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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1204452
審判番号 不服2007-20132  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-19 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 特願2001-198107「コード巻取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月15日出願公開、特開2003- 12239〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成13年6月29日の出願であって,平成19年6月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定の拒絶理由は,以下のとおりのものと認める。

「この出願の請求項1?3に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
1;実公昭61-43811号公報
2;実用新案登録第2596928号公報
3;特開平11-295555号公報

上記各刊行物を,以下,それぞれ「引用例1」「引用例2」「引用例3」という。

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成18年10月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ケース内に回転可能に設けられたコードリールに巻取られるコードと,このコードの先端に前記コードと一体に形成されたプラグとを備え,前記プラグはプラグ本体と,このプラグ本体に前記コードを覆うように形成されたプラグ下コード保護部と,このプラグ下コード保護部の先端に設けられ前記プラグが前記ケース内に入り込むのを防ぐコードストッパーと,このコードストッパーから突設されて前記コードを覆うように形成されたストッパー下コード保護部とを有し,前記ストッパー下コード保護部には,複数のストッパー下コード保護部切り欠きを設け,前記コードの一部が表面に露出するストッパー下コード保護部コードを,前記プラグ下コード保護部には,複数のプラグ下コード保護部切り欠きを設け,前記コードの一部が表面に露出するプラグ下コード保護部コードを形成し,前記プラグ下コード保護部と前記ストッパー下コード保護部の柔軟性を少なくとも前記プラグ本体より柔軟にし,かつ,前記プラグ下コード保護部の長さを前記ストッパー下コード保護部の長さより長くし,前記ストッパー下コード保護部の長さを10mm以上としたことを特徴とするコード巻取装置。」

2.引用例記載事項
(1)引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-a)
「本考案は所謂コードリールと称されるコード巻取装置の保護装置に関し,特にコードを自動的に巻取るものにおいて,プラグ部の近傍で生ずるコードの断線を防止することを目的とする。」(1欄25行?2欄3行)

(1-b)
「6は底壁の中央部に円孔7を有した合成樹脂よりなる容器状の下ハウジング8と該ハウジングの上面を覆つて固定した金属板製の円板状の上ハウジング9とからなるケースで,内部に円形のコード収納室10を設けると共に一側壁に該収納室と連通する略角形(四角形状)のコード導出口11を設けている。このコード導出口11は第3図の様に対向する二辺,即ち下ハウジング8の底端壁8aと上ハウジング9の端面を外側に折曲して形成した停止片2とを平行する平坦面13,14にして夫々の突出長さを一致せしめ,又対向する他の二辺,即ち,下ハウジング8の両側壁を末広がり状の傾斜面15,15として拡開し,該傾斜面の前端を前記底端壁8aと停止片12の夫々の平坦面13,14の端面より若干の寸法lだけ突出せしめている。16は前記コード収納室10内に設けられ下面に一体にして設けた軸部17を前記円孔7に挿入し回動自在に構成した回転リール,18は一側を前記コード導出口11より導出し他側を前記コード収納室10内に導入して前記回転リール16に巻取るべく構成したコードで,一端に接続刃19,19を有し外側を弾性のある合成樹脂にてモールド成形したプラグ20を設けている。21は前記プラグ20の外周縁に嵌合し外周縁の全周囲に鍔状のリブ22を一体成形したゴム等の弾性体よりなる保護筒で,前記リブ22の外径は前記コード導出口11の傾斜面15,15の前端間の寸法よりも小さく,後端間の寸法よりも大きく設定している。」(3欄3?31行)

(1-c)
「そして,巻取り終端においては,リブ22は最初に第5図イの様にその外周部が傾斜面15,15に当たり,ついで第5図ロの様にリブ22が変形した状態で平坦面13,14に当たり,二段クッションの役目を行う。」(4欄7?11行)

(1-d)
第3図及び第5図を参照すると,リブ22の下側にもコード18を覆う部分が設けられていることがみてとれる。この部分は,保護筒21の一部とも考えられるが,必ずしも明確ではないので,少なくともリブ22の上側でコード18を覆うことが明らかな保護筒21とは区別することとし,以下,「下側カバー部」という。

上記記載事項(1-a)?(1-d)及び図面の記載によれば,引用例1には以下の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明1」という)。
「下ハウジング8と上ハウジング9からなるケースの内部にコード収納室10を設けると共に該ケースの一側壁にコード導出口11を設け,コード18の一側をコード導出口11より導出し他側をコード収納室10内に導入して回転リール16に巻取るべく構成したコード巻取装置の保護装置であって,コード18の一端に弾性のある合成樹脂にてモールド成形したプラグ20を設け,該プラグ20の外周縁に,鍔状のリブ22を一体成形したゴム等の弾性体からなりリブ22の上側でコード18を覆う保護筒21を嵌合し,さらにリブ22の下側でコード18を覆う下側カバー部を設け,コード18の巻取り終端において,リブ22がコード導出口11に設けられた末広がり状の傾斜面15,15と平坦面13,14に順次当たってリブに加わる衝撃を吸収するようにしたコード巻取装置の保護装置。」

