1.5ppm(t-ブトキシ基)。 IR :1775cm^(-1)(エステル基)、1219cm^(-1)(C-F結合)、1131cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :1,700。 Mw/Mn:1.1 この場合、化学シフトσ中には、t-ブトキシ基の存在を示す1.5ppmのピークが確認できたが、ポリマー中に残存するSiOC_(2 )H_(5 )基に由来するエトキシ基の存在を示す3.8ppm付近のピークは観察されなかった。また赤外吸収スペクトル中にも、炭酸エステルの存在を示す1775cm^(-1)のピークが観察され、この反応では、SiOC_(2) H_(5) 基のみが選択的に加水分解し、t-ブトキシ基の脱離反応は殆ど起こっていないことが確認された。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析では、未反応のモノマーの存在を示すピークが観察されなかった。このポリマーを、ポリシロキサン(イ-5)とする。 【0093】実施例6(ポリシロキサン(イ)の合成) 実施例5と同様の方法で得たポリシロキサン(イー5)3.7gを4-メチルー2-ペンタノン10.8gに溶解し、さらに蒸留水1.18g、トリエチルアミン1.65gを加えて、窒素気流中で40℃に加温し、5時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷しつつ撹拌したのち、しゅう酸1.38gを蒸留水50gに溶解した水溶液を加えて撹拌を続けた。その後、反応溶液を分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、ポリマー3.6gを得た。このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm(CH_(2) C(CF_(3))_(2) 基)、1.5ppm(t-ブトキシ基)。 IR :1775cm^(-1)(エステル基)、1220cm^(-1)(C-F結合)、1133cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :2,400。 Mw/Mn:1.1 このポリマーを、ポリシロキサン(イ-6)とする。 【0094】実施例7(ポリシロキサン(イ)の合成) 実施例5と同様の方法で得たポリシロキサン(イ-5)3.7gを4-メチルー2-ペンタノン10.8gに溶解し、さらに蒸留水1.18g、トリエチルアミン1.65gを加えて、窒素気流中で60℃に加温し、5時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷しつつ撹拌したのち、しゅう酸1.38gを蒸留水50gに溶解した水溶液を加えて撹拌を続けた。その後、反応溶液を分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、ポリマー3.6gを得た。 このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm(CH_(2 )C(CF_(3))_(2) 基)、1.5ppm(t-ブトキシ基)。 IR :1775cm^(-1)(エステル基)、1221cm^(-1)(C-F結合)、1133cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :2,700。 Mw/Mn:1.1 このポリマーを、ポリシロキサン(イ-7)とする。 【0095】実施例8(ポリシロキサン(イ)の合成) 実施例5と同様の方法で得たポリシロキサン(イ-5)3.7gを4-メチルー2-ペンタノン10.8gに溶解し、さらに蒸留水1.18g、トリエチルアミン1.65gを加えて、窒素気流中で80℃に加温し、5時間反応させた。その後、反応溶液を氷冷しつつ撹拌したのち、しゅう酸1.38gを蒸留水50gに溶解した水溶液を加えて撹拌を続けた。その後、反応溶液を分液ロートに移して、水層を廃棄し、さらにイオン交換水を加えて水洗して、反応溶液が中性になるまで水洗を繰り返した。その後、有機層を減圧留去して、ポリマー3.5gを得た。このポリマーについて、核磁気共鳴スペクトル(化学シフトσ)、赤外吸収スペクトル(IR)、MwおよびMw/Mnを測定したところ、以下のとおりであった。 σ :2.3ppm(CH_(2) C(CF_(3))_(2) 基)、1.5ppm(t-ブトキシ基)。 