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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200918025 審決 特許
不服200821905 審決 特許
不服200732716 審決 特許
不服20093555 審決 特許
不服200925615 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1206121
審判番号 不服2008-11238  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-01 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特願2000-335893「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月14日出願公開、特開2002-136754〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成12年11月2日
審査請求 平成15年11月26日
拒絶理由 平成19年6月7日
手続補正 平成19年8月1日
拒絶査定 平成20年3月24日
審判請求 平成20年5月1日
手続補正 平成20年6月2日
審尋 平成21年3月9日
回答書 平成21年5月15日

第2 平成20年6月2日付の手続補正についての補正却下の決定

[結論]

平成20年6月2日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正前(平成19年8月1日付の手続補正書)における特許請求の範囲の請求項1?4の記載、及び本件補正後(平成20年6月2日付の手続補正書)における特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「遊技機の遊技状態を制御し、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力する主基板と、前記主基板が出力した前記賞球制御信号を入力し、前記賞球制御信号に基づき球払出装置を作動させて賞球の払出しを制御する払出し制御基板と、遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定する電源監視回路と、前記遊技機への電源電圧の遮断時に前記主基板と前記払出し制御基板に記憶した遊技機の遊技状態に係る各種制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源と、を備え、前記主基板及び前記払出し制御基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定である場合、それぞれに記憶している前記各種制御情報を電源遮断後も記憶保持しておくためのバックアップ処理を実行し、電源の復帰後は前記バックアップ処理により記憶保持した前記各種制御情報に基づき制御を開始して遊技を再開させ、前記主基板は前記電源の復帰時に前記各種制御情報として前記払出し制御基板に出力していない前記賞球制御信号を記憶保持している場合には前記賞球制御信号を前記払出し制御基板に出力する遊技機において、
前記電源の復帰時に、前記主基板と前記払出し基板に前記制御の開始を規制する規制信号を両基板に制御を開始させる迄の間出力することにより、前記主基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間と前記払出し制御基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間との間に予め定めた遅延時間を生じさせ、前記主基板の制御の開始を前記払出し制御基板の制御の開始よりも前記遅延時間だけ遅延させる遅延手段を備えた遊技機。」
[本件補正前の請求項2]
「前記遅延時間は、前記払出し制御基板が前記制御を開始してから、前記払出し制御基板の不正処理状態を検査する動作チェックと前記記憶保持した前記各種制御情報に基づき遊技を再開させるための各種設定を行うための時間に設定されている請求項1に記載の遊技機。」
[本件補正前の請求項3]
「遊技場の電源から遊技機に供給された電源電圧を所定の供給電圧に変換し、変換後の供給電圧を前記主基板と前記払出し制御基板に供給するとともに、前記電源が復帰したことを契機に前記規制信号を出力する信号出力回路を有する電源基板を備え、
前記遅延手段は、前記信号出力回路が出力した前記規制信号を入力する前記主基板と前記払出し制御基板のそれぞれに設けた信号入力回路であって、前記電源基板の前記信号出力回路は前記電源が復帰したことを契機に各信号入力回路に対して前記規制信号を出力し、
前記主基板の信号入力回路は、予め定めた待機時間と前記遅延時間を加算してなる前記主制御基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を継続して出力し、
前記払出し制御基板の信号入力回路は、前記待機時間のみからなる前記払出し制御基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を継続して出力する請求項1又は請求項2に記載の遊技機。」
[本件補正前の請求項4]
「前記主基板は、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数を記憶するとともに、前記払出し制御基板は、前記主基板から入力した前記賞球制御信号に対応した賞球数を逐次加算し、前記球払出装置の駆動制御回数に対応する賞球数を合算した払出し制御基板用賞球総数を記憶し、
前記主基板と前記払出し制御基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定である場合、前記バックアップ処理により各賞球総数を電源遮断後も記憶保持する請求項1?請求項3のうちいずれか一項に記載の遊技機。」

[本件補正後の請求項1]
「遊技機の遊技状態を制御し、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力する主基板と、前記主基板が出力した前記賞球制御信号を入力し、前記賞球制御信号に基づき球払出装置を作動させて賞球の払出しを制御する払出し制御基板と、遊技場の電源から遊技機に供給された電源電圧を所定の供給電圧に変換し、変換後の供給電圧を前記主基板と前記払出し制御基板に供給する電源基板と、を備え、前記電源基板には、前記電源が復帰したことを契機に前記主基板と前記払出し制御基板に前記制御の開始を規制する規制信号を出力する信号出力回路と、遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定する電源監視回路と、前記遊技機への電源電圧の遮断時に前記主基板と前記払出し制御基板に記憶した遊技機の遊技状態に係る各種制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源とが設けられており、前記主基板は、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数を記憶するとともに、前記払出し制御基板は、前記主基板から入力した前記賞球制御信号に対応した賞球数を逐次加算し、前記球払出装置の駆動制御回数に対応する賞球数を合算した払出し制御基板用賞球総数を記憶し、前記主基板及び前記払出し制御基板の各制御部は、前記電源監視回路の判定結果が肯定である場合、それぞれに記憶している前記各種制御情報を電源遮断後も記憶保持しておくためのバックアップ処理を実行し、前記バックアップ処理により各賞球総数を電源遮断後も記憶保持し、電源の復帰後は前記バックアップ処理により記憶保持した前記各種制御情報に基づき制御を開始して遊技を再開させ、前記主基板の制御部は前記電源の復帰時に前記各種制御情報として前記払出し制御基板に出力していない前記賞球制御信号を記憶保持している場合には前記賞球制御信号を前記払出し制御基板の制御部に出力する遊技機において、
前記電源の復帰時に、前記規制信号を両基板に制御を開始させる迄の間出力することにより、前記主基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間と前記払出し制御基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間との間に予め定めた遅延時間を生じさせ、前記主基板の制御の開始を前記払出し制御基板の制御の開始よりも前記遅延時間だけ遅延させる遅延手段を備え、
前記遅延時間は、前記払出し制御基板が前記制御を開始してから、前記払出し制御基板の不正処理状態を検査する動作チェックと前記記憶保持した前記各種制御情報に基づき遊技を再開させるための各種設定を行うための時間に設定されており、
前記遅延手段は、前記信号出力回路が出力した前記規制信号を入力する前記主基板と前記払出し制御基板のそれぞれに設けた信号入力回路であって、前記電源基板の前記信号出力回路は前記電源が復帰したことを契機に各信号入力回路に対して前記規制信号を出力し、
前記主基板の信号入力回路は、遊技機に供給される供給電圧が安定して供給されるまで両基板の起動を待機させる時間である待機時間と前記遅延時間を加算してなる前記主基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を前記主基板の制御部に継続して出力し、前記払出し制御基板の信号入力回路は、前記待機時間のみからなる前記払出し制御基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を前記払出し制御基板の制御部に継続して出力する遊技機。」

2.本件補正についての検討

本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1?4の内容を全て含んだ上で、かつ本件補正前の請求項3における「予め定めた待機時間」を「遊技機に供給される供給電圧が安定して供給されるまで両基板の起動を待機させる時間である待機時間」と変更したものであって、この点については本件補正前の請求項1?4のいずれかから見ても明らかに特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮に該当すると判断できる。

