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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1201333 |
審判番号 | 不服2006-20931 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-20 |
確定日 | 2009-07-27 |
事件の表示 | 特願2000-232088「印刷制御装置及びその制御方法並びに記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 6日出願公開、特開2002- 36669〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年7月31日付けの出願であって、平成17年10月27日付けで通知した拒絶の理由に対して、同年12月27日付けで手続補正書が提出されたが、平成18年8月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月20日付けで審判請求がなされるとともに、同年10月19日付けで手続補正書が提出され、その後、当審の審尋に対する回答書が平成20年11月6日付けで提出されたものである。 第2 平成18年10月19日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願補正 本件補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項が含まれている。 (補正前) 「【請求項1】印刷装置で印刷された印刷用紙をフィニッシャ装置で折り処理が実行されるように、前記印刷装置で印刷すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、 前記印刷装置の属性と前記フィニッシャ装置の属性に従って、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段と、 前記設定情報取得手段により取得される設定情報に基づき、前記印刷装置で印刷されるべき印刷面の順序を特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段と、 前記ページレイアウト決定手段により決定されたページレイアウトに従って、印刷データを生成する生成手段とを有し、 前記面順設定情報は、先に印刷する印刷面が前記折り処理により印刷用紙の内側と外側の何れに対応するかを指定する情報であり、 前記紙順設定情報は、先に印刷する印刷用紙が前記折り処理により冊子の外側と内側の何れに対応するかを指定する情報であることを特徴とする印刷制御装置。」 (補正後) 「【請求項1】印刷装置で印刷された印刷用紙をフィニッシャ装置で折り処理が実行されるように、前記印刷装置で印刷すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、 前記印刷装置の属性と前記フィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段と、 前記設定情報取得手段により取得される製本印刷の設定情報に含まれる紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、前記製本印刷の設定情報に含まれる面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段と、 前記ページレイアウト決定手段により決定されたページレイアウトに従って、印刷データを生成する生成手段とを有し、 前記面順設定情報は、先に印刷する印刷面が前記折り処理により印刷用紙の内側と外側のいずれに対応するかを指定する情報であり、 前記紙順設定情報は、先に印刷する印刷用紙が前記折り処理により冊子の外側と内側のいずれに対応するかを指定する情報であることを特徴とする印刷制御装置。」 この補正事項は、請求項1において、補正前の「ページレイアウト決定手段」について、ページレイアウトの仕方に限定を付して、「前記設定情報取得手段により取得される製本印刷の設定情報に含まれる紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、前記製本印刷の設定情報に含まれる面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段」とするものである(下線部が付加また変更された。)。 また、上記補正事項は、請求項1において、補正前の「設定情報取得手段」について、「分類される」との文言を付加して、「前記印刷装置の属性と前記フィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段」とするもので、これは、「設定情報取得手段」を限定するものか、あるいは、不明りょうな記載を釈明する程度のものである。 請求項1以外では、請求項3,4,5,7,8においても、本件補正により、発明特定事項について限定がなされている。