IR :1775cm^(-1)(エステル基)、1220cm^(-1)(C-F結合)、1129cm^(-1)(シロキサン基)。 Mw :3,500。 Mw/Mn:1.2 このポリマーを、ポリシロキサン(イ-8)とする。」 (1i)「【0107】評価例2(放射線透過率の評価) ポリシロキサン(イ-1)、ポリシロキサン(イ-6)?(イ-16)または比較用ポリシロキサン(1)の各2-ヘプタノン溶液を、シリコンウエハー上にスピンコーターにより塗布したのち、110℃に保持したホットプレート上で90秒間加熱処理して、膜厚1,000Åの被膜を形成した。次いで、各被膜について、波長157nmおよび波長193nmにおける放射線透過率を測定した。測定結果を、表1に示す。 【0108】 【表1】 【0109】表1から明らかなように、塩基性条件下で重縮合させた比較用ポリシロキサン(1)と酸性条件下で重縮合させたポリシロキサン(イ)との放射線透過率は、波長193nmでは実質上差はないが、波長157nmではポリシロキサン(イ)がかなり高いことが確認された。この事実は、酸性条件下で重縮合したポリシロキサン(イ)がより短波長の放射線による微細加工の材料として有望であることを示している。 【0110】評価例3(Tgの評価) ポリシロキサン(イ-3)?ポリシロキサン(イ-8)および比較用ポリシロキサン(2)のガラス転移温度(Tg)を測定した結果を、表2に示す。 【0111】 【表2】 【0112】表2から明らかなように、Tgは、塩基性条件下で重縮合させた比較用ポリシロキサン(2)に比べて、酸性条件下で重縮合させたポリシロキサン(イ)が高いことが確認された。また、酸性条件下での重縮合のみにより合成したポリシロキサン(イ-3)に比べ、酸性条件下での重縮合に引き続いて塩基性条件下での重縮合を行ったポリシロキサン(イ-4)ではTgがより高いことが明らかとなった。この事実は、ポリシロキサン(イ)を合成するに当たって、酸性条件下での重縮合に引き続いて塩基性条件下での重縮合を行って重合度を増加させ、架橋度を上げたポリマーの方がTgが高くなり、重合条件を選択することによって、ポリシロキサン(イ)のTgをコントロールすることが可能となることを示している。感放射線性樹脂組成物に用いる樹脂成分のTgを高めることは、より微細なレジストパターンをリソグラフィープロセスにより形成する上で重要な要因の一つであり、その意味で、ポリシロキサン(イ)のTgのコントロールが可能となったことは、本発明の有用性を裏付けるものである。 【0113】評価例4(ArFエキシマレーザー露光による解像度の評価) ポリシロキサン(イ-3)、ポリシロキサン(イ-4)、ポリシロキサン(イ-6)?ポリシロキサン(イ-10)、ポリシロキサン(イ-12)?ポリシロキサン(イ-16)または比較用ポリシロキサン(2)を各100重量部、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート1重量部、トリ-n-オクチルアミン0.02重量部および2-ヘプタノン900重量部を均一に混合して、感放射線性樹脂組成物を調製した。次いで、各組成物を、シリコンウエハー上にスピンコートにより塗布したのち、140℃に保持したホットプレート上で、90秒間加熱処理して、膜厚100nmのレジスト被膜を形成した。その後、各レジスト被膜に対して、ArFエキシマレーザー(波長193nm)により露光量を変えて露光し、110℃に保持したホットプレート上で、90秒間加熱処理したのち、ポリシロキサン(イ-6)およびポリシロキサン(イ-7)を用いたレジスト被膜を除き、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、またポリシロキサン(イ-6)およびポリシロキサン(イ-7)を用いたレジスト被膜については、1.19重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像した。次いで、露光部分を走査型電子顕微鏡で観察して、各レジストの限界解像度を測定した。測定結果を、表3に示す。 【0114】 【表3】 」 この記載より、特に、表2より、ポリシロキサン(イ-4)、(イ-8)は、それぞれ、ガラス転移温度(Tg)が122℃、105℃であること、表1より、ポリシロキサン(イ-8)の157nm、193nmにおける透過率が良好であること、表3より、ポリシロキサン(イ-4)、(イ-8)を用いて作成したポジ型レジストは193nmにおける解像度が高いことが見てとれる。 (1j)「【0121】評価例7(F_(2) エキシマレーザー露光による評価) ポリシロキサン(イ-1)?ポリシロキサン(イ-4)、ポリシロキサン(イ-7)、ポリシロキサン(イ-10)、ポリシロキサン(イ-13)または比較用ポリシロキサン(1)を各100重量部、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート1重量部、トリ-n-オクチルアミン0.02重量部および2-ヘプタノン900重量部を均一に混合して、感放射線性樹脂組成物を調製した。次いで、各組成物を、シリコンウエハー上にスピンコートにより塗布したのち、140℃に保持したホットプレート上で、90秒間加熱処理を行って、膜厚100nmのレジスト被膜を形成した。その後、各レジスト被膜に対して、F2エキシマレーザー(波長157nm)により露光量を変えて露光し、110℃に保持したホットプレート上で、90秒間加熱処理を行ったのち、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像した。次いで、露光部を走査型電子顕微鏡で観察して、各レジストの限界解像度を測定した。測定結果を、表6に示す。 【0122】 【表6】 【0123】また、露光部分を走査型電子顕微鏡で観察したところ、比較用ポリシロキサン(1)を用いた場合は、レジストパターンの基板への接着性が低く、一部ネガ化も起こり、さらに現像時に現像液がレジスト被膜の表面上に均一に塗布されにくい等の現象が観察された。これに対して、本発明のポリシロキサン(イ)を用いた場合は、基板への接着性の低下、ネガ化、現像むら等のレジスト性能に関係する不良は観察されなかった。」 この記載、特に、表6より、ポリシロキサン(イ-4)、(イ-7)は、157nmにおける解像度が高いことが見てとれる。 (1k)「【0124】 【発明の効果】本発明のポリシロキサン(イ)は、193nm以下の波長において高い放射線透過率を有し、レジストとしたときに、高感度であり、しかもドライエッチング耐性、現像性、基板への接着性等にも優れている。また、本発明においては、ポリシロキサンを酸性触媒の存在下で重縮合させる工程を有する方法により製造することにより、加水分解反応を伴う縮合反応が均一かつ速やかに起こり、原料シラン化合物中の加水分解性基が加水分解されないでポリマー中に残存することがなくなり、該加水分解性基による放射線の吸収が極めて少なくなるため、当該ポリシロキサンは193nm以下の波長において高い放射線透過率を有し、レジストとしたときに、高感度であり、しかもドライエッチング耐性、現像性、基板への接着性にも優れている。さらに、ポリシロキサンの製造時に、酸性条件下での重縮合に引き続いて塩基性条件下での重縮合を行うことにより、重合度が増加して架橋度が上る結果、ガラス転移温度(Tg)が高くなる。したがって、酸性条件下での重縮合に引き続いて塩基性条件下での重縮合を行ったポリシロキサンをレジストに用いることによって、より微細なレジストパターンをリソグラフィープロセスにより極めて有利に形成することができるとともに、重合条件を選択することによりポリシロキサンのガラス転移温度(Tg)をコントロールすることも可能となる。また、ポリシロキサン(イ)を用いて得られる本発明の感放射線性樹脂組成物は、遠紫外線領域以下の短波長の放射線で露光した際に、ネガ化が起こり難く、レジストパターンの基板への接着性が改善され、かつ露光後に一般的な現像液で現像を行う場合にも、レジスト被膜がより均一に溶解する結果、より微細でかつより良好な形状のレジストパターンを形成するという利点を有し、この特徴は特に193nm以下の波長で露光を行った際に顕著に現れる。しかも、当該感放射線性樹脂組成物は、193nm以下の波長において高い放射線透過率を有し、高感度で、かつドライエッチング耐性にも優れている。したがって、当該感放射線性樹脂組成物は、半導体素子関連の幅広い技術分野において有用であり、今後ますます微細化が進行するとみられる半導体素子の製造に極めて好適に使用することができる。 」 上記(1a)?(1k)の記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。) 「ガラス転移温度が105℃または122℃である、ポジ型のレジストパターンを得るためのポリシロキサンの製造方法であって、下記化合物(12)または(13)の化合物 を含むシラン化合物を酸性触媒下で重縮合させてポリマーを得て、次いでトリエチルアミンを加えてさらに重縮合を行って、重合度を増加させ、架橋度を上げる、ポジ型のレジストパターンを得るためのポリシロキサンの製造方法。」 