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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1201015
審判番号 不服2007-30824  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2001-308786「有機発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月18日出願公開、特開2003-115387〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成13年10月4日の出願であって、平成19年2月26日付けで手続補正がなされ、平成19年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年12月13日付けで手続補正がなされたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1乃至5に係る発明は、平成19年12月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1乃至5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される積層構造であって、前記第1電極側から順番に、正孔輸送層と、有機化合物により形成される青色発光層と、1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、及び、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルから選択される材料により形成される電荷制御層とを含む積層構造と
を含む有機発光素子。」

なお、平成19年12月13日付けの補正は、その補正前の請求項1を削除し、その削除に伴って、その補正前の請求項2乃至5を請求項1乃至4に繰り上げたものであるから、この補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2001-267080号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

a.引用例;

発光素子に関するもので、
記載事項ア.【特許請求の範囲】【請求項1】【請求項2】【請求項4】【請求項5】
「【請求項1】正極と負極の間に発光物質が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、該素子が下記一般式(1)で表されるフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体を含むことを特徴とする発光素子。



(ここでR_(1)?R_(8)はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、ハロアルカン、ハロアルケン、ハロアルキン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基の中から選ばれる。但し、その内の少なくとも1つはそれ自身が三次元的立体構造を有するか、フェナントロリン骨格とのあるいは隣接置換基との立体反発により、三次元的立体構造を有するものである。)
【請求項2】正極と負極の間に発光物質が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、該素子が下記一般式(2)で表されるフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体を含むことを特徴とする請求項1記載の発光素子。



(ここでR_(9)?R_(16)はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、ハロアルカン、ハロアルケン、ハロアルキン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基の中から選ばれる。但し、R_(9)?R_(16)の内の少なくとも1つは連結に用いられる。nは2以上の自然数を表す。X_(1)は単結合、あるいは複数のフェナントロリン骨格を連結する連結ユニットである。)
【請求項4】該有機蛍光体が発光材料であることを特徴とする請求項1または2記載の発光素子。
【請求項5】該有機蛍光体が電子輸送材料であることを特徴とする請求項1または2記載の発光素子。」

記載事項イ.【発明が解決しようとする課題】の項中【0011】
「本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、発光効率が高く、高輝度で色純度に優れた発光素子を提供することを目的とするものである。」

記載事項ウ.【発明の実施の形態】の項中【0017】
「本発明において発光物質の構成は、1)正孔輸送層/発光層、2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、3)発光層/電子輸送層、そして、4)以上の組合わせ物質を一層に混合した形態のいずれであってもよい。即ち、素子構成としては、上記1)?3)の多層積層構造の他に4)のように発光材料単独または発光材料と正孔輸送材料や電子輸送材料を含む層を一層設けるだけでもよい。」

記載事項エ.同じく【0028】
「また、複数のフェナントロリン骨格を連結することによって、フェナントロリン骨格を含む有機蛍光体は高分子量化してガラス転移温度が上昇し、やはり結晶化が起こりにくくなり、良好なアモルファス薄膜状態を維持することが出来る。」

記載事項オ.同じく【0030】【0032】
「【0030】上記のフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体として、具体的には下記のような構造があげられる。
【0032】【化7】に、1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、及び、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルについての記載。」

記載事項カ.同じく【0038】?【0041】
「【0038】本発明において電子輸送性材料は、電界を与えられた電極間において負極からの電子を効率良く輸送することが必要で、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。
【0039】しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、正極からの正孔が再結合せずに負極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本発明における電子輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0040】このような条件を満たす物質として、本発明におけるフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体を挙げることができる。長時間にわたって安定な発光を得るには、熱的安定性や薄膜形成性に優れた材料が望まれ、フェナントロリン骨格を有する有機蛍光体の中でも、置換基自身が三次元的立体構造を有するか、フェナントロリン骨格とのあるいは隣接置換基との立体反発により三次元的立体構造を有するもの、あるいは複数のフェナントロリン骨格を連結したものが好ましい。さらに、複数のフェナントロリン骨格を連結する場合、連結ユニット中に共役結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素、置換もしくは無置換の芳香複素環を含んでいる化合物がより好ましい。上記のフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体の具体例としては前記具体例(化番号6?9)のような構造があげられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
電子輸送材料はフェナントロリン骨格を有する有機蛍光体一種のみに限る必要はなく、複数の前記化合物を混合して用いたり、既知の電子輸送材料の一種類以上を前記化合物と混合して用いてもよい。既知の電子輸送材料としては特に限定されるものではないが、8-ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、ナフタレン、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、などがあるが特に限定されるものではない。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と積層または混合して使用しても構わない。」

