• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1202406
審判番号 不服2008-9120  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-11 
確定日 2009-08-13 
事件の表示 平成10年特許願第 27073号「焦点検出装置付きカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月17日出願公開、特開平11-223761〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯

本願は、平成10年2月9日の出願であって、平成19年8月2日付け拒絶理由通知に対して、同年10月12日付けで手続補正がされたが、平成20年3月5日付けで拒絶査定され、これに対して、同年4月11日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成20年4月11日付けの手続補正と本願発明について

平成20年4月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本願補正前の請求項4を削除し、本願補正前の請求項5乃至7を繰り上げ、新たに請求項4乃至6としたものである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成14年改正前特許法」という)第17条の2第4項第1号(請求項の削除)の規定に該当するものである。
そこで、本願発明は、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 被写体からの光束を結像する撮影光学系と、
前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像を受光し、画像信号に変換する光電変換手段と、
前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する瞳分割手段と、
前記瞳分割手段によって前記光電変換手段に形成される前記被写体の像による画像信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記撮影光学系と前記瞳分割手段を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段と、
前記瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間、前記測光手段における被写体の明るさに関する情報の検出動作を禁止するとともに、前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段と
を備えたことを特徴とする焦点検出装置付きカメラ。」
(以下、「本願発明」という。)

3 引用例

(以下、下線は当審で付加したものである。)

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平9-302774号(特開平11-142723号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項ア
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影用の撮像手段と、撮影用光学系と、前記撮影光学系の光路内外に位置することができ、前記撮影光学系の光路内に位置するときに、前記撮影用光学系を通過する撮影光束を少なくとも2つの領域に時系列的に分割し、前記撮像手段に結像させる瞳手段と、前記瞳手段により前記撮像手段上に時系列的に結像された光学像に対して前記撮像手段から出力される像信号の位相差を演算し、前記撮影光学系の焦点状態を検出するする焦点検出演算手段と、前記撮像手段の出力に応じて前記撮像手段の出力レベルを制御する露出等制御手段と、焦点検出動作時及び撮影動作時のそれぞれに応じて異なる態様で前記撮像手段及び前記瞳手段を制御する撮像制御手段とを具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】 前記露出等制御手段は、前記撮像手段の出力結果に基づいて前記撮像手段の電荷蓄積時間及びゲイン並びに前記撮影用光学系の絞りを制御する請求項1に記載の撮像装置。」

記載事項イ
「【0022】本実施例の動作を説明する前に、図3、図4及び図5を参照して、本実施例の焦点検出原理を簡単に説明する。
【0023】図3は、合焦状態の光束であって、同(a)は撮影状態の光束、同(b)は第1の瞳(例えば、48a)を透過する光束、同(c)は第2の瞳(例えば、48b)を透過する光束をそれぞれ示す。
【0024】図3(a)では、撮影レンズ40の撮影用絞り40cを透過した光束は、撮像素子46の受光面上で撮影レンズ40の光軸40dに焦点を結び、このとき、デフォーカス量はゼロである。図3(b)に示すように、撮影レンズ40の中心から横方向にずれた位置に瞳48aが置かれても、撮影レンズ40を透過した光束は撮像素子46の受光面上で撮影レンズ40の光軸40dに焦点を結ぶ。図3(c)に示すように、図3(b)とは逆の位置に瞳48bがある場合でも、撮影レンズ40を透過した光束は、撮像素子46の受光面上で撮影レンズ40の光軸40dに焦点を結ぶ。
【0025】このように、合焦状態では、原理的に、異なる位置の瞳を通過した光束も撮像素子46の受光面上の同じ位置に入射するので、2像の位相差はゼロになる。」

記載事項ウ
「【0033】図6は、本実施例の回路部の概略構成ブロック図を示す。60はCCD式固体撮像素子46の出力信号を増幅するアンプであり、その出力は、A/D変換器62によりディジタル信号に変換されて、信号処理回路64に印加される。」

