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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 A47B 審判 全部無効 2項進歩性 A47B |
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管理番号 | 1204002 |
審判番号 | 無効2006-80153 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-08-17 |
確定日 | 2009-07-27 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3345320号「人工大理石カウンター」の特許無効審判事件についてされた平成19年 6月15日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成19年(行ケ)第10267号平成20年10月29日)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3345320号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯の概要は,次のとおりである。 平成 9年10月23日 本件特許出願(特願平9-290913号) 平成12年 7月13日 拒絶査定 平成12年 8月24日 審判請求(不服2000-13399号) 平成12年 9月25日 手続補正書の提出 平成14年 7月30日 審決(請求成立) 平成14年 8月30日 特許の設定登録 平成14年11月18日 公報発行(特許第3345320号) 平成18年 8月17日 無効審判請求(無効2006-80153号) 平成18年11月13日 答弁書提出(被請求人) 訂正請求書提出(被請求人) 平成18年12月27日 弁駁書提出(請求人) 平成19年 6月 1日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 口頭審理陳述要領書提出(請求人) 口頭審理 審理終結 平成19年 6月15日 第一次審決(訂正を認める,請求成立) 平成19年 7月18日 知的財産高等裁判所出訴(被請求人) (平成19年(行ケ)第10267号) 平成19年10月12日 訂正審判請求(被請求人,後日取下げ) (訂正2007-390114号) 平成20年10月29日 審決取消(差戻し決定) 平成20年11月 5日 訂正請求のための期間指定通知 平成20年11月17日 訂正請求書提出(被請求人) 平成20年12月 9日 上申書提出(被請求人) 平成20年12月26日 弁駁書提出(請求人) 平成21年 2月 4日 答弁書提出(被請求人) 検証申出書提出(被請求人) 平成21年 4月 8日 弁駁書提出(請求人) 第2 請求人の主張の概略 1 請求人は,本件特許はこれを無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由として,下記の無効理由1及び無効理由2を主張している。 さらに,請求人は,平成20年11月17日付け訂正請求書による訂正後の請求項1に係る発明についても,下記の無効理由1及び無効理由2は妥当するものである旨主張し,証拠方法として,下記の甲第1号証ないし甲第99号証を提出した。 (1)無効理由1 本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証,甲第2号証,又は甲第3号証に記載された発明と同一であるため,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。 (2)無効理由2 本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるため,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。 そして,容易に発明をすることができたとする具体的な理由について,特に, (2-1)無効理由2-1 甲第1号証,甲第2号証,又は甲第3号証と,甲第4号証,甲第11号証及び甲第12号証のいずれかに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたこと, (2-2)無効理由2-2 甲第5号証と,甲第4号証,甲第11号証及び甲第12号証,又は甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたこと, を主張している。 2 証拠方法(注;以下の記載中,各号証における「(R)」の表記は,丸で囲まれた「R」の上付表記の文字を表したものである。また,「(マル1)」等の表記は,丸で囲まれた数字を表したものである。) (1)審判請求書添付 甲第1号証:DUPONT CORIAN(R), Technical Bulletin, CTDC101, 「FABRICATION OF A CORIAN (R) "SUB" SEAMED UNDERMOUNT BOWL 」, 及びその抄訳 甲第2号証:MRC・デュポン株式会社,「デュポン コーリアン(R) ラバトリーボウル&洗面台 技術マニュアル」 甲第3号証:CORIAN(R), 「"S" MOUNT SINK ASSEMBLY CHECKLIST SEAMED UNDERMOUNT」,及びその抄訳 甲第4号証:MRC・デュポン株式会社,「デュポン コーリアン(R) ニュース」, No.37, 1995 甲第5号証:実願平1-15363号(実開平2-107389号) のマイクロフィルム 甲第6号証:特開昭56-125546号公報 甲第7号証:特開平5-23878号公報 甲第8号証:特開昭55-133902号公報 甲第9号証:特開平7-108510号公報 甲第10号証:特開平6-307065号公報 甲第11号証:MRC・デュポン株式会社,「デュポン コーリアン(R) ニュース」,No.30, 1992 甲第12号証:MRC・デュポン株式会社,「デュポン コーリアン(R) ニュース」,No.31, 1993 (2)平成18年12月27日付け弁駁書添付 甲第13号証:MRC・デュポン株式会社,デュポン コーリアン(R) ラバトリーボウル&洗面台 技術マニュアル,LTM-9006 5M TP,及びその原本が,株式会社エイペクスが平成元年9月から 平成3年3月の間に受領した書類のファイルに保管されていたものに 相違ないことの証明書 参考図AないしD:カウンター板及び凹状体の加工例を示した図 (3)平成19年6月1日付け陳述要領書添付 甲第14号証:MRC・デュポン株式会社の宮崎による証明書 甲第15号証:MRC・デュポン株式会社の中野による証明書 甲第16号証:設計/加工/施工ガイド, MRC・デュポン株式会社, DG-2007.03-0.5M MO 甲第17号証:請求書,物品受領書 甲第18号証:望月印刷株式会社による証明書 甲第19号証:マスターカタログ「デュポン コーリアン 2007.4?2008.3」, MRC・デュポン株式会社, MC-2007.03-35M KO 甲第20号証:幸神テクノプリント株式会社による証明書 (4)平成20年12月26日付け弁駁書添付 甲第21号証ないし甲第99号証:審決取消訴訟において請求人及び 被請求人が提出した書面,並びに証拠 第3 被請求人の主張の概略 1 被請求人は,平成18年11月13日付け答弁書において,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,上記「(1)無効理由1」に対して,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証,甲第2号証,又は甲第3号証に記載された発明でなく,また,上記「(2)無効理由2」に対して,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張している。 そして,甲第1号証ないし甲第3号証の本件出願前に頒布された刊行物としての証拠の成立を否認し,甲第4号証ないし甲第12号証については証拠の成立を認めている。 さらに,被請求人は,平成20年11月17日付け訂正請求書による訂正後の請求項1に係る発明は,各甲号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張し,証拠方法として,下記の参考資料1,乙第1号証,乙第2号証,添付資料1-1ないし4,検乙第1号証ないし検乙3号証の3を提出した。 2 証拠方法 (1)平成18年11月13日付け答弁書添付 参考図1:本件発明と甲第1号証(従来例)の比較図 参考資料1:甲第1号証第6頁の写し (2)平成19年6月1日付け陳述要領書添付 乙第1号証:「広辞苑(第五版)」,「面」,「面を取る」,「面取り」 及び「稜角」の項目,第2629頁,第2631頁,第2808頁。 乙第2号証:「小学館ランダムハウス英和大辞典」,「sand」の項目, 第2289頁。 (3)平成20年12月9日付け上申書添付 添付資料1-1ないし1-27:知財高裁への提出書面 (添付資料1-15はDVD) 添付資料2-1ないし2-13:知財高裁への提出証拠(被請求人提出) 添付資料3-1ないし3-7:知財高裁への提出証拠(請求人提出) 添付資料4:審決取消決定書正本写し (4)平成21年2月4日付け検証申出書添付 検乙第1号証:審決取消訴訟における技術説明会において被請求人提出の 技術説明用ビデオ画像等を収録したDVD 検乙第2号証の1:本件発明に従う一体面取りしたツートーンからなる もののサンプル 検乙第2号証の2:本件発明に従う一体面取りしたモノトーンからなる もののサンプル 検乙第3号証の1:甲第2号証第5頁の(マル5)「5-3」工程まで 加工したもののサンプル。 検乙第3号証の2:甲第2号証第5頁の(マル5)「5-2」工程まで 加工したもののサンプル。 検乙第3号証の3:甲第2号証第5頁の(マル5)「5-2」工程の加工 を施した後,一体面取りしたもののサンプル。 第4 訂正の適否に対する判断 1 訂正の内容 平成20年11月17日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許の明細書を,上記訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであり,その内容は次のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1の「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように」を,「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように、 」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項1の「カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とを面取り加工し、」を,「カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し、」と訂正する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項1の「ツートーン調の面取り加工処理面」を,「ツートーン調の一つの面取り加工処理面」と訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項1の「形成したことを特徴とする」を,「形成してなり、前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっていることを特徴とする」と訂正する。 (訂正事項5) 本件特許明細書の段落0003を,次のように訂正する。 「【0003】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記課題を考慮してなされたもので、人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に、ボウルやシンクなどの人工大理石製の前記カウンター板と色調を変えた凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し、カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように、カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し、前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の一つの面取り加工処理面を形成してなり、前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっていることを特徴とする人工大理石カウンターを提供して、上記課題を解消するものである。」 2 訂正の適否について (1)訂正の目的の適否について 訂正事項1は,「、」という記載を追加することにより,「連続するように」が「面取り加工し」に掛かる言葉であることを明りょうにしようとするものである。 訂正事項2は,「いずれも」という記載を追加することにより,「カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層」と「カウンター板の開口部の内周」と「凹状体の上周縁部の内周」のいずれもが「面取り加工」されることを明りょうにしようとするものである。 訂正事項3は,「一つの」という記載を追加することにより,「ツートーン調の面取り加工処理面」が,「前記カウンター板の開口部の内周面」と「前記接着剤層の端面」と「前記凹状体の上周縁部の内周面」の3者が連続した一つの面取り加工処理面であることを明りょうにしようとするものである。 訂正事項4は,面取り加工処理面について,「一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっている」ことを限定するものであるから,特許請求の範囲を減縮するものである。 訂正事項5は、上記訂正事項1ないし4に係る請求項1の訂正に整合させるために、発明の詳細な説明における「課題を解決するための手段」の記載を訂正したものである。 したがって,上記訂正事項1ないし3及び5はいずれも明りようでない記載の釈明を目的とし,上記訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2は本件特許の明細書の段落【0004】の記載を根拠とし,訂正事項3は本件特許の明細書の段落【0005】の記載を根拠とし,訂正事項4は本件特許の【図3】の記載等を根拠としたものであり,訂正事項1及び5は文章の体裁を整えるものであり,いずれも,本件特許の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 3 まとめ 以上のとおり,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き,及び,同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 第5 本件発明 前述のとおり(上記「第4」参照。),本件訂正は認められるから,本件特許第3345320号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,訂正明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 (本件発明) 「人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に、ボウルやシンクなどの人工大理石製の前記カウンター板と色調を変えた凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し、カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように、カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し、前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の一つの面取り加工処理面を形成してなり、前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっていることを特徴とする人工大理石カウンター。」 第6 無効理由に対する判断 1 各甲号証の記載内容 (1)甲第1号証(抄訳)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1a)「 」(第1頁表題及び左上欄) (1a抄訳)「コーリアン(R)”SUB”シームドアンダーマウントボウルの製造 目次 ・・・ 手順……………………………4 シンクとボウルの準備……4 シートの準備………………4 ボウルの接着………………5 トリミング…………………6 サンディング及び仕上げ…6 ・・・」 (1b)「 」(第4頁右欄下から13行?5頁左欄3行) (1b抄訳)「シートの準備 シートの裏側から作業を開始する。ボウル切り抜き用テンプレートを所定の位置に固定する(写真4参照)。各切り抜き作業を,1”(25mm)テンプレートガイド付きの2?3hpルーター,及び3/8”(9mm)のカーバイドチップ付きシングル溝彫りビットを使用して完了させる。水栓用穴のルーティングに続いて,真鍮インサートを取付けるための1/4”(6mm)の穴を空け,シートにボウル位置決めストップブロック用のマークを付ける(7頁のテンプレートの構造参照)。 ボウルをシート上に正確に位置決めするために表示されたマーク上に,3つのストップブロックを(容易に除去できるように)ホットメルトで固定する(写真5参照)。 写真4 ボウルの切り抜き及び水栓用穴をルーティングする。 写真5 ストップブロックを固定する。」 (1c)「 」(5頁左欄下から13行?6頁左欄3行) (1c抄訳)「ボウルの接着 1.ボウルの内周縁を注意深く点検する。目立たない継ぎ目とするため,ボウルの内周縁は,方形でチップがなく,滑らかにサンドペーパーがけされており,スクラッチがあってはならない。フランジ表面及び切り抜きの周りのボウルが取り付けられるシートを変性アルコールで清掃する。 2.