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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1205572 |
審判番号 | 不服2007-27283 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-04 |
確定日 | 2009-10-15 |
事件の表示 | 特願2003-343266「化粧料の品質管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開、特開2005-106731〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年10月1日にされた特許出願(平成15年特許願第343266号。以下「本件出願」という。)につき、平成19年8月31日付けで拒絶査定(発送日:同年9月4日)されたところ、拒絶査定不服審判が同年10月4日に請求されたものである。 第2 本件出願に係る発明 本件出願の請求項1?7に係る発明は、本件出願時の特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。 「【請求項4】 少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力を測定することを特徴とする液状又は半固形状化粧料の性能評価方法。」 第3 引用刊行物の記載 (3A)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平11-281559号公報、以下「引用刊行物A」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審により付加されたものである。以下、同様である。) (3A-1)「【請求項6】(a)移動方向に直交する水平軸Zを中心とする円弧面を下面に有する接触子と、該接触子を前記水平軸Zを中心に転動可能に支持する保持具とからなるプローブと、を準備し、(b)水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、(c)プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定し、(d)その転動力の変化から液体の特性を評価する、ことを特徴とする液体のべたつき評価方法。」 (3A-2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、人間の感性に頼る官能試験に代えて、液体のべたつきを客観的に評価するための特性評価装置及び方法に関する。」 (3A-3)「【0009】更に、本願発明の発明者等は、化粧品のべたつき感を再現し定量的に計測するために、レオメータを用いてその粘着力を計測したが、後述するように、計測された粘着力はデータのバラツキが大きくて再現性が低く、かつ官能試験による人間の感覚との相関性がほとんどなかった。従って、従来の手段では、化粧品のべたつき感を客観的に評価するには、測定精度が低く、データのバラツキが大きくて再現性が低く、かつ官能試験による人間の感覚との相関性が低い問題点があった。」 (3A-4)「【0021】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。 図1は、本発明の液体の特性評価装置の全体構成図である。この図に示すように、本発明の液体特性評価装置10は、可動プレート12、プローブ14、弾性部材16、プローブ押付装置18、往復動装置20、及び、測定装置22を備えている。 【0022】可動プレート12は、往復台21の上面に固定され、この往復台21は、往復動装置20により、水平方向(この図で左右)に往復動するようになっている。この往復動装置20は、この例では、サーボモータ20a、ボールネジ20b、ボールナット20c等で構成され、サーボモータ20aによりボールネジ20bを回転駆動し、ボールナット20cを取り付けた往復台21を往復動させて、可動プレート12とプローブ押付装置18とを相対的に水平に往復動させるようになっている。更に、この装置では、図に示すように、可動プレート12と往復台21との間に温度制御器13を挟持し、可動プレート12の温度を制御するようになっている。 【0023】なお、本発明はこの構成に限定されず、反対に可動プレート12を固定し、プローブ押付装置18を往復動させるように構成してもよい。また、可動プレート12を円盤状に構成し、図6(C)のように、可動プレートを同一方向に連続的に移動させてもよい。 【0024】プローブ押付装置18は、弾性部材16の上端を挟持する挟持金具18aと、挟持金具18aに下端が固定され上方に延びた案内軸18bと、案内軸18bを上下動可能に案内する軸受部18cと、案内軸18bを上方に付勢する付勢手段18dと、案内軸18bに同心に載せられこれを下方に押し付けるウエイト19と、からなり、弾性部材16の上端を挟持しこれを下向きに押し付けるようになっている。 【0025】挟持金具18aは、弾性部材16の上端を下方から挿入するスリットと、このスリットの間隔を調整するネジ部材(例えばボルト、図示せず)を有し、スリットの間で弾性部材16の上端を強固に挟持する。軸受部18cは、固定部分17a(例えば装置本体)に取り付けられ、その内部に図示しない軸受を有し、非常に小さい抵抗で案内軸18bが上下動するように案内する。また、案内軸18bは、軸受部18cの上部に鍔部を有し、この鍔部に切欠きを有するウエイト19を同心に載せるようになっている。