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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1206362
審判番号 不服2007-21351  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 特願2001-108215「継目無金属管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月15日出願公開、特開2002-301504〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年4月6日の出願であって、平成18年4月4日付け拒絶理由通知に対して、同年6月12日付けで手続補正がされたが、平成19年6月27日付けで拒絶査定され、これに対し、同年8月2日付けで拒絶査定に対する審判が請求されると共に、同年9月3日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成19年9月3日付けの手続補正書についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正前及び補正後の発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1における「圧延トップ側端」に関し、「黒皮材の鋳込みチャージ先頭材の」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明について検討する。
請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下「本願補正発明」という)。
「パスラインの周りに傾斜配置された一対の主ロール間にパスラインに沿ってプラグが配された傾斜ロール式の穿孔圧延機により中実の丸ビレットを穿孔して中空素管を得る継目無金属管の製造方法において、前記の丸ビレットとして黒皮材を用いるに当たり、黒皮材の鋳込みチャージ先頭材の圧延トップ側端から少なくとも公称外径Dの2倍以内の最低1断面における長径aと短径bを測定し、比(a/b)が1.03以下であるもののみを圧延に供することを特徴とする継目無金属管の製造方法。」

2.刊行物に記載された発明
(1)引用例1に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平10-34304号公報(以下「引用例1」という)には、以下の技術事項が記載されている。
(a)「円形鋳型により連続鋳造中の鋳片に、鋳片の凝固完了点近傍に設置した一対のロールにより圧下を加え、続いて切断して丸ビレットとし、マンネスマン穿孔法により継目無鋼管製造用の素管を製造する方法において、・・・ことを特徴とする継目無鋼管製造用連続鋳造鋳片の製造方法。」【請求項1】
(b)「鋳造中の鋳片に圧下を加え内質改善を行う方法では、圧下により断面形状が偏平化し、マンネスマン穿孔時の噛み込みが不安定になり、また、得られる素管には偏肉が発生する等の問題がある。」【0016】
(c)「ε(%)={1-(鋳片のある断面中での最短径部長さ)/(同一断面中の最長径部長さ)}×100」【0044】
(d)「穿孔性を示す評点は、穿孔が通常の真円断面のビレットと同じ状態で行えた場合を評点1とし、穿孔中に異音が発生した場合を評点2、さらに穿孔中に噛み込み不良が発生した場合を評点3とした。」【0055】
(e)「図12は、VVロールを用いて圧下を行った場合の、ビレットのεと穿孔性評点・・・との関係を示したものである。εが大きくなるにしたがって、穿孔性評点、偏肉率評点共に大きくなるが、εが5%以下、・・・にある場合は、穿孔性評点、偏肉率評点ともに良好なことがわかる。また、εが3.5%未満になると、穿孔性評点、偏肉率評点ともにさらに良くなることがわかる。」【0059】
(2)引用例1発明
上記摘記事項(a)より、引用例1には、マンネスマン穿孔法により継目無鋼管を製造するための連続鋳造鋳片の製造方法が記載されており、(b)より、ビレット(鋳片)の断面形状が偏平化するとマンネスマン穿孔時の噛み込みが不安定になるという課題が示されている。そして、図12を参照しつつ摘記事項(e)をみると、(c)で定義されるビレットの偏平率εが小さいほど穿孔性評点が低く、εが3%の場合には穿孔性評点は1であり、これは穿孔が通常の真円断面のビレットと同じ状態で行えた場合を意味する(d)。
したがって、上記引用例1の記載事項を勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下「引用例1発明」という
「マンネスマン穿孔法により継目無鋼管を製造するに当たり、穿孔時の噛み込みをなくすために、連続鋳造鋳片の偏平率εを3%以下にすることからなる継目無鋼管製造用連続鋳造鋳片の製造方法。」

