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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1202608
審判番号 不服2007-10201  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-10 
確定日 2009-08-19 
事件の表示 特願2003-143359「発光ダイオード・アレー光源および該光源を使用するバックライトモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月9日出願公開、特開2004-349060〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月21日の特許出願であって、平成19年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として、同年4月10日に本件審判請求がなされたものである。

2.本願の発明
本願については、平成18年4月18日付けの最後の拒絶理由通知の後の同年7月10日付けの手続補正で特許法第17条の2第4項第1号でいう「請求項の削除」を目的とした補正を行ったものであり、特許請求の範囲についてする補正の目的に該当するものである

審判請求人は、上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮だと云っているが、この補正事項は、補正前の請求項1を引用する請求項3を新たな請求項1としたのであるから、補正前の請求項1を削除したとみることができる。
そうすると、原審において審査官が認定したように上記補正事項は請求項の削除を目的としたものに該当するといえる。
なお、補正後の請求項1は、補正前の請求項1を引用する請求項3であるが、表現上は補正前の請求項1のうちの「複数個の発光ダイオードが、それぞれ複数組の接点と電気的に接続し、」という事項が除外されているが、上記「複数個の発光ダイオードが、それぞれ複数組の接点と電気的に接続し、」という事項は、当業者にとっては自明な事項であり、特別な意味を有する事項でもないので、補正後の請求項1は、実質的には補正前の請求項3であるとみることができるから、上記補正事項は、原審での認定どおり「請求項の削除」を目的とした補正とみなすことができる。

したがって、本願の発明は、平成18年7月10日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
なお、「第二接合エアリア」は「第二接合エリア」の誤記であるのは明らかであるから、以下「第二接合エリア」と認定する。

【請求項1】
「光入射面、光射出面及び光散乱面を有する導光板、並びに前記導光板に光を照射するための発光ダイオード・アレー光源からなるバックライトモジュールであって、前記発光ダイオード・アレー光源は正面及び背面それぞれに複数組の接点を有する積載器、及び前記積載器上に配置される複数個の発光ダイオードからなり、前記積載器が、複数組の第一接点を有する第一接合エリア、複数組の第二接点を有する第二接合エアリア、及び第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリアを有するフレキシブルプリント回路薄膜を二つ折りにして形成されたものであり、前記複数個の発光ダイオードの光が前記積載器の一方サイドから照射されることを特徴とするバックライトモジュール。」

3.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物とその記載事項及び記載事項の概要は、以下のとおりである。
なお、下記記載中における下線指標等は、いずれも当審で加入。

[第1引用例]特開平5-224610号公報
発光ダイオード表示ユニット及びその製造方法に関するもので、
【0011】には、
「【実施例】以下、本発明に係る発光ダイオード表示ユニット及びその製造方法の好適な一実施例を図面に従って説明する。図1乃至図4は、本発明に係る発光ダイオード表示ユニットの構造を示すものである。本発明に係る発光ダイオード表示ユニット1は、2枚のプリント基板2,2を重合するように並設一体化した構造になるものであり、両プリント基板2,2の内面間はそれぞれ板面に開設した複数の固定孔3,3…にサポート4,4…を挿通して所定間隔Wを保持するように固定してある。そして、両プリント基板2,2の外面には、それぞれ情報表示盤の表示装置(図示していない)としてマトリックス状配列になる多数の発光ダイオード5,5…が、発光ダイオード表示ユニット1の構成に際しては上端側となる各プリント基板2の端縁2aに沿って一列になるように複数個ずつを整列させて固定してある。これらの発光ダイオード1,1…は、それぞれ電極リード部6,6…を該プリント基板2の端面に穿設したスルーホール7,7…に挿通させた状態で該プリント基板2の片面側、即ち外面側に半田付け固定すると共に、該電極リード部6,6…を略90°に折り曲げてプリント基板2の外面と略平行になるように各発光ダイオード5,5…の光放射面5a,5a…がプリント基板2の端縁2aより外側上方へ突出するように整列させた構造になっている。」
と記載され、
【0013】には、
「また、両プリント基板2,2の上記発光ダイオード5,5…が装着されない外面には、該発光ダイオード5,5…を駆動するための駆動回路部品8,8…を搭載固定すると共に、一方のプリント基板2には、情報表示盤のハウジング(図示していない)に発光ダイオード表示ユニット1を装着した場合、該ハウジング側と電気的に接続するための電気的接点9を構成し、更に両プリント基板2,2間を可撓性のプリント基板その他の可撓性ケーブル10によって両プリント基板2,2間を電気的に接続する構造になっている。」と記載され、
【0016】には、
「即ち、先ず、隣接して並設される2枚のプリント基板2,2を形成するように型取りされた基板材11において、両プリント基板2,2の分割線12に対して対称となる端縁2a,2aの近傍に、該端縁2a,2aと平行になるように発光ダイオード5,5…装着用の複数のスルーホール7,7…を穿設し、該複数のスルーホール7,7…に対して基板材11の片面側(プリント基板2,2として一体化固定した場合には外面となる)から発光ダイオード5,5の電極リード部6,6…を挿入して半田付け固着する。 《中略》 各部品装着作業完了後に、基板材11を上記分割線12部で分割して可撓性ケーブル10で連結された2枚のプリント基板2,2を形成すると共に、両プリント基板2,2間に両基板間を所定間隔Wに保持する複数のサポート4,4…を介装して両プリント基板2,2を一体化固定する。《以下略》」と記載されている。