更に、付勢手段18d(例えば、引張バネ)が、固定部分17bと案内軸18bとの間に引張状態で取り付けられ、案内軸18bを上方に付勢している。 【0026】この構成により、付勢手段18dとウエイト19とにより、正確な下向き垂直力を挟持金具18aに作用させ、弾性部材16が変形してプローブが傾いても、プローブに常に正確な下向き垂直力Fを作用させることができる。 【0027】 図2(A)は、図1のA部拡大図であり、(B)はその側面図である。図1及び図2に示すように、可動プレート12は水平な上面12aを有し、この上面にプローブ14が接触する。弾性部材16は、この例では、プローブ移動方向(図1の左右方向)に両面を有する弾性平板(例えばバネ板)であり、その下端がプローブ14に固定され、上方に延び、その上端が挟持金具18aに固定されている。 【0028】更に、図2に示すように、プローブ14は、プローブ移動方向に直交する水平軸Zを中心とする円弧面に下面が形成された接触子14aと、接触子14aを水平軸Zを中心に転動可能に支持する保持具14bとからなる。この例において、接触子14aは、水平軸Zを中心とする円筒形である。この構成により、可動プレート12を往復動させる場合ばかりでなく、一方向に連続的に移動させる場合にも適用することができる。」 (3A-5)「【0037】更に、本発明によれば、上下方向に延びた弾性部材16の下端にプローブ14が固定され、その弾性部材16を介してプローブが下向きに押付けられるので、転動抵抗Rにより弾性部材16が弾性変形してプローブ14が傾いても、プローブの円弧面と可動プレート12との接触部の形状変化がなく、その間に作用する垂直力も一定に保持される。従って、測定精度を高めるため弾性部材の剛性を下げる(例えば弾性平板にする)ことにより、精度を大幅に向上させることができる。更に、プローブ14が傾いても、測定精度に影響しないことから、プローブの上下動抵抗を小さくして追従性を高めることができ、かつプローブの引っ掛かりが生じないことから、データの再現性が大幅に向上する。従って、指で直接肌に塗る化粧品(例えば乳液)のようなデリケートな液体の場合でも、これとの相関性が高い転動抵抗の変化から、人間の感性に頼る官能試験に代えて、その特性を客観的に評価することができる。」 (3A-6)「【0038】 【実施例】 以下、本発明の液体特性評価装置を用いた実施例を説明する。表1は、液体供試体すなわち測定サンプルの官能評価比較である。この測定サンプルとしては、2種の乳液を使用した。 ・・・ 【0040】(比較例1)まず、市販のレオメータを用いて乳液Aの粘着力を測定した。すなわち、サンプル20μLをステージ中心に滴下し、円盤状プローブ(15mmφ)を下降させて、200gの荷重がかかるようにステージに接触させた。その後、プローブを2cm/minの速度で上昇させ、ステージからプローブが離れる際の抵抗力(粘着力)を測定した。これを2分毎に繰り返して、経時的に粘着力を測定した。 【0041】 図4は、レオメータによる粘着力の測定結果である。この図において、横軸は接触回数、縦軸は粘着力の相対値を示し、図中の白丸と黒丸は2回の測定結果を示している。この図から、レオメータによる測定では、計測された粘着力はデータのバラツキが大きくて再現性が低く、かつ表1に示した官能試験による人間の感覚との相関性がほとんどないことがわかる。 【0042】(実施例1) 次に、本発明の装置(図1及び図2に示した装置)を用い、乳液A,Bのべたつき力(粘着力)を測定した。使用した接触子14aは、ポリプロピレン製であり、その寸法は、直径10mm、接触幅15mmである。また、摺動速度1.2cm/s、摺動ストローク20mm、サンプル量20μL、ステージ温度32℃、室温25℃、相対湿度50%であり、ファン及びフィルムは使用せずに実施した。 【0043】 図5は、得られた転動抵抗の測定データ例である。この図において、横軸は往復回数、縦軸は応力の相対値であり、図中の黒丸と白丸はそれぞれ乳液A,Bを示している。なお、この図では縦軸を応力の相対値としているが、転動抵抗の相対値であっても同様の図となる。この図から、図5のAのデータは、「はじめはさっぱりしているが乾燥する際に少しべたつく」、測定サンプルAの官能評価をよく再現しており、同様にBのデータは、「さっぱりしていてべたつかない」、サンプルBの官能評価をよく再現していることがわかる。」 上記摘記事項(3A-1)?(3A-6)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、 「移動方向に直交する水平軸Zを中心とする円弧面を下面に有する接触子と、 該接触子を前記水平軸Zを中心に転動可能に支持する保持具とからなるプローブと、を準備し、 水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、 プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定し、 その転動力の変化から乳液のような化粧品の液体の特性を評価するべたつき評価方法。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3B)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(実願平3-25625号(実開平4-120362号)のマイクロフィルム、以下「引用刊行物B」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3B-1)「【0001】 【産業上の利用分野】本考案は、インキの粘着性(タック値)の測定やミスチングの測定を行うインコメータに関するものである。」