記載事項エ
「【0037】図7は、焦点検出用絞り板48および焦点検出用遮光板52の各状態の平面図を示す。図7(a)は、焦点検出動作を行わないとき、同(b)及び(c)は焦点検出動作を行なうときをそれぞれ示す。図7(a)に示すように、焦点検出動作を行なわないときには、撮影レンズ40の撮影用絞り40cを開放にしたときの有効光束通過領域の外に焦点検出用絞り板48及び焦点検出用遮光板52を退避させる。
【0038】焦点検出時には、図7(b)又は同(c)に示すように、モータ50によって焦点検出用絞り板48を、その瞳48a,48bが共に撮影レンズ40の光路内に位置するように移動させ、その位置に保持する。そして、モータ54によって焦点検出用遮光板52を駆動して、焦点検出用絞り板48の瞳48a,48bを交互に遮光する。図7(b)に示す状態で左の瞳48aを通過した光束によって得られる像信号をL、図7(c)の状態で右の瞳48bを通過した光束によって得られる像信号をRとする。」

記載事項オ
「【0075】図17は、カメラ全体の動作フローチャートを示す。不図示の電源スイッチがオンされ、給電が開始されると、撮像素子46が露光され、電荷が蓄積される(S1)。撮像素子46から全信号電荷が読み出され(S2)、撮像素子46の出力信号はA/D変換器62によってディジタル信号に変換されて信号処理回路64に印加され、一旦バッファ・メモリ74に格納される。信号処理回路64は、バッファ・メモリ74に記憶された画像データを読み出して輝度信号と色信号を生成する(S3)。
【0076】信号処理回路64は、図16の撮影用測光エリア122内の輝度信号の平均値を演算し、この平均値(被写体輝度)、カメラの撮影モード及び露出補正情報から撮影時の露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値を演算し、メモリ76の所定記憶領域に記憶する(S4)。後述するレリーズ動作が実行される際に、この記憶領域に記憶されているシャッタ・スピード及び絞り値に基づいてシャッタおよび絞りが制御されることになる。・・・
【0077】レリーズボタンの第1ストロークの押下でオンするスイッチSW1の状態を検出し(S6)、SW1がオフ状態であれば(S6)、焦点調節(AF)制御用フラグ(焦点検出が可能か否かを示すフラグAFNGと、合焦状態か否かを示すフラグJF)をリセットし(S13,S14)、図16のAF用測光エリア124内の被写体輝度情報に基づいて焦点検出動作時の電荷蓄積時間及びアンプのゲインを演算し(S15)、S1に戻る。
【0078】SW1がオン状態であれば(S6)、フラグAFNGが1か否かを判別し(S7)、 AFNG=1であれば(S7)、焦点検出不能な状態となっているので、AF不能状態であることをEVF72に表示したり及び/又は警告音を出したりして撮影者にAF不能状態であることを知らせる(S12)。そして、S1に戻る。
【0079】AFNG=0であれば(S7)、フラグJFを調べる(S8)。JF=1の場合(S8)、合焦状態になっているので、EVF72に合焦表示を表示させ(S9)、レリーズボタンの第2ストロークで閉成するスイッチSW2を調べ(S10)、SW2がオンであれば、レリーズ動作を実行して(S11)、S1に戻り、SW2がオフであれば、何もせずS1に戻る。
【0080】JF=0の場合(S8)、非合焦状態にあるので、AF用測光演算のサブルーチンを実行する。このサブルーチンの詳細は後述する。ここでは、図16のAF用測光エリア124の被写体輝度情報に基づいて焦点検出動作時の電荷蓄積時間及びアンプのゲインを算出する。ただし、焦点検出時と異なる絞り値となっているので、この絞り値の差を考慮した値となることはいうまでもない。算出後、S1に戻る。
【0081】S11のレリーズ動作では、S4で演算されたシャッタスピード及び絞り値で撮像素子46が露光され、撮像素子46の全画素の信号電荷が読み出され、所定の信号処理の後、メモリ76に記録される。
【0082】S1?S15が繰り返し実行されている間に、スイッチSW1がオフ状態からオン状態に遷移すると、割り込み機能によって図18に示すサブルーチンが実行され、焦点が調節される。まず、図7(a)に示す状態にある焦点検出用絞り板48及び焦点検出用遮光板52を図7(b)に示すように撮影レンズの光路内に移動させ(S21,S22)、焦点検出用絞り板48の左側の瞳48aを通過した光束だけが撮像素子46上に結像するようにする。
【0083】S15で算出された電荷蓄積時間だけ差ちゅぞ兎そし46を露光し(S23)、上述の高速読み出しによってAF用測光エリア124の部分の像信号を読み出し、S15で算出されたゲインで増幅する(S24)。読み出した信号を信号処理回路64で処理して、被写体の輝度信号を生成する。(S25)。
【0084】得られた輝度信号に基づいて、再度、AF用測光演算を行い、焦点検出時の電荷蓄積時間及びゲインを算出する(S26)。これは、実際に焦点検出用絞り板48を通過した光束を使って測光することによって、より正確な測光を行うためである。
・・・
【0086】像信号の取り込み動作が終了すると(S28)、焦点検出用絞り板48を駆動し、焦点検出用絞り板48を撮影レンズ40の光路内から退避させる(S29)。そして、焦点検出用遮光板52も撮影レンズ40の光路内から退避させる(S30)。これにより、焦点検出用絞り板48及び焦点検出用遮光板52は、図7(a)の初期状態に復帰する。
【0087】S28で得られた像信号の位相差を相関演算によって求め、更にこの位相差を適切に処理することにより、手振れによって発生する誤差を除去した位相差δを算出する(S31)。この演算の詳細は後述する。
・・・」
上記、記載事項オには、「撮影用測光エリア122内の輝度信号の平均値を演算し、この平均値(被写体輝度)」を求め、「撮影時の露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値を演算」し、「S11のレリーズ動作」(撮影)では、「S4で演算されたシャッタスピード及び絞り値で撮像素子46が露光され、撮像素子46の全画素の信号電荷が読み出され、所定の信号処理の後、メモリ76に記録される」点が記載されている。
また記載事項オによれば、「焦点検出用絞り板48」及び「焦点検出用遮光板52」は、スイッチSW1がオフ状態からオン状態への遷移に従って割り込むサブルーチン(図18)制御が実行される間に、撮影光学系の光路内に挿入され(遮光)、その後退避されるものであるから、上記シャッタスピード及び絞り値といった撮影条件を算出するS4の段階は、上記割り込みルーチン以外の制御過程として、当該「焦点検出用絞り板48」及び「焦点検出用遮光板52」が光路内から退避されている状態であることは、自明な事項である。