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2.引用刊行物の記載事項 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平11-348371号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ページ記述言語で記述された印刷情報を生成する外部装置と、前記外部装置から入力した印刷情報を展開して画像データを生成する画像データ生成手段および該生成された画像データを格納する画像データ格納手段を有する画像形成装置と、前記画像形成装置から出力された転写材を束ねて綴じる綴じ処理装置とから構成され、前記画像形成装置で、前記画像データ格納手段から前記複数ページ分の画像データを読み出し、該読み出した複数ページ分の画像データを1枚の転写材上に配置して前記複数ページ分の画像データがそれぞれ示す画像を前記1枚の転写材に形成する画像配置形成処理を繰り返しながら該転写材を順に出力し、前記綴じ処理装置で前記画像系装置から出力された複数枚の転写材を綴じて製本化することにより製本印刷機能を実行する画像形成システムにおいて、前記画像形成装置は、異なる綴じ形態で前記画像が形成された複数枚の転写材を束ねて綴じる複数の綴じ処理手段に対して共通の装着構造を有し、該複数の綴じ処理手段の中から選択されて装着された1つの綴じ処理手段の綴じ形態に応じた製本化に対応するように前記画像形成配置処理の内容を変更することを特徴とする画像形成システム。 【請求項2】 前記画像形成装置は、前記転写材をその出力順に束状に積載し、該転写材の束をその中央部で2つ折りにした後に該中央部を綴じる第1の綴じ処理装置と、前記転写材をその中央部で2つ折りにした後に順に束状に積載し、該2つ折りにされた転写材の束の端部を綴じる第2の綴じ処理装置との2つの綴じ処理装置に対して共通の装着構造を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成システム。」 (1b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複数ページ分の画像を1枚の転写材上に配置して形成し、複数ページ分の画像が形成された複数枚の転写材を綴じて製本化する機能を有する画像形成システム、画像形成装置および製本印刷方法に関する。」 (1c)「【0006】【発明が解決しようとする課題】近年、プリンタに対する機能拡張が益々進められ、プリンタに装着可能な綴じ処理装置としても1種類に限定されることなく、例えば、上述した、プリンタから出力された用紙をその中央部で2つ折りにした後にその出力順に束状に積載し、この用紙束の片端部をステイプル処理により綴じる綴じ処理装置、プリンタから出力された用紙をその出力順に束状に積載し、この用紙束の中央部をステイプル処理により綴じた後に用紙束をその中央部で2つ折りにする綴じ処理のいずれでも装着可能なように構成し、綴じ処理装置を選択して装着することにより異なる製本化が可能な画像形成システムの出現が望まれている。 【0007】本発明の目的は、装着された綴じ処理装置の綴じ形態に応じた製本化を行うことができる画像形成システム、画像形成装置および製本印刷方法を提供することにある。」 (1d)「【0021】(実施の第1形態)図1は本発明の画像形成システムの構成を示すブロック図である。 【0022】画像形成装置100は、図1に示すように、スキャナ部1と、プリンタ部2と、画像入出力制御部3とを備える。スキャナ部1は、原稿の画像を読み取り、原稿画像に応じた画像データをプリンタ部2および画像入出力制御部3へ出力する。プリンタ部2は、リーダ部1および画像入出力制御部3からの画像データに応じた画像を記録紙上に記録する。プリンタ部2には排紙部5が装着され、排紙部5は、複数の排紙トレイを有し、設定されたモード内容に応じて、排出された記録紙を束ねて綴じる綴じ処理、排出された記録紙を各排紙トレイに収納して記録紙の仕分けを行うソート処理などの処理を行う。画像入出力制御部3はスキャナ部1およびプリンタ部2を接続するとともに、フォーマッタ部4および操作部6を接続し、これらのブロックを統括的に制御する。 【0023】フォーマッタ部4は、ホストコンピュータ7と接続され、ホストコンピュータ7から転送されたページ記述言語記述の印字データ(PDLデータ)をプリンタ部2で印刷可能な画像データに展開し、この画像データを画像入出力制御部3に転送する。また、フォーマッタ部4は、画像形成装置100の仕様に関する情報、動作状況などに関する情報をホストコンピュータ7に転送する。 【0024】操作部6は、画像入出力制御3の指示に従いユーザが各種設定を行うための操作画面を表示し、ユーザが設定した内容を画像入出力制御部3に転送するなどの処理を行う。」 図1は、次のとおり。 (1e)「【0074】次に、画像入出力制御部3におけるプリントジョブ実行時の処理の手順について図13を参照しながら説明する。図13は画像入出力制御部3におけるプリントジョブ実行時の処理の手順を示すフローチャートである。 