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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1202528
審判番号 不服2008-11363  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-07 
確定日 2009-08-10 
事件の表示 平成 9年特許願第 14488号「細径ファイバスコープ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月31日出願公開、特開平10-197805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年1月10日に出願した特願平9-14488号であって、平成20年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年6月6日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年1月26日付けで当審において拒絶理由の通知をし、これに対して同年4月3日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年4月3日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

「押出により多数集合されたプラスチック材料のコア部分と、当該多数のコア部分と同時押出によりその周りに施されると共に、前記コア部分のプラスチック材料より屈折率の低いプラスチック材料のクラッド部分とからなり、前記コア部分と前記クラッド部分とがその長手方向の全長にわたって一体化され、かつ、その長手方向に前記押出時に1又は2以上のスロットスペースが、前記コア部分及び前記クラッド部分に外方に開口させ、かつ長手方向の全長に直線的に延ばした溝形として、同時成形されると共に、少なくとも一端が切断されるライトガイド用の異形マルチコアファイバと、前記スロットスペースの少なくとも1つに挿入されたイメージファイバと、当該イメージファイバの一端に固着され、かつその一端が前記切断された異形マルチコアファイバの切断面に位置決めして合致された対物レンズとを備えてなることを特徴とする細径ファイバスコープ。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-51211号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(下記の「2 引用例1に記載された発明の認定」に直接関連する記載に下線を付した。)

「第2図は本発明に係るファイバスコープを示し、このスコープは、細径チューブ体1内にイメージガイド2とライトガイド3(第1図参照)が挿入されてなる挿入部4を備え、該挿入部4の基端部には、連結部材5を介してイメージガイド2のみが挿入される分岐管6及びライトガイド3のみが挿入される分岐管7が連設され、さらに、分岐管6には図示省略の接眼部に差込み固定される差込みガイド管8が連設され、分岐管7には、図示省略の光源装置に差込み固定される差込みガイド管9が連設されている。
しかして、イメージガイド2は、第1図と第3図に示すように、細径の長尺状のイメージガイド本体10と、該イメージガイド本体10の先端面に連設される対物レンズであるロッドレンズ11と、該ロッドレンズl1乃至イメージガイド本体10の先端を被覆する金属製スリーブ12と、を備えたものであり、また、イメージガイド本体10は、コアとクラッドとを有する多数の画素からなるガラス部と、該ガラス部を被覆する被覆層と、からなる。そして、イメージガイド2の先端部は、真直状のスコープ先端部13の軸心Oに対して所定の角度αで傾く傾斜部14とされる。
また、このイメージガイド本体l0の先端面15には、高屈折率の透明体16が連設され、この透明体16の先端面は、上記軸心Oと直交する平滑面17とされている。即ち、先端面18aが該平滑面17と同一面とされた金属遮光層18内に、透明体16を内装すると共に、イメージガイド本体10の先端挿入部19を挿入し、該遮光層I8と透明体16とイメージガイド本体l0の先端挿入部19とを一体状としている。そして、このイメージガイド本体10は、連結部材5、及び分岐管6を介して差込みガイド管8の基端まで達する。
次に、ライトガイド3は、コアとクラッドと被覆層とからなる複数本のファイバ芯線からなり、その先端部は、イメージガイド2と同様に傾斜部20とされている。また、このライトガイド3は、連結部材5及び分岐管7を介して差込みガイド管9の基端に達する。
しかして、イメージガイド2の傾斜部14とライトガイド3の傾斜部20とは、接着剤にて細径チューブ体1の先端部に接着固定され、その角度が保持される。なお、金属遮光層18の内周面とイメージガイド2の先端挿入部19の外周面と、金属遮光層18の内周面と透明体16の外周面と、透明体16の基端面16aとイメージガイド2の先端面15と、は夫々接着剤にて接着される。接着剤としてはエポキシ樹脂系の接着剤を使用するのが好ましい。
次に、上述の如く構成されたファイバスコープの挿入部4の製造方法を説明する。
ロッドレンズ11がスリーブ12を介して連設された状態のイメージガイド2の先端面15に、円柱状の透明体16を連設すると共に、円筒状の金属遮光層18にて該透明体16乃至イメージガイド2の先端挿入部19を被覆した状態として、該イメージガイド2を細径チューブ体1内に挿入すると共に、該イメージガイド2の先端部を所定角度αだけ折曲げて傾斜部14を形成する。また、この場合、先端部が所定角度(後述するように、上述の角度αより僅かに大とするのが好ましい。)だけ折曲げられて傾斜部20が形成されたライトガイド3も細径チューブ体1内に挿入される。そして、この状態で、傾斜部14,20を細径チューブ体1の先端部内で接着固定する。」(第2ページ右上欄第6行?第3ページ左上欄第10行)

