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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1201714
審判番号 不服2006-11906  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-09 
確定日 2009-08-03 
事件の表示 平成 8年特許願第 87708号「ゴルフクラブおよびその組み立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月22日出願公開、特開平 9-248355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年3月15日の出願であって、平成17年12月6日付け(発送日:同年12月8日)の拒絶理由通知に対して、平成18年1月26日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたところ、同年5月2日付け(発送日:同年5月10日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月9日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年7月6日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
この平成20年7月6日付け手続補正について、当審において、平成20年10月29日付けで「補正の却下の決定」を行うと共に、本願について、同日付け(発送日:同年10月30日)で、拒絶の理由を通知したところ、平成20年12月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたため、更に、当審において、平成21年2月23日付け(発送日:同年2月24日)で、最後の拒絶の理由を通知し、これに対して、平成21年4月27日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 平成21年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成21年4月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正による発明
平成21年4月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7についての補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(以下、「本件補正発明」という。)。
「ヘッド本体にホーゼル部が設けられ、ホーゼル部の挿入孔にシャフトを挿入装着したゴルフクラブにおいて、
ホーゼル部の挿入孔の延長線上にヘッド本体のソール側に延びる下方孔を形成し、下方孔はソール側に開口して挿入孔と分離して形成され、
この下方孔内にバランス調整用の重りを設け、シャフトの中空部内に重りが位置することをなくしたことを特徴とするゴルフクラブ。」
(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)

本件補正は、補正前の「実質上延長線上に」という特定事項を、「延長線上に」と補正するものであるところ、「実質上」という文言を削除することにより、下方孔が挿入孔の「延長線上に」あることを、明確に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下、検討する。

