• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1203205
審判番号 不服2007-5972  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-26 
確定日 2009-08-25 
事件の表示 平成10年特許願第500657号「プラズマ発生源、真空ポンプ用装備、及び/又は片持梁式基板サポートのような装置モジュールを含む高流量真空処理用チャンバ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年12月11日国際公開、WO97/47028、平成12年9月5日国内公表、特表2000-511700号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、1997年6月2日(パリ条約による優先権主張:1996年6月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年11月17日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月28日)、これに対し、平成19年2月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものである。



第2 平成19年2月26日付け手続補正について

〔補正却下の決定の結論〕

平成19年2月26日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕

1.補正後の請求項1に記載された発明

平成19年2月26日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内部へ着脱可能に取り付けられる片持梁式の基板サポートを有した真空チャンバ装置であって、
真空処理チャンバの内部に取り付けられる基板サポートと、
前記真空処理チャンバはプラズマが前記基板サポートの付近に供給されるプラズマ処理チャンバであり、
前記真空処理チャンバから前記基板サポートを取り外し可能にする大きさの開口部を有し、当該開口部を介して前記基板サポートを通過させるように前記真空処理チャンバの側壁に設けられる前記開口部と、
前記真空処理チャンバの内側壁面の内側の位置で、前記基板サポートを取り外し可能に支持するように前記開口部を介して延設される取付け手段と、を具備し、
当該取付け手段は、取付けフランジ部及び支持アーム部を有し、前記取付けフランジ部が前記真空処理チャンバの外側表面に対して取付けられ、前記支持アーム部の一端が前記取付けフランジ部に結合され、反対の他端が前記基板サポートに結合され、
前記取付けフランジ部は、前記真空処理チャンバの前記側壁に設けられる前記開口部に対してはめ合い結合される部分を有し、
前記真空処理チャンバの内部へ向かう方向に前記開口部の寸法が減少するように前記開口部を先細りに形成することで、前記開口部のはめ合い結合表面および前記部分が先細はめ合い結合を提供し、
毎秒1000?3000リットルで前記真空処理チャンバの内部の排気を行うポンプ容量を有する真空ポンプを備えることを特徴とする真空チャンバ装置。」
と補正された。
請求項1についての上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「取付け手段」及び「開口部」について、「当該取付け手段は、取付けフランジ部及び支持アーム部を有し、前記取付けフランジ部が前記真空処理チャンバの外側表面に対して取付けられ、前記支持アーム部の一端が前記取付けフランジ部に結合され、反対の他端が前記基板サポートに結合され、前記取付けフランジ部は、前記真空処理チャンバの前記側壁に設けられる前記開口部に対してはめ合い結合される部分を有し、前記真空処理チャンバの内部へ向かう方向に前記開口部の寸法が減少するように前記開口部を先細りに形成することで、前記開口部のはめ合い結合表面および前記部分が先細はめ合い結合を提供し」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。


2.引用例

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平4-107921号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

a.「本発明は、プラズマ放電用ガスが供給されるケーシングと、このケーシングに高電圧を印加してプラズマを発生させる電極部と、このケーシングの内部のガスを吸引する真空ポンプと、このケーシングに開口された開口部から、このケーシングの内部に被清掃体を出し入れする出し入れ手段とからプラズマクリーニング装置を構成し、上記プラズマ放電用ガスとして、水素ガスと希釈ガスの混合ガスを使用するようにしたものである。
(作用)
上記構成において、ケーシングの内部に基板やウェハーなどの被清掃体を収納したうえで、電極部に高電圧を印加すると、ケーシングの内部には水素ガスのプラズマが発生し、水素ガス分子やイオンが高速運動することにより、被清掃体の表面の酸化膜を還元除去する。」(公報第2頁左上欄第1?17行(下線は当審で付与。以下同様。))