以上、記載事項ア?オ(及び図面)から、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「撮影用光学系と、
前記撮影用光学系を透過した光束によって、CCD式固体撮像素子46が露光され、該撮像素子46から全信号電荷が読み出され、該撮像素子46の出力信号はA/D変換器62によってデジタル信号に変換されて信号処理回路64に印加され、画像データとする手段と、
前記撮影光学系の光路内に位置することができ、左の瞳48aと右の瞳48bの2つの瞳を備え、モータ54によって焦点検出用遮光板52を駆動して、焦点検出用絞り板48の前記瞳48a、48bを交互に遮光して、撮影光学系を通過する撮影光束を少なくとも2つの領域に時系列的に分割する瞳手段と、
前記瞳手段によって、前記撮像手段上に時系列に結像された光学像に対して前記撮像手段から出力される像信号の位相差を演算し、前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出演算手段と、
前記撮像手段で生成した輝度信号から、被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値を演算し記憶する手段と、
当該演算し記憶する手段は、前記瞳手段によって前記瞳48a、48bを交互に遮光して実行される焦点検出動作以外の時になされ、
当該焦点検出動作以外のときは、前記瞳手段の焦点検出用遮光板52及び焦点検出用絞り板48を退避する手段と、
を備えた焦点検出検算手段を有する撮像装置。」

