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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1201838
審判番号 不服2007-34923  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-27 
確定日 2009-08-07 
事件の表示 特願2002-123824「画像形成方法及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-316203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成14年4月25日の出願であって、平成19年11月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成20年1月24日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。
さらに、平成20年6月6日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年2月9日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年4月15日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成20年1月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に中間層、感光層及び表面層を有し、該表面層が数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満で、疎水化度が50%以上の疎水性シリカを含有し、前記中間層のバインダーの吸水率が5%以下であり、且つ有機感光体を30℃80%の相対湿度環境下で調湿し、40?200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0?10J/gであり、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。」
から
「 有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に中間層、感光層及び表面層を有し、該表面層が数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満で、疎水化度が50%以上の疎水性シリカを含有し、前記中間層のバインダーが、吸水率が5%以下のポリアミド樹脂であり、且つ有機感光体を30℃80%の相対湿度環境下で調湿し、40?200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0?10J/gであり、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「中間層のバインダー」に関して、「前記中間層のバインダーの吸水率が5%以下」を「前記中間層のバインダーが、吸水率が5%以下のポリアミド樹脂」と限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-160268号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

(1-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真感光体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に電子写真法により画像形成を行うには、感光体表面に帯電、像露光及び現像を施してトナー像を形成し、該トナー像を転写材上に転写、定着して画像を得ると共に、転写後の感光体は残留トナーのクリーニング及び除電が行われて長期に亘り繰り返し使用される。
【0003】従って前記感光体としては、帯電電位、感度、暗減衰及び残留電位特性等の電子写真性能は勿論、繰り返し使用時の耐刷性、耐摩耗性、耐湿性等の物性や、コロナ放電時に発生するオゾンや像露光への耐性においても良好であることが要求される。
【0004】他方、従来電子写真感光体としては、アモルファスシリコン、セレン、硫化カドミウム等を用いた無機光導電性感光体が多く用いられてきたが、近年低コストで毒性がなく、かつ加工性に優れていて、目的に応じて選択の自由度が大きい有機光導電性感光体(以下、単に有機感光体またはOPCと称する)が主流となっている。
【0005】これらの電子写真感光体の繰り返し使用による疲労劣化は、感光体上に形成されたトナー像の転写材上への転写、分離及び転写後の感光体上の残留トナーのクリーニングの各工程における摺擦による感光層表面の摩擦、損傷及び感光体表面への帯電、像露光、除電等の各工程における感光層の分解、変質等によるものと推定されている。
【0006】従って前記感光体の疲労劣化を防止するには感光層表面の改良が重要課題となる。特に有機感光体の感光層は無機感光体に比して軟質であり、かつ光導電性物質が有機質であるため感光体の繰り返し使用時の疲労劣化が大であり、前記感光層表面の改良がより重要となる。
【0007】そこで例えば特開平1-205171号公報又は特開平3-155558号公報等には感光層表面層中にシリカ等の無機微粒子を含有せしめ、又特開平4-368953号公報には感光層最表面層中にフッ素樹脂の微粒子を含有せしめて感光体の機械的強度を大ならしめると共に潤滑性を付与して繰り返し使用時の感光体の摩耗、損傷に基づく疲労劣化を防止する提案がなされている。」

(1-b)「【0032】又本発明に用いられる無機微粒子としては、例えばシリカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ウオラスナイト、チタン酸カリウム、モスハイジ、セピオライト、ソツトライト、ホウ酸アルミニウム等があり、かつこれらの無機微粒子はモース硬度5以上が好ましい。
【0033】前記無機微粒子のなかでは、シリカ微粒子が重要であり、その体積平均粒径が0.05?2μm、好ましくは0.1?2μmの範囲でシャープな粒度分布を有するものが好ましい。」