3.対比、判断 (ア)刊行物1発明の「ポジ型のレジストパターンを得るためのポリシロキサン」は、本願発明の「ポジ型レジスト材料用高分子化合物」に相当する。 (イ)刊行物1発明の「一般式(12)または(13)の化合物(構造式省略;当審注)」は、本願発明の「一般式(2)から選ばれる対応するモノマー」に相当する。 (ウ)刊行物1発明は、「ガラス転移温度が105℃または122℃」であるから、本願発明の「ガラス転移温度(Tg) が100℃以上」に相当する。 (エ)刊行物1発明の「酸性触媒下で重縮合させてポリマーを得」は、本願発明の「加水分解縮合させポリシルセスキオキサンを得」に相当する。 (オ)刊行物1発明の「重合度を増加させ、架橋度を上げる」ことは、本願発明の「縮合度を上げる」ことに相当し、刊行物1の「トリエチルアミン」と本願発明の「水酸化ナトリウム・・・(中略;当審注)・・・から選ばれる強塩基触媒」は、「塩基触媒」である点で共通するから、 刊行物1の「トリエチルアミンを加えてさらに重縮合を行って、重合度を増加させ、架橋度を上げる」ことと、 本願発明の、「ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネノン(DBN)からなる一群から選ばれる強塩基触媒の存在下で熟成させる」こととは、 「加水分解縮合させポリシルセスキオキサンを得た後、該ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、得られたポリシルセスキオキサンを塩基触媒の存在下で熟成させる」という点で共通する。 (カ)刊行物1発明の上記シラン化合物を重縮合すれば、本願発明の「一般式(1)」(一般式省略)「に示す(A)モノマーユニットと(B)モノマーユニットと(C)モノマーユニットとからなる一群から選ばれる少なくとも1つを含んでなる高分子化合物」が製造されることは明らかである。 よって、本願発明と刊行物1発明とは、 「下記一般式(1) 【化1A】 (上式中、R^(1)は水素原子、アルキル基又はアシル基を表し、R^(2)とR^(3)はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1?4のアルキル基又は少なくとも1つのフッ素原子を含む炭素数1?4アルキル基を表し、R^(5)はハロゲン、アルキル基、オキソアルキル基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を表し、R^(7)は酸不安定性基を表し、R^(4)とR^(6)とR^(8)はそれぞれ独立して炭素数3?20の直鎖状、分岐状、環状もしくは有橋環式のアルキレン基、又は炭素数6?20のアリーレン基を示す。) に示す(A)モノマーユニットと(B)モノマーユニットと(C)モノマーユニットとからなる一群から選ばれる少なくとも1つを含んでなる高分子化合物で、ガラス転移温度(Tg) が100℃以上である、ポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法であって、下記一般式(2) 【化1B】 (上式中、Xは同一又は異種の炭素数1?10のアルキル基、アリール基、トリフルオロプロピル基、ヒドロキシ基、炭素数1?4のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、同一化合物内の3つのX基のうち少なくとも2つがヒドロキシ基、炭素数1?4のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、シランとの反応のときにクロロシランを用いる場合は、ヒドロキシル基とクロロシランとが反応するので、有機側鎖中のヒドロキシル基はアセチル化又はピバロイル化しておく。) から選ばれる対応するモノマーを加水分解縮合させポリシルセスキオキサンを得た後、該ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、得られたポリシルセスキオキサンを塩基触媒の存在下で熟成させるポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法。」 である点で一致し、次の相違点で相違する。 