3.対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明は連続鋳造鋳片の製造方法であるが、マンネスマン穿孔法により継目無金属管を製造することを前提としており、マンネスマン穿孔法自体の適用には特徴はないので、継目無金属管の製造方法と把握することができる。このため、本願補正発明の前半部分で規定する継目無金属管の製造方法の部分(「パスラインの周りに・・・製造方法において」)は、引用例1発明でも本願補正発明と同じく前提とするものである。
また、本願補正発明では、ビレットの長径と短径の比率(a/b)をビレット断面の楕円の程度を数値化する変数として使用する。一方、引用例1発明では真円の度合いを偏平率εで表現する。ここで、本願補正発明の長径a、短径bは、それぞれ引用例1発明における(同一断面中の最長径部長さ)、(鋳片のある断面中での最短径部長さ)に対応する長さである。このため、引用例1発明におけるεを本願補正発明のa、bを用いて表すと({1-b/a}×100)となる(摘記事項(c))。これらは、単に表現方法が異なるのみで、長径と短径の比によりビレット断面の楕円の程度を表す点で共通する。さらに、本願補正発明における(a/b)は1.03以下、引用例1発明におけるεは3%以下としているので、いずれもビレット断面が真円に近い方がよいと規定していることになる。結局、表現方法の違いに過ぎない。
そして、引用例1発明における「連続鋳造鋳片」は、本願補正発明における「丸ビレット」に対応するので、本願補正発明と引用例発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
《一致点》
パスラインの周りに傾斜配置された一対の主ロール間にパスラインに沿ってプラグが配された傾斜ロール式の穿孔圧延機により中実の丸ビレットを穿孔して中空素管を得る継目無金属管の製造方法において、前記の丸ビレットの断面形状が楕円の程度が小さいく真円に近いもの(a/bが1.03以下、又はεが3%以下の)を使用する点。
《相違点》
A 本願補正発明では丸ビレットとして黒皮材を用いることに限定し、楕円の程度が条件を満たさないものを穿孔処理工程から排除するのに対し、引用例1発明では、そのような限定はしない点。
B 本願補正発明では、楕円の程度を測定する部分を特定して、黒皮材の鋳込みチャージ先頭材の圧延トップ側端から少なくとも公称外径Dの2倍以内の最低1断面における長径aと短径bを測定することとするが、引用例1発明では特に限定しない点。

4.判断
(1)相違点Aについて
マンネスマン法による穿孔処理を黒皮材に適用することは周知の技術である。必要なら、特開平7-164020号公報、特開平4-138806号公報を参照されたい。また、製造プロセスにおいて、加工に適さない不良品の選別・排除を行うことは、特に刊行物を示すまでもなく周知の技術事項である。
したがって、相違点Aについては、当業者が必要に応じて適宜なしうるところであり、技術的に格別のこととすることはできない。
(2)相違点Bについて
全ての黒皮ビレットの外形を測定することが困難との理由(本願明細書の0032段落)から、黒皮材の鋳込みチャージ先頭材のみを測定の対象と特定することは、本願補正発明の特徴事項としては格別の技術的意味を有するものではない。
また、本願補正発明では、外形を測定する部分の範囲を「圧延トップ側端から少なくとも公称外径Dの2倍以内」と特定するが、この範囲のビレット断面が真円とすることで本願発明の効果が達成される(0025段落、表3及び表5)。しかし、その範囲の中で最低1断面のみで外形を測定することとするのでは、外形を測定する範囲を特定する意味が無くなる。圧延トップ側端近傍の断面の外形のみを測定することにすれば、本願発明の効果を達成しないビレットもこの要件を満たすので、本願補正発明を正当に特定するものではないからである。
したがって、相違点Bについては、技術的には意味のない限定事項であるとせざるをえない。
(3)まとめ
以上の通りであるから、本願補正発明は、引用例1発明に対し、当業者が適宜採用しうる相違点と技術的に意味のない相違点を有するにすぎないので、当業者が容易になしうるものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年9月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年6月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「パスラインの周りに傾斜配置された一対の主ロール間にパスラインに沿ってプラグが配された傾斜ロール式の穿孔圧延機により中実の丸ビレットを穿孔して中空素管を得る継目無金属管の製造方法において、前記の丸ビレットとして黒皮材を用いるに当たり、圧延トップ側端から少なくとも公称外径Dの2倍以内の最低1断面における長径aと短径bを測定し、比(a/b)が1.03以下であるもののみを圧延に供することを特徴とする継目無金属管の製造方法。

2.引用例
本願発明は、上記第2の[理由]で検討した本願補正発明から、「黒皮材の鋳込みチャージ先頭材の圧延トップ側端」とあった「圧延トップ側端」についての限定を解除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の[理由]4.」に記載したとおり、第1引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、第1引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-12 
結審通知日 2009-08-26 
審決日 2009-09-09 
出願番号 特願2001-108215(P2001-108215)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小谷内 章鈴木 正紀  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 徳永 英男
國方 康伸

発明の名称 継目無金属管の製造方法  
代理人 杉岡 幹二  
代理人 穂上 照忠  
代理人 千原 清誠  

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