「次に、第5図と第6図は他の実施例を示し、この場合、スリーブ12内に、ライトガイド3の傾斜部20の先端部をも挿入し、該ライトガイド3の先端面を透明体16の基端面16aに当接させている。
従って、この場合、ライトガイド3の照射方向がイメージガイド2の視野方向と一致するものとなっている。24はロッドレンズ11乃至イメージガイド本体10の先端を被覆するスリーブである。
次に、第7図と第8図は夫々さらに別の実施例を示し、第7図に示すファイバスコープでは、細径チューブ体1内に各種のチャンネル25,25が挿入されたものである。即ち、チューブ体lの先端内部にチューブ26を挿入固定し、該チューブ26内に、チャンネル25,25及び第5図に示す如く形成された透明体16付イメージガイド2及びライトガイド3の傾斜部14,20を挿入固定している。
また、第8図に示すファイバスコープでは、透明体16がスコープ先端面4aの中央に配設され、かつレーザーファイバ27を備えている。つまり、レーザーファイバ27とイメージガイド2との関係は第9図に示すようになり、第4図に示す場合と同様、レーザーファイバ27にて治療する観察部位23を観察することができる。なお、チャンネル25としては、フラシュ液流入用、吸引用、分光ファイバ挿入用等の種々のものである。」(第3ページ左下欄第20行?第4ページ左上欄4行)

第5図の記載から、ライトガイド3の端面が揃えられて、対物レンズであるロッドレンズ11の一端が、ライトガイド3の端面に合致していることが見て取れる。
第5,6図の記載から、スリーブ12で覆われたライトガイド3の束の中にイメージガイド2を挿入するスペースが設けられていることが見て取れる。

2 引用例1に記載された発明の認定
上記引用例1の記載を総合勘案すれば、引用例1には、
「その長手方向にイメージガイド2を挿入するスペースが成形されるとともに少なくとも一端が揃えられている、コアとクラッドと被覆層とからなる複数本のファイバ芯線からなるライトガイド3と、前記イメージガイド2を挿入するスペースに挿入されたイメージガイド2とを備えてなるファイバスコープであって、イメージガイド2は、細径の長尺状のイメージガイド本体10と、該イメージガイド本体10の先端面に連設される対物レンズであるロッドレンズ11とからなり、対物レンズ11の一端が、ライトガイド3の端面に合致しているファイバスコープ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-69605号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。

「本発明のプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバの一例の断面図を第1図に示す。芯材のメルトフローレートを前記の如く5?40g/10分とし、紡糸時の樹脂の温度を215?245℃の範囲に保って複合紡糸を行なう事により芯成分の受ける熱的ダメージが少なく、且つ得られるマルチフィラメント型光ファイバ断面内での外周部の島成分と中心部の島成分との配列状態に差はなく、かつ、光伝送損失の差は極めて小さいプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバを得る事ができる。なお、芯材とするポリメチルメタクリレートのメルトフローレートが5未満の場合、紡糸機内を通過せしめる樹脂の温度を高温にする必要がある為、該樹脂が劣化し、着色する為得られる光ファイバの光伝送性能は低下する。メルトフローレートが40を越えたポリメチルメタクリレートを芯材として作成したマルチフィラメント型プラスチック光ファイバは脆く、その取扱い時にファイバが破損し易くなる。
この例では、ファイバユニットの外形は円形を取っているが、その他矩形、正方形、六角形等の多角形状を取る事も可能である。また、本発明のプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバは、その海断面内に配された島部の配列状態が第1図に示した如く、俵積み構造を取っている事が必要で、がくすることによってマルチフィラメント型光ファイバ内での島断面の異常変形を防止することができ、画像伝送用として画像密度が高く高解像度のプラスチック製マルチ光ファイバを得る事が出来るのである。」(第3ページ左上欄第9?同ページ右上欄第19行)