次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-281853号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項カ
「【0015】遮光部206は、液晶板により構成され、焦点制御時には、入射光に対して撮影レンズ201の異なる瞳位置を形成すべく、システムコントロール回路215の制御の下で液晶駆動回路217により、図2に示したような複数の開口部(以下、瞳という)が形成され、撮影時には、全ての領域で光を透過するように制御される。なお、瞳については、後で詳細に説明する。
【0016】絞り209は、撮影時の入射光量を調節するものであり、システムコントロール回路215の制御の下で絞り駆動モータ216により開口量が可変されて所定の絞り値に設定される。なお、絞り値は、絞り209の開放状態で行った測光、測距結果に基づいて決定される。
【0017】撮像素子202はCCD等により構成され、撮影レンズ201、遮光部206、絞り209を介して入射された被写体の光学像を光電変換して電気的な撮像信号として出力する。また、読出回路210は、システムコントロール回路215の制御の下で、撮像素子202から出力された撮像信号をサンプルホールドしてA/D変換し、メモリ211には、A/D変換されたデジタル撮像信号が1画面分(1フィールド分、または1フレーム分)記憶される。
【0018】デジタル信号処理回路(DSP)212は、システムコントロール回路215の制御の下で、メモリ211に記憶された1画面分のデジタル撮像信号に対して、ブランキング処理、輝度信号、および色信号の生成、同期信号の付加、ガンマ補正等の処理を行って規格化されたテレビジョン信号に変換するカメラプロセス回路212aと、後述するような合焦情報を検出して自動的に合焦制御を行うAF処理回路212bとにより構成されている。
・・・
【0021】次に、ビデオカメラの一連の動作を簡単に説明すると、システムコントロール回路215は、まず、撮影前に絞り209を開放状態にして周知の手段により測光、測距を行い、測光結果に基づいて適正露出となる絞り値を決定し、その絞り値になるよう絞り209を駆動すると共に、測距結果に基づいて撮影レンズ201を光軸に沿って前後に移動し、焦点距離を設定する。
【0022】そして、遮光部206に複数の瞳を形成し、それら瞳を通過し、撮像素子202上に結像されて光電変換された撮像信号に基づいて自己相関を計算し、その計算結果を合焦情報として撮影レンズ201(フォーカスレンズ)を光軸に沿って前後に移動することにより、自動合焦制御を行う。【0023】この状態で操作部219の記録スイッチ(図示省略)が操作されると、システムコントロール回路215は、遮光部206の全ての領域を光通過可能状態にし、撮像素子202上に光学像を結像させ、撮像素子202から出力された撮像信号を読出回路210によりA/D変換等させてメモリ211に記憶させ、デジタル信号処理回路212によりテレビジョン信号に変換させ、記録回路213により記録信号処理を実行させて、ヘッド211により記録媒体に記録させる。
【0024】次に、合焦情報検出の動作原理を図2?図7に基づいて詳細に説明する。
【0025】撮影前には、図2、図3に示したように、円盤状の遮光部206には、水平方向に、第1の瞳103、第2の瞳104、第3の瞳105が形成される。これら瞳の間隔は、第1の瞳103と第2の瞳104との間隔をL1、第2の瞳104第3の瞳105との間隔をL2とすると、L1<L2の関係となっている。
【0026】図2において、実線で示した位置に撮像素子202が在る場合は、合焦状態となっており、第1、第2、第3の瞳103、104、105を通った光束は、撮像素子202上の同じ位置に結像する。・・・」

ここで、記載事項カ(特に段落【0015】、【0021】及び【0022】の記載)から、時系列的には、測光動作の後に行われる、焦点制御時において、遮光部206に複数の瞳の形成がなされることと、測光動作は、なるべく撮影時の露出条件に近い条件(引用例1では、遮光部は全領域が透過するように制御(【0015】))で行うという当業者にとっていわば技術常識の手法とを共に考慮すれば、引用例1において、測光動作中は遮光部206が全ての領域で光を透過するように制御されていることは、当業者にとって自明のことであると言える。
また、遮光部206が撮影レンズ201及び絞り209からなる光学系の光路上に位置すること、及び各瞳の重心位置は互いに異なるものであることも、図2,図3から明らかである。
さらに、記載事項カ(段落【0021】)の「測光」が、撮影レンズ201と絞り209を通過した被写体からの入射光の光量を測定することであることは技術常識であり、また、遮光部206は、撮影レンズ201および絞り209間の光路上に位置することが図2、3から明らかであるから、測光すべき入射光は当該遮光部206も通過したものである、と言える。

以上、記載事項カ(及び図面)から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「撮影レンズ201及び絞り209からなる光学系と、
前記光学系を介して入射された被写体の光学像を光電変換して電気的な撮像信号として出力する撮像素子202と、
前記光学系内の光路中に位置し、互いに重心の異なる複数の瞳を形成し、該入射光が各瞳を通過する遮光部206と、
前記遮光部206によって、前記複数の瞳を通過し、撮像素子202上に結像されて光電変換された撮像信号に基づいて自己相関を計算し、合焦情報を取得する手段と、
前記光学系と前記遮光部206を通過する入射光に基づいて測光結果を得る手段と、
測光動作の間は遮光部206を、全ての領域で光を透過するように制御する手段と、
を備えた合焦情報検出装置を備えたカメラ。」

