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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1201403
審判番号 不服2007-16772  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-14 
確定日 2009-07-30 
事件の表示 特願2001- 48932「半導体製造システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-252161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成13年2月23日の出願であって、平成19年2月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月9日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年6月14日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月13日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年3月10日付けで拒絶理由を通知したところ、同年5月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年5月14日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「露光部、該露光部を制御する制御部および記憶装置を備えた半導体製造装置と、
観察部、該観察部を制御する制御部および記憶装置を備えた半導体検査装置と、
前記半導体製造装置および前記半導体検査装置が共通に使用する記憶装置と、
前記半導体製造装置、前記半導体検査装置および前記共通に使用する記憶装置を接続するストレージエリアネットワーク、並びに前記ストレージエリアネットワークからは独立して、前記半導体製造装置および半導体検査装置を接続し、前記半導体製造装置および前記半導体検査装置の制御および連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送する汎用ネットワークとを備え、
前記共通に使用する記憶装置は、前記半導体検査装置から得られた画像データおよび設計データを記憶するとともに、記憶装置を識別する記憶装置IDと記憶された画像データおよび設計データそのものを表す情報IDとの関連を示すリンク情報を記憶し、前記半導体製造装置は、前記設計データをもとに前記半導体検査装置が検査する検査位置情報を生成することを特徴とする半導体製造システム。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
(1)当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-77290号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(オ)の記載が図面とともにある。

(ア)「【請求項1】 半導体の表面画像を撮影する撮影手段と、
半導体処理の履歴情報を入力する履歴入力手段と、
撮影手段により得られた撮影画像を格納する画像データ領域と、履歴入力手段により入力された半導体処理履歴を文字情報として格納する履歴データ領域と、これらの画像データ領域と履歴データ領域とを関連付けるテーブルとを備えたデータベースと、
通信回線を介して接続されたホスト手段と端末手段とからなり、
前記ホスト手段は、前記端末手段から履歴情報の照会があったときに前記データベースを検索して該当する半導体の処理履歴を端末手段に出力する半導体製造工程管理システム。」

(イ)「【請求項6】 前記半導体製造工程管理システムは、操査電子顕微鏡を備えた半導体表面の回路パターン寸法測定装置を備え、
当該操査電子顕微鏡を通じて実行された測定結果と測定画像とが前記データベースにおける履歴データと画像データとして格納されることを特徴とする請求項1記載の半導体製造工程管理システム。」

