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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D21H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D21H
管理番号 1206355
審判番号 不服2005-13842  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-20 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 特願2001-144032「衛生用紙」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 88687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成10年4月9日に出願された特願平10-135881号(平成14年法律第24号の改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前(以下「平成14年改正前」という。)の特許法第41条第1項の規定による優先権の主張:平成9年4月9日 特願平9-126202号)(以下、「原出願」という。)の一部を、平成13年5月14日に平成14年法改正前の特許法第44条第1項の規定に基づいて分割して新たな特許出願(平成14年法改正前の特許法第41条第1項の規定による優先権の主張 特願平9-126202号 平成9年4月9日)としたものであって、以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成17年 2月17日付け 拒絶理由通知
平成17年 4月28日 意見書・手続補正書
平成17年 6月 9日付け 拒絶査定
平成17年 7月20日 本件審判請求
平成17年 7月20日 手続補正書
平成17年10月13日 手続補正書(審判請求理由補充書)
平成18年 3月 1日付け 前置報告
平成19年10月17日付け 審尋
平成19年12月25日 回答書
平成20年 7月31日付け 補正の却下の決定・拒絶理由通知
平成20年10月 6日 手続補正書
平成20年10月14日 意見書
(なお、平成17年7月20日付けの手続補正は、平成20年7月31日付けの補正の却下の決定をもって却下された。)

第2 当審が通知した拒絶理由
当審が通知した平成20年7月31日付けの拒絶の理由は、概略以下の理由を含むものである。
「第4 特許法第44条第1項に規定する要件について
この出願と原出願(特願平10-135881号)との関係について、平成14年法律第24号による改正前の特許法第44条第1項に規定する要件(以下、単に「分割要件」という。)を満たしているか否かを検討する。
・・(中略)・・
(3) 小括
上記(1)及び(2)のとおり、本願発明1及び本願発明2は、原出願当初明細書等に記載されていない態様を含むもので、分割要件を満たしていない。

3 まとめ
本願発明1及び本願発明2は、原出願当初明細書等に記載されていない態様1-2及び態様2-2を含むものであるから、原出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でなく、分割要件を満たしておらず、この出願について出願日の遡及は認められないものである。

第5 拒絶の理由
・・(中略)・・
2 拒絶の理由2
この出願は、明細書の特許請求の範囲の記載が下記(1)の点で、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」との要件に適合しないから、平成14年法律第24号による改正前の特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1) この出願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、(請求項の記載と整合させた段落があり、また、同じ記載を繰り返した部分も存在するものの)、原出願の明細書の発明の詳細な説明の記載と実質的に同じものということができる。
そして、上記「第4」で記載したとおり、本願発明1及び本願発明2は、原出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でなく、分割要件を満たしていないのであるから、原出願の明細書の発明の詳細な説明の記載と実質的に同じものであるこの出願の明細書の発明の詳細な説明に、本願発明1及び本願発明2が記載されていないことは明らかである。
そうすると、この出願の請求項1及び請求項2の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するということはできない。

・・(中略)・・

4 拒絶の理由4
この出願は、上記第4で述べたとおり分割要件を満たさない出願であるから、この出願について出願日の遡及は認められず、そうすると、この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Mに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・(中略)・・
(1) 刊行物
刊行物A:特開平11-1896号公報(原出願の公開公報:前出)
刊行物B:特開昭62-275466号公報
刊行物C:特開平5-168570号公報
刊行物D:特開平5-269328号公報
刊行物E:特公平6-15675号公報
刊行物F:特開平9-67797号公報
刊行物G:特開平7-143940号公報
刊行物H:実願平1-104705号のマイクロフィルム
(実開平3-44497号公報)
刊行物I:特開昭55-98998号公報
刊行物J:特開平5-211838号公報
刊行物K:機能材料1997年1月号(1996年12月5日発行)
43ページ?49ページ
刊行物L:登録実用新案第3032802号公報
刊行物M:特開平3-29623号公報」

第3 本願に係る発明
本願に係る発明は、平成17年4月28日及び平成20年10月6日の各日付けでした各手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙であることを特徴とする衛生用紙。」

第4 当審の判断
平成20年10月6日付けの手続補正により補正された本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の記載に基づき、上記第2に示した理由について再度検討する。

1.特許法第44条第1項に規定する要件について
本願と原出願(特願平10-135881号)との関係について、分割要件を満たしているか否かをまず再度検討するが、分割要件の検討にあたっては、分割された出願に係る発明が、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)に記載したもので、さらに分割の直前の原出願の願書に添付した明細書又は図面に記載したものであることを要するところ、事案にかんがみ、まず、本願に係る上記各発明が、原出願当初明細書等に記載したものか否かにつき検討する。