「本発明に於いて、島部が芯-鞘構造を有する場合、芯成分の屈折率n_(1)と鞘成分の屈折率n_(2)との差が0.01以上、島成分が芯のみで形成されている場合、芯成分の屈折率n_(1)と海成分の屈折率n_(3)との差が0.01以上となる事が好ましい。n_(1)-n_(2)もしくはn_(l)-n_(3)が0.01未満となるような組み合わせで作られたプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバは、芯成分中に導入された光が鞘材、あるいは海材を通かして隣接の芯成分中へ漏光する現象が認められ、マルチフィラメント型光ファイバの画像の鮮明性が著しく低下するようになる。」(第4ページ左上欄第11行?同ページ右上欄第2行)

「本発明に於いて、島部が芯-鞘構造を有するプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバを製造する際に有効的に用いる紡糸口金の断面図を第2図に示す。同図中(1)は芯分配用口金であり、(2)は鞘分配用口金、(3)は海分配用口金、(4)は各成分分配用口金、(5)(6)(7)は芯成分供給口、鞘成分供給口、海成分供給口であり、(8)はマルチファイバ形成用集合口金である。(1a)は芯形成用ノズル、(2a)は鞘形成用ノズル、(3a)は海形成用ノズルであり、その下端部はラッパ状開孔となっている点に特徴を有している。(8)は集合ノズルを(9)は集合口であり、(6b)及び(7b)は夫々口金内での鞘成分ポリマー及び海成分ポリマーの流れを規制するスリットである。
この様な構造を有する紡糸口金の(5)から芯材形成用ポリマーを流し、(1)にて所定の島数に分配する。次に(6)から鞘材形成用ポリマーを流し、(2)にて芯部の囲りに鞘部を形成する。同様に(7)から海部形成用ポリマーを流し、(3)にて鞘部の囲りに海部を形成する。各々、三層構造を有するファイバを形成した後、(3a)で各ファイバを独立して吐出させ、次いで(8)の集合ノズル内で融着一体化して(9)より吐出する事により、本発明のプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバを製造し得る。
上述した如き紡糸口金を用いて本発明のプラスチック製マルチフィラメント型光ファイバを製造する場合、芯材のメチルメタクリレート系樹脂のメルトフローレートに対し鞘、海を構成する樹脂のメルトフローレートを大きく取る事が望ましい。島部と海部を構成する樹脂のメルトフローレート差を大きく取る事で島部は、より安定した円形断面とする事が出来る。海部形成用樹脂のメルトフローレートを島部形成用樹脂のメルトフローレートに近くする事により、島部断面は六角形状に近くする事が出来る。」(第5ページ右上欄第13行?同ページ右下欄第9行)

4 引用例3
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-33207号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。