(ウ)「【0017】
【実施例1】図1は半導体ウエハプロセス工場における生産自動化システムの概略制御系統図、図2は半導体ウエハプロセスの工程フロー図、図3は半導体製造時に使用するロット処理作業履歴の表示画面、図4は作業処理履歴表示を行う場合の概略説明図、図5はウエハ外観検査装置を示す説明図である。
【0018】図1において、1は半導体工程管理用データサーバであり、工程全体を管理するホストサーバとして機能する。すなわち、半導体工程管理用データサーバ1は、各生産ウエハロットの処理工程手順や処理条件およびウエハ処理後の収集データを扱い、かつ情報の保管を行う。また、該サーバ1は、前記管理のために大容量記憶装置で構成されたデータベース2を有している。
【0019】前記データベース2の構成を示したものが図20である。データベース2は、ロットIDをキーにして、ウエハ履歴データの格納アドレスとウエハ画像データの格納アドレスとが対応付けられたインデックステーブル2001を有している。
【0020】データベース2内のウエハ履歴データ2002には、図3に示すような半導体製造工程における処理履歴がテキストデータとして格納されている。また、ウエハ画像データ2003には、後述の外観検査装置20等で得られたウエハ表面の画像データが格納されている。このようにインデックステーブル2001によってウエハ履歴データ2002とウエハ画像データ2003とが関連付けられて管理されている。
【0021】前記半導体工程管理用データサーバ1は、LAN3に接続されており、当該LAN3には要所要所において通信ネットワーク用ブリッジ4を介して製造工程の1エリアを管理する自動化用エリアコンピュータ5と接続されている。
【0022】自動化用エリアコンピュータ5には、リピータ7を介して半導体工程管理用表示端末10(図4参照)が接続されている。さらにターミナルサーバ6を介して各種の製造装置8、測定機・検査装置9が接続されている。さらに、自動化用エリアコンピュータ5は、搬送コントローラ11と接続され該搬送コントローラ11は搬送制御用LANに接続されている。
【0023】上記システム構成において、半導体ウエハは搬送コントローラ11により制御される搬送系を通じて製造装置8に搬送・移載される。そして、ウエハ処理条件が半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)によってデータペース2からLAN3、ブリッジ4およびターミナルサーバ6を通して製造装置8に伝えられて処理が行われる。
【0024】処理終了後のロット作業処理履歴情報および収集データは逆のルートでデータベース2に格納された後にデータを必要とする各所で利用される。ウエハ処理後は通常ウエハ外観検査を行い次の処理工程に進む。図5はウエハ外観検査装置20の構成を示したものである。このウエハ外観検査装置20は図1では測定機・検査装置9に含まれており、前述の前記製造装置8と同様にターミナルサーバ6等を介して半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に接続されている。
【0025】図3は、半導体製造時のロット毎の作業履歴であり、これは半導体工程管理用表示端末10の表示画面上に表示されるようになっている。すなわち、ウエハ処理の途中で、処理の進捗の確認およびウエハ処理上何か問題が起きていないかをチェックするために、各ロットについてウエハ処理の作業履歴をオペレータが確認する必要がある。これらは従来技術では、各ウエハロットにランシート、あるいはロットトラベラと称すウエハ処理の作業履歴を記入したシートがロットと一緒に添付され、ウエハ処理を行う毎にオペレータが作業記録を記入していた。しかし、本実施例では、ウエハカセット13に添付されたバーコード14をバーコードリーダ17で読み取り、半導体工程管理用表示端末10でロットを認識することによって、当該ウエハカセット13に収容されたウエハ15の履歴を半導体工程管理用データベース2より呼び出して半導体工程管理用表示端末10上の表示画面に呼び出すことによって、ウエハの作業履歴を簡単に確認できるようになっている。
【0026】図3の表示画面にはロットの情報として製品名、枚数、現在の仕掛かり工程と過去の処理工程、処理装置、処理日時、処理条件、処理を行った作業者ID等の処理作業履歴情報および該ロットについてのこれからの処理工程フロー等が表示されている。」

(エ)「【0044】
【実施例3】図9は測長機に使用される半導体用走査電子顕微鏡の概要である。同図において、測長機401として用いられる走査電子顕微鏡40は、本体41と、ウエハカセットオートローダ42と、コントロールユニット43および操作部44で構成されている。また、この操作電子顕微鏡40(審決注:「走査電子顕微鏡40」の誤記と認める。)は、スキャンコンバータ48a,パターン認識部48bおよび基準パターン保存部48cとからなる自動位置出しユニット48を有している。この自動位置出しユニット48は、測長を行う回路パターンに対し予め基準パターンを保持しておき、実際の回路パターンとの比較を行いそのX-Y座標のズレ量を計測して測長部本体に伝え、ズレを補正して測長する回路パターンの位置出しを行うものである。
【0045】操作電子顕微鏡40(審決注:「走査電子顕微鏡40」の誤記と認める。)の画像はカメラ45によって撮影され、モニタ46の表示画面に表示されるとともに、ネットワーク回線を通じて半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に送られる。
【0046】次に、図10に測長工程におけるホストとの通信シーケンスを示す。まず、図9のウエハカセットオートローダ42にウエハカセット13がセットされ、測長機401のそばの半導体工程管理用表示端末10のバーコードリーダ17によりカセットIDが読まれて(1001)、これが半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に送られる。半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)では、データベース2を参照して該当するカセット内のロットの工程チェックを行い(1002)、当該チェックの結果が正しければ(1003)、ロットID、ロット情報および測定レシピを通信ネットワーク回線47を介して測長機401に送る。
【0047】測長機401では、半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に測定開始を通知するとともに、前記測定レシピにしたがって測定用ウエハを測定ステージにセットし(1004)、自動位置出しユニット48によってウエハの位置出しを行い(1005)、走査電子顕微鏡40を用いた寸法測定作業により測定データを取得する(1006)。この測定データの取得は具体的には、走査電子顕微鏡40によって得られるウエハ面の回路パターン画像を画像と一緒に表示されるカーソルを使用して、オペレータがパターン寸法を測定することにより行う。
【0048】このとき、カメラ45で測長画像の取り込みを行い(1007)、これらで得られた測定結果と測長画像を通信ネットワーク回線47を通じて半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に送る。
【0049】半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)では、上記で得られた測定結果と測長画像とを履歴情報としてデータベース2に格納する(1008)。そして測長機401ではウエハに対して次の位置での測長が行われる(1009)。この測長結果も前記ステップ1004?1008と同様に半導体工程管理用データサーバ1(ホスト)に送られる。
【0050】測長工程の完了は、半導体工程管理用表示端末10に完了コマンドが入力されることにより行われる(1010)。このように本実施例では、測長工程においても測定作業処理の履歴情報と回路パターンの画像イメージ情報を同時に扱うことで、測長時に得られる情報が飛躍的に増加する。」

