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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1204627
審判番号 不服2006-9065  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2009-10-20 
事件の表示 平成 8年特許願第152221号「情報入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月22日出願公開、特開平 9-331502、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年6月13日の出願であって、原審において、平成18年3月31日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成18年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年6月7日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成18年6月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成18年6月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正事項

平成18年6月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、願書に添付した明細書(平成16年8月12日付け手続補正、及び平成17年4月18日付け手続補正により補正された明細書)の特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】 所定の被写体の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記画像を記憶する第1の記憶手段と、
第1の動作モードおよび第2の動作モードのなかからいずれか1つの動作モードを設定する第1の設定手段と、
複数種類の第1の効果音および複数種類の第2の効果音を予め記憶する第2の記憶手段と、
ユーザからの指令に基づいて、前記複数種類の第1の効果音のなかからいずれか1つの効果音を前記第1の動作モードにおける第1の動作モード効果音として設定するとともに、前記複数種類の第2の効果音のなかからいずれか1つの効果音を前記第2の動作モードにおける第2の動作モード効果音として設定する第2の設定手段と、
前記ユーザによって操作された場合、その操作に対応する動作の実行を指示する指示手段と、
前記第1の設定手段によって前記第1の動作モードが設定されているときに、前記指示手段の操作による動作の実行が指示された場合、前記第1の動作モード効果音を前記第2の記憶手段から読み出して出力し、前記第1の設定手段によって前記第2の動作モードが設定されているときに、前記指示手段の操作による動作の実行が指示された場合、前記第2の設定手段により設定されている前記第2の動作モード効果音を出力する効果音出力手段と
を備えることを特徴とする情報入力装置。」
とする補正を含むものである。

2.補正の適否についての判断

本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「出願当初明細書」という)に記載した事項の範囲内においてするものといえるかについて以下に検討する。

ア 本件手続補正後の請求項1には、
「複数種類の第1の効果音および複数種類の第2の効果音を予め記憶する第2の記憶手段と、
ユーザからの指令に基づいて、前記複数種類の第1の効果音のなかからいずれか1つの効果音を前記第1の動作モードにおける第1の動作モード効果音として設定するとともに、前記複数種類の第2の効果音のなかからいずれか1つの効果音を前記第2の動作モードにおける第2の動作モード効果音として設定する第2の設定手段」との記載(以下、「記載A」という。)がある。

イ 上記記載Aの「第1の動作モード」と「第2の動作モード」は異なるモードであり、「複数種類の第1の効果音」と「複数種類の第2の効果音」は異なるものを意味するものと解されるから、
上記記載Aは、異なる2つの動作モードのそれぞれに対して、設定する複数の効果音の組が異なるものとして2組用意されていて、その1組から1の効果音を第1の動作モード効果音として、別の組から1の効果音を第2の動作モード効果音として、それぞれ、ユーザが選択して設定することを、構成要件として少なくとも含むものものと解される。