「以下、この発明の一実施例を説明する。
まず、第1図に示すように屈折率の大きい芯ガラス1例えばSiO_(2)45%、PbO45%、K_(2)O7%、Na_(2)O3%のF2ガラスの周りに比較的小さい屈折率を有するコートガラス2例えばSiO_(2)70%、B_(2)O_(3)10%、BaO4%、Na_(2)O8%、K_(2)O8%のBK7ガラスを密着し光伝導素線3を得、この素線3を多数集めるとともに延伸したとき目的空間に合致する所定断面形状をなすように第2図中符号3’で示す如き束ねる。この束ね方としては1%程度のPVA溶液にて仮固着させるなどの公知の方法が用いられる。そして、これの外周に上記素線3と延伸時の熱(軟化)特性が近く、しかも後処理にて除去可能な外周材例えばガラス棒4を全体の断面形状が円形になるように配し集合体5を得る。この場合ガラス棒4は具体敵にSiO_(2)22%、B_(2)O_(3)60%、Na_(2)O11%、Al_(2)O_(3)7%の如き組成で1N程度のNaOH_(2)溶液にて容易に搬出可能なものを用いている。
このようにして得られた集合体5のガラス棒4部分を減圧下で加熱軟化させて第3図に示すように一体密着させ、外周4’を形成する。この状態で光伝導素線3の束部分3’が目的の空間に合致する大きさになるまで加熱延伸させ、その後外周4’を薄いNaOH溶液にて溶出する。これにより所定の断面形状をなす光伝達要素つまりコンジット6が得られる。そして、このようなコンジット6は第4図に示すように内視鏡管体7に例えばライトガイドとして組込まれる。ここで、第4図中8はイメージガイド用穴、9は 子(当審注;「端子」の誤りと思われる)10に用いる穴である。
したがって、このようにすれば目的の空間に合致する所望断面形状を有するコンジットが容易に得られるので限定された空間つまり内視鏡管体内の面積を最大限利用して有効に光量又は像を送ることができる。」(第2ページ左上欄第19業?左下欄第12行)

また、第4図から、光伝達要素であるコンジットが、イメージガイド挿入用のスロットスペースを有する「異形」の断面を有するものであることが見て取れる。

第3 本願発明と引用発明との対比
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「イメージガイド2を挿入するスペース」が、本願発明の「1又は2以上のスロットスペース」に相当する。
引用発明の「コアとクラッドと被覆層とからなる複数本のファイバ芯線からなるライトガイド3」と、本願発明の「ライトガイド用のマルチコアファイバ」は、「ライトガイド用の複数のコアを有するファイバ」である点で一致している。
また、ライトガイドの端部に関し、引用発明の「少なくとも一端が揃えられている」点と、本願発明の「少なくとも一端が切断される」点は、「少なくとも一端が揃えられている」点で一致している。
引用発明の「(イメージガイド2の構成要素である)イメージガイド本体10」が、本願発明の「イメージファイバ」に相当する。
引用発明の「ロッドレンズ11」が、本願発明の「対物レンズ」に相当する。
また、引用発明の「イメージガイド本体10の先端面に連設される」における「連設される」と、本願発明の「イメージファイバの一端に固着され、」における「固着され」は、表現が異なるだけで実質的に同じ意味であり、同様に、引用発明の「ライトガイド3の端面に合致している」における「合致している」と、本願発明の「異形マルチコアファイバの切断面に位置決めして合致された」の「位置決めして合致された」との間にも、実質的な差異は認められない。
上記の対応関係も考慮すれば、引用発明の「イメージガイド2は、細径の長尺状のイメージガイド本体10と、該イメージガイド本体10の先端面に連設される対物レンズであるロッドレンズ11とからなり、対物レンズ11の一端が、ライトガイド3の端面に合致している」点と、本願発明の「イメージファイバの一端に固着され、かつその一端が前記切断された異形マルチコアファイバの切断面に位置決めして合致された対物レンズとを備えてなる」点とは、「イメージファイバの一端に固着され、かつその一端が揃えられたファイバの当該一端面に位置決めして合致された対物レンズとを備えてなる」点で一致している。
引用発明の「ファイバスコープ」が、本願発明の「細径ファイバスコープ」に相当する。

2 一致点
よって、本願発明と引用発明とは、
「その長手方向に1又は2以上のスロットスペースが成形されるとともに少なくとも一端が揃えられているライトガイド用の複数のコアを有するファイバと、前記スロットスペースの少なくとも1つに挿入されたイメージファイバと、当該イメージファイバの一端に固着され、かつその一端が揃えられたライトガイド用のファイバの当該一端面に位置決めして合致された対物レンズとを備えてなる細径ファイバスコープ。」の点で一致し、以下の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
ファイバスコープにおけるライトガイド用の複数のコアを有するファイバが、本願発明においては、「押出により多数集合されたプラスチック材料のコア部分と、当該多数のコア部分と同時押出によりその周りに施されると共に、前記コア部分のプラスチック材料より屈折率の低いプラスチック材料のクラッド部分とからなり、前記コア部分と前記クラッド部分とがその長手方向の全長にわたって一体化され」る「マルチコアファイバ」により形成されるものであるのに対して、引用発明には、その限定がない点。