十分な連続した接合用接着剤のビードを,シートのボウル切り抜きから3/8”-1/2”(9-13mm)の所に塗布する。また,下取り付け金具付近のフランジ領域の下に接着剤の短いビードを塗布する(写真6A,B参照)。 注 ボウルを所定位置に配置したとき継ぎ目に空気が入るのを防止するために,ボウル切り抜きの周りに1本の連続したビードだけを作る。フランジ領域だけに接着剤の短いビードを使用する。(写真6B参照) 写真6,A及びB シートヘの接着剤の塗布 3.ストップブロックの間のシート上にボウルを位置決めする。シートにボウルをしっかりと固定するために下取り付け金具を使用する。ボウルのフランジに圧力をかけるためにボウルクリップを反対に(写真7参照)取り付ける。これによりボウルとシートが堅固に取り付けられる。ボウルをストップブロックに保持し,接合接着剤を継ぎ目の全周に亘って塗り,蝶ナットを締め付ける。ボウル内周の継ぎ目の領域を点検し,接着剤が取り付けられたボウル及びシートの全周に見出されることを確認する。 注 ユニットを点検する際,接合接着剤の蒸気がボウル内にあることに注意する。 写真7 下取り付け金具によりボウルをクランプする。 4.接合用接着剤を完全に硬化させる(室温で約1時間)。次に,ユニットをひっくり返し,ボウル仕上げの準備をする。」 (1d)「 」(6頁左欄4行?左欄最下行) (1d抄訳)「トリミング ルーター及び10°傾斜したカーバイドチップビットで,ボウルの切り抜きの周りの余分なシートのオーバーハング及び接合用接着剤を削り取る(写真8参照)。このトリム切除によりボウルの角度に近づけ,最終仕上げが準備される。 或るルータービットには,ボウルにつく傷を減じるためのテーパした金属又はナイロン製のローラーベアリングが付属している。 写真8 余分なシートオーバーハングのトリミング 有用なヒント シートのオーバーハングをトリミングする際,ボウル半径,装飾縁をルーティングする際,ルータービットのローラーベアリングが乗るボウルの周囲にマスキングテープを貼る。これは,ボウルの傷付きを防止し,最終仕上げに必要とされるサンディングを減少させる。」 (1e)「 」(6頁右欄1行?7頁右欄2行) (1e抄訳)「サンディング及び仕上げ 1.ドラムサンダーを使用して,80-100グリッドのサンドペーパーで内側の継ぎ目を磨き(写真9参照),次いで,フラップホイールサンダーを使用して120-150グリッドのペーパーで磨く。 2.小型(パーム)オービタルサンダー及び180グリッドサンドペーパーでスクラッチマークを除去する(写真10参照)。 3.装飾縁を削る。 写真9 ドラムサンダーで内側の継ぎ目をサンディングする 有用なヒント 装飾縁(傾斜,オジー,ラウンドオーバー)は,影線及び異なる表面を作ることによって,継ぎ目領域及び僅かな色の相違を目立たなくする(図3参照)。 4.縁及び継ぎ目領域を180-220グリッドのサンドペーパーでサンドペーパーがけして仕上げる。 5.天板及びボウル領域全体をスコッチブライト(登録商標)でバフがけし,均一なマット仕上げをする。(写真11参照) 写真10 パームサンダーでスクラッチマークを除去する。 写真11 スコッチブライト(登録商標)によるトリプルボウルユニットの最終バフがけ」 (1f)「 」(8頁中下欄) (1g)「Copyright 1986」,「Rev. 4/87」及び「E-87827」(8頁下欄) (1h)上記記載事項,写真6ないし9,及び図3を総合すると,シートに設けられたボールの切り抜きの周縁下面に,ボウルの上周縁部を対応させて接着固定したことは明らかである。 これらの記載事項及び技術常識を総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「コーリアン(R)製のシートにボールの切り抜きを設け,該ボールの切り抜きの周縁下面に,コーリアン(R)製ボウルの上周縁部を対応させて接着固定し, ルーター及び10°傾斜したカーバイドチップビットで,ボールの切り抜きの周りの余分なシートのオーバーハング及び接合用接着剤を切除することによりボウルの角度に近づけ, ドラムサンダーを使用して,80-100グリッドのサンドペーパーで内側の継ぎ目を磨き, 小型(パーム)オービタルサンダー及び180グリッドサンドペーパーでスクラッチマークを除去し, 装飾縁を削り,影線及び異なる表面を作ることによって,継ぎ目領域及び僅かな色の相違を目立たなくした, コーリアン(R)製の”SUB”シームドアンダーマウントボウル。」 (2)甲第2号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (2a)「デュポン コーリアン(R)ラバトリーボウル&洗面台 技術マニュアル」(表紙) (2b)「 」(2頁中段) (2c)「 」(5頁) (2d)表紙には,カウンター板とラバトリーボウルの色調を変えたものが示されている。 (2e)上記「6取付方法」の「(マル2)」及び「(マル3)」欄には,カウンターの開口部の周縁下面に,ボウルの上周縁部を対応させて接着固定することが示されている。 (2f)上記「6取付方法」の「(マル5)」欄には,カウンターの開口部の内周面とボウルの上周縁部の内周面とが連続するように,コロ付ビットでトリミングし,サンディングしてスムーズにし,希望のエッジに加工することが示されている。 (2g)「LTM-9107 5M TP」(最終頁右下欄) これらの記載事項及び技術常識を総合すると,甲第2号証には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲2発明) 「デュポン コーリアン(R)製のカウンターの開口部の周縁下面に,デュポン コーリアン(R)製ボウルの上周縁部を対応させて接着固定した,デュポン コーリアン(R)ラバトリーボウル&洗面台であって, カウンターの開口部の内周面とボウルの上周縁部の内周面とが連続するように,コロ付ビットでトリミングし,サンディングしてスムーズにし,希望のエッジに加工した, デュポン コーリアン(R)ラバトリーボウル&洗面台。」 (3)甲第3号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (3a)「 」(1及び2頁) (3a抄訳)「“S”マウント シンク アセンブリ チェックリスト 「切り抜きが作られた後: 1.ボウルのフランジの平面性をチェックする。 1.1 アルミニウムレベルをすり合わせる。 1.2 高い場所にサンドペーパーがけする。 2.シートの裏の平滑性をチェックする。 2.1 必要があればベルトサンダーで平滑にする。 2.2 オービタルサンダーでスクラッチマークを除去する。 3.ドライフィット及びシート上のボウルの位置決め。 3.1 隙間のないことをチェック。 3.2 位置決めブロックの取り付け。 4.接着剤の塗布。 4.1 アルコールによる清掃。 4.2 ボウルのフランジに接着剤のビードを塗布。 4.3 ボウルの位置決め及び固定。 4.4 45分間接着剤を硬化させる。 5.仕上げ削り。 5.1 シートの裏がボウルに合うように,ナイロンベアリング付き傾斜ビットを使用して削る。 5.2 削った領域を滑らかに研磨する。 5.3 ボウルの内側にテープを貼り、シートの装飾縁を削る。 6.オービタルサンダー及びスコッチブライト(R)パッドで仕上げサンドペーパーがけする。」 (3b)「 」(2頁中下欄) (3c)「(R)1989 by E. I. du Pont de Nemours & Co., Inc.」(1頁右下欄) (3d)「H-16308 June 1989」(2頁左下欄) これらの記載事項及び技術常識を総合すると,甲第3号証には,次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲3発明) 「シートの開口部の周縁下面に,ボウルの上周縁部を対応させて接着固定した,“S”マウントシンクアセンブリであって, シートの開口部の内周面とボウルの上周縁部の内周面とが連続するように,ナイロンベアリング付き傾斜ビットを使用して削り,削った領域を滑らかに研磨し,ボウルの内側にテープを貼り,シートの装飾縁を削る, “S”マウントシンクアセンブリ。」 (4)本件出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には,次の事項が記載されている。 (4a)「CN37-9506 20M NL」(最終頁右下欄) (4b)第6頁左中欄の写真「♯840(シャンプーボウル)」及び「♯842」には,デュポン コーリアン(R)製のカウンターにおいて,カウンター板と色調を変えた凹状体が示されており,また,第6頁左下欄の図面「シームマウント/アンダーマウント」には,カウンター板と凹状体の縁が連続した洗面台が示されている。 (5)同じく,甲第5号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (5a)「(マル1)上辺外周にフランジが連設されている人工大理石からなる洗面ボウルの該フランジ上面を、人工大理石からなる天板に設けられた開口部周縁下面に当接し、該当接部を接着剤によって固着したことを特徴とする洗面ボウルの取付け構造。 (マル2)天板の開口部内周面と洗面ボウルの内周面上端隅部を一致させて固着したことを特徴とする請求項1記載の洗面ボウルの取付け構造。