よって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討することとする。

3.引用例

新たに引用する特開2000-245931号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

【0007】
図1を参照し、賞球払出装置について説明する。1は遊技盤前面に設けられた入賞口であって、一般入賞口、始動口、可変入賞口等と呼ばれる複数種類の入賞口が複数又は単数存在するが、それらを総称した形態で1つ図示されている。2は入賞口1に入賞した入賞球である。この第1実施形態の場合、一般入賞口は1個の入賞球2が入賞する毎に10個の賞球47が払出される。始動口は1個の入賞球2が入賞する毎に、5個の賞球47が払出され、遊技盤にセンター役物として設けられた液晶やLED又はCRT或いはプラズマディスプレイ等のような表示器の図柄変動遊技が始まる。但し、表示器による1回の遊技中に、始動口に入賞球2が入賞した場合は、4個のような所定数までは記憶しておき、表示器の1回の図柄変動遊技終了毎にその記憶数の範囲で、表示器による図柄変動遊技が繰り返される。表示器による1回の図柄変動遊技終了毎に停止した図柄の組合せが予め定められた組合せに一致する毎に、可変入賞口は球が入りやすい形態に開く。可変入賞口は大入賞口とも呼ばれ、1個の入賞球2が入る毎に、15個の賞球47が払出される。但し、可変入賞口は1回開いている間に入賞球2が10個入るか、又は、開き始めより30秒のような所定時間経過するかの何れか1つの条件が成立すると、可変入賞口は閉じる。これら入賞と遊技と賞球払出との関係は、パチンコ機の遊技全般を電気的に制御する主制御部4と、主制御部4からの電気的な指示により賞球払出機構部30を電気的に制御する賞球払出制御部20とにより制御される。
【0008】
3は入賞球検出スイッチであって、入賞口1に入賞した入賞球2を検出する毎に入賞球検出信号を主制御部4に出力する。入賞球検出スイッチ3は、近接スイッチのようなセンサにより構成されており、入賞球2に反応してオン動作するが、入賞口1に挿入されたピアノ線には反応しにくく、不正防止を図る形態である。入賞球検出スイッチ3は賞球払出数の系統毎に設けても良いが、入賞口1のそれぞれに対応して設ければ、入賞口1に入賞した入賞球2の数と、入賞球検出信号の数との整合性が向上する。それは、賞球払出数の系統に対応して入賞球検出スイッチ3を設けた場合、入賞口1に入賞した複数の入賞球2が複数の入賞口1を賞球払出数の系統毎に区分する系統通路内を数珠繋ぎに流下し、それら連繋状態の入賞球2を1個ずつ分別検出する入賞球検出スイッチ3の動作が正確に働かず、入賞球検出スイッチ3が複数の入賞球を1個として誤検出する可能性が高い。これに対し、入賞口1毎に入賞球検出スイッチ3を設けた場合、1つの入賞口1に複数の入賞球2が同時に入賞する形態が少なく、又、1つの入賞口1に複数の入賞球2が同時に入賞しても入賞口1から入賞球検出スイッチ3までの距離を移動する間に数珠繋ぎとなることが極希であり、入賞球検出スイッチ3が入賞球2を1個ずつ正確に検出できるからである。
【0012】
この第1実施形態の場合、遊技者の操作で発射された遊技球が複数の入賞口1の何れかに入賞し、入賞検出スイッチ3が入賞球2を検出した入賞球検出信号を主制御部4に出力する。これにより、先ず、入賞検出手段5は入賞球検出信号が複数のうちのどの入賞球検出スイッチ3より入力された信号かを判別し、その判別した入賞球検出信号に対応した賞球指示払出数を主制御部4に設定された複数の賞球指示払出数中より抽出して合算手段である指示転送待ち計数手段6に転送する。指示転送待ち計数手段6が賞球指示払出数により加算(カウントアップ)されると共にコマンド出力手段7に賞球指示払出数を転送する。コマンド出力手段7が賞球指示払出数を含むコマンドを生成して賞球払出制御部20に出力すると共に賞球指示払出数を賞球指示残数計数手段8に転送する。賞球指示残数計数手段8が賞球指示払出数により加算される。
【0013】
次に、賞球払出制御部20では、コマンド解読手段21がコマンドを解読してコマンド中の賞球指示払出数をコマンドデータより変換して賞球払出指示手段22及び賞球残数計数手段23に転送する。賞球残数計数手段23は賞球指示払出数により加算される。賞球払出指示手段22は賞球指示払出数に基づき賞球払出機構部30の賞球払出アクチュエータ32を電気的に制御する。これにより、通路開閉部材33が賞球払出通路31を賞球指示払出数だけ開き、賞球47がタンク41側より上皿44に払出される。そして、賞球検出スイッチ40が払出される賞球47を検出する毎に賞球払出数に相当する賞球検出信号を主制御部4及び賞球払出制御部20に出力する。賞球指示残数計数手段8及び賞球残数計数手段23が賞球検出信号である賞球払出数により減算(カウントダウン)される。それから、賞球残数計数手段23の計数値がゼロになると賞球払出指示手段22が賞球指示払出信号を停止することにより、賞球払出アクチュエータ32が停止し、通路開閉部材33が賞球払出通路31を閉じ、賞球払出機構部30による賞球払出動作が停止する。
【0030】
図10を参照し、主制御部4の遊技制御処理を詳述する。リセット割込みにより遊技制御処理が始まると、ステップ101においてスタックポインタを設定し、ステップ102において電源初期投入時を判定する。電源投入直後のRAMのデータは不定のため、電源投入判断はRAMの特定エリアが特定データであるかどうかにより行う。ステップ103は乱数更新処理であって、大当り決定用乱数、大当り図柄選択用乱数、外れ用左停止図柄乱数、外れ用中停止図柄乱数、外れ用右停止図柄乱数、リーチ時間決定用乱数等の乱数の更新を行う。ステップ104は入力処理であって、ポート入力を行い、入力バッファに格納する。始動口に対応する入賞球検出スイッチ3が入賞を検出した場合、大当り決定用乱数、大当り図柄選択用乱数をRAMの保留記憶エリアヘ記憶する。保留記憶エリアは4個まで有り、その空きエリアに順次格納するものとする。ステップ105は10カウントスイッチエラー検出処理であって、入賞球2が特定入賞口に10個入賞したか否かを検出する10カウントスイッチの異常検出及び復帰処理を行う。10カウントスイッチのオン時間が指定時間以上継続した時にエラー状態として検出し、このエラー状態検出中に10カウントスイッチのオフ時間が指定時間以上継続した時にエラー状態を復帰する。可変入賞口の開から閉までの一定時間内において、又、10カウントスイッチの入賞カウント数が0の場合において、10カウントスイッチに対する球の無通過エラーの状態として検出し、このエラー状態検出中に10カウントスイッチが入賞球を検出した場合はエラー状態を復帰する。ステツプ106は10カウントスイッチエラー分岐処理であって、エラー状態の場合はステップ115に移行し、その他はステップ107に移行する。ステップ107はジョブカウンタの値に応じたジョブの選択処理であって、ステップ108において0?6のどのジョブを行うかをジョブカウンタの値により選択する。ジョブカウンタの値が0でステップ104の入力処理にて入賞球カウント記憶が有つた場合には、ジョブカウンタの値を1にする。
【0031】
ステップ108はジョブカウンタの値に応じたジョブ処理であって、ステップ107にて選択されたジョブを実行する。このステップ108では、各ジョブ毎に、それぞれ対応した特別図柄表示、表示灯表示、効果音などに対するモードフラグのセットを行う。又、時間に関する処理については、各時間データを所定のRAMのエリアに格納し、ハード的に所定周期で発生するよう構成されているリセット割込み毎に減算するソフトタイマ方式とする(時間データ=リセット割込み回数×リセット割込みの時間間隔)。各ジョブについて説明すると、
ジョブ0:図柄始動入賞待ち処理を示し、デモ表示に関する処理を行う。尚、このジョブから次のジョブヘの移行は、ステップ107の処理内で行われる。
ジョブ1:特別図柄変動開始処理を示し、大当り決定用乱数、大当り図柄選択用乱数の保留記憶エリアのデータ値をシフトし、現判定エリアに保存し、以下のア)停止図柄決定処理と、イ)図柄変動時間の決定処理とを行う。
ア)停止図柄決定処理は現判定エリアの大当り決定用乱数値が大当り値なら、現判定エリアの大当り図柄選択用乱数より停止図柄を決定する。現判定エリアの大当り決定用乱数値が外れ値なら、外れ用左停止図柄乱数、外れ用中停止図柄乱数、外れ用右停止図柄乱数を抽出し、左・中・右の停止図柄を決定する。ただし、左図柄=中図柄=右図柄の場合は、右図柄を+1として外れ停止図柄を決定する。
イ)図柄変動時間決定処理は左図柄、中図柄の変動時間は固定時間とする。尚、大当り、及び左図柄=中図柄のリーチ状態の場合は、右図柄の変動時間をリーチ時間決定用乱数値より抽出し、外れの場合は右図柄の変動時間を左図柄、中図柄と同じ固定時間とする。そして、処理終了後、ジョブカウンタをカウントアップする。
ジョブ2:特別図柄停止処理を示し、左図柄、中図柄、右図柄を順次変動させ、それぞれの図柄の変動時間経過後、左図柄、中図柄、右図柄を順次停止し、処理終了後、ジョブカウンタをカウントアップする。
ジョブ3:大当り判定処理を示し、現判定エリアの大当り決定用乱数値が大当り値の場合はジョブカウンタをカウントアップする。外れ値の場合は一定時間(図柄停止時間)経過後、ジョブカウンタをクリアする。
ジョブ4:大当り開始処理を示し、以下のア)?エ)の大当り開始処理を行う。
ア)可変入賞口開放時間をセット。
イ)可変入賞口開放カウンタに1をセット。
ウ)10カウント入賞カウンタをクリア。
エ)特定入賞口スイッチ通過フラグをクリアし、一定時間(大当り開始待ち時間)経過後、ジョブカウンタをカウントアップする。
ジョブ5:可変入賞口開放処理を示し、可変入賞口の開放処理、閉止処理を行う。開放処理は可変入賞口アクチュエータ58を駆動し可変入賞口を開放する。可変入賞口が開放中に特定入賞口スイッチを球が通過した場合に、特定入賞口スイッチ通過フラグをセットする。可変入賞口開放時間経過、10カウント入賞カウンタ=上限値(10個)のいずれかの条件が成立した場合に可変入賞口閉処理に移行する。その閉処理は可変入賞口アクチュエータ58の駆動を停止し可変入賞口を閉じ、ジョブカウンタをカウントアップする。
ジョブ6:可変入賞口開放待ち処理であって、特定入賞口スイッチ通過フラグがセットされている場合は継続処理を行い、セットされていない場合は終了処理を行う。継続処理は可変入賞口開放時間をセット、可変入賞口開放カウンタをカウントアップ(但し、カウント値が上限値(16回)を越えた場合は終了処理に移行する)、10カウント入賞カウンタをクリア、特定入賞口スイッチ通過フラグをクリアし、一定時間(可変入賞口インターバル時間)経過後、ジョブカウンタを1減算する。終了処理は一定時間(大当り終了ウェイト時間)経過後、可変入賞口開放動作で使用したカウンタ、フラグなどをクリアし、ジョブカウンタをクリアする。
【0055】
要するに、この第1実施形態によれば、主制御部4が機能分割された賞球払出制御部20へ一方向のコマンドを送出するパチンコ機の賞球払出制御装置において主制御部4が賞球指示払出数を含むコマンドを賞球払出制御部20に送信し、このコマンドを受信した賞球払出制御部20がコマンド中の賞球払出数に基づき賞球払出機構部30を電気的に制御し、賞球検出スイッチ40が賞球払出機構部30より払出された賞球47を検出した賞球検出信号を主制御部4及び賞球払出制御部20に送信する。又、主制御部4の賞球指示残数計数手段8は上記主制御部4から賞球払出制御部20へのコマンド送信により賞球指示払出数を加算すると共に賞球検出スイッチ40から入力された賞球検出信号に相当する賞球払出数を減算することにより、主制御部4が賞球払出機構部30より払出される賞球払出数の計数管理を行う。又、賞球払出制御部20の賞球残数計数手段23は上記主制御部4から入力されたコマンドにより賞球指示払出数を加算すると共に賞球検出スイッチ40から入力された賞球検出信号に相当する賞球払出数を減算することにより、賞球払出制御部20が賞球払出機構部30より払出される賞球払出数の計数管理を行う。