次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-140375号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項キ
「【請求項1】 被写体光を電気的な画像信号に変換する撮像手段と、該撮像手段に被写体像を投影する撮影光学系と、該撮影光学系を合焦のために駆動する駆動手段とを備えたカメラに設けられるオートフォーカス装置であって、
前記撮像手段と前記撮影光学系との間に設けられ、前記撮影光学系を透過した光束を前記撮影光学系の光軸を中心として略対象な複数の光束に分割すると共に該分割された複数の光束を前記撮像手段に交互に入射させる光束分割手段と、
前記光束分割手段により分割され前記撮影光学系の光軸を中心として互いに略対象な関係にある2つの光束のうちの一方から得られた画像信号と、他方から得られた画像信号とを比較して前記駆動手段の駆動量を算出して前記駆動手段を駆動する制御手段と、
を備えたことを特徴とするオートフォーカス装置。
【請求項2】 前記光束分割手段は、液晶板により構成されると共に。撮影光学系の光軸を中心として略対象に複数の領域に区分され、該複数の領域の各々は相互に独立して透明又は不透明とされるものであることを特徴とする請求項1に記載のオートフォーカス装置。」

3 対比

(1)本願発明と先願発明との対比について

ア 先願発明の「撮影光学系と、
前記撮影用光学系を透過した光束によって、CCD式固体撮像素子46が露光され、該撮像素子46から全信号電荷が読み出され、該撮像素子46の出力信号はA/D変換器62によってデジタル信号に変換されて信号処理回路64に印加され、画像データとする手段」と、本願発明の「被写体からの光束を結像する撮影光学系と、
前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像を受光し、画像信号に変換する光電変換手段」とを対比すると、

(ア)先願発明の「撮影光学系」は、被写体を撮影のため光学系であるから、被写体(からの光束)の像を結ぶ機能を有することは当業者にとって自明であるので、本願発明の「被写体からの光束を結像する撮影光学系」に相当する。

(イ)先願発明の「前記撮影用光学系を透過した光束」は、上記3(1)ア(ア)で述べたように、撮影用光学系により被写体像として結像されるものであるから、本願発明の「前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像」に相当する。また、先願発明の「CCD式固体撮像素子46が露光」は、本願発明の「受光」に相当する。

(ウ)先願発明の「CCD式固体撮像素子46が露光され、該撮像素子46から全信号電荷が読み出され、該撮像素子46の出力信号はA/D変換器62によってデジタル信号に変換されて信号処理回路64に印加され、画像データとする手段」は、要するに、露光によって撮像素子が取得した全信号電荷を、画像データの信号に変換することであるから、本願発明の「画像信号に変換する光電変換手段」に相当すると言える。

以上(ア)?(ウ)から、両者は相当関係にある。

イ 先願発明の「前記撮影光学系の光路内に位置することができ、左の瞳48aと右の瞳48bの2つの瞳を備え、モータ54によって焦点検出用遮光板52を駆動して、焦点検出用絞り板48の前記瞳48a、48bを交互に遮光して、撮影光学系を通過する撮影光束を少なくとも2つの領域に時系列的に分割する瞳手段」と、
本願発明の「前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する瞳分割手段」とを対比すると、

(ア)先願発明の「前記撮影光学系の光路内に位置する」は、本願発明の「前記撮影光学系内の光路中に配置される」に相当する。

(イ)先願発明の「左の瞳48a」及び「右の瞳48b」は、先願明細書の【図3】及び【図7】から明らかなように、互いに重心位置が異なる開口を持つ瞳であるから、先願発明の「左の瞳48aと右の瞳48bの2つの瞳」は、本願発明の「互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口」に相当する。

(ウ)先願発明の「左の瞳48a」及び「右の瞳48b」は、それぞれ本願発明の「第一の開口」及び「第二の開口」に相当するので、先願発明の「モータ54によって焦点検出用遮光板52を駆動して、焦点検出用絞り板48の前記瞳48a、48bを交互に遮光して、撮影光学系を通過する撮影光束を少なくとも2つの領域に時系列的に分割する」は、本願発明の「該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する」に相当する。