相違点:塩基触媒に関し、 本願発明は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネノン(DBN)からなる一群から選ばれる強塩基触媒に特定しているのに対し、刊行物1発明は、トリエチルアミンを使用している点。 この相違点について検討する。 刊行物1発明は、具体的には、トリエチルアミンを用いており、本願発明では、比較合成例-1に対応するものとなっている。 しかしながら、刊行物1には、上記摘記事項(1d)にあるように、「架橋反応を生起させることができ、分子量およびガラス転移温度(Tg)が高く、良好なポリシロキサン(イ)を得ることが可能」となり、塩基性条件での反応条件を調節することにより架橋度をコントロール」する反応における塩基性触媒として、本願発明に記載された強塩基触媒である「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム」も記載されているから、縮合度を上げ、ガラス転移温度(Tg)を高くする目的において、適当な触媒として記載されたなかから適当な触媒として、「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム」を用いることに何ら困難性は認められない。 本願発明における選択的作用効果についても、ガラス転移温度(Tg)を100℃以上とすることに追随するものであり、刊行物1において、例えばポリシロキサン(イ-4)のように本願の実施例より小さい重量平均分子量の高分子化合物であってもガラス転移温度(Tg)が100℃以上であること、157nm、193nmで透明性が高いこと、耐ドライエッチング性が良好であること、高感度、高解像度であること、といった作用効果も記載されており、これと比較して本願発明の作用効果が格別顕著なものであるとは認められない。 4.請求人の主張について 平成21年4月13日に提出された回答書において、前置報告書の記載「本願請求項1に係る発明と引用文献2に記載された発明とは、本願請求項1に係る発明では水酸化カリウム等の強塩基触媒を用いているのに対し、引用文献2に記載された発明ではトリエチルアミンを用いている点で相違し、その他の点では一致するところ、引用文献2[0037][0038]には、塩基性条件下での反応条件を調節して、得られるポリシロキサンの現像液に対する溶解性を調整すること及びその際の塩基性触媒として、水酸化カリウム等が挙げられることが記載されている。」に対し、請求人は次のように主張する。 (主張1)「まず、本願請求項1に係る発明では水酸化カリウム等の強塩基触媒を用いているのに対し、引用文献2に記載された発明ではトリエチルアミンを用いている点で相違することは同意いたします。 しかし、「その他の点では一致する」は承服できません。引用文献2は、所定のポリシルセスキオキサンを得た後、該ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、得られたポリシルセスキオキサンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)からなる一群から選ばれる強塩基触媒の存在下で熟成させるポジ型レジスト材料高分子化合物の製造方法については開示も示唆もしていないからです。」 (主張2)「また、引用文献2[0037][0038]には、塩基性条件下での反応条件を調節して、得られるポリシロキサンの現像液に対する溶解性を調整すること及びその際の塩基性触媒として、水酸化カリウム等が挙げられることが記載されていることは認めます。 引用文献2には、塩基性触媒として、段落[0038]に9種類、段落[0039]に27種類、段落[0040]に24種類、段落[0041]に32種類が例示されており(合計92種類)、そのうち、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムは、本願請求項1に記載の強塩基触媒と重複します。しかし、好ましい塩基性触媒としては、段落[0042]にトリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ピリジンの4種類が記載され、実施例ではトリエチルアミンが使用されており、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムは、公知の塩基性触媒として列記された92種類中の2つにすぎません。」 (主張3)「本願の実施例には、縮合物-1及び2と、比較縮合物-1が記載されています。前置報告書は、「両者の調製条件は、触媒の種類だけでなく、反応温度及び時間においても異なっている。