よって、引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「パチンコ機の遊技全般を電気的に制御する主制御部4と、主制御部4からの電気的な指示により賞球払出機構部30を電気的に制御する賞球払出制御部20と、
遊技盤前面に一般入賞口、始動口、可変入賞口等と呼ばれる複数種類の入賞口1が設けられ、入賞口1に入賞した入賞球2を検出する毎に入賞球検出信号を主制御部4に出力する入賞球検出スイッチ3と、を備え、
主制御部4は賞球払出制御部20へ一方向のコマンドを送出するパチンコ機において、
遊技者の操作で発射された遊技球が複数の入賞口1の何れかに入賞し、入賞検出スイッチ3が入賞球2を検出した入賞球検出信号を主制御部4に出力し、これにより、先ず、入賞検出手段5は入賞球検出信号が複数のうちのどの入賞球検出スイッチ3より入力された信号かを判別し、その判別した入賞球検出信号に対応した賞球指示払出数を主制御部4に設定された複数の賞球指示払出数中より抽出して合算手段である指示転送待ち計数手段6に転送し、指示転送待ち計数手段6が賞球指示払出数により加算(カウントアップ)されると共にコマンド出力手段7に賞球指示払出数を転送し、コマンド出力手段7が賞球指示払出数を含むコマンドを生成して賞球払出制御部20に出力すると共に賞球指示払出数を賞球指示残数計数手段8に転送し、賞球指示残数計数手段8が賞球指示払出数により加算され、
次に、賞球払出制御部20では、コマンド解読手段21がコマンドを解読してコマンド中の賞球指示払出数をコマンドデータより変換して賞球払出指示手段22及び賞球残数計数手段23に転送し、賞球残数計数手段23は賞球指示払出数により加算され、賞球払出指示手段22は賞球指示払出数に基づき賞球払出機構部30の賞球払出アクチュエータ32を電気的に制御し、これにより、通路開閉部材33が賞球払出通路31を賞球指示払出数だけ開き、賞球47がタンク41側より上皿44に払出され、そして、賞球検出スイッチ40が払出される賞球47を検出する毎に賞球払出数に相当する賞球検出信号を主制御部4及び賞球払出制御部20に出力し、賞球指示残数計数手段8及び賞球残数計数手段23が賞球検出信号である賞球払出数により減算(カウントダウン)され、それから、賞球残数計数手段23の計数値がゼロになると賞球払出指示手段22が賞球指示払出信号を停止することにより、賞球払出アクチュエータ32が停止し、通路開閉部材33が賞球払出通路31を閉じ、賞球払出機構部30による賞球払出動作が停止し、
主制御部4及び賞球払出制御部20が賞球払出機構部30より払出される賞球払出数の計数管理を行う
パチンコ機。」

4.対比

ここで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1における「パチンコ機」は本願補正発明の「遊技機」に相当する。
引用発明1の「主制御部4」も「パチンコ機の遊技全般を電気的に制御」しており、また引用文献1の段落【0030】?【0031】も参照すれば、主制御部4は遊技制御処理として大当り開始処理も実行しているから、本願補正発明における「遊技状態」も制御していると認められる。また、引用発明1は「遊技盤前面に一般入賞口、始動口、可変入賞口等と呼ばれる複数種類の入賞口1」が設けられており、また主制御部4は「遊技球が複数の入賞口1の何れかに入賞し、入賞検出スイッチ3が入賞球2を検出した入賞球検出信号を主制御部4に出力し」、入賞球検出信号に対応した「賞球指示払出数を含むコマンド」が賞球払出制御部20に出力されるものであるから、本願補正発明における「遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力する」点も満たしている。よって、引用発明1の「主制御部4」は本願補正発明の「主基板」に相当する。
また、引用発明1は「主制御部4からの電気的な指示により賞球払出機構部30を電気的に制御する賞球払出制御部20」を備え、賞球払出制御部20はコマンド中の賞球指示払出数に基づき「賞球払出機構部30の賞球払出アクチュエータ32を電気的に制御」するものであるから、本願補正発明の「前記主基板が出力した前記賞球制御信号を入力し、前記賞球制御信号に基づき球払出装置を作動させて賞球の払出しを制御する」点も満たしている。よって、引用発明1の「賞球払出制御部20」は本願補正発明の「払出し制御基板」に相当する。
さらに、引用発明1は、主制御部4において「賞球指示払出数を賞球指示残数計数手段8に転送し、賞球指示残数計数手段8が賞球指示払出数により加算され」ており、ここで「賞球指示払出数」とは上記各入賞口1の入賞球検出信号に対応したものであって、また引用発明1の「加算」とは本願補正発明の「合算」に相当し、また加算を行う以上その値が記憶されることも当然であるから、引用発明1における「賞球指示残数計数手段8」は本願補正発明における「主基板用賞球総数を記憶する」ことに対応する。また、引用発明1は、賞球払出制御部20において「コマンド中の賞球指示払出数をコマンドデータより変換して賞球残数計数手段23に転送し、賞球残数計数手段23は賞球指示払出数により加算され」ており、ここでの「賞球指示払出数」とは主制御部4の「賞球指示払出数」と対応するものであって、またコマンドが入力される毎に加算されていると認められるから、引用発明1の「賞球残数計数手段23」は本願補正発明の「前記主基板から入力した前記賞球制御信号に対応した賞球数を逐次加算」する機能を有している。さらに、引用発明1においては「賞球検出スイッチ40が払出される賞球47を検出する毎に賞球払出数に相当する賞球検出信号を主制御部4及び賞球払出制御部20に出力し、賞球指示残数計数手段8及び賞球残数計数手段23が賞球検出信号である賞球払出数により減算(カウントダウン)され」ているものであって、すなわち賞球残数計数手段23は未払出し分の賞球数を示しているものであるから、引用発明1の「賞球残数計数手段23」は本願補正発明の「前記球払出装置の駆動制御回数に対応する賞球数を合算」する機能も有している。そして、加算及び減算を行う以上その値が記憶されることも当然であるから、引用発明1の「賞球残数計数手段23」は本願補正発明の「払出し制御基板用賞球総数を記憶」することに対応する。

よって、引用発明1と本願補正発明は、
「遊技機の遊技状態を制御し、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力する主基板と、前記主基板が出力した前記賞球制御信号を入力し、前記賞球制御信号に基づき球払出装置を作動させて賞球の払出しを制御する払出し制御基板と、を備え、
前記主基板は、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数を記憶するとともに、前記払出し制御基板は、前記主基板から入力した前記賞球制御信号に対応した賞球数を逐次加算し、前記球払出装置の駆動制御回数に対応する賞球数を合算した払出し制御基板用賞球総数を記憶する
遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「遊技場の電源から遊技機に供給された電源電圧を所定の供給電圧に変換し、変換後の供給電圧を前記主基板と前記払出し制御基板に供給する電源基板」とを備え、前記電源基板には、「遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定する電源監視回路と、前記遊技機への電源電圧の遮断時に前記主基板と前記払出し制御基板に記憶した遊技機の遊技状態に係る各種制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源」とが設けられており、「前記主基板及び前記払出し制御基板の各制御部は、前記電源監視回路の判定結果が肯定である場合、それぞれに記憶している前記各種制御情報を電源遮断後も記憶保持しておくためのバックアップ処理を実行し、前記バックアップ処理により各賞球総数を電源遮断後も記憶保持し、電源の復帰後は前記バックアップ処理により記憶保持した前記各種制御情報に基づき制御を開始して遊技を再開させ、前記主基板の制御部は前記電源の復帰時に前記各種制御情報として前記払出し制御基板に出力していない前記賞球制御信号を記憶保持している場合には前記賞球制御信号を前記払出し制御基板の制御部に出力する」のに対して、引用発明1にはかかる構成がない点。