b.「1は円筒形のガラス製ケーシングであり、その前端面には開口部2が開口されている。このケーシング1の周面には、アルミ板製の電極部3が配設されている。4はこの電極部3に高周波交流電圧を印加する電源である。
ケーシング1の上部にはパイプ5が接続されており、このパイプ5からケーシング1内に、プラズマ放電用ガスが供給される。またケーシング1の下部には、ケーシング1内のガスを吸引するロータリー真空ポンプ6が連結されており、またその後端面にはバルブ7が接続されている。9は真空ポンプ6のバルブである。」(公報第2頁右上欄第2?14行)

c.「10は上記開口部2の前部に配設されたアルミ板から成る載置部であって、その後部には開口部2の蓋部材11が装着されている。蓋部材11は、ナット部12に立設されたブラケット14に支持されている。13はこのナット部12が螺合する送りねじ、15は駆動用モータであり、モータ15が駆動すると、ナット部12は送りねじ13に沿ってY方向に移動し、載置部10は開口部2からケーシングlの内部に出入する。また蓋部材11は載置部10と一体的に移動し、開口部2を開閉する。」(公報第2頁左下欄第4?14行)

d.「多数枚の基板20が搭載されると、載置部10はケーシング1内に完全に進入し、蓋部材11は開口部2を閉塞する(第1図鎖線参照)。
次いで真空ポンプ6が作動し、ケーシング1内は減圧されるとともに、ケーシング1内に水素ガスと希釈ガスの混合ガスが供給され、次いで電極部3に高周波交流電圧が印加されることにより、プラズマが発生する。この時、混合ガスの一部はイオン化し、水素ガス分子やイオン化した水素イオンにより、基板20の表面の酸化膜は還元除去される。またArガス分子や、イオン化したAr十、マイナス電子はケーシング1内を激しく高速運動し、基板20の表面に衝突して、この表面に付着する不純物を除去し、除去された不純物は真空ポンプ6に吸引される。」(公報第3頁左上欄第4?19行)

そして、摘記事項aの「ケーシング1の内部には水素ガスのプラズマが発生し、・・・イオンが高速運動することにより基板の表面の酸化膜を還元除去する」との記載から、引用例1に記載された「ケーシング1」の内部で発生したプラズマが基板20の載置部10の付近に供給されることは明らかであり、かつ、摘記事項cの「載置部10は開口部2からケーシングlの内部に出入する」との記載から、引用例1に記載された「開口部2」の大きさが、ケーシング1から載置部10を出入可能にする大きさであることも明らかである。

また、引用例1の第1、2図には、基板20の載置部10が片持梁式に支持されること、ケーシング1の内側壁面よりも内側の位置に載置部10を支持するときに、部材が、開口部2を介して延設された状態となること、該部材が、蓋部材11、及び、蓋部材11と載置部10との間に位置する部位を有すること、蓋部材11がケーシング1の外側表面に対して取付けられること、載置部10はケーシング1に出入可能に支持されていることが示されている。

上記記載事項及び第1?3図を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

ケーシング1に出入可能とされ、片持梁式に支持される、基板20の載置部10を有したプラズマクリーニング装置であって、
ケーシング1は内部にプラズマが発生し、プラズマが基板20の載置部10の付近に供給されるケーシング1であり、
ケーシング1の内部に出入する載置部10と、
ケーシング1から載置部10を出入可能にする大きさの開口部2を有し、当該開口部2を介して載置部10を出入させるようにケーシング1の前端面に開口された開口部2と、
ケーシング1の内側壁面よりも内側の位置に、載置部10を出入可能に支持する、開口部2を介して延設される、部材と、を具備し、
当該部材は、蓋部材11、及び、蓋部材11と載置部10との間に位置する部位を有し、蓋部材11がケーシング1の外側表面に対して取付けられ、
ケーシング1の内部のガスを吸引する真空ポンプ6を備える、プラズマクリーニング装置。


