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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D04B
管理番号 1202298
審判番号 不服2007-24792  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-07 
確定日 2009-08-14 
事件の表示 特願2004-250718「べら針」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 82957〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成16年8月30日(パリ条約による優先権主張2003年9月10日、ドイツ国)の出願であって、平成19年6月11日付けでなされた拒絶査定に対し、これを不服として平成19年9月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月27日付けで補正された特許請求の範囲及び、出願当初の明細書(以下、「本願明細書」という。)と図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「編み機のためのべら針(1)であって、針本体(2)が設けられており、該針本体(2)が端部側にフック(4)が設けられた針幹(3)を有していて、該針幹のフック近傍にべらスリット(6)が設けられていて、べら(5)が設けられていて、該べらが、べらスリット(6)にべら支承装置(7)で旋回可能に支承されて配置されていて、べら(5)のべらスリット(6)内に支承された端部にクリーニングプロフィール(19)が設けられている形式のものにおいて、べら(5)のべらスリット(6)内に支承された端部に鋭いエッジ(25)が設けられており、該鋭いエッジ(25)には排出面(24)が続いており、少なくとも2つの排出面(24a,24b)が設けられていることを特徴とするべら針。」

第3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭60-14252号(実開昭61-133586号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「一般に、ベラ針により編み立てを行うと、静電気などが原因して、そのベラ溝に糸屑や塵などのごみが詰ることが多い。」(第2ページ第8行ないし第10行)

(b)「このものはベラ溝内の糸屑などのごみ類を、ベラの回動により排除しうるように構成したメリヤス針であって、フック1側の針幹3にベラ溝4が細長い溝孔として穿設されて糸屑抜除用の開口8が針幹3の背面に形成され、さらに前記ベラ溝4内のほぼ中央部にベラ2の尾部5がリベット7により枢着され、該ベラ2の頭部6はフック1の先端に当接可能となっている。
そして、前記ベラ2の尾部5には突部5’が、ベラ2の頭部と反対側に突出するように形成されている。なお図中4’はベラ溝4に形成される目である。」(第3ページ第15行ないし第4ページ第6行)

(c)「本考案は、フックを有する針幹にベラ溝を形成し、該ベラ溝に前記フックに接離して開閉するベラを備えたメリヤス針において、前記ベラ溝内に侵入する糸屑の排除部を前記ベラに設けたことを特徴とするメリヤス針である。」(第3ページ第8行ないし第12行)

(d)「このように構成したメリヤス針を使用して編み立てを行う場合、ベラ2の突部5’はベラ5と一体でリベット7を軸として回動するので、糸屑がベラ溝4内に侵入したり、前記目4’に付着してベラ溝4が詰る問題が著しく減少するので、ベラ溝を掃除することなく長時間の連続使用が可能となるだけでなく、目4’に糸屑が付着堆積しても突部5’が糸屑をベラ溝4外へ、すなわち前記糸屑抜除用の開口8の方向(針の背面側)へ適確に掻き出し、排出しようとする」(第4ページ第7行ないし第16行)

(e)図面の第1、3図に、目4’は、ベラ2を基準に、ベラ溝4のフック1側と反フック1側の両側にあることが記載されている。

そして、メリヤス針が編み機に用いられることや、メリヤス針が針本体を有していることは当業者にとって自明なことである。また、上記「第3 引用文献」の(c)、(d)にあるように、突部5’は、ベラ溝4のフック1側と反フック1側の両側の目4’に付着堆積した糸屑をベラ溝4外へ排出するものであるから、2つの排出面を有するものである。してみれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
(引用発明)
「編み機のためのメリヤス針であって、針本体が設けられており、該針本体が端部側にフック1が設けられた針幹3を有していて、該針幹3のフック1近傍にベラ溝4が設けられていて、ベラ2が設けられていて、該ベラ2が、ベラ溝4にリベット7で旋回可能に支承されて配置されていて、ベラ2のベラ溝4内に支承された端部に突部5’が設けられている形式のものにおいて、突部5’は、少なくとも2つの排出面が設けられているメリヤス針。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「メリヤス針」、「フック1」、「針幹3」、「ベラ溝4」、「ベラ2」、「リベット7」、「突部5’」が、それぞれ本願発明の「べら針」、「フック」、「針幹」、「べらスリット」、「べら」、「べら支承装置」、「クリーニングプロフィール」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明との両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「編み機のためのべら針であって、針本体が設けられており、該針本体が端部側にフックが設けられた針幹を有していて、該針幹のフック近傍にべらスリットが設けられていて、べらが設けられていて、該べらが、べらスリットにべら支承装置で旋回可能に支承されて配置されていて、べらのべらスリット内に支承された端部にクリーニングプロフィールが設けられている形式のものにおいて、クリーニングプロフィールに、少なくとも2つの排出面が設けられているべら針。」
【相違点】
本願発明では、「べら(5)のべらスリット(6)内に支承された端部に鋭いエッジ(25)が設けられており、該鋭いエッジ(25)には排出面(24)が続いて」いる構成を有するのに対し、引用発明では、突部5’の端部と排出面との間に鋭いエッジを有することが不明りょうである点。

