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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1201484
審判番号 不服2007-26877  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-01 
確定日 2009-07-29 
事件の表示 特願2004-335159「電磁波遮蔽手段を含む能動素子表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-148757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、成16年(2004年)11月18日(パリ条約による優先権主張、平成15年11月19日、大韓民国)の出願(特願2004-335159号)であって、平成19年6月27日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年10月1日付で拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付で手続補正がなされ、平成20年7月30日付で当審において拒絶理由の通知をし、これに対して平成20年11月5日付で意見書が提出され、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年11月5日付手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「素子が一列に配置され又はデルタ構造で配列されてデータ信号に従って発光する画素領域と、一定のスイッチング信号を一つ目のスイッチング素子のゲート電極に印加するスキャンドライバと、一定のデータ情報を一つ目のスイッチング素子のソース電極に印加するデータドライバと、画素領域に第1の電源電圧を印加する導電特性を有する第1の電源電圧ラインと、を含む能動素子表示装置にあって、
電界や磁界の特性を有する電磁波を遮蔽する手段を備え、
前記電界や磁界の特性を有する電磁波を遮蔽する手段は、前記第1の電源電圧と反対の極性を有する電源電圧を発生させる電磁波遮蔽手段を含み、
前記電磁波遮蔽手段は、前記第1の電源電圧ラインと平行に配線された電導性配線であり、
前記第1の電源電圧ラインは、前記スキャンドライバおよび前記画素領域の外側に配線された上部第1の電源電圧ラインと、前記スキャンドライバおよび前記画素領域と、前記データドライバとの間に配線された下部第1の電源電圧ラインとを備え、
前記電磁波遮蔽手段は、前記上部第1の電源電圧ラインと平行に配線された第1の電導性配線と、前記下部第1の電源電圧ラインと平行に配線された第2の電導性配線とを備えることを特徴とする能動素子表示装置。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-40961号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「2 引用発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0032】図1は、発明の表示装置の第1の実施の形態を示すブロック図を表すと共に、本発明の表示装置を構成する構成要素の概略的なレイアウトを示す概略レイアウト図を表す。また、図6と共通の構成要素には共通の参照文字/数字を付してある。
【0033】図1に示す表示装置は、アノード61Aと一定電圧にバイアスされたカソード61Kとを有するEL素子61と、EL素子61のアノードとバイアス配線67間に接続されたTFT62と、TFT62のゲートとデータ線65間に接続されスイッチとして動作するTFT63と、TFT62のゲートとバイアス配線67間に接続された容量64とをマトリクス状に配置している。
【0034】また発明の表示装置は、データ線65を駆動するデータ線駆動回路68と、走査線66を駆動する走査線駆動回路69と、バイアス配線67を駆動するバイアス電圧生成回路11とを備えている。
【0035】さらに発明の表示装置は、EL素子61とTFT62,63と容量64とを含む画素をマトリクス状に配列した画素領域12の外側に、リング状に配置した周回バイアス配線13を備えている。