(2)本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特公昭57-43784号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

e.「従来HIPに用いられている高圧装置は第1図に例示されている如く高圧シリンダ1と、該高圧シリンダ1の上下開口部に突出する上部プラグ2及び下部プラグ3と、内圧によつて前記上部プラグ2及び下部プラグ3に作用する軸力を保持するプレス枠4とからなつており、下部プラグ3にはシールリング9が設けられていて内圧Pが作用する場合、下部プラグ3はプレス枠4によつて保持されると共に、被処理体の出し入れは下部プラグ3を昇降することによつて行われている。この場合、下部プラグ3と高圧シリンダ1との間には環状の間隙8が存在し、この間隙8がある値を越えるとシールリング9が内圧Pにより間隙8の中にはみ出し、やがてはシールリング9が破損して密封が破れることはよく知られている通りである。従つて、所要の圧力下でシールリングのはみ出しを防止し、密封を完全ならしめるためには間隙8をある値以下に抑えなければならない。ところが、・・・このことは逆に下部プラグ3の高圧シリンダ1への装入作業を非常に困難なものとしている。」(公報第2頁左欄第15?41行)

f.「第2図は本発明装置の一例を示す図であり、高圧シリンダ1、上部プラグ2、下部プラグ3、プレス枠4とからなつていることは前述の第1図の場合と同様であり、高圧シリンダ1とその上下開口部に突出する上部プラグ2と下部プラグ3によって被処理体・・・を高圧処理する高圧室5が区画されている。・・・該処理室への被処理体の装入 取り出しを下部プラグ3を昇降することにより行うようになつている。・・・。
しかして、本発明装置においては下部プラグ3が高圧室5に向うに従つて、次第にその断面積が狭まるテーパ状に形成されており、このテーパ面10によつて高圧シリンダ1と嵌り合うように作られている。即ち、テーパ面10に対応して高圧シリンダ1の対向面もテーパに作られ、下部プラグ3が両テーパ面の摺動作用によって昇降することができる。なお、9はテーパ面10に環設されたシールリングである。
かくして、下部プラグ3の高圧シリンダ1への装入は、従来装置のものが第3図イに図示する如くで困難性を有しているのに対し、第3図ロに図示するように円滑となり、自然、かつ容易に行うことができる。」(公報第2頁右欄第32行?第3頁左欄第16行)

g.「本発明装置によれば下部プラグ3の高圧シリンダ1への装入が極めて容易であり、かつ高圧ガスシールが完全な構成に達成されることになる。」(公報第3頁右欄第5?8行)

h.「・・・高圧シリンダと昇降するプラグ、例えば下部プラグとは常にテーパ面で密着した状態に保たれ、テーパ面での円滑な摺動がなされるので、プラグの高圧シリンダへの装入が極めて容易で、従来装置の如く高圧シリンダとプラグとの間の間隙を特定の値以下に抑えなければならないことに起因するプラグの高圧シリンダへの装入作業の困難性を解消することができる・・・」(公報第4頁左欄第16?24行)

そして、第2図には、下部プラグ3がフランジ状部分を備えることが示されている。
また、摘記事項fにおける「下部プラグ3が高圧室5に向うに従つて、次第にその断面積が狭まるテーパ状に形成されており、このテーパ面10によつて高圧シリンダ1と嵌り合うように作られている。即ち、テーパ面10に対応して高圧シリンダ1の対向面もテーパに作られ、下部プラグ3が両テーパ面の摺動作用によって昇降することができる」との記載、及び第2図から、引用例2の「高圧シリンダ1」の「下開口部」の下部プラグ3に対する対向面は、「高圧シリンダ1の高圧室5へ向かう方向に下開口部の断面積が狭まるテーパ状に形成されて」いることが判る。

