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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1205636
審判番号 不服2008-1818  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-23 
確定日 2009-10-16 
事件の表示 平成11年特許願第197368号「車両用交流発電機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年1月30日出願公開,特開2001-28857〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成11年7月12日に特許出願されたものであって,平成19年12月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年1月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年2月19日付けの手続補正書により明細書の特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「接地されたフレームに,界磁コイルを有する界磁回転子と,前記界磁コイルに給電するブラシ装置とを搭載してなる車両用交流発電機において,
前記ブラシ装置は,正極側ブラシと負極側ブラシとを収容する絶縁材料により形成されたブラシホルダであって,それぞれの前記ブラシに接続され,外部に露出する一対のターミナルが固定されたブラシホルダを有し,
電源から前記ブラシ装置への給電経路に配置されて前記ブラシ装置への電力供給を制御するハイサイドスイッチ構成をとるスイッチング素子を含むレギュレータを備え,
このスイッチング素子は,電源の正極端子側端子とブラシ装置との間に介装されており,かつMOSFETで構成されており,
前記ブラシホルダに設けられた正極側のターミナル及び負極側のターミナルは,ブラシホルダの左右両側に耳状に突出しており,
前記ブラシホルダに設けられた負極側の前記ターミナルを,前記フレームに直接に固定し,電気的に接続し,
前記ブラシホルダの負極側の前記ターミナルは,前記フレームにビスによって締着され,前記ビス頭部を直接ターミナルに接触させていることを特徴とする車両用交流発電機。」
と補正された。

本件補正により,補正前の請求項1に係る発明に,発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)として記載された「正極側ブラシ」に接続される「ターミナル」を「電気的に接続」する態様について,「電源からブラシ装置への給電経路に配置されて前記ブラシ装置への電力供給を制御するハイサイドスイッチ構成をとるスイッチング素子を含むレギュレータを備え,このスイッチング素子は,電源の正極端子側端子とブラシ装置との間に介装されており,かつMOSFETで構成されて」いると限定され,以下同様に,「外部に露出する一対のターミナル」について,「正極側のターミナル及び負極側のターミナルは,ブラシホルダの左右両側に耳状に突出して」いると限定された。
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特公昭55-979号公報(以下,「引用例1」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「本発明は,車輛用交流発電機に係り,特に補助電気負荷に出力を供給するに好適な補助出力端子を備えた車輛用交流発電機に関するものである。」(第1頁左欄第24?26行目)

・「以下本発明を図面に示す実施例に基づき説明するならば,第1図は発電機制御回路である。該回路において,発電機GはY結線された電機子コイル1と,集電環2,2aに結線された励磁コイル3とから構成され,キースイッチSWの投入によってバッテリBGからチャージランプLP,電圧調整器Rg,励磁端子F,励磁側刷子4,集電環2,励磁コイル3,接地側集電環2a,刷子4aと励磁電流が供給されて初期励磁が行われ,チャージランプLPが点灯する。」(第2頁左欄第3?12行目)

・「次に本発明の特徴を備えた発電機の構造体を第2?第6図に説明する。全体構成第2図において,発電機Gの外枠は電機子鉄心6を挾んで対向するフロントブラケット7とリヤブラケツト8とから構成され,そのブラケット7,8間の中心部には,励磁コイル3を巻回した回転磁極9と,集電環2,2aを固着した回転軸10がボールべアリング11,12を介して支承されている。一方電機子コイル1の主出力(三相出力)はリヤブラケツト8の内壁面81に固定された放熱板13によって支持される整流器5を通して外部に取り出される。」(第2頁左欄第19?29行目)