[相違点2]
本願補正発明は、前記電源基板に「前記電源が復帰したことを契機に前記主基板と前記払出し制御基板に前記制御の開始を規制する規制信号を出力する信号出力回路」が設けられており、「前記電源の復帰時に、前記規制信号を両基板に制御を開始させる迄の間出力することにより、前記主基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間と前記払出し制御基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間との間に予め定めた遅延時間を生じさせ、前記主基板の制御の開始を前記払出し制御基板の制御の開始よりも前記遅延時間だけ遅延させる遅延手段を備え、前記遅延時間は、前記払出し制御基板が前記制御を開始してから、前記払出し制御基板の不正処理状態を検査する動作チェックと前記記憶保持した前記各種制御情報に基づき遊技を再開させるための各種設定を行うための時間に設定されており、前記遅延手段は、前記信号出力回路が出力した前記規制信号を入力する前記主基板と前記払出し制御基板のそれぞれに設けた信号入力回路であって、前記電源基板の前記信号出力回路は前記電源が復帰したことを契機に各信号入力回路に対して前記規制信号を出力し、前記主基板の信号入力回路は、遊技機に供給される供給電圧が安定して供給されるまで両基板の起動を待機させる時間である待機時間と前記遅延時間を加算してなる前記主基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を前記主基板の制御部に継続して出力し、前記払出し制御基板の信号入力回路は、前記待機時間のみからなる前記払出し制御基板が前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間を計測し、前記時間を計測する迄の間、前記信号出力回路から入力した前記規制信号を前記払出し制御基板の制御部に継続して出力する」のに対して、引用発明1にはかかる構成がない点。

5.相違点の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

新たに引用する特開2000-279579号公報(以下「引用文献2」という。)には以下の記載がある。

【0022】
電源基板42には、主電源部60とバックアップ電源部61とリセット手段62とを備えている。主電源部60は、主制御基板33、ランプ制御基板35、音声制御基板37、発射制御基板10、払い出し制御基板43等を経て、遊技盤3 側の液晶表示手段14等の遊技部品、発射手段8 、球払い出し手段30、その他の各給電対象部位に外部電源50からの電源を供給するためのものである。
【0033】
商用電源等の外部電源50が停電すると、電源基板42の主電源部60から各部への電源供給が停止し、発射手段8 、主制御手段46等が作動不能になり、遊技が中断又は停止する。しかし、主電源部60からの電源供給が停止すると同時に、電源基板42のバックアップ電源部61が働き、このバックアップ電源部61から遊技状態記憶手段48、払い出し個数記憶手段57に給電する。従って、停電等によって外部電源50からの電源供給が停止しても、遊技状態記憶手段48、払い出し個数記憶手段57は、遊技中の記憶を維持することができ、その記憶データが消えることはない。
【0035】
外部電源50が復旧すると、電源基板42の主電源部60から各部へと給電すると同時に、遊技継続手段49が働き、遊技制御手段47が遊技状態記憶手段48の記憶データを読み出して制御を行う。従って、外部電源50の停電等で遊技が中断した場合でも、遊技者は電源供給の停止直前の状態から遊技を再開でき、遊技を継続して続行することができる。
【0036】
また外部電源50が復旧すると、払い出し制御手段55が払い出し個数記憶手段57の記憶データ、即ち払い出し個数を読み出して、球払い出し手段30を作動させる。このため、球払い出し手段30が未払い出し個数分の賞品球を上皿6 へと払い出して行くので、外部電源50の停電の直前に入賞手段16?20等に遊技球が入賞した場合でも、その入賞に対する賞品球の払い出しを確実に実行できる。
【0037】
主制御手段46の遊技制御手段47が入賞信号を払い出し制御手段55へと送信する直前に停電した場合には、遊技状態記憶手段48がその入賞データを記憶している。そして、外部電源50が復旧すれば、その後に遊技制御手段47が遊技状態記憶手段48の入賞データを読み出して払い出し制御手段55へと送信するので、遊技の再開後に球払い出し手段30により通常通りに賞品球を払い出すことができる。
【0038】
このように停電等による外部電源50からの電源供給が停止した場合に、遊技状態記憶手段48により遊技状態を、払い出し個数記憶手段57により払い出し個数を夫々記憶しておき、外部電源50の復旧後に遊技状態記憶手段48の記憶データを読み出して遊技を継続し、払い出し個数記憶手段57の記憶データを読み出して遊技球払い出し手段30により賞品球の払い出しを行うことにより、電源供給の停止に伴う遊技者の損失、遊技者と遊技店との間にトラブルを極力防止できる。

そして、引用文献2の上記記載によれば、「電源基板42」は「各給電対象部位に外部電源50からの電源を供給する」ものであって、技術常識を踏まえれば「電源電圧を所定の供給電圧に変換」することは当然である。また、「主電源部60からの電源供給が停止すると同時に、電源基板42のバックアップ電源部61が働き」とあるから、引用文献2には明確な記載はないものの、「電源供給が停止する」ことを判別する何らかの判定手段を設けていることは当然のことであり、すなわち本願補正発明における「電源監視回路」に相当する機構も備えていると解される。
一方、引用文献2の上記記載では「バックアップ電源部61から遊技状態記憶手段48、払い出し個数記憶手段57に給電する。従って、停電等によって外部電源50からの電源供給が停止しても、遊技状態記憶手段48、払い出し個数記憶手段57は、遊技中の記憶を維持することができ、その記憶データが消えることはない。」と記載があるのみであって、すなわちバックアップ電源部61から単に給電が行われるのみとも解されるから、「前記主基板及び前記払出し制御基板の各制御部」が「電源監視回路の判定結果が肯定である場合…バックアップ処理を実行」するものであるかどうか不明である。
しかし、制御基板が主体的にバックアップ処理を行うことも、例えば特開2000-262702号公報(以下「引用文献4」という。)の段落【0066】にもあるように従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明1においては「賞球指示残数計数手段8」は主制御部4に保持され、また「賞球残数計数手段23」は賞球払出制御部20に保持されているものであるから、引用発明1に引用文献2に記載された技術を適用すれば、「賞球指示残数計数手段8」及び「賞球残数計数手段23」の両者をバックアップすることとなるから、引用発明1に引用文献2記載の技術及び周知技術1を適用して本願補正発明の相違点1にかかる構成とすることは遊技機分野において通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]