(1-c)「【0042】本発明に係るシリカ微粒子の示差走査熱量分析(DSC)は、熱的に安定な標準物質と共に試料を一定速度で加熱したときの両者の温度差を打ち消すために必要なエネルギーを加える方法で、DSCのピーク面積が吸熱量に比例していることにより次式に従って定量できる。
【0043】M・ΔH=K・A
ここでMは試料の質量、ΔHは試料の単位質量あたりのエネルギー変化量、Kは装置定数、Aはピーク面積である。シリカ粉末は、相対湿度80%の環境下に24時間放置し、調湿した。その後DSC測定までは、密封容器中に同1条件下に保存し、調湿終了後60分以内に測定をした。
【0044】本発明で用いられたDSCの測定条件を以下に示す。
【0045】
本発明に係るシリカ微粒子のΔHは0?20ジュール/gが好ましいが、より好ましくは0.1?10ジュール/gである。
【0046】次に本発明に用いられる前記シリカ微粒子は例えばチタンカップリング剤、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等の疎水化処理剤により処理して成る疎水性シリカ粒子がより好ましい。
【0047】これらのカップリング剤はバインダー樹脂に配合して用いても良いが、シリカ微粒子をあらかじめカップリング剤で表面処理して用いるのが望ましい。これにより本発明の粒子表面とバインダー樹脂との親和性が増大し、分散性や接着性の向上が図れる。
【0048】前記化合物による処理は粒子表面の活性基と反応させることにより達成される。処理方法としては例えばシラノール基を高圧下で反応させる方法(Kolloid-Z,149,39(1956))、アルコールとのエステル化(DBP1074559)、オートクレーブ中でのエステル化(Bull.Chem.Soc.Jpn,49(12),3389(1976))など「シランカップリング剤」(信越化学工業)、「技術資料No.Z003」(東芝シリコーン)等に記載されている方法によって行うことができる。
【0049】シロキサンを有する化合物の使用量は粒子100重量部に対し0.1?100重量部、好ましくは0.5?10重量部であるが、一般的には表面を十分被覆するための理論量は次式で算出することができる。但し、理論量とは粒子表面に単分子層を形成するのに必要な量である。
【0050】Ws=(Wf×SE)/(MCA)
(Ws:シロキサン構造を有する化合物添加量(g)
Wf:微粒子使用量(g)
SE:微粒子比表面積(m^(2)/g)
MCA:シロキサン構造を有する化合物1g当たりの最小被覆面積(m^(2)/g))
実際にはこの値を基準にして、用途に応じた処理量を設定することができる。
【0051】なお前記粒子に施される疎水化処理膜は単分子量又はそれに近い薄層とされるため、処理後の有機又は無機粒子の不純物の量及び体積平均粒径は実質的に処理前の該粒子と同様とされる。」

(1-d)「【0132】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0133】《実施例用感光体1の作製》直径80mmのアルミニウムドラム上に共重合タイプのポリアミド樹脂「アミランCM-8000」(東レ社製)1.5重量部をメタノール90容量部とブタノール10容量部との混合溶媒中に溶解してなる塗布液を浸漬塗布して膜厚0.3μmの中間層を形成した。
【0134】次に、ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL-S」(積水化学社製)0.8重量部をメチルエチルケトン80重量部とシクロヘキサノン20重量部との混合溶媒中に溶解し、得られた溶液中にキャリヤ発生物質(CGM)としての下記構造式で示されるCGM-1を14重量部混合、分散してなる塗布液を前記中間層上に浸漬塗布して乾燥後の膜厚0.2μmのキャリヤ発生層を形成した。
【0135】
【化24】(省略)
【0136】次いで、バインダとしてポリカーボネート樹脂「ユービロンZ300」(三菱ガス化学社製)15重量部とキャリヤ輸送物質(CTM)としての化合物T-9を10重量部をメチレンクロライド100容量部に溶解してなる塗布液を前記キャリヤ発生層上に浸漬塗布して乾燥後の膜厚が25μmの第一のキャリヤ輸送層を形成した。
【0137】次いで、バインダとしてポリカーボネート樹脂「TS-2050」(帝人化成社製)1.5重量部と、キャリヤ輸送物質(CTM)としての化合物T-9を1重量部と、酸化防止剤(AO剤)としての例示化合物(A)-3を0.05重量部と、無機微粒子としてのアドマテックス社製アドマファインSO-C1(S-1)0.6重量部とを1,2-ジクロロエタン(EC)100容量部に溶解、分散した。
【0138】この塗布液を用いて、前記第一のキャリヤ輸送層上に円形量規制型塗布機を用いて塗布し、110℃で1時間乾燥して、膜厚が1μmの第二のキャリヤ輸送層を形成し、表1に示す実施例用感光体1を得た。この時の残留溶媒量は0.8重量%であった。
【0139】《実施例用感光体2?11および比較例用感光体1?8の作製》実施例用感光体1の作製における、第2のキャリヤ輸送層の溶媒の種類、乾燥温度および時間、感光層に対する残留溶媒量(wt%)、AO剤の種類およびCTMに対する量(wt%)、膜厚、有機または無機微粒子の有無、種類、粒径およびバインダー樹脂に対する量(wt%)を表1および表2の如く変化した他は同様にして実施例用感光体2?11および比較例用感光体1?8を得た。」