(エ)先願発明の「瞳手段」は、本願発明の「瞳分割手段」に相当する。

以上(ア)?(エ)から、両者は相当関係にある。

ウ 先願発明の「前記瞳手段によって、前記撮像手段上に時系列に結像された光学像に対して前記撮像手段から出力される像信号の位相差を演算し、前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出演算手段」と、
本願発明の「前記瞳分割手段によって前記光電変換手段に形成される前記被写体の像による画像信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段」を対比すると、
先願発明の「瞳手段」、「撮像手段」、「時系列に結像された光学像」、「撮像手段から出力される像信号」、「像信号の位相差を演算」及び「焦点検出演算手段」は、それぞれ、本願発明の「瞳分割手段」、「前記光電変換手段」、「形成される前記被写体の像」、「画像信号」、「画像信号に基づいて」及び「焦点検出手段」に相当する。
よって、両者は相当関係にある。

エ 先願発明の「前記撮像手段で生成した輝度信号から、被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値を演算し記憶する測光手段」と、
本願発明の「前記撮影光学系と前記瞳分割手段を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段」とを対比すると、

(ア)先願発明の「被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値」は、撮像手段で生成した輝度信号から演算されるものであり、また、該撮像手段で生成する信号は、撮影光学系を通過する光束を受光した結果、検出されるものであるから(先願明細書の【図1】の構成等を参照)、先願発明の「被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値」は、撮影光学系を通過する光束に基づいて算出されるものであることは明らかである。

(イ)先願発明の「被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値」は、被写体からの入射光の明るさに基づく情報であることは明らかであるから、本願発明の「被写体の明るさに関する情報」に相当すると言える。
(本願発明の当該「被写体の明るさに関する情報」として、本願明細書の段落【0049】等の記載から、「輝度算出」、「絞り制御」及び「シャッタ速度制御」等が該当することからも、両者は相当関係にあると言える。)

(ウ)先願発明の「被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値」は、上述(3(1)エ(ア))したように、撮像手段で検出された輝度信号に基づいて「演算し記憶」されるものであるから、先願発明の「演算し記憶」するとは、本願発明の「検出」することに相当すると言える。

以上(ア)?(ウ)から、両者は「前記撮影光学系を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段と、」である点で一致する。

オ 先願発明の「当該演算し記憶する手段は、前記瞳手段によって前記瞳48a、48bを交互に遮光して実行される焦点検出動作以外の時になされ、」と、
本願発明の「前記瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間、前記測光手段における被写体の明るさに関する情報の検出動作を禁止するとともに、」とを対比すると、
先願発明は、要するに、「撮影の露光制御に必要な、被写体輝度、露光時間(シャッター・スピード)及び絞り値」などの、被写体の明るさに関する情報の検出を、「焦点動作以外のとき」、すなわち、「瞳48a、48bを交互に遮光」していないときに、検出するものであり、
一方、本願発明も、要するに「測光手段における被写体の明るさに関する情報」の検出動作も、瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間は「禁止」する、すなわち、当該開閉動作以外のときに、上記情報検出を行うものである。
したがって、両者は共に、複数の瞳の交互開閉動作(焦点検出動作)を行っていないときに被写体の明るさに関する情報を取得する、という同等の制御を実行するものであるから、互いに相当関係にあると言える。

カ 先願発明の「当該焦点検出動作以外のときは、前記瞳手段の焦点検出用遮光板52及び焦点検出用絞り板48を退避する手段」と本願発明の「前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段」とを対比すると、
先願発明では、「撮影の際の露光制御に必要な、被写体輝度、露光時間(シャッタ・スピード)及び絞り値」等の情報は、上記3(1)オで述べたとおり、焦点検出動作以外のときに検出されるから、瞳手段が光路からすべて退避される状態、すなわち瞳手段により撮影光束は何ら遮蔽されない状態で、検出されるものである。
一方、本願発明も、「瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する」ものであるから、両者は相当関係にあると言える。

