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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1207131
審判番号 不服2008-3496  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 平成10年特許願第153046号「建築工事の管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月14日出願公開、特開平11-343659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年6月2日の出願であって、平成20年1月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月14日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同年3月14日に手続補正がなされ、その後、平成21年2月27日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年4月23日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成20年3月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年3月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「建物の設計図書に基づいて、木造住宅建築用の構造材に、その配設位置に関する位置情報及びその配設位置の周辺で行われる関連工事に関する施工情報を表示する表示工程、上記構造材を上記位置情報に従って配設する配設工程、及び、配設された上記構造材の近傍において上記施工情報に従って上記関連工事を行う関連工事工程を具備し、
上記関連工事は、個々の構造材の配設後に行う工事であり、当該個々の構造材を配設する工事を含まず、
上記表示工程は、上記構造材をプレカットするプレカット工場で行い、該表示工程においては、上記構造材としての柱材に、上記施工情報として、少なくとも、天井又は床面の高さ位置を示す加工取付情報を、直接又はラベル貼付により表示することを特徴とする建築工事の管理方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示工程」について「構造材をプレカットするプレカット工場で行い、該表示工程においては、上記構造材としての柱材に、上記施工情報として、少なくとも、天井又は床面の高さ位置を示す加工取付情報を、直接又はラベル貼付により表示する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(2)引用例
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特公平6-20722号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、原査定の拒絶の理由では、引用文献は、特公昭6-20722号公報となっているが、当該文献は存在しないものであるし、また、原査定の拒絶の理由の記載内容からみると、当該引用文献は、上記のとおりの特公平6-20722号公報であると認められる。また、意見書、審判請求書及び回答書において、請求人は、特公平6-20722号公報に基づいて反論しているものと認められる。)

(1a)「所要の機能を果すマイクロコンピュータからなる制御部;
対象家屋の建築に必要な材木に関する各種データを記憶させるための記憶部;
当該家屋の階床組立図等を表示させるための表示部:および、
所要のデータや指令を入力させるための各種データを記憶させるための各種の機能手段を備えている入力部;
からなる木材加工ライン制御部と:
プレカット加工処理以前の材木が貯蔵されている第1の貯木部;
前記第1の貯木部から送られてきた材木について所要のプレカット加工処理を施して構造材とする加工部;プレカット加工処理が施された前記構造材について、その所定の部位に必要なデータに(当審注:「の」の誤字と認める。)印字処理がなされる印字部;
および
プレカット加工処理および印字処理が施された前記構造材の貯蔵がなされる第2の貯木部;
からなる材木加工ラインと:
を具えた材木加工処理制御方式であって、
前記制御部に基本モジュールの値を入力し、
さらに前記表示部に基本モジュール間隔の格子を発生させ、
前記格子を発生させた表示部を利用し、前記入力部から伏せ図中の構造材の位置情報を入力して、前記記憶部にこれを記憶し、
前記記憶部において、入力された各構造材に、演算機能を用いて通番を付与すると共に、その構造材の位置情報をその通番を持つ構造材の属性として前記記憶部に記憶し、
前記第1の貯木部より送られてきた材木を前記加工部にて加工し、これを前記構造材とし、
この構造材に対応する通番の位置情報を前記記憶部から呼び出し、前記印字部にてこの位置情報を、前記構造材に印字するようにされている、
ことを特徴とする材木加工制御方式。」(特許請求の範囲【請求項1】)

(1b)「木造家屋の建築のための、柱や基礎材等の材木による従来の軸組み工法においては、通常、棟梁や大工のような現場作業者が、作業現場等において、設計図に代わる板図に基づき、前記の材木を所定の寸法にしたり、木材同士の継ぎ手部分としてのホゾやホゾ穴の形成をしていた。
そして、このような材木の先端部には、文字“い、ろ、は、に、・・・”と数字“一、二、三、四、・・・”との組み合わせにより、材木同士が交差して組み合わされる位置について、例えば、“い-三”、“は-二”のような符号を用いており、墨汁等の適当な染料や塗料により、これらの符号を対象の材木に直接記入していた。
近時、これらの材木の加工には、いわゆるプレカット工法が導入されてきて、流れ作業を基本とする専用のプレカット工場においては、木材に対する所要の加工が予めなされており、それだけ建築現場での作業工数が節減される。そして、このようにプレカット加工が施された材木が建築現場に運搬されることになるが、これらの材木に対する所要の情報の表示については、従前と同様に、墨汁等の適当な染料や塗料により、対象の材木に直接記入することで表示しているのが実情である。」(第3欄第25?45行)

