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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1202674 |
審判番号 | 不服2008-6654 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-18 |
確定日 | 2009-08-17 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第183124号「等倍結像光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年1月22日出願公開、特開平11-14803〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年6月24日の出願であって、平成19年8月10日付け拒絶理由通知に対して、同年10月12日付けで手続補正がされたが、同年11月5日付けで再度の拒絶理由通知がなされた後、平成20年2月14日付けで拒絶査定され、これに対して、同年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成19年10月12日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを、その光軸が互いに平行になるように2列に多数本並べた等倍結像ロッドレンズアレイを使用し、前記レンズアレイの両側に原稿面とセンサを配置した装置において、 (1)ロッドレンズ外径に関し、 0.05mm≦R≦0.25mmで、且つ0.5R≦r_(0) ≦1.0R 但し、2R:隣接するロッドレンズの光軸間距離 r_(0 ):ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径 (2)ロッドレンズの屈折率分布を、n(r)^(2) =n_(0)^( 2) ・{1-(g・r)^(2 ) }の式で近似したとき、 0.05≦n_(0) ・g・r_(0) ≦0.50で、且つ1.40≦n_(0) ≦1.75 但し、r:光軸からの距離 n(r):光軸からの距離rの位置での屈折率 n_(0) :光軸での屈折率 g:屈折率分布係数 (3)ロッドレンズの長さZ0 は、 0.5<Z_(0) /P<1.0 但し、P:P=2π/gで定義されるロッドレンズの周期長 (4)軸ずれ量が1.0R以下で、m=X_(0) /2Rで定義される重なり度m が、 1.46≦m≦1.64 但し、X_(0) :X_(0) =-r_(0 )/cos(Z_(0) π/P)で与えられる単一ロッド レンズの視野半径 の各条件を満たすことを特徴とする等倍結像光学装置。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-204899号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 記載事項ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】半径方向の屈折率分布が n(r)^(2)=n_(0)^(2)・{1-(gr)^(2)+h_(4)・(gr)^(4)+h_(6)・(gr)^(6)+h_(8)・(gr)^(8)+・・・} (ただし、n(r):ロッドレンズの中心から距離rでの屈折率、 n_(0):ロッドレンズの中心の屈折率、 g:ロッドレンズ中心付近の屈折率分布形状により決まる屈折率分布定数、 gr:距離rでの屈折力(無次元数)、 h_(4),h_(6)およびh_(8):屈折率分布係数、)で表される屈折率分布型ロッドレンズ(11)を、その光軸が互いに平行になるように複数本並べて、アレイ化した等倍結像レンズアレイ(10)と、前記レンズアレイの前焦点位置にその原稿面(21)が位置するように配置した透明基板(20)と、前記レンズアレイを介して前記基板と対向し、前記レンズアレイの後焦点位置に設けた光電変換素子(30)とを、備えたイメージ読み取り装置において、前記透明基板(20)と前記レンズアレイ(10)の一方のレンズ面が当接しており、かつ前記透明基板(20)は前記レンズアレイの前焦点位置が前記基板原稿面(21)にくるような厚みを有しており、さらに前記ロッドレンズのレンズ径が0.1?0.4mmであることを特徴とするイメージ読み取り装置。」 