上記記載事項及び第2、3図を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

フランジ状部分を備えた下部プラグ3が、高圧シリンダ1に設けられる下開口部に対して嵌り合うテーパ面10を有し、
高圧シリンダ1の下開口部が、高圧シリンダ1の高圧室5へ向かう方向に下開口部の断面積が狭まるテーパ状に形成されて、高圧シリンダ1の下開口部のテーパ面とフランジ状部分を備えた下部プラグ3のテーパ面10とは常に密着した状態に保たれて嵌り合い、
高圧ガスシールが完全な構成に達成されながら、フランジ状部分を備えた下部プラグ3の高圧シリンダ1への装入が極めて容易である、装置。


3.対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1における「ケーシング1に出入可能とされ、片持梁式に支持される、基板20の載置部10」は、その機能及び構成からみて、本件補正発明における「内部へ着脱可能に取り付けられる片持梁式の基板サポート」に相当し、以下同様に、「ケーシング1」は「処理チャンバ」に、「内部にプラズマが発生し、プラズマが基板20の載置部10の付近に供給されるケーシング1」は「プラズマが基板サポートの付近に供給されるプラズマ処理チャンバ」に、「ケーシング1の内部に出入する載置部10」は「処理チャンバの内部に取り付けられる基板サポート」に、「載置部10を出入可能にする大きさ」は「基板サポートを取り外し可能にする大きさ」に、「載置部10を出入させる」は「基板サポートを通過させる」に、「ケーシング1の前端面に開口された開口部2」は「処理チャンバの側壁に設けられる開口部」に、「載置部10を出入可能に支持する、開口部2を介して延設される、部材」は「基板サポートを取り外し可能に支持するように開口部を介して延設される取付け手段」に、「蓋部材11」は「取付けフランジ部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「部材」における、「蓋部材11と載置部10との間に位置する部位」は、その機能及び構成からみて、本件補正発明の「取付け手段」における「支持アーム部」に相当するものと言え、かつ、該「蓋部材11と載置部10との間に位置する部位(支持アーム部)」は、その一端が「蓋部材11(取付けフランジ部)」に結合され、反対の他端が「載置部10(基板サポート)」に結合されていることは明らかである。
さらに、引用発明1における「ケーシング1」は、その内部のガスを吸引する真空ポンプ6を備えていることから、本件補正発明における「真空処理チャンバ」に相当するものと言え、かつ、そのような「ケーシング1」及び真空ポンプ6を備えていることから、引用発明1の「プラズマクリーニング装置」は、本件補正発明の「真空チャンバ装置」に相当するものと言える。

すると、本件補正発明と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
内部へ着脱可能に取り付けられる片持梁式の基板サポートを有した真空チャンバ装置であって、
真空処理チャンバの内部に取り付けられる基板サポートと、
前記真空処理チャンバはプラズマが前記基板サポートの付近に供給されるプラズマ処理チャンバであり、
前記真空処理チャンバから前記基板サポートを取り外し可能にする大きさの開口部を有し、当該開口部を介して前記基板サポートを通過させるように前記真空処理チャンバの側壁に設けられる前記開口部と、
前記真空処理チャンバの内側壁面の内側の位置で、前記基板サポートを取り外し可能に支持するように前記開口部を介して延設される取付け手段と、を具備し、
当該取付け手段は、取付けフランジ部及び支持アーム部を有し、前記取付けフランジ部が前記真空処理チャンバの外側表面に対して取付けられ、前記支持アーム部の一端が前記取付けフランジ部に結合され、反対の他端が前記基板サポートに結合され、
前記真空処理チャンバの内部の排気を行う真空ポンプを備える、真空チャンバ装置。