2.引用刊行物
(1)当審において最後の拒絶理由に引用した、米国特許第4,607,846号明細書(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア.特許明細書1欄6?10行
「This invention relates generally to golf clubs, and more parti-
cularly to selective weighting of golf club heads, as in a set, to
impart desired swing-feel and ball flight result relationships to
the individual clubs in the set.」
(この発明は、ゴルフ・クラブに関し、より具体的には、セット中の個々のクラブについて、所望のスイング感覚および飛球結果を与えるための、ゴルフ・クラブ・セットにおけるゴルフ・クラブ・ヘッドの選択的重量設定に関する。)
イ.同3欄3?7行
「In the drawings, the golf club head 10 in the form of an iron
has a front face 11 adapted to strike a golf ball, a rear surface 11a, a bottom surface 12, an angled top surface or edge 13, a toe 14, heel 15 and a hosel 16. A club shaft 17 is suitably attached to the
hosel.」
(図面において、アイアン型のゴルフクラブヘッド10は、ゴルフボールを打つためのフロントフェース(前面)11、リアサーフェス(背面)11a、ボトムサーフェス(底面)12、エッジ13、トウ14、ヒール15、およびホーゼル16を有している。クラブシャフト17は、ホーゼルに取り付けられる。)
ウ.3欄10?26行
「As shown, a first elongated opening 18 extends directionally be-tween the tow and heel, and typically terminates at a mouth 18a at
the toe surface 14a. Opening 18 is located closer to head bottom surface 12 than to surface 12. A first weight 19 is adjustably located
endwise in the opening 18, and may be cylindrical and relatively
tightly threaded into that opening so as not to be rotatable therein
when the head strikes a golf ball. The opening is shown as threaded along most of its length, to allow extensive endwise adjustment of
the weight, or multiple weights therein, or longer weights. See the different threaded weight sizes and lengths at 20a-20d, FIG.5, whichare selectively usable in opening 18. Also, they may have different lateral densities perpendicular to the threaded axis. Merely by way of example, a second weight is shown at 21 in opening 18, and
spaced from weight 19.」
(図に示すように、第1の細長い孔18がトウとヒールとの間に伸びており、トウ面14aの開口18aとなっている。孔18は、底面12側に位置している。第1のウエイト19は、孔18内で長手方向に調整可能に配置されており、円筒形状であり、ヘッドがゴルフボールを打つときに、孔の中で回転しないように孔にネジ込むことができる。孔には、その長さの大部分にわたりネジが切られており、ウエイトの広範囲の長手方向調整、複数個のウエイトの孔への挿入、または、長いウエイトの挿入を可能にしている。図5の20a-20dに、孔18内で選択的に使用できる、サイズと長さが異なる種々のウエイトを示す。また、ウエイトは、ネジの軸方向に、いろいろな密度とすることができる。一例として、孔18内に、ウエイト19から離して配置されている第2のウエイト21を示す)
エ.3欄33?41行
「A second elongated opening 23 also extends directionally betweenthe toe and heel, and typically terminates at a mouth 23a at toe
surface 14b, above the level of mouth 18a. Opening 23 is located
closer to head upper surface or edge 13 than to surface 12. Another weight 24 is adjustably located endwise in the opening 23, and may
be cylindrical and relatively tightly thread fitted in the opening, but forcibly rotatable to move lengthwise therein, to selected posi-tion.」
(第2の細長い孔23もトウとヒールとの間に伸びており、開口18aの上方で、トウ面14bの開口23aとなっている。孔23は、エッジ13側に位置している。他のウエイト24が、孔23内で長手方向に調整可能に配置されており、円筒形とすることができ、孔の中にネジ込まれ、強制的に回転させることにより、長手方向に移動して選択した位置に配置することができる。)
オ.3欄67行?4欄20行
「An auxiliary elongated opening 40 extends directionally upwardlyand at an angle from vertical, toward and into the hosel, i.e., in
the axial direction of the shaft 17. It terminates at a mouth at
heel surface 15a, proximate bottom surface level of the head. Open-
ing 40 is shown as cylindrical and as a continuation of the shaft
receiving opening 40c in the hosel. A further weight 42 is adjust-
ably located in opening 40, but forcibly rotatable to move length-
wise therein,to a selected position. The mouth is closed, or sealed,as by removable sealant material 43 as for example epoxide or other material, the seal surface 43a extending with curvature that is
flush with heel surface curvature, as shown.
The position of weight 43 may be adjusted lengthwise, i.e., up or
down in the opening 40, and more than one weight may be employed, asdescribed with respect to 19 and 21 in opening 18. Also, weight dia-meters and lateral density characteristics may vary. Such opening 40extends upwardly, the head center of gravity may be raised or lower-ed by weight position adjustment 25 in opening 40, and more or less weight may be concentrated at the heel.」
(補助的な細長い孔40は、垂直から一定の角度をなし、ホーゼル内で、シャフト17の軸方向に伸びている。それは、ヘッドの底面に最も近いヒール面15aに開口する。孔40は円筒形であり、かつ、ホーゼル内のシャフト受孔40cとして示される。さらに別のウエイト42が、孔40内に調整可能に配置されているが、これは強制的に回転させることにより、長手方向に移動して選択した位置に配置することができる。開口は、除去可能なシーラント材43、例えば、エポキシまたはその他の材料により密閉され、シールの表面43aは、図のように、ヒール面の湾曲と同一面の湾曲部になる。
ウエイト42は、孔40内で長手方向上下に調整できる。さらに、孔18内の19、20に関して述べたように、2個以上のウエイトを使用できる。また、ウエイトの直径と密度は変更できる。このような孔40は上方に伸びており、ヘッドの重心は、孔40内のウエイトの位置により、上下させることができ、また、ウエイトは、多少、ヒール側に集中する。)
カ.4欄21?28行
「As shown from the above, the weights in all three openings may
be selected and adjusted to provide an infinite number of possible
head weight adjustments, in multiple dirctions, i.e. endwise of the head between toe and heel, up and down in the outer part of the head,i.e. near the toe, and up and down at the heel and hosel end of the head and forwardly and rearwardly between surfaces 11 and 11a.」
(上記のとおり、3つの孔内のウエイトは、無数のヘッド重量調整を提供するために、複数の方向において、選択・調整されるものである。複数の方向とは、即ち、トウとヒール間でのヘッドの長手方向、ヘッドの外側部分(即ちトウ付近)の上下方向、ヘッド後端であるヒールとホーゼル部分の上下方向、前面(フェース)11と背面11a間の前後方向等である。)

上記オ及び図1からみて、ウエイト42は、底面に最も近いヒール面15aに設けられる開口から挿入され、選択された位置に配置されることは明らかであり、他の記載も参酌すると、引用文献には、次の発明が開示されていると認められる(以下、「引用文献記載発明」という。)。
「ゴルフクラブヘッド10にホーゼル16を設け、ホーゼル16に形成した孔40にシャフト17を挿入装着したゴルフクラブであって、
孔40は、シャフト17の軸方向に伸びて、ヘッド10の底面12に最も近いヒール面に開口されるものであり、孔40の上方部分は、シャフト17が挿入されるシャフト受孔40cとなっており、下方部分には、孔40のヒール面側の開口から挿入されるウエイト42が位置している、ゴルフクラブ。」

