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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1204849
審判番号 不服2006-8705  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-01 
確定日 2009-10-05 
事件の表示 特願2002-163432「撮像装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 13349〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成14年6月4日の出願であって、平成18年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年5月1日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年5月31日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月31日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月31日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「印刷装置と接続して当該印刷装置により画像の印刷を行わせることができる撮像装置であって、
前記印刷装置を用いた画像印刷のための印刷条件を設定するための選択項目を含む画面を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記画面に基づくキー操作に応じて印刷条件を選択する選択手段と、
前記印刷装置と接続することにより、当該印刷装置及び前記撮像装置に実装されているアプリケーションによる前記印刷装置との通信制御を開始し、前記印刷装置の複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして取得する機能情報取得手段と、
前記機能情報取得手段により取得した前記スクリプトファイルに表記される前記選択項目の内、前記選択手段で選択可能な印刷条件の選択項目を決定し、当該決定した選択項目を選択可能に表示すべく前記表示手段の表示を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記印刷装置が有している機能情報として、複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した情報を前記印刷装置から入力する入力手段」を「前記印刷装置と接続することにより、当該印刷装置及び前記撮像装置に実装されているアプリケーションによる前記印刷装置との通信制御を開始し、前記印刷装置の複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして取得する機能情報取得手段」と限定し、「前記入力手段により入力された前記スクリプトファイル」を「前記機能情報取得手段により取得した前記スクリプトファイル」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平10-173833号公報」(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像処理システムに関し、より具体的には、撮像装置のような画像ソースの出力する画像情報を、当該画像ソースとは別体のプリンタから出力させる画像処理システムに関する。」(第3頁)

「【0021】図5は、カメラ10における動作のフローチャートを示す。カメラ10のCPU20はまず、赤外線I/F16(のIrDA通信制御回路42)にプリンタ12の赤外線I/F18と通信を開始するように指示する。この通信は、IrDAで定められている通信プロトコルに基づいて行なわれる。IrDAの赤外線通信は赤外線を利用した半二重通信であり、データを双方向で通信できる。カメラ10の赤外線I/F16とプリンタ12の赤外線I/F18との間で通信コネクションを設定する(S1)。この後は、設定された通信コネクションを利用して、ディジタルカメラ10とプリンタ12との間で双方向の通信が可能となる。
【0022】カメラ10は、プリンタ12に対して、プリントデータ変換ソフトウエアの送信を要求し(S2)、そのプリントデータ変換ソフトウエアの受信開始を待つ(S3)。プリントデータ変換ソフトは、ディジタルカメラ10のCPU20上で動作し、ディジタルカメラ10のフラッシュメモリ26に記憶されている画像データを、プリンタ12がプリント出力可能な形式のデータ(即ち、プリントデータ)に変換するソフトウエアである。プリントデータ変換ソフトウエアは、プリントする際の各種のモード設定に関するプログラムを具備し、また、そのためのユーザ・インターフェースも具備する。
【0023】プリントデータ変換ソフトウエアの受信を開始して(S3)、受信を完了すると(S4)、受信したプリントデータ変換ソフトウエアをフラッシュ・メモリ26に記憶する(S5)。そして、フラッシュ・メモリに記憶したプリントデータ変換ソフトウエアを起動する(S6)。いうまでもないが、プリントデータ変換ソフトウエアは、カメラ10のCPU20上で動作可能な形式で記述されている。
【0024】起動されたプリントデータ変換ソフトウエアは、液晶制御回路36にプリントモード設定用ダイヤログのデータを送り、液晶表示パネル34にプリントモード設定用ダイヤログを表示させる(S7)。プリントモード設定用ダイヤログの一表示例を図7に示す。図7では、HQモードとHSモードの何れか一方を選択するダイヤログになっている。HQモードは高品位(低速)印刷を指示するモードであり、HSモードは高速(定品位)印刷を指示するモードである。
【0025】この状態で、CPU20は、操作スイッチ38b,38c,38dの操作状況を監視し(S8)、入力を待つ(S9)。操作スイッチ38b,38c,38dの操作が、HQモードの選択を示す場合(S10)、フラッシュ・メモリ26に記憶されるプリントすべき像データをHQモードのプリントデータに変換し(S11)、HQモードが選択されなかった場合には、HSモードが選択されたことになるので、フラッシュ・メモリ26に記憶されるプリントすべき画像データをHSモードのプリントデータに変換する(S12)。どちらの場合も、得られたプリントデータは、一時的にフラッシュ・メモリ26又はRAM24に記憶される。」(第5頁)

