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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1202530
審判番号 不服2008-11944  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-09 
確定日 2009-08-10 
事件の表示 平成10年特許願第358417号「粘着型光学部材」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月23日出願公開、特開2000-171634〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成10年12月1日の出願であって、平成19年12月6日付け、及び平成20年3月13日付けで手続補正がなされ、平成20年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年5月9日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、平成20年6月3日付けで手続補正がなされたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成19年12月6日付け、平成20年3月13日付け及び平成20年6月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層を、分子量が1000以下の低分子オリゴマーの含有量を1.2重量%以下としたPETフィルムからなるポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理したセパレータの前記剥離処理面にて仮着カバーしてなることを特徴とする粘着型光学部材。」

なお、平成20年6月3日付けの補正は、その補正前の請求項3を削除するものであるから、この補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

2.引用例及び周知例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平7-301792号公報(以下、「引用例」という。)、原査定の拒絶理由に周知例として引用された特開昭63-42845号公報(以下、「周知例1」という。)、同じく特開平5-16258号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

a.引用例;

光学フィルムに関するもので、
記載事項ア.【0010】【0011】
「【0010】
【実施例】本発明の光学フィルムは、特定のアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体を用いたアクリル系粘着剤からなる凝集力が0.2μm/分以上の粘着剤層を、液晶セルに貼着するための光学フィルム素材の片面又は両面に設けたものからなり、液晶表示装置の形成に用いるものである。
【0011】本発明の光学フィルムの例を図1、図2に示した。2が光学フィルム素材、3が粘着剤層である。また図2において、21は偏光フィルム、22は位相差フィルムであり、これらが粘着剤層3を介し積層されて光学フィルム素材2としての楕円偏光フィルムが形成されている。なお1は保護フィルム、4はセパレータである。」

記載事項イ.【実施例】の項中【0038】
「実施例1
ポリエステルフィルムからなるセパレータにアクリル系粘着剤を塗工し150℃で5分間加熱処理して厚さ23μmの粘着剤層を設け、それを偏光フィルム(日東電工社製、NPF-G1225DUNAGS1)と、厚さ70μmのポリカーボネートフィルムを160℃にて一軸延伸してなる位相差フィルムの片面にそれぞれ貼着したのち、偏光フィルム側のセパレータを剥がしてその粘着剤層を介し、偏光フィルムの吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が45度で交差するよう積層して楕円偏光フィルムからなる光学フィルムを得た。」

記載事項ア.及びイ.の記載内容からして、引用例には、
「液晶セルに貼着するための光学フィルム素材の片面又は両面に設けた粘着剤層、及び該粘着剤層を塗工したポリエステルフィルムからなるセパレータからなる光学フィルム。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

b.周知例1;

液晶表示用ポリエステルフィルムに関するもので、
記載事項ウ.1頁右下欄7?12行
「〔産業上の利用分野〕
本発明は液晶表示用ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、加熱処理時にオリゴマーのフィルム表面への析出付着に伴う白濁現象が生じない液晶表示用ポリエステルフィルムに関する。」

記載事項エ.2頁左上欄下から4行?同右上欄下から3行
「〔発明が解決しようとする問題〕
液晶用ポリエステルフィルムは、フィルムに直接透明導電膜を設けて電極用として使われたり、偏光フィルムと、貼り合わせ、偏光フィルムの補強材又は被覆材として使われたりしているが、液晶表示用として使われる場合には、他の電子部品と組み合せて使用されるために、高温時の寸法安定性が要求される。この為ポリエステルフィルム単体の状態又は、透明導電膜を設けたり、偏光フィルムと貼り合せたりした後の加工した状態で、加熱処理して、あらかじめポリエステルフィルム又は、その加工品の収縮率を小さくしておくことが必要となる。
ところで、既に知られている事であるが、ポリエステルフィルムには、主として環状三量体からなる各種のオリゴマーが含有されている。低収縮化するために、ポリエステルフィルム又はその加工品を加熱処理すると、含有されているオリゴマーがフィルム表面へ析出し付着した状態でフィルムに斑点状の汚れた模様をつけ、はなはだしい場合には、フィルムが白濁するという問題が発生する。」

記載事項オ.2頁左下欄2?8行
「〔問題点を解決するための手段〕
本発明はオリゴマーの析出付着に基づく上記問題点を解決し、ポリエステルフィルムに加熱処理が施された場合においても、フィルムに汚れ状の斑点を発生させず、かつフィルムの濁度が殆ど上昇しない、液晶表示用フィルムに好適なポリエステルフィルムを提供するものである。」

記載事項カ.2頁右下欄2?8行
「本発明のポリエステルフィルムにおけるポリエステルとは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオールとから合成された高結晶性の線状飽和ポリエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどが挙げられる。」

記載事項キ.3頁左上欄下から2行?同右上欄7行
「本発明のポリエステルフィルムは、通常の溶融重合法によって得られた、実質的に粒子を含有しないか、又は、少量の粒子を含有する先述のポリエステルチップを減圧下あるいは、不活性ガス流通下で180℃?240℃に1?10時間程度保ち固相重合することによって、ポリエステル中のオリゴマーを除いた後に溶融押出し、冷却固化して未延伸シートを得、適宜延伸して得られる。」