また、引用文献2に記載されたように、条件によっては、触媒としてトリエチルアミンを使用した場合にも、Tgが100℃以上であるポリシロキサンを調製できることは明らかである。」との理由により、本願発明における、強塩基触媒を用いたことによる効果は、実施例から参酌できないと記載します。 (中略;当審注)また、本願の加水分解物-1に塩基触媒としてトリエチルアミンを用いた場合の限界を示すため、加水分解物-1に純水とトリエチルアミンを加えて80℃で14時間反応させる比較実験1を行った結果を示す実験成績証明書を添付いたしました。したがって、本願発明における、所定の強塩基触媒を用いたことによる効果は、実施例から参酌できるものと思料いたします。」 (主張4) 「次に、前置報告書が指摘する「引用文献2に記載されたように、条件によっては、触媒としてトリエチルアミンを使用した場合にも、Tgが100℃以上であるポリシロキサンを調製できることは明らかである。」について説明します。 (中略;当審注) 引用文献2の表2によれば、ポリシロキサン(イ-4)、(イ-6)、(イ-7)及び(イ-8)のTgは、それぞれ122℃、75℃、86℃、105℃であり、(イ-6)と(イ-7)には本願発明の適用が必要であり、(イ-4)と(イ-7)についても、好ましくは130℃以上にTgを持つようなシルセスキオキサンを製造する本願発明(段落[0014])の適用の余地があります。すなわち、条件によっては、触媒としてトリエチルアミンを使用した場合にもTgが100℃以上であるポリシロキサンを調製できることは、本願発明の存在意義を否定するものではありません。 レジスト組成物としては、良い製膜性を得るためにTgが100℃以上であることが好ましいものです。しかし、導入するユニットによっては、高いTgを与えにくいものもあり、その場合はTgを高くするためにユニットの選択範囲が限られるため、レジストに求められる感度やDR(溶解速度)等が犠牲にされる場合があります。本願発明は、各ユニットの縮合度を高めることにより、Tgの底上げを図り、使用するユニットの選択範囲を広げて、より好ましいレジスト性能を発揮するポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法を提供するものです。したがって、確かに導入するユニットが高いTgを与えにくいものに対して効果は絶大ですが、導入するユニットが100℃以上のTgを与えるものであっても、Tgの底上げが図れます。縮合度を上げることにより、残存する親水性の高い加水分解性基の数を減じることにより、分子設計に近い親水性や溶解性を具現せしめレジスト設計をより理論的にかつ汎用性の高いものにすることができます。」 これらの主張について見解を述べる。 ・主張1について 請求人は、前置報告書に記載の相違点につき、「本願請求項1に係る発明では水酸化カリウム等の強塩基触媒を用いているのに対し、引用文献2に記載された発明ではトリエチルアミンを用いている点で相違することには同意」しているのに対し、「その他の点については一致する」は承服しない旨という。 前置報告書の相違点、一致点は当審の上記した認定と大筋一致しており、当審においても塩基触媒以外の点について、さらなる相違点は上記のような特に認めていない。 この点に対し、請求人は、引用文献2(当審における刊行物1)は、所定のポリシルセスキオキサンを得た後、該ポリシルセスキオキサンの縮合度を上げるために、得られたポリシルセスキオキサンを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)からなる一群から選ばれる強塩基触媒の存在下で熟成させるポジ型レジスト材料高分子化合物の製造方法については開示も示唆もしていない旨のべているが、特定の強塩基性触媒については、相違点に挙げられており請求人も認めていることから、縮合度を上げるために塩基性触媒下で熟成させることをも相違点であると解釈できる。 しかしながら、刊行物1には、「熟成」という語は使用していないものの、上記3.対比、判断に述べたように、さらなる加水分解工程により、重合度、架橋度を上げることも記載されているから、塩基触媒以外の、その他の相違点を有するとの主旨の主張は採用できない。 ・主張2について 好ましい触媒として記載されているものでもなく、92種類中の2つに過ぎないとはいえ、記載された公知触媒のなかから、必要に応じて、好ましいものを選択することは当業者の創意工夫の範囲内である。