記載事項イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ,イメージスキャナ、プリンターなどの光学機器において、原稿面を光学的に走査して、原稿に記録された情報を電気信号に変換して出力するイメージ読み取り装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、ファクシミリ,イメージスキャナなどの光学機器に用いられるイメージ読み取り装置には、屈折率分布型ロッドレンズアレイ(セルフォック(登録商標)レンズアレイ(以下、SLAと記す))を用いた密着型,ミラーおよびレンズを用いてCCDセンサー上に信号を伝送する縮小型,光学系を使用しない完全密着型があり、その他にも光ファイバアレイを光学系として用いたものも開発されている。・・・ ・・・ 【0004】以下、図面を参照しながら、上述した従来の屈折率分布型ロッドレンズアレイ(SLA)を用いた密着型イメージ読み取り装置の一例について説明する。図7は、当該装置の断面図を示すものである。密着型イメージ読み取り装置は、原稿50を載置するカバーガラス(透明基板)20で、上部開口部を閉塞したハウジングのなかに、光源60,等倍結像レンズアレイ10,光電変換素子30のそれぞれを配置固定して構成されている。 【0005】半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズは、その両端面が平坦でも凸レンズと同等の作用を示す。この前記ロッドレンズを、1段あるいは複数段並べると、複合レンズ(レンズアレイ)として作用する。 【0006】このレンズアレイは、隣接する各レンズによる像が重なり合って、物体と像とが等倍(1対1、倍率1)の関係を保った帯状の連続した一つの合成像を作るため、線状の像をイメージセンサあるいは感光ドラム上に結合させることができる。このため、ファクシミリ、イメージスキャナ、プリンターあるいは複写機などの光学機器の等倍結合光学系のレンズとして利用されている。 【0007】前記ロッドレンズでは、その内部半径方向で例えば組成が連続的に変化しており、それに伴ってロッドレンズ内部の屈折率も半径方向で連続的に変化している。・・・ 【0008】また、前記ロッドレンズ内へ入射した光線はその入射位置、入射角度に依らず同じ蛇行周期P(以下、レンズピッチと記す)でレンズ内を進み、この時レンズピッチは次の式 P=2π/g でgから計算される(つまりgと関係づけられる)。」 記載事項ウ(丸数字は括弧書き数字に変換している。) 「【0045】 【作用】上述した本発明によれば、以下のような作用がある。 (1)等倍結像レンズアレイ10のハウジング内での原稿面上への前焦点の位置出し調整が不要となる。 (2)ロッドレンズのレンズ径を0.4mm以下と小さくしたために、同一の屈折率分布の形状を持つ従来のロッドレンズ径1mm前後のロッドレンズに比べて、原理的に解像力が高くなる。 (3)光電変換素子(イメージセンサ)の配列ピッチに対応したロッドレンズ径を選ぶことで、SLAの明るさむらの影響をほとんどなくすることができる。 (4)ロッドレンズのレンズ径が0.4mm以下なのでレンズアレイが小さくなり、ひいてはイメージ読み取り装置が小型化できる。」 記載事項エ 「【0050】表1に具体例1の光学パラメータとともに、比較例1として従来品である日本板硝子(株)製SLA-20B(構成ロッドレンズのレンズ径φ0.9mm)を示した。また表2に、以下に述べるような方法で測定した具体例1と比較例1のレンズ光学特性値の結果をまとめて示した。 【0051】 【表1】 表1 レンズのパラメータ ---------------------------------- 具体例1 比較例1* 具体例2 比較例2** ---------------------------------- レンズ径(mm) 0.30 0.9 0.25 0.9 中心屈折率*** 1.6390 1.6390 1.614 1.614 開口角(deg) 23.4 23.4 11.72 11.72 レンズピッチ(mm) 3.83 11.49 6.16 22.18 レンズ列数 1 1 2 2 g(mm^(-1)) 1.64 0.55 1.02 0.28 gr_(0) 0.246 0.246 0.127 0.127 h_(4) 1.2 1.2 0.4 0.4 TC(mm)**** 4.8 14.4 7.1 25.5 レンズ長(mm) 2.26 6.79 3.77 13.57 空間長(mm)**** 1.27 3.81 1.67 5.97 ---------------------------------- * SLA-20B(従来品),** SLA-12B(従来品) *** 測定波長:570nm,**** 空気での換算値」 上記表1の具体例2の各数値から、下記各パラメータの値の算出結果を以下に示す。 (1)隣接するロッドレンズの光軸間距離=0.25mm (段落【0006】(記載事項イ)の記載から、各ロッドレンズは隣接配置されていることは想定範囲内) (2)r_(0)=gr_(0)/g≒0.125mm (3)n_(0)・g・r_(0)≒0.205 (4)n_(0)(中心屈折率)=1.614 (5)レンズ長/レンズピッチ≒0.612 (6)重なり度 =-(ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径) ÷cos(レンズ長×π/レンズピッチ)÷(隣接するロッドレンズの光軸間距離)=-(0.125)/cos(0.51×3.77)/0.25 ≒1.4505 また、具体例2のレンズ列数は2であることも記載されている。 以上、記載事項ア?エから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを2列にその光軸が互いに平行になるように複数本並べて、アレイ化した等倍結像レンズアレイと、前記レンズアレイの前焦点位置にその原稿面(21)が位置するように配置した透明基板(20)と、前記レンズアレイを介して前記基板と対向し、前記レンズアレイの後焦点位置に設けた光電変換素子(30)とを、備えたイメージ読み取り装置において、 (1)隣接するロッドレンズの光軸間距離=0.25mm (2)r_(0)≒0.125mm ロッドレンズの屈折率分布を、 n(r)^(2)=n_(0)^(2)・{1-(gr)^(2)+h_(4)・(gr)^(4)+h_(6)・(gr)^(6)+h_(8)・(gr)^(8)+・・・}と近似する場合、 ただし、 n(r):ロッドレンズの中心から距離rでの屈折率 n_(0):ロッドレンズの中心の屈折率、 g:ロッドレンズ中心付近の屈折率分布形状により決まる屈折率分布定数、 gr:距離rでの屈折力(無次元数)、 (3)n_(0)・g・r_(0)≒0.205 (4)n_(0)(中心屈折率)=1.614 (5)レンズ長/レンズピッチ≒0.612 (6)重なり度==-(ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径) ÷cos(レンズ長×π/レンズピッチ)÷(隣接するロッドレンズの光軸間距離)=1.4505 の各条件を満たす、等倍結像レンズアレイ装置」 次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-58657号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 記載事項オ(第1頁右下欄第6行目乃至第10行目) 「収束性光伝送体としてのレンズアレイ自身がレンズ素子ごとの光量分布をもつため、光電変換素子としてCCDに対し光軸ズレが大きいと光量ムラが大きくなってしまう。」 次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-105705号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 記載事項カ 「【0044】ここで、重なり度mは、光量ムラ(明るさムラ)、解像度を支配するものであり、重なり度mが小さければ明るさムラが大きく、解像度も高くなる。そこで、上述したような重なり度m-光量ムラ線図、重なり度m-解像度ムラ線図を得ることによって、明るさムラが小さく、解像度が高い、つまり、明るさムラの補正を行うことなく所要の解像度が得られるような、両者のバランスがとれる重なり度mを探し出すことが容易になる。」 次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-49476号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。 記載事項キ 「【0015】このロッドレンズアレイの個々のロッドレンズでは、図4(a)に示したような光量分布を持っている。個々のロッドレンズを重ね合わせたロッドレンズアレイでは、図4(b)のような光量分布となる。このとき、ロッドレンズアレイの光量むらを小さくするためには、ロッドレンズアレイの空隙部に当たる光をカバーする必要がある。 【0016】このためには、一本の屈折率分布型レンズ棒の作る像の視野半径を大きくしなければならない。すなわち、隣合うレンズの視野の重なりの程度を大きくしなければならない。この重なりの程度を重なり度mと称し、次式のように定義する。(図5参照) 重なり度m=X_(0)/D=視野半径/ロッド径 この重なり度mを大きくすると、ロッドレンズアレイの光量むらを小さくすることができる。 【0017】しかしながら、レンズの視野半径が大きくなるように光学設計すると、解像力が下がり、明るさも落ちてくる。つまり、それらがトレードオフの関係にあるので、その最適化が重要である。