原査定時の拒絶の理由において引用された特開平11-104312号公報(以下「引用文献3」という。)の記載事項(後記[第3 2.]参照)によれば、以下の点が云える。
引用文献3の遊技制御基板31の初期リセット回路65及び表示制御基板80のリセット回路83(以下、両者をまとめて「リセット回路」という。)においては、それぞれがリセット信号をそれぞれの制御手段(CPU)に出力しているから、本願補正発明の「両基板に…出力」する点を満たしている。
また、引用文献3のリセット回路は、「リセットIC831はリセットIC651と同一のものであって、抵抗832の抵抗値は抵抗652の抵抗値と等しく、コンデンサ833の容量はコンデンサ653の容量と等しい」ものであるから、その結果、遊技制御基板31も表示制御基板80も同様に、パチンコ遊技機1に電源が投入された後、抵抗652(832)を介してコンデンサ653(833)が充電され、コンデンサ653(832)の電位が上昇していき、コンデンサ653(833)の電位が所定値を越えると、リセットIC651(832)は、RESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させる(タイミングAの時点)ものであって、すなわち両基板共電源が投入されたときから同じタイミングAの時点まで制御の開始を規制していると判断することができるから、ここで電源投入からタイミングAまでの時間(以下「タイミングA時間」という。)は、本願補正発明における「待機時間」に対応するものである。
そして、引用文献3においては、遊技制御基板31については、さらに遅延回路655によって「リセットIC651のRESET ̄端子の出力を遅延させてCPU56のリセット入力端子(RST ̄端子)にリセット信号として供給」し、「従って、CPU56には、電源投入後タイミングAよりも遅れたタイミングBの時点までローレベルのリセット信号が与えられ」るものであるから、遊技制御基板31については、電源が投入されたときから(タイミングAよりも遅延回路655における遅延量(以下「遅延回路遅延量」という。)の分だけ遅い)タイミングBの時点まで制御の開始を規制していると判断することができる。そして、引用文献3の「遅延回路遅延量」は「設定」される(引用文献3の段落【0032】参照)ものであって、本願補正発明における「予め定めた遅延時間」に相当し、よって引用文献3の「遅延回路655」は本願補正発明の「遅延手段」に相当する。
なお、引用文献3の「遅延回路655」においてどのような手段で遅延量が設定可能となっているか不明であるが、何らかの時間計測手段を備える手法を採用することも、当業者にとって適宜設計できたことである。
以上によれば、引用文献3において、遊技制御基板31については「タイミングA時間+遅延回路遅延量」、表示制御基板80については「タイミングA時間」、それぞれ制御の開始を規制しているものと解されるから、これらの時間は、それぞれ本願補正発明の「主基板」についての「待機時間と前記遅延時間を加算してなる…前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間」、「払出し制御基板」についての「前記待機時間のみからなる…前記電源の復帰から前記制御を開始する迄の時間」に実質的に相当しているものである。
さらに、引用文献3においても、段落【0007】?【0008】に「共通のリセット信号によって遊技制御手段および表示制御手段のマイクロコンピュータをリセットする方式が提案されている。」、「また、一般に、遊技制御手段と表示制御手段とは別基板上に構成される。従って、共通のリセット信号を用いようとすると、リセット信号を基板間に配線しなければならない。」とあるから、共通のリセット信号を用いる点は引用文献3においても従来の技術として開示されているものである。そして、段落【0008】?【0009】に「そのような場合には、リセット信号にノイズがのりやすい。リセット信号はマイクロコンピュータをリセットするものであるから、リセット信号にノイズが乗ると遊技進行中にマイクロコンピュータがリセットされてしまって遊技が中断してしまう。」、「そこで、本発明は、リセット信号にノイズが乗る危険性を防止しつつ、表示制御手段において確実に遊技制御手段からの表示制御コマンドデータを取り込むことができる遊技機を提供することを目的とする。」と記載があるから、引用文献3のものが、遊技制御基板31と表示制御基板80の個々の基板にそれぞれリセット回路を設けたのは「リセット信号にノイズが乗る危険性を防止」という目的のためであると理解することができる。とすれば、そのような目的は、引用文献3の主たる目的である「表示制御手段において確実に遊技制御手段からの表示制御コマンドデータを取り込むことができる」という目的とは直接の関係はないから、当該主たる目的の達成において引用文献3の従来技術である「共通のリセット信号によって遊技制御手段および表示制御手段のマイクロコンピュータをリセットする」という技術を用いること、すなわち共通のリセット信号を発する手段を設けることは決して排除されておらず、むしろ「リセット信号にノイズが乗る危険性を防止」という課題を無視できる(又は他の方法によって防ぐことができる)ならば、当該従来技術を採用することは当業者にとって当然検討し得る範囲のことに過ぎない。そして、引用文献3においては、各基板に設けたリセット回路からリセット信号を発出(本願補正発明の「信号出力回路」が「規制信号」を出力することに相当)するとともに、遊技制御基板31において、該リセット信号を遅延回路655によってさらに遅延させる技術が記載されているから、引用文献3の実施例に従来技術を採用して、個別の基板にリセット回路を配する点に代えて、共通のリセット信号を発する手段を設け、そのリセット信号を受けて遅延回路655によって遅延させるようにすることは、当業者であれば導くことができる範囲のことである。なお、共通のリセット信号を発する手段を、電源基板(例を挙げるまでもなく周知である。)に設けることは、設計事項に過ぎない。
そして、上述したように共通のリセット信号を用いるとしても、引用文献3の実施例においては、遅延回路655を遊技制御基板31にのみ設けているものであるが、各CPU毎に対応するように異なった遅延回路を設けることも、例えば特開平5-143196号公報の段落【0018】にあるように従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であって、とすれば、各制御基板にそれぞれ遅延回路を設けることによって各制御基板毎に遅延時間を設定可能であり、そして引用文献3の実施例のごとく、遊技制御基板31については「タイミングA時間+遅延回路遅延量」、表示制御基板80については「タイミングA時間」となるように設定することも、当業者にとって当然設計できたことである。
また、引用文献3に記載された技術は「遊技制御基板31」と「表示制御基板80」との間で「コマンドデータを取り損なうという事態を生じないようにする」という技術であるが、「コマンドデータを取り損なう」ことを防ぐ必要性は「表示制御」に特段限られるものではないことは明らかであるから、「主制御部4」が「賞球払出制御部20へ一方向のコマンドを送出する」引用発明1において、「主制御部4」と「賞球払出制御部20」を対象として、引用文献3に記載された技術を適用することは当業者にとって何ら困難なことではない。
よって、引用発明1に引用文献3に記載された技術(実施例及び従来技術)、さらに周知技術2を適用して、共通のリセット信号を発出する手段(本願補正発明の「信号出力回路」に相当)からリセット信号(本願補正発明の「規制信号」に相当)を発出し、主制御部4と賞球払出制御部20に該リセット信号を受ける遅延回路(本願補正発明の「信号入力回路」に相当。)を設けることによって、各制御部(基板)毎に異なった遅延時間を設定することは、当業者にとって容易に想到できたことである。
なお、引用文献3においては「遅延回路遅延量」については設定可能である旨の記載があるが、「タイミングA時間」については特段の記載はない。しかし、タイミングA時間は、用いられる抵抗値及びコンデンサ容量によって結果的に定まるものであるから、それらの値を設計することによってタイミングA時間を決定できるものである。よって、「遅延回路遅延量」、「タイミングA時間」について、どの程度とするかは当業者が適宜決定できることであり、また、動作チェック、各種設定、電圧の安定供給といった事柄は、当業者にとって当然考慮できる要素に過ぎないから、引用文献3における遅延回路遅延量やタイミングA時間として「不正処理状態を検査する動作チェック」、「各種設定を行うための時間」、「遊技機に供給される供給電圧が安定して供給されるまで」といった時間を考慮して設定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
また、引用文献3は「電源投入」時にかかる技術であるが、電源復帰時も電源投入時の一形態であり、電源の復帰時においも前記した引用文献3の主たる課題が生じうることは当然であるから、電源復帰時において引用文献3に記載された技術を採用することに何ら困難はない。
また、本願補正発明においては、規制信号として「…迄の間…継続して出力」という出力形態を採用しているが、信号の出力形態としてどのような論理構成を採用するかは当業者の設計事項に過ぎない。

よって、引用発明1に引用文献3に記載された技術及び周知技術2を適用して、本願補正発明の相違点2にかかる構成とすることも、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断におけるむすび]