(オ)「【0054】・・・(中略)・・・オペレータ(検査担当者)は、この測長結果をチェックし(1206)、さらに寸法入力が必要な場合には半導体工程管理用表示端末10の検査結果入力部30より寸法データの入力を行う。」

(2)また、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-141932号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の(カ)ないし(ク)の記載が図面とともにある。

(カ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、作成したパターンの欠陥検査に関し、特にレチクル、マスクないしウエハ上に形成した微細パターンの欠陥検査に関する。」

(キ)「【0002】本明細書において、「設計データ」とは目的を果たす設計パターンを作成するために初めて作成した第1次設計データ、用途に応じて第1次設計データを編集することによって得られた、露光装置用データ等の、第2次設計データのいずれをも指すものとする。実際に作成した実パターンの欠陥検査には、パターン上の位置に応じてデータが並ぶ露光装置用のパターンデータを用いると便利な場合が多い。たとえば、イーテック(ETEC)社のメービス(MEBES)フォーマットのデータを用いる。このようなデータも「設計データ」と呼ぶ。」

(ク)「【0003】
【従来の技術】半導体集積回路装置、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置等の回路パターンは、ますます高密度化、高集積化している。回路パターンの複雑化と共に、パターンデータの量は増大し、パターンの欠陥も生じ易くなる。パターンの欠陥は回路の致命的な事故につながり易く、パターンの欠陥検査が必須となる。」

2 引用例1記載の発明の認定
(1)引用例1の「測長機」は長さを測定する機械であることは明らかである。また、引用例1の「測長機」では、「走査電子顕微鏡40を用いた寸法測定作業により測定データを取得」し、「この測定データの取得は具体的には、走査電子顕微鏡40によって得られるウエハ面の回路パターン画像を画像と一緒に表示されるカーソルを使用して、オペレータがパターン寸法を測定することにより行」い(引用例1の上記記載事項(エ)の段落【0047】を参照。)、引用例1の上記記載事項(オ)には「オペレータ(検査担当者)は、この測長結果をチェック」すると記載されていることから、引用例1の「半導体製造工程管理システム」において「測長機」により「回路パターン」の「パターン寸法を測定する」のは、前記「回路パターン」を「検査」するためであることは明らかである。
したがって、引用例1の「測長機」は、引用例1の「測定機・検査装置9」の一つであると認めることができる。