【0036】周回バイアス配線13とバイアス電圧生成回路11の出力端子とは、共通バイアス配線13Cにより接続され、画素領域12内部のバイアス配線67と周回バイアス配線13とは、節点131A,131Bおよび節点132A,132B・・・により接続されている。 【0037】すなわち、図6に示す従来のアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置のバイアス配線67は、画素領域の一辺に配置された共通配線上の一節点と接続し、この共通配線がバイアス電圧源610の出力端子に接続する配線構造であったが、図1に示す本発明の表示装置は、上下2箇所の節点(131A,131B),(132A,132B)・・・でバイアス配線67と周回バイアス配線13とが接続されている。
【0038】走査線駆動回路69により走査線66が活性化されると、活性化された走査線66に接続しているTFT63は導通状態となり、データ線駆動回路68からデータ線65とTFT63を介して容量64に電流が流れ容量64が充電される。
【0039】一方走査線駆動回路69により走査線66が非活性化されると、非活性化された走査線66に接続しているTFT63は非導通状態となり、容量64に充電された電荷は保持されTFT62のゲートに接続する容量64の端子電圧は一定となる。そして、この端子電圧がTFT62のゲートにバイアスされ、TFT62のゲート電圧がしきい値よりも高くなるとTFT62が導通し、バイアス電圧生成回路11から共通バイアス配線11Cと周回バイアス配線13さらにバイアス配線67を介して、EL素子61に電流が供給され、EL素子61は電流値に応じた輝度で発光する。
【0040】EL素子61に流れ込む電流Ielは、TFT42のゲート電圧とソース・ドレイン間の電圧により定まるが、特許公報第2784615号または特開平11-231835号公報に記載されている技術を用いて、ゲートに印加するパルス幅を変えて多階調を実現する場合、TFT62のソース・ドレイン間電圧は高々0.1?0.2V程度となり、EL素子61のアノード61Aの電圧は、バイアス電圧生成回路11から出力される出力電圧VbからTFT62のソース・ドレイン間電圧(0.1?0.2V)を引いた値となる。従って、パルス幅変調方式により階調を制御する場合、電流Ielはバイアス電圧生成回路11から出力される出力電圧Vbにより制御される。
【0041】言い換えるとパルス幅変調方式を用いた本発明の表示装置において、データ線65を介して入力する画像信号に対応する階調は、TFT62のゲートに印加されるパルス幅により制御され、階調の基準となる輝度についてはバイアス電圧生成回路11から出力される電圧Vbにより制御される。
【0042】図1において、周回バイアス配線13は、配線抵抗を小さくするために低抵抗率の配線材料を主として用い、配線幅は画素領域12内部の配線である走査線46,バイアス配線47よりも太くして配線される。
【0043】従って、各画素からバイアス配線67および周回バイアス配線13を介してのバイアス電圧生成回路11の出力端子までの配線抵抗は、周回バイアス配線13の配線抵抗が小さいこと、1本のバイアス配線67が上下2箇所の節点で周回バイアス配線で接続されていることから、従来の表示装置を構成する各画素からバイアス電圧源610までの配線抵抗よりも大幅に小さくなる。
【0044】一例を挙げて具体的に説明すると、バイアス電圧生成回路11の出力端子から低抵抗の共通バイアス配線13Cと、周回バイアス配線13を介して節点131Aおよび節点1331Bを通ってバイアス配線67に電流が流れ込み、さらにこのバイアス配線67に接続し活性化されている画素を構成する発光素子に電流が供給される。
【0045】従って、バイアス配線67における電圧勾配が大幅に緩和され、発光素子に流れる電流の不均一に起因する輝度ムラが大幅に改善される。
【0046】言い換えると、バイアス電圧生成回路11から出力される出力電圧と、画素領域12内部の画素の輝度、すなわちこの画素を構成する発光素子の輝度に対応する電流とが与えられた場合、これらの値を満足するように、周回バイアス配線13と共通バイアス配線13Cの配線抵抗が算出され、算出された配線抵抗値になるように周回バイアス配線13と共通バイアス配線13Cが配線される。 」