(1)原出願当初明細書等の記載
原出願当初明細書等には、以下の記載がある。
<原-1>
「【請求項1】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項2】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項3】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と、並びに吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物とを含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項4】 吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部とを備えており、前記吸水性の紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記吸水性の紙層部並びに前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項5】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項6】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項7】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項8】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項9】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項10】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殼の乾燥物、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項11】 吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殼の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項12】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項13】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項14】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項15】 吸水性材料粉が、木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、ラミネート加工紙の粉砕物、並びにおむつ、紙おむつ又は動物の紙おむつの廃材粉砕物、生理用ナプキン廃材粉砕物、チタン紙及びパンチ屑などの屑紙の粉砕物並びに生理用ナプキン廃材の粉砕物であることを特徴とする請求項3乃至7及び請求項10乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項16】 吸水性樹脂が、一以上の吸水性樹脂又は一以上の吸水性繊維或いはこれらの混合物、或いは一以上の吸水性樹脂廃材粉又は一以上の吸水性繊維廃材粉或いはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2乃至7及び請求項9乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項17】 吸水性材料粉及び吸水性樹脂の配合物が、紙おむつ若しくは動物の紙おむつの廃材粉砕物、動物用シーツ廃材粉砕物、或いは乳パッド廃材、失禁パッド廃材、汗パッド廃材又は生理用ナプキン廃材の粉砕物或いはこれらの二以上の粉砕物の混合物であることを特徴とする請求項3乃至7及び請求項10乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項18】 多孔層部がプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布で形成されていることを特徴とする請求項5乃至7及び請求項12乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項19】 第一の紙層部の上に、吸水性材料粉及び吸水性樹脂粉の混合物又は吸水性繊維を載せ、その上に第二の紙層部を配置して、積層物を形成し、この積層物を加圧して一体に形成し、この一体に形成された積層物をプラスチック製の不透水性膜部材の上に載せ、第一の紙層部の上に、透水性の多孔層部材を載せ、この積層物を加圧して一体に形成することを特徴とする衛生シーツの製造方法。」(【特許請求の範囲】)
<原-2>
「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材等の有機物廃材を利用した衛生シーツに関し、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ及び動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる衛生シーツに関する。また、本発明は、長時間使用して衛生状態を保持することができる使い捨ての衛生シーツに関し、特に、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる使い捨ての衛生シーツに関する。」(【0001】)
<原-3>
「【従来の技術】一般に、衛生用シーツは、寝具用シーツ、紙おむつ、生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド、おむつ及びペット用シーツなどに使用されている。例えば、寝具用シーツは、ベッドや敷布団の上に敷いて、ベッドや布団の耐久性を保ち、ベッドや布団を清潔に維持するために用いられている。就寝中にも、人間の皮膚からは、汗以外に水分が絶えず外に排泄されており、これらの水分は、寝床や寝衣に吸い取られるので、例えば、寝具用シーツには、保温性及び適度の吸湿性を備えることが要求される。
また、寝具用シーツや寝具は、吸湿性や吸水性の高い繊維で形成されるので、皮膚表面から脱落した角化した角質層や皮膚に付着した塵に皮膚の皮脂や汗などによる垢などが付着して、汚染され易く、病原菌が増殖することとなり、特に、蓐瘡等の場合に問題である。そこで、寝具用シーツや寝具については、常に清潔さを保つために、常に清浄さが保てるように、頻繁に取り替えて、繰り返し使用できるように、洗濯に強い木綿等が素材として使用されている。」(【0002】?【0003】)
<原-4>
「【発明が解決しようとする課題】しかし、木綿製等の寝具用シーツの場合、取り替える度毎に、洗濯されるが、比較的嵩ばるのと、汚れの程度が相違し、また洗濯により清浄にできる程度も相違するので、自動洗濯機等によるとしても、希望するように清潔にすることは難しく、またそのようにするには多くの手間を要して問題である。そこで、パルプ粉砕物に粉状の高吸水性樹脂を含有保持させた吸水層を設けた使い捨ての寝具用シーツが使用されている。しかし、パルプ粉砕物が、従前に比して入手困難であり、比較的高価であるために、使い捨ての寝具用シーツは、パルプ粉砕物の使用量を減らし、このパルプ粉砕物の減った分の吸水能を高吸水性樹脂で補って形成されている。そのために、寝具用シーツは、比較的薄く形成されることとなり、弾力性に乏しく、比較的堅いものとなり、問題とされている。また、パルプ粉砕物を補うために加えられた高吸水性樹脂の発熱量は、減らしたパルプ粉砕物の発熱量に比してかなり低いために、使用後で濡れたシーツなどの場合には、燃料を加えないと燃焼が維持できなくなり、外部から熱を与えなければ焼却できなくなり問題である。
一方、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造業から排出される、お茶の浸出滓の茶殻、及び該茶殻に残留して茶殻から滲出する茶殻残留廃液は膨大な量に上っている。しかし、茶殻はかなりの量の茶殻残留液を含むために、堆肥等に有効利用するにも、その処理が難しく、問題とされている。しかも、茶殻残留廃液には、タンニン類が含まれているために、その侭廃棄できず、廃棄するには、活性汚泥法等により無害化処理をしなければならず、またその沈殿物は専ら焼却処理しなければならず問題とされている。本発明は、従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殼残留廃液の処理を目的としている。」(【0004】?【0005】)
<原-5>
「【課題を解決するための手段】本発明者は、ウーロン茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間以上に亙って阻害することを発見し、また緑茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見し、さらに紅茶を抽出した茶殻について水または湯により浸出した茶殼抽出液が、黄色ブドウ球菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見して本発明に至った。本発明は、一種以上の茶殻抽出液、即ち一種以上の茶殻残留廃液を含む茶殻の浸出液、又は前記一種以上の茶殻を常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出した茶殻抽出液、この再浸出された茶殻の混合物を、吸水性の紙層部、吸水性材料粉と吸水性樹脂の混合層部、或いは吸水性の紙層部と前記混合層に含浸保持させて乾燥して得られる衛生的に優れた衛生シーツを提供するものであり、また、一種以上の茶殻抽出液、茶殻残留廃液及び茶殻を活用できる、安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている。」(【0006】)
<原-6>
「即ち、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と、並びに吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物とを含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部とを備えており、前記吸水性の紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記吸水性の紙層部並びに前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにある。
さらに、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにある。
さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにある。
さらに加えて、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにある。さらに加えて、本発明は、第一の紙層部の上に、吸水性材料粉及び吸水性樹脂粉の配合物又は吸水性繊維を載せ、その上に第二の紙層部を配置して、積層物を形成し、この積層物を加圧して一体に形成し、この一体に形成された積層物をプラスチック製の不透水性膜部材の上に載せ、第一の紙層部の上に、透水性の多孔層部材を載せ、この積層物を加圧して一体に形成することを特徴とする衛生シーツの製造方法にある。」(【0007】?【0010】)
<原-7>
「【発明の実施の形態】本発明の衛生シーツは、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用でき、長時間に亙って良好な衛生状態を保持することができるものである。本発明において、衛生シーツは、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバーに使用できる衛生シーツであり、有機物廃材を原料として、安価に製造することができ、使い捨て用素材に適している。さらにまた、本発明の衛生シーツは、透水性の多孔層部と、プラスチック製の不透水性膜部の間に配置できるように形成して、寝具用シーツ、使い捨て用のおむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツとすることができる。本発明において、動物用シーツは、従来の動物用シーツと同様に、排泄用として使用されるものであるが、その他に、休養及び就寝用として使用されるものである。」【0011】
<原-8>
「本発明において、吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ、生理用ナプキン又はタンポン或いはそれらに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され、クレープを付して形成されるのが、良好な吸水性を確保できるので好ましい。本発明においては、前記吸水性の紙層部の下面に接して高吸水性樹脂及び吸水性材料粉を混合物として又は混合物としないで含有する吸水性混合層部を設けることができる。この吸水性混合層部には、綿状パルプ層の間に高吸水性樹脂が挟持され、その表裏両面に吸水紙が設けられている所謂ポリマーシートを使用することができる。ポリマーシートを使用する場合には、多孔層の下面に接する吸水性の紙層部及び不透水性膜部上面に節する吸水性の紙層部を省略することができる。」(【0013】)
<原-9>
「【実施例】以下、本発明の実施の態様の例を説明するが、本発明は、以下の説明及び例示によって何等制限されるものではない。図1は、本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。図2は本発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。図3は、本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。図1乃至図3において対応する箇所には同一の符号が付されている。
図1において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に高吸水性ポリマーシート3(17.6重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、該ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層の前記ポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
図2において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に吸水紙4(2.1重量部)が配置され、その上に綿状パルプ6(16.9重量部)が配置され、その上に、高吸水性樹脂7(3重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物及び紅茶茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層のポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
図1及び図2に示す実施例においては、一種又は二種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させた吸水紙を使用する事例を示したが、一種又は二種の茶殻抽出液の乾燥物に同種又は他種類の茶殻の乾燥物をも含有する吸水紙を使用することもできる。この場合は、一種以上の茶殻抽出液の抽出液と一種以上の茶殻の混合物を、吸水紙に噴霧等により含浸させて、乾燥させて製造することができる。図1及び図2に示す実施例においては、緑茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の緑茶の茶殻200gに水500mlを加えて10分間抽出して得られた緑茶茶殻抽出液を使用し、ウーロン茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%のウーロン茶の茶殻140gに水350mlを加えて10分間抽出して得られたウーロン茶殻抽出液を使用し、紅茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の紅茶の茶殻210gに水525mlを加えて10分間抽して得られた紅茶茶殼抽出液を使用した。
これらの茶殻抽出液は、セルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧された。各茶殻抽出液の噴霧の量は、前記不織布について、一辺の長さが100cmの正方形に切り出して測定された。測定結果を次の表1に示す。