(2)引用例1の上記記載事項(エ)の記載から、引用例1の上記記載事項(エ)の段落【0044】の「測長部本体」は、同段落の「本体41」を指すことは明らかである。

(3)すると、引用例1の上記記載事項(ア)ないし(オ)から、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「半導体工程管理用データサーバ1と、製造装置8と、測長機とを備え、前記半導体工程管理用データサーバ1、前記製造装置8及び前記測長機がLAN3で接続された半導体製造工程管理システムであって、
前記半導体工程管理用データサーバ1は、各生産ウエハロットの処理工程手順や処理条件およびウエハ処理後の収集データを扱い、かつ情報の保管を行って、工程全体を管理するホストサーバとして機能するとともに、大容量記憶装置で構成されたデータベース2を有し、
前記測長機として用いられる走査電子顕微鏡40は、本体41と、コントロールユニット43と、カメラ45と、自動位置出しユニット48とを有し、
前記自動位置出しユニット48は、スキャンコンバータ48a、パターン認識部48bおよび基準パターン保存部48cとからなり、測長を行う回路パターンに対し予め基準パターンを保持しておき、実際の回路パターンとの比較を行いそのX-Y座標のズレ量を計測して前記本体41に伝え、ズレを補正して測長する回路パターンの位置出しを行うものであり、
前記半導体工程管理用データサーバ1は、ウエハ処理条件を前記データベース2から前記LAN3を通じて前記製造装置8に伝え、前記製造装置8はウエハに対して処理を行い、処理終了後のロット作業処理履歴情報および収集データは逆のルートで前記データベース2に格納され、
前記半導体工程管理用データサーバ1は、ロットID、ロット情報および測定レシピを前記LAN3を介して前記測長機に送り、
前記測長機では、前記測定レシピにしたがって測定用ウエハを測定ステージにセットし、前記自動位置出しユニット48によってウエハの位置出しを行い、前記走査電子顕微鏡40を用いた寸法測定作業により測定データを取得するとともに、前記カメラ45で測長画像の取り込みを行い、これらで得られた測定結果と前記測長画像を前記LAN3を通じて前記半導体工程管理用データサーバ1に送り、前記半導体工程管理用データサーバ1は、前記測定結果と前記測長画像とを履歴情報としてデータベース2に格納し、
前記データベース2は、前記ロットIDをキーにして、ウエハ履歴データの格納アドレスとウエハ画像データの格納アドレスとが対応付けられたインデックステーブル2001を有し、
前記測定データの取得は、前記走査電子顕微鏡40によって得られるウエハ面の回路パターン画像を画像と一緒に表示されるカーソルを使用して、オペレータ(検査担当者)がパターン寸法を測定することにより行う、
半導体製造工程管理システム。」(以下、「引用発明1」という。)

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「製造装置8」と、本願発明の「露光部、該露光部を制御する制御部および記憶装置を備えた半導体製造装置」とは、「半導体製造装置」である点で一致する。

(2)上記第2の2(1)で述べたとおり、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」において「測長機」により「回路パターン」の「パターン寸法を測定する」のは、前記「回路パターン」を「検査」するためであることは明らかである。したがって、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「測長機」は、本願発明の「半導体検査装置」に相当する。
また、引用発明1の「走査電子顕微鏡40」の「本体41」、「基準パターン保存部48c」は、それぞれ、本願発明の「観察部」、「記憶装置」に相当する。
さらに、引用発明1の「コントロールユニット43」が「走査電子顕微鏡40」の「本体41」を制御することは明らかであるから、引用発明1の「コントロールユニット43」は、本願発明の「該観察部を制御する制御部」に相当する。

(3)引用発明1では「処理終了後のロット作業処理履歴情報および収集データは逆のルートで前記データベース2に格納され」ているから、引用発明1の「製造装置8」が「ロット作業処理履歴情報および収集データ」を格納するために「データベース2」を使用していることは明らかである。また、引用発明1では「前記半導体工程管理用データサーバ1は、ウエハ処理条件を前記データベース2から前記LAN3を通じて前記製造装置8に伝え」ているから、引用発明1の「製造装置8」が「ウエハ処理条件」を格納している「データベース2」を使用していることは明らかである。
さらに、引用発明1では「前記走査電子顕微鏡40を用いた寸法測定作業により測定データを取得するとともに、前記カメラ45で測長画像の取り込みを行い、これらで得られた測定結果と前記測長画像を前記LAN3を通じて前記半導体工程管理用データサーバ1に送り、前記半導体工程管理用データサーバ1は、前記測定結果と前記測長画像とを履歴情報としてデータベース2に格納し」ているから、引用発明1の「測長機」が「測定結果」及び「測長画像」を格納するために「データベース2」を使用していることは明らかである。
したがって、引用発明1の「製造装置8」及び「測長機」が使用する「データベース2」は、本願発明の「前記半導体製造装置および前記半導体検査装置が共通に使用する記憶装置」に相当する。