「【0033】このように、ディジタル・カメラ10とプリンタ12との間で赤外線通信することにより、ディジタル・カメラ10から直接、プリンタ12にデータを送り、プリントアウトさせることができる。
【0034】上記実施例では、プリント・モードとしてHQモードとHSモードを選択できるようにしたが、本発明は、このような2つのモードに限定されないことは明らかである。例えば、インク・ジェット・プリンタでは、画像データをプリントするときには擬似中間調処理を行なう必要がある。この擬似中間調処理には、ED法(誤差拡散法)及びディザ法など、いくつかの種類がある。HQモードとHSモードの選択ダイヤログと同様のダイヤログにより擬似中間処理を選択できるようにすればよい。図8は、ED法又はディザ法を設定するダイヤログの一例を示す。
【0035】更には、カラーマッチングを設定できるようにしてもよく、種々の条件を設定するのに、液晶表示パネル34にそれら条件を設定するダイヤログを表示し、スイッチ38b,38c,38dによりユーザに所望の条件を設定させればよい。」(第6頁)

「【0041】本実施例ではまた、プリンタ12にセットされている用紙の大きさに合わせて画像を変バしてプリントアウトすることもできる。図11及び図12は、そのカメラ10側の動作フローチャートを示す。
【0042】S61?S66は図5のS1?S6と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0043】プリントデータ変換ソフトウエアを起動した後(S66)、液晶表示パネル34にプリント・モード設定用ダイヤログを表示する(S67)。
【0044】ここのでプリント・モード設定用ダイヤログの一例を図13に示す。用紙サイズを無視して規定のサイズで画像を印刷する等倍印刷モード又は用紙サイズに合わせて自動変倍して印刷する自動変倍モードを選択でき、用紙サイズに関しても、セットされている用紙サイズ(複数ある場合には、通常利用するとして設定されている用紙サイズ)に設定する用紙自動設定、手動設定の場合に複数の用紙サイズ(図13では、A4、B5及びA5)を選択できる。」(第6?7頁)

「【0050】以上の実施例では、プリンタ12からカメラ10にプリントデータ変換ソフトウエアを転送するので、種々のプリンタ12に幅広く対応でき、プリンタ12が新たな機能を具備する場合には、その新たな機能を即座に享受できるという利点がある。勿論、プリントデータ変換ソフトウエアを予めカメラ10に装備するようにしてもよい。その際、プリントデータ変換ソフトウエアをフラッシュ・メモリ26でなく、ROM22に格納してもよい。」(第7頁)

「【0056】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解できるように、本発明によれば、以下のような効果がある。
【0057】カメラからプリンタに直接、プリントデータを送信するので、中間にコンピュータが不要になる。つまり、プリントデータ作成のためのコンピュータが不要となり、あらためて購入する必要もなく、また、プリントアウトの作業も簡便化できる。
【0058】プリンタからカメラにプリントデータ変換ソフトウエアを必要時に転送するようにすることで、カメラに多種類のプリンタに対応するプリントデータ変換ソフトウエアを装備する必要が無くなり、メモリなどを有効に活用できる。
【0059】また、プリントデータ変換ソフトウエアを必要時に外部(例えば、プリンタ及びコンピュータなど)からロードする構成を採用することで、種々のプリンタに幅広く対応できるようになり、しかも、プリンタの最新の機能を即座に利用できるようになる。」(第7頁)