【0075】画像入出力制御部3においては、図13に示すように、まずステップS1301において、実行すべきプリントジョブがあるか否かを判定し、プリントジョブがあるときには、ステップS1302に進み、プリントジョブ管理テーブル(図7に示す)を参照して製本印刷が指定されているか否かを判定する。製本印刷が指定されていないときには、その他の出力処理を行う。これに対し、製本印刷が指定されているときには、ステップS1303に進み、この指定された製本印刷を行うための製本印刷モードを判別して決定する製本印刷モード判別処理を行う。なお、この製本印刷モード判別処理についての詳細は後述する。 【0076】次いで、ステップS1304に進み、上記製本印刷モード判別処理の結果に基づき製本印刷が可能であるか否かを判定する。製本印刷が可能であれば、ステップS1305に進み、決定された製本印刷モードに従い製本印刷出力処理を行う。これに対し、製本印刷が可能でなければ、上記ステップS1306に進み、その他の出力処理を実行する。なお、上記ステップS1306におけるその他の出力処理の内容の説明については省略する。」 図13は、次のとおり。 (1f)「【0077】次に、上記ステップS1303の製本印刷モード判別処理について図14および図19ないし図21を参照しながら説明する。図14は図13のステップS1303の製本印刷モード判別処理の手順を示すフローチャート、図19は製本印刷モード1による処理例を示す図、図20は製本印刷モード2による処理例を示す図、図21は製本印刷モード1により製本化された例を示す図である。 【0078】製本印刷モード判別処理では、図14に示すように、製本印刷時には、フォーマッタ部4から全ページの画像データを入力して画像メモリ307に格納するため、まずステップS1401において画像メモリ307の容量に基づきスプール動作が可能であるか否かを判定する。画像メモリ307の容量が十分でなくスプール動作が不可能であるときには、ステップS1405に進み、製本印刷をしないことを設定する。 【0079】これに対し、画像メモリ307の容量が十分にありスプール動作が可能であるときには、ステップS1402に進み、現在装着されている排紙部5がどのようなタイプのフィニッシャーであるかを判別する。本実施の形態では、上述したように、排紙部5として、サドルステッチャを搭載したフィニッシャー、または2つ折りユニットとステイプラユニットとを備えたフィニッシャーを装着することが可能であるから、前者のフィニッシャーを装着しているときには製本印刷モード1を行うと判定し、ステップS1403で、製本印刷モード1を設定する。後者のフィニッシャーを装着しているときには製本印刷モード2を行うと判定し、ステップS1404で製本印刷モード2を設定する。 【0080】この製本印刷モード1では、プリンタ部2側で両面印刷により1枚の記録紙の両面にそれぞれ2ページ分の画像を形成し、排紙部5でプリンタ部2から出力された記録紙をその出力順に束状に積載し、この記録紙束の中央部をステイプル処理により綴じた後に用紙束をその中央部で2つ折りにすることにより製本化する。ここで、画像入出力制御部3においては、画像メモリ307から画像データの読出し順を変更して対応する2ページ分の画像データをまず読み出し、この読み出した2ページ分の画像データをレイアウトして記録紙の一方の面に対する画像データを生成し、この画像データをプリンタ部2に転送する。プリンタ部2では、この画像データの画像を記録紙の一方の面に形成し、続いてこの記録紙を再給紙する。次いで、画像入力出力制御部3で、画像メモリ307から、再給紙した記録紙の他面に対する2ページ分の画像データを読み出し、この読み出した2ページ分の画像データがレイアウトして再給紙した記録紙の他方の面に対する画像データを生成し、この画像データをプリンタ部2に転送する。プリンタ部2では、この画像データの画像が再給紙された記録紙の他方の面に形成して出力する。この製本印刷モード1による製本例を図19および図21に示す。図19に示すように、各記録紙毎に、その両面には、それぞれ対応する2ページ分の画像が形成され、各記録紙が束状に積載された状態でその中央部がステイプル処理により綴じられる。この綴じ処理により、図21に示すように、記録紙束がその中央部の2個所の位置(STPL)で綴じられ、最終的には画像がそのページ順に配置された製本状に形成される。 【0081】製本印刷モード2では、プリンタ部2側で片面印刷機能により、1枚の記録紙の片面に2ページ分の画像を形成し、排紙部5側でプリンタ部2から出力された記録紙をその中央部で2つ折りにした後にその出力順に束状に積載し、この記録紙束の片端部をステイプル処理により綴じることにより製本化する。・・・(中略)・・・ 【0082】上記製本印刷モードが設定され、または製本印刷をしないと設定されると、ステップS1406に進み、プリントジョブ管理テーブルのPamphlet mode、Duplex Modeの各パラメータを更新し、本処理を終了する。