(4)ア 引用発明1では「前記半導体工程管理用データサーバ1、前記製造装置8及び前記測長機がLAN3で接続され」、「前記半導体工程管理用データサーバ1は」「大容量記憶装置で構成されたデータベース2を有し」ているから、引用発明1の「LAN3」は、「製造装置8」、「測長機」及び「データベース2」を接続していることは明らかである。
したがって、引用発明1の「製造装置8」、「測長機」及び「データベース2」を接続する「LAN3」と、本願発明の「前記半導体製造装置、前記半導体検査装置および前記共通に使用する記憶装置を接続するストレージエリアネットワーク」とは、「前記半導体製造装置、前記半導体検査装置および前記共通に使用する記憶装置を接続するネットワーク」である点で一致する。

イ また、引用発明1の「半導体工程管理用データサーバ1」は、「各生産ウエハロットの処理工程手順や処理条件およびウエハ処理後の収集データを扱い、かつ情報の保管を行って、工程全体を管理するホストサーバとして機能」するものであり、「前記半導体工程管理用データサーバ1、前記製造装置8及び前記測長機がLAN3で接続され」ているから、引用発明1の「半導体工程管理用データサーバ1」は「製造装置8」及び「測長機」の制御及び連携を行っていることは明らかであるし、「LAN3」がこのような制御及び連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送することも明らかである。
したがって、引用発明1の「前記製造装置8及び前記測長機」を「接続」し、「製造装置8」及び「測長機」の制御及び連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送する「LAN3」は、本願発明の「前記半導体製造装置および半導体検査装置を接続し、前記半導体製造装置および前記半導体検査装置の制御および連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送する汎用ネットワーク」に相当する。

(5)上記第2の3(2)で述べたとおり、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「測長機」は、本願発明の「半導体検査装置」に相当するから、引用発明1の「測長機」で「取り込」まれた「測長画像」は、本願発明の「前記半導体検査装置から得られた画像データ」に相当する。
また、引用発明1では「半導体工程管理用データサーバ1は、ウエハ処理条件を前記データペース2から前記LAN3を通じて前記製造装置8に伝え、前記製造装置8はウエハに対して処理を行」っているところ、設計データがなければ製造装置8はウエハに対して処理を行うことができないから、引用発明1の「データベース2」には設計データが格納されていることは明らかである。
したがって、引用発明1の「測長機」で「取り込」まれた「測長画像」及び設計データを「データベース2に格納する」ことは、本願発明の「前記共通に使用する記憶装置は、前記半導体検査装置から得られた画像データおよび設計データを記憶する」ことに相当する。

(6)引用発明1の「測長を行う回路パターンに対し予め基準パターンを保持しておき、実際の回路パターンとの比較を行いそのX-Y座標のズレ量を計測して前記本体41に伝え、ズレを補正して測長する回路パターンの位置出しを行う」ことは、引用発明1の「自動位置出しユニット48によってウエハの位置出しを行」うことを詳細に述べたものであることは明らかである。また、引用発明1では「自動位置出しユニット48によってウエハの位置出しを行い、前記走査電子顕微鏡40を用いた寸法測定作業により測定データを取得するとともに、前記カメラ45で測長画像の取り込みを行」っている。そして、引用発明1では「ウエハ」上のいずれかの位置に「測長する回路パターン」が形成されている。すると、引用発明1の「自動位置出しユニット48」は「測長機」が「ウエハ」上のどの位置を測長するのかを決定するものであるから、引用発明1の「測長機」の「自動位置出しユニット48」は「測長機」が測長する位置情報を生成するものであることは明らかである。
したがって、引用発明1の「測長機」の「自動位置出しユニット48」は「測長機」が測長する位置情報を生成することと、本願発明の「前記半導体製造装置は、前記設計データをもとに前記半導体検査装置が検査する検査位置情報を生成する」こととは、「前記半導体検査装置が検査する検査位置情報を生成する」点で一致する。