これら引用刊行物1の記載から、引用刊行物1には、プリンタからディジタルカメラにプリントデータ変換ソフトウエアを転送するため、種々のプリンタに幅広く対応でき、プリンタが新たな機能を具備する場合には、その新たな機能を即座に享受できるという利点を有する、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「プリンタに接続して当該プリンタにより画像データをプリントアウトさせることができるディジタルカメラであって、
前記プリンタを用いた画像データのプリントアウトのためのプリントモード設定用のダイヤログを表示する液晶表示パネルと、スイッチを有し、
プリントモード設定用のダイヤログを表示することにより、印刷品位(速度)の選択、用紙サイズの選択等の設定が可能であり、
ディジタルカメラとプリンタは赤外線通信により通信を開始し、通信コネクションが設定されると、ディジタルカメラとプリンタとの間で双方向の通信が可能となり、
ディジタルカメラはプリンタに対してプリントデータ交換ソフトウエアの送信を要求し、プリントする際の各種のモード設定に関するプログラム及び、そのためのユーザインターフェースを具備するプリントデータ変換ソフトウエアをプリンタから受信し、
該プリントデータ変換ソフトウエアは液晶制御回路にプリントモード設定用ダイヤログのデータを送って液晶表示パネルにプリントモード設定用ダイヤログを表示し、
ユーザはスイッチによりプリントモード設定用ダイヤログに表示された選択肢から所望の条件を選択することができる、
ディジタルカメラ。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平10-240460号公報」(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0034】
【発明の実施の形態】以下,図1?図17を参照して,本発明に係るサービス提供システムをプリントシステムに適用した好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0035】図1は,本実施の形態に係るプリントシステムの概略構成例を示す図である。図1に示すプリントシステム1は,印刷データ及び当該印刷データを印刷するための印刷条件を含む印刷ジョブを送出する複数のワークステーション(クライアント)2と,印刷データを印刷する複数のプリンタ(サービス提供装置)4と,並びに,送出された印刷ジョブに基づいて前記複数のプリンタから1のプリンタを選択するホストコンピュータ(サーバ)3とで構成されている。これらワークステーション2,ホストコンピュータ3,及びプリンタ4は,ネットワーク(伝送路)5を介して通信回線に接続されている。
【0036】なお,ネットワーク5は,LAN,公衆回線網や,専用回線網等のいずれを用いても良い。また,通信方式は有線方式若しくは無線方式のいずれでも良い。
【0037】ワークステーション2は,作成した文書に対応した印刷データ及びこの文書を印刷するために設定した印刷条件(装置の選択や,紙や給排紙トレイの選択,両面印刷の設定,コピー部数,解像度の設定,完了要求時刻等)を印刷ジョブとしてホストコンピュータ3に送出する。
【0038】ホストコンピュータ3は,自己が管理する全てのプリンタ4の調整プリンタ機能情報を取得し,プリンタ機能リストを作成する(以下,「プリンタ機能リスト作成処理」と称する)。また,ホストコンピュータ3は,ワークステーション2から送出された印刷ジョブをチェックして,最適な1のプリンタ4を選択して当該選択したプリンタ4に印刷ジョブを送出する(以下,「プリンタ選択処理」と称する)。
【0039】プリンタ4は,ホストコンピュータ3から送出される印刷ジョブに従って印刷データの印刷を行う。具体的には,プリンタ4は,印刷ジョブに含まれる印刷条件(紙サイズ,給排紙トレイ,両面,コピー部数など)に従って,印刷ジョブに含まれる印刷データで定義される印刷内容を紙などのメディアに印刷する。また,プリンタ4は,機能問い合わせ要求を受信した場合に,自己のプリンタ内の各機能情報を取得し,この自己の機能情報を調整した調整プリンタ機能情報をホストコンピュータ3に送信する(以下,「プリンタ機能応答処理」と称する)。」(第6頁)

「【0062】次に,プリントシステム1の動作を説明する。
【0063】以下,図7?図12を参照して,ホストコンピュータ3のCPU34の制御により実行されるプリンタ機能リスト作成処理及びプリンタ4のCPU42の制御により実行されるプリンタ機能応答処理を説明する。
【0064】図7は,ホストコンピュータ3のCPU34の制御により実行されるプリンタ機能リスト作成処理及びプリンタ4のCPU42の制御により実行されるプリンタ機能応答処理を説明するためのフローチャートである。図10?図12は,上記プリンタ機能応答処理における競合プリンタ機能調査処理(ステップP3)の内容を説明するためのフローチャートである。図13は,上記プリンタ機能応答処理における自己機能調整処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】図7において,ホストコンピュータ3の電源が投入されると,ハードディスク35に格納されているプリンタリスト(図4参照)を参照して,各プリンタ4の調整プリンタ機能情報を取得すべく,各プリンタに機能問い合わせ要求を送信する(ステップS1)。」(第8頁)

「【0072】ステップP7では,プリンタ4は,自己機能調整処理を実行して,選択した対抗プリンタの機能情報と自己の機能情報とを比較して,自己の機能情報を調整(修正)して,自己の実際の機能よりも優れた機能を示し,且つ選択した対抗プリンタと同等若しくはそれ以上の機能を示す調整プリンタ機能情報を生成する。この自己機能調整処理の詳細な内容は後述する。次いで,プリンタ4は,調整プリンタ機能情報を含むプリント機能問い合わせ応答を,ホストコンピュータ3に送出する(ステップP8)。
【0073】なお,図9は,プリント機能問い合わせ応答のデータ形式の一例を示す図である。図9に示す如く,プリンタ機能問い合わせ応答は,テキストファイル形式となっており,1行はパラメータ名と0個以上のパラメータの値で構成される。また,パラメータ名とパラメータの値はスペースやタブなどのホワイトスペースで区切られており,“#”で始まる行はコメントであり,プリントシステム1では無視される。また,プリンタ機能問い合わせ応答に含まれる調整プリンタ機能情報には,両面機能の有無,印刷速度,解像度,カラー印刷の有無,搭載しているメディア(紙など),サポートしているページ記述言語等の情報が含まれる。
【0074】さて,再び図7において,ホストコンピュータ3は,プリンタ4から送出されるプリンタ機能問い合わせ応答を受信すると(ステップS2),このプリンタ機能問い合わせ応答に含まれる調整プリンタ機能情報に基づいて,上記図5に示したようなプリンタ機能リストを作成する(ステップS3)。図5に示す如く,このプリンタ機能リストは,図4に示したプリンタリストに調整プリンタ機能情報を追加した形態となっている。すなわち,ホストコンピュータ3はプリンタリストに,調整プリンタ機能情報を順次追加することによりプリンタ機能リストを作成するのである。」(第8?9頁)