2 引用発明の認定
上記記載から、引用例1には、 表示装置に関し、
「表示装置は、EL素子61とTFT62,63と容量64とを含む画素をマトリクス状に配列した画素領域12の外側に、リング状に配置した周回バイアス配線13を備え、周回バイアス配線13とバイアス電圧生成回路11の出力端子とは、共通バイアス配線13Cにより接続され、画素領域12内部のバイアス配線67と周回バイアス配線13とは、上下2箇所の節点である節点131A,131Bおよび節点132A,132B・・・により接続され、走査線駆動回路69により走査線66が活性化されると、活性化された走査線66に接続しているTFT63は導通状態となり、データ線駆動回路68からデータ線65とTFT63を介して容量64に電流が流れ容量64が充電され、一方走査線駆動回路69により走査線66が非活性化されると、非活性化された走査線66に接続しているTFT63は非導通状態となり、容量64に充電された電荷は保持されTFT62のゲートに接続する容量64の端子電圧は一定となり、この端子電圧がTFT62のゲートにバイアスされ、TFT62のゲート電圧がしきい値よりも高くなるとTFT62が導通し、バイアス電圧生成回路11から共通バイアス配線11Cと周回バイアス配線13さらにバイアス配線67を介して、EL素子61に電流が供給され、EL素子61は電流値に応じた輝度で発光する表示装置。 」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 引用例2
また、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-271075号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「第5 当審の判断」の引用発明2の認定において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0012】図1は本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す平面図であり、図2は図1に示す有機EL表示装置のA-A線に沿った断面図である。また、図3は、図1及び図2に示す有機EL表示装置のアレイ基板の一例を概略的に示す平面図である。なお、図2では、図1に示す有機EL表示装置の一部のみが描かれている。
【0013】図1?図3に示す有機EL表示装置1は、アレイ基板2と封止基板3とをシール層4を介して対向させた構造を有している。シール層4は封止基板3の周縁に沿って設けられており、それにより、アレイ基板2と封止基板3との間に密閉された空間を形成している。この空間は、例えば希ガスのような不活性ガスで満たされている。
【0014】アレイ基板2は、表示領域6と駆動回路領域7a,7bとを含んでいる。表示領域6には、表示画素8がアレイ状に配列されるとともに、表示画素の縦横の配列に沿って走査線9a及び信号線9bが配置されている。他方、駆動回路領域7a,7bには、走査線9aに走査信号に対応した電圧を印加する走査線ドライバ10a及び信号線9bに映像信号を印加する信号線ドライバ10bがそれぞれ配置されている。以下、アレイ基板2の構造について、さらに詳しく説明する。
【0015】アレイ基板2は、ガラス基板のような基板11を有している。基板11上には、例えば、SiN_(X)などからなるアンダーコート層12及びSiO_(2)などからなるアンダーコート層13が順次積層されている。アンダーコート層13上には、チャネル及びソース・ドレインが形成されたポリシリコン層のような半導体層14、ゲート絶縁膜15、及びゲート電極16が順次積層されており、それらはトップゲート型のTFT20a?20cを構成している。なお、TFT20a,20bはそれぞれpチャネル型及びnチャネル型のTFTであり、インバータを構成している。
【0016】ゲート絶縁膜15及びゲート電極16上には、SiO_(2)などからなる層間絶縁膜21が設けられている。層間絶縁膜21上には電極配線(ここでは、陰極配線とする)22、信号線9b及びソース・ドレイン電極23等が設けられており、それらは、SiN_(X)などからなるパッシベーション膜24で埋め込まれている。なお、ソース・ドレイン電極23は、層間絶縁膜21に設けられたコンタクトホールを介してTFT20a?20cのソース・ドレインに電気的に接続されている。
【0017】パッシベーション膜24上には、第1導電層(ここでは陽極)25及びポリイミドなどのような樹脂からなる隔壁層26が配置されている。第1導電層25は表示画素毎に独立島状に形成され、隔壁層26によりそれぞれ電気的に絶縁されている。隔壁層26には、それぞれの第1導電層25に対応して開口が設けられており、それら開口内で露出した第1導電層25上には、例えば、赤色、緑色、または青色の蛍光性有機化合物を含んだ薄膜である発光層27が設けられている。隔壁層26及び発光層27上には各表示画素に共通に連続して配置される共通電極として第2導電層(ここでは陰極)28が設けられており、第2導電層28はパッシベーション膜24及び隔壁層26に設けられたコンタクトホールを介して電極配線22に電気的に接続されている。それぞれの有機EL素子30は、これら第1導電層25,発光層27,第2導電層28で構成されている。
【0018】なお、隔壁層26には、シール層4の位置に、底面がパッシベーション膜24の上面で構成された溝が設けられ外部に接する隔壁層26がシール層4によって有機EL素子と不連続となるよう構成されている。このような構造によると、水蒸気などが隔壁層26を透過して上記空間内へと侵入するのを良好に抑制することができる。
【0019】本実施形態に係る有機EL表示装置1では、第2導電層28は表示領域6だけでなく駆動回路領域7a,7bをも覆うように設けられている。そのため、駆動回路領域7a,7b内のTFT20a,20bなどでなる駆動回路10a、10bは、第2導電層28によって静電遮蔽される。したがって、本実施形態によると、アレイ基板2と封止基板3との貼り合わせを完了する前のいずれかの段階で、駆動回路が静電気によって破壊されるのを防止することができる。
【0020】また、本実施形態に係る有機EL表示装置1では、駆動回路にトップゲート型のTFT20a,20bを使用している。すなわち、陰極として利用する第2導電層28とチャネルとの間にゲート電極16を介在させている。そのため、導電層28の電位に応じてTFT20a,20bの閾値電圧が変動するのを防止することができ、それゆえ、ゲート電極16に電圧を印加していない場合においても電流が流れるのを防止することができる。したがって、本実施形態によると、不要な電力消費を抑制することが可能である。
【0021】このように、本実施形態では、第2導電層28が駆動回路領域7a,7bを覆った構造とトップゲート型のTFT20a,20bとを組み合わせることにより、駆動回路の静電気による破壊を防止すること及び不要な電力消費を削減することの双方が可能となる。
【0022】また、本実施形態では、表示領域6だけでなく駆動回路領域7a,7bをも覆うように導電層28を設けるため、図1及び図2に示すように、表示領域6及び駆動回路領域7a,7bを含む領域の外側に電極配線22を配置することができる。そのため、各種構成要素のレイアウトの自由度が増し、設計が容易になる。なお、電極配線22は他の位置に配置してもよい。例えば、電極配線22の少なくとも一部を表示領域6と駆動回路領域7a,7bとの間に介在させてもよい。また、電極配線22は、図1に示すように環状である必要はなく、例えば線状であってもよい。」