」(【0026】?【0030】)
<原-10>
「図3において、吸水紙4のロール8は、吸水紙送り出しローラ9により引き出されて、綿状パルプ6の供給ローラ10に送られて、粉砕機11で粉砕された綿状パルプ6が供給される。綿状パルプ6が供給された吸水紙4は、吸水紙4上の綿状パルプ6の量が一定となるように調整されている。一種以上の茶殻抽出液(茶殻の再浸出液)は、噴霧箇所12に送られて、一種以上の茶殻抽出液を噴霧器13から噴霧される。本例においては、このようにして、一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が、吸水紙4上の一定量の綿状パルプに噴霧される。一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が噴霧された吸水紙4は、高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られる。高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られた一種以上の茶殻抽出液が噴霧された吸水紙4には、高吸水性樹脂7が高吸水性樹脂散布機15から散布される。高吸水性樹脂7が散布された吸水紙4は、上側吸水紙4の供給箇所16に送られて、吸水紙4のロール8から上方に吸水紙4が載せられる。上下に吸水紙4が配置された積層帯状物17は、エンボス機18に送られてエンボスが形成される。エンボスが形成された積層帯状物は17は、マットカッター19に送られて、長さ450mmの積層物に切断される。切断された積層物の下方には、下方からポリエチレンフィルム2がポリエチレンフィルム2のロール20から供給され、積層物はポリエチレンフィルム2の上に載せられて、ポリプロピレン不織布5を被せる箇所21に送られる。
ポリプロピレン不織布5は、ポリプロピレン不織布5のロール22から送られ、途中ホットメルト接着剤が噴霧器23から噴霧される。ホットメルト接着剤が噴霧されたポリプロピレン不織布5は、積層物上に載せられる。ポリプロピレン不織布が載せられた積層物は、サイドシール機24に送られて、両側部は、圧着されて、ホットメルト接着剤により接着される。両側部が接着された積層物は、エンドシール機25に送られて長手方向両端部が接着され、製品カッター26に送られ、所定の寸法に切断され製品として送られる。製品カッター26で切断された製品は、折り機によって折られ包装機により包装されて出荷される。
本例においては、動物用シーツを例に説明したが、他の衛生シーツの場合は、紙漉機等により、紙層部が形成されて乾燥工程に移行する段階で、茶殻抽出液、例えばウーロン茶の茶殻抽出液が噴霧されて含浸される。茶殻抽出液が含浸された紙層部は、乾燥機内で高温で乾燥され、消毒されて衛生シーツとして提供される。この場合、茶殻抽出液に、複数種の茶殻抽出液を混合した混合抽出液を含浸させて乾燥することができる。このように各種の抽出液を混合することにより、より強力な微生物の増殖の抑制作用を発揮させることができる。」(【0031】?【0033】)
<原-11>
「【発明の効果】本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。
また、本発明においては、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び一種以上の茶殻の乾燥物の混合物を含むので、従来の紙おむつ、動物用シーツと比して、排泄した尿により濡れがなく、尿や体臭による汚臭を抑制することができ、例えば、愛玩用の動物用として、休養時、就寝時又は排泄時に使用して、周囲を良好な衛生状態に保っことができる。本発明においては、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる。」(【0034】?【0035】)
<原-12>
「【図1】本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図2】発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図3】本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。」
(【図面の簡単な説明】)
<原-13>
「1 動物用シーツ
2 ポレエチレンフィルム
3 高吸水性ポリマーシート
4 吸水紙
5 ポリプロピレン不織布
6 綿状パルプ
7 高吸水性樹脂
8 吸水紙4のロール
9 吸水紙送り出しローラ
10 綿状パルプの供給ローラ
11 粉砕機
12 一種以上の茶殻抽出液の再抽出液の噴霧箇所
13 一種以上の茶殻抽出液の再抽出液の噴霧器
14 高吸水性樹脂7の散布箇所
15 高吸水性樹脂7の散布機
16 上側吸水紙4の供給箇所
17 積層帯状物16
18 エンボス機
19 マットカッター
20 ポリエチレンフィルム2のロール
21 ポリプロピレン不織布5を被せる箇所
22 ポリプロピレン不織布のロール
23 ホットメルト接着剤噴霧器
24 サイドシール器
25 エンドシール機
26 製品カッター」(【符号の説明】)
<原-14>


」(【図1】)
<原-15>



」(【図2】)
<原-16>



」(【図3】)

(2)検討
摘示した<原-1>?<原-16>の各記載を総合すると、原出願当初明細書等には、従来の寝具用シーツ等の再使用、製造及び廃棄の際などに生ずる種々の問題点の解決とともに、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻等の活用による安価な使い捨て衛生シーツの提供を目的・課題とし(摘示<原-4>及び<原-5>)、「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ」又は「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ」を課題解決の手段とする発明(摘示<原-1>及び<原-6>)が記載され、そして、この発明は、「従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができ」、「缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができ」、「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる」こと(摘示<原-11>)を効果とするものであるということができる。
ここで、「衛生シーツ」は、「特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ及び動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる・・・。また、・・・、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる使い捨ての衛生シーツ・・・。」(摘示<原-2>)、「寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用でき・・・。・・・、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバーに使用できる衛生シーツであり・・・使い捨て用素材に適している。さらにまた、本発明の衛生シーツは、透水性の多孔層部と、プラスチック製の不透水性膜部の間に配置できるように形成して、寝具用シーツ、使い捨て用のおむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツ・・・。」(摘示<原-7>)であるとされているところ、「衛生シーツ」は、「一般に、・・・、寝具用シーツ、紙おむつ、生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド、おむつ及びペット用シーツなどに使用され」(摘示<原-3>)るものであるから、原出願当初明細書等には、そもそも、従来「シーツ」とはいわないようなもの(「トイレットペーパー」(JIS P4501又はJIS P 0001(番号6119)で定義されるもの。)や「ティッシュ」(JIS P 0001(番号6114)で定義されるもの。)など)についても「衛生シーツ」と称すること(摘示<原-2>及び<原-7>)が一応記載されている。一方、原出願当初明細書等において、「衛生シーツ」として具体的に記載されているのは、実質的に図2で表される動物用シーツ1(ポリエチレンフィルムの上に吸水紙が配置され、その上に綿状パルプが配置され、その上に、高吸水性樹脂が配置され、その上に特定の茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布で覆い、ポリプロピレン不織布の端部は、最下層のポリエチレンフィルムの端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着したもの。摘示<原-9>参照。)のように、吸水性の紙層部(吸水紙)に加えてさらに吸水性混合層部、不透水性膜部、多孔層部などを有し、例えば【図3】(摘示<原-16>)のような設備で製造されるものであって、吸水性の紙層部(吸水紙)のみから構成されるような「衛生シーツ」については、実質的に何ら記載されていないといわざるを得ないし、また、吸水性の紙層部(吸水紙)のみから構成されるような「衛生シーツ」が、上記の目的・課題(摘示<原-4>及び<原-5>)を解決し得るものであって、上記の効果(摘示<原-11>)を得ることができるものであることは、原出願当初明細書等を精査しても、これを把握することはできない。
したがって、原出願当初明細書等の記載について技術常識を踏まえて総合的にみると、原出願当初明細書等には、「衛生シーツ」について、従来「シーツ」とはいわない「トイレットペーパー」又は「ティッシュ」それ自体として独立して使用されるものまでは記載されていない。
さらに検討すると、原出願当初明細書等には、「吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ、生理用ナプキン又はタンポン或いはそれらに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され」ること(摘示<原-8>)について記載されているが、この「吸水性の紙層部」は、衛生シーツにおける構成材料のひとつにすぎないから、結局、「衛生用紙」は、あくまでも衛生シーツを構成するためのものとして記載されているだけである。その余の原出願当初明細書等の記載を精査しても、「衛生用紙」について、衛生シーツを構成するという特定の使用態様・用途から独立してそれ自体として把握し得る「ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙」である「衛生用紙」についてまで、原出願当初明細書等に記載されているということはできない。