<相違点>
1) 本件補正発明では、「取付けフランジ部」が「真空処理チャンバの前記
側壁に設けられる前記開口部に対してはめ合い結合される部分を有し」、
かつ、「開口部」が「真空処理チャンバの内部へ向かう方向に開口部の寸
法が減少するように開口部を先細りに形成」されていることによって、「
開口部のはめ合い結合表面」と「取付けフランジ部」のはめ合い結合され
る「部分」とが、「先細はめ合い結合を提供」するようにされているのに
対し、引用発明1では、「蓋部材11(取付けフランジ部)」及び「開口
部2」がそのような「はめ合い結合される部分」及び「はめ合い結合表面
」を有さないため、「先細はめ合い結合を提供」しない点。
2) 「真空処理チャンバの内部の排気を行う真空ポンプ」が、本件補正発明
では「毎秒1000?3000リットルで前記真空処理チャンバの内部の
排気を行うポンプ容量を有する」のに対し、引用発明1ではそのようなポ
ンプ容量を有するか否か不明である点。


4.当審の判断

上記相違点について検討する。

<相違点 1) について>
本件補正発明と引用発明2とを比較する。
引用発明2における「フランジ状部分を備えた下部プラグ3」は、本件補正発明における「取付けフランジ部」に相当し、以下同様に、「高圧シリンダ1」は「処理チャンバ」に、「下開口部」は「開口部」に、「テーパ面10」は「はめ合い結合される部分」に、「高圧シリンダ1の高圧室5」は「処理チャンバの内部」に、「下開口部の断面積が狭まるテーパ状に形成」は「開口部の寸法が減少するように前記開口部を先細りに形成」に、「下開口部のテーパ面」は「開口部のはめ合い結合表面」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2において、「高圧シリンダ1の下開口部のテーパ面とフランジ状部分を備えた下部プラグ3のテーパ面10とは常に密着した状態に保たれて嵌り合」っているのであるのであるから、引用例2の第2図からみても、「下開口部のテーパ面(開口部のはめ合い結合表面)」と「フランジ状部分を備えた下部プラグ3(取付フランジ部)」の「テーパ面10(はめ合い結合される部分)」とが、「先細はめ合い結合を提供」していることは明らかである。
したがって、引用発明2を本件補正発明の用語を用い、その記載ぶりに則って整理すると、次のようになる。

取付けフランジ部が、処理チャンバに設けられる開口部に対してはめ合い結合される部分を有し、
処理チャンバの内部へ向かう方向に開口部の寸法が減少するように開口部を先細りに形成することで、開口部のはめ合い結合表面およびはめ合い結合される部分が先細はめ合い結合を提供し、
高圧ガスシールが完全な構成に達成されながら、取付けフランジ部の処理チャンバへの装入が極めて容易である、装置。

一方、半導体の技術分野において、処理チャンバの開口部とその開口部を塞ぐ部材との結合部分を「先細はめ合い結合」とすることは、従来より周知の技術である。(必要であれば、特開平2-130925号公報、特開平3-241735号公報、特開昭62-49075号公報等参照。)
したがって、上記周知技術にならい、引用発明1の真空チャンバ装置における開口部及び取付けフランジ部(蓋部材11)に、引用発明2の「先細はめ合い結合」を提供する構成を採用することに、格別の困難性は見出せない。

ところで、引用発明1の真空チャンバ装置における真空処理チャンバ(ケーシング1)と、引用発明2の処理チャンバ(高圧シリンダ1)とは、前者が、その内部が大気圧よりも低圧の「真空処理チャンバ」であるのに対し、後者が、その内部が高圧に保たれる「高圧シリンダ1」である点で、異なるものである。
しかしながら、両者は共に、処理チャンバの内外の気圧が異なるために、処理チャンバの開口部における気密シール性の保持が必要であるが、その一方で、取付けフランジ部の開口部への着脱容易性も確保しなければならない、という共通の課題を有するものであるから、引用発明1において引用発明2のような「先細はめ合い結合」を採用しその課題の解決を図ろうとすることに何ら阻害要因はなく、当業者であれば当然かつ容易に想到し得るものである。