キ 先願発明の「焦点検出検算手段を有する撮像装置」は本願発明の「焦点検出装置付きカメラ」に相当する。

以上、ア?キの対比考察の結果,本願発明及び先願発明は、
「被写体からの光束を結像する撮影光学系と、
前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像を受光し、画像信号に変換する光電変換手段と、
前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する瞳分割手段と、
前記瞳分割手段によって前記光電変換手段に形成される前記被写体の像による画像信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記撮影光学系を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段と、
前記瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間、前記測光手段における被写体の明るさに関する情報の検出動作を禁止するとともに、前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段と
を備えた焦点検出装置付きカメラ。」である点一致し、以下の点で形式上相違する。

形式上の相違点

測光手段による被写体の明るさに関する情報の検出を、本願発明では「撮影光学系と瞳分割手段を通過する光束に基づいて」行うのに対し、先願発明では、瞳手段が、露出条件を定めるための測光動作中では、撮影光路上から退避されてしまうので、瞳手段は通過せず「撮影光学系」のみ「通過する光束に基づいて」行われる点。

(2)本願発明と引用発明との対比について

ア 引用発明の「撮影レンズ201及び絞り209からなる光学系と、
前記光学系を介して入射された被写体の光学像を光電変換して電気的な撮像信号として出力する撮像素子202」と
本願発明の「被写体からの光束を結像する撮影光学系と、
前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像を受光し、画像信号に変換する光電変換手段」を対比すると、

(ア)引用発明の「撮影レンズ201」が、撮影のために被写体の像を結ぶ機能をもつものであることは明らかであるから、引用発明の「撮影レンズ201及び絞り209からなる光学系」は、本願発明の「被写体からの光束を結像する撮影光学系」に相当する。

(イ)また、引用発明の「光学系」、「光学系を介して入射された被写体の光学像」、「光電変換して」、「光電変換して電気的な撮像信号」、「出力」及び「撮像素子202」はそれぞれ、本願発明の「撮影光学系」、「撮影光学系によって結像された前記被写体の像」、「受光し」、「画像信号」、「変換する」及び「光電変換手段」にそれぞれ相当する。

以上(ア)、(イ)から、両者は相当関係にある。

イ 引用発明の「前記光学系内の光路中に位置し、互いに重心の異なる複数の瞳を形成し、該入射光が各瞳を通過する遮光部206」と、本願発明の「前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する瞳分割手段」とを対比すると、

(ア)引用発明の「光学系」、「光学系内の光路中」、「位置し」、「互いに重心位置の異なる」、「複数の瞳」、「形成し」、及び「遮光部206」は、本願発明の「撮影光学系」、「撮影光学系内の光路中」、「配置される」、「互いに重心位置の異なる」、「少なくとも2つの開口」、「備え」、及び「瞳分割手段」にそれぞれ相当する。

(イ)また、引用発明の「光束が各瞳を通過する遮光部206」と「該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する瞳分割手段」とは、互いに「光束が各開口を通過する瞳分割手段」である点で一致する。
以上(ア)、(イ)から、両者は、
「前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、前記光束が各開口を通過する瞳分割手段と、」である点で一致する。

ウ 引用発明の「前記遮光部206によって、前記複数の瞳を通過し、撮像素子202上に結像されて光電変換された撮像信号に基づいて自己相関を計算し、合焦情報を取得する手段」と、
本願発明の「前記瞳分割手段によって前記光電変換手段に形成される前記被写体の像による画像信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段」とを対比すると、
引用発明の「前記遮光部206」、「複数の瞳を通過し、撮像素子202上に結像」、「光電変換された撮像信号」、「自己相関を計算し、」及び「合焦情報を取得する手段」と、本願発明の「瞳分割手段」、「光電変換手段に形成される前記被写体の像」、「光電変換手段に形成される・・・画像信号」、「基づいて」、「撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段」にそれぞれ相当するので、両者は相当関係にある。

エ 引用発明の「前記光学系と前記遮光部206を通過する入射光に基づいて測光結果を得る手段」と、本願発明の「前記撮影光学系と前記瞳分割手段を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段」を対比すると、

(ア)引用発明の「光学系」、「前記遮光部206」、「入射光」はそれぞれ、本願発明の「撮影光学系」、「瞳分割手段」、「光束」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「測光結果」は、「適正露出となる絞り値」(記載事項キ)であるから、本願発明の「被写体の明るさに関する情報」(「輝度算出」、「絞り制御」及び「シャッタ速度制御」等の情報を意味する(本願明細書の段落【0049】等参照)。)に相当する。
したがって、引用発明の「測光結果を得る手段」は、本願発明の「被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段」に相当する。