なお、製本印刷モードを指示するパラメータPamphlet modeは、フォーマッタ部4からジョブ開始要求命令で指定される際には、ユーザ(プリンタドライバ)からは製本印刷する/しないという設定しか行うことができないから、OFF/ONという値しかセットされないが、本処理においては、製本印刷を実現するための具体的な手段を用いた製本印刷モード(モードM1/モードM2)がプリントジョブ管理テーブルにセットされる。」 図14、図19、図21は、次のとおり。 (1g)「【0083】次に、図13に示すステップS1305の製本印刷出力処理について図15および図16を参照しながら説明する。図15および図16は図13のステップS1305の製本印刷出力処理の手順を示すフローチャートである。 【0084】製本印刷出力処理では、図15に示すように、まず、ステップS1501においてプリンタ部2にプリントジョブ開始を指示するジョブ開始命令(START-REQ)を発行し、続くステップS1502でプリンタ部2においてジョブ開始命令が受理されたか否かを判定し、受理されなければ、上記ステップS1501に戻り、ジョブ開始命令が受理されるまでジョブ開始命令の発行を繰り返す。 【0085】ジョブ開始命令が受理されると、ステップS1503に進み、白紙画像追加処理を行う。ここで、この白紙追加処理とは、製本印刷時に製本印刷モードに応じて1枚の記録紙に2ページ分の画像または4ページ分の画像をレイアウトするために、レイアウト後の全ページ数が2の倍数または4の倍数になるように、不足分の白紙画像を追加する処理である。追加ページは、ページキューの最後尾に追加される。 【0086】次いで、ステップS1504に進み、出力ページ数を表す変数Pに1をセットし、出力画像作成処理用変数pに1を、出力画像作成処理用変数qに入力ページ総数Nをそれぞれセットし、続くステップS1505で出力ページ作成処理を行い、そしてステップS1506で出力ページテーブル更新処理を行う。なお、出力ページ作成処理、出力ページテーブル更新処理の詳細については後述する。」 図15は、次のとおり。 (1h)「【0092】次に、図15に示すステップS1505の出力ページ作成処理について図17を参照しながら説明する。図17は図15のステップS1505の出力ページ作成処理を示すフローチャートである。 【0093】出力ページ作成処理では、設定された製本印刷モードに応じて、ページの並び順やレイアウト位置を変えて1枚の記録紙の1面に対する画像データを生成する。 【0094】出力ページ作成処理においては、図17に示すように、まずステップS1701において、設定された製本印刷モードが製本印刷モード1(モードM1)であるか製本印刷モード2(モードM2)であるかの判別を行う。製本印刷モード1(モードM1)が設定されているときには、ステップS1702に進み、出力ページ番号を表す変数Pが奇数であるか否かを判定する。この変数Pが奇数であるときには、ステップS1703に進み、記録紙上の右側領域に入力したページ画像データのpページ目を、その左側領域に入力したページ画像データのqページ目をそれぞれ配置するようにレイアウトを設定し、続くステップS1706で、設定したレイアウトに基づき画像メモリ307から対応する2ページ分の画像データを読み出し、画像処理部206において読み出した各ページの画像データを縮小、配置して1ページ分の画像データを生成する2in1処理を行い、この2in1処理により生成された画像データを画像メモリ307に格納して本処理を終了する。 【0095】これに対し、変数Pが奇数でなければすなわち変数Pが偶数であれば、ステップS1704に進み、記録紙上の右側領域に入力したページ画像データのqページ目を、その左側領域に入力したページ画像データのpページ目をそれぞれ配置しするようにレイアウトを設定し、ステップS1706で、設定したレイアウトに基づき画像メモリ307から対応する2ページ分の画像データを読み出し、画像処理部206において読み出した各ページの画像データを縮小、配置して1ページ分の画像データを生成する2in1処理を行い、この2in1処理により生成された画像データを画像メモリ307に格納して本処理を終了する。」 図17は、次のとおり。 これらの事項によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「プリンタ部2に排紙部5が装着された画像形成装置における画像入出力制御部3であって、 プリントジョブで製本印刷が指定されているときに、その指定された製本印刷を行うための製本印刷モードを判別して決定する製本印刷モード判別処理S1303を行い、決定された製本印刷モードに従い製本印刷出力処理S1305を行い、生成された画像データをプリンタ部2に転送するもので、 上記製本印刷モード判別処理S1303は、現在装着されている排紙部5がどのようなタイプのフィニッシャーであるか判別し、サドルステッチャを搭載したフィニッシャーを装着しているときには下記に定義する「製本印刷モード1」を行うと判定し、また、2つ折りユニットとステイプラユニットとを備えたフィニッシャーを装着しているときには「製本印刷モード2」を行うと判定して、製本印刷モードを設定し、 上記製本印刷出力処理S1305は、設定された製本印刷モードに応じて、ページの並び順やレイアウト位置を変えて1枚の記録紙の1面に対する画像データを生成する出力ページ作成処理を行うものであり、「製本印刷モード1」が設定されているときには、出力ページ番号が偶数か奇数かに分けて、記録紙上の右側領域及び左側領域に配置する画像データを決めてレイアウトを設定し、設定したレイアウトに基づき、対応する2ページ分の画像データを読み出し、画像処理部206において読み出した各ページの画像データを縮小、配置して1ページ分の画像データを生成する2in1処理を行う、 画像形成装置の画像入出力制御部3。 