4 引用例3
また、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-202367号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「第5 当審の判断」の引用発明3の認定において直接引用した記載に下線を付した。)
「【0055】本実施の形態では特に、図1及び図2に示すように、TFTアレイ基板1には、負電源VSSY用の配線VSSYを兼ねた定電位のシールド線80、負電源VSSX用の配線VSSXを兼ねた定電位のシールド線80’、正電源VDDX用の配線VDDXを兼ねた定電位のシールド線82、及び正電源VDDY用の配線VDDYを兼ねた定電位のシールド線86が配線されている。これらのシールド線80、80’、82及び86により、画像信号線である配線VID1?VID12は、配線CLX及びCLX’並びに配線ENB1及びENB2から電気的にシールドされている。従って、クロック信号CLXの周波数が高い場合でも、高周波制御信号線である配線CLX及びCLX’並びに配線ENB1及びENB2から配線VID1?VID12への高周波のクロックノイズ等の飛び込みを低減できる。
【0056】しかも、図1及び図2に示したように、第1画像信号線群の一例を構成する奇数番目の画像信号線VID1、3、5、7、9及び11は、TFTアレイ基板1上をX方向に見てデータ線駆動回路101の右側へ引き回されており、第2画像信号線群の一例を構成する偶数番目の画像信号線VID2、4、6、8、10及び12は、TFTアレイ基板1上でデータ線駆動回路101の左側へ引き回されている。従って、例えば12相展開というように比較的多相の相展開数を行うことにより、サンプリング回路301に供給される画像信号VID1?12の周波数を下げつつ、多数の配線VID1?12については、データ線駆動回路101の両側にバランス良く配置できる。この結果、サンプリング回路301及びデータ線駆動回路101からなるデータ信号供給手段を形成する領域をTFTアレイ基板1上に容易に確保することができる。従って、限られた基板サイズにおける画面の大型化が図られる。
【0057】本実施の形態では特に、図2に示したように、定電位のシールド線80’により、画像信号線たる配線VID1?12は、前述の高周波制御信号に属するクロック信号CLX及びCLX’並びにイネーブル信号ENB1及びENB2を供給する高周波制御信号線たる配線CLX及びCLX’並びに配線ENB1及びENB2から電気的にシールドされている。従って、クロック信号の周波数が高い場合でも、これらの高周波制御信号線から配線VID1?12への高周波のクロックノイズ等の飛び込みを低減できる。他方、前述の低周波制御信号に属するスタート信号DX及びDY、並びにクロック信号CLY及びCLY’については、配線VID1?12上の画像信号や、これに基づいて供給されたデータ線35上のデータ信号中の高周波ノイズの原因とはならない。このため、低周波制御信号線たる配線DX、DY、CLY及びCLY’は、定電位のシールド線によりシールドしてもよく、シールドしなくてもよい。本実施の形態では、図2に示したように、右側では配線VID1、3、…、11は、定電位の配線VDDYからなるシールド線86により配線DY、CLY及びCLY’からシールドされており、左側では配線VID2、4、…、12は定電位の配線VSSYからなるシールド線80により配線DYからシールドされている。また、配線DXからは、シールド線80’により配線VID1?12はシールドされている。
【0058】更に本実施の形態では特に、右側(奇数番目)の画像信号線群の中で高周波制御信号線たる配線CLX及びCLX’に近い側に位置する配線VID11は、配線VSSX及びVDDXから夫々なる2本のシールド線80’及び82の存在により、これらの配線CLX及びCLX’から離間されており、且つ電気的にシールドされている。また、左側(偶数番目)の画像信号線群の中で高周波制御信号線たる配線CLX及びCLX’に近い側に位置する配線VID12は、配線VSSXからなる1本のシールド線80’及び低周波制御信号線たる配線DXの存在により、これらの配線CLX及びCLX’から離間されており、且つ電気的にシールドされている。即ち、画像信号やデータ信号中の高周波ノイズの原因とはならない低周波制御信号線に属する配線DXを、高周波制御信号線たる配線CLX及びCLX’と配線VID12との間に、シールド線80’と共に配置することにより、配線CLX及びCLX’のVID12に対するクロックノイズ等の悪影響を更に低減できる。一般に距離及び障害物の介在に応じて電磁波は減少するので、配線CLX及びCLX’や配線ENB1及びENB2と配線VID1?12との間にシールド線(配線80、80’、82、86等の定電位の配線)や低周波制御信号線(配線DX、DY、CLY、CLY’等の低周波制御信号が供給される配線)をなるべく多く配線する構成により、クロックノイズを発生させる電磁波が減少して、クロックノイズ等が低減する。このように、シールド線以外に低周波制御信号線を高周波制御信号線と画像信号線との間に介在させることはTFT基板1上スペースの有効利用及びノイズ低減の観点から見て有利である。