「【0080】ステップP13では,プリンタ4は,競合プリンタの印刷に関する機能情報を取得するために,プリンタリストから読み出したプリンタの情報に基づいて,競合プリンタに所定データ形態の機能問い合わせ要求を送信する。この機能問い合わせ要求を受信した競合プリンタは,自己の印刷に関する各種の機能情報を検出して,要求元のプリンタ4に,自己の印刷に関する各種の機能情報を含む機能問い合わせ応答を送信することになる。なお,この機能問い合わせ応答のデータ形式は図9で示したデータ形式と同様の形式とすることができる。」(第9頁)

これら引用刊行物2の記載から、引用刊行物2には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「印刷ジョブをプリンタに送信するホストコンピュータからの要求に応じて、プリンタが当該プリンタの調整プリンタ機能情報をテキストファイル形式でホストコンピュータに送信すること。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「プリンタ」、「ディジタルカメラ」、「スイッチ」、及び「液晶表示パネル」は、それぞれ、本願補正発明の「印刷装置」、「撮像装置」、「キー」、及び「表示手段」に相当する。
また、引用発明は表示手段(液晶表示パネル)に表示されるプリントモード設定用のダイヤログを表示することにより、ユーザはスイッチにより印刷品位(速度)の選択、用紙の選択等の表示された選択肢から所望の条件を選択することができるから、引用発明の印刷品位(速度)の選択、用紙の選択等の表示された「選択肢」は、本願補正発明の印刷条件を設定するための「選択項目」に相当し、引用発明は本願補正発明のキー操作に応じて印刷条件を選択する「選択手段」に相当する手段を有しているということができる。
また、引用発明は、撮像装置(ディジタルカメラ)と印刷装置(プリンタ)が赤外線通信により通信を開始し、通信コネクションが設定されると撮像装置と印刷装置との間で双方向の通信が可能となり、撮像装置は印刷装置に対してプリントデータ交換ソフトウエアの送信を要求し、プリントデータ変換ソフトウエアを印刷装置から受信しており、引用発明の「赤外線通信により通信を開始し、通信コネクションが設定」されることは、本願補正発明の撮像装置と印刷装置の「接続」に相当し、引用発明の撮像装置と印刷装置との間の通信が撮像装置及び印刷装置に設けられたソフトウエアにより行われることは当然のことであるから、引用発明の撮像装置及び印刷装置に設けられた「ソフトウエア」は、本願補正発明の印刷装置及び撮像装置に実装された「アプリケーション」と「ソフトウエア」である点で共通する。
また、引用発明の撮像装置は、印刷装置からプリントする際の各種のモード設定に関するプログラム及び、そのためのユーザインターフェースを具備するプリントデータ変換ソフトウエアを受信し、該プリントデータ変換ソフトウエアは液晶表示パネルにプリントモード設定用ダイヤログを表示してユーザがスイッチによりプリントモード設定用ダイヤログに表示された選択肢から所望の条件を選択することができるようにしているから、引用発明は、本願補正発明の印刷装置の複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を取得する「機能情報取得手段」及び、選択項目を選択可能に表示すべく表示手段の表示を制御する「表示制御手段」に相当する手段を有しているということができる。

したがって、両者は
「印刷装置と接続して当該印刷装置により画像の印刷を行わせることができる撮像装置であって、
前記印刷装置を用いた画像印刷のための印刷条件を設定するための選択項目を含む画面を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記画面に基づくキー操作に応じて印刷条件を選択する選択手段と、
前記印刷装置と接続することにより、当該印刷装置及び前記撮像装置に実装されているソフトウエアによる前記印刷装置との通信制御を開始し、前記印刷装置の複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目の機能情報を取得する機能情報取得手段と、
前記機能情報取得手段により取得した選択項目を選択可能に表示すべく前記表示手段の表示を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願補正発明は、印刷装置及び前記撮像装置に実装されているアプリケーションによる前記印刷装置との通信制御を開始しているのに対して、引用発明は、印刷装置及び前記撮像装置に実装されているソフトウエアによる前記印刷装置との通信制御を開始している点。