(3)小括
以上のとおりであるから、原出願当初明細書等の上記記載状況の下では、原出願当初明細書等に、特定の使用態様・用途から独立してそれ自体として把握し得る「ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙」である「衛生用紙」に係る発明までは、記載されていないというべきである。

(4)審判請求人の主張
審判請求人は、上記平成20年10月14日付け意見書において、
「[3] 分割の要件について
(1) 本願の原出願の特願10-135881(以下、原出願という)の願書に最初に添付した明細書(以下、原明細書という)の段落[0013]には、
『 [0013]
本発明において、吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ、生理用ナプキン又はタンポン或いはそれらに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され、クレープを付して形成されるのが、良好な吸水性を確保できるので好ましい。・・(以下略)』
と記載している。
この記載は、吸水性の紙層部が、素材の「ティシュペーパ」、「ちり紙」、「トイレットペーパ」、紙おむつ、生理用ナプキン又はタンポン或いはそれらに使用される「生理用紙」又は「タオル用紙」などの「衛生用紙」で形成されることを示している。
(2) ところで、原明細書の段落[0027]?[0028](本願の明細書の願書に最初に添付した明細書(以下、本願原明細書という)の段落[0038]?[0039]に対応する)には、
『 [0027]
図1において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に高吸水性ポリマーシート3(17.6重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、該ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層の前記ポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
[0028]
図2において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に吸水紙4(2.1重量部)が配置され、その上に綿状パルプ6(16.9重量部)が配置され、その上に、高吸水性樹脂7(3重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物及び紅茶茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層のポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。』
と記載している。
(3) この段落[0027]の記載における「その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4(4.7重量部)が配置され、」の記載及び[0028]の記載における「その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物及び紅茶茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙4(4.7重量部)が配置され、」の記載は、「茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4」の発明が、原明細書に記載されていることを示している。
(4) さらにまた、原明細書の段落[0029]には、
『 [0029]
図1及び図2に示す実施例においては、一種又は二種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させた吸水紙を使用する事例を示したが、一種又は二種の茶殻抽出液の乾燥物に同種又は他種類の茶殻の乾燥物をも含有する吸水紙を使用することもできる。この場合は、一種以上の茶殻抽出液の抽出液と一種以上の茶殻の混合物を、吸水紙に噴霧等により含浸させて、乾燥させて製造することができる。
図1及び図2に示す実施例においては、緑茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の緑茶の茶殻200gに水500mlを加えて10分間抽出して得られた緑茶茶殻抽出液を使用し、ウーロン茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%のウーロン茶の茶殻140gに水350mlを加えて10分間抽出して得られたウーロン茶殻抽出液を使用し、紅茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の紅茶の茶殻210gに水525mlを加えて10分間抽して得られた紅茶茶殻抽出液を使用した。』
と記載しており、この記載は、「茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4」の発明が、原明細書に記載されていることを示している。
(5) また、原明細書の段落[0034]には
『 【0034】
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。』
と記載している。
この記載において、「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。」の記載は、吸水性の紙層部、即ち衛生用紙が、「茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。」という作用効果を発揮することを示すものである。
(6) このように、原出願は、衛生用紙に係る発明を包含するものであり、衛生用紙に係る発明の目的、構成、作用効果を包含するものであるから、本願は、特許法第44条第1項の規定に基づき、二以上の発明を包含する原出願の一部を新たな特許出願としたものであり、特許出願の分割の要件を備えるものである。
したがって、本願は、特許法第44条第2項の規定により、もとの特許出願の時にしたものとみなされるべきものである。
(7) また、原出願の明細書の衛生シーツに係る部分は、本願発明の衛生用紙の実施の一態様であり、本願発明の衛生用紙の作用効果の一を具体的に示すものであるから、本願明細書は、本願発明の実施態様及び作用効果を説明する上で、衛生シーツに係る記載部分を利用するものである。
したがって、本願明細書に、衛生シーツに係る記載箇所があっても、衛生シーツに係る記載箇所は、本願発明の衛生用紙の発明の実施の一態様を示すものであり、「衛生用紙」の発明の構成、作用及び効果をより具体的に示すものであるから、特許を受けようとする発明を明確にするものと思料する。」
と主張している(意見書「[3] 分割の要件について」の欄)。
そこで、原出願当初明細書等の記載に基づき検討すると、原出願当初明細書等には、請求人が指摘するとおりの事項が記載されているものの、上記「(2)検討」で説示したとおり、「多数の材料の積層物である衛生シーツにおける特定の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部」、当該「吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ、生理用ナプキン又はタンポン或いはそれらに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され」ること及び「特定の茶殻抽出液の乾燥物を含むセルロース素材製の不織布」がそれぞれ記載されているのみであり、「特定の茶殻抽出液の乾燥物を含む紙」を、「ティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙」なる用途物として独立して使用することについて記載されているものとはいえない。
したがって、審判請求人の上記意見書における「[3] 分割の要件について」の欄の主張は、いずれも根拠を欠くものであるから、採用する余地がなく、当審の上記検討結果を左右するものではない。

(5)分割要件に係るまとめ
以上のとおり、本願発明は、原出願当初明細書等に記載されていないものであるから、本願発明につき、分割直前の原出願の願書に添付された明細書又は図面に記載したものか否かの検討を行うまでもなく、本願に係る出願の分割は、分割要件を満たしておらず、本願は、原出願の出願日に出願したものとみなすことができない。
また、本願は、原出願の出願日に出願したものとみなすことができないのであるから、実際の出願日に出願したと解すべきものであるが、当該実際の出願日は、本願に係る優先権主張の基礎となる特許出願の日から1年以内ではないから、平成14年改正前の特許法第41条第1項第1号に該当し、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、本願は、同法同条第2項に規定する優先権主張の効果を得ることもできない。

2.拒絶理由について

(1)はじめに
上記1.で説示したとおり、本願に係る出願の分割は、分割要件を満たしていないものであるから、実際の出願日(平成13年5月14日)に先の出願に基づく優先権主張がなく出願したものとして、当審が通知した上記拒絶理由につき、再度検討する。

(2)平成14年改正前特許法第36条第6項に係る理由(上記「拒絶の理由2」)

ア.検討するにあたって(前提)
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる、「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号判決)であるから、この観点に立って検討する。

イ.本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(審決注:なお、下記摘示における下線部は、平成20年10月6日付け手続補正により補正された部分である。)

(ア)「【発明の属する技術分野】
本発明は、衛生用紙に関し、特に、ティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙に関する。」(【0001】)