【0059】また図2に示したように本実施の形態では、TFTアレイ基板1の周辺部上において、配線VID1?12に夫々接続された外部入力端子102は両側に配置されており、その間に配線ENB1、ENB2、CLX’及びCLXに接続された外部入力端子102が集中配置されている。そして、配線VID12に接続された外部入力端子102と配線ENB1に接続された外部入力端子102との間に、シールド線80’(配線VSSX)に接続された外部入力端子102が配置されている。また、配線VID11に接続された外部入力端子102と配線CLXに接続された外部入力端子102との間に、シールド線80’(配線VSSX)に接続された外部入力端子102が配置されている。従って、配線VID1?12と配線ENB1、ENB2、CLX’及びCLXとの間にシールド線80’を配線する構成を容易に得ることができる。特に、液晶装置200に入力される前段階で、例えば、表示情報処理回路等の外部回路から液晶装置200への配線中で、クロック信号CLX等が、画像信号VID1?12に対しクロックノイズ等を発生させてしまう事態を効果的に阻止し得る。このように本実施の形態によれば、液晶装置200に入力される前後において、クロック信号用の配線から画像信号用の配線への高周波のクロックノイズの飛び込み等を低減できる。尚、より好ましくは、TFTアレイ基板1の周辺部において外部入力端子102を形成可能な領域において、配線VID1?12用の外部入力端子102を可能な限り両側(右側及び左側)に寄せて配置すると共に、中央に集中配置される配線CLX’等用の外部入力端子102との間に可能な限り間隔を空けて、この間隔にシールド線80’等用の外部入力端子102を配置する。
【0060】本実施の形態では、配線VSSY、VSSX、VDDX及びVSSYを夫々延設してシールド線80、80’、82及び86とすることにより、外部入力端子や配線を共用することが可能となり、装置構成の簡略化と省スペース化を図ることが出来る。また、シールド線80、80’、82及び86の電位は、このように定電位線との共用化により、容易に定電位とされる。但し、電源用の配線とシールド線を別個に配線してもよい。
【0061】本実施の形態では、図2に示すように、負電源VSSXが入力される外部入力端子102が2つ設けられている。そして、配線VID1?VID12は、負電源VSSXの電位(負電位)とされたシールド線80’により、TFTアレイ基板1上で囲まれている。特に、シフトレジスタ回路101aと波形制御回路101bとの間にも、データ線35と同じAl等の金属層から形成されたシールド線80’は延設されている。そして、延設されたシールド線80’の先端部は、後述のように第1層間絶縁層を介してAl等の金属層の下方において、例えば走査線31と同じポリシリコン等の導電性層から形成されたシールド線接続部81を介して、波形制御回路101b及びバッファ回路101cを囲むようにしてシールド線80’に接続されている。
【0062】他方、図2に示すように、配線CLX及びCLX’は、データ線駆動回路101に隣接する部分においては、正電源VDDXの電位(正電位)とされたシールド線82により、TFTアレイ基板1上で囲まれている。特に、波形制御回路101bとバッファ回路101cとの間にも、データ線35と同じAl等の金属層から形成されたシールド線82は延設されており、その先端部は、例えば走査線31と同じポリシリコン等の導電性層から形成されたシールド線接続部83を介して波形制御回路101b及びシフトレジスタ回路101aを囲むようにしてシールド線82に接続されている。
【0063】従って、配線VID1?VID12は、TFTアレイ基板1上で配線CLX及びCLX’並びに配線ENB1及びENB2から2重にシールドされた構成が採られており、シフトレジスタ回路101a並びに波形制御回路101b及びバッファ回路101cに対するシールドも信頼性が高いものとされている。但し、このように囲む構成を採らなくても、配線CLX、CLX’、ENB1及びENB2と配線VID1?VID12との間にシールド線80、80’、82及び86が少なくとも一本介在するように構成すれば、シールドの効果は多少なりとも得られる。」