<相違点 2) について>
毎秒1000?3000リットルの排気を行うことが可能なポンプ容量を有する真空ポンプによって、プラズマ処理チャンバの内部の排気を行うことは、プラズマ処理の技術分野において本願の優先日前に周知かつ汎用されている技術であって(必要であれば、特開平7-238370号公報の段落【0034】、特開平7-235394号公報の段落【0060】、特開平7-321092号公報の段落【0013】、特開平7-263353号公報の段落【0006】、特開平8-22802号公報の段落【0005】等参照)、本件補正発明において、そのようなポンプ容量を有する真空ポンプを採用した点は、当業者であれば当然に為し得る設計的事項に過ぎない。


そして、本件補正発明の奏する作用効果についてみても、引用発明1、2及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものである。


5.結び

以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1.本願発明

平成19年2月26日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に記載された発明は、平成18年10月4日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「内部へ着脱可能に取り付けられる片持梁式の基板サポートを有した真空チャンバ装置であって、
真空処理チャンバの内部に取り付けられる基板サポートと、
前記真空処理チャンバはプラズマが前記基板サポートの付近に供給されるプラズマ処理チャンバであり、
前記真空処理チャンバから前記基板サポートを取り外し可能にする大きさの開口部を有し、当該開口部を介して前記基板サポートを通過させるように前記真空処理チャンバの側壁に設けられる前記開口部と、
前記真空処理チャンバの内側壁面の内側の位置で、前記基板サポートを取り外し可能に支持するように前記開口部を介して延設される取付け手段と、を具備し、
毎秒1000?3000リットルで前記真空処理チャンバの内部の排気を行うポンプ容量を有する真空ポンプを備えることを特徴とする真空チャンバ装置。」(以下「本願発明」という。)


2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項、及び、引用例1に記載された引用発明1は、前記「第2」の「2.(1)」に記載したとおりである。


3.対比・判断

本願発明と引用発明1とを対比すると、本願発明は、前記「第2」の「3.」で引用発明1と対比した本件補正発明から、「取付け手段」及び「開口部」についての限定を省いたものであるから、本願発明と引用発明1とは、本件補正発明と引用発明1との一致点から、該限定部分を省いた下記の点において一致しており、また、本件補正発明と引用発明1との相違点における相違点2)と同じ、下記の点で相違している。

<一致点>
内部へ着脱可能に取り付けられる片持梁式の基板サポートを有した真空チャンバ装置であって、
真空処理チャンバの内部に取り付けられる基板サポートと、
前記真空処理チャンバはプラズマが前記基板サポートの付近に供給されるプラズマ処理チャンバであり、
前記真空処理チャンバから前記基板サポートを取り外し可能にする大きさの開口部を有し、当該開口部を介して前記基板サポートを通過させるように前記真空処理チャンバの側壁に設けられる前記開口部と、
前記真空処理チャンバの内側壁面の内側の位置で、前記基板サポートを取り外し可能に支持するように前記開口部を介して延設される取付け手段と、を具備し、
前記真空処理チャンバの内部の排気を行う真空ポンプを備える、真空チャンバ装置。」

<相違点>
「真空処理チャンバの内部の排気を行う真空ポンプ」が、本件補正発明では「毎秒1000?3000リットルで前記真空処理チャンバの内部の排気を行うポンプ容量を有する」のに対し、引用発明1ではそのようなポンプ容量を有するか否か不明である点。

すると、前記「第2」の「4.」の <相違点 2) について> における判断と同様に、本願発明において、上記相違点に係る構成を採用した点は、周知技術に基づき、当業者であれば当然に為し得た設計的事項である。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-30 
結審通知日 2009-04-03 
審決日 2009-04-15 
出願番号 特願平10-500657
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 長浜 義憲
渋谷 知子
発明の名称 プラズマ発生源、真空ポンプ用装備、及び/又は片持梁式基板サポートのような装置モジュールを含む高流量真空処理用チャンバ装置  
代理人 大塚 康弘  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