(2)相違点2
ライトガイド用の複数のコアを有するファイバの外形が、本願発明においては「異形」であるのに対し、引用発明においては、その点が明確でない点。

(3)相違点3
ライトガイド用の複数のコアを有するファイバに設けられるスロットスペースが、本願発明においては、「コア部分及び前記クラッド部分に外方に開口させ、かつ長手方向の全長に直線的に延ばした溝形として」ライトガイド用のファイバと「同時成形される」のに対して、引用発明には、その限定がない点。

(4)相違点4
ライトガイド用の複数のコアを有するファイバの揃えられた一端が、本願発明においては「切断された」ものであるのに対して、引用発明においては、その点が明確でない点。

第4 当審の判断
1 上記各相違点について判断する。
(1)相違点1について
引用例2の上記記載事項から、引用例2には、
「押出により多数集合されたプラスチック材料のコア部分と、当該多数のコア部分と同時押出によりその周りに施されると共に、前記コア部分のプラスチック材料より屈折率の低いプラスチック材料のクラッド部分とからなり、前記コア部分と前記クラッド部分とがその長手方向の全長にわたって一体化され」るマルチコアファイバが記載されているといえる。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明とは、ライトガイド用の複数のコアを有するファイバである点で共通しており、相互に技術を適用し得るものであるといえるから、引用発明に、引用例2に記載の発明の構造を採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
ライトガイド用の複数のコアを有するファイバの外形を「異形」とすることは、引用例3にも記載されている技術的事項である。
引用発明においても、上記技術的事項を採用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
引用例3の「この素線3を多数集めるとともに延伸したとき目的空間に合致する所定断面形状をなすように第2図中符号3’で示す如き束ねる。」「そして、これの外周に上記素線3と延伸時の熱(軟化)特性が近く、しかも後処理にて除去可能な外周材例えばガラス棒4を全体の断面形状が円形になるように配し集合体5を得る。」「このようにして得られた集合体5のガラス棒4部分を減圧下で加熱軟化させて第3図に示すように一体密着させ、外周4’を形成する。」「これにより所定の断面形状をなす光伝達要素つまりコンジット6が得られる。そして、このようなコンジット6は第4図に示すように内視鏡管体7に例えばライトガイドとして組込まれる。」の記載、及び、第4図の記載から、引用例3の光伝達要素であるコンジット6は、スロットスペースを、外方に開口させ、かつ長手方向に全長に直線的に延ばした溝形として、コンジット成形時に同時成形したものであるといえる。
すなわち、コンジットの成形に関して、コンジットの形状を長手方向全長に渡りスロットスペースを有する同一の断面形状として、コンジットを成形することは、引用例3に記載されてた公知の技術である。よって、上記「(1)相違点1について」において、「押出により多数集合されたプラスチック材料のコア部分と、当該多数のコア部分と同時押出によりその周りに施されると共に、前記コア部分のプラスチック材料より屈折率の低いプラスチック材料のクラッド部分とからなり、前記コア部分と前記クラッド部分とがその長手方向の全長にわたって一体化されるマルチコアファイバ」である点を採用するに際して、上記引用例3に記載された公知の技術を適用し、上記の「コア部分とクラッド部分」の形状を、外方に開口させ、かつ長手方向に全長に直線的に延ばした溝形のスロットスペースを有する形状として、当該スロットスペースを同時成形することは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点4について
複数の線状部材を一端で揃えて設ける場合に、線状部材の一端を「切断して」揃えることは、種々の技術分野において用いられる周知の技術である。
したがって、引用発明の上記周知技術を採用して、ライトガイド用の複数のコアを有するファイバを、一端を切断するとすることに格別の困難性は認められない。

2 そして、本願発明によってもたらされる効果は、上記引用例1ないし3に記載された発明から、当業者が予測し得る程度のものである。

3 したがって、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-29 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願平9-14488
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 信田 昌男瀬川 勝久  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
村田 尚英
発明の名称 細径ファイバスコープ及びその製造方法  
代理人 石戸谷 重徳  

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