・・・」(実用新案登録請求の範囲) (5b)「(産業上の利用分野) 本考案は人工大理石からなる洗面ボウルを、人工大理石からなる天板に設けられた開口部に取付ける取付け構造に関する。」(明細書1頁19行?2頁2行) (5c)「(実施例) 第1図、第2図は本考案の第1実施例である。1は洗面台、2は該洗面台1上面に載置固定した人工大理石からなる天板で洗面ボウル取付け用の開口部2aが形成されている。3は上辺外周にフランジ3aが連設されている人工大理石からなる洗面ボウルで、該フランジ3aを天板の開口部2aの周縁下面2bに当接し、天板2の開口部2aの内周面2cと、洗面ボウル3の内周面上端隅部3bを一致させ、この当接部に接着剤を介在して固着してある。 このようにするとあたかも天板2と洗面ボウル3が一体化したものとみなされて好ましい。」(同4頁2?14行) (5d)「本考案によると上辺外周にフランジが連設されている人工大理石からなる洗面ボウルの該フランジ上面を、人工大理石からなる天板に設けられた開口部周縁下面に当接し、該当接部を接着剤によって固着してあるので、特別なフレームや取付け具を用いることがなく取付けができ、しかもシリコン系シーラントを使用することなく確実に取付けができ、又第1実施例の場合は天板と洗面ボウルの接合部が目立たず一体成形品のように仕上げることができ・・・」(同5頁1?10行) これらの記載事項及び技術常識を総合すると,甲第5号証には,次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲5発明) 「人工大理石からなる天板に設けられた開口部周縁下面に,人工大理石からなる洗面ボウルのフランジ上面を当接し,天板の開口部の内周面と,洗面ボウルの内周面上端隅部を一致させ,この当接部に接着剤を介在して固着してあり,天板と洗面ボウルの接合部が目立たず一体成形品のように仕上げた,人工大理石からなる構造。」 (6)同じく,甲第6号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (6a)「本発明は、たとえば化粧洗面台の本体へ水槽を装着するための装着方法の改良に関する。」(1頁左下欄13?14行) (6b)「なお、第4図の状態からさらに表面化粧板6の開口端縁を切削し、第5図に示すように槽部2の内面と切削面とが断面一直線状をなすよう形成しても良い。この場合表面化粧板6は水槽1と一体感がでて、さらに美観が向上するとともに突出部分がないから使い勝手が損われない。」(2頁右上欄4?9行)。 (7)同じく,甲第7号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (7a)「【産業上の利用分野】本発明はレーザ光線を利用した被加工物の加工方法に関し、例えば、ステンレス製の流し台における天板とシンクとの接合に用いて好適な加工方法に関する。」(1欄15?18行) (7b)「・・・上記流し台1の製造工程を図3ないし図5によって説明すると、上述した構成からなる天板2における開口2cの下方側にシンク3を位置させ、該シンク3の縁部3dを天板2の縁部2dに下方側から重合させる(図3)。次に、この状態において図示しないレーザ加工機のレーザヘッドによって上記両縁部2d,3dの重合箇所に上方側からレーザ光線Lを照射して溶接を開始し、シンク3の縁部3dに沿って両縁部2d,3dの重合箇所を1周して、上記両部材の縁部2d,3dを連続的に第1次溶接する(図4)。これによって、両縁部が接合されて第1接合部Aが形成される。次に、上記第1接合部Aからわずかに外方側にずれた両縁部2d,3dの重合箇所に上記第1次溶接の場合と同様に、上方側からレーザ光線Lを照射して両縁部2d,3dの重合箇所を1周して、両縁部2d,3dを第2次溶接し、これによって、両縁部2d,3dが接合された第2接合部Bが形成される。このようにして、両縁部2d,3dを接合することによって、シンク3と天板2とを一体に連結するようにしている。本実施例では、隣り合う第1接合部Aと第2接合部Bとが実質的に幅方向で連続するようにレーザ溶接してあり、したがって、第1接合部Aと第2接合部Bとの合計した幅が実質的な接合部の幅となっている。最後に、上述した状態となったら、第1接合部Aよりも内方側に位置した天板2の縁部2dの先端を図示しないグラインダによって削除するとともに、両接合部A,Bの表面をグラインダによって凹凸がなくなるまで研磨する(図4,図5)。・・・」(2欄26行?3欄3行)。 (8)同じく,甲第8号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (8a)「本発明は流し台、洗面台等に用いる化粧板貼り天板の製造法に関するものである。」(1頁左下欄17?18行) (8b)「第1図において、(1)は合板、パーテイクルボード等の木質材料の芯材で適所に窓孔(2)が形成してある。 そして所定型状の金型(3)上に芯材をセツトした後、芯材の窓孔(2)と金型(3)の隙間にエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の接着性のある熱硬化性樹脂(4)を流し込んで硬化させる。硬化したら、金型をはずし、木質系芯材(1)と熱硬化性樹脂(4)とが一体化した、複合芯材(5)を得る。 金型(3)の使用により精度の高い複合芯材の製造が出来、このようにして得た複合芯材(5)の表面に適宜、接着剤を使つて、化粧板(6)を貼り合せ、しかる後、シンクの型状に合せて化粧板(6)及び熱硬化性樹脂(4)を切削加工する。・・・」(1頁右下欄20行?2頁左上欄13行)。 (9)同じく,甲第9号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (9a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、家屋等の床を形成する木製の床材に関するものである。」 (9b)「【0009】そして図1(a)に示すように木材5を基板1の上面や側面から外側にはみ出さないように接着剤で接着して基板1の深切欠部4aと浅切欠部4bにそれぞれ埋め込んで固着し、図1(b)に示すように基板1の上面に接着剤(着色してもよい)を塗布して化粧単板2をホットプレス等で圧着すると共に化粧単板2の側端部で基板1に取り付けた上記木材5の上面を覆うようにして貼着し、研磨した後、木材5の上部隅部と化粧単板2の側端部との接合部分を面取り加工して面取り部3を形成すると共に木材5に沿って雄実6と雌実7を基板1の全長に亘って形成することによって、図1(c)に示すような床材が作成される。・・・」。 (10)同じく,甲第10号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (10a)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、床板や壁板などの建築用化粧板として用いられる木質系化粧板の構成及びその製造方法に関する。」 (10b)「【0011】基板1上に貼着された単位化粧単板2の縦横方向接合部には条溝3が形成され、かつ長手方向端の上側角には該単位化粧単板を切断する様に一枚置きに面取り部4が形成される。条溝3や面取り部4の深さは確実に単位化粧単板2を切断し、基板1の一部まで切削する深さとする。その形成方法としては、条溝3及び面取り部4は縦溝加工機と横溝加工機を組み合わせたり、ルーター加工機等を用いる。」 (10c)「【0012】その条溝3及び面取り部4内には上記単位化粧単板2の表面色よりも濃色の着色層5が形成されている。上記の条溝3や面取り部4内に形成される着色層5は、上記条溝3及び面取り部4内のみに溝塗装機等を用いて着色剤を塗布するか化粧単板2の表面全体に塗布した後に平坦部の着色剤をリーバースロールやワイピング装置を用いて掻き取る等の方法により形成される。着色剤としては顔料系や染料系等の着色剤を適宜選定して用いられる。」 (10d)「【0013】最後に、条溝3や面取り部4を含む化粧単板全表面に透明性の塗料6を塗布して求める化粧板とする。・・・」 (11)同じく,甲第11号証には,次の事項が記載されている。 (11a)「CN30-9212 20M TP」(最終頁右下欄) (11b)第5頁中段左の写真「830(ミスティグリーン)に合わせて、エッジにもミスティグリーンをはんでいる。」,及び下段の写真「815S(ダスティローズ)にシエラピンクコーラルを積層したデザイン。」には,デュポン コーリアン(R)製のカウンターにおいて,カウンター板と色調を変えた凹状体が示されている。 (12)同じく,甲第12号証には,次の事項が記載されている。 (12a)「CN31-9303 20M TP」(最終頁右下欄) (12b)第6頁右上の写真「’92 GLショーに出展したシエラ ラバトリーボウルシリーズ」には,デュポン コーリアン(R)製のカウンターにおいて,カウンター板と色調を変えた凹状体が示されている。 (13)甲第13号証には,甲第2号証と同一の図面及び同一の事項が記載されている。 2 甲第1号証ないし甲第3号証の公知性について まず,甲第3号証の公知性について検討する。甲第3号証第2頁左下欄には「H-16308 June 1989」と記載されていることから,甲第3号証は1989年6月に発行されたものと推認される。