相違点2
本願補正発明は、機能情報取得手段が1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして取得するのに対して、引用発明の機能情報取得手段は、プリントする際の各種のモード設定に関するプログラム及び、そのためのユーザインターフェースを具備するプリントデータ変換ソフトウエアをプリンタから受信することにより印刷装置の機能情報を取得しているが、機能情報取得手段が1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして取得するものではない点。

相違点3
本願補正発明は、スクリプトファイルに表記される前記選択項目の内、前記選択手段で選択可能な印刷条件の選択項目を決定し、当該決定した選択項目を選択可能に表示すべく表示を制御しているのに対し、引用発明は選択項目を選択可能に表示してるが、選択手段で選択可能な印刷条件の選択項目を決定し、当該決定した選択項目を選択可能に表示しているのかどうか必ずしも明らかではない点。

(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
通信等をアプリケーションで行うことは周知であって引用発明のソフトウエアをアプリケーションとすることは当業者が必要に応じて適宜になし得ることである。

相違点2について
相違点2に関し、「スクリプトファイル」の記載の意味は必ずしも明確ではないが、本願明細書の段落【0042】?【0045】、【0084】?【0085】、【0101】? 【0102】、図12、図28(A)等の記載(それらの記載自体、必ずしも明確ではないが。)から、テキストファイル、あるいはXMLファイルを意味しているものと認められる。
そして、引用刊行物2、特開2002-91841号公報(従来の技術を記載した段落【0002】?【0004】にはデジタルカメラ,テレビ等の機器の属性等を記述したXML文書を当該機器から読み出し、他の機器で利用することが記載されている。)、特開2002-95071号公報(段落【0018】には、デジタルカメラ等の機器の属性等をXML文書形式で記述して、ネットワークを介して他の機器で当該XML文書の情報を利用することが記載されている。)、国際公開第01/037101号(第17頁、第19頁、第22頁第3?5行、には、プリンタから送信された、XMLで記述されたプリンタの機能定義をスキャナあるいは電子スチルカメラで受信することが記載されている。)に記載されているように、機器の機能情報等をテキストファイル、あるいは、XMLファイルにより送信することは周知であるから、引用発明の機能情報取得手段が取得する情報を1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして相違点2に係る構成とすることは周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。

相違点3について
選択項目を表示する場合に、選択可能な項目を決定して表示することは、特開平7-288621号公報(段落【0055】?【0057】)、特開2002-44344号公報(段落【0092】?【0093】)に記載されているように周知であるから、引用発明の表示制御手段に当該周知技術を適用して、表示手段により、前記スクリプトファイルに表記される前記選択項目の内、前記選択手段で選択可能な印刷条件の選択項目を決定し、当該決定した選択項目を選択可能に表示すべく前記表示手段の表示を制御することは当業者が周知技術に基づいて容易になし得ることである。

そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年5月31日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年1月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「印刷装置と接続して当該印刷装置により画像の印刷を行わせることができる撮像装置であって、
前記印刷装置を用いた画像印刷のための印刷条件を設定するための選択項目を含む画面を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記画面に基づくキー操作に応じて印刷条件を選択する選択手段と、
前記印刷装置が有している機能情報として、複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した情報を前記印刷装置から入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された前記スクリプトファイルに表記される前記選択項目の内、前記選択手段で選択可能な印刷条件の選択項目を決定し、当該決定した選択項目を選択可能に表示すべく前記表示手段の表示を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「前記印刷装置が有している機能情報として、複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した情報を前記印刷装置から入力する入力手段」を「前記印刷装置と接続することにより、当該印刷装置及び前記撮像装置に実装されているアプリケーションによる前記印刷装置との通信制御を開始し、前記印刷装置の複数種類の機能それぞれについて選択可能な選択項目を1つのスクリプトファイルに表記した機能情報を前記印刷装置が有するオブジェクトとして取得する機能情報取得手段」と限定し、「前記入力手段により入力された前記スクリプトファイル」を「前記機能情報取得手段により取得した前記スクリプトファイル」と限定する補正を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-10 
審決日 2009-08-21 
出願番号 特願2002-163432(P2002-163432)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 近藤 聡
圓道 浩史
発明の名称 撮像装置及びその制御方法  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  

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