そして、数に拘泥するのであれば、アミン系のものを除けば、残りは9種、しかも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが、塩基の代表格であることは、一般的にもいえることである。 そして、本願における格別な選択的作用効果は認められない。 ・主張3について トリエチルアミンを80℃、5時間で反応させた、追加の実験を示しているが、この追加例も、ガラス転移温度(Tg)が、100℃に満たない例を追加しただけであって、刊行物1において、ガラス転移温度(Tg)100℃以上が達成されていることに対する本願の作用効果を補足するものではない。 そして、単に、本願明細書に記載の、特定の組成のポリシルセスキオキサンの場合では、トリエチルアミン80℃、5時間では、十分ではないことを示しているに過ぎず、温度限界には説明があるものの、本願で行っているような長時間反応させた場合どうなるかについて何らの示唆もない。 本願発明の特定組成のポリシルセスキオキサンでは、140℃、16時間の反応を必要とするが、刊行物1のポリシロキサンでは、80℃、5時間で十分に目的を達成しているといえ、本願発明の作用効果は、追加の実験を参酌しても、特定組成の場合にのみ認められるにすぎない。 ・主張4について 刊行物1のポリシロキサン(イ-6)と(イ-7)には本願発明の適用が必要であると述べているが、ここで、本願発明を適用した場合どのようなガラス転移温度となるのか全く示していないのに対し、刊行物1には、ポリシロキサン(イ-8)のように反応条件を変えることにより、Tgを105℃にすることが記載されている。 そして、「(イ-4)と(イ-7)についても、好ましくは130℃以上にTgを持つようなシルセスキオキサンを製造する本願発明(段落[0014])の適用の余地があります」との記載は、全体の記載からみて、「(イ-4)」と「(イ-8)」についての誤記と認めるが、本願明細書において、本願発明を適用し、130℃以上にTgを持つようなシルセスキオキサンについて本願には具体的に製造することが記載されておらず、それを適用したポジ型レジスト材料についての作用効果も示されていないため、特段の意義をなさない。 「すなわち、条件によっては、触媒としてトリエチルアミンを使用した場合にもTgが100℃以上であるポリシロキサンを調製できることは、本願発明の存在意義を否定するものではありません。」との主張も、「本願発明の存在意義」について具体的に説明がない以上、進歩性を有すると認めるには足りない。(なお、一般に、「存在意義」の有無は、進歩性の判断とは直接には関係ない。) 「本願発明は、各ユニットの縮合度を高めることにより、Tgの底上げを図り、使用するユニットの選択範囲を広げて、より好ましいレジスト性能を発揮するポジ型レジスト材料用高分子化合物の製造方法を提供する」とも主張し、この主張は、平成19年9月18日付けの意見書や審判請求の理由においても一貫しているが、いずれをみても、本願明細書に記載された特定の3つの組成の加水分解物の例に依拠するのみであり、「各ユニットの選択範囲を広げて」というような作用効果は、たとえあったとしても、顕著な作用効果であることが一応の説得力のある程度に示されていたとはいえない。 加えて、各モノマーユニットの構成は、ガラス転移温度(Tg)の範囲、耐ドライエッチング耐性、短波長での透明性、感度、解像度に大きく関わるものであり、特定のユニットであるからこそ、本願発明の作用効果を得られたものである。言い換えると、本願発明の、特定の、「2-カルボ-t-ブトキシ-5(6)-トリメトキシシリルノルボルナン19.0g、2-カルボ-メトキシ-5(6)-トリメトキシシリルノルボルナン45.3g、2-(2,2-ビストリフルオロメチル-2-ヒドロキシエチル)-5(6)-トリメトキシシリルノルボルナン29.7g」により得られたポリシルセスキオキサンの組成以外の任意のモノマーユニットを選択した場合には、同様なガラス転移温度(Tg)の範囲、レジストの諸特性が得られるものでないことは明白である。 そして、さらに本願明細書に示された作用効果を検討するに、ドライエッチング耐性は、ノボラック樹脂とは顕著な作用効果があるものの、比較縮合物-1と比べて、縮合物-1、縮合物-2が優れているものの、重量平均分子量も大きいことを勘案するに、格段顕著であるとは認められない。 また、本願明細書表3に示された、「感度(mJ/cm)」(単位は、「mJ/cm^(2)」の誤記と認める。)に関しては、比較縮合物-1が格段高感度である。 