3.対比
引用文献記載発明の「ゴルフクラブヘッド10」、「ホーゼル16」、「シャフト受孔40c」及び「ウエイト42」は、本件補正発明の「ヘッド本体」、「ホーゼル部」、「挿入孔」及び「重り」に、それぞれ相当する。
ところで、本件補正発明の「下方孔」は、ヘッド本体のソール側に開口するものであるところ、その開口から重りが挿入されることは言うまでもない(本願明細書の段落【0008】参照)。
なお、ソールは、ゴルフクラブが地面と接する部分、即ち、クラブの底面である。
他方、引用文献には「下方孔」という記載はない。
引用文献記載発明の「孔40」は、ゴルフクラブの底面に最も近いヒール面に開口するものであるところ、底面に最も近いヒール面は、図1からみて、底面と言うことができ、その底面に設けられた開口からウエイト42が挿入されるから、引用文献記載発明の「孔40」の下方部分は、クラブの底面側から重りが挿入される孔、即ち、「重り挿入孔」である点で、本件補正発明の「下方孔」と共通するものである。
そして、引用文献において、ウエイト42が位置する孔40の下方部分には、特に名称は付されていないが、引用文献記載発明では、シャフト17が挿入される、孔40の上方部分を「シャフト受孔40c」と称しているから、ウエイト42が挿入される、孔40の下方部分を、便宜的に「ウエイト受孔」と称しても、特に問題はなく、又、引用文献の他の記載とも何ら矛盾しない。
さらに、引用文献記載発明において、「シャフト受孔40c」と「ウエイト受孔」とは、「孔40」として連続するものであるから、「ウエイト受孔」が、「シャフト受孔」の延長線上にあることは言うまでもなく、又、図1に記載されるように、「シャフト17」と「ウエイト42」とは離れて位置しているから、「ウエイト42」が「シャフト17」の中空部内に位置していないことは明らかであり、又、「ウエイト42」がバランス調整用のための重りであることは言うまでもない。
以上の点から、本件補正発明と引用文献記載発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。
《一致点》
「ヘッド本体にホーゼル部が設けられ、ホーゼル部の挿入孔にシャフトを挿入装着したゴルフクラブにおいて、
ホーゼル部の挿入孔の延長線上にヘッド本体のソール側に延びる重り挿入孔を形成し、重り挿入孔はソール側に開口して形成され、
この重り挿入孔内にバランス調整用の重りを設け、シャフトの中空部内に重りが位置することをなくしたゴルフクラブ。」
《相違点1》
重り挿入孔を、本件補正発明では、「下方孔」と特定しているのに対して、引用文献記載発明では、ウエイト受孔と称する点。
《相違点2》
本件補正発明では、下方孔は「挿入孔と分離して形成され」ると特定しているのに対して、引用文献記載発明では、ウエイト受孔と挿入孔とが連続して形成される点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献記載発明の「ウエイト受孔」は、ゴルフクラブの底面側、即ち、下方からウエイトを挿入しているものである。したがって、重り挿入孔を、「下方孔」と称しようが、「ウエイト受孔」と称しようが、作用効果において何ら相違するものではなく、又、重りを挿入する孔について、どのような用語を使用するかは、当業者の任意選択事項であるから、重り挿入孔を「下方孔」と特定することは、当業者が、適宜選択し得ることである。

(2)相違点2について
本願明細書によれば、本件補正発明は、下方孔を「挿入孔と分離して形成」したことにより、「シャフト4を接着剤によりホーゼル2に装着し終えた後、すなわち接着剤乾燥後であっても、スイングバランスの調整ができる。」(段落【0008】3?5行)という効果を奏するものであり、これは、シャフトと重りとが離れて位置しているため、シャフトを固定した後であっても、重りの位置調整ができる、ということである。
してみると、引用文献記載発明も、ウエイトとシャフトとは離れて位置している(引用文献の図1参照)から、シャフトの固定後に重りを上下動させることは可能であり、又、その上下動により、スイングバランスの調整ができることは明らかであるから、この点において、本件補正発明と引用文献記載発明との作用効果に差異はない。
なお、本願明細書には、下方孔と挿入孔との分離形成に関する効果として、上記以外の効果は記載されていない。
しかしながら、請求人は、平成21年4月27日付け意見書において、下方孔を「挿入孔と分離して形成」することについて、更に、次のように主張する。
a.2頁15?16行
「下方孔と挿入孔は連続していなく、下方孔と挿入孔間には壁が存在し、この壁により完全に別個独立の2個の孔を構成しています。」
b.3頁17?19行
「本願請求項1?7に係る発明は、孔に挿入した際、シャフトの先端は下方孔と挿入孔間にある壁に当接し、シャフトの挿入具合を一定に出来、又、同様に重りの挿入具合も一定に出来ます。」
c.3頁20?22行
「引用文献1の場合には、本願発明のような下方孔と挿入孔間にある壁が存在しないので、シャフト及び重りの挿入具合が一定せず、その結果、スイングバランスにバラツキを生じ、重りの挿入具合で重心位置が変化してしまいます。」
d.3頁27?33行
「このような重りを、シャフトを挿入する孔と重りを設置する孔が一体に形成されたヘッドに設置する場合、重りの長さを変えてスイングバランスを調整すると、シャフトを挿入する孔の深さが異なるようになります。そのため、シャフトの先端を固定する接着剤の量が多く必要になったり、少なくなったりします。問題となるのは、短い重りを用い、シャフト先端の位置から、ウエイト材の先端の部分までの空間の位置が広くなった場合に、その空間部へ流れ込む接着剤の量が増えると共に、接着剤が孔の側壁面にこびり付く様になります。」
(下線は、審決において付す。)
上記主張を総合勘案すると、請求人は、
下方孔と挿入孔とを分離して形成したため、下方孔と挿入孔との間に壁が形成され、その壁により、シャフト及び重りの挿入具合を一定にでき、且つ、接着剤が(重りの位置する側の)空間部に流れ込まない、等の効果を奏する、 旨主張していると解される。