(7)すると、本願発明と引用発明1とは、

「半導体製造装置と、
観察部、該観察部を制御する制御部および記憶装置を備えた半導体検査装置と、
前記半導体製造装置および前記半導体検査装置が共通に使用する記憶装置と、
前記半導体製造装置、前記半導体検査装置および前記共通に使用する記憶装置を接続するネットワーク、並びに、前記半導体製造装置および半導体検査装置を接続し、前記半導体製造装置および前記半導体検査装置の制御および連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送する汎用ネットワークを備え、
前記共通に使用する記憶装置は、前記半導体検査装置から得られた画像データおよび設計データを記憶し、
前記半導体検査装置が検査する検査位置情報を生成する半導体製造システム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本願発明の「半導体製造装置」は「露光部、該露光部を制御する制御部および記憶装置を備えた」のに対し、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「製造装置8」にはこのような限定がない点。

〈相違点2〉
本願発明では「前記半導体製造装置、前記半導体検査装置および前記共通に使用する記憶装置を接続する」ネットワークが「ストレージエリアネットワーク」であるとともに、「前記半導体製造装置および半導体検査装置を接続し、前記半導体製造装置および前記半導体検査装置の制御および連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送する」ネットワークが「前記ストレージエリアネットワークからは独立し」た「汎用ネットワーク」であるのに対し、引用発明1では「製造装置8」、「測長機」及び「データベース2」は「LAN3」で接続されるとともに、「製造装置8」及び「測長機」の制御及び連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを伝送するネットワークが前記「LAN3」である点。

〈相違点3〉
本願発明の「共通に使用する記憶装置」は「記憶装置を識別する記憶装置IDと記憶された画像データおよび設計データそのものを表す情報IDとの関連を示すリンク情報を記憶」するのに対し、引用発明1には「大容量記憶装置で構成されたデータベース2」が前記リンク情報を記憶するという限定がない点。

