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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1207164
審判番号 不服2008-19593  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2003- 84518「印刷装置、及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-294608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成15年3月26日を出願日とする出願であって、平成20年2月28日付けで拒絶理由通知がなされ、その後、同年6月23日付けで拒絶査定され、これに対し、平成20年7月31日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年8年25日に手続補正がなされたものである。

第2 平成20年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年8月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
(以下、下線は当審で付加したものである。)

1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内でなされたものである。

そこで、特許請求の範囲の補正のうち、請求項1の補正(以下「補正1」という)について検討する。
補正1は、出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項4,5
「【特許請求の範囲】
【請求項4】 感光材料を収納する筐体と、
前記筐体に形成され、表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を前記感光材料の感光面へ入射させる入射窓と、
前記入射窓と前記感光材料との間に配置され、前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
前記シャッタを通過する光の色相を補正する複数の補正フィルタと、
前記表示画面を透過する光の色相に適応する前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、
前記表示画面に表示された情報識別パターンを読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた前記情報識別パターンの情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御し、又はフィルタ配置手段を作動させる露光制御手段と、
を有するを特徴とする印刷装置。
【請求項5】 前記情報識別パターンが、前記表示画面の無表示部の明暗に
よって複数の情報を請求項4に記載の前記印刷装置に伝達することを特徴とする表示装置。」
を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を入射窓から入射させて、前記表示画面を印刷する印刷装置と共に用いられ、前記表示画面を備える表示装置であって、
前記印刷装置として、
感光材料を収納する筐体と、
前記筐体に形成され、表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を前記感光材料の感光面へ入射させる入射窓と、
前記入射窓と前記感光材料との間に配置され、前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
前記シャッタを通過する光の色相を補正する複数の補正フィルタと、
前記表示画面を透過する光の色相に適応する前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、
前記表示画面に表示されたバーコードを読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた前記バーコードの情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御し、又はフィルタ配置手段を作動させる露光制御手段と、
を有し、前記感光面に結像される前記表示画面に密着して前記表示画面を印刷する印刷装置が適用可能とされ、
前記表示画面の余白部分に、前記印刷装置に設けられたセンサが読み取る複数種類のバーコードを表示することを特徴とする表示装置。」(以下、「本願補正発明」という。)
と補正するものである。

(1)補正内容

前記補正1は、以下の内容からなる。

ア 本件補正前の「表示装置」が、「表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を入射窓から入射させて、前記表示画面を印刷する印刷装置と共に用いられ」るものであり、かつ、該「印刷装置」が適用可能なものに限定する補正。

イ 本件補正前の印刷装置側の「情報識別パターン」(又は「明暗」による「情報」(本件補正前の請求項5))を、「バーコード」に限定する補正。

ウ 印刷装置側の「情報識別パターン」の配される位置を、本件補正前の「表示画面の無表示部」を「表示画面の余白部分」に限定する補正。

(2)補正の適否

上記補正1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号の、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する、

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-104752号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項ア
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について、実施例を参照しながら詳細に説明する。主要な形態において、液晶パネルとしては、ビデオムービーや電子カメラのビューファインダもしくは液晶モニタなどが好適な適用対象である。また、記録媒体としては、通常の写真用感光フィルム,印画紙など、露光によって画像を記録する様々な記録媒体が適用可能である。しかし、現像,定着など各種の作業が必要である。これに対し、自己処理型のフィルム,いわゆるインスタントフィルムであれば、そのような手間を必要とせず、取り扱いが容易で、更には鮮明なカラー画像も得ることができる。
【0013】
【実施例1】最初に、添付図面を参考にして本発明によるプリンタ装置の実施例1を詳細に説明する。図2には、実施例1にかかるプリンタ装置の外観が示されている。例えばビデオカメラや携帯型情報機器などの液晶ディスプレイ10に対して、同図(A)に矢印FAで示すようにプリンタ装置20が着脱される。プリンタ装置20が取り付けられた状態は、同図(B)に示すようになる。プリンタ装置20には、その側面にプリント出力口21が設けられており、ここからプリントされたフィルムが取り出されるようになっている。このように、本実施例によるプリンタ装置20は、液晶ディスプレイ10に対して着脱可能となっており、液晶ディスプレイ10と合体して使用される構成となっている。
【0014】図1には、図2(B)の#1-#1線に沿って矢印方向に見た断面が示されている。同図において、ビデオカメラの液晶ディスプレイ10は、光源12と液晶パネル14を含んでいる。本実施例にかかるプリンタ装置20は、光学像伝達手段22,シャッタ24,感光フィルム26を含んでいる。そして、図示のように液晶ディスプレイ10に取り付けられる。この状態でシャッタ24を「開」とすると、液晶パネル14に表示されている像が光学像伝達手段22,シャッタ24をそれぞれ介して感光フィルム26に投影され、感光フィルム26が像に対応して感光する。感光フィルム26は自己処理型フィルムであるから、適宜の時間の経過後プリント出力口21からプリントアウトされる。
・・・
【0016】液晶パネル14は、液晶(例えば、光の偏光状態を変調するホメオトロピック配向液晶,ホモジニアス配向液晶,強誘電性液晶,光の散乱状態を変調する液晶)による光変調層を備えている。光の偏光状態を変調する液晶を用いた場合には、液晶層の表裏に偏光板が設けられる。光源12からは、感光フィルム26の露光に必要な波長帯域を含んた読み出し光が出力される。なお、通常の液晶ディスプレイと同様に、液晶パネル14の表示面が均一の光強度で照明されるようになっていることが望ましい。液晶パネル14には、表示すべき画像情報が与えられている。読み出し光は、一方の偏光板を通ったのち、液晶パネルの液晶層を通る間に画像情報に応じて2次元的にその偏光状態が変調される。変調後の読み出し光は、他方の偏光板を通ることで、画像情報に応じて強度が変調された状態となる。この読み出し光が光学像伝達手段22,シャッタ24を介して感光フィルム26に結像し、プリントが行われる。」