・「また刷子保持器14は,一体に励磁端子Fを設け,リヤブラケット8に設けられた窓15の外から挿入固定される時に同時に補助出力端子Nをも固定している。本刷子保持器の取付関係は,第3?第6図で明らかにしている通りである。先ず刷子保持器14は第5図に示す如く略凸字状からなり,刷子収納部16と両側に伸びた固定腕部17を合成樹脂(絶縁体)で一体に形成しており,刷子収納部16の刷子挿入孔16a,16bには励装端子F(当審注:「励装端子F」との記載は,本来「励磁端子F」と記載すべきところの誤記と認定した。)と電気的に接続された励磁側刷子4と接地端子Eと電気的に接続された接地側刷子4aとが第6図のように挿入保持され,両端子F,Eとも外部に露出させてある。詳しくは,励磁端子Fは刷子リード取付面F1と固定腕部17の側面に対接する固定片F2を一体に形成した導電板からなり,前記固定腕部17の一方に設けた溝17aに爪片F3を介して固定され,端子部F4を固定腕部の外側面に突出位置させている。他方接地端子Eは上記同様刷子リード取付面E1と固定腕部の裏面に対接する固定片E2を備え,固定腕部17の他方に設けた溝17bに爪片E3を係合させることによって固定され,組立後は固定片E2を接地端子そのものとしている。固定腕部の両端に設けられた17c,17dは固定ねじ取付孔で,各々孔は励磁端子Fおよび接地端子Eの取付孔F5,E4と同一軸線上にあって周縁部17E,17Fを形成している。
このようにして形成された刷子保持器14は固定腕部17の外側面を外側にして第3図,第4図の如く配置される。すなわち,リヤブラケツト8の側壁には底部両端に窓枠8aを設けた窓15が形成され,この窓には刷子保持器14が固定されるが,その固定は補助出力端子Nおよび励磁端子Fの位置決めを行う絶縁板18と,雌端子(カプラー)を位置決めするカバー19とを重ね合せた後,ねじ20により一体に窓枠8aに締付固定される。
なお前記絶縁板18およびカバー19の外形(大きさ)は,窓を覆う大きさであると共に取外しが自由で,窓から塵埃の入らない程度に構成されている。」(第2頁左欄第30行目?同頁右欄25行目)

・「また刷子保持器14そのものは,凸字状の絶縁体からなるため刷子間の絶縁および励磁端子Fと補助出力端子間の絶縁が簡単で,数種からなる特別な絶縁を施さなくても良い。」(第3頁左欄第5?9行目)

・第1図には,符号「Rg」で示される電圧調整装置が刷子への励磁電流の供給経路に配置されていること,及び,符号「Rg」で示される電圧調整装置が符号「BG」で示されるバッテリの正極端子側端子と符号「4」で示される励磁側刷子との間に介装されていることが開示されている。

・第3図には,符号「E2」で示される接地端子Eの固定片が,符号「8」で示されるリヤブラケットに直接固定されていること,及び,符号「20」で示されるねじの頭部が,符号「17」で示される固定腕部を介して符号「E2」で示される固定片に接触していることが開示されている。

・第5図及び第6図には,符号「F4」で示される励磁端子Fの端子部及び符号「E2」で示される接地端子Eの固定片が,符号「17b」で示される溝を挟んで左右に位置していることが開示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「リヤブラケット8に,励磁コイル3を巻回した回転磁極9と,前記励磁コイル3に励磁電流を供給する刷子とを備える車輛用交流発電機において,
前記刷子は,励磁側刷子4と接地側刷子4aとが挿入保持される合成樹脂(絶縁体)で一体に形成された刷子保持器14であって,励磁側刷子4と接地側刷子4aに電気的に接続され,外部に露出させてある接地端子Eと励磁端子Fとが固定された刷子保持器14を有し,
バッテリBGから前記励磁側刷子4への励磁電流の供給経路に配置された電圧調整装置Rgを備え,
この電圧調整装置Rgは,バッテリBGの正極端子側端子と励磁側刷子4との間に介装され,
前記刷子保持器14に設けられた励磁端子Fの端子部F4及び接地端子Eの固定片E2は,刷子保持器14の両側に伸びた固定腕部17の溝17bを挟んで左右に位置させており,
前記刷子保持器14に設けられた前記接地端子Eの固定片E2を,前記リヤブラケット8に直接固定し,接地端子そのものとし,
前記刷子保持器14の前記接地端子Eの固定片E2は,前記リヤブラケット8にねじ20によって締付固定され,前記ねじ20の頭部を前記固定腕部17を介して固定片E2に接触させている車輛用交流発電機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,
・後者の「リヤブラケット8」は前者の「フレーム」に相当し,
後者において,リヤブラケット8に直接固定される接地端子Eの固定片E2が接地端子そのものとなっていることから,当該リアヤブラケット8が接地されていることは自明である。
また,
・後者の「励磁コイル3」は前者の「界磁コイル」に相当し,
・後者の「励磁コイル3を巻回した回転磁極9」は前者の「界磁コイルを有する界磁回転子」に相当し,
・後者の「励磁コイル3に励磁電流を供給する刷子」は前者の「界磁コイルに給電するブラシ装置」に相当し,
・後者の「車輛用交流発電機」は前者の「車両用交流発電機」に相当し,
・後者の「励磁側刷子4」は前者の「正極側ブラシ」に相当し,
・後者の「接地側刷子4a」は前者の「負極側ブラシ」に相当し,
・後者の「励磁側刷子4と接地側刷子4aとが挿入保持される合成樹脂(絶縁体)で一体に形成された刷子保持器14」は前者の「正極側ブラシと負極側ブラシとを収容する絶縁材料により形成されたブラシホルダ」に相当し,
・後者の「励磁側刷子4と接地側刷子4aに電気的に接続され」る態様は前者の「それぞれの前記ブラシに接続され」る態様に相当し,
・後者の「外部に露出させてある接地端子Eと励磁端子Fとが固定された」態様は前者の「外部に露出する一対のターミナルが固定された」態様に相当し,
・後者の「バッテリBG」は前者の「電源」に相当し,
・後者の「励磁電流の供給経路」は前者の「給電経路」に相当し,
・後者の「電圧調整装置Rg」は前者の「レギュレータ」に相当する相当する。
そして,前者の「ハイサイドスイッチ構成」とは,本願明細書の段落【0014】及び【0015】の記載からして,「ブラシ装置への電力供給を制御するレギュレータに含まれるスイッチング素子を電源側に配置した」構成と解されるが,引用例1の第1図には,符号「4」で示される励磁側刷子の電圧調整を行う符号「Rg」で示される電圧調整装置を,符号「BG」で示されるバッテリの側に配置することが開示されており,後者の「電圧調整装置Rg」がスイッチング素子を含むことは技術常識であるうえ,「電圧調整装置Rg」が励磁側刷子への電力供給を制御することは自明であるから,
・後者の「バッテリBGから励磁側刷子4への励磁電流の供給経路に配置された電圧調整装置Rg」は前者の「電源からブラシ装置への給電経路に配置されて前記ブラシ装置への電力供給を制御するハイサイドスイッチ構成をとるスイッチング素子を含むレギュレータ」に相当し,
・後者の「電圧調整装置Rgは,バッテリBGの正極端子側端子と励磁側刷子4との間に介装され」ている態様は前者の「スイッチング素子は,電源の正極端子側端子とブラシ装置との間に介装されて」いる態様に相当する。
さらに,
・後者の「励磁端子Fの端子部F4」は前者の「正極側のターミナル」に相当し,
・後者の「接地端子Eの固定片E2」は前者の「負極側のターミナル」に相当し,
・後者の「刷子保持器14の両側に伸びた固定腕部17の溝17bを挟んで左右に位置させ」る態様と前者の「ブラシホルダの左右両側に耳状に突出して」いる態様とは,「ブラシホルダの左右に位置させ」る態様において共通し,
・後者の「接地端子そのものと」する態様は前者の「電気的に接続」する態様に相当し,
・後者の「ねじ20」は前者の「ビス」に相当し,
・後者の「締付固定され」る態様は前者の「締着され」る態様に相当し,
・後者の「ねじ20の頭部を固定腕部17を介して固定片E2に接触させている」態様と前者の「ビス頭部を直接ターミナルに接触させている」態様とは,「ビス頭部を所定形態でターミナルに接触させている」態様において共通している。

[一致点]
「接地されたフレームに,界磁コイルを有する界磁回転子と,前記界磁コイルに給電するブラシ装置とを搭載してなる車両用交流発電機において,
前記ブラシ装置は,正極側ブラシと負極側ブラシとを収容する絶縁材料により形成されたブラシホルダであって,それぞれの前記ブラシに接続され,外部に露出する一対のターミナルが固定されたブラシホルダを有し,
電源から前記ブラシ装置への給電経路に配置されて前記ブラシ装置への電力供給を制御するハイサイドスイッチ構成をとるスイッチング素子を含むレギュレータを備え,
このスイッチング素子は,電源の正極端子側端子とブラシ装置との間に介装されており,
前記ブラシホルダに設けられた正極側のターミナル及び負極側のターミナルは,ブラシホルダの左右に位置させており,
前記ブラシホルダに設けられた負極側の前記ターミナルを,前記フレームに直接に固定し,電気的に接続し,
前記ブラシホルダの負極側の前記ターミナルは,前記フレームにビスによって締着され,前記ビス頭部を所定形態でターミナルに接触させている車両用交流発電機。」

[相違点1]
「スイッチング素子」に関して,本願補正発明では「MOSFETで構成されて」いると特定されているのに対して,引用発明ではこのような特定がない点。

[相違点2]
正極側のターミナル及び負極側のターミナルを「ブラシホルダの左右に位置させ」る態様に関して,本願補正発明ではブラシホルダの「左右両側に耳状に突出して」いる態様であるのに対して,引用発明では「左右に位置させ」る態様である点。

[相違点3]
「ビス頭部を所定形態でターミナルに接触させている」態様の「所定形態」に関して,本願補正発明では「直接」ターミナルに接触させているのに対して,引用発明では「固定腕部17を介して」ターミナルに接触させている点。

(4)判断
上記各相違点について以下に検討する。

(ア)[相違点1]について
車両用交流発電機の界磁コイルへの電力供給を制御するスイッチング素子を,MOSFETで構成する技術は,例えば,
・特開平10-56799号公報(図面【図3】及びその他の図面に符号
「15」で記載された「MOSトランジスタ」が相当。)
・特開平3-118800号公報(第1図に符号「8」で記載された「ス
イッチ手段をなすMOSFET」が相当)
・特開昭64-20000号公報(第1図に符号「15」で記載された「
パワーMOS・FET」が相当)
に開示されるように周知であり(以下,「周知技術1」という。),上述のとおり,引用発明の「電圧調整装置Rg」がスイッチング素子を含むことは技術常識であることから,引用発明の「電圧調整装置Rg」に周知技術1を適用して,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項である。