また,甲第3号証は,施工業者向けの内容のものであり,上記記載事項(3b)によれば,コーリアンの売り手(デュポン社)からコーリアンの買い手に無料で頒布されたものであることが明らかである。そうすると,甲第3号証は多数販売されたコーリアンと同様に多数頒布されたものと推認される。よって,甲第3号証は本件出願の出願前に頒布された刊行物であるということができる。 次に,甲第2号証について検討する。請求人は甲第14号証ないし甲第20号証を提出し,甲第2号証に付された「LTM-9107 5M TP」という記号について,「9107」は「1991年07月」を意味し,「5M」は「発行部数5千部」を意味すると主張している。そして,この4桁の数字が発行年月を表していることは,甲第2号証と同内容の刊行物であって,平成元年9月から平成3年3月頃に存在していたと認められる甲第13号証に付された「LTM-9006 5M TP」の「9006」という数字の表記と整合するものであり,さらに,1995年に発行された甲第4号証の「CN37-9506」,1992年に発行された甲第11号証の「CN30-9212」,及び1993年に発行された甲第12号証の「CN31-9303」の数字の表記とも整合するものである。そうすると,「LTM-9107」という数字の表記を有する甲第2号証は,1991年に発行されたものと推認される。また,甲第2号証は,施工業者向けの内容の技術マニュアルであるから,多数販売されたコーリアンと同様に多数頒布されたものと推認される。よって,甲第2号証は本件出願の出願前に頒布された刊行物であるということができる。 さらに,甲第1号証について検討する。甲第1号証に付された「Copyright 1986」及び「Rev. 4/87」という記号の意味は,1986年初版,1987年4月改訂(revise)を意味するようにも見えるが,必ずしも明らかでない。しかしながら,上記したように,甲第2号証及び甲第3号証が本件出願の出願前である1989年及び1991年に頒布されたものと推認されるところ,これとほぼ同内容の甲第1号証もほぼ同時期に存在していたものとするのが相当であるから,甲第1号証の「Rev. 4/87」は1987年改訂を意味するものと推認される。また,甲第1号証は,施工業者向けの内容のものであり,上記記載事項(1f)によれば,コーリアンの売り手(デュポン社)からコーリアンの買い手に無料で頒布されたものであることが明らかである。そうすると,甲第1号証は多数販売されたコーリアンと同様に多数頒布されたものと推認される。よって,甲第1号証は本件出願の出願前に頒布された刊行物であるということができる。 そこで,甲第1号証ないし甲第3号証が,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるものとして,以下の検討を行う。 3 無効理由2-1について (1)甲1発明との対比・判断 本件発明と甲1発明とを対比すると,その機能ないし構造から見て,甲1発明の「シート」は本件発明の「カウンター板」に,以下同様に「ボールの切り抜き」は「開口部」に,「ボウル」は「ボウルやシンクなどの凹状体」に,それぞれ相当する。 また,甲1発明の「コーリアン(R)」は人工大理石として広く知られたものであるから,本件発明の「人工大理石」に相当する。 また,甲1発明の「コーリアン(R)製の”SUB”シームドアンダーマウントボウル」は,全体としてカウンターを構成するものであるから,本件発明の「人工大理石カウンター」に相当する。 また,甲1発明の「ルーター及び10°傾斜したカーバイドチップビットで,ボールの切り抜きの周りの余分なシートのオーバーハング及び接合用接着剤を切除することによりボウルの角度に近づけ,ドラムサンダーを使用して,80-100グリッドのサンドペーパーで内側の継ぎ目を磨き,小型(パーム)オービタルサンダー及び180グリッドサンドペーパーでスクラッチマークを除去し,装飾縁を削り,影線及び異なる表面を作ることによって,継ぎ目領域及び僅かな色の相違を目立たなくした」と本件発明の「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し」とは,「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも切削研磨加工し」で共通している。 してみれば,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点1> 「人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に,ボウルやシンクなどの人工大理石製の凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し,カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも切削研磨加工し,前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続して一つの切削研磨加工処理面を形成してなる人工大理石カウンター。」 <相違点1> 本件発明は「カウンター板と色調を変えた凹状体」により,切削研磨加工処理面が「ツートーン調」となっているのに対し,甲1発明はカウンター板と凹状体の色調が特定されていない点。 <相違点2> カウンター板の開口部の内周面と接着剤層の端面と凹状体の上周縁部の内周面とで連続して形成される切削研磨加工処理面が,本件発明は「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」であるのに対し,甲1発明は,凹状体(ボウル)の角度に近づけた面を設けた後に,影線及び異なる表面を作ることによって継ぎ目領域及び僅かな色の相違を目立たなくした装飾縁を設けた面である点。 まず,上記相違点2について検討する。甲1発明における,凹状体(ボウル)の角度に近づけた面を設ける作業は,凹状体の上周縁部の内周面からカウンター板の開口部の内周面にかけて,なめらかな面を形成することにより,一体感のある人工大理石カウンターを構成することを目的としたものであって,凹状体のなめらかな曲面にあえて角部を設けて一体感を損ねようとする動機付けや理由は存在せず,凹状体のなめらかな面に積極的に稜角を設けることには阻害要因があるというべきであるから,甲1発明において,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面として,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 また,甲1発明における「装飾縁」を設ける作業は,具体的には図3(上記記載事項(1e)参照。)に示されているが,いずれも,凹状体を削ることなく,カウンター板を削って装飾縁を設けることにより,凹状体とカウンター板の境界部分に,影線及び異なる表面を作ることによって,継ぎ目領域及び僅かな色の相違を目立たなくしたものであり,凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面として,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することを示唆するものではない。 そして,本件発明は,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面を,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」とすることにより,結果として,カウンター板の開口部の内径が,切削研磨加工前の凹状体の上周縁部の内径よりも,大きなものとなる。そうすると,カウンター板の開口部に凹状体を接着する際に,例えば,凹状体の位置がずれて,凹状体の上周縁部が一部露出したとしても,この露出部を切削研磨加工により消失させることができる,つまり,本件発明の訂正明細書の段落【0006】に記載された「・・・従来の成形誤差への対策は不要となる。」という作用を有するものである。 なお,請求人は,平成18年12月27日付け弁駁書第7頁第20ないし25行において,甲1発明の「ドラムサンダーを使用して,80-100グリッドのサンドペーパーで内側の継ぎ目を磨き」及び「小型(パーム)オービタルサンダー及び180グリッドサンドペーパーでスクラッチマークを除去し」の作業(「Sanding and Finishing」における「1」及び「2」の作業)が本件発明の「面取り加工処理」に該当するのであって,甲1発明の「装飾縁を削った」の作業(「Sanding and Finishing」における「3」の作業)は本件発明の「面取り加工処理」とは無関係な加工であると主張しているが,甲1発明は,凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面を設けるための一連の作業として,「装飾縁を削った」の作業を含むものであり,この作業のみ除外して比較することは妥当でない。 したがって,本件発明は,上記相違点1について検討するまでもなく,甲1発明と,甲第4号証,甲第11号証及び甲第12号証に記載された技術から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)甲2発明との対比・判断 本件発明と甲2発明とを対比すると,その機能ないし構造から見て,甲2発明の「カウンター」は本件発明の「カウンター板」に,以下同様に「ボウル」は「ボウルやシンクなどの凹状体」に,相当する。 