〈相違点4〉
本願発明では「前記半導体検査装置が検査する検査位置情報を」「前記半導体製造装置」が「前記設計データをもとに」「生成する」のに対し、引用発明1では「測長機」が測長する位置情報を「測長機」の「自動位置出しユニット48」が生成する点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
半導体製造システムの分野では、半導体製造システムの製造装置に露光装置が含まれること、及び、前記露光装置には前記露光装置を制御する制御部が存在することは、いずれも、本願出願時における技術常識である。すると、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「製造装置8」に露光装置が含まれること、及び、前記露光装置には前記露光装置を制御する制御部が存在することは、いずれも、本願出願時における技術常識に照らし明らかである。
そして、引用発明1の「半導体工程管理用データサーバ1」と「製造装置8」との間では、「LAN3」を通じて「ウエハ処理条件」及び「ロット作業処理履歴情報」といった情報をやりとりしているところ、2つの装置がネットワークで接続されていて前記2つの装置間で情報のやりとりを行う場合に前記2つの装置がそれぞれ記憶装置を有することは本願出願時における技術常識であるから、引用発明1の「製造装置8」が記憶装置を有していることも明らかである。また、既に述べたとおり、引用発明1の「製造装置8」における露光装置には前記露光装置を制御する制御部が存在するところ、制御部で制御する際に制御情報を一時的に格納するための記憶装置を設けることが本願出願時における技術常識であることからも、引用発明1の「製造装置8」が記憶装置を有していることは明らかである。
このように本願出願時における技術常識に照らすと、上記相違点1は実質的に相違点ではない、または、仮に、上記相違点1が実質的に相違点であるとしても、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
半導体集積回路の分野では、回路パターンの高密度化及び高集積化に伴って、設計データのデータ量が増大することは、本願出願時において周知の事項である(例えば、引用例2の上記記載事項(ク)を参照。)。また、回路パターンが高密度化及び高集積化すると、前記回路パターンを検査して得られる画像のデータ量も増大することは、当業者にとって自明である。すると、引用発明1の「前記半導体工程管理用データサーバ1、前記データベース2、前記製造装置8及び前記測長機がLAN3で接続された半導体製造工程管理システム」では、回路パターンの高密度化及び高集積化に伴って設計データのデータ量や「測長画像」のデータ量が増大し、その結果、「LAN3」が混雑するという問題が生じることは、当業者にとって自明である。
そして、LANのような汎用ネットワーク回線の混雑を解消するために、複数のクライアントシステムと前記複数のクライアントシステムが共通に使用する記憶装置とを高速のストレージアリアネットワーク(SAN)で接続するとともに、前記複数のクライアントシステムとサーバーシステムとを前記SANから独立したネットワークである低速のLANで接続し、通信容量の大きなデータ系については高速のストレージアリアネットワーク(SAN)経由で送受を行い、通信容量の少ない制御コマンド系については低速のLAN経由で送受を行うことは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開2000-348005号公報(段落【0026】?【0027】、図6?7等。)、国際公開第00/77606号(第1頁第11?31行、第4頁第34行?第5頁第7行、第6頁第16?24行、Fig.1)を参照。)。
すると、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」において「LAN3」の混雑を解消するために、上記周知技術を適用して、引用発明1の「データベース2」と「製造装置8」と「測長機」を「LAN3」から独立したネットワークである高速のストレージアリアネットワーク(SAN)で接続して、データ量の大きな設計データ及び「測長画像」を前記SAN経由で送受するとともに、引用発明1の「製造装置8」及び「測長機」の制御及び連携を行うための制御コマンドであるメッセージデータを前記「LAN3」経由で送受することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
上記第2の4(2)で述べたとおり、引用発明1の「前記半導体工程管理用データサーバ1、前記データベース2、前記製造装置8及び前記測長機がLAN3で接続された半導体製造工程管理システム」では、回路パターンの高密度化及び高集積化に伴って設計データのデータ量や「測長画像」のデータ量が増大する。また、上記第2の3(5)で述べたとおり、前記設計データ及び前記「測長画像」データは「大容量記憶装置で構成されたデータベース2」に格納されている。すると、回路パターンの高密度化及び高集積化に伴って、引用発明1の「大容量記憶装置で構成されたデータベース2」に格納されているデータの量が増大することは明らかである。
そして、RAID等大容量のデータを格納する記憶装置の分野では、記憶装置を識別する記憶装置IDとデータそのものを表す情報IDとの関連を示すリンク情報を記憶することは、本願出願時において周知の技術的事項である(一例として、特開平10-269695号公報(特に、段落【0034】?【0036】、図4)を参照。同公報の「ディスク装置」の「ターゲットID番号」、「論理ブロックアドレス」、「ディスク装置」の「ターゲットID番号」及び「論理ブロックアドレス」を含む「表」は、それぞれ、本願発明の「記憶装置を識別する記憶装置ID」、「データそのものを表す情報ID」、「リンク情報」に相当する。)。
すると、引用発明1に上記周知技術を適用して、記憶装置を識別する記憶装置IDと設計データ及び「測長画像」データを表す情報IDとの関連を示すリンク情報を「大容量記憶装置で構成されたデータベース2」に記憶することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
上記第2の4(1)で述べたとおり、引用発明1の「半導体製造工程管理システム」における「製造装置8」に露光装置が含まれることは、本願出願時における技術常識に照らし明らかである。
そして、半導体製造システムの分野では、露光装置は、設計データをそのまま用いるのではなく、前記設計データを露光装置用に変換した設計データを利用することは、本願出願時における技術常識である(一例として、引用例2の上記記載事項(キ)の「目的を果たす設計パターンを作成するために初めて作成した第1次設計データ、用途に応じて第1次設計データを編集することによって得られた、露光装置用データ」という記載を参照。)。
すると、引用発明1の「製造装置8」の露光装置には、露光装置用に変換された設計データが存在することは、本願出願時の技術常識に照らし明らかである。
そして、引用例2の上記記載事項(キ)には、「実際に作成した実パターンの欠陥検査には、パターン上の位置に応じてデータが並ぶ露光装置用のパターンデータを用いると便利」であることが記載されているから、引用例2の前記記載に基づいて、引用発明1の「製造装置8」の露光装置に存在する露光装置用に変換された設計データを利用して、露光装置用に変換された設計データが存在する引用発明1の「製造装置8」の露光装置で「測長機」が測長する位置情報を生成することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

5 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点1ないし4に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-27 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願2001-48932(P2001-48932)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔大熊 靖夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 村田 尚英
日夏 貴史
発明の名称 半導体製造システム  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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