ここで、上記「製本印刷モード1」は、プリンタ部2側で両面印刷により1枚の記録紙の両面にそれぞれ2ページ分の画像を形成し、排紙部5でプリンタ部2から出力された記録紙をその出力順に束状に積載し、この記録紙束の中央部をステイプル処理により綴じた後に用紙束をその中央部で2つ折りにすることにより製本化するものである。」 3.対比・判断 そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 まず、本願補正発明は、プリンタ本体とそれに接続されたホストコンピュータとからなる印刷システムに限定されないから、本願補正発明の「印刷制御装置」は、「印刷装置」とともに、プリンタ本体に備わっていてもよいものである。 そうすると、刊行物1記載の発明の「画像形成装置」における「プリンタ部2」は、本願補正発明の「印刷装置」に相当し、 刊行物1記載の発明の「フィニッシャー」を備えている「排紙部5」は、本願補正発明の「フィニッシャ装置」に実質的に相当し、 また、刊行物1記載の発明では、「製本印刷モード1」及び「製本印刷モード2」が2つ折り処理を伴い、画像入出力制御部3は、生成された画像データをプリンタ部2に転送するから、 刊行物1記載の発明の「画像形成装置における画像入出力制御部3」は、本願補正発明の「印刷装置で印刷された印刷用紙をフィニッシャ装置で折り処理が実行されるように、前記印刷装置で印刷すべき印刷データを生成する印刷制御装置」に相当するということができる。 刊行物1記載の発明の画像入出力制御部3で生成された「画像データ」は、本願補正発明の印刷制御装置で生成された「印刷装置で印刷すべき印刷データ」に相当している。 刊行物1記載の発明の「記録紙」は、本願補正発明の「印刷用紙」に相当する。 刊行物1記載の発明の「製本印刷モード1」は、「プリンタ部2側で両面印刷により1枚の記録紙の両面にそれぞれ2ページ分の画像を形成し、排紙部5でプリンタ部2から出力された記録紙をその出力順に束状に積載し、この記録紙束の中央部をステイプル処理により綴じた後に用紙束をその中央部で2つ折りにすることにより製本化するもの」であるから、本願補正発明の「印刷された印刷物を二つ折りした冊子」を得る製本手法に相当する。また、本願補正発明は、紙順設定が必要となるもの、つまり、複数の印刷用紙からなる冊子であり、この点でも、刊行物1記載の発明の「製本印刷モード1」は、記録紙をその出力順に束状に積載したものであるから、本願補正発明と一致する。 さらに、刊行物1記載の発明は、「上記製本印刷出力処理S1305は、設定された製本印刷モードに応じて、ページの並び順やレイアウト位置を変えて1枚の記録紙の1面に対する画像データを生成する出力ページ作成処理を行うものであり、「製本印刷モード1」が設定されているときには、出力ページ番号が偶数か奇数かに分けて、記録紙上の右側領域及び左側領域に配置する画像データを決めてレイアウトを設定し、設定したレイアウトに基づき、対応する2ページ分の画像データを読み出し、画像処理部206において読み出した各ページの画像データを縮小、配置して1ページ分の画像データを生成する2in1処理を行う」ものであり、この「製本印刷モード1」による冊子が、本願補正発明と同様に、印刷された印刷物を二つ折りした冊子であり、しかも、その冊子は複数の印刷用紙からなるものであるから、 刊行物1記載の発明には、明示がないものの、 本願補正発明の「前記設定情報取得手段により取得される製本印刷の設定情報に含まれる紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、前記製本印刷の設定情報に含まれる面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段」のうち、「紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定する」ことは、刊行物1記載の発明でも、当然に行っているものということができる。何故なら、刊行物1記載の発明でも、本願補正発明で規定するような「紙順設定情報」や「面順設定情報」がないと、印刷データのページレイアウトを行うことができないからである。また、刊行物1記載の発明では、「ページレイアウト決定手段」といえる手段も想定される。 刊行物1記載の発明の「設定したレイアウトに基づき、対応する2ページ分の画像データを読み出し、画像処理部206において読み出した各ページの画像データを縮小、配置して1ページ分の画像データを生成する2in1処理を行う」との記載から、刊行物1記載の発明でも、本願補正発明の「前記ページレイアウト決定手段により決定されたページレイアウトに従って、印刷データを生成する生成手段」を有しているということができる。 