ウ 上記記載Aに関連する出願当初明細書の記載として、以下の記載(段落0099,0102?0115)がある。
「【0099】そして、レリーズスイッチ10が操作されたとき出力される効果音(シャッタ擬音)を、そのときに設定されている圧縮率に応じて変化させるようにすることができる。例えば、ノーマルモードに設定されている場合、レリーズスイッチ10が操作されたとき、比較的低い周波数の音を出力させ、ファインモードに設定されている場合、レリーズスイッチ10が操作されたとき、比較的高い周波数の音を出力させる。勿論、音の強弱や音色を変化させるようにしてもよい。これにより、ユーザは、聴覚的に、レリーズスイッチ10を操作したことを確認するとともに、現在、設定されている圧縮率も確認することができる。」
「【0102】次に、図11乃至図17を参照して、圧縮率を設定する手順およびシャッタ擬音(レリーズ音)を設定する手順について説明する。最初に、図11に示すように、タッチタブレット6Aのメニューキー7Aをペン6Bを用いて選択すると、図12に示すような選択画面がLCD6に表示される。この画面には、例えば、「記録モード」、「再生モード」、「個人情報処理モード」、「カレンダー表示モード」、および「設定モード」等の選択項目が表示される。ここで、選択項目「設定モード」をペン6Bを用いて選択すると、図13に示すように、設定可能な項目が表示される。
【0103】その中の、例えば、項目「圧縮率」を選択すると、図14に示すような圧縮率設定画面が表示される。項目「ノーマル」は上記ノーマルモードのことであり、「ファイン」はファインモードのことである。ここで、項目「ノーマル」をペン6Bを用いて選択すると、圧縮率がノーマルモードに設定される。また、項目「ファイン」をペン6Bを用いて選択すると、圧縮率がファインモードに設定される。
【0104】一方、図13の設定モード選択画面において、項目「効果音」をペン6Bを用いて選択すると、図15に示すような効果音設定画面が表示される。項目「レリーズ音再生[A][B][R]」の文字Aは、所定の効果音Aを表し、文字Bは、所定の効果音Bを表し、文字Rは、後述するようにして、ユーザ自身が録音した音声を表している。従って、この場合、A、B、Rの中のいずれかを選択することにより、レリーズスイッチ10が操作されたときに出力される効果音を選択し、設定することができる。
【0105】また、効果音設定画面において、項目「レリーズ音録音[REC]」をペン6Bを用いて選択すると、図16に示すように、LCD6にメッセージ「録音スイッチを押してください」が表示される。このメッセージに従って、ユーザが録音スイッチ12を操作すると、図17に示すようなメッセージ「レリーズ音を入力してください」が表示されるので、ユーザは、レリーズ音として登録したい所定の音声を、マイクロホン8より入力する。マイクロホン8より入力された音声は、音声IC36において圧縮された後、音声IC36が内蔵するメモリ、あるいはメモリカード24の所定の領域に記録される。このようにして、ユーザは、レリーズ音として所望の音声を登録することができる。
【0106】これにより、図15の効果音設定画面において、項目「レリーズ音再生[A]、[B]、[R]」の中の、例えば、[R]をペン6Bを用いて選択すると、上述したようにしてユーザが入力し、登録した所定の音声が、レリーズ音として設定され、それ以降、レリーズスイッチ10が操作される度に、その音声がレリーズ音として出力されるようになる。
【0107】ところで、電子カメラ1は、例えば次のようなモードを有している。
【0108】・情報入力モード(記録モード)
・情報再生モード(再生モード)
・個人情報処理モード
・カレンダー表示モード
・設定モード
【0109】「記録モード」は、例えば、画像情報、音声情報、テキスト情報等を入力したり、あるいは、例えば、タッチタブレット6A上にペン6Bを接触させた状態で移動させることによって線画情報を入力し、メモリカード24に記録させるモードであり、「再生モード」は、メモリカード24に記録された画像情報、音声情報、テキスト情報、あるいは線画情報等を再生するモードである。
【0110】また、個人情報処理モードは、入力済みの個人情報(例えば、友人の電話番号や住所等)の閲覧、または新たな個人情報の入力を行うモードであり、カレンダー表示モードは、予定表を作成したり、それを閲覧するモードである。設定モードについては、上述したように、圧縮率を設定したり、効果音を設定するなどのように、電子カメラ1の撮影環境に対応する所定のデフォルト値を変更したり、ストロボの動作を設定するモードである。
【0111】ユーザが操作スイッチ35またはタッチタブレット6Aを操作したとき、現在のモードに対応した効果音を出力させるようにすることができる。例えば、各モードに対応した複数種類の効果音のデータを、メモリカード24または音声IC36が内蔵するメモリ等に予め記憶させておく。そして、操作スイッチ35またはタッチタブレット6Aが操作されたとき、音声IC36は、その時点での電子カメラ1のモードに対応する効果音をメモリカード24または内蔵するメモリより読み出し、スピーカ5より出力させる。
【0112】例えば、各モード毎に、対応する効果音の周波数や長さを変化させたり、あるいは音色や強弱を変化させることができる。また、それらを組み合わせて変化させることもできる。例えば、「記録モード」の場合、700Hzの「ピッ」という音を出力させ、「再生モード」の場合、「記録モード」の場合の700Hzに対して1オクターブ低い周波数である350Hzの「プッ」という音を出力させる。また「個人情報処理モード」の場合、1400Hzの「ピン」という音を出力させ、「カレンダー表示モード」の場合、1400Hzの「カーン」という音を出力させる。さらに、「設定モード」の場合、700Hzの「ポッ」という音を出力させる。
【0113】このようにして、各モードにおいて、タッチタブレット6Aや操作スイッチ35が操作されたときに出力される効果音が自動的に変化するようにすることにより、ユーザは、例えば、暗い場所で電子カメラ1を操作する場合でも、いまどのモードにあるのかを聴覚的に認識することができ、操作ミスを抑制することができる。
【0114】また、連写モード切り換えスイッチ13によって設定されている現在の連写モードに応じて、レリーズスイッチ10が操作されたときに出力されるレリーズ音(シャッタ擬音)を変化させるようにすることもできる。例えば、連写モードが高速連写モード(Hモード)に設定されているとき、レリーズスイッチ10が操作されると、比較的高い周波数のレリーズ音を出力し、連写モードが低速連写モード(Lモード)に設定されているとき、比較的低い周波数のレリーズ音を出力するようにする。また、連写モードがSモード(1コマずつ撮影するモード)に設定されているとき、さらに低い周波数のレリーズ音を出力するようにする。
【0115】これにより、ユーザは、レリーズスイッチ10を操作したとき、いま、どの連写モードに設定されているかを聴覚的に認識することができる。」