(1-e)「【0143】
【表1】


【0144】
【表2】




(1-f)「【0145】《評価》以上のようにして得た感光体を、少なくとも該感光体とクリーニング手段とが一体的にユニット化されている、帯電、像露光、現像、転写、除電(PCL)、およびクリーニングの各工程を有するアナログ複写機「Konica U-BIX4145」(コニカ(株)製)に装着して常温常湿(20℃、60%)下で各感光体毎に5万回の像形成テストを行い、得られた画像の画像評価、残留電位の変動量および膜厚減耗量の測定をおこなった。
【0146】(1)画像評価
前記感光体を順次前記複写機「Konica U-BIX4145」(コニカ(株)製)に装着し中間調を有する原稿を用いて5万回の画出しをおこなった。このとき帯電器はスコロトロン帯電器が用いられ、グリッド制御により前記感光体上には-750Vの一定帯電下に画像形成が行われ、画像の地カブリ、画像ボケの発生の有無を観察した。」

(1-g)図1として、






上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「アルミニウムドラム上に、中間層、キャリヤ発生層、第一のキャリヤ輸送層、第二のキャリヤ輸送層を順次積層して形成した感光体を用いる画像形成方法であって、
前記中間層は、バインダとしてポリアミド樹脂を含有し、
前記第二のキャリヤ輸送層は、無機微粒子としてシリカ微粒子を含有する、
画像形成方法。」

(刊行物2について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-6524号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

(2-a)「【0004】下引き層に用いられる材料としては、エチレン/酢酸ビニル樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が知られている。しかしながら、これらの樹脂を用いた下引き層を導入すると、電子写真感光体の環境特性が低下する傾向がある。具体的には高温高湿の環境下で帯電性が低下したり、白点、濃度ムラなどの画像欠陥が発生する等の現像が発生する。これは、高温高湿の環境下で下引き層が吸湿するために下引き層の体積低抗率が低下し、導電性基体と光導電層の直接の接合をなくすという下引き層本来の機能が低下するためと考えられる。また、前記の公知の樹脂を用いた場合、導電性基体と光導電層の密着性が十分ではなく、電子写真装置中で使用中に光導電層が導電性基体から剥離して、画像欠陥を発生する場合がある。」