そうすると、本願補正発明と刊行物1記載の発明の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。 [一致点] 「印刷装置で印刷された印刷用紙をフィニッシャ装置で折り処理が実行されるように、前記印刷装置で印刷すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、 紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段と、 前記ページレイアウト決定手段により決定されたページレイアウトに従って、印刷データを生成する生成手段とを有し、 前記面順設定情報は、先に印刷する印刷面が前記折り処理により印刷用紙の内側と外側のいずれに対応するかを指定する情報であり、 前記紙順設定情報は、先に印刷する印刷用紙が前記折り処理により冊子の外側と内側のいずれに対応するかを指定する情報である、 印刷制御装置。」 [相違点1] 本願補正発明では、印刷装置の属性とフィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段を有するのに対し、 刊行物1記載の発明では、そのような製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段が明示されていない点。 [相違点2] 本願補正発明では、「印刷された印刷物を二つ折りした冊子」を得るもの(刊行物1の「製本印刷モード1」によるもの)であり、それ以外の製本手法によるものは明示がないのに対し、 刊行物1記載の発明では、製本印刷モード判別処理S1303で、現在装着されている排紙部5がどのようなタイプのフィニッシャーであるか判別し、サドルステッチャを搭載したフィニッシャーを装着しているときには「製本印刷モード1」を行うと判定し、また、2つ折りユニットとステイプラユニットとを備えたフィニッシャーを装着しているときには「製本印刷モード2」を行うと判定して、それぞれ製本印刷モードを設定する点。 そこで、相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物1記載の発明では、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段について明示はないが、 上記したとおり、「紙順設定情報に従って、前記印刷装置で印刷された印刷物を二つ折りした冊子の外側の紙から印刷されるか内側の紙から印刷されるかを特定し、更に、面順設定情報に従って、該冊子の紙の内側の面から印刷されるか外側の面から印刷されるかを特定し、印刷データのページレイアウトを決定する」ことを、刊行物1記載の発明でも、当然に行っているから、 刊行物1記載の発明の「画像形成装置の画像入出力制御部3」は、「製本印刷モード1」に関する「印刷装置の属性とフィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報」を何らかの形で入手しているはずである。 例えば、刊行物1の【図19】【図21】に記載される「製本印刷モード1」による製本例は、紙順設定が、二つ折りした冊子の外側の紙から印刷する設定であり、面順設定が、冊子の紙の外側の面から印刷する設定であり、これは、本願の【図10】の分類でいえば、Type1(タイプ1)であることが理解される。刊行物1では、製本印刷の設定情報は、画一的に定められており(タイプ1だけであり)、他の選択肢はない(タイプ2?4は想定していない)かもしれないが、そうであったとしても、実質的にタイプ1に対応する設定情報を何らかの形で得ているはずである。何故なら、刊行物1記載の発明では、タイプ1の設定情報(適切な紙順及び面順の情報)を得ることなしに、適切に製本印刷を実行することができないのである。 したがって、刊行物1記載の発明でも、「製本印刷モード1」に関する「印刷装置の属性とフィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報」が何らかの形で「画像形成装置の画像入出力制御部3」に対して提供されているものである。 そうすると、刊行物1記載の発明では「製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段」が明記されていないものの、両発明は、印刷制御装置が製本印刷の設定情報を取得する点では共通するから、刊行物1記載の発明において、印刷制御装置が製本印刷の設定情報を取得する点を、本願補正発明のごとく、「製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段」を有しているとして表現する程度のことは、当業者が容易になし得ることである。 なお、本願の課題は、製本印刷が可能な出力装置の属性(プリンタのタイプ、使用される排紙口、フィニッシャーのタイプ)に応じて最適な製本印刷の面付け処理を行える印刷制御装置を提供すること(本願明細書【0006】等)であり、その課題に対応する発明特定事項として、本願補正発明は、上記「印刷装置の属性とフィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段を有する」と規定したと考えられる。 