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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1201686
審判番号 不服2005-15635  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-15 
確定日 2009-07-14 
事件の表示 平成 9年特許願第531791号「有機装置のための透明コンタクト」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月12日国際公開、WO97/33296、平成12年 6月 6日国内公表、特表2000-507029〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成 9年 2月15日(パリ条約による優先権主張1996年3月6日、米国)を国際出願日とする出願(特願平9-531791号)であって、平成17年5月6日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年8月15日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後、当審からの、平成19年7月24日付の拒絶理由通知に対し、平成20年1月31日付で手続補正がされたものである。

2.当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「理由
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号、又は第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)・・・省略・・・

(2)・・・省略・・・

(3)請求項1に記載された「酸化インジウム錫以外の透明導電性酸化物」は、明細書中に記載されていない。請求人は、平成17年3月14日付意見書、平成17年11月10日付手続補正書(方式)の中で、明細書28頁4?5行の記載を根拠に陰極についても、「酸化インジウム以外の透明導電性酸化物」を用いることが記載されていると主張するが、該記載は、その前の「酸化インジウム錫(ITO)層フィルム304により予備被覆されたガラス支持体302上に構築される。支持体302は透明なガラスから成るが、この例においては、それはまた、ITOが被覆され得るいずれか他の透明な硬質支持体、たとえばプラスチック材料によっても供給され得ることに注意すること。また、」に続けて読めば明らかに、ガラス支持体上のITOフィルムについてのことと理解され、ITOの例しか示されていない陰極までも、「酸化インジウム錫以外の透明導電性酸化物」で構成することが明細書に記載されていたとは到底言えない。

(4)・・・省略・・・」

3.本願発明
本願の請求項1?20に係る発明は、平成20年1月31日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「基板と、
前記基板上に形成され、正の極性を有する第1の導電性層と、
前記第1の導電性層上に形成された透明有機発光デバイスと、
前記透明有機発光デバイス上に形成され50?400Åの厚さにすることによって透明となる透明導電性金属層と、
前記透明導電性金属層上に直接形成され、負の極性を有し、酸化インジウム錫以外の透明導電性酸化物を含む第2の導電性層と
を具備してなる有機発光デバイス構造。」

4.当審の判断
4-1 特許法第36条第6項第1号違反について
(1)明細書の記載
請求人は、平成17年11月10日付手続補正書(方式)により補正された審判請求書の請求の理由の中で
「3-1-4)しかしながら、明細書の27頁下4行ないし28頁21行の段落の記載は一連の記載であり、28頁4?5行の「ITOフィルムは、いずれか適切な導電性酸化物又は導電性透明性ポリマーにより置換され得る」という記載は、図17の304で示された正の極性を有する(第1の)導電性層だけを指すものではありません。同じ段落の一連の説明として、28頁15?21行において「この第2のITO層312は、第2のTOLEDが構築される上部に連続した透明な伝導性表面を供給する(図12、13及び16の記載について上記を参照のこと)。ITO層312は、許容できる透明度を保持しながら、抵抗率を減じるためにできるだけ厚くされる。」と記載されており、この「第2のITO層312」は上記のTOLEDの「第1の導電性膜」として機能することができるものであり、それは「いずれか適切な導電性酸化物又は導電性透明性ポリマーにより置換され得る」ものです。
したがって、本願明細書においては、正の極性を有する導電性膜のみならず、負の極性を有する導電性膜についても、「ITOフィルムは、いずれか適切な導電性酸化物又は導電性透明性ポリマーにより置換され得る」ことを記載しているものであります。」(該手続補正書(方式)第2頁27行以下)
と主張しているので、特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付された明細書の翻訳文の浄書である平成16年2月16日付手続補正書(以下、「明細書」という。)の当該箇所を含む部分についての記載を摘記する。
・摘記1
「図17においては、透明有機発光装置(TOLED)を提供するために本発明者により製造された工学的原型の横断面図が示される。この例においては、装置30が、ITOフィルムの厚さに依存して、典型的には20Ω(オーム)/平方のシート抵抗率を有する透明な酸化インジウム錫(ITO)層フィルム304により予備被覆されたガラス支持体302上に構築される。支持体302は透明なガラスから成るが、この例においては、それはまた、ITOが被覆され得るいずれか他の透明な硬質支持体、たとえばプラスチック材料によっても供給され得ることを注意すること。また、ITOフィルムは、いずれか適切な電導性酸化物又は電導性透明ポリマーにより置換され得る。有機フィルム付着の前、支持体302は、従来の技法を用いて前もって清浄された。付着は、正孔伝導性化合物N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TDD)の200Åの厚さの層306、続いて電子伝導性化合物Alq3(アルミニウムトリス-8-ヒドロキシキノリン)の400Åの厚さの層308の10^(-4)トル以下の真空下での昇華により実施された。装置300に電子注入コンタクトを供給する上部層310は、薄い(50Å?400Å)半透明Mg-Agアロイ電極(40Mg:1Agのおおよその原子比での)の陰影マスキング(示されていない)による付着により製造された。他の原子比、たとえば50Mg:1Agが用途に依存して使用され得るが、しかし本発明はいずれかの特定の比又はコンタクト金属組成に限定することを意味しないことを注意すること。最終的に、TOLED装置300は、層310のMg-Ag表面上にスパッタ付着された第2の400ÅのITO層312によりキャップされる。この第2のITO層312は、第2のTOLEDが構築される上部に連続した透明な伝導性表面を供給する(図12,13及び16の記載についての上記を参照のこと)。ITO層312は、許容できる透明度を保持しながら、抵抗率を減じるためにできるだけ厚くされる。電気コンタクト314(負の極性)及び316(正の極性)が、従来の方法を用いて、それぞれ、ITO層312及び304に結合される。」