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを2列にその光軸が互いに平行になるように複数本並べて、アレイ化した等倍結像レンズアレイと、前記レンズアレイの前焦点位置にその原稿面(21)が位置するように配置した透明基板(20)と、前記レンズアレイを介して前記基板と対向し、前記レンズアレイの後焦点位置に設けた光電変換素子(30)とを、備えたイメージ読み取り装置」と本願発明の「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを、その光軸が互いに平行になるように2列に多数本並べた等倍結像ロッドレンズアレイを使用し、前記レンズアレイの両側に原稿面とセンサを配置した装置」を対比すると、 ア 引用発明の「ロッドレンズ」、「等倍結像レンズアレイ」、「原稿面」、「光電変換素子」及び「イメージ読み取り装置」は、それぞれ、本願発明の「ロッドレンズ」、「等倍結像ロッドレンズアレイ」、「原稿面」「センサ」及び「装置」にそれぞれ相当する。 イ したがって、引用発明の「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを2列にその光軸が互いに平行になるように複数本並べて、アレイ化した等倍結像レンズアレイ」は、本願発明の「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを、その光軸が互いに平行になるように2列に多数本並べた等倍結像ロッドレンズアレイ」に相当し、また、引用発明の「前記レンズアレイの前焦点位置にその原稿面(21)が位置するように配置した透明基板(20)と、前記レンズアレイを介して前記基板と対向し、前記レンズアレイの後焦点位置に設けた光電変換素子(30)とを、備えたイメージ読み取り装置」は、本願発明の「前記レンズアレイの両側に原稿面とセンサを配置した装置」に相当する。 したがって、両者は相当関係にある。 (2)引用発明の 「(1)隣接するロッドレンズの光軸間距離=0.25mm r_(0)≒0.125mm ロッドレンズの屈折率分布を、 n(r)^(2)=n_(0)^(2)・{1-(gr)^(2)+h_(4)・(gr)^(4)+h_(6)・(gr)^(6)+h_(8)・(gr)^(8)+・・・}と近似する場合、 ただし、 n(r):ロッドレンズの中心から距離rでの屈折率 n_(0):ロッドレンズの中心の屈折率、 g:ロッドレンズ中心付近の屈折率分布形状により決まる屈折率分布定数 gr:距離rでの屈折力(無次元数)、 (2)n_(0)・g・r_(0)≒0.205 n_(0)(中心屈折率)=1.614 (3)レンズ長/レンズピッチ≒0.612 (4)重なり度==-(ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径) ÷cos(レンズ長×π/レンズピッチ)÷(隣接するロッドレンズの光 軸間距離)=1.4505 の各条件を満たす、等倍結像レンズアレイ装置」と、 本願発明の 「(1)ロッドレンズ外径に関し、 0.05mm≦R≦0.25mmで、且つ0.5R≦r_(0 )≦1.0R 但し、2R:隣接するロッドレンズの光軸間距離 r_(0) :ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径 (2)ロッドレンズの屈折率分布を、n(r)^(2) =n_(0) ^(2 )・{1-(g・r )^(2) }の式で近似したとき、 0.05≦n_(0) ・g・r_(0) ≦0.50で、且つ1.40≦n_(0) ≦1.75 但し、r:光軸からの距離 n(r):光軸からの距離rの位置での屈折率 n_(0) :光軸での屈折率 g:屈折率分布係数 (3)ロッドレンズの長さZ_(0 )は、 0.5<Z_(0) /P<1.0 但し、P:P=2π/gで定義されるロッドレンズの周期長 (4)軸ずれ量が1.0R以下で、m=X_(0) /2Rで定義される重なり度 mが、 1.46≦m≦1.64 但し、X_(0 ):X_(0 )=-r_(0 )/cos(Z_(0 )π/P)で与えられる単一ロッドレンズの視野半径 の各条件を満たすことを特徴とする等倍結像光学装置。」 とを対比すると、 ア 引用発明の「隣接するロッドレンズの光軸間距離」、「r_(0)」、「n(r):ロッドレンズの中心から距離rでの屈折率」、「n_(0):ロッドレンズの中心の屈折率」、「g:ロッドレンズ中心付近の屈折率分布形状により決まる屈折率分布定数」、「レンズ長」、「レンズピッチ」及び「重なり度」は、本願発明の「2R:隣接するロッドレンズの光軸間距離」、「r_(0) :ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径」、「n(r):光軸からの距離rの位置での屈折率」、「n_(0 ):光軸での屈折率」、「g:屈折率分布係数」、「ロッドレンズの長さZ_(0)」、「P:P=2π/gで定義されるロッドレンズの周期長」及び「重なり度m」にそれぞれ相当する。 イ また、上記アの相当関係を踏まえると、引用発明の(1)?