(2-b)「【0039】
【実施例】次に、実施例によって本発明を詳述する。
【0040】以下の例中に用いる各材料を次に列記する。括弧内には略号を示す。
(1)電荷を発生する光導電性物質
τ型無金属フタロシアニン(τ-H_(2)Pc)(東洋インキ製造(株)製)
(2)電荷輸送物質
1,1-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-4,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン(PBD)
(3)下引き層用イオン性低分子化合物
無水トリメリト酸(TMA)(和光純(株)薬製)
ピロメリト酸(PMA)(和光純薬(株)製)
(4)結合剤
(A)下引き層用 一般式(1)で示されるメラミン類及び一般式(2)で示されるグアナミン類
メラミン樹脂:メラン2000(ML2000)、固形分50重量%、(日立化成工業(株)製、商品名)、平均結合ホルムアルデヒド数 3.5個/トリアジン核、平均結合ブチルエーテル基数 2.1個/トリアジン核
ベンゾグアナミン樹脂:メラン365(ML365)、固形分60重量%、(日立化成工業(株)製、商品名)、平均結合ホルムアルデヒド数 2.1個/トリアジン核、平均結合ブチルエーテル基数 1.1個/トリアジン核
(B)下引き層用 ポリエステル樹脂
バイロン200(V200)、固形分100%、(東洋紡株式会社製、商品名)
【0041】
【化5】(略)
バイロン290(V290)、固形分100%、(東洋紡株式会社製、商品名)
【0042】
【化6】(略)
バイロン103(V103)、固形分100%、(東洋紡株式会社製、商品名)
(C)光導電層用結合剤
ポリカーボネート樹脂:レキサン141-111(L141)、固形分100%、(GE製、商品名)、下記繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂
【0043】
【化7】(略)
ポリカーボネート樹脂:下記繰り返し単位からなるZ-PC、固形分100%
【0044】
【化8】(略)
実施例1
90gのV200と20gのML2000をテトラヒドロフラン1430gに完全に溶解した。この溶液を、アルミニウムドラム(外径60.1mm×管長さ247mm×厚さ2mm)の上に浸せき塗工法で塗布し、120℃で60分乾燥して膜厚0.5μmの下引き層を形成した。
【0045】次に、10gのτ-H_(2)Pc、100gのL141及び塩化メチレンと1,1,2-トリクロルエタンの1:1(重量比)の混合溶剤800gをボールミル混練により10時間分散した。得られた分散液に、100gのPBD及び塩化メチレンと1,1,2-トリクロロエタンの1:1(重量比)混合溶剤800gを添加してよく混合した。得られた塗工液を上記の下引き層上に浸せき塗工法で塗布し、120℃で60分乾燥して膜厚20μmの光導電層を形成し、電子写真感光体を形成した。」

(2-c)「【0055】比較例2
100gのポリアミド樹脂(商品名:プラタボンドM995 日本リルサン株式会社製)を1500gのテトラヒドロフランに完全に溶解した。この溶液を用いて実施例1と同様にして下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして、下引き層の上に光導電層を形成し、電子写真感光体を形成した。
【0056】比較例3
100gのホルマール樹脂(商品名:#20 電気化学工業株式会社製)を1500gのテトラヒドロフランに完全に溶解した。この溶液を用いて実施例1と同様にして下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして、下引き層の上に光導電層を形成し、電子写真感光体を形成した。
【0057】比較例480gのポリアミド樹脂(商品名:プラタボンドM995 日本リルサン株式会社製)と20gのML2000を1500gのテトラヒドロフランに完全に溶解した。この溶液を用いて実施例1と同様にして下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして、下引き層の上に光導電層を形成し、電子写真感光体を形成した。」

(2-d)「【0061】〔下引き層の吸水率評価法〕前記実施例及び比較例で得られた下引き層の吸水率を調べた。前記実施例及び比較例で得られた下引き層用の溶液を各々金属シャーレに固形分が2gになる量を秤取りこれを下引き層の乾燥時と同じ条件で乾燥し、乾燥後の下引き層の重量(仮にA(g)とする)を測定した。その後、23℃、90%RHの環境下で4日間放置して吸湿させ、吸湿後の下引き層の重量(仮にB(g)とする)を測定した。この結果を式(I)にあてはめて吸湿率を計算し、結果を表1に示した。
【0062】
吸湿率 = (B-A)/A×100 (I)」