また,甲2発明の「デュポン コーリアン(R)」は人工大理石として広く知られたものであるから,本件発明の「人工大理石」に相当する。 また,甲2発明の「デュポン コーリアン(R)ラバトリーボウル&洗面台」は,全体としてカウンターを構成するものであるから,本件発明の「人工大理石カウンター」に相当する。 また,甲2発明の「カウンター」と「ボウル」との間に接着剤が存在することは明らかであるから,甲2発明の「カウンターの開口部の内周面とボウルの上周縁部の内周面とが連続するように,コロ付ビットでトリミングし,サンディングしてスムーズにし,希望のエッジに加工した」と本件発明の「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し」とは,「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも切削研磨加工し」で共通している。 してみれば,両者は,上記「第6」の「3」の「(1)」の「<一致点1>」の点で一致し,上記「第6」の「3」の「(1)」の「相違点1」に加え,次の点で相違する。 <相違点3> カウンター板の開口部の内周面と接着剤層の端面と凹状体の上周縁部の内周面とで連続して形成される切削研磨加工処理面が,本件発明は「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」であるのに対し,甲2発明は,カウンター板(カウンター)の開口部の内周面と凹状体(ボウル)の上周縁部の内周面とが連続するような面を設けた後に,希望のエッジに加工した面である点。 上記相違点3について検討する。甲2発明における,カウンター板(カウンター)の開口部の内周面と凹状体(ボウル)の上周縁部の内周面とが連続するような面を設ける作業は,凹状体の上周縁部の内周面からカウンター板の開口部の内周面にかけて,なめらかな面を形成することにより,一体感のある人工大理石カウンターを構成することを目的としたものであって,凹状体のなめらかな曲面にあえて角部を設けて一体感を損ねようとする動機付けや理由は存在せず,凹状体のなめらかな面に積極的に稜角を設けることには阻害要因があるというべきであるから,甲2発明において,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面として,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 また,甲2発明における「希望のエッジに加工した面」を設ける作業は,具体的には(マル5)の「5-3」(上記記載事項(2c)参照。)に示されているが,カウンター板を削って装飾縁を設けるものであって,積極的に凹状体まで削ることにより,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することを示唆するものとはいえない。 そして,本件発明は,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面を,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」とすることにより,結果として,カウンター板の開口部の内径が,切削研磨加工前の凹状体の上周縁部の内径よりも,大きなものとなる。そうすると,カウンター板の開口部に凹状体を接着する際に,例えば,凹状体の位置がずれて,凹状体の上周縁部が一部露出したとしても,この露出部を切削研磨加工により消失させることができる,つまり,本件発明の訂正明細書の段落【0006】に記載された「・・・従来の成形誤差への対策は不要となる。」という作用を有するものである。 したがって,本件発明は,上記相違点1について検討するまでもなく,甲2発明と,甲第4,第11及び第12号証に記載された技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲3発明との対比・判断 本件発明と甲3発明とを対比すると,その機能ないし構造から見て,甲3発明の「シート」は本件発明の「カウンター板」に,以下同様に「ボウル」は「ボウルやシンクなどの凹状体」に,相当する。 また,甲3発明の「“S”マウントシンクアセンブリ」は,全体としてカウンターを構成するものであるから,本件発明の「カウンター」に相当する。 また,甲3発明の「シート」と「ボウル」との間に接着剤が存在することは明らかであるから,甲3発明の「シートの開口部の内周面とボウルの上周縁部の内周面とが連続するように,ナイロンベアリング付き傾斜ビットを使用して削り,削った領域を滑らかに研磨し,ボウルの内側にテープを貼り,シートの装飾縁を削った」と本件発明の「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し」とは,「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも切削研磨加工し」で共通している。 してみれば,両者は, <一致点2> 「カウンター板の開口部の周縁下面に,ボウルやシンクなどの凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し,カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように,カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも切削研磨加工し,前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続して一つの切削研磨加工処理面を形成してなるカウンター。」である点で一致し, 上記「第6」の「3」の「(1)」の「<相違点1>」に加え,次の点で相違する。 <相違点4> カウンター板及び凹状体が,本件発明は「人工大理石製」であるのに対し,甲3発明は材質が特定されていない点。 <相違点5> カウンター板の開口部の内周面と接着剤層の端面と凹状体の上周縁部の内周面とで連続して形成される切削研磨加工処理面が,本件発明は「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」であるのに対し,甲3発明は,カウンター板(シート)の開口部の内周面と凹状体(ボウル)の上周縁部の内周面とが連続するような面を設けた後に,凹状体(ボウル)の内側にテープを貼り,カウンター板(シート)を削って装飾縁を設けた面である点。 まず,上記相違点5について検討する。甲3発明における,カウンター板(シート)の開口部の内周面と凹状体(ボウル)の上周縁部の内周面とが連続するような面を設ける作業は,凹状体の上周縁部の内周面からカウンター板の開口部の内周面にかけて,なめらかな面を形成することにより,一体感のある人工大理石カウンターを構成することを目的としたものであって,凹状体のなめらかな曲面にあえて角部を設けて一体感を損ねようとする動機付けや理由は存在せず,凹状体のなめらかな面に積極的に稜角を設けることには阻害要因があるというべきであるから,甲3発明において,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面として,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 また,甲3発明における,カウンター板(シート)の装飾縁を削る作業は,具体的には「5.3」の作業(上記記載事項(3a)参照。)に示されているが,カウンター板(シート)を削って装飾縁を設けるものであって,凹状体はテープにより傷がつかないように保護されているのであるから,凹状体まで切削することにより「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することには阻害要因があり,当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして,本件発明は,上記の凹状体からカウンター板まで連続した切削研磨加工処理面を,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」とすることにより,結果として,カウンター板の開口部の内径が,切削研磨加工前の凹状体の上周縁部の内径よりも,大きなものとなる。そうすると,カウンター板の開口部に凹状体を接着する際に,例えば,凹状体の位置がずれて,凹状体の上周縁部が一部露出したとしても,この露出部を切削研磨加工により消失させることができる,つまり,本件発明の訂正明細書の段落【0006】に記載された「・・・従来の成形誤差への対策は不要となる。」という作用を有するものである。 そうすると,本件発明は,上記相違点1及び4について検討するまでもなく,甲3発明と,甲第4,第11及び第12号証に記載された技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)無効理由2-1のまとめ したがって,甲第1号証ないし甲第3号証が本件特許出願前に公知であったか否かにかかわらず,本件発明は,甲1,2,又は3発明と,甲第4,第11及び第12号証のいずれかに記載された技術との組み合わせに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 4 無効理由2-2について 本件発明と甲5発明とを対比すると,その機能ないし構造から見て,甲5発明の「天板」は本件発明の「カウンター板」に,以下同様に,「洗面ボウル」は「ボウルやシンクなどの凹状体」に,「フランジ上面」は「上周縁部」に,それぞれ相当する。 