よって、相違点にかかる本願補正発明の構成は、引用発明1、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術及び周知技術1,2から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきであり、そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1、引用文献2に記載された技術、引用文献3に記載された技術及び周知技術1,2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.補正却下の決定におけるむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には図面と共に、以下の事項が記載されている。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の遊技機では、遊技制御手段とは別の表示制御手段によって可変表示装置における表示が制御される。遊技制御手段および表示制御手段がそれぞれマイクロコンピュータで構成される場合には、電源投入時にそれぞれのマイクロコンピュータを初期化するためのリセット回路が設けられる。表示制御手段は遊技制御手段から送信されてくる表示制御コマンドデータを受信するが、双方のリセット回路からのリセット信号の同期がとれていないと、表示制御手段が遊技制御手段から送信されてくる表示制御コマンドデータを取り損なうおそれがある。そこで、共通のリセット信号によって遊技制御手段および表示制御手段のマイクロコンピュータをリセットする方式が提案されている。
【0008】
しかし、双方のマイクロコンピュータは、リセットが解除されると、それぞれ初期化プログラムを実行する。すると、表示制御手段のマイクロコンピュータの初期化プログラムを実行している時間が遊技制御手段のマイクロコンピュータの初期化プログラムを実行している時間よりも長い場合等には、共通のリセット信号を用いると、表示制御手段における初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されてしまう可能性がある。そのような場合には、表示制御手段は表示制御コマンドデータを取り損なってしまう。すなわち、共通のリセット信号によって遊技制御手段および表示制御手段のマイクロコンピュータをリセットするようにしても、表示制御手段が遊技制御手段からの表示制御コマンドデータを取り損なう可能性は残る。また、一般に、遊技制御手段と表示制御手段とは別基板上に構成される。従って、共通のリセット信号を用いようとすると、リセット信号を基板間に配線しなければならない。そのような場合には、リセット信号にノイズがのりやすい。リセット信号はマイクロコンピュータをリセットするものであるから、リセット信号にノイズが乗ると遊技進行中にマイクロコンピュータがリセットされてしまって遊技が中断してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、リセット信号にノイズが乗る危険性を防止しつつ、表示制御手段において確実に遊技制御手段からの表示制御コマンドデータを取り込むことができる遊技機を提供することを目的とする。
【0012】
図1に示すように、パチンコ遊技機1は、額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3からあふれた景品玉を貯留する余剰玉受皿4と打球を発射する打球操作ハンドル5が設けられている。ガラス扉枠2の後方には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が設けられている。
【0013】
遊技領域7の中央付近には、複数種類の図柄を可変表示するための画像表示部9と7セグメントLEDによる可変表示器10とを含む可変表示装置8が設けられている。画像表示部9には、「左」、「中」、「右」の3つの図柄表示エリア9a,9b,9cがあり、これらの図柄表示エリア9a,9b,9cは各可変表示部を構成する。可変表示装置8の側部には、打球を導く通過ゲート11が設けられている。通過ゲート11を通過した打球は、玉出口13を経て始動入賞口14の方に導かれる。通過ゲート11と玉出口13との間の通路には、通過ゲート11を通過した打球を検出するゲートセンサ12がある。また、始動入賞口14に入った入賞球は、遊技盤6の背面に導かれ、始動口センサ17によって検出される。また、始動入賞口14の下部には開閉動作を行う可変入賞球装置15が設けられている。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15の下部には、特定遊技状態(大当たり状態)においてソレノイド21によって開状態とされる開閉板20が設けられている。開閉板20から遊技盤6の背面に導かれた入賞球のうち一方(Vゾーン)に入った入賞球はVカウントセンサ22で検出され、他方に入った入賞球はカウントセンサ23で検出される。可変表示装置8の下部には、始動入賞口14に入った入賞球数を表示する4個の表示部を有する始動入賞記憶表示器18が設けられている。この例では、4個を上限として、始動入賞がある毎に、始動入賞記憶表示器18は点灯している表示部を1つずつ増やす。そして、画像表示部9の可変表示が開始される毎に、点灯している表示部を1つ減らす。
【0020】
図4は、遊技制御基板(メイン基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図4には、賞球基板37、電飾基板35および表示制御基板(サブ基板)80も示されている。メイン基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、ゲートセンサ12、始動口センサ17、Vカウントセンサ22およびカウントセンサ23からの信号を基本回路53に与えるスイッチ回路58と、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16および開閉板20を開閉するソレノイド21を基本回路53からの指令に従って駆動するソレノイド回路59と、7セグメントLEDによる可変表示器10を駆動するとともに装飾ランプ25を点滅させるランプ・LED回路60と、賞球基板37に基本回路53からの賞球個数信号を送信するとともに賞球基板37からの入賞データ信号を基本回路53に入力する賞球基板入出力回路61とが設けられている。入賞があったことは入賞玉検出器99で検出されるが、その場合に、賞球基板37は、入賞データ信号を出力する。基本回路53は、賞球基板37からの入賞データ信号に応じて、賞球基板37に賞球個数信号を与える。例えば、基本回路53は、始動口センサ17のオンに対応した入賞データ信号の入力があると、賞球個数信号に「6」を出力し、カウントセンサ23またはVカウントセンサ22のオンに対応した入賞データ信号の入力があると、賞球個数信号に「15」を出力する。そして、それらのセンサがオンしない場合に入賞データ信号の入力があると、賞球個数信号に「10」を出力する。
【0021】
また、メイン基板31には、電飾基板35に基本回路53からのコマンドを送信する電飾基板コマンド出力回路62と、サブ基板80に基本回路53からのコマンドやストローブ信号を与える表示装置回路63と、基本回路53から与えられるデータに従って、大当たりの発生を示す大当たり情報、画像表示部9の画像表示開始に利用された始動入賞球の個数を示す有効始動情報、確率変動が生じたことを示す確変情報等をホール管理コンピュータ等のホストコンピュータに対して出力する情報出力回路64と、基本回路53からの制御信号に応じて効果音等の音声信号を出力する音声合成回路71と、音声合成回路71からの音声信号を増幅して図1に示されているスピーカ27に与える音量増幅回路72とが設けられている。
【0022】
基本回路53は、ゲーム制御用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用されるRAM55、制御用のプログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。なお、RAM55はCPU56に内蔵されている場合もある。
【0023】
さらに、メイン基板31には、電源投入時に基本回路53をリセットするための初期リセット回路65と、定期的(例えば、2ms毎)に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行させるための定期リセット回路66と、基本回路53から与えられるアドレス信号をデコードしてI/Oポート部57のうちのいずれかのI/Oポートを選択するための信号を出力するアドレスデコード回路67とが設けられている。
【0024】
図5は、サブ基板80内の回路とCRT82による画像表示部9の構成を示すブロック図である。サブ基板80には、CRTコントロール回路81をリセットするためのリセット回路83、CRTコントロール回路81にクロック信号を与える発振回路84と、CRTコントロール回路81が生成した画像データを記憶するVRAM86とが含まれている。
なお、使用頻度の高い画像データを記憶するキャラクタROMを備えていてもよい。使用頻度の高い画像データとは、例えば、CRT82に表示される人物、動物、または、文字、図形もしくは記号等からなる画像などである。
【0026】
図6は、CRTコントロール回路81の構成の一例を示すブロック図である。CRTコントロール回路81には、表示制御用CPU91、表示制御用プログラムが記憶された制御データROM92、ビデオディスプレイプロセッサ93,94およびビデオカラーエンコーダ95が含まれる。表示制御用CPU91は、制御データROM92の表示制御用プログラムに従って表示装置回路63からの表示制御コマンドデータを解析する。そして、表示制御用CPU91は、表示制御用コマンドデータにもとづいて画像データを作成しビデオコントローラ93,94を介してVRAM86に画像データを転送する。RAM86に格納された画像データは、カラービデオエンコーダ95からの同期信号に同期して、ビデオコントローラ93,94からカラービデオエンコーダ95に転送される。カラービデオエンコーダ95は、画像データをビデオ信号に変換してCRT82に送出する。なお、図4には示されていないが、サブ基板80とCRT82との間には、ビデオ信号にもとづいてCRT82を駆動するためのCRT駆動回路を有するCRT基板が設けられている。
なお、この遊技機では2つのVDP93,94が設けられているので、図柄、背景およびキャラクタ情報を容易に重畳表示できる。
【0028】
図8は、メイン基板31およびサブ基板80における初期リセット回路65およびリセット回路83の周辺を示す回路図である。この実施の形態では、初期リセット回路65およびリセット回路83において、同一のリセットIC651,831が用いられる。リセットIC651,831は、所定端子の入力電位が所定値(例えば3V)を越えると、RESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させる。そこで、初期リセット回路65におけるリセットIC651の所定端子に、電源にプルアップされた抵抗652とコンデンサ653とが接続される。コンデンサ653の他端は接地される。また、リセット回路83におけるリセットIC831の所定端子に、電源にプルアップされた抵抗832とコンデンサ833とが接続される。コンデンサ653の他端は接地される。なお、抵抗652の抵抗値と抵抗832の抵抗値とは等しく、例えば470kΩのものが用いられる。また、コンデンサ653の容量とコンデンサ833の容量とは等しく、例えば1000pFのものが用いられる。従って、遊技機に電源が投入されると、初期リセット回路65におけるリセットIC651のRESET ̄端子の出力レベルと、リセット回路83におけるリセットIC831のRESET ̄端子の出力レベルとは、ほぼ同時にハイレベルに変化する。
【0029】
メイン基板31における初期リセット回路65とCPU56との間には遅延回路655が設けられている。遅延回路655は、リセットIC651のRESET ̄端子の出力を遅延させてCPU56のリセット入力端子(RST ̄端子)に供給する。
【0032】
次に動作について説明する。
パチンコ遊技機1に電源が投入されると、メイン基板31の初期リセット回路65において、抵抗652を介してコンデンサ653が充電されていく。従って、コンデンサ653の電位が上昇していく。コンデンサ653の電位が所定値を越えると、図9に示すように、リセットIC651は、RESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させる(タイミングAの時点)。遅延回路655は、リセットIC651のRESET ̄端子の出力を遅延させてCPU56にリセット信号として供給する。従って、CPU56には、図9に示すように、電源投入後タイミングAよりも遅れたタイミングBの時点までローレベルのリセット信号が与えられ、タイミングBの時点でリセット信号はハイレベルに立ち上がる。すなわち、タイミングBの時点でCPU56のリセットは解除される。
なお、遅延回路655における遅延量は、例えば、表示制御用CPU91の初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されないような量に設定される。
【0033】
パチンコ遊技機1に電源が投入されると、サブ基板80では、抵抗832を介してコンデンサ833が充電されていく。従って、コンデンサ833の電位が上昇していく。リセットIC831はリセットIC651と同一のものであって、抵抗832の抵抗値は抵抗652の抵抗値と等しく、コンデンサ833の容量はコンデンサ653の容量と等しいので、リセット回路83は、ほぼタイミングAの時点でRESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させる。サブ基板80では、RESET ̄端子は直接表示制御用CPU91のリセット入力端子に接続されているので、図9に示すように、表示制御用CPU91は、タイミングAの時点でリセット解除される。
【0041】
また、CPU56は、賞球基板37との間の信号処理を行う(ステップS12)。入賞があったことは入賞玉検出器99で検出されるが、その場合に、賞球基板37は、入賞データ信号を出力する。CPU56は、入力ポートを介して入賞データ信号を入力すると、ステップS10で確認した各センサのON/OFF状態に応じた賞球個数を決定し、決定結果を賞球個数信号として、出力ポートおよび賞球基板入出力回路61を介して賞球基板37に出力する。賞球基板37に搭載されている払出制御用マイクロコンピュータは、賞球個数信号に応じて玉払出装置97を駆動する。
【0055】
この実施の形態では、遅延回路655を設けることによって、パチンコ遊技機1に電源が投入されたときに、表示制御手段を構成する表示制御用CPU91のリセット解除のタイミングを、遊技制御手段を構成するCPU56のリセット解除のタイミングよりも早くなるようにしたので、表示制御手段における初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されて表示制御手段が表示制御コマンドデータを取り損なうという事態は生じない。
【符号の説明】
8 可変表示装置
9 画像表示部
31 遊技制御基板(メイン基板)
53 基本回路
56 CPU
65 初期リセット回路
80 表示制御基板(サブ基板)
83 リセット回路
91 表示制御用CPU
651,831 リセットIC
652,832 抵抗
653,654,833 コンデンサ
655 遅延回路