(2)引用例2には,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)
「電源線14は,図1ないし図4に示すように,被覆線17,17を一体的に被覆しドラム体15に巻き取られる電源コード18と,この電源コード18の先端近傍に一体的に設けられたプラグとから構成され,プラグはコードプロテクタであるプロテクタ部19と,電源コード18の先端に取り付けられたプラグ本体である電源プラグ本体20とから構成されている。」(段落【0019】)
「プロテクタ部19は,例えば弾性を有する合成樹脂製で,電源コード18の先端の被覆を剥離した被覆線17の基端近傍に,射出成形などにて電源コード18の外周面を覆うように一体的に形成されている。」(段落【0020】)
「このプロテクタ部19には,長手方向の略中央が長手方向の両端から徐々に径大となるように保護部24が形成されている。さらに,プロテクタ部19には,保護部24の電気掃除機本体1側である基端側には,被覆線17を折曲させずに電源コード18の屈曲を抑制するために,格子状に形成された可撓部26が設けられている。」(段落【0021】)

(2-b)
「一方、電気掃除機本体1の本体ケース2の後面で、ドラム体15の下端に対向する位置に、後方下方に向かってらっぱ状に拡開する凹状のプラグ挿入部61が形成されている。さらに、このプラグ挿入部61には,コード巻取孔62が開口形成され,このコード巻取孔62は,電源コード18が進退自在に挿通され,周縁が電源線14のプロテクタ部19の保護部24に当接し電源プラグ本体20が挿通しないようになっている。」(段落【0033】)
上記記載事項(2-a),(2-b)及び図面の記載によれば,引用例2には以下の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明2」という)。
「ドラム体15に巻き取られる電源コード18の先端近傍に設けられ,プロテクタ部19と電源プラグ本体20から構成されるプラグであって,プロテクタ部19は弾性を有する合成樹脂製であり,プロテクタ部19には,長手方向の略中央が径大となる保護部24が形成されるとともに,保護部24の電気掃除機本体側に電源コード18の屈曲を抑制するため格子状に形成された可撓部26が設けられ,保護部24が本体ケース2に形成されたコード巻取孔62の周縁に当接して電源プラグ本体20が挿通しないようになっているプラグ。」

(3)引用例3には,図面とともに次の事項が記載されている。
(3-a)
「ブーツ本体17は,ゴム等の可撓性を有する材料で筒状に形成されており」(段落【0014】)
「ブーツ本体17の内部には,光コネクタ1側に位置し,多心光コード16を固定するための固定リング(図示せず)が取り付けられるリング収納空間20と,ブーツ本体17の後端側に位置し,多心光コード16を収納するコード収納空間21とが形成されている。」(段落【0015】)
「図4に示すように,ブーツ本体17のコード収納空間21に臨む内面22は,多心光コード16の長手方向に対して直交する方向の幅寸法よりも僅かに大きい径寸法を有する略断面円形に形成されている。そして,この内面22には,外面23,24,25の内,隣接する三面に亙って貫通する直線状の貫通溝26…26が上記長手方向に一定間隔をあけて形成されている。」(段落【0016】)

(3-b)
「図1に示すように,多心光コード16の一端が,光コネクタ1の光ファイバ引込口15に引き込まれた状態で,ブーツ本体17の後端から突出する多心光コード16にテープ面に沿った横方向(例えば,図1中矢印B方向)の曲げ力(サイドプル)が作用すると,多心光コード16の曲がりに従動して,ブーツ本体17は仮想曲線17aで示すように,一体的に湾曲・変形する。このとき,ブーツ本体17は可撓性であり,また貫通溝26が複数形成されているので,容易に変形して多心光コード16に生じる変形を緩和させるとともに,曲げ応力が特定箇所に集中することを防止する。」(段落【0019】)