(イ)[相違点2]について
原査定の拒絶の理由に引用された
特開平9-135558号公報(以下,「引用例2」という。)
の図面【図4】(b)に符号「35」及び「36」で示されるF側及びB側ブラシターミナルの配置関係のように,車両用発電機の界磁巻線に励磁電流を供給するためのブラシ装置の正極側のターミナル及び負極側のターミナルをブラシホルダの左右両側に耳状に突出させることは,車両用発電機の技術分野において常套手段であり,当該常套手段を利用して,引用発明の励磁端子Fの端子部F4及び接地端子Eの固定片E2を刷子保持器14の左右両側に耳状に突出させるようにし,上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(ウ)[相違点3]について
本願補正発明において,「ビス頭部を直接ターミナルに接触させている」ことの技術上の意義は,本願明細書の段落【0004】?【0010】の記載を参酌すれば,ブラシホルダがフレームに絶縁状態で支持されると,ブラシホルダがフレームに対して間接的に位置決め,支持されることとなり,位置決め精度の悪化や強固に固定できないという問題が生じることを解消することにあると解される。
しかしながら,回転電機のブラシの負極側のターミナルをフレームにねじやボルト等により固定して,いわゆるボディーアースを行う場合に,ねじやボルトとフレームとの間に樹脂が介在すると,樹脂の変形・損傷等が生じ,回転電機に悪影響を与えるという課題が存在すること,及び,当該課題の解決手段として樹脂を介在させなくして強固な固定を実現する技術は,例えば,原査定時に周知例として示された
・特開平1-248938号公報(特に,第1頁右下欄第1行目?第2頁
左上欄第6行目の「「従来技術」・・・維持できない。」との記載及び
第3頁右下欄第2?8行目の「プレートターミナルをエンドフレームに
ねじ止め・・・により直接固定して,・・・強固かつ安定した固定を施
すことができる」との記載の記載並びに第4図の記載を参照。)
・実願昭58-101237号(実開昭60-11645号)のマイクロ
フィルム(特に,第1頁第17行目?第2頁第17行目の「従来のモー
ター・・・ということがあった。」との記載及び第6頁第第19行目?
第7頁第2行目の「ブラシ端子は樹脂の変形には関係なくボス部分で締
め付け固定されているため,・・・固定が完全な状態を維持し」との記
載並びに第5図を参照。)
や,新たに周知例として示す
・実願昭57-3488号(実開昭58-105765号)のマイクロフ
ィルム(特に,第2頁第5?16行目の「従来は,・・・・耐振性が劣
る。」との記載及び第3頁第8?11行目の「ブラシホルダとリアエン
ドフレームの固定に樹脂が介在しないため・・・耐振性・・・が向上す
る。」との記載を参照。)
に開示されるように周知である(以下,「周知技術2」という。)。
してみると,引用発明において,ねじ20の頭部を固定腕部17を介して固定片E2に接触させている態様に周知技術2を適用して,固定腕部17を介在させなくし,ねじ20の頭部を直接固定片E2に接触させる構成とすることで,上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。そして,当該構成により位置決め精度が向上することは自明である。

また,本願補正発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明,引用例2に開示された常套手段,上記技術常識,周知技術1及び2から当業者が予測できた範囲内のものである。
よって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に開示された常套手段,上記技術常識,周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件補正の適否の検討
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明,引用例2に開示された常套手段,上記技術常識,周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(6)むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
(1)本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年9月27日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「接地されたフレームに,界磁コイルを有する界磁回転子と,前記界磁コイルに給電するブラシ装置とを搭載してなる車両用交流発電機において,
前記ブラシ装置は,正極側ブラシと負極側ブラシとを収容する絶縁材料により形成されたブラシホルダであって,それぞれの前記ブラシに接続され,外部に露出する一対のターミナルが固定されたブラシホルダを有し,
前記ブラシホルダに設けられた負極側の前記ターミナルを,前記フレームに直接に固定し,電気的に接続し,
前記ブラシホルダの負極側の前記ターミナルは,前記フレームにビスによって締着され,前記ビス頭部を直接ターミナルに接触させていることを特徴とする車両用交流発電機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,上記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,上記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項として記載された「正極側ブラシ」に接続される「ターミナル」を「電気的に接続」する態様についての「電源からブラシ装置への給電経路に配置されて前記ブラシ装置への電力供給を制御するハイサイドスイッチ構成をとるスイッチング素子を含むレギュレータを備え,このスイッチング素子は,電源の正極端子側端子とブラシ装置との間に介装されており,かつMOSFETで構成されて」いるとの限定を削除し,「外部に露出する一対のターミナル」についての「正極側のターミナル及び負極側のターミナルは,ブラシホルダの左右両側に耳状に突出して」いるとの限定を削除したものに相当する。

そうすると,本願発明と引用発明との相違点は上記[相違点3]のみとなり,本願発明は,引用発明,周知技術2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-13 
結審通知日 2009-08-19 
審決日 2009-09-01 
出願番号 特願平11-197368
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 仁科 雅弘
黒瀬 雅一
発明の名称 車両用交流発電機  
代理人 永井 聡  
代理人 久保 貴則  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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