(2-e)「【0064】
【表1】




(2-f)「【0066】
【発明の効果】本発明の電子写真感光体は、下引き層の吸湿率を下げ、高温高湿の環境下でも優れた電子写真特性及び画質を有し、かつ、下引き層が電荷発生層や電荷輸送層等の塗布液に溶解することがなく、画像特性の安定性に優れている。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における
「アルミニウムドラム」、
「キャリヤ発生層、第一のキャリヤ輸送層」、
「第二のキャリヤ輸送層」、
「感光体」は、
それぞれ、本願補正発明における
「導電性支持体」、
「感光層」、
「表面層」、
「有機感光体」に相当する。
そして、刊行物1発明における「前記第二のキャリヤ輸送層は、無機微粒子としてシリカ微粒子を含有する」と、本願補正発明における「該表面層が数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満で、疎水化度が50%以上の疎水性シリカを含有し」とは、「該表面層がシリカを含有し」で共通し、刊行物1発明における「前記中間層は、バインダとしてポリアミド樹脂を含有し」と、本願補正発明における「前記中間層のバインダーが、吸水率が5%以下のポリアミド樹脂であり」とは、「前記中間層のバインダーが、ポリアミド樹脂であり」で共通する。
また、刊行物1発明における「感光体を用いる画像形成方法」と、本願補正発明における「有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法」とは、「有機感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法」で共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「有機感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に中間層、感光層及び表面層を有し、該表面層がシリカを含有し、前記中間層のバインダーがポリアミド樹脂である、画像形成方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]:本願補正発明においては、「有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法」であり、かつ、「該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行う」画像形成方法であるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

[相違点2]:「シリカ」に関して、本願補正発明においては、「数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満で、疎水化度が50%以上の疎水性シリカ」であるのに対し、刊行物1発明においては、「粒子径が0.2μm」で、疎水化度及び疎水性についての特定がない点。

[相違点3]:「中間層のバインダー」に関して、本願補正発明においては、「吸水率が5%以下(のポリアミド樹脂)」であるのに対し、刊行物1発明においては、ポリアミド樹脂の吸水率についての特定がない点。

[相違点4]:「有機感光体」に関して、本願補正発明においては、「有機感光体を30℃80%の相対湿度環境下で調湿し、40?200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0?10J/g」であるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
相違点1のうち、まず、「有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法」、すなわち、「中間転写方式の画像形成方法」については、文献を提示するまでもなく、周知のものである。
また、「該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行う」点についても、原審の拒絶理由通知において引用された、特開平7-319274号公報、特開2000-75745号公報に加えて、特開昭63-85581号公報等にも示されるように、ステアリン酸亜鉛等の表面エネルギー低下剤を用いて感光体表面の摩擦係数を低下させることは、周知の技術である。
したがって、刊行物1発明を、「有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法」に適用するとともに、かつ、「該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行う」構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

(相違点2について)
相違点2に関して、まず、「疎水性シリカ」を用いることは、刊行物1に記載された事項である。(上記摘記事項(1-c)参照。)
そして、本願発明においては、疎水化処理されたシリカの疎水度が全て55%以上となっているように、疎水度が50%以上となることは疎水処理によってほぼ当然に達成できることであるから、疎水性シリカの疎水度を50%以上とすることは、当業者が適宜決定できる設計的事項に過ぎない。
また、「数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満」とした点については、刊行物1には、「シリカ微粒子が重要であり、その体積平均粒径が0.05?2μm、好ましくは0.1?2μmの範囲でシャープな粒度分布を有するものが好ましい。」(上記摘記事項(1-b))と記載されており、数平均粒径と体積平均粒径とは粒度分布によって必ずしも一致しないものの、「0.05?2μm」は、すなわち「50?200nm」であるから、平均粒径の範囲としては重なっている。
加えて、例えば、原審の拒絶理由において提示された、特開平4-346358号公報には、「保護層中に含まれる疎水性シリカは、一次粒子径で平均粒径が5?50nmの高純度のシリカをオルガノシラン、シリコーンオイル等の有機珪素化合物で処理したもので、」(段落【0022】)と記載されているから、「数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満」とする程度のことは、当業者が適宜採用できる設計的事項というべきである。
したがって、「疎水化度が50%以上の疎水性シリカ」を採用し、「数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満」とすることは、当業者が適宜為し得たことである。