3.対比・判断
引用発明1の「回転リール16」,「コード18」,「プラグ20」,「保護筒21」,「リブ22」及び「下側カバー部」は,その構造または機能からみて,それぞれ本願発明の「コードリール」,「コード」,「プラグ本体」,「プラグ下コード保護部」,「コードストッパー」及び「ストッパー下コード保護部」に相当する。
したがって,本願発明と引用発明1を対比すると,両者は,
「ケース内に回転可能に設けられたコードリールに巻取られるコードと,このコードの先端に前記コードと一体に形成されたプラグとを備え,前記プラグはプラグ本体と,このプラグ本体に前記コードを覆うように形成されたプラグ下コード保護部と,このプラグ下コード保護部の先端に設けられ前記プラグが前記ケース内に入り込むのを防ぐコードストッパーと,コードストッパーから突設されて前記コードを覆うように形成されたストッパー下コード保護部とを有することを特徴とするコード巻取装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は,ストッパー下コード保護部に複数の切り欠きを設け,コードの一部を表面に露出させるとともに,ストッパー下コード保護部の柔軟性をプラグ本体より柔軟にするのに対して,引用発明1の下側カバー部には切り欠きが設けられておらず,また,下側カバー部の柔軟性がプラグ20より柔軟であるか否か明らかでない点。

(相違点2)
本願発明は,プラグ下コード保護部に複数の切り欠きを設け,コードの一部を表面に露出させるとともに,プラグ下コード保護部の柔軟性をプラグ本体より柔軟にするのに対して,引用発明1の保護筒21には切り欠きが設けられておらず,また,保護筒21の柔軟性がプラグ20より柔軟であるか否か明らかでない点。

(相違点3)
本願発明は,プラグ下コード保護部の長さをストッパー下コード保護部の長さより長くし,ストッパー下コード保護部の長さを10mm以上としたのに対して,引用発明1では,保護筒21と下側カバー部の長さについては明らかでない点。

相違点1について検討する。
引用発明2の「保護部24」は,コード巻取孔62の周縁に当接して電源プラグ本体20が挿通しないようにするものであるから,本願発明の「コードストッパー」に相当し,引用発明2の「可撓部26」は,プロテクタ部19の一部であって,上記「保護部24」の電気掃除機本体側に設けられるから,本願発明の「ストッパー下コード保護部」に相当する。そして,この「可撓部26」は,格子状に形成されるから,その外周面からコード18の表面に向けて切り欠きが設けられることは明らかである。引用発明1の下側カバー部にこの「可撓部26」の構成を適用することは,当業者が容易になし得たことであり,その際,切り欠きの深さをコードの一部が表面に露出する程度に深いものとすることは,当業者が適宜なし得た設計事項に過ぎない。コードを覆う可撓性部材にコードの一部が表面に露出する複数の切り欠きを設けて変形を容易にすることは,引用例3にも記載されている(記載事項(3-a)及び(3-b)参照)。また,引用発明1の下側カバー部に引用発明2の「可撓部26」の構成を適用すれば,当該下側カバー部の柔軟性がプラグ20よりはるかに柔軟なものとなることは明らかである。
したがって,相違点1は,引用例2及び引用例3を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。

相違点2について検討する。
コードストッパーの上側のコード保護部に切り欠きを設けて柔軟性をもたせることは,本願明細書中に開示された特開平8-85678号公報や実願平3-57769号(実開平5-3271号)のCD-ROMに示されるように,従来からよく知られた周知技術である。切り欠きの深さをコードの一部が表面に露出する程度に深いものとすることは当業者が適宜なし得た設計事項に過ぎないこと,コードを覆う可撓性部材にコードの一部が表面に露出する複数の切り欠きを設けて変形を容易にすることは引用例3にも記載されていること,及び引用発明1の保護筒21に上記周知技術を適用すればその柔軟性がプラグ20よりはるかに柔軟なものとなるのは明らかであることは,相違点1で述べたのと同様である。したがって,相違点2は,上記周知技術及び引用例3を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。

相違点3について検討する。
本願明細書を精査しても,プラグ下コード保護部の長さをストッパー下コード保護部の長さより長くすることについては,格別な技術的意義を認めることができない。また,ストッパー下コード保護部の長さを10mm以上とするのは,ストッパー下コード保護部での柔軟性を確保するためと解されるが,引用発明2の「可撓部26」も柔軟に曲がることができるようにするものであって,長い方がより柔軟性を確保できることは明らかである。そうしてみると,プラグ下コード保護部の長さをストッパー下コード保護部の長さより長くすることも,ストッパー下コード保護部の長さを具体的に10mm以上とすることも,当業者が適宜なし得た設計事項に過ぎないというべきである。

以上のことから,本願発明は,引用例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-23 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-11 
出願番号 特願2001-198107(P2001-198107)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 コード巻取装置  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 小林 久夫  
代理人 小林 久夫  
代理人 大村 昇  
代理人 大村 昇  
代理人 木村 三朗  
代理人 木村 三朗  
代理人 佐々木 宗治  

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