(イ)「【従来の技術】
一般に、衛生用シーツは、寝具用シーツ、紙おむつ、生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド、おむつ及びペット用シーツなどに使用されている。例えば、寝具用シーツは、ベッドや敷布団の上に敷いて、ベッドや布団の耐久性を保ち、ベッドや布団を清潔に維持するために用いられている。
就寝中にも、人間の皮膚からは、汗以外に水分が絶えず外に排泄されており、これらの水分は、寝床や寝衣に吸い取られるので、例えば、寝具用シーツには、保温性及び適度の吸湿性を備えることが要求される。
また、寝具用シーツや寝具は、吸湿性や吸水性の高い繊維で形成されるので、皮膚表面から脱落した角化した角質層や皮膚に付着した塵に皮膚の皮脂や汗などによる垢などが付着して、汚染され易く、病原菌が増殖することとなり、特に、蓐瘡等の場合に問題である。
そこで、寝具用シーツや寝具については、常に清潔さを保つために、常に清浄さが保てるように、頻繁に取り替えて、繰り返し使用できるように、洗濯に強い木綿等が素材として使用されている。」(【0002】?【0003】)

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
しかし、木綿製等の寝具用シーツの場合、取り替える度毎に、洗濯されるが、比較的嵩張り、汚れの程度が相違し、また洗濯により清浄にできる程度も相違するので、自動洗濯機等によるとしても、希望するように清潔にすることは難しく、またそのようにするには多くの手間を要して問題である。
そこで、パルプ粉砕物に粉状の高吸水性樹脂を含有保持させた吸水層を設けた使い捨ての寝具用シーツが使用されている。しかし、パルプ粉砕物が、従前に比して入手困難であり、比較的高価であるために、使い捨ての寝具用シーツは、パルプ粉砕物の使用量を減らし、このパルプ粉砕物の減った分の吸水能を高吸水性樹脂で補って形成されている。そのために、寝具用シーツは、比較的薄く形成されることとなり、弾力性に乏しく、比較的堅いものとなり、問題とされている。また、パルプ粉砕物を補うために加えられた高吸水性樹脂の発熱量は、減らしたパルプ粉砕物の発熱量に比してかなり低いために、使用後で濡れたシーツなどの場合には、燃料を加えないと燃焼が維持できなくなり、外部から熱を与えなければ焼却できなくなり問題である。
一方、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造業から排出される、お茶の浸出滓の茶殻、及び該茶殻に残留して茶殻から滲出する茶殻残留廃液は膨大な量に上っている。しかし、茶殻はかなりの量の茶殻残留液を含むために、堆肥等に有効利用するにも、その処理が難しく、問題とされている。しかも、茶殻残留廃液には、タンニン類が含まれているために、その侭廃棄できず、廃棄するには、活性汚泥法等により無害化処理をしなければならず、またその沈殿物は専ら焼却処理しなければならず問題とされている。
本発明は、従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殻残留廃液の処理を目的としている。」(【0004】?【0005】)

(エ)「【課題を解決するための手段】
本発明者は、ウーロン茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間以上に亙って阻害することを発見し、また緑茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見し、さらに紅茶を抽出した茶殻について水または湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見して本発明に至った。
本発明は、一種以上の茶殻抽出液、即ち一種以上の茶殻残留廃液を含む茶殻の浸出液、又は前記一種以上の茶殻を常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出した茶殻抽出液、この再浸出された茶殻の混合物を、衛生用紙等の吸水性の紙層部、吸水性材料粉と吸水性樹脂の混合層部、或いは吸水性の紙層部と前記混合層に含浸保持させて乾燥して得られる衛生的に優れた衛生シーツを提供するものであり、また、一種以上の茶殻抽出液、茶殻残留廃液及び茶殻を活用できる、安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている。
即ち、本発明は、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙であることを特徴とする衛生用紙にある。」(【0006】?【0007】)

(オ)「本発明の衛生用紙が使用される衛生シーツにおいて、寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツとする場合には、その上面は、多孔層部、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂等のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布層部又はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の多孔膜で形成することができ、下面の不透水性膜部は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック製の不透水性膜で形成することができる。本発明において、前記多孔層部の下には、その下面に接して衛生用紙からなる第一の吸水性の紙層部を設けることができる。」(【0009】)

(カ)「本発明において、茶殻抽出液は、茶殻を抽出した抽出液、又は浸出後の茶殻に含有される茶殻残留廃液、或いはこれらの混合物を意味する。
・・(中略)・・
本発明において、一種以上の茶殻抽出液は、緑茶、ウーロン茶又は紅茶の抽出残渣、即ち、茶殻を常温で又は常温より高い温度の加熱水で浸出して製造することができる。本発明において、水は常温水又は常温より高い温度の加熱水を意味する。 本発明において、衛生用紙は、一種以上の茶殻抽出液を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造することができる。乾燥する過程で、吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させることができる。
本発明において、衛生用紙が使用される衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液、或いは該茶殻抽出液に異種の一種以上の茶殻の茶殻抽出液又は同種又は異種の茶殻の茶殻残留廃液を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液、或いは茶殻抽出液に、該抽出液と同種又は異種の茶殻を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻との懸濁状混合物を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造できる。本発明において、衛生用紙が使用される衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、或いは、一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液の乾燥物、或いは一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と茶殻乾燥物の混合物を含有する、吸水性の紙層等の紙層部を有するものである。
本発明において、茶殻を混合し又は混合しない一種以上の茶殻抽出液、又は一種以上の茶殻残留廃液或いは茶殻を混合し又は混合しない、一種以上の茶殻抽出液及び一種以上の茶殻残留廃液を、印刷インキ組成物と配合して印刷インキに形成することができ、又はこの印刷インキに適当な着色材を配合して、印刷用カラーインキに形成することができる。印刷用カラーインキの場合には、吸水性の紙層部面に全般に亙って所望の模様及び文字を印刷でき、例えば、装飾模様、並びに商業宣伝用の模様及び文字を吸水性の紙層部に印刷することができる。
吸水性の紙層部に含浸させる、一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における茶殻抽出液の濃度、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における茶殻抽出液の濃度は、抽出時において使用される茶殻の単位重量に対する抽出に使用する浸出液の水の容量を変えて調整することができる。一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における混合割合、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における混合割合は、細菌の増殖の抑制効果が発揮できるように、適宜変えることができる。
茶殻は、抽出され易いので、比較的短時間で抽出することができる。しかし、抽出時間は、2時間以内、特に1時間以内とすると、抽出時間を少なくできるので好ましい。」(【0014】?【0016】)

(キ)「【作用】
本発明において、衛生用紙が使用される衛生シーツは、茶殻抽出液の乾燥物が含まれている吸水性の紙層部を備えているので、緑茶、ウーロン茶や紅茶等のお茶の茶殻抽出液の乾燥物の作用により、汗等により湿っても、吸水性に優れ、且つ細菌の増殖が抑えられ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。
本発明は、このように、缶入り又はパック入りのウーロン茶、紅茶及び/又は緑茶等のお茶製造産業において多量に発生するウーロン茶、紅茶及び緑茶の茶殻及びそれら茶殻の茶殻残留廃液を衛生シーツの原料として活用して、衛生シーツの衛生状態を、汗等により湿っても、細菌の増殖を抑えて、長時間に亙って良好な状態に保つことができる。」(【0021】)