まず、上記請求人の主張する効果の内、重りの挿入具合を一定にできる点について、検討する。
請求人の主張する「重りの挿入具合を一定にできる」とは、シャフトの挿入具合が、シャフトの先端が挿入孔の壁(底)に当接するまで挿入されることにより、一定となることから類推して、重りが下方孔の上壁に当接するまで挿入されることにより、奏される効果と解される。
何故ならば、重りが下方孔の途中に位置しているのでは、挿入具合が一定、とは言えないからである。
即ち、「重りの挿入具合が一定」とは、重りが下方孔の上壁に当接する位置に配置されることによってのみ、奏される効果であるところ、そのような重りの配置では、「スイングバランスの調整」は不可能となり、本願明細書に記載された効果(段落【0008】参照)と矛盾することは明らかである。
本件補正発明や引用文献記載発明においては、ゴルフクラブにおけるスイングバランスの調整は、重りの位置を調整すること(下方孔或いはウエイト受孔内での重りの上下動)によりなされるからである(本願明細書の【0008】、引用文献の記載事項オ参照)。
以上の点からみて、下方孔の上壁は、本件補正発明の効果に、何ら寄与するものではない。
念のため付言すると、本件補正発明の組立て後を示す図4をみると、「重り11」は、下方孔の開口付近に配置されており、下方孔の上壁は、重りの配置に、何ら関与していない。
以上のとおり、「重りの挿入具合を一定にできる」との効果は、ゴルフクラブの「スイングバランスの調整」という効果と矛盾するものであり、又、「下方孔の上壁」が、他に何らかの効果を奏するものとも認められないから、「重りの挿入具合を一定にできる」との請求人の主張は、意味のないものであって、採用できない。
結局、下方孔と挿入孔とを分離して形成したことによる効果は、シャフトの挿入具合が一定にできること、接着剤が重りのある空間部に流れ込まないこと等であって、これは取りも直さず、シャフトの挿入孔に壁(底)があること、即ち、シャフトの挿入孔が有底であることによるものである。

そこで、更に検討する。
ホーゼル部に、シャフト挿入用の有底の孔を設け、シャフトの先端が底壁に達するまで挿入し、接着剤で固定することは、当該技術分野において、周知の技術事項である(必要とあれば、特開平7-8580号公報、実願平5-15993号(実開平6-66724号)のCD-ROM等参照)から、引用文献記載発明においても、シャフト挿入孔を有底のものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その結果、引用文献記載発明においても、「シャフト受孔40c(挿入孔)」と「ウエイト受孔(下方孔)」とは、別個独立の2個の孔となるものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、相違点1、2に係る特定事項は、当業者が適宜に選択或いは想到可能なものであって、それらを寄せ集めたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件補正発明は、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「ヘッド本体にホーゼル部が設けられ、ホーゼル部の挿入孔にシャフトを挿入装着したゴルフクラブにおいて、
ホーゼル部の挿入孔の実質上延長線上にヘッド本体のソール側に延びる下方孔を形成し、下方孔はソール側に開口して挿入孔と分離して形成され、
この下方孔内にバランス調整用の重りを設け、シャフトの中空部内に重りが位置することをなくしたことを特徴とするゴルフクラブ。」

2.引用刊行物
当審における最後の拒絶理由に引用した刊行物及びその記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本件補正発明の「下方孔」に関して、「実質上延長線上に」というあいまいな特定をしたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、明確に限定したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 4.」に記載したとおり、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-10 
結審通知日 2009-06-11 
審決日 2009-06-23 
出願番号 特願平8-87708
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63B)
P 1 8・ 575- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 上田 正樹
菅野 芳男
発明の名称 ゴルフクラブおよびその組み立て方法  
代理人 増田 竹夫  

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