解像度の評価の点では作用効果が認められ、感度を犠牲にして高解像度を要求することはあるものの、次に示すことから、格別顕著な作用効果を有するとは認められない。 まず、同表3により本願発明のレジスト組成物を評価するにあたり、1つめの組成と7つめの組成が一致しているにも関わらず感度が異なる、組成のDRIが不明であるなど、評価対象が不明な点がある。 そして、比較縮合物-1は、そのガラス転移温度(Tg)がかなり低いものであり、【0165】に記載されたPEB温度を大きく下回るものであり、そのレジストパターンの評価が低いことは極めて当然な結果にすぎない。 以上により、請求人の主張を勘案しても、ガラス転移温度100℃以上にすること、あるいは、本願発明の製造方法にて製造することによる、格別顕著な作用効果は認められない。 したがって、本願発明の格別顕著な作用効果を認めることはできない。 また、請求人は、同回答書にて、次にように、補正の用意がある旨を述べているので、この補正案に関し補足する。 すなわち、回答書には、「前置報告書は、平成19年11月19日付手続補正書による補正後の請求項1ないし7のうち、請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1と引用文献2に基づき特許法29条第2項に該当し、独立して特許を受けることができないと記載します。当該補正後の請求項5ないし7に係る発明の特許性が認められているのであれば、本出願人は、手続補正書を提出する機会をいただければ、特許請求の範囲を当該補正後の請求項5ないし7に限定する補正の用意があります。」とある。 しかしながら、前置報告書は、補正を限定的減縮であると認め独立特許要件を満たさない根拠として、請求項1ないし4について進歩性を否定したものではあるが、請求項5ないし7に関し進歩性を認めたものではない。 当審においては、平成19年11月19日付けの手続補正の補正要件は認めた上で、進歩性を否定したが、請求項5ないし7に記載のパターン形成方法は、刊行物1に記載された範囲内のパターン形成方法に係る発明特定事項を加えたのみであるから、たとえ、請求項5ないし7に限定したとしても、進歩性を有するものとは認められない。 次に、請求人は、「手続補正書を提出する機会」があれば、請求項1の「強塩基触媒の存在下で熟成させる」を「強塩基触媒の存在下、無水で熟成させる」に変更し、さらに引用文献2と差別化する用意がある旨述べている。 この補正案について検討するに、「無水状態」であることは本願明細書の記載からみて本願発明の必須の要件であると認められる。 しかしながら、刊行物1には、実施例では水を添加しているものの、上記摘記事項(1e)にあるように、「反応系に水を添加することもできる」とあるように、水を添加しない選択肢もあり、水酸化カリウム等の強塩基触媒を採用するにあたり、最適化しうる範囲と認められる。また、ポリオルガノシルセスキオキサンの製造に際して、無水条件下で水酸化カリウムを触媒として重縮合させることは、特開2002-248378号公報(【0008】)、国際公開第01/60880号パンフレット(第13頁第7?16行;対応する日本語ファミリーである特表2003-523422号公報【0027】参照。)に記載されているような周知の事項である。 さらに、上記請求人の主張について述べたように、本願は、そもそも、特定組成のポリシルセスキオキサンを、無水以外にも、溶媒、加熱温度、加熱時間も、ごく限られた条件で行ったものが記載されているにすぎないから、たとえ、無水の条件を包含させたにしても、それにより本願発明の顕著な作用効果を認めることはできない。 よって、回答書で述べられた2つの補正案を踏まえても、依然として、進歩性を有するとは認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-18 |
結審通知日 | 2009-05-19 |
審決日 | 2009-06-01 |
出願番号 | 特願2003-148471(P2003-148471) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 外川 敬之 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 伊藤 裕美 |
発明の名称 | 高分子化合物及びポジ型レジスト材料の製造方法並びにパターン形成方法 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 河村 英文 |