(ク)「図2において、吸水紙4のロール8は、吸水紙送り出しローラ9により引き出されて、綿状パルプ5の供給ローラ10に送られて、粉砕機11で粉砕された綿状パルプ5が供給される。綿状パルプ5が供給された吸水紙4は、吸水紙4上の綿状パルプ5の量が一定となるように調整されている。一種以上の茶殻抽出液(茶殻の再浸出液)は、噴霧箇所12に送られて、一種以上の茶殻抽出液を噴霧器13から噴霧される。
本例においては、このようにして、一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が、吸水紙4上の一定量の綿状パルプに噴霧される。一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が噴霧された吸水紙4は、高吸水性樹脂6の散布箇所14に送られる。高吸水性樹脂6の散布箇所14に送られた一種以上の茶殻抽出液が噴霧された吸水紙4には、高吸水性樹脂7が高吸水性樹脂散布機15から散布される。
高吸水性樹脂6が散布された吸水紙4は、上側吸水紙4の供給箇所16に送られて、吸水紙4のロール8から上方に吸水紙4が載せられる。上下に吸水紙4が配置された積層帯状物17は、エンボス機18に送られてエンボスが形成される。エンボスが形成された積層帯状物17は、マットカッター19に送られて、長さ450mmの積層物に切断される。切断された積層物の下方には、下方からポリエチレンフィルム2がポリエチレンフィルム2のロール20から供給され、積層物はポリエチレンフィルム2の上に載せられて、ポリプロピレン不織布5を被せる箇所21に送られる。
ポリプロピレン不織布5は、ポリプロピレン不織布5のロール22から送られ、途中ホットメルト接着剤が噴霧器23から噴霧される。ホットメルト接着剤が噴霧されたポリプロピレン不織布5は、積層物上に載せられる。ポリプロピレン不織布が載せられた積層物は、サイドシール機24に送られて、両側部は、圧着されて、ホットメルト接着剤により接着される。両側部が接着された積層物は、エンドシール機25に送られて長手方向両端部が接着され、製品カッター26に送られ、所定の寸法に切断され製品として送られる。製品カッター26で切断された製品は、折り機によって折られ包装機により包装されて出荷される。
本例においては、動物用シーツを例に説明したが、他の衛生シーツの場合は、紙漉機等により、紙層部が形成されて乾燥工程に移行する段階で、茶殻抽出液、例えばウーロン茶の茶殻抽出液が噴霧されて含浸される。茶殻抽出液が含浸された紙層部は、乾燥機内で高温で乾燥され、消毒されて衛生シーツとして提供される。この場合、茶殻抽出液に、複数種の茶殻抽出液を混合した混合抽出液を含浸させて乾燥することができる。このように各種の抽出液を混合することにより、より強力な微生物の増殖の抑制作用を発揮させることができる。」(【0039】?【0041】)

(ケ)「【発明の効果】
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。
また、本発明においては、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び一種以上の茶殻の乾燥物の混合物を含むので、従来の紙おむつ、動物用シーツと比して、排泄した尿により濡れがなく、尿や体臭による汚臭を抑制することができ、例えば、愛玩用の動物用として、休養時、就寝時又は排泄時に使用して、周囲を良好な衛生状態に保っことができる。
本発明においては、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる。」(【0042】?【0043】)

上記(ア)?(ケ)の摘示によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「衛生用紙に関し、特に、ティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙」(上記(ア))についての発明が記載されていて、「従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殻残留廃液の処理を目的として」おり(摘示(ウ))、また、「衛生的に優れた」「安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている」(摘示(エ))ものであって、これらを発明の解決すべき課題とするものであり、「衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。」(摘示(キ)及び(ケ))という効果が得られる旨が記載されていると認められる。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、「茶殻抽出液の乾燥物を含む紙」を単独でティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙として使用すること及び「茶殻抽出液の乾燥物を含む衛生用紙(単独)」又は当該「衛生用紙」が使用された「衛生シーツ」が、上記課題・目的(特に「汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる」点)を全て解決・達成できると当業者が認識し得たということを裏付けるような記載は存在しない。

ウ.発明の詳細な説明に記載された発明と請求項に係る発明との対比・検討

本願明細書の発明の詳細な説明には、従来の寝具用シーツ等の再使用の際の問題点の解決、茶殻及び茶殻残留廃液の有効活用による処理及び衛生的に優れた安価な使い捨て衛生シーツの提供等の課題を解決するために、茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えた衛生シートとしたことが記載されているものの、請求項に記載された技術事項で特定される「茶殻抽出液の乾燥物を含む衛生用紙」又は当該「衛生用紙」を使用した「衛生シーツ」が、上記課題を解決できることは記載又は示唆されておらず、してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明が、上記課題を解決することができると当業者において認識できる程度に、具体例等を開示して記載しているということはできない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、茶殻抽出液が種々の菌類の増殖を阻害することが記載されており(上記摘示(エ))、当該事項は、本願が上記1.で説示したとおり分割不適法であることから原出願の出願公開(特開平11-1896号公報)により少なくとも公知となったものではあるものの、茶殻抽出液ではなく、茶殻抽出液の乾燥物又は当該乾燥物を含む衛生用紙が、茶殻抽出液同様の効果を奏し、「汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる」なる課題解決がなされるか否かは、当業者にとっても不明であって、試行錯誤による確認を要する事項であるものといえる。
(例えば、茶(抽出液)の乾燥物である「茶渋」は、(洗浄が困難な程度の)水不溶性であることが、当業者ならずとも一般に周知であるから、「茶殻抽出液の乾燥物」についても水不溶性となる可能性が存在するものであり、水溶液である「茶殻抽出液」が細菌の増殖を阻害できたとしても、「茶殻抽出液の乾燥物」又は「茶殻抽出液の乾燥物を含む衛生用紙」が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏するか不明である。)
そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、実質的に「紙」も含まれるものと解される「セルロース系素材からなる不織布」に茶殻抽出液を噴霧塗布し乾燥させた場合、重量が増加し茶殻抽出液の乾燥物が定着していることが具体例として記載されているのみであり(【0037】?【0038】)、当該不織布に係る「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果については、何ら記載されていないし、この効果が当業者にとって技術常識に照らして自明な事項であるということもできない。
してみると、当業者が技術常識に照らしても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏することができると当業者において認識できる程度に記載しているということはできない。

エ.審判請求人の主張
審判請求人は、平成20年10月14日付け意見書において、
「既に述べたように、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願の請求項1に記載の「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むティシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーであることを特徴とする衛生用紙。」について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載の請求項1に記載の発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に、十分に記載されたものであり、明確である。
よって、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。」
と主張する(意見書「[6]拒絶理由2について」の欄)が、上記ウ.でそれぞれ指摘及び説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、「茶殻抽出液の乾燥物を含む紙」を単独でティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙として使用することにつき具体的に記載されておらず、「茶殻抽出液の乾燥物を含む衛生用紙(単独)」又は当該「衛生用紙」が使用された「衛生シーツ」が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏するか否かについても記載されていないのであるから、本願発明を当業者が実施できるか否かはともかく、上記ウ.で説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているとはいうことができない。
してみると、請求人の上記意見書における主張は、明らかに当を得ないものであり、採用する余地がない。

オ.小括
したがって、これらを総合すると、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということもできないから、本願請求項の記載は、同項に記載された事項で特定される特許を受けようとする本願発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するということはできない。

(3)特許法第29条第2項に係る理由(上記「拒絶の理由4」)

ア.当審が通知した理由
当審が通知した拒絶の理由4の概略につき、平成20年10月6日付けの手続補正の結果を踏まえて表現すると、以下のとおりのものとなる。

本願は、上記1.で説示したとおり分割要件を満たさない出願であるから、本願について出願日の遡及は認められず、そうすると、本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Mに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物
刊行物A:特開平11-1896号公報
刊行物B:特開昭62-275466号公報
刊行物C:特開平5-168570号公報
刊行物D:特開平5-269328号公報
刊行物E:特公平6-15675号公報
刊行物F:特開平9-67797号公報
刊行物G:特開平7-143940号公報
刊行物H:実願平1-104705号のマイクロフィルム
(実開平3-44497号公報)
刊行物I:特開昭55-98998号公報
刊行物J:特開平5-211838号公報
刊行物K:機能材料1997年1月号(1996年12月5日発行)
43ページ?49ページ
刊行物L:登録実用新案第3032802号公報
刊行物M:特開平3-29623号公報