そこで、図面とともに上記記載事項を参照すると、第1引用例には、 「発光ダイオードのユニットは外面側にそれぞれに複数組のスルーホール7を有するプリント基板2,2、及び前記プリント基板2,2上に配置される複数個の発光ダイオードからなり、前記プリント基板2,2が、複数組のスルーホール7を有する基板材11から分割される一方のプリント基板2、複数組のスルーホール7を有する基板材11から分割されるもう一方のプリント基板2、及び基板材11から分割される一方のプリント基板2と基板材11から分割されるもう一方のプリント基板2を連結する両プリント基板2,2間を電気的に接続する可撓性のプリント基板を有する発光ダイオードのユニット」
に関する発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

[第2引用例]特開2003-121840号公報
液晶表示装置に関するもので、
【0003】には、
「図5は従来のバックライト付の液晶表示装置1の一般的な構造を示したものである。 《中略》 バックライト部3は、光源であるLED7と、このLED7で発した光を導く導光板8とを備えている。前記導光板8は、透明なアクリル材で形成され、その一側面11に入射した光を内部に導くと共に、上方に配設された光拡散材9を通して液晶セル部2を均一に照明するために設けられている。前記LED7は、白色等の単一の発光素子12を備えたものや赤、青、緑の3原色の発光素子を備えたもの等用途に応じて適宜選択して使用される。また、これらのLED7を実装する回路基板10もケーシング4内に組み込まれる。《以下略》」
と記載され、
【0015】中段には、
「FPC38は図3に示すように、液晶表示部22を制御するための、液晶駆動回路部38aとLED27を実装するためのLED実装部38bとで構成されている。」
と記載され、
【0016】には、
「上記構成からなる液晶表示装置21は、図2に示されるように、3種の発光素子34からなる厚みのあるLED27を配設した場合に、LED27で発した各種の光が厚みのある導光板28の受光面33に漏れなく入射される。そして、この照射した光aは先ず傾斜面31で反射され、さらに導光板28の底面32で反射されて導光板28の内部に拡散される。このようにして、導光板28内に広がった光は、光拡散材29を透過してバラツキのない均一な光となって液晶セル25を明るく照明することができる。」
と記載されている。

そこで、第2,3,5図とともに上記記載事項を参照すると、
3種の発光素子34からなる厚みのあるLED27を配設したものは、発光ダイオード・アレーで、LED実装部38bとLED7を実装する回路基板10は積載器であるから、第2引用例には、発光ダイオード・アレーを「バックライトモジュール」で「光入射面、光射出面及び光散乱面を有する導光板、並びに前記導光板に光を照射するための・・・光源」として用い、その際、「複数個の発光ダイオードの光が積載器の一方サイドから照射」する点が示されている。

[第3引用例]特開平5-327135号公報
回路実装体に関するもので、各実装エリア(第一接合エリア、第二接合エリア)及び折り曲げ部分(第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリア)を「フレキシブルプリント回路薄膜(フィルム)を二つ折りにして形成」している構成が示されている。