さらに、上記摘記1の前には、本願発明の前提となる課題、解決方法等が記載されているので、その部分も摘記する。
・摘記2
「本発明者は、電力を切られる場合、71%以上の透過率を有し、そして電力を付与される場合、高い効率を有する上部及び下部ダイオード表面から光を放すことができる(1%の量的効率に近づくか又は越える)新規種類の真空付着された有機発光装置を発明した。
上記結果を達成するためには、本発明者により克服されるべき最初の問題は、機械的安定性を付与するために下部にある有機層と良好な化学結合を形成できる金属を発見することであった。1つのそのような金属が、マグネシウム(Mg)及び銀(Ag)の金属アロイフィルムの使用により提供され得ることがわかった。・・・しかしながら、本発明者は、層は、必要とされる次の加工段階、この例においては、金属層の上部に酸化インジウム錫(ITO)層を付着する段階から下部有機層を保護するのに十分な厚さのものであるべきであることを認識した。また、たとえば薄いMg層はすばやく酸化し、そしてMg層を保護するために、形成された後、できるだけ早くITOにより被覆されるべきである。これを実施するための従来の方法は、下部の有機層に損傷を与える、高温及び高電力付着で行なわれる。従って、本発明者は、非常に低い電力及び室温、典型的には22℃(72°F)で金属層上にITO層を付着するための方法を考えついた。
透明である他に、ITO層はまた、電導性であり、そして従って、Mg:Agにより形成される多層コンタクトの電気抵抗を減じる。ITOは、単独では使用され得ない。なぜならば、それは有機材料との良好な結合を付与せず(すなわち、それは有機材料に十分に接着しない)、そして典型的には、それは有機電気発光材料中への良好な電子インジェクターではないからである。この例においては、Mg:Ag層は、有機層及びITOに対する良好な結合を付与し、そして良好な電子インジェクターである。」(明細書第26頁16行?第27頁下から5行)