(1c)「第3図は、上記実施例の動作を説明するための家屋階床組立例示図である。この第3図において、(31)、(31)、・・・はプレカット加工処理が施された材木であって、これらへの付番(No.1、No.2?No.n)は、例えば、水平に配置されたものの下端から上端へ、更に、垂直に配置されたものの左端から右端へとなされている。また、構造材相互間の接続部に関する番地付けの便宜のために、当該家屋階床組立例示図の水平軸には“い、ろ、は、に、ほ、へ”なる付番が均等の距離を持ってなされており、これに対して、その垂直軸には“一、二、三、四、五”なる付番が同じく均等の距離を持ってなされている。
第4図は、上記実施例の動作を説明するための、材木表面に所要の印字がなされている態様の例示図である。この第4図において、例えば床材として使用されるような構造材(41A)、(41B)、の所定の側面(42A)、(42B)には、所要の位置情報(44A)、(44B)が印字されている。また、ホゾのような適当な係合部(43A)、(43B)が、前述されたプレカット工法により適所に設けられている。なお、前記位置情報(44A)、(44B)の印字については、次のように実行することが好都合である。即ち、前記第3図において、水平方向に配列される構造材については、所要の位置情報が例えば“に五”のように横並びに印字され、垂直方向に配列される構造材については
“に五”
のように縦並びに印字されるようにする。また、この印字される側面は、大工等の建築作業者の足踏みされる側面であるから、前述の位置情報を確認しながら、複数本の構造材の組み合わせ配置を的確かつ迅速に行うことができる。」(第5欄32第行?第6欄第12行)

(1d)「・・・木材加工ライン(19)の稼働は下記の手順に従って行われる。
(1)付番をすべき材木(横架材)に対応する“通番”を制御部(11)に入力させる。または、ある所定の順番に従って、“通番”で一意的に識別される当該の横架材について、対応の始点、終点、および、その途中の1個または複数個の交点の“通り番地”をアクセスする。
(2)制御部(11)の支配の下に、印字部(17)において該当の横架材の適所に印字するための、当該該当の横架材に対応の付番をする。
(3)該当する横架材が近接したことを適当な検知手段(図示されていない)により検知して、当該横架材の始点位置近傍にに当該始点の“通り芯”の番地を含む所要の情報を印字する・・・
(5)また、該当する横架材のある所定の位置(例えば、他の横架材との交点位置)が検知されたときには、その位置に対応する付番のための印字操作が制御部(11)により指令され、これに応じて印字部(17)における所要の印字処理がなされる。」(第7欄第23?46行)

これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「対象家屋の階床組立図等に基づいて、木造家屋建築用の構造材である横架材に、プレカット工場において、その相互間の接続部に関する番地であって、当該横架材についての始点、終点及びその途中の交点の番地を印字し、建築現場では、その番地に従って建設工事を行う方法。」(以下「引用文献1に記載の発明」という。)

2.同、特開平8-19995号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0025】すなわち、本発明方法において外壁材11は、それぞれを水平載置して積み重ねた際に表出する端面13の側に建築物に壁面を形成する際の割当て位置との関係で定まる施工作業上必要な情報を個別に教示するための識別記号15が付された標準規格品としての単位壁材11aと、この単位壁材の裏面にカット位置を割り付けるために予め墨付けして同様に識別記号15が付された墨付け壁材11cと、前記単位壁材から不要部分のすべてもしくは一部を事前に切除して同様に識別記号15が付されたプレカット壁材11bとの少なくともいずれか一種もしくは二種以上を任意に組み合わせて使用される。
【0026】この場合、各外壁材11(11a,11b,11c)は、現場で最後に使用されるものを最下位に、最初に使用されるものを最上位に位置するようにその使用順に積み重ねて、例えば止着バンド16を巻き付けるなど、適宜の梱包手段により梱包することで図2に示すようにワンパック化して用意されることになる。」
(2b)「【0028】このようにワンパック化して梱包された各外壁材11は、建築現場に搬入された後、その梱包状態が解かれ、最上位に位置する外壁材11(11a)から順次取り出し、その端面13に付された前記識別記号15が教示する壁面部位との関係で定まる必要情報に従った所定の段取りのもとで取付け施工され、壁面が形成される。」