(3)に示された各パラメータの数値は、各個相当関係にある本願発明の(1)?(3)に示された各パラメータの数値範囲内に包含される。 ウ 引用発明の「等倍結像レンズアレイ装置」は「等倍結像光学装置」に相当する。 したがって、両者は 「1)ロッドレンズ外径に関し、 0.05mm≦R≦0.25mmで、且つ0.5R≦r_(0) ≦1.0R 但し、2R:隣接するロッドレンズの光軸間距離 r_(0) :ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径 (2)ロッドレンズの屈折率分布を、n(r)^(2) =n_(0)^( 2) ・{1-(g・r)^(2 ) }の式で近似したとき、 0.05≦n_(0) ・g・r_(0) ≦0.50で、且つ1.40≦n_(0) ≦1.75 但し、r:光軸からの距離 n(r):光軸からの距離rの位置での屈折率 n_(0) :光軸での屈折率 g:屈折率分布係数 (3)ロッドレンズの長さZ0 は、 0.5<Z_(0) /P<1.0 但し、P:P=2π/gで定義されるロッドレンズの周期長 の各条件を満たし、 かつ、 (4)m=X_(0 )/2Rで定義される重なり度mを有する、 (但し、X_(0 ):X_(0) =-r_(0 )/cos(Z_(0) π/P)で与えられる単一ロッドレンズの視野半径) 等倍結像光学装置。」の点で一致する。 したがって、上記(1)、(2)の対比考察から、本願発明と引用発明とは、 「半径方向に屈折率分布を有するロッドレンズを、その光軸が互いに平行になるように2列に多数本並べた等倍結像ロッドレンズアレイを使用し、前記レンズアレイの両側に原稿面とセンサを配置した装置において、 (1)ロッドレンズ外径に関し、 0.05mm≦R≦0.25mmで、且つ0.5R≦r_(0) ≦1.0R 但し、2R:隣接するロッドレンズの光軸間距離 r_(0) :ロッドレンズのレンズ作用をなす有効部分の半径 (2)ロッドレンズの屈折率分布を、n(r)^(2) =n_(0)^( 2) ・{1-(g・r)^(2) }の式で近似したとき、 0.05≦n_(0) ・g・r_(0 )≦0.50で、且つ1.40≦n_(0) ≦1.75 但し、r:光軸からの距離 n(r):光軸からの距離rの位置での屈折率 n_(0) :光軸での屈折率 g:屈折率分布係数 (3)ロッドレンズの長さZ_(0) は、 0.5<Z_(0) /P<1.0 但し、P:P=2π/gで定義されるロッドレンズの周期長 の各条件を満たし、 (4)m=X_(0) /2Rで定義される重なり度mを有する (但し、X_(0) :X_(0 )=-r_(0 )/cos(Z_(0 )π/P)で与えられる単一ロッドレンズの視野半径) 等倍結像光学装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点 本願発明では、「軸ずれ量が1.0R以下で、m=X_(0) /2Rで定義される重なり度mが、1.46≦m≦1.64」の範囲内であるのに対し、引用発明では、重なり度は約1.4505と若干低めであること。 4.当審の判断 以下、相違点について検討する。 光量ムラを抑えるための重なり度の大きさと解像度を適宜調整して最適な像を取得する手法は、引用例3、4(記載事項カ、キ)に記載されているように、ロッドレンズアレイを用いた光学装置の分野では従来周知のものである。 また、同分野において、ロッドレンズアレイとセンサとの光軸ズレに起因して光量ムラが発生することも、従来から周知である(例えば、引用例2(記載事項オ))。 したがって、引用発明においても実際に装置の組み立てる際に、ある程度の光軸ズレによる光量ムラを意識し、(解像度への影響を考慮しながら)若干大きめの重なり度を設定する程度のことは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。 また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1に記載された事項及び従来周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 まとめ よって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-05 |
結審通知日 | 2009-06-11 |
審決日 | 2009-06-30 |
出願番号 | 特願平9-183124 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大橋 憲 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
越河 勉 小松 徹三 |
発明の名称 | 等倍結像光学装置 |
代理人 | 茂見 穰 |