(3頁2?5行) (3B-2)「【0008】 【実施例】 以下、本考案の好適な一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。 図1及び図2に示されているように、本実施例のインコメータ1のインコメータ本体1aの略中央部には、金属ローラ2が設けられている。この金属ローラ2には駆動装置(図示せず)が備えられており、一定の速度で回転駆動されるようになっている。また、この金属ローラ2には、これを一定の温度に保持するための、サーモスタット等を備えた加温装置(図示せず)が備えられている。 【0009】 この金属ローラ2の上部には、これに接触するようにゴムローラ3が設けられており、該ゴムローラ3は金属ローラ2との摩擦力により共に回転するようになっている。 また、上記金属ローラ2の前部には、これに接触して振動を該金属ローラ2に付与するバイブレーションローラ4が設けられている。 ・・・ 【0012】 本実施例のインコメータ1にあっては、駆動装置により回転駆動される金属ローラ2の上部に、上記ゴムローラ3が接触して共回りしている。上記金属ローラ2の駆動軸は上記駆動装置に連結されているため固定されているが、上記ゴムローラ3の駆動軸は上記トルク調整アーム5によって分銅及びカウンターウェイトとつながっており、上記金属ローラ2の駆動軸を中心として自由に回転することができる。上記金属ローラ2とゴムローラ3との間にインキを付けないで上記金属ローラ2を回転させたとき、上記分銅は通常の位置で平衡状態にある。しかし、インキピペット(図示せず)により、上記金属ローラ2とゴムローラ3との間に一定量のインキを与えると、インキのタックにより上記ゴムローラ3にトルクが作用し、上記トルク調整アーム5は傾く。そして、このトルク調整アーム5の分銅をスライドさせて、該トルク調整アーム5を通常時の状態に平衡させて分銅の位置されている目盛りを読み、この値をタック値とするものである。」(4頁16行?6頁4行) 第4 対比・判断 (4-1)本願発明と引用発明とを対比する。 (i)本件出願の当初明細書の段落【0012】、及び【0017】には、それぞれ「「試料が伸長及び/または分裂する際にロール軸に発生する両ロール軸を含む平面に垂直方向の力」とは、・・・印刷インキにおけるいわゆるタック値と同義である(図1参照)。斯かる力の測定には、少なくとも二本のロールを具備し、これらの内、片方を駆動ロール、他方を自由回転又は同期回転ロールとしたとき、これら二本のニップされた回転ロール間に試料が通過できる装置が用いられる。斯かる装置の代表例として、印刷インキの粘着性評価に用いられるインコメーターが挙げられる。」こと、及び「例えば、液状ファンデーションの場合、揮発成分の揮散過程に伴う試料を伸長及び/または分裂させる際に要する力(タック値)は、その変化を時間軸に沿って捉えることが可能である(図2)。」ことが記載されていることから、本願発明の「少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力」は、タック値と同義であり、さらに、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-1)に「インキの粘着性(タック値)」と記載されているように、タック値は粘着性を意味するものである。 他方、引用発明のべたつき評価方法は、水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定し、その転動力の変化から乳液のような化粧品の液体のべたつきを評価するものであり、さらに、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-6)の段落【0042】に「(実施例1)次に、本発明の装置(図1及び図2に示した装置)を用い、乳液A,Bのべたつき力(粘着力)を測定した。」と記載されているように、べたつき力を測定することは粘着力を測定することであるから、引用発明において「水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力」を測定することは、べたつき力、すなわち粘着力を測定することであり、この粘着力を測定することは、例えば特開平11-112139号公報の2頁1欄3行に記載されてように粘着性を測定することを意味することは明らかである。 そうすると、引用発明の「移動方向に直交する水平軸Zを中心とする円弧面を下面に有する接触子と、該接触子を前記水平軸Zを中心に転動可能に支持する保持具とからなるプローブと、を準備し、水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定」することと、本願発明の「少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力を測定する」こととは、「粘着性を測定する」点で共通するものである。 (ii)引用発明の「乳液のような化粧品の液体」が本願発明の「液状化粧料」に相当する。 (iii)引用発明の「べたつき評価方法」が本願発明の「性能評価方法」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「粘着性を測定する液状化粧料の性能評価方法。」である点で一致し、次の相違点(ア)で相違している。 ・相違点(ア) 粘着性を測定することが、本願発明では、「少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力を測定する」ことであるのに対して、引用発明では、「移動方向に直交する水平軸Zを中心とする円弧面を下面に有する接触子と、該接触子を前記水平軸Zを中心に転動可能に支持する保持具とからなるプローブと、を準備し、水平移動する可動プレートの水平な上面に、液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定」することである点。 (4-2)当審の判断 上記相違点(ア)について判断する。 上記引用刊行物Bには、バイブレーションローラ4と接触するとともに駆動装置等を備えられて一定の速度で回転駆動する金属ローラ2と、金属ローラと接触し摩擦力でともに回転するゴムローラ3とが設けられ、金属ローラ2とゴムローラ3との間にインクを与えたときのゴムローラ3に働くトルクにより粘着性(タック値)を測定するインコメータが記載されている。 そして、ゴムロール3は、一定の速度で回転駆動する金属ローラ2と摩擦力で接触してともに回転することから、自由回転又は同期回転することは明らかであり、さらに、例えば、社団法人 日本印刷学会編集,「増補版 印刷事典」,平成3年8月30日初版第2刷発行,P26右欄?P27左欄のインコメータの項目に記載されているように、インコメータは金属ローラ2とゴムローラ3と間でインク膜を引き裂くのに要する力を測定するものであるから、上記引用刊行物Bのゴムローラ3に働くトルクが、インクの粘着性によりインクが金属ローラ2とゴムローラ3により伸ばされ、引き裂かれるときに発生する力に基づいて作用するものであることは自明な事項である。 また、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)には「インキピペット(図示せず)により、上記金属ローラ2とゴムローラ3との間に一定量のインキを与えると、インキのタックにより上記ゴムローラ3にトルクが作用し、上記トルク調整アーム5は傾く。そして、このトルク調整アーム5の分銅をスライドさせて、該トルク調整アーム5を通常時の状態に平衡させて分銅の位置されている目盛りを読み、この値をタック値とするものである。」ことが記載されていることから、上記引用刊行物Bに記載されたインコメータのタック値は、金属ローラ2の軸とゴムローラ3の軸とを結ぶ線の傾きをなくすために、トルク調整アーム5の分銅をスライドさせて、トルク調整アーム5を通常時の状態に平衡させたときの分銅の位置の目盛値であり、これは、傾いた金属ローラ2の軸とゴムローラ3の軸とを結ぶ線に垂直に力を加えて、金属ローラ2の軸とゴムローラ3の軸とを結ぶ線の傾きを無くしたときのトルク、すなわち力を意味することは明らかである。 そうすると、上記引用刊行物Bに記載されたインコメータは、本願発明と同様に「少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力を測定する」ものである。 ところで、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-6)の段落【0042】に記載されているように、引用発明の転動力は、べたつき力(粘着力)であるから、引用発明の乳液のような化粧品の液体の特性を評価するべたつき評価方法と上記引用刊行物Bに記載された周知のインコメータとは液状の試料の粘着性を測定する点で共通するものであり、さらに、例えば、特開昭54-3878号公報の3頁左上欄20行?右上欄3行、又は再公表特許WO95-09372号公報の43頁6?18行に記載されているように、インコメータをインク以外の液状の試料の粘着性の測定に用いることも本件出願前によく知られた事項であることを考慮すると、引用発明において、乳液のような化粧品の液体のべたつき、すなわち粘着性を評価する際に、水平移動する可動プレートの水平な上面に液体供試体を挟んでプローブを下向きに押付け、プローブを可動プレート上で水平移動させてプローブに作用する転動力を測定する代わりに、インコメータを用いて、少なくとも駆動ロール及び自由回転又は同期回転ロールの二本のロールにより形成されるニップ間で、ロール面に塗布された試料の伸長及び/または分裂の際にロール軸に発生する、両ロール軸平面に垂直方向の力を測定することは当業者が容易になし得るものである。 なお、請求人は請求の理由において、「従来より、インコメーターがインキの印刷機への適合性を評価する以外に使われた例は存在せず、液体及び半固形状試料の物性を測定する汎用的な装置では全くありません。かように、インコメーターに係る発明の技術分野が、液状又は半固形状試料の品質評価に関する分野を広く包含することはなく、引用文献2に、インコメーターをインク以外の試料に用いてみる動機づけが存在するとは到底云えるものではありません。」と主張している(平成19年12月20日付け手続補正書の「5.対比・検討(ii)」参照)。 しかしながら、上述したようにインコメータをインク以外の液状の試料の粘着性の測定に用いることも本件出願前によく知られた事項であることから、請求人の主張は採用することができない。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-13 |
結審通知日 | 2009-08-18 |
審決日 | 2009-09-01 |
出願番号 | 特願2003-343266(P2003-343266) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野田 洋平 |
特許庁審判長 |
後藤 時男 |
特許庁審判官 |
田邉 英治 信田 昌男 |
発明の名称 | 化粧料の品質管理方法 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |