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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1202929 |
審判番号 | 不服2005-3353 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-24 |
確定日 | 2009-08-27 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第308532号「マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤含有口腔用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月25日出願公開、特開平11-139947〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年11月11日の出願であって、拒絶理由通知に応答して平成16年8月9日付けで手続補正がなされたが、平成17年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年3月25日付けで手続補正がなされたものであり、その後、平成17年6月10日付けで上申書が提出されている。 2.平成17年3月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年3月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 補正前(平成16年8月9日付け手続補正書参照)の 「【請求項1】 キノンおよび三環式ジテルペンから選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、マトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤。 【請求項2】 キノンが、ナフトキノン類およびアントラキノン類から選択される1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載の活性阻害および/または産生阻害剤。 【請求項3】 三環式ジテルペンが、アビエタン型化合物から選択される1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の活性阻害および/または産生阻害剤。 【請求項4】 ロジンから抽出したエキスまたはその乾燥エキス末を有効成分として含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の活性阻害および/または産生阻害剤。 【請求項5】 請求項1ないし4いずれか1項記載の活性阻害および/または産生阻害剤を含有する口腔用または飲食用組成物。」から、 補正後の 「【請求項1】 アビエタン型化合物から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、マトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤。 【請求項2】 ロジンから抽出したエキスまたはその乾燥エキス末を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の活性阻害および/または産生阻害剤。 【請求項3】 請求項1または2いずれか記載の活性阻害および/または産生阻害剤を含有する歯周病予防および治療用の口腔用または飲食用組成物。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1,2を削除し、それに伴い補正前の請求項3?5の項番を補正後の請求項1?3に繰り上げたものと認められる。それに伴い、引用する請求項の項番も補正されたものであり、その結果、少なくとも補正後の請求項3は、補正前の請求項5に対応するものであることが明らかであるところ、その補正前の請求項5で引用していた請求項1?4に包含される有効成分の選択肢のうち、例えば、アビエタン型化合物ではない三環式ジテルペンやキノンが削除され、それによって減縮されたものであることが明らかである。 そこで、本件補正後の前記請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用された本願出願前の刊行物である特開平4-66523号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。 (i)「ロジン、ロジン加工物質、あるいはそれらの構成物質から選択される成分から成る歯周病菌の増殖抑制剤。」(特許請求の範囲参照) (ii)「〔従来の技術〕 歯周病は歯肉炎が進行して起こるものであり、歯を失う原因の50%が歯周病である。20代後半から歯周病の罹患率は高くなり、中高年にかけては、約50%の人が(歯肉炎をいれると80%)罹患している。一般的に歯周病の発症と進行に歯肉溝内プラーク中のグラム陰性嫌気性桿菌が深くかかわっているとされている。」(第1頁右下欄2?9行参照) (iii)「本発明に用いられるロジンは、天然樹脂の一つであり、松に含まれる樹脂酸を精製して得られ、成分としてピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸等を含有している。」(第2頁右上欄3?8行参照) (iv)「ロジン又はロジン加工物質の構成成分としては、前述した化合物等が挙げられるが、本発明に於ては、例えばアビエチン酸等が好ましいものとして挙げられる。 アビエチン酸は公知の化合物であり、例えはロジンをアルコールで浸出し、過熱水蒸気蒸留または減圧蒸留し、蒸留物を再沈殿することによって、淡黄色樹脂状粉末として得ることができる。 本発明の歯周病菌の増殖抑制剤には、上述の成分を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いることもできる。 本発明の歯周病菌の増殖抑制剤は、口腔中で比較的滞留時間の長いチューインガム、キャンディ、歯磨、洗口液等の口腔用組成物に応用できる。」(第2頁左下欄5?18行参照) (v)「実施例-4 アビエチン酸 実施例-1で得たロジン1kgをアルコールで溶解し、過熱水蒸気蒸留または減圧蒸留(200℃/1mmHg)して得られる。その蒸留物を再沈殿し、淡黄色樹脂状粉末のアビエチン酸80gを得た。」(第3頁右上欄末行?同頁左下欄5行参照) (vi)「実施例1?4で製造した化合物を試料として、前述の方法にて抗菌活性試験を行い、結果を第1表に示した。 第1表 各種口腔内細菌に対する最小生育阻止濃度(MIC) ( ・・・表そのもの摘示は省略・・・ ) 第1表の結果から、各種ロジンが菌の増殖抑制に優れた効果を示すことは明らかである。以下に、本発明の歯周病菌の増殖抑制剤の食品及び歯磨類への応用例を示す。」(第3頁左下欄6行?第4頁左下欄4行参照) (vii)「応用例-12(練歯磨) 配合組成 重量% 第2リン酸カルシウム 42 グリセリン 18 カラギナン 0.9 ラウリル硫酸ナトリウム 1.2 サッカリン 1.0 パラオキシ安息香酸ブチル 0.005 クロルヘキシジンジグルコネート 0.1 香 料 0.1 ロジン 0.02 水 残量 製法 水,グリセリン,カラギナン,サッカリン,パラオキシ安息香酸ブチル,クロルヘキシジンジグルコネート,香料および実施例-1のロジンを計量し、混合して粘結剤を膨潤させたのち、第2リン酸カルシウム,ラウリル硫酸ナトリウムを加え、更によく混合し脱泡したのち、チューブに充填して練歯磨剤を得る。」(第5頁左下欄4行?同頁右下欄3行参照) (viii)「応用例-15(練歯磨) 実施例-1のロジンの代わりに実施例-4のアビエチン酸を0.03重量%用いた他は、応用例-12と同様に行ない練歯磨を得た。」(第5頁右下欄12?15行参照) (ix)「〔発明の効果〕 本発明の歯周病菌の増殖抑制剤は、歯を失う原因となる歯周病菌の増殖を効果的に阻止し、ガム、キャンデー、歯磨、洗口液などの口腔用組成物に利用するのに適している。」(第6頁右上欄10?14行参照) (3)対比、判断 そこで、本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比する。 ところで、本願補正発明としては、発明特定事項として幾つもの選択肢が内包されているので、以下の引用例との対比を容易にするために、それらの選択肢の中で、 (a)引用する請求項1,2の中で請求項1を選択し、 (b)「口腔用または飲食用」の中で「口腔用」を選択し、 (c)有効成分として、「アビエタン型化合物から選択される1種または2種以上の化合物」(前記(a)で選択した請求項1参照)の中で、本願明細書で具体的に検討されている「アビエチン酸」を選択すると、 本願補正発明は、次のように選択することができる。以下、この選択した発明を、本願補正発明と言い換えるものとする。 「アビエチン酸を有効成分とするマトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤を含有する歯周病予防および治療用の口腔用組成物。」 他方、引用例には、上記「2.(2)」での摘示事項からみて、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「アビエチン酸を含有した歯周病予防および治療用の口腔用組成物。」 してみると、両発明は、 「アビエチン酸を含有した歯周病予防および治療用の口腔用組成物。」 で一致し、「アビエチン酸」に関して、本願補正発明では、「マトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤」であると規定しているのに対し、引用例発明ではそのような表現では規定されていない点で一応相違する。 そこで、この一応の相違点について検討する。 前記のとおり、歯周病予防および治療用の口腔用組成物としては、「アビエチン酸」を含有している点で両発明に相違はなく、その用途においても一致しているし、本願補正発明によって新たな用途が提示され特定されたものではない。 アビエチン酸に、「マトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤」としての作用があるのであれば、そのような作用を表明するかどうかにかかわらず、引用例発明においてもそのような阻害作用を有していると解するのが理にかなっている。 そうすると、「マトリックスメタロプロテアーゼ活性阻害および/またはマトリックスメタロプロテアーゼの細胞における産生阻害剤」の点は、その言及が引用例にあるか否かにかかわらず、本願補正発明と引用例発明との実質的な相違点であるとすることはできない。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明ということができ、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人は、上申書(平成17年6月10日付け)によって参考資料1?4を提示し、「たとえ、本願明細書にはMMPの活性阻害および産生阻害により奏される効果として歯周病の予防、治療しか記載されていないとしても、本願出願当時の技術水準を勘案すれば、本願発明の活性阻害剤または産生阻害剤が歯周病の予防、治療以外の他の効果をも奏し得ることは当業者であれば明らかであるので、かかる活性阻害剤または産生阻害剤が歯周病の予防、治療に有効な口腔用または飲食用組成物と実質的に同一であるとはいえないと思料する。」と主張している。 しかし、本願補正発明もまた歯周病の予防および治療に用いるものであって、その点において何ら引用例発明と本願補正発明は相違するものではないことから、前記請求人の主張は失当であり、採用できるものではない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年3月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年8月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるのもと認められるところ、そのうち請求項5に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲として摘示したとおりのものである。 (1)引用例 原査定の拒絶理由に引用される引用例およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比、判断 本願発明は、「前記2.(1)」で検討した本願補正発明から有効成分について、「アビエチン酸」を上位概念の「三環式ジテルペン」とするとともに「キノン」の選択肢を加えたものである。 そうすると、本願発明に包含される本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明であるといえる。 (3)むすび 以上のとおり、本願請求項5に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-06-24 |
結審通知日 | 2009-06-30 |
審決日 | 2009-07-13 |
出願番号 | 特願平9-308532 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天野 貴子 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 星野 紹英 |
発明の名称 | マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤含有口腔用組成物 |
代理人 | 矢野 正樹 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 青山 葆 |