しかし、本願補正発明の当該規定は、本願の課題を解決することができる可能性を示すものであるとしても、刊行物1記載の発明との違いを明確にするには至っていない。 本願明細書の実施例をみても、印刷装置の属性とフィニッシャ装置の属性に従って分類される、面順設定情報と紙順設定情報を含む製本印刷の設定情報が、スプールファイル303に格納されており、ファイルマネージャ303のCPU1が、スプールファイル303から製本印刷の設定情報を取得することが記載されているに過ぎない(本願明細書【0037】【0051】)から、本願補正発明の当該規定を、それ以上の意味(例えば、印刷制御装置それ自体が、多様な出力装置の属性に対応可能になるように、特別な構成を有していること)と解釈することもできない。 (相違点2について) 両発明は、「印刷された印刷物を二つ折りした冊子」を得るもの(刊行物1の「製本印刷モード1」によるもの)の点では共通しており、 また、本願補正発明は、製本印刷モード1か製本印刷モード2かを判定する工程(又は手段)を規定していないが、特に限定がないだけであり、本願補正発明が、発明の範囲として、そのような判定工程(又は手段)を有する態様を含むことを排除していない。すなわち、本願補正発明は、そのような判定工程(又は手段)を付随してもよいし、付随しなくてもよいものと解釈される。 技術的にみても、そのような判定工程(又は手段)があるか否かが、製本印刷モード1の製本印刷の制御に対して影響を与えるものではない。 したがって、相違点2は、実質的に相違点ではない。 (まとめ) 以上のとおりであるから、本願補正発明は、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願の請求項1に係る発明 平成18年10月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成17年12月27日付けの手続補正書により補正された請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】印刷装置で印刷された印刷用紙をフィニッシャ装置で折り処理が実行されるように、前記印刷装置で印刷すべき印刷データを生成する印刷制御装置であって、 前記印刷装置の属性と前記フィニッシャ装置の属性に従って、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段と、 前記設定情報取得手段により取得される設定情報に基づき、前記印刷装置で印刷されるべき印刷面の順序を特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段と、 前記ページレイアウト決定手段により決定されたページレイアウトに従って、印刷データを生成する生成手段とを有し、 前記面順設定情報は、先に印刷する印刷面が前記折り処理により印刷用紙の内側と外側の何れに対応するかを指定する情報であり、 前記紙順設定情報は、先に印刷する印刷用紙が前記折り処理により冊子の外側と内側の何れに対応するかを指定する情報であることを特徴とする印刷制御装置。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及びその記載事項は、上記「第2 2.」で刊行物1として記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明1は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「ページレイアウト決定手段」に係る限定を省いて、「前記設定情報取得手段により取得される設定情報に基づき、前記印刷装置で印刷されるべき印刷面の順序を特定し、印刷データのページレイアウトを決定するページレイアウト決定手段」とし、また、「設定情報取得手段」に係る限定を省いて、「前記印刷装置の属性と前記フィニッシャ装置の属性に従って、面順設定情報と紙順設定情報とを含む製本印刷の設定情報を取得する設定情報取得手段」としたものである。 そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が上記「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-29 |
結審通知日 | 2009-06-01 |
審決日 | 2009-06-15 |
出願番号 | 特願2000-232088(P2000-232088) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑井 順一 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 大森 伸一 |
発明の名称 | 印刷制御装置及びその制御方法並びに記憶媒体 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |