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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J |
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管理番号 | 1206096 |
審判番号 | 不服2008-651 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-10 |
確定日 | 2009-10-29 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 88138号「電子レンジ用食品容器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月10日出願公開、特開2000-279320〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成11年3月30日の出願であって、同19年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、同19年10月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同19年12月4日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同20年1月10日に本件審判の請求がなされ、同20年2月8日付けで明細書についての手続補正書が提出されたものである。 第2 平成20年2月8日付けの明細書についての手続補正に対する補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年2月8日付けの明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容の概要 本件補正は、明細書について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)本件補正前の請求項1 「収容室と鍔部と脚部とを有する電子レンジ用食品容器であって、 前記収容室の底板が、該底板の下面に形成された線状部から、上方に向かう傾斜面を有し、さらに前記線状部が、前記脚部の下端より上方に位置することを特徴とする、電子レンジ用食品容器。」 (2)本件補正後の請求項1 「収容室と鍔部と脚部とを有する電子レンジ用食品容器において、 前記収容室の底板が、該底板の下面に形成された線状部から上方に向かう傾斜面を有し、かつ前記線状部が、前記脚部の下端より上方に位置する、電子レンジ用食品容器であって、 前記線状部は、前記脚部の下端より5mm以上上方に位置するとともに、 前記線状部は、前記底板に形成される1以上の線状部であることを特徴とする、電子レンジ用食品容器。」 2 本件補正の適否 本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「線状部」について、「前記線状部は、前記脚部の下端より5mm以上上方に位置するとともに、前記線状部は、前記底板に形成される1以上の線状部である」という事項を付加して限定したものであり、それに伴い「電子レンジ食品容器であって」を「電子レンジ食品容器において」と補正し、「、電子レンジ用食品容器であって、」という事項を追加して、文章の体裁を整えたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することは明らかである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の記載からみて、上記1の(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「電子レンジ用食品容器」であると認める。 (2)引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由には、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である次の刊行物1及び2が記載されている。 [引用刊行物] 刊行物1:特開平11-35078号公報 刊行物2:実願平1-89733号(実開平3-29488号)のマイクロフィルム ア 刊行物1の記載事項 a 段落【0001】-【0002】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波によって加熱される調理食品あるいはマイクロ波によって加熱調理される冷蔵あるいは冷凍食品(以下、「調理食品」という。)を充填する電子レンジ用食品容器に関する。特に、本発明の電子レンジ用食品容器は、充填された調理食品を、電子レンジで加熱すると、均一な温度上昇ができて、ムラのない加熱を可能にする容器である。 【0002】 【従来の技術】従来、グラタン、ラザニア、カレーライス等を容器に充填し、摂取時に電子レンジによって加熱するだけで簡便に利用できる調理食品が市販されている。この調理食品に用いられている容器は、通常マイクロ波透過材料でつくられているが、電子レンジで加熱したとき、容器の側壁の内側の部分は温度が高くなるが中心部分の温度が低いといった問題や、容器表面部分の温度上昇は早いが底部分の温度上昇が遅いといった加熱ムラの問題がある。」 