記載事項ク.4頁左下欄10行?5頁左上欄1行
「実施例1
・・・・・・・・・・・・。
チップAも窒素気流中で220℃にて10時間加熱して、固相重合したチップを得た。(該チップをチップBとする。)
チップBを295℃にて溶融し、平均4分の滞留時間で溶融押出し、無定形シートを得、次いで縦方向に1.1倍、横方向に4.1倍延伸し、次いで、巾方向に2%収縮させながら220℃にて熱処理し厚さ100μのフィルムを得た。該フィルムの諸物性を表1に示す。
該フィルムを40cm×40cmの断片に切断し、150℃、2時間加熱処理し、低収縮化しても、オリゴマーの析出付着は全く見られず、液晶表示用フィルムとして、透明性及び外観は良好であった。」

c.周知例2;

ポリエステルフィルムの熱処理方法に関するもので、
記載事項ケ.【0002】【0003】
「【0002】
【従来の技術】二軸延伸ポリエステルフィルムは、すぐれた物理的性質のために種々な用途に用いられており、特に寸法安定性の必要な用途に好んで用いられている。ところが該ポリエステルフィルムを長時間加熱状態にさらしておくと、フィルム表面にオリゴマーがブリードアウトしてきて、透明性のみならず、接着性、光沢度、印刷性などの特性が大幅に低下するという欠点を有していた。
【0003】そこでポリエステル原料を固相重合してオリゴマー含有量を少なくした原料を用いて製膜する方法や、二軸延伸ポリエステルフィルムを溶媒で抽出する方法などが提案されている。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「液晶セルに貼着するための光学フィルム素材」は、本願発明の「光学部材」に相当するから、引用発明の「液晶セルに貼着するための光学フィルム素材の片面又は両面に設けた粘着剤層」は、本願発明の「光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層」に相当する。
(b)本願発明のセパレータと引用発明のセパレータとは、ポリエステルフィルムのセパレータである点で一致する。
(c)引用発明の対象である「光学フィルム」は、本願発明の対象である「粘着型光学部材」に相当する。

(a)?(c)に記載したことからして、本願発明と引用発明の両者は、
「光学部材の片面又は両面の最表面に設けた粘着層と、ポリエステルフィルムのセパレータからなる粘着型光学部材。」
である点で一致し、次の相違点が存在する。

相違点(1);
セパレータについて、本願発明は、ポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理したセパレータの前記剥離処理面にて仮着カバーしてなるのに対して、引用発明は、ポリエステルフィルムそのものである点、

相違点(2);
セパレータのポリエステルフィルムが、本願発明は、分子量が1000以下の低分子オリゴマーの含有量を1.2重量%以下としたPETフィルムからなるのに対して、引用発明は、そのような限定がない点。

4.当審の判断
相違点(1)、(2)について検討する。

相違点(1)について;

粘着型光学部材のセパレータについて、ポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理したセパレータの前記剥離処理面にて仮着カバーしてなるものとすることは、周知の技術である。(例えば、特開平4-124601号公報の4頁左上欄2?6行、特開平6-123806号公報の【0090】、特開平5-297221号公報の【0028】参照。)
したがって、引用発明のセパレータを、ポリエステルフィルムそのものに換えて、ポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理したセパレータの前記剥離処理面にて仮着カバーしてなるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

相違点(2)について;

周知例1についての前記記載事項ウ.?ク.の記載内容からして、周知例1には、ポリエステル中のオリゴマーを除くことで、加熱処理時にオリゴマーのフィルム表面への析出付着に伴う白濁現象が全く生じない液晶表示用ポリエステルフィルム、が記載されているといえる。
また、周知例2には、ポリエステルフィルムを長時間加熱状態にさらすことで、フィルム表面にオリゴマーがブリードアウトしてくるのを防止するために、オリゴマー含有量を少なくしたポリエステルフィルムについて記載されているといえる。
このように、加熱処理時にオリゴマーのフィルム表面への析出付着を防止するために、オリゴマーを除いた、或いはオリゴマー含有量を少なくしたポリエステルフィルムは、普通に知られたものであるといえる。

そして、引用発明のポリエステルフィルムセパレータに粘着剤を塗工する際には加熱処理するものであり、他方、周知例1,2のポリエステルフィルムも加熱処理するものである点で、引用発明と周知例1,2の技術は共通するから、引用発明のセパレータのポリエステルフィルムとして、低分子オリゴマーを除いた或いは低分子オリゴマー含有量を少なくしたポリエステルフィルム、特に、低分子オリゴマーを除いたポリエステルフィルムを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
許容し得る低分子オリゴマーの分子量の上限値を1000、許容し得る低分子オリゴマー含有量の上限値を1.2重量%と設定することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
また、周知例1,及び周知例2の【0007】に記載されるように、ポリエステルフィルムのうちPETフィルムは代表的なフィルムであり、引用発明のポリエステルフィルムとしてPETフィルムを用いることは、格別のことではない。
よって、相違点(2)に係る本願発明の発明特定事項は、周知例1,2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得たことである。

本願発明の輝度ムラ等の光学異常が生じないという作用・効果については、セパレータとして、ポリエステルフィルムを剥離剤で表面処理し、且つ、低分子オリゴマーを除いたポリエステルフィルムを用いた粘着型光学部材が奏する作用・効果を確認したにすぎないもので、格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-05 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-30 
出願番号 特願平10-358417
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 信  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
越河 勉
発明の名称 粘着型光学部材  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  
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