「【0073】ところで、本実施の形態では、液晶を直流駆動により劣化させないためや表示画面上のフリッカを防止するため等に、液晶駆動電圧を反転させる各種の方式、例えば、フィールド又はフレーム反転駆動、走査線反転駆動(所謂1H反転駆動)、データ線反転駆動(所謂1S反転駆動)、ドット反転駆動などを採用可能である。ここで特に、1S反転やドット反転といった相隣接するデータ線間で電圧極性を反転させて液晶駆動を行う場合には、図8(a)に示したように一本の配線VID1?12毎に櫛歯状にするよりも、図8(b)に示すように、相隣接する2本のデータ線35に対応する2本の配線VID1及び2、5及び6等を夫々一対として2本おきに一方の側(例えば右側)から引き回すと共に、それら以外の相隣接する2本のデータ線35に対応する2本の配線VID3及び4、7及び8等を夫々一対として2本おきに逆側(例えば左側)から引き回すと共に、データ線駆動回路101とサンプリング回路301の間で2本の配線を一対として夫々両側から櫛歯状にするのがより好ましい。このように配線すれば、TFTアレイ基板1上で相隣接する各対の配線1及び2、3及び4、…から供給される画像信号は夫々逆極性とされてデータ線35に供給されるので、これらの信号中に存在する同一のノイズ源に起因したノイズ成分については、これら各対をなす両者間で打ち消し合う効果が働くので、ノイズを低減するのに役立つ。」