そこで、上記拒絶理由の当否につき、以下検討する。

イ.刊行物に記載された事項

(ア)刊行物A:特開平11-1896号公報
原出願の公開公報であって、原出願当初明細書等と同一の内容であり、それに記載された事項は、上記1.で指摘した<原-1>ないし<原-16>のとおりである。

(イ)刊行物C:特開平5-168570号公報
<C-1>
「【産業上の利用分野】本発明は、トイレットペーパー、ティシュペーパー、チリ紙、生理用紙、タオル用紙、紙オムツ等に銅クロロフィリン又は鉄クロロフィリンの塩を含有させた機能性衛生用紙に関するものである。
【従来の技術】近年、生活水準が向上するに従って生活環境で好ましかざる臭いの消臭に対し、強い関心が高まっている。生活環境での悪臭は、タバコ、糞尿、台所の厨芥や体臭等が発生源となっており、その悪臭の種類も多種多様である。
・・(中略)・・
化学薬品のような薬害、環境問題から悪臭を消す方法として、植物よりの抽出物を有効成分とする消臭剤が注目されている。植物としては、お茶、・・・等に強い消臭作用成分が含まれていることが知られ、成分としては、クロロフィル、フラバノール、フラボノール類のようなフラボン系化合物やフェラドレン、ターピネン、ピネン等のテルペン系化合物等によるものといわれている。
クロロフィル及びその誘導体が臭気物質を吸着したり、分解することは古くからよく知られており、・・(中略)・・。
これらの方法では、紙や布にクロロフィルや銅クロロフィリンを吸着させ、クロロフィルや銅クロロフィリンのもつ消臭効果を利用しているが、衛生用紙に応用した例はない。銅クロロフィリン誘導体の薬理的効果は、古くから良く知られており、具体的には、・・(中略)・・、嫌気性菌に対する抗菌作用、・・(中略)・・等、多様な薬理的効果が知られている。
これらクロロフィリン誘導体の薬理作用のうち、銅クロロフィリンや鉄クロロフィリンの塩が持つ、抗菌作用・・(中略)・・を活用した衛生用紙はいまだ知られていない。
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、鋭意検討を行った結果、銅クロロフィリン又は鉄クロロフィリンの塩を衛生用紙に含有させた時、衛生用紙を使用する時又は使用後、銅クロロフィリン又は鉄クロロフィリンの塩が溶出し、悪臭成分を吸着したり、分解したりし、また、抗菌作用・・(中略)・・も発揮し粘膜の保護やカブレ等に対し効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。」
(【0001】?【0008】)
<C-2>
「銅クロロフィリン又は鉄クロロフィリンの塩を衛生用紙に含有させるには、衛生用紙を乾燥する前に該当溶液をスプレーするか、該当溶液に衛生用紙を浸漬後、乾燥する方法が有利である。・・(後略)」(【0011】)
<C-3>
「衛生用紙としては、トイレットペーパー、チリ紙、ティシュペーパー、生理用紙、紙オムツ、ペーパータオル、キッチンペーパー、ウェットワイプ、及び紙製のシーツ、ガウン、寝巻、手術衣等のメディカル製品があげられる。・・(後略)」(【0012】)

(ウ)刊行物D:特開平5-269328号公報
<D-1>
「【請求項1】 家庭用薄葉紙にはその全体に悪臭物質を分解ないし吸着する金属錯体を分散、保持させてなる消臭型家庭用薄葉紙。
【請求項2】 家庭用薄葉紙がトイレットペーパー、タオル用紙、ティッシュペーパー、ちり紙又は京花紙である請求項1に記載の消臭型家庭用薄葉紙。
【請求項3】 金属錯体が、金属ポルフィリン誘導体よりなる請求項1又は2に記載の消臭型家庭用薄葉紙。
【請求項4】 金属ポルフィリン誘導体が、金属フタロシアニン誘導体である請求項3に記載の消臭型家庭用薄葉紙。
・・(中略)・・
【請求項9】 家庭用薄葉紙に、悪臭物質を分解ないし吸着する金属錯体の溶液又は分散液を含浸させた後、上記金属錯体の分解温度以下で乾燥することを特徴とする消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項10】 家庭用薄葉紙がトイレットペーパー、タオル用紙、ティッシュペーパー、ちり紙又は京花紙である請求項9に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項11】 金属錯体が、金属ポルフィリン誘導体よりなる請求項9又は10に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項12】 金属ポルフィリン誘導体が、金属フタロシアニン誘導体である請求項11に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
・・(中略)・・
【請求項17】 家庭用薄葉紙の製造途次に、悪臭物質を分解ないし吸着する金属錯体を含有させた後、上記金属錯体の分解温度以下で乾燥することを特徴とする消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項18】 家庭用薄葉紙がトイレットペーパー、タオル用紙、ティッシュペーパー、ちり紙又は京花紙である請求項17に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項19】 金属錯体が、金属ポルフィリン誘導体よりなる請求項17又は18に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
【請求項20】 金属ポルフィリン誘導体が、金属フタロシアニン誘導体である請求項19に記載の消臭型家庭用薄葉紙の製造方法。
・・(後略)」(【特許請求の範囲】)
<D-2>
「本発明においては、悪臭物質を分解ないし吸着する金属錯体は単独で用いてもよく、或いは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」(【0035】)
<D-3>
「トイレットペーパー等の家庭用薄葉紙は清拭等の使用後、必ず、汚物と共に廃棄されるものであり、従って、この消臭型家庭用薄葉紙は、使用後、トイレに廃棄されてバクテリアの繁殖を抑えたり、悪臭物質を酸化分解ないし吸着することによって、トイレ中の悪臭物質の発生を発生源から断つ作用をも有するのである。」(【0063】)

(エ)刊行物F:特開平9-67797号公報
<F-1>
「【請求項1】 天然繊維および/または合成繊維よりなる紙製品に抗菌防カビ剤を水溶液、エマルジョンまたは微粒子状の水分散剤あるいは無機、有機多孔質微粒子による担持体を、そのまま水希釈あるいは高分子水溶液をパルプ分散液に内添、または抄紙した和紙、洋紙、板紙に塗布、含浸、スプレー法により薬剤処理してなる抗菌防カビ性を有する紙製品。
【請求項2】 抗菌防カビ剤を印刷インキ、塗料、顔料、染料または紙の表面強化剤あるいは接着剤、撥水剤に混入した後、パルプ分散液に添加または紙の表面に処理する請求項1記載の抗菌防カビ性を有する紙製品。」(【特許請求の範囲】)
<F-2>
「本発明による抗菌防カビ紙として応用できるものは不特定多数のものに応用できるが、なかでも病院における院内感染予防としてMRSAや大腸菌、緑膿菌などの感染予防対策としてカルテ用紙、薬包紙、薬袋、院内で使用する事務用品全般、患者の使用する紙おむつ、紙シーツ、ティッシュペーパー、ナプキンなどに応用して、MRSAに関する効果が期待できる。
この他の印刷洋紙としては、帳簿、証券、複写、葉書など、図画用紙水として水彩画洋紙、図画用紙、海図及び地図用紙、包装用紙ではクラフト紙、ロール紙、防錆用紙、果実用紙、水を吸収するものではトイレットペーパー、紙タオル、化粧紙、紙綿、電器絶縁紙では電線被覆紙、絶縁薄紙、絶縁厚紙など、また装飾関係では表紙用、模様紙、壁紙、襖紙その他としてトレーシングペーパー、写真包装紙など広範囲な応用が考えられる。」(【0018】?【0019】)