b 段落【0008】 「【0008】この電子レンジ用容器は、底部に脚部を設けることによって、上側からのマイクロ波だけでなく、電子レンジのターンテーブルや底板から反射されたマイクロ波が容器の底板を透過して下側からも同時に加熱することができる。・・・」 c 段落【0012】-【0013】 「【0012】これは、本発明の電子レンジ用容器では、特に脚部を有している上、容器の底板に対して、マイクロ波不透過材料により中心と外周間の距離の中間部を被覆しているため、中心部および外周囲部分のマイクロ波透過量が多くなり、それによって底側の中心部と外周囲部分の温度上昇が早くなり、全体として加熱ムラがなくなり、均一に加熱された調理食品を得ることができる。すなわち、容器に3?10mmの高さの脚を設けたことにより、上側だけでなく、電子レンジのターンテーブルや底板から反射されたマイクロ波が容器の底板を透過して下側からも同時に加熱する。特に、容器の底板の裏面に貼着したマイクロ波不透過材料がターンテーブルや底板から反射されたマイクロ波を再反射して、温度上昇の遅い中心部に集中するため、この部分がよく加熱され、全体としてムラのない均一な加熱をすることができる。従来の容器では、中心部分の温度を一定以上にするために、他の部分が過加熱状態であっても、更なる加熱を要したが、本発明の容器では、中心部分の加熱が早まって均一な加熱が可能となったことにより、加熱時間の短縮も図ることができた。このように本発明では電子レンジ用容器に脚部を設け、かつ底板にマイクロ波不透過材料を貼着して部分透過することにより均一な加熱を図っているが、電子レンジのターンテーブルが金属製ものでは、さらに顕著な効果を得ることができる。 【0013】 【実施例】以下、図面に示す実施例について説明する。 【実施例1】 (合成樹脂製容器)図1は、本発明に係る電子レンジ用容器(A)の正面図、図2は平面図、図3は平面図のX-X線の断面図である。楕円形の底板(1) に対して上方に広がりながら延伸した側壁(2) で囲われており(容器の内側の側壁の高さ20mm) 、側壁 (2)の上端には水平に広がるリム(3) を有している。また底板(1) の下側には側壁(2) とぼぼ同じ径を有する脚部(7)(長さ5mm) を備えている。この脚部(7) の位置は、底板(1) の径と同じでも、また底板(1) より小径であってもよく、更には断続的に設けてもよい。(8) は、脚部(7) の切欠部である。実施例の容器は、内側の上面部の径が長径135mm ×短径115mm 及び高さが20mmで、また、有効容量は、220ml である。・・・」 d 図3 図3からは底板(1)が平板状であることが看取される。 上記摘記事項cの「容器に3?10mmの高さの脚を設けた」なる記載及び上記摘記事項dの底板(1)が平板状であることからみて、底板(1)の下面は脚部(7)の下端から3?10mm上方に位置しているということができる。 そうすると、上記記載事項を、技術常識を勘案しながら本件補正発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認める。 [刊行物1記載の発明] 「調理食品を充填するための底板(1)に対して上方に延伸した側壁(2)で囲まれた部分とリム(3)と脚部(7)とを有する電子レンジ用食品容器において、 前記調理食品を充填するための底板(1)に対して上方に延伸した側壁(2)で囲まれた部分の底板(1)が、平板状であり、かつ前記底板(1)の下面が、前記脚部(7)の下端より上方に位置する、電子レンジ用食品容器であって、 前記底板(1)の下面は、前記脚部(7)の下端より3?10mm上方に位置する、電子レンジ用食品容器。」 イ 刊行物2の記載事項 e 第6ページ第12-17行 「[作用] 垂直断面が中央部分から上方に向かって外拡する弧状又は折れ線状となるように構成した底部を有する室は、平面状に構成した底部を有する室と比べて電子レンジで収納物を短時間で加熱することができる。・・・」 f 第8ページ第1-11行 「加熱されにくい食品を収納するための室2は、底部4と側部5とから構成されている。上記底部4は、垂直断面が中央部分6から上方に向かって外拡する弧状となるように構成されている。これにより、電子レンジで加熱した場合、短時間で且つ比較的均一に昇温させることが可能となる。 上記中央部分6は図においては接地するように構成してあるが、下に空隙を有するように構成しても良い。この場合、安定性の点から底部4に、足を取り付けることが好ましい。」 g 第12ページ末行-第13ページ第4行 「更に、本考案の他の実施例は、第5図に示すように、加熱されにくい食品を収納する室2の底部46を、その垂直断面が中央部分から上方に向かって折れ線状になるように構成されている。」 上記記載事項を、技術常識を勘案しながら本件補正発明に照らして整理すると、刊行物2には次の事項が記載されていると認める。 [刊行物2記載の事項] 電子レンジ用の容器において、底部46を垂直断面が中央部分から上方に向かって折れ線状になるように構成すること。 (3)対比 刊行物1記載の発明と本件補正発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「調理食品を充填するための底板(1)に対して上方に延伸した側壁2で囲まれた部分」は本件補正発明の「収容室」に相当し、以下同様に「リム(3)」は「鍔部」に、「脚部(7)」は「脚部」に、「底板(1)」は「底板」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明の「前記底板(1)の下面が、前記脚部(7)の下端より上方に位置する」なる事項は、底板(1)は平板状ではあるものの、本件補正発明の「線状部」が「底板の下面に形成され」、底板が有する傾斜面の最下部に形成されていることに鑑みれば、「前記底板の下面が、前記脚部の下端より上方に位置する」という限りにおいて、本件補正発明の「前記線状部が、前記脚部の下端より上方に位置する」なる事項と共通する。 そうすると、両者の一致点と相違点は以下のとおりと認められる。 [一致点] 「収容室と鍔部と脚部とを有する電子レンジ用食品容器において、 前記収容室の底板の下面が、前記脚部の下端より上方に位置する、電子レンジ用食品容器」である点。 [相違点] 本件補正発明は、収容室の底板が「該底板の下面に形成された線状部から上方に向かう傾斜面を有し、かつ前記線状部が、前記脚部の下端より上方に位置する」とともに、「前記線状部は、前記脚部の下端より5mm以上上方に位置するとともに、前記線状部は、前記底板に形成される1以上の線状部である」のに対し、刊行物1記載の発明は、「前記底板の下面は、前記脚部の下端より3?10mm上方に位置する」ものの、収容室の底板は平板状であって、上記事項に対応する事項を有しない点。 (4)判断 上記相違点について 上記刊行物2に記載された事項である「底部46を垂直断面が中央部分から上方に向かって折れ線状になるように構成すること」において、「底部46」は本件補正発明の「底板」に相当する。そして、本件補正発明の「線状部」が、本件の図面の図1に示される直線状のものや、図8に示される円形のものを包含していることに鑑みれば、上記刊行物2記載の事項は、少なくとも当該垂直断面の部分においては、「底板が、該底板の下面に形成された線状部から上方に向かう傾斜面を有し、前記線状部は、前記底板に形成された1以上の線状部であること」ということができる。 また、上記摘記事項イのe及びfによれば、刊行物2記載の弧状又は折れ線状の底部を有する室は、収納物を短時間で且つ比較的均一に昇温させることが可能なものである。 そして、刊行物1記載の発明においても、収納物である調理食品を短時間で且つ均一に昇温させることが求められていることは明らかであり、刊行物1記載の発明において、底板の形状として上記刊行物2記載の事項を採用することは、当業者が格別の創意を要することなく容易になし得たことである。 また、刊行物1記載の発明も、底板の下面を脚部の下端より3?10mm上方に位置させたものであり、この数値範囲は5?10mmの範囲で、本件補正発明の「底板の下面に形成された線状部」に関する数値範囲の「5mm以上」と共通している。そして、刊行物2にも上記摘記事項イのfに、垂直断面が弧状の場合ではあるが、中央部分6の下に空隙を有するように構成してもよいことが記載されている。よって、刊行物1記載の発明において、底板の形状として上記刊行物2記載の事項を採用するに際し、線状部を脚部の下端より5mm以上上方に位置させることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項である。 (5)本件補正発明の効果について 本件補正発明によってもたらされる効果は、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項から、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。 (6)まとめ したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成19年10月4日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)に示す本件補正前の請求項1に記載されたとおりの「電子レンジ用食品容器」である。 2 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容 は、上記第2の2の(2)に示したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明から、「線状部」について、「前記線状部は、前記脚部の下端より5mm以上上方に位置するとともに、前記線状部は、前記底板に形成される1以上の線状部である」という事項を削除したものであって、「電子レンジ食品容器であって」を「電子レンジ食品容器において」とし、「、電子レンジ用食品容器であって、」という事項を削除したものである。 そうすると、本願発明を特定する全ての事項を含みさらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が上記第2の2(4)で示したとおり、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-27 |
結審通知日 | 2009-09-01 |
審決日 | 2009-09-14 |
出願番号 | 特願平11-88138 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 氏原 康宏 |
特許庁審判長 |
小椋 正幸 |
特許庁審判官 |
野村 亨 佐々木 一浩 |
発明の名称 | 電子レンジ用食品容器 |
代理人 | 渡邊 敏 |