(2)明細書の記載から読み取れる事項
上記摘記1の記載は、本発明者により製造された透明有機発光装置(TOLED)の一連の製造工程を記述した部分であることは、文脈から明らかである。
そして、「装置30が、・・・透明な酸化インジウム錫(ITO)層フィルム304により予備被覆されたガラス支持体302上に構築される。支持体302は透明なガラスから成るが、この例においては、それはまた、ITOが被覆され得るいずれか他の透明な硬質支持体、たとえばプラスチック材料によっても供給され得ることを注意すること。また、ITOフィルムは、いずれか適切な電導性酸化物又は電導性透明ポリマーにより置換され得る。」の記載から、まず、「透明な酸化インジウム錫(ITO)層フィルム304により予備被覆されたガラス支持体302」の「支持体302」の変形例について言及し、次に、「ガラス支持体302」に予備被覆した「透明な酸化インジウム錫(ITO)層フィルム304」、即ち「ITOフィルム」の変形例について言及したと理解するのが自然である。さらに、図17を参照すれば、ITOフィルムは、正の極性を有することも明らかである。

また、上記摘記2の記載から、以下の点が理解できる。
ア.ITOは、有機材料との良好な結合を付与せず、さらに、有機電気発光材料中への良好な電子インジェクターではないので、単独では使用され得ない。そして、Mg:Ag層は、有機層及びITOに対する良好な結合を付与し、そして良好な電子インジェクターである。

イ.薄いMg層はすばやく酸化し、そしてMg層を保護するために、形成された後、できるだけ早くITOにより被覆されるべきであるが、これを実施するための従来の方法は、下部の有機層に損傷を与える、高温及び高電力付着で行なわれる。従って、本発明者は、非常に低い電力及び室温、典型的には22℃(72°F)で金属層上にITO層を付着するための方法を考えついた。

(3)判断
透明導電性酸化物は、上記摘記1の記載にしか存在せず、ここでの透明導電性酸化物は、ガラス支持体302に予備被覆したITOフィルムに代えて置換し得るものであって、決して、金属層310表面上にスパッタ付着された第2のITO層312に代えて置換し得るものではない。

また、上記摘記2の記載からは、ITOは、有機材料との良好な結合を付与せず、さらに、有機電気発光材料中への良好な電子インジェクターではないという問題点を有し、そのため有機層との間にMg:Ag層を介する点、そして、従来は、Mg層を保護するために、ITOを高温及び高電力付着で行なわれていたが、下部の有機層に損傷を与えるので、本発明者は、非常に低い電力及び室温、典型的には22℃(72°F)で金属層上にITO層を付着するための方法を考えついた点が記載されている。この記載から、有機材料との結合に問題のあるものはITOであり、その解決のため、Mg:Ag層(金属層)を介するので、金属層上に付着するものはITOのみで、それ以外の物質については、有機材料に対する結合性、金属層の必要性、さらには、上記「(2)イ.」で述べた金属層上への付着方法等に関して、一切言及されていない。

明細書の他の箇所にも、金属層の上に付着する層としては、ITO以外、全く記載がないのであるから、特許請求の範囲に記載された「酸化インジウム錫以外の透明導電性酸化物」が、明細書に記載されている、あるいは記載されているに等しいとは到底言えない。

4-2 特許法第36条第6項第2号違反について
(1)判断
上記「4-1」で述べたように、「酸化インジウム錫以外の透明導電性酸化物」は、明細書に記載されているものでなく、当然、何らの実施例の記載もなく、当業者にとって、具体的にどのような物質が、本願発明の作用・効果を奏する透明導電性酸化物であるのか、全く不明確である。

さらに、上記摘記1には、「いずれか適切な電導性酸化物又は電導性透明ポリマーにより置換され得る。」と記載されているが、特許請求の範囲では、「適切な」の限定もなく、「適切でないもの」も含むこととなり、その記載が不明確である。また、仮に、「適切な」の意味を含むものとしても、どのような物質が、適切な透明導電性酸化物であるのか、明細書中に全く説明がないのであるから、当業者にとって、全く不明確である。

5.むすび
したがって、本願は、上記当審からの拒絶理由で指摘した不備の点は、依然として解消しておらず、上記の拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-28 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-18 
出願番号 特願平9-531791
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
森内 正明
発明の名称 有機装置のための透明コンタクト  
代理人 矢口 太郎  
代理人 山口 康明  
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