以上(ア)、(イ)から両者は相当関係にある。

オ 引用発明の「測光動作の間は遮光部206を、全ての領域で光を透過するように制御する手段」と、本願発明の「前記瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間、前記測光手段における被写体の明るさに関する情報の検出動作を禁止するとともに、前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段」を対比すると、
引用発明の「測光動作」及び「遮光部206」は、本願発明の「前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出」及び「瞳分割手段」に相当し、
また、引用発明の「遮光部206を、全ての領域で光を透過するように制御する手段」は本願発明の「瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で・・・する制御手段」に相当するから、両者は「前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段」の点で一致する。

カ 引用発明の「合焦情報検出装置を備えたカメラ」は、本願発明の「焦点検出装置付きカメラ」に相当する。

以上、ア?カの対比考察によって、本願発明と引用発明は、
「被写体からの光束を結像する撮影光学系と、
前記撮影光学系によって結像された前記被写体の像を受光し、画像信号に変換する光電変換手段と、
前記撮影光学系と前記光電変換手段との間の光路中又は前記撮影光学系内の光路中に配置されるとともに、互いに重心位置の異なる少なくとも2つの開口を備え、前記光束が各開口を通過する瞳分割手段と、
前記瞳分割手段によって前記光電変換手段に形成される前記被写体の像による画像信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記撮影光学系と前記瞳分割手段を通過する光束に基づいて、被写体の明るさに関する情報を検出する測光手段と、
前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態で前記測光手段における被写体の明るさに関する情報を検出する制御手段と、
を備えた焦点検出装置付きカメラ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1

「光束が各開口を通過する瞳分割手段」として、本願発明は、「該少なくとも2つの開口から少なくとも1つの開口を選択して第一の開口とするとともに、該第一の開口とは重心位置の異なる少なくとも1つの開口を選択して第二の開口とし、前記第一及び第二の開口を前記光束に対して時分割で開閉する」ものであるのに対し、引用発明は瞳分割手段の各開口を時分割で開閉するものではない点。

相違点2

「前記瞳分割手段により前記光束が遮光されていない状態」とは、本願発明は「瞳分割手段によって前記第一の開口と前記第二の開口とを交互に開閉動作している間」であるのに対し、引用発明は、「遮光部206を、全ての領域で光を透過するように制御する」ものである点。

4 当審の判断

(1)本願発明と先願発明の相違点について

上記相違点について検討すると, 上記相違点は、本願発明と先願発明が、焦点検出用の時分割型瞳分割方式に用いる瞳の開閉のための構成が、それぞれ異なることに起因する。
しかしながら、当該相違点は、先願発明の瞳の開閉構造を、従来周知の開閉構造(液晶板を使って、電気的に光を透過/遮断することによって、瞳の開口を形成したもの(例えば、記載事項カ、キ参照))と転換したことによって生じた程度のものにすぎず、また、その転換によって新たな効果を奏するものでもないことから、瞳開閉のための具体化手段における単なる微差にすぎない。
したがって、上記相違点は、実質的な差異ではない。

よって、本願発明と先願発明は、実質的に同一のものである。

(2)本願発明と引用発明の相違点について

上記相違点1,2をまとめて検討する。

上記相違点1,2は、焦点検出用の瞳分割手段として、本願発明が「時分割」方式であるのに対し、引用発明は「時分割」方式ではなく、同時に瞳を分割する方式である点に起因する。
ここで、時分割方式の瞳分割手段は、焦点検出分野において従来周知のものであり(記載事項キ参照)、引用発明の瞳分割手段として、同じ瞳分割手段の一形態である、従来周知の時分割方式を採用することは、当業者であれば容易に想到する事項であると言える。
また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明は引用発明と周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび

上記4(1)から,本願発明は,先願明細書に記載された発明と同一であり,しかも,本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時に,その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので,本願発明は,特許法29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。
また、上記4(2)から、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

以上の二つの理由から、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-09 
結審通知日 2009-06-16 
審決日 2009-06-30 
出願番号 特願平10-27073
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
小松 徹三
発明の名称 焦点検出装置付きカメラ  
代理人 古谷 史旺  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