エ 上記ウの記載によれば、
モードには、「情報入力モード(記録モード)」「情報再生モード(再生モード)」「個人情報処理モード」「カレンダー表示モード」「設定モード」があること(段落0108)、
複数種類の効果音のデータを、メモリカード24または音声IC36が内蔵するメモリ等に予め記憶させておき、ユーザが操作スイッチ35またはタッチタブレット6Aを操作したとき、現在のモードに対応した効果音を、上記メモリより読み出して出力させること(段落0111)、
画像情報の入力を行う「レリーズスイッチ10」の「操作」をしたときに出力される効果音を、ユーザが、複数種類の効果音のなかからいずれか1つの効果音を選択して設定すること(段落0102?0106)、
その「レリーズスイッチ10」の「操作」は、画像情報を入力するための操作であるから、上記モードの1つである「情報入力モード(記録モード)」中の操作といい得ること、
が記載されているということができ、
これらのことから、
操作をしたとき、いまどのモードにあるのかを聴覚的に認識することができるように、現在のモードに対応した異なる効果音を出力すること、
ユーザからの指令に基づいて、複数種類の効果音から、所定の動作モード(記録モード)における、特定の処理(「レリーズスイッチ10」の「操作」に対応する処理)に対応する効果音を設定する手段は記載されているといえる。

しかし、上記ウの記載から上記イ、すなわち、異なる2つの動作モードのそれぞれに対して、設定する複数の効果音の組が異なるものとして2組用意されていて、その1組から1の効果音を第1の動作モード効果音として、別の組から1の効果音を第2の動作モード効果音として、それぞれ、ユーザが選択して設定すること、までは、導くことはできない。
したがって、上記記載Aが、出願当初明細書の上記段落0099,0102?0115に記載されていたとはいえず、同段落の記載から自明の事項ともいえない。

そして、これら段落以外の出願当初明細書の記載をみても、上記記載Aが記載されているといい得るまでの記載もない。

したがって、上記記載Aを含む本件手続補正は、出願当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入しないものではなく、出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものとはいえない。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について

平成18年6月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下することとなったので、本願の請求項1?4に記載の発明は、平成17年4月18日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-10-05 
出願番号 特願平8-152221
審決分類 P 1 8・ 561- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
P 1 8・ 536- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 奥村 元宏
岩井 健二
発明の名称 情報入力装置  
代理人 稲本 義雄  

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