(相違点3について)
「中間層のバインダー」の吸水率に関して、刊行物2には、「中間層(下引き層)の吸水率(吸湿率)を下げる」という技術的思想が開示され、中間層の吸水率が0.1ないし0.2%の実施例(実施例1?9)とともに、バインダとしてポリアミド樹脂を用い、吸水率が4.2%の比較例(比較例4)が記載されている。(上記摘記事項(2-a)?(2-g)参照。)
そして、刊行物1発明も、刊行物2に記載のものも、有機感光体を用いた画像形成において、画像欠陥を防止し、優れた画像を得ることを目的とするものであるから、刊行物1発明に、刊行物2に記載の「中間層の吸水率を下げる」という技術的思想を適用し、中間層のバインダとして、吸水率が5%以下のポリアミド樹脂を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点4について)
相違点4の「有機感光体を30℃80%の相対湿度環境下で調湿し、40?200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0?10J/g」に関して、本願明細書を参照すると、以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)
「【0093】本発明の感光体の吸熱エネルギー変化量ΔHを10J/g以下にするには、感光体表面層に含有される疎水性シリカに数平均一次粒径が1nm以上、100nm未満の粒子を用いると共に、感光体を構成する各層に用いられているバインダー樹脂の吸水性を小さくすることが必要である。特に表面層、中間層の吸水率を小さくするようなバインダー樹脂の選択が必要である。即ち、高温高湿下では水分子は表面や導電性支持体を伝って、感光層中に進入しやすく、これを防ぐためには表面層と中間層の吸水性を小さくすることが重要であり、又、感光層の中で最も占有容積が大きい電荷輸送層のバインダー樹脂の吸水性を小さくすることも重要である。
【0094】本発明は表面層の無機微粒子を疎水化すると同時に、これら表面層のバインダー樹脂の吸水率を小さくすることにより、感光体の吸熱エネルギー変化量ΔHを10J/g以下にすることが可能となる。」
「吸熱エネルギー変化量ΔH」については、バインダ樹脂の選択によっても変わることは明らかであるものの、本願明細書中で出願人自身が認めているように、「表面層の無機微粒子を疎水化」し、「感光体を構成する各層に用いられているバインダー樹脂の吸水性を小さくすること」によって達成できるのであるから、「吸熱エネルギー変化量ΔH」は、主として感光体自体の吸水性、吸湿性に依存するものと認められる。(なお、バインダ樹脂の選択に関しては、本願の実施例において特段の選択を行っていないことからも、バインダ樹脂のガラス転移温度による「吸熱エネルギー変化量ΔH」への影響は少ないと認められる。)
そうすると、相違点4は、相違点2及び相違点3によって当然に達成できるものであって、感光体自体の吸水性が低い構成を吸熱エネルギー変化量の数値範囲として提示したに過ぎないといえる。
したがって、相違点4も、当業者が適宜なし得たことである。

(本願補正発明が奏する効果に関して)
そして、上記相違点1ないし4によって、本願補正発明が奏する「中間転写体を用いた画像形成方式のトナー転写特性の改善を達成でき、トナー転写の低下から発生する中抜けや文字チリ等の画像欠陥を防止でき、且つクリーニング性の良好な画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。」との効果は、刊行物1、2に記載された事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年1月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成19年1月18日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 有機感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、該中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写して画像形成を行う画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に中間層、感光層及び表面層を有し、該表面層が数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満で、疎水化度が50%以上の疎水性シリカを含有し、前記中間層のバインダーの吸水率が5%以下であり、且つ有機感光体を30℃80%の相対湿度環境下で調湿し、40?200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0?10J/gであり、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1ないし2、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1)(1-a)?(2-f)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「中間層のバインダー」に関して、「ポリアミド樹脂」と限定した点を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-26 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願2002-123824(P2002-123824)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 輝秋金田 理香宮崎 恭  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 伊藤 裕美
柏崎 康司
発明の名称 画像形成方法及び画像形成装置  
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