記載事項キ.同じく【0045】
「モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には赤、緑、青(当審注;「赤、赤、緑、青」は誤記と思われる。)の画素を並べて表示させる。」

記載事項ク.【実施例】の項中【0055】【0056】【0058】【0059】【0060】
「【0055】【0056】実施例8において、Alq3発光材料層上に電子輸送材料としてETL1を積層して、緑色発光が得られる例。
【0058】【0059】実施例9において、Alq3発光材料層上に電子輸送材料としてETL2を積層して、緑色発光が得られる例。
【0060】実施例10において、発光材料層上に電子輸送材料としてETL1を積層して、赤色発光が得られる例。」

記載事項カ.には、電子輸送性材料有機蛍光体として化番号6?9のような構造があげられることが記載され、記載事項オ.には、化番号7の構造物のうち、1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、及び、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルについて記載されている。

記載事項ア.?記載事項ク.の記載内容からして、引用例には、
「正極と負極の間に正孔輸送層/発光層/電子輸送層の多層積層構造が存在し、電気エネルギーにより発光するカラー表示用素子であって、該素子が1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、或いは、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルからなる電子輸送材料有機蛍光体を単独で用いる電子輸送層を含むカラー表示用発光素子。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の対象である「電気エネルギーにより発光するカラー表示用素子」は、発光材料として有機材料を使用しているから、本願発明の対象である「有機発光素子」に相当する。

(b)引用発明の「電子輸送材料有機蛍光体を単独で用いる電子輸送層」は、記載事項カ.【0039】の記載によれば、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれるものであるから、本願発明の「電荷制御層」に相当するといえる。

(c)引用発明の「正極」、「負極」は、本願発明の「第1電極」、「前記第1電極に対向する第2電極」に相当し、さらに、前記(a)、(b)で述べたことから判断して、
引用発明の「正極と負極の間に正孔輸送層/発光層/電子輸送層の多層積層構造が存在し、電気エネルギーにより発光するカラー表示用素子であって、該素子が1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、或いは、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルからなる電子輸送材料有機蛍光体を単独で用いる電子輸送層を含むカラー表示用発光素子」は、
本願発明との対比において、
「第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される積層構造であって、前記第1電極側から順番に、正孔輸送層と、有機化合物により形成される発光層と、1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、或いは、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルから選択される材料により形成される電荷制御層とを含む積層構造と
を含む有機発光素子」に相当するといえる。

(a)?(c)に記載したことからして、本願発明と引用発明の両者は、
「第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成される積層構造であって、前記第1電極側から順番に、正孔輸送層と、有機化合物により形成される発光層と、1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、或いは、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルから選択される材料により形成される電荷制御層とを含む積層構造と
を含む有機発光素子。」
である点で一致し、次の相違点が存在する。

相違点;
発光層が、本願発明は青色発光層であるのに対して、引用発明の発光層はそのような限定がない点。

4.当審の判断
相違点について検討する。

上記相違点に関し、請求人は、平成20年12月24日付け回答書において、「青色発光層に対する電荷制御材料の選択は、青色発光層のHOMOレベルが深いこと等により、他の発光層に対する電荷制御材料の選択と比較して困難です。」と主張しているが、電荷制御材料として、引用発明に1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ベンゼン、或いは、4,4’-ジ(1,10-フェナントロリン-2イル)ビフェニルが開示されている以上、そのような材料により形成される電荷制御層と発光層との間のエネルギー準位の関係は、当業者が当然考慮すべき事項である。そして、該電荷制御層と組み合わせる発光層として、青色、緑色、赤色発光層のうち青色発光層を用いることができない特別の事情はなく、青色発光層を用いることは容易なことである。

本願発明の有機発光素子の耐熱性が向上するという作用・効果についても、引用例の記載事項カ.【0040】には、複数のフェナントロリン骨格を連結した有機蛍光体は熱的安定性に優れた材料である旨記載されているから、引用例の記載事項から予測し得る範囲を出るものではない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-22 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-09 
出願番号 特願2001-308786(P2001-308786)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
今関 雅子
発明の名称 有機発光素子及びその製造方法  
代理人 高橋 敬四郎  
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