また,甲5発明の「天板の開口部の内周面と,洗面ボウルの内周面上端隅部を一致させ」は,本件発明の「カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続する」に相当する。 また,甲5発明の「人工大理石からなる構造」は,全体として人工大理石からなるカウンターを構成するものであるから,本件発明の「人工大理石カウンター」に相当する。 してみれば,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点3> 「人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に,ボウルやシンクなどの人工大理石製の凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し,カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するようにした,人工大理石カウンター。」 <相違点6> 本件発明は「カウンター板と色調を変えた凹状体」により,人工大理石カウンターが「ツートーン調」となっているのに対し,甲5発明はカウンター板と凹状体の色調が特定されていない点。 <相違点7> 本件発明は「カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し,前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続して・・・一つの面取り加工処理面を形成してなり,前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっている」のに対し,甲5発明は,カウンター板と凹状体の接合部が目立たず一体成型品のように仕上げたものではあるが,面取り加工を施したものではない点。 まず,上記相違点7について検討する。甲第6号証には,天板を切削し,天板と洗面ボウルが連続して一直線状をなすように形成することが記載されている。しかしながら,甲第6号証に記載された技術は,洗面ボウルの内周面(凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に沿った面)と一直線状をなすように天板(カウンター板)を切削するものであって,凹状体から天板まで連続した切削研磨面として「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することを示唆するものとはいえない。 また,甲第7号証には,天板2とシンク3の両縁部2d,3dを重合させ,重合部分を溶接後,天板2の縁部2dの先端を削除するとともに,接合部A,Bの表面を研磨するものであるが,ステンレス同士の溶接による接合部の加工に関する技術であることに加え,研磨された接合部A,Bの表面は,単に,シンク3の縁部と凹凸がないようになめらかに研磨されたものであるから,人工大理石カウンターにおいて,凹状体から天板まで連続した切削研磨面として「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することを示唆するものとまではいえない。 また,甲第8号証には,シンク(凹状体)の型状に合わせて,化粧板(6)及び熱硬化性樹脂(4)(カウンター板)を切削加工する技術が記載されているものの,シンク(凹状体)を切削することを示唆するものではない。 また,甲第9号証及び甲第10号証には,基盤に化粧単板を貼り合わせた床材ないし化粧単板において,面取り加工処理により,基盤と化粧単板の双方を削りとり,基盤から化粧単板かけて連続した一つの面取り面を形成する技術が開示されている。しかしながら,甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術は,そもそも,床材等の木材加工技術に関するものである。甲第9号証及び甲第10号証において,化粧単板だけでなく基盤まで削り取る理由は,比較的高価な化粧単板の使用量を減らすために,化粧単板を薄くした結果,基盤まで削り取らざるを得なくなったという,木材加工技術分野特有の課題に基づくものであって,人工大理石カウンターにおいて,凹状体まで積極的に削り取り,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することを示唆するものとはいえない。 一方,甲5発明は,カウンター板(天板)と凹状体(洗面ボウル)の接合部が目立たず一体成型品のように仕上げるために,カウンター板(天板)の開口部の内周面と、凹状体(洗面ボウル)の内周面上端隅部を一致させて接着剤により固着する構成となっている。 そうすると,甲5発明において,凹状体のなめらかな曲面にあえて角部を設けて,一体成型品のように見える外観を損ねようとする動機付けや理由は存在せず,凹状体のなめらかな面に積極的に稜角を設けることには阻害要因があるというべきであるから,各種の面取り技術が周知技術であったとしても,甲5発明において,凹状体から天板まで連続した切削研磨面として「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして,本件発明は,「凹状体の上周縁部の切削研磨加工前の内周面に対して、外側に傾けた面」を新たに形成することにより,結果として,カウンター板の開口部の内径が,切削研磨加工前の凹状体の上周縁部の内径よりも,大きなものとなる。そうすると,カウンター板の開口部に凹状体を接着する際に,例えば,凹状体の位置がずれて,凹状体の上周縁部が一部露出したとしても,この露出部を切削研磨加工により消失させることができる,つまり,本件発明の訂正明細書の段落【0006】に記載された「・・・従来の成形誤差への対策は不要となる。」という作用を有するものである。 したがって,本件発明は,上記相違点6について検討するまでもなく,甲5発明と,甲第4号証,甲第11号証及び甲第12号証に記載された技術,又は甲第6号証ないし甲第10号証に記載された技術の組み合わせから当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 無効理由1について 請求人は,本件発明は,甲1,甲2,又は甲3発明であると主張している。 しかしながら,上記「第6」の「3」で述べたとおり,本件発明は,甲1,甲2,又は甲3発明と比較すると相違点を有するものであるから,本件発明は,甲1,甲2,又は甲3発明であるとすることはできない。 6 各甲号証その他の組み合わせについて 甲第1号証ないし甲第12号証のいずれにも,本件発明の「カウンター板の開口部の内周面と接着剤層の端面と凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の一つの面取り加工処理面を形成してなり,一つの面取り加工処理面が、凹状体の上周縁部の面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっている」構成を示唆する記載は見あたらず,甲第1号証ないし甲第12号証をどのように組み合わせても,本件発明を容易に発明をすることができたとすることはできない。 第7 むすび 以上のとおり,本件発明に係る特許は,請求人が主張する無効理由によっては無効とすることはできない。 また,ほかに,本件発明に係る特許を無効にすべき理由も見あたらない。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 人工大理石カウンター (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に、ボウルやシンクなどの人工大理石製の前記カウンター板と色調を変えた凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し、カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように、カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し、前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の一つの面取り加工処理面を形成してなり、前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっていることを特徴とする人工大理石カウンター。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は人工大理石製のカウンター板の開口部に人工大理石製の凹状体を取り付けて、洗面部や洗い部を得るための接合構造に関するものである。 【0002】 【発明が解決しようとする課題】 従来、人工大理石カウンターに洗面部(洗面ボウル)や洗い部(シンク)を設けるに当たっては、人工大理石製のカウンター板に設けた開口部に対して、ボウルやシンクとなる上方側が開放された凹状体を取り付けており、カウンター板の開口部の周縁下面に、その凹状体の上周縁部を接着剤や取付金具を用いて取付固定していた(図1参照)。図6はその人工大理石カウンターAの凹部Bにおける一部断面を示しており、カウンター板1の開口部2に下方から凹状体3におけるフランジ状の上周縁部4を対応させている。そして、カウンター板1や凹状体3の成形誤差を吸収するためなどの理由から、凹状体3の上周縁形状よりカウンター板1の開口部2の形状を小さくしている。しかしながら、開口部2の形状を小さくしているため、凹部Bの開放側周縁では、カウンター板1の開口部2の内周5が凹部Bの中心に向けて張り出たオーバーハングとなっており、張り出た部分Cの周縁下面Dに付着した汚れが残存し易く不衛生であり、掃除もし難いという問題があった。そこで本発明は上記事情に鑑み、上記カウンター板の開口部の内周によるオーバーハングを無くし、かつ、カウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とが不揃いにならないようにすることを課題とし、人工大理石カウンターにおいて、外観が整って衛生的な洗面部やシンク部などを得ることを目的とする。 【0003】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記課題を考慮してなされたもので、人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に、ボウルやシンクなどの人工大理石製の前記カウンター板と色調を変えた凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し、カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するように、カウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とをいずれも面取り加工し、前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の一つの面取り加工処理面を形成してなり、前記一つの面取り加工処理面が、前記凹状体の上周縁部の前記面取り加工前の内周面に対して、外側に傾けた面からなっていることを特徴とする人工大理石カウンターを提供して、上記課題を解消するものである。 【0004】 【発明の実施の形態】 つぎに本発明を図1から図5に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、図6に示す従来例と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。本発明において人工大理石カウンターAの凹部Bを形成するにあたって、図1と図2に示すように、まず、カウンター板1の開口部2の周縁下面6と凹状体3の上周縁部4の上面7との間に接着剤8が位置するようにしてこの接着剤8により凹状体3をカウンター板1に接着固定する。この後、前記開口部2の内周5と前記上周縁部4の内周9とに対して研削、又は研磨を行って、開口部2の内周面5aと上周縁部4の内周面9aとが連続するように仮想線10′の位置で凹部Bの内方に向かう下り傾斜にして面取り加工を行う。なお、開口部2の周縁下面6と上周縁部4の上面7との間に位置した接着剤8よりなる接着剤層8aも、前記仮想線10の位置では密実に介在している状態となっており、前記面取り加工にて開口部2の内周5と上周縁部4の内周9とともに研削、或は研磨される。 【0005】 このように、開口部2の内周5と接着剤層8aと上周縁部4の内周9とともに研削、或は研磨による面取り加工を行うため、凹部Bの開放側周縁に亘って、開口部2の内周面5aと接着剤層8aの端面8bと上周縁部4の内周面9aとが連続した面取り加工処理面10が形成される(図3参照)。この面取り加工処理面10は凹部Bの内方に向いた下り傾斜面であり、従来のようなオーバーハング部分が無くなって衛生的であるとともに、図4に示すように、オーバーハングによる影部分も無くなってカウンターの表面から凹部B(洗面ボウルやシンク)の内面への連続性が強調され、その凹部の外観が損なわれないようになる。そして、カウンター板1と凹状体3とは互いに色調が変えられていて、一つの面取り加工処理面10の色調がツートーン調となってデザイン性がより一層向上している。なお、接着剤層8aの厚さは極めて薄いものであり、前記面取り加工処理面10で前記接着剤層8aの端面8bは目立たず、開口部2の内周面5aと上周縁部4の内周面9aとの単なる境界として表出するものである。 【0006】 上記した例では、平らな下り傾斜面となる面取り加工処理面が得られるように面取り加工を行ったものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、縦断面の形状が凹部Bの内方に向けて下る弧状である凹面の面取り加工処理面10が形成されるように面取り加工を行うようにしてもよい。また、何れの例においても凹状体が取り付けられる前のカウンター板に設けられている開口部は、上記凹状体の上周縁形状より小さくしているが、カウンター板と凹状体の取付後に上述したように研削、研磨することから、凹状体が取り付けられる前のカウンター板の開口部を、凹状体の上周縁形状と同じとなるようにしてもよく、従来の成形誤差への対策は不要となる。 【0007】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明の人工大理石カウンターは、人工大理石製のカウンター板の開口部の周縁下面に、ボウルやシンクなどの人工大理石製の前記カウンター板と色調を変えた凹状体の上周縁部を対応させて接着固定し、カウンター板の開口部の内周面と凹状体の上周縁部の内周面とが連続するようにカウンター板と凹状体との間に位置する接着剤層とカウンター板の開口部の内周と凹状体の上周縁部の内周とを面取り加工し、前記カウンター板の開口部の内周面と前記接着剤層の端面と前記凹状体の上周縁部の内周面とで連続してツートーン調の面取り加工処理面を形成したことを特徴とするものであり、従来のオーバーハングによる影部分が無くなってカウンター表面から凹部の内面への連続性が強調されてその凹部の外観を整えたカウンターが得られるようになる。また、汚れが付着し易く掃除も行い難かったオーバーハング部分を無くすことから衛生的なカウンターの凹部が得られ、仮に、面取り加工した面に汚れが付いたとしても拭取りなどの簡単な操作てその汚れを除去でき、洗面ボウルや洗い部の清浄さを維持させ易いカウンターが得られる。さらに、カウンター板と凹状体との色調が変えられているので、一つの面取り加工処理面がツートーン表現されてデザイン性がより一層向上するようになるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る人工大理石カウンターの一例におけるカウンター板に凹状体を取り付ける状態を示す説明図である。 【図2】面取り加工する前の状態の凹部の一部を断面で示す説明図である。 【図3】面取り加工した凹部の一部を断面で示す説明図である。 【図4】面取り加工した凹部を示す説明図である。 【図5】他の例の面取り加工した凹部の一部を断面で示す説明図である。 【図6】従来例における凹部の一部を断面で示す説明図である。 【符号の説明】 1…カウンター板 2…開口部 3…凹状体 4…上周縁部 5…内周 5a…内周面 6…周縁下面 7…上面 8a…接着剤層 9…内周 9a…内周面 10…面取り加工処理面 A…人工大理石カウンター B…凹部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-05-26 |
結審通知日 | 2009-06-01 |
審決日 | 2007-06-15 |
出願番号 | 特願平9-290913 |
審決分類 |
P
1
113・
113-
YA
(A47B)
P 1 113・ 121- YA (A47B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 向後 晋一、江塚 政弘 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 関根 裕 |
登録日 | 2002-08-30 |
登録番号 | 特許第3345320号(P3345320) |
発明の名称 | 人工大理石カウンター |
代理人 | 大橋 厚志 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 内藤 義三 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 渡邊 誠 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 飯塚 義仁 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 渡邊 誠 |
代理人 | 内藤 義三 |
代理人 | 飯塚 義仁 |
代理人 | 大橋 厚志 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 熊倉 禎男 |