[第4引用例]特開平11-249215号公報
フレキシブルプリント配線基板を有するカメラに関するもので、【図2】には、各実装エリア(第一接合エリア,第二接合エリア)及び折り曲げ部分(第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリア)を「フレキシブルプリント回路薄膜を二つ折りにして形成」している構成が示されている。

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、第1引用例の【0011】「マトリックス状配列になる多数の発光ダイオード5,5…」の記載から、引用発明の発光ダイオードのユニットは、本願発明の「発光ダイオード・アレー」ということができる。

引用発明の「スルーホール7」は本願発明の「接点」「第一接点」「第二接点」に相当し、以下、「外面側」は「正面及び背面」に、「プリント基板2,2」は「積載器」に、「基板材11から分割される一方のプリント基板2」は「第一接合エリア」に、「基板材11から分割されるもう一方のプリント基板2」は「第二接合エリア」に、「基板材11から分割される一方のプリント基板2と基板材11から分割されるもう一方のプリント基板2を連結する両プリント基板2,2間を電気的に接続する可撓性のプリント基板」は「第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリア」にそれぞれ相当する。

よって、両者は、
「発光ダイオード・アレーは正面及び背面それぞれに複数組の接点を有する積載器、及び前記積載器上に配置される複数個の発光ダイオードからなり、前記積載器が、複数組の第一接点を有する第一接合エリア、複数組の第二接点を有する第二接合エリア、及び第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリアを有する」点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1>
本願発明では、発光ダイオード・アレーの用途が「バックライトモジュール」で「光入射面、光射出面及び光散乱面を有する導光板、並びに前記導光板に光を照射するための・・・光源」であることと、「複数個の発光ダイオードの光が積載器の一方サイドから照射される」のに対して、引用発明の発光ダイオード・アレーは、表示用のもので、「複数個の発光ダイオードの光が積載器の一方サイドから照射される」ものではない点。
<相違点2>
本願発明では、「第一接合エリア、第二接合エリア及び第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリアを、フレキシブルプリント回路薄膜を二つ折りにして形成した」のに対して、引用発明では、基板を分割したり、可撓性のプリント基板を用いてはいるが、それぞれ別の部材から形成している点。

5.相違点の検討(容易想到性の判断) 上記の相違点について検討する。
<相違点1> について
発光ダイオード・アレーを「バックライトモジュール」で「光入射面、光射出面及び光散乱面を有する導光板、並びに前記導光板に光を照射するための・・・光源」として用いることは周知であり、その際、「複数個の発光ダイオードの光が積載器の一方サイドから照射」することは、ごく当然の構成であって、第2引用例に示されている如くであるから、引用発明の発光ダイオード・アレーを、バックライトモジュールで光入射面、光射出面及び光散乱面を有する導光板、並びに前記導光板に光を照射するための・・・光源として用い、複数個の発光ダイオードの光が積載器の一方サイドから照射するようなし、本願発明でいう上記相違点1の構成とすることは当業者にとって技術的に困難なことではない。
なお、第2引用例に光散乱面は明記されていないが、このような構成は請求人も従来技術(出願当初明細書【0004】参照)として認識しているようにバックライトモジュールで通常採用されている構成である。

<相違点2> について
第一接合エリア、第二接合エリア及び第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリアを、「フレキシブルプリント回路薄膜を二つ折りにして形成する」ことは、第3引用例及び第4引用例に示されているように通常用いられている実装技術であるから、引用発明の第一接合エリア、第二接合エリア及び第一接合エリアと第二接合エリアを連結する折れ曲がりエリアを「フレキシブルプリント回路薄膜を二つ折りにして形成する」ようなし、本願発明でいう上記相違点2の構成とすることは当業者にとって技術的に困難なことではない。
そして、本願発明が奏する作用効果について検討しても、引用発明及び第2引用例に記載の技術事項並びに第3,4引用例に記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び第2引用例に記載の技術事項並びに第3,4引用例に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

6.むすび
以上によると、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-23 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-04-08 
出願番号 特願2003-143359(P2003-143359)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 和彦仁科 雅弘  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 中川 真一
横溝 顕範
発明の名称 発光ダイオード・アレー光源および該光源を使用するバックライトモジュール  
代理人 山田 勇毅  
代理人 森田 耕司  
代理人 大野 聖二  

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