(4)また、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-269846号公報(以下、「引用例4」という)には、次の事項が記載されている。
「【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、電磁波放射ノイズの発生源であるクロック信号の配線に、そのクロック信号と180°位相差のある反転クロック信号の配線を平行かつ同長に配設して、両配線に流れる電流を逆向きとしたため、両配線の電磁波放射ノイズを互いに相殺することができるので、電子回路から放射される高周波の電磁波放射ノイズを減少させて、電子回路自身および周辺機器の誤作動を防止し、機器の信頼性を向上させるという効果があり、さらに電子回路内のクロック信号配線の専有面積を小形化することができるという効果がある。」

(5)また、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-251779号公報(以下、「引用例5」という)には、次の事項が記載されている。
「【0019】ここで、一般的な高速信号伝送方式として、メイン配線の片側に高速信号の反転信号が伝搬するサブ配線を形成する方法があるが、本実施形態ではメイン配線2の両側にサブ配線3を形成している。
【0020】これはメイン配線2の両側にサブ配線3を形成し、メイン配線2に後述するような反転信号を印加した場合には、メイン配線の片側に形成された1本のサブ配線に反転信号を印加した場合よりも放射ノイズを10dBμV以上低くできるからである。」

第4 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「画素領域12」は、供給された電流値に応じた輝度で発光するEL素子を含むものであるから、本願発明の、素子が一列に配置され又はデルタ構造で配列されてデータ信号に従って発光する「画素領域」に相当する。

引用発明の「走査線駆動回路69」及び「データ線駆動回路68」は、走査線駆動回路69により走査線66が活性化されると、活性化された走査線66に接続しているTFT63は導通状態となり、データ線駆動回路68からデータ線65とTFT63を介して容量64に電流が流れ容量64が充電されるものであるから、それぞれ、本願発明の、一定のスイッチング信号を一つ目のスイッチング素子のゲート電極に印加する「スキャンドライバ」及び、一定のデータ情報を一つ目のスイッチング素子のソース電極に印加する「データドライバ」に相当する。

引用発明の「周回バイアス配線13」は、バイアス配線67を介してEL素子61に電流を供給するものであるから、本願発明の、画素領域に第1の電源電圧を印加する導電特性を有する「第1の電源電圧ライン」に相当する。

引用発明の「EL素子61は電流値に応じた輝度で発光する表示装置」は、本願発明の「能動素子表示装置」に相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「素子が一列に配置され又はデルタ構造で配列されてデータ信号に従って発光する画素領域と、一定のスイッチング信号を一つ目のスイッチング素子のゲート電極に印加するスキャンドライバと、一定のデータ情報を一つ目のスイッチング素子のソース電極に印加するデータドライバと、画素領域に第1の電源電圧を印加する導電特性を有する第1の電源電圧ラインと、を含む能動素子表示装置。」の発明である点で一致し、次の点で相違している。

3 相違点

(1)相違点1;
第1の電源電圧ラインが、本願発明においては「前記スキャンドライバおよび前記画素領域の外側に配線された上部第1の電源電圧ラインと、前記スキャンドライバおよび前記画素領域と、前記データドライバとの間に配線された下部第1の電源電圧ライン」からなるのに対し、引用発明においては、「EL素子61とTFT62,63と容量64とを含む画素をマトリクス状に配列した画素領域12の外側に、リング状に配置」した周回バイアス配線からなる点。

(2)相違点2;
本願発明においては、「電界や磁界の特性を有する電磁波を遮蔽する手段を備え、前記電磁波遮蔽手段は、前記上部第1の電源電圧ラインと平行に配線された第1の電導性配線と、前記下部第1の電源電圧ラインと平行に配線された第2の電導性配線とを備える」のに対し、引用発明においてはその点の限定がない点。

(3)相違点3;
本願発明においては、「前記電界や磁界の特性を有する電磁波を遮蔽する手段は、前記第1の電源電圧と反対の極性を有する電源電圧を発生させる電磁波遮蔽手段を含」むのに対し、引用発明においてはその点の限定がない点。


第5 当審の判断
1 上記の相違点について検討する。

(1)相違点1について
電源電圧ラインを基板上にどのように配線するかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項である。
特に、有機EL表示装置の発明である引用例2には、表示領域及び駆動回路領域の外側に設けられた電極配線22に関して
「なお、電極配線22は他の位置に配置してもよい。例えば、電極配線22の少なくとも一部を表示領域6と駆動回路領域7a,7bとの間に介在させてもよい。」(【0022】段落)
と記載されており、配線の設計として、表示領域及び表示回路領域との関係で、一部を表示領域及び表示回路領域の外側に配線し、他の一部を表示領域と表示回路領域の間に配線することが記載されているといえる。
引用発明の電源電圧ラインの配線に関しても、上記引用例2に記載の配線の設計を参酌して、電源電圧ラインの一部をスキャンドライバと画素領域の外側に配線し、残りの一部をデータドライバと画素領域の間に配線する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。すなわち、上記相違点1に係る事項は、引用例2の記載を参酌して当業者が容易に想到し得た事項に過ぎない。


(2)相違点2について
引用例3には、
「TFTアレイ基板1には、負電源VSSY用の配線VSSYを兼ねた定電位のシールド線80、負電源VSSX用の配線VSSXを兼ねた定電位のシールド線80’、正電源VDDX用の配線VDDXを兼ねた定電位のシールド線82、及び正電源VDDY用の配線VDDYを兼ねた定電位のシールド線86が配線されている」(【0055】段落)こと、及び、
「シールド線80、80’、82及び86の電位は、このように定電位線との共用化により、容易に定電位とされる。但し、電源用の配線とシールド線を別個に配線してもよい。」(【0060】段落)こと
が記載されており、引用例3には、電源用配線をシールド配線と兼用することと共に、電源用配線と別個にシールド配線を設けることが記載されているといえる。
引用発明においても、上記引用例3に記載の技術を適用して、電源用配線である周回バイアス配線とは別個に、周回バイアス配線に沿ってシールド線である導電性配線を設ける構成を採用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得た事項に過ぎない。

(3)相違点3について
電磁波遮蔽手段において、導電性配線の極性を電圧供給ラインの極性と反対の極性として電磁波の影響を相殺することは、引用例3の【0073】段落の他、引用例4,5にも記載されているように周知の技術である。上記相違点2において導電性配線を採用するに際して、上記周知技術を採用して、導電性配線の極性を電圧供給ラインの極性と反対とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。すなわち、上記相違点3に係る事項は、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た事項に過ぎない。

2 本願発明の奏する作用効果について
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記引用例2-5に記載された発明から、当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
以上より、本願発明は、引用例1に記載された発明及び上記引用例2-5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上より、本願発明は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-11 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-03-12 
出願番号 特願2004-335159(P2004-335159)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 吉喜  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
森林 克郎
発明の名称 電磁波遮蔽手段を含む能動素子表示装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 佐伯 義文  

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