第5 判断
ここで、上記相違点について検討する。
本願発明において、相違点に係る本願発明の構成である、「べら(5)のべらスリット(6)内に支承された端部に鋭いエッジ(25)が設けられており、該鋭いエッジ(25)には排出面(24)が続いて」いることに関し、本願明細書には、以下の記載がある。

(イ)「上記全ての針は運転中に汚染にさらされ、その結果、べらスリット内に、残留繊維、油、埃などから成る塊が溜まる。このようなゴミの溜まりが増加すると、べら針の機能が損なわれてしまう。」(段落【0006】)

(ロ)「このクリーニングプロフィールは、べらの往復運動時に、残留糸またはその他、べらスリット内に侵入するゴミを動かし、べらスリットから排出するために働く。これによりべらの可動性は、比較的多くの糸屑またはその他のゴミが発生し、べらスリットに達した場合でも保たれる。」(段落【0009】)

(ハ)「さらに有利には、クリーニングプロフィールは、少なくとも1つの鋭いエッジを有している。この鋭いエッジは、べら孔に対して平行に、べら全幅にわたって横方向に延びている。このエッジの曲率半径はできるだけ小さくなっている。これによりべらスリット内に存在するゴミは確実に把持され、スリットから排出される。クリーニングプロフィールは、さらにできるだけ扁平な、べら孔に関してほぼ半径方向に向けられた面を有している。この面は、残留繊維またはその他のゴミをべらの旋回時に前方に押し出すために働く。この面は、比較的鋭いエッジで隣接するべらの側面にまで延びている。このようにして、ゴミが、べらの側面とべらスリットの側壁との間のギャップに挟まることが回避される。クリーニングプロフィールは歯形プロフィールと言うこともできる。」(段落【0011】)

(ニ)「排出面24は、ある程度鋭いエッジ25で、べら5の側面12,13に続いている。さらに、排出面24は有利には、ある程度鋭いエッジ25で端面22に続いている。」(段落【0017】)

(ホ)「図5には、排出またはクリーニングプロフィール19として端面22に設けられた突起29を有したべら5のさらに異なる構成が示されている。突起29には、ほぼ扁平な端面31が設けられている。この端面31は全周を鋭いエッジによって制限されている。特に端面31は、鋭いエッジ32で側面12に、鋭いエッジ33で側面13に続いている。ほぼ扁平な排出面24a,24bには、エッジが丸みをおびて、または必要とあらば鋭く形成されていても良い。
【0023】
このべら5の利点は、両旋回方向で、即ち、位置Iから位置IIに移行する場合も、位置IIから位置Iに移行する場合でも、排出効果およびクリーニング効果が得られることにある。」(段落【0022】、【0023】)

これらの記載を総合すると、上記相違点に係る構成である鋭いエッジを設けることの技術的意義は、上記(ハ)に、「この鋭いエッジは、べら孔に対して平行に、べら全幅にわたって横方向に延びている。このエッジの曲率半径はできるだけ小さくなっている。これによりべらスリット内に存在するゴミは確実に把持され、スリットから排出される。」と記載されているように、ゴミを確実に把持することにあるというべきであり、また、技術常識を参酌しても、これ以外に何らかの特別な技術的意義があるものとはいえない。
一方、引用発明のものは、上述したとおり、必ずしも鋭いエッジを有するものではないが、上記「第3 引用文献」の(a)、(c)にあるように、糸屑がベラ溝4内に侵入したり、目4’に付着したりすることを防止しするとともに、さらに、目4’に糸屑が付着堆積しても突部5’が糸屑をベラ溝4外へ、すなわち前記糸屑抜除用の開口8の方向(針の背面側)へ適確に掻き出し、排出することを目的としたものであり、この点においては、本願発明と一致するものであるが、鋭いエッジを設けて糸屑を確実に把持することに関しては明示されていない。
しかしながら、引用発明のものも、突部5’によりベラ溝4に付着堆積した糸屑を適確に掻き出し排出することを目的とするものであるから、突部5’により糸屑を確実に把持し得るようにすることは、当業者であれば当然に考慮すべきことである。そして、このような糸屑の確実な把持を実現するために、突部5’の形状を好適に変更することは当業者であれば当然になし得ることであり、また、その形状として鋭いエッジとすることも、種々想到し得る好適な形状の一つであり、当業者であれば適宜選択し得たものである。
してみれば、引用発明の突部5’の端部と排出面との間に鋭いエッジを設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、その効果も当業者が予想し得る程度のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-10 
結審通知日 2009-03-11 
審決日 2009-03-27 
出願番号 特願2004-250718(P2004-250718)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 べら針  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 山崎 利臣  
代理人 久野 琢也  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 杉本 博司  

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