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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1200903
審判番号 不服2008-8162  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-03 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 特願2001-312800「多結晶セラミックスの鏡面研磨方法、及び、その鏡面研磨用研磨液」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月23日出願公開、特開2003-117806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
特許出願 平成13年10月10日
拒絶理由の通知 平成18年 6月21日
意見書・補正書 平成18年 8月25日
拒絶理由の通知 平成19年 3月27日
意見書 平成19年 5月24日
拒絶理由の通知 平成19年 8月 7日
意見書・補正書 平成19年10月 9日
補正の却下の決定 平成20年 2月28日
拒絶査定 平成20年 2月28日
審判請求書 平成20年 4月 3日
審尋 平成21年 2月23日
回答書 平成21年 4月22日

2.本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成18年8月25日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「多結晶セラミックスを研磨するにあたり、研磨液としてSiO_(2)、MgO 、CeO_(2)の中から選ばれる1種以上の砥粒を含有する酸性の研磨液をpH6以上9未満に調整したものを用いたメカノケミカル研磨法によって多結晶セラミックスを研磨することを特徴とする多結晶セラミックスの鏡面研磨方法。」

3.刊行物記載の発明
(1)特開昭60-155359号公報
これに対し、本願出願前に頒布され、原審で引用された刊行物である特開昭60-155359号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.特許請求の範囲
「1 マイクロポアの存在するセラミックス材料表面を該材料より高硬度で粒径が0.5μm以下のAl_(2)O_(3) ,SiO_(2),ダイヤモンドの単独または混合微粉末を2次凝集しないように純水に分散させて研摩液とし、Sn,Pb,はんだのいずれかをポリッシャとしてラップ荷重0.5kg/cm^(2)?2kg/cm^(2)で加圧回転させて研摩を施し、該材料表面に塑性流動層を形成させ、材料表面のマイクロポアを低減させることを特徴とするセラミックス材料の無孔化研磨方法。」

イ.第3ページ右下欄第16行?第4ページ左上欄第15行
「実施例2
被研摩材には、熱間静水圧プレス法で高密度化した50×50×1mmのAl_(2)O_(3)(融点2015℃、硬度2000Hv)を用いた。この被研摩材のマイクロポア数は、10^(6)ケ/cm^(2)であった。
研摩液は、粒径0.1μmのダイヤモンド(3700℃、10000Hv)微粉末を純水中に0.2wt%分散させ、さらに、ヘキサメタリン酸ソーダを1wt%添加した。
ポリッシャには350mmφのPb盤を用いポリッシャ表面に被研摩材を当接させ、両者を相対的に回転させて研磨した。このとき、1.2kg/cm^(2)のラップ荷重をかけ、40rpmで回転させ、200cc/hrの割合で研摩液を連続添加した。(本発明B)
また、比較のため、上記の本発明B、Cと同じセラミックを被研摩材とし、SiO_(2)(1610℃、1000Hv)砥粒を使用して第1表の研摩条件でMCP法(比較例E)を行なった。
上記2種の被研摩材の研摩状態を、実施例1と同条件で測定し、第1表に示す測定結果を得た。」

ウ.第1表
比較例Eの研摩結果として、表面粗度が40Åと記載されている。

イ.で、「MCP法」とは、「メカノケミカル研磨法」のことである。
エ.で、表面粗度が40Åであるから、鏡面仕上げされたものということができる。

上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「多結晶セラミックスを研磨するにあたり、研磨液としてSiO_(2)の砥粒を含有する研磨液を用いたメカノケミカル研磨法によって多結晶セラミックスを研磨する多結晶セラミックスの鏡面研磨方法。」

(2)特開平3-60420号公報
同じく、特開平3-60420号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.第2ページ左上欄第5?7行
「また、ヒュームドシリカの水性コロイド分散液が、フリクショナイジング(frictionizing)及び研摩に利用される。」

イ.第2ページ右下欄第18行?第3ページ左上欄第19行
「本発明によれば、ヒュームドシリカの安定な非ダイラタントの低粘度の濾過可能な水性コロイド分散液は、第一分散液の重量基準のヒュームドシリカ濃度が最終分散液中に所望されるシリカの量を越えるような量で、ヒュームドシリカをミキサー中で酸-水溶液中に分散し、ミキサー中の第一分散液を、得られる最終分散液が所望の濃度のヒュームドシリカを含むように、追加量の水で希釈し、ついで安定剤を添加してヒュームドシリカ、酸及び安定剤の最終水性コロイド分散液のpHを約7?12、好ましくは約7.5?約11に調節することにより製造される。・・・。
ヒュームドシリカは、水単独中よりも早く水-酸酸液中に湿潤し混合する。また、分散液は安定剤の添加により酸性pHからアルカリ性pHに調節されるので、酸の添加はミキサー中のヒュームドシリカの水性コロイド分散液の粘度を低下する。低下された粘度は、分散液のpHが安定剤により上げられるので、分散液がゲル化することを防止することを助ける。」

上記記載を、技術常識を踏まえ整理すると、上記刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されているものと認められる。
「酸性pHから、約7?12のpHに調節されて製造され、ゲル化が防止された研摩用ヒュームドシリカの水性コロイド分散液。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「多結晶セラミックスを研磨するにあたり、研磨液としてSiO_(2)の砥粒を含有する研磨液を用いたメカノケミカル研磨法によって多結晶セラミックスを研磨する多結晶セラミックスの鏡面研磨方法。」

そして、以下の点で相違する。
「研磨液」が、本願発明は、「酸性の研磨液をpH6以上9未満に調整したもの」であるが、刊行物1発明は、そのようなものではない点。

相違点について、検討する。
メカノケミカル研磨法に用いる研磨液において、ゲル化が望ましくないことは、特開2000-26895号公報の段落0005にみられるごとく周知の課題である。
刊行物1発明同様、SiO_(2)(シリカ)の砥粒を含む研磨液である刊行物2事項は、「酸性pHから、約7?12のpHに調節されて製造され、ゲル化が防止され」るものであるから、刊行物1発明において、ゲル化防止のため、刊行物2事項の適用を試みることに、格別の困難性は認められない。
その際、pHを「9未満」とする点については、刊行物2事項の「約7?12」の範囲で、適したpHを選択することは、実施にあたり、当然試みる設計的事項にすぎない。

請求人は、回答書において、(ア)ゲル化と砥粒の凝集とは本質的に相違する。(イ)pHの数値限定により格別の技術的意義を有する。(ウ)砥粒をコロイダルシリカに限定する用意がある旨、主張する。
(ア)については、砥粒の凝集が進行し、ネットワークを作ることによりゲルになることから、「本質的に相違する」とまでは言えない。そして、刊行物1発明に刊行物2事項を適用したものは、本願発明と同様なものとなるから、その結果、砥粒の凝集が防止されるという効果を有する。
(イ)については、発明の詳細な説明の効果の記載を勘案するに、pHを「9未満」とすることで、臨界的効果、顕著な効果が生じるとは認められないから、適したpHの選択にすぎない。
(ウ)については、補正案は、法的効果を有するものではない。仮に、採用したとしても、メカノケミカル研磨法用の研磨液として、コロイダルシリカ砥粒は、ごく一般的なものであるから、これにより、特許性が生じるものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-02 
出願番号 特願2001-312800(P2001-312800)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 成筑波 茂樹  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 豊原 邦雄
鈴木 敏史
発明の名称 多結晶セラミックスの鏡面研磨方法、及び、その鏡面研磨用研磨液  
代理人 竹中 芳通  
代理人 梶 良之  

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