記載事項イ
「【0020】次に、感光フィルム26に対する露光時間の制御は、シャッタ24によって行われる。シャッタ24としては、機械式シャッタや液晶シャッタが用いられる。機械式シャッタは、1枚又は複数枚の遮光板を機械的に動かすようにしたものである。液晶シャッタは、2枚のガラス基板の間に挟まれた液晶に電圧を印加するようにしたものである。なお、液晶シャッタを用いる場合、液晶として、強誘電性液晶などの応答速度の速いものを用いると好都合である。
【0021】なお、液晶パネル14の光による感光フィルム26の露光時間の設定は、もちろんマニュアル設定としてよいが、液晶画面の出力を露出計により測定して自動的に露光時間が設定されることが望ましい。光源12の明るさや液晶パネル14の画面の駆動設定によって、最適な露光時間が異なる。一方、光学像伝達手段22として上述した屈折率分布型レンズを用いた場合には、レンズのF値は固定である。従って、感光フィルム26に対する最適な露光量は、液晶パネル14の透過光量と露光時間によって決定される。
【0022】液晶パネル14に対する駆動信号に、設定された露光時間のみ液晶が駆動されるような露光時間制御信号を与えることによって、液晶パネル14自身がシャッタを兼ねるような構成としてもよい。また、露出計及び絞り(図示せず)をプリンタ装置20のフード内に設け、液晶パネル14の明るさに応じてシャッタスピードや絞りを自動制御するようにしてもよい。その他、必要に応じて光源12から感光フィルム26に至る間に、光強度を減衰調整するための光学的フィルタ手段や、感光フィルム26の露光に不要な波長帯域の光などを遮断するための光学的フィルタ手段を挿入して、露光条件を調整するようにしてもよい。
【0023】次に、感光フィルム26としては、上述したように自己処理型のインスタントフィルムが使用される。感光フィルム26は、投影される光学像に対応する面積の大きさとなっている。そして、10枚程度の自己処理型フィルムが収納されているフィルムパックが、プリンタ装置20に装填される。撮影途中,すなわちフィルムパック中のフィルムを使い切る前であっても、フィルムパック部分又はプリンタ装置部分の取り外しが可能なように、十分な遮光が施されている。例えば、自己処理型フィルムを使用するインスタントカメラのような構成が可能である。」

記載事項ウ
「【0072】(2)プリンタ装置を取り付ける液晶ディスプレイによっては、その表示と感光フィルムの間の波長感度特性が必ずしも一致しない場合がある。このような場合には、色温度変換を行うフィルタを液晶パネルと感光フィルムとの間に配置すればよい。・・・」

以上、記載事項ア?ウ(及び図面)から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「液晶パネル14の液晶層を通った読み出し光を、光学像伝達手段22,シャッタ24,感光フィルム26を含み、シャッタ24を「開」とすると、液晶パネル14に表示されている像が光学像伝達手段22,シャッタ24をそれぞれ介して感光フィルム26に投影され、感光フィルム26が像に対応して感光し、当該感光した感光フィルム26は、プリント出力口21からプリントアウトされるプリンタ装置20と合体して使用される、前記液晶パネル14を含む液晶ディスプレイ10であって、
前記プリンタ装置20として、
前記感光フィルム26を装填し、
前記感光フィルム26の露光時間の制御を行う前記シャッタ24と、
前記液晶パネル14と感光フィルム26の間に配置される色温度変換を行うフィルタと、
液晶パネル14の出力を測定する露出計と
前記露出計によって測定された液晶パネル14の出力に応じて、シャッタスピードを自動制御する手段と、
を有し、前記感光フィルムに結像し前記液晶パネル14を含む液晶ディスプレイ10と合体して前記液晶パネル14に表示されている像をプリントするプリンタ装置20が着脱可能となっている液晶ディスプレイ10。」

3.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「液晶パネル14の液晶層を通った読み出し光を、光学像伝達手段22,シャッタ24,感光フィルム26を含み、シャッタ24を「開」とすると、液晶パネル14に表示されている像が光学像伝達手段22,シャッタ24をそれぞれ介して感光フィルム26に投影され、感光フィルム26が像に対応して感光し、当該感光した感光フィルム26は、