【符号の説明】の欄には「31 遊技制御基板(メイン基板)」、「80 表示制御基板(サブ基板)」とあるから、「メイン基板31」、「サブ基板80」とは、それぞれ「遊技制御基板31」、「表示制御基板80」であると認められ、また、【図4】を参照すれば、引用文献3のパチンコ遊技機1が「遊技制御基板31」、「賞球基板37」及び「表示制御基板80」を備えていることは明らかである。
よって、「メイン基板」については「遊技制御基板」、「サブ基板」については「表示制御基板」の用語に統一して表記することとし、引用文献3における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「遊技盤6が着脱可能に取り付けられ、遊技盤6の前面には遊技領域7が設けられ、遊技領域7には、通過ゲート11、始動入賞口14及び可変入賞球装置15が設けられており、遊技制御基板31、賞球基板及び表示制御基板を備えるパチンコ遊技機1であって、
通過ゲート11を通過した打球はゲートセンサ12によって検出され、始動入賞口14に入った入賞球は始動口センサ17によって検出され、可変入賞球装置15の下部には、特定遊技状態(大当たり状態)においてソレノイド21によって開状態とされる開閉板20が設けられ、開閉板20から遊技盤6の背面に導かれた入賞球のうち一方(Vゾーン)に入った入賞球はVカウントセンサ22で検出され、他方に入った入賞球はカウントセンサ23で検出され、
遊技制御基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、ゲートセンサ12、始動口センサ17、Vカウントセンサ22およびカウントセンサ23からの信号を基本回路53に与えるスイッチ回路58と、賞球基板37に基本回路53からの賞球個数信号を送信するとともに賞球基板37からの入賞データ信号を基本回路53に入力する賞球基板入出力回路61と、表示制御80に基本回路53からのコマンドやストローブ信号を与える表示装置回路63と、電源投入時に基本回路53をリセットするための初期リセット回路65が設けられており、基本回路53は、制御用のプログラムに従って制御動作を行うCPU56を含み、CPU56は、賞球基板37との間の信号処理を行い、入賞があったことは入賞玉検出器99で検出されるが、その場合に、賞球基板37は、入賞データ信号を出力し、CPU56は、入力ポートを介して入賞データ信号を入力すると、各センサのON/OFF状態に応じた賞球個数を決定し、決定結果を賞球個数信号として、出力ポートおよび賞球基板入出力回路61を介して賞球基板37に出力し、
賞球基板37に搭載されている払出制御用マイクロコンピュータは、賞球個数信号に応じて玉払出装置97を駆動し、
表示制御基板80には、CRTコントロール回路81をリセットするためのリセット回路83が含まれており、CRTコントロール回路81には表示制御用CPU91が含まれ、表示制御用CPU91は制御データROM92の表示制御用プログラムに従って表示装置回路63からの表示制御コマンドデータを解析し、表示制御用コマンドデータにもとづいて画像データを作成するものであって、
初期リセット回路65およびリセット回路83において、同一のリセットIC651,831が用いられ、リセットIC651,831は、所定端子の入力電位が所定値(例えば3V)を越えると、RESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させ、電源が投入されると、初期リセット回路65におけるリセットIC651のRESET ̄端子の出力レベルと、リセット回路83におけるリセットIC831のRESET ̄端子の出力レベルとは、ほぼ同時にハイレベルに変化するものであって、
パチンコ遊技機1に電源が投入されると、
遊技制御基板31の初期リセット回路65において、抵抗652を介してコンデンサ653が充電され、コンデンサ653の電位が上昇していき、コンデンサ653の電位が所定値を越えると、リセットIC651は、RESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させ(タイミングAの時点)、
表示制御基板80では、抵抗832を介してコンデンサ833が充電され、コンデンサ833の電位が上昇していき、リセットIC831はリセットIC651と同一のものであって、抵抗832の抵抗値は抵抗652の抵抗値と等しく、コンデンサ833の容量はコンデンサ653の容量と等しいので、リセット回路83は、ほぼタイミングAの時点でRESET ̄端子の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させ、
遊技制御基板31における初期リセット回路65とCPU56との間には遅延回路655が設けられ、遅延回路655は、リセットIC651のRESET ̄端子の出力を遅延させてCPU56のリセット入力端子(RST ̄端子)にリセット信号として供給し、従って、CPU56には、電源投入後タイミングAよりも遅れたタイミングBの時点までローレベルのリセット信号が与えられ、タイミングBの時点でリセット信号はハイレベルに立ち上がり、すなわち、タイミングBの時点でCPU56のリセットは解除され、
表示制御基板80では、RESET ̄端子は直接表示制御用CPU91のリセット入力端子に接続されているので、表示制御用CPU91は、タイミングAの時点でリセット解除され、
遅延回路655における遅延量は、例えば、表示制御用CPU91の初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されないような量に設定され、遅延回路655を設けることによって、パチンコ遊技機1に電源が投入されたときに、表示制御手段を構成する表示制御用CPU91のリセット解除のタイミングを、遊技制御手段を構成するCPU56のリセット解除のタイミングよりも早くなるようにしたので、表示制御手段における初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されて表示制御手段が表示制御コマンドデータを取り損なうという事態を生じないようにした
パチンコ遊技機1。」

3.対比

ここで本願発明と引用発明2とを対比する。

引用発明2における「パチンコ遊技機1」は本願発明の「遊技機」に相当する。
引用発明2においては「遊技制御基板31」が「プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御し」とあり、「特定遊技状態(大当たり状態)」が発生するから、上記制御が遊技状態の制御を含むことは明らかである。よって引用発明2の「遊技制御基板31」は本願発明の「遊技機の遊技状態を制御」する点を具備している。
さらに、引用発明2においても「遊技盤6が着脱可能に取り付けられ、遊技盤6の前面には遊技領域7が設けられ、遊技領域7には、通過ゲート11、始動入賞口14及び可変入賞球装置15が設けられ」ており、ここで「通過ゲート11、始動入賞口14及び可変入賞球装置15」は本願発明の「遊技盤に配設された各入賞口」に相当し、また引用発明2は、「通過ゲート11を通過した打球はゲートセンサ12によって検出され、始動入賞口14に入った入賞球は始動口センサ17によって検出され、可変入賞球装置15の下部には、開閉板20が設けられ、開閉板20から遊技盤6の背面に導かれた入賞球のうち一方(Vゾーン)に入った入賞球はVカウントセンサ22で検出され、他方に入った入賞球はカウントセンサ23で検出され」るものであって、「ゲートセンサ12、始動口センサ17、Vカウントセンサ22およびカウントセンサ23からの信号」が基本回路53に与えられ、「各センサのON/OFF状態に応じた賞球個数を決定し、決定結果を賞球個数信号として、出力ポートおよび賞球基板入出力回路61を介して賞球基板37に出力」するものであるから、引用発明2における「賞球個数信号」としての「出力」は本願発明の「各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力」する点に相当する。したがって、引用発明2の「遊技制御基板31」は本願発明の「主基板」に相当する。
引用発明2の「賞球基板37」は「払出制御用マイクロコンピュータは、賞球個数信号に応じて玉払出装置97を駆動」するものであって、また賞球個数信号の受信手段(入力手段)は当然有するから、引用発明2の「賞球基板37」は本願発明の「払出し制御基板」に相当する。
引用発明2は、「遊技制御基板31」において「初期リセット回路65とCPU56との間には遅延回路655」を設け、遅延回路655は「リセットIC651のRESET ̄端子の出力を遅延させてCPU56のリセット入力端子(RST ̄端子)にリセット信号として供給」するものであって、これにより「CPU56には、電源投入後タイミングAよりも遅れたタイミングBの時点までローレベルのリセット信号が与えられ、タイミングBの時点でリセット信号はハイレベルに立ち上がり、すなわち、タイミングBの時点でCPU56のリセットは解除」され、一方、「表示制御基板80」におけるリセット回路83は「RESET ̄端子は直接表示制御用CPU91のリセット入力端子に接続されているので、表示制御用CPU91は、タイミングAの時点でリセット解除」される。よって「遊技制御手段を構成するCPU56のリセット解除のタイミング」は、「遅延回路655における遅延量」の分、「表示制御手段を構成する表示制御用CPU91のリセット解除のタイミング」よりも遅延することとなる。そして、当該「リセット解除のタイミング」は「制御を開始する…時間」に相当し、当該「遅延量」は「例えば、表示制御用CPU91の初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されないような量に設定」されるものであるから、本願発明における「予め定めた遅延時間」に相当する。よって引用発明2の「遅延回路655」は本願発明の「遅延手段」に相当する。
また、引用発明2は「電源投入」時であって、一方本願発明は「電源の復帰時」ではあるが、電源の復帰とは、電源が何らかの理由により遮断された後に電源が投入された状態のことであるから、電源投入の一形態であると云え、とすれば、本願発明の「電源復帰」も、引用発明2の「電源投入」に含まれるものであり、また引用発明2の「表示制御基板80」も本願発明の「払出し制御基板」も「サブ制御基板」である点で共通するから、両者は「前記主基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間とサブ制御基板が電源の復帰から制御を開始する迄の時間との間に予め定めた遅延時間を生じさせ、前記主基板の制御の開始を前記払出し制御基板の制御の開始よりも前記遅延時間だけ遅延させる遅延手段」を備えている点で共通している。