(3)対比
本願補正発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、引用文献1に記載の発明の「対象家屋の階床組立図等」、「木造家屋建築用の構造材である横架材」、「番地」、「印字」、「プレカット工場」及び「建設工事を行う方法」は、それぞれ、本願補正発明の「建物の設計図書」、「木造住宅建築用の構造材」、「位置情報」、「表示」、「構造材をプレカットするプレカット工場」及び「建築工事の管理方法」に相当し、引用文献1に記載の発明における「横架材についての始点、終点の番地」は、その横架材が配設されるべき位置に関する情報であることから本願補正発明の「その配設位置に関する位置情報」に相当する。また、本願明細書の「【0018】上記施工情報は、該構造材又は該羽柄材の周辺で行われる工事に関する情報であり、好ましくは、該構造材又は該羽柄材に直接他の部材を接合させたり固定したりする工事に関する情報である。」の記載を参酌すれば、引用文献1に記載の発明における「横架材についてのその途中の交点の番地」は、他の横架材をその横架材に接合・固定するための情報であることから、本願発明の「その配設位置の周辺で行われる関連工事に関する施工情報」の一種に相当する。
してみると両者は、
「建物の設計図書に基づいて、木造住宅建築用の構造材に、その配設位置に関する位置情報及びその配設位置の周辺で行われる関連工事に関する施工情報を表示する表示工程、上記構造材を上記位置情報に従って配設する配設工程、及び、配設された上記構造材の近傍において上記施工情報に従って上記関連工事を行う関連工事工程を具備し、
上記表示工程は、上記構造材をプレカットするプレカット工場で行う建築工事の管理方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
関連工事が、本願補正発明では、個々の構造材の配設後に行う工事であり、当該個々の構造材を配設する工事を含まないものであるのに対し、引用文献1に記載の発明では、その点が不明である点。
(相違点2)
表示工程として、本願補正発明では、構造材としての柱材に、施工情報として、少なくとも、天井又は床面の高さ位置を示す加工取付情報を、直接又はラベル貼付により表示する工程を有するのに対して、引用文献1に記載の発明では、そのような表示工程を有しない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
建物をその設計図面に基づいて組み立てる場合、個々の部材を順番に組み立てていくことは、引用文献2に記載されているとおり、よく知られた技術である。
そして、引用文献1に記載の発明においても、各横架材は順番に搬送され、組み立てられるものと認められるが、その際に、例えば、先ず周囲を形成する横架材(引用文献1の第3図の周囲の4本の横架材に相当)の始点、終点を組み付け(本願発明の「当該個々の構造材を配設する工事」に相当)、その後に、それら横架材の途中の交点に順次、横架材(同第3図の内部の3本の横架材に相当)を組み付け(本願発明の「関連工事」に相当)ていくというような工程(この工程は、前者の、周囲の4本の横架材を配設する工事には含まれない)は、当業者であれば容易に想到しうる。
してみると、相違点1に係る事項は、当業者が容易に採用しうる事項である。
(相違点2について)
天井や床面の高さ位置を、墨汁等により建築現場で柱材に直接記入することが、横架材の配置位置の記入と同様に、従来から行われていたこと、及び、引用文献1に記載の発明が、本願補正発明と同様に、建物の建築現場における各工事を迅速、正確且つ効率的に進行させるためのものである(上記(1b)、(1c)参照)ことを考慮すると、引用文献1に記載の発明において、表示工程に柱材に天井又は床面の高さ位置を示す加工取付情報を、直接表示する工程を付加することは、当業者が容易になし得る事項である。

また、本願補正発明の作用効果も、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


【3】本願発明について
平成20年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年10月5日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】建物の設計図書に基づいて、建築用の構造材又は羽柄材に、その配設位置に関する位置情報及びその配設位置の周辺で行われる関連工事に関する施工情報を表示する表示工程、上記構造材又は上記羽柄材を上記位置情報に従って配設する配設工程、及び、配設された上記構造材又は上記羽柄材の近傍において上記施工情報に従って上記関連工事を行う関連工事工程を具備し、
前記関連工事は、個々の構造材又は羽柄材の配設後に行う工事であり、当該個々の構造材又は羽柄材を配設する工事を含まないことを特徴とする建築工事の管理方法。
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「【2】(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から「表示工程」の限定事項である「構造材をプレカットするプレカット工場で行い、該表示工程においては、上記構造材としての柱材に、上記施工情報として、少なくとも、天井又は床面の高さ位置を示す加工取付情報を、直接又はラベル貼付により表示する」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「【2】(4)」に記載したとおり、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2に記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

[付言]
本件補正については、上記【2】で示した理由以外にも、以下の理由で却下すべきものであることを付言しておく。

即ち、本件補正により、請求項3?6の何れかに記載の管理情報表示システムを引用する請求項7の「管理情報表示システム」が追加された。補正後の請求項7は、補正前のいずれの請求項を減縮したものにも該当せず、この補正により、本願の特許請求の範囲に記載された「管理情報表示システム」に関する発明の数が、実質的に補正前の4から5に増加することになる。すなわち、この補正は新たな発明を追加するものであるから、特許法第17条の2第4項各号に規定するいずれの事項を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
 
審理終結日 2009-09-10 
結審通知日 2009-09-15 
審決日 2009-09-29 
出願番号 特願平10-153046
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 57- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江成 克己五十幡 直子住田 秀弘  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 草野 顕子
伊波 猛
発明の名称 建築工事の管理方法  
代理人 羽鳥 修  
代理人 松嶋 善之  
代理人 前田 秀一  
代理人 岩本 昭久  

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