(オ)刊行物G:特開平7-143940号公報
<G-1>
「【請求項1】 容器1内に、紙又は布帛からなる多数のペーパー2を収納してなるティッシュにおいて、
前記ペーパー2が、少なくとも異なる2種類の消毒剤をそれぞれ別々に乾燥状態で含む第1ペーパー2aと第2ペーパー2bとからなり、
第1ペーパー2aと第2ペーパー2bとが、容器1内に交互に収納されているドライタイプのティッシュ。」(【特許請求の範囲】)
<G-2>
「【従来の技術】病院内では、手拭きタオルを共用すると、消毒剤が含浸されていても該消毒剤の耐性病原菌が発生する可能性がある。また、その耐性病原菌による交叉感染などが問題になる。このような問題を回避するうえで使い捨てティッシュペーパーは有用であるが、完璧ではない。すなわち、この種の使い捨てティッシュペーパーにおいて、注目すべきものに消毒剤および又は消臭剤を含有するドライタイプがあり、これは使用時に水を含ませてウエット・ティッシュペーパーにする形式である(特開昭63-63419号公報)。
【発明が解決しようとする課題】この従来形式によれば、消毒剤などの蒸散を防止でき、これ自体の包装も簡易なもので足りる利点を有する。しかし、含有する消毒剤が単一のものである限り、耐性病原菌に対しては完璧を期し難い。」(【0002】?【0003】)
<G-3>
「紙又は布帛からなるペーパーとは、天然繊維や合成繊維を原料とする不織布(混紡も含む)、ガーゼ、水溶紙などを用いる。天然繊維としてはパルプ、コットン、コットンリンター、ウール、麻、シルクなどがあり、合成繊維としてはレーヨン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ビニロンなどがある。」(【0008】)
<G-4>
「【発明の効果】本発明のティッシュによれば、消毒剤が少なくとも2種類用意されているから、使用毎にあるいは所定の期間置きに使用するペーパーの消毒剤が変わることになり、手拭き用に供したとき耐性病原菌の発生をよく抑え、手洗い者間で起きる耐性病原菌の交叉感染を確実に防止できる。」(【0011】)

(カ)刊行物H:実願平1-104705号のマイクロフィルム(実開平3-44497号公報)
<H-1>
「天然木材等より製したシートタイプ又はロールタイプのティシュペーパー等に消臭剤を含浸させて成ることを特徴とするティシュペーパー又は紙箱。」(1ページ5行?7行(実用新案登録請求の範囲))
<H-2>
「本考案はティシュペーパーが人間の皮膚、粘膜、嗅覚等に直接接する点に注目して成されたものでティシュペーパーの使用時に健康上有益で薬効のものを皮膚、粘膜、嗅覚等に接しさせることによって抗菌作用はもとより消臭、脱臭、薬効を生じさせるティシュペーパーおよびティシュペーパーの紙箱を提供するにある。」(1ページ15行?19行)
<H-3>
「第2図において
Aはシートタイプのティシュペーパー、Bは芯管Cに捲回されたロールタイプのティシュペーパーを示す本考案はこれらのティシュペーパーA及びBに健康に有益で消臭作用のあるいわゆる薬草のエキス又は化学的な消臭剤を含浸させることを特徴とするもので 例えば薬草ではアロエ、天然フラボノイド(ツバキ科の植物)などの薬草から絞り出した液体の単体又は組合せて含浸させることを特徴とする。」(1ページ下から4行?2ページ4行)

ウ.検討

(ア)刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには、緑茶、ウーロン茶又は紅茶の各茶殻を水により抽出してなる茶殻抽出液をセルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧した後乾燥させてなる不織布が記載されており、不織布に茶殻抽出液を噴霧し乾燥させた場合、重量が増加していることも記載されている(<原-9>)。
してみると、不織布に茶殻抽出液を噴霧し乾燥させた場合、重量が増加していることからみて、乾燥後の不織布は、茶殻抽出液の乾燥物を含むものと解するのが自然であり、また、当該水による抽出について、抽出温度に係る特段の記載がないことからみて、常温で抽出を行っているものといえる。
したがって、刊行物Aには、本願請求項1に倣い表現すると、
「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻を常温の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むセルロース素材製の不織布」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)本願発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「セルロース素材製の不織布」は、木材パルプ等のセルロース素材繊維を抄造した不織の薄層物である「紙」を含むことが当業者に自明であり、本願発明における「紙」に相当するものといえるから、本願発明と引用発明とは、「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻を常温の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含む紙」に係る発明である点で一致し、下記の点でのみ相違していることが明らかである。
相違点:紙につき、本願発明では、「ティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙であることを特徴とする衛生用紙」であるのに対し、引用発明では、用途が特定されていない「セルロース素材製の不織布」である点

(ウ)相違点に係る検討
そこで上記相違点につき検討すると、上記刊行物C、D、F、G及びHにもそれぞれ記載されているとおり、紙に対して、植物由来の消臭剤、抗菌剤等の材料を含有させたものを、ティッシュペーパー等の衛生用紙の用途に使用することは、当業界周知慣用の技術であるから、引用発明に係る「セルロース素材製の不織布」を、上記当業界周知慣用の技術に基づき、ティッシュペーパー、ちり紙、トイレットペーパ又は生理用紙である衛生用紙の用途に使用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(エ)本願発明の効果について
本願発明の効果につき、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、引用発明に係る「セルロース素材製の不織布」を「衛生用紙」の用途に選択使用したことにより、当業者が予測し得ない、顕著な効果を奏しているものということができない。

(オ)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業界周知慣用の技術を付加することにより、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(カ)審判請求人の主張
審判請求人は、平成20年10月14日付け意見書において、上記「拒絶の理由4」につき縷々主張している(「[4]拒絶理由3について」、「[5]拒絶理由4について」及び「[6]本願発明の進歩性」の各欄)。
しかしながら、当該各主張は、いずれも上記刊行物Aにつき本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではないとの見地にたったものであるところ、本願は、上記1.で説示した理由により分割不適法であって、出願日が実際の出願日であるから、上記刊行物Aは、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるというべきである。
したがって、審判請求人の上記意見書における主張は、その根拠を欠くものであり、当を得ないものであるから、採用する余地がなく、当審の上記「拒絶の理由4」に係る判断を左右するものではない。

エ.「拒絶の理由4」に係るまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するとはいえないものであり、同法同条同項に規定する要件を満たしていないものであるとともに、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、他の拒絶理由につき検討するまでもなく、本願は、特許法第49条第2号及び同法同条第4号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-01 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-19 
出願番号 特願2001-144032(P2001-144032)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (D21H)
P 1 8・ 121- WZ (D21H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 利直亀ヶ谷 明久  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 松本 直子
橋本 栄和
発明の名称 衛生用紙  
代理人 滝口 昌司  
代理人 中里 浩一  

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