よって、両者は、
「遊技機の遊技状態を制御し、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴って賞球の払出しを指示する賞球制御信号を出力する主基板と、前記主基板が出力した前記賞球制御信号を入力し、前記賞球制御信号に基づき球払出装置を作動させて賞球の払出しを制御する払出し制御基板と、を備えた遊技機において、
電源投入時に、前記主基板が電源投入から制御を開始する迄の時間とサブ制御基板が電源投入から制御を開始する迄の時間との間に予め定めた遅延時間を生じさせ、前記主基板の制御の開始を前記サブ制御基板の制御の開始よりも前記遅延時間だけ遅延させる遅延手段を備えた遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定する電源監視回路と、前記遊技機への電源電圧の遮断時に遊技機の遊技状態に係る各種制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源と」を備え、「前記主基板及び前記払出し制御基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定である場合、それぞれに記憶している前記各種制御情報を電源遮断後も記憶保持しておくためのバックアップ処理を実行し、電源の復帰後は前記バックアップ処理により記憶保持した前記各種制御情報に基づき制御を開始して遊技を再開させ、前記主基板は前記電源の復帰時に前記各種制御情報として前記払出し制御基板に出力していない前記賞球制御信号を記憶保持している場合には前記賞球制御信号を前記払出し制御基板に出力する」のに対して、引用発明2にはかかる構成がない点

[相違点2]
上記一致点における「サブ制御基板」について、本願発明は「払出し制御基板」であるのに対して、引用発明2においては「表示制御基板」である点。

[相違点3]
上記一致点における「電源投入時」について、本願発明は電源復帰時であるのに対して、引用発明2にはかかる構成がない点。

[相違点4]
本願発明においては、「前記制御の開始を規制する規制信号を両基板に制御を開始させる迄の間出力する」ことにより「遅延時間を生じさせ」ているのに対して、引用発明2においてはかかる構成であるか不明である点。

4.相違点の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

電源電圧を検知する手段を設け、停電時にバックアップ電源手段からの電源供給によってバックアップ処理を行うことは、引用文献2には「商用電源等の外部電源50が停電すると…遊技が中断又は停止する。しかし、主電源部60からの電源供給が停止すると同時に、電源基板42のバックアップ電源部61が働き、このバックアップ電源部61から…給電する。」(段落【0033】)と記載があり、特開平6-71028号公報(以下「引用文献5」という。)には、「停電検出手段114が停電状態を検出することで…記憶保持に必要な電源供給を行う」(段落【0063】)と記載があり、また引用文献4には、停電検出回路208及び「RAM203に対してバックアップ電源を供給可能なコンデンサ212(バックアップ手段:バックアップ電源手段)」(段落【0067】)を設け、停電処理(段落【0066】参照)を行う点が記載されているように従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)に過ぎない。
そして、停電(電源遮断)時のバックアップ処理は、遊技の再開において必要と判断される範囲で行えばよいことであるから、どのデータをバックアップするかは当業者が適宜選択出来る設計事項に過ぎないが、主基板と払出し制御基板において電源遮断時にバックアップ処理を行うことは、引用文献2の遊技状態記憶手段48、払い出し個数記憶手段57(段落【0033】、【0035】,【0036】参照)や引用文献5の記憶保護手段125′、記憶保護手段125(段落【0063】-【0064】参照)にあるように従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)に過ぎない。
また、相違点1にかかる「電源の復帰後は前記バックアップ処理により記憶保持した前記各種制御情報に基づき制御を開始して遊技を再開させる」という点も、引用文献2には「外部電源50の復旧後に遊技状態記憶手段48の記憶データを読み出して遊技を継続し、払い出し個数記憶手段57の記憶データを読み出して遊技球払い出し手段30により賞品球の払い出しを行う」(段落【0038】)と記載があり、また引用文献5には明確な記載はないものの、引用文献5も「遊技中における不意の停電や故障の際にも、遊技者が不利益を受けることなく、入賞球に応じた賞球を確実に獲得することができる。」(段落【0064】)という目的のものであって、そして遊技の再開時にバックアップした情報を利用することは当然のことに過ぎないから、同様に従来周知の技術(以下「周知技術5」という。)であると判断できる。
さらに、相違点1にかかる「主基板は電源の復帰時に各種制御情報として払出し制御基板に出力していない賞球制御信号を記憶保持している場合には賞球制御信号を払出し制御基板に出力する」という点も、引用文献2には「主制御手段46の遊技制御手段47が入賞信号を払い出し制御手段55へと送信する直前に停電した場合には、遊技状態記憶手段48がその入賞データを記憶している。そして、外部電源50が復旧すれば、その後に遊技制御手段47が遊技状態記憶手段48の入賞データを読み出して払い出し制御手段55へと送信する」(段落【0037】)と記載があり、また引用文献5も、停電時に電気的制御装置56における第1賞球排出数記憶手段118の記憶内容も保護するもの(段落【0064】参照)であり、かつ「第1賞球排出数記憶手段118より賞球排出数送信手段119に供給されていた賞球排出数が、排出制御装置58内の第2賞球排出数記憶手段123へ送信される」(段落【0055】)ものであるから、とすれば引用文献5には停電からの復帰後について具体的な記載がないが、「第1賞球排出数記憶手段118の記憶内容に対する保護も確実ならしめる」(段落【0064】)という目的も踏まえれば、停電からの復帰後に当該記憶内容が第2賞球排出数記憶手段123へ送信されることは当然想定され得ることであるから、同様に従来周知の技術(以下「周知技術6」という。)であると判断することができる。

よって、本願発明の相違点1にかかる構成は、引用発明2及び周知技術3?6に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点2について]

引用発明2においても、遅延時間は「表示制御用CPU91の初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されないよう」な時間に設定されており、これによって「表示制御手段における初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されて表示制御手段が表示制御コマンドデータを取り損なうという事態を生じないようにした」という効果を奏するものであって、「コマンドデータを取り損なう」ことを防ぐ必要性は「表示制御」に特段限られるものではないことは明らかであるから、その目的に該当する範囲で、遅延させる対象の制御手段(制御基板)は当業者が適宜設計できるものである。
引用発明2は、「入賞があったことは入賞玉検出器99で検出されるが、その場合に、賞球基板37は、入賞データ信号を出力し、CPU56は、入力ポートを介して入賞データ信号を入力すると、各センサのON/OFF状態に応じた賞球個数を決定し、決定結果を賞球個数信号として、出力ポートおよび賞球基板入出力回路61を介して賞球基板37に出力」するものであって、すなわち、まず賞球基板37から遊技制御基板31へ信号が送信され、その後遊技制御基板31から賞球基板37へ信号が送られるものであるから、引用発明2における遊技制御基板31と賞球基板37との関係は、引用発明2において遅延制御を行う対象としている遊技制御基板31と表示制御基板80との関係とは異なっている。
しかし、入賞に基づく遊技球の払出しに関するデータ送信において、主基板から払出し制御基板へ一方向に情報を送信する例も、例えば引用文献1,2,4にあるように慣用の技術に過ぎないから、該慣用技術を採用すれば、主基板(引用発明2における「遊技制御基板31」)から払出し制御基板(引用発明2における「賞球基板37」)へのデータ送信について、同様な遅延制御を行うことに何ら阻害要因はないから、引用発明2及び慣用技術に基づき本願発明の相違点2にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]

電源復帰時も電源投入時の一形態であり、引用発明2における「表示制御手段における初期化プログラムの実行が完了しないうちに遊技制御手段から表示制御コマンドデータが送出されて表示制御手段が表示制御コマンドデータを取り損なうという事態を生じないようにした」という目的を踏まえれば、電源復帰時点も同様の問題が生じ得ることは当然である。とすれば、電源復帰時において引用発明2の技術思想を採用することも当業者にとって容易に想到できたことである。
よって、本願発明の相違点3にかかる構成とすることは、引用発明2に基づき当業者が容易に想到できたことである。

[相違点4について]

引用発明2においても、遊技制御基板31と表示制御基板80のリセット回路がリセット信号をそれぞれの制御手段(CPU)に出力しているから、本願発明の「両基板に…出力」する点を満たしている。また、引用文献3において、遊技制御基板31については「タイミングA時間+遅延量」、表示制御基板80については「タイミングA時間」、それぞれ制御の開始を規制しているものと解されるから、これらの時間は、本願発明の「前記制御を開始する迄の間」に相当し、そして両者の差、すなわち「遅延量」の分、本願発明の「遅延時間」を生じさせているものである(上記第2[理由]5.における[相違点2について]において詳しくは既述。)。
とすれば、相違点4については、本願発明においては、規制信号として「…迄の間…継続して出力」という出力形態を採用しているのに対して、引用発明2がそのような出力形態を採用していない(すなわち、制御の開始を規制する方法として、リセット信号の出力レベルをローレベルからハイレベルに変化させる方法を用いている)点が、実質的な相違点であると解されるが、信号の出力形態としてどのような論理構成を採用するかは当業者の設計事項に過ぎない。
よって、本願発明の相違点4にかかる構成とすることは、引用発明2に基づき当業者が容易に想到できたことである。

[相違点の判断におけるむすび]

よって、相違点にかかる本願発明の構成は、引用発明2、周知技術3?6及び慣用技術から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきであり、そして、本願発明の作用効果も、引用発明2、周知技術3?6及び慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件補正は却下され、そして、本願発明は原査定の拒絶の理由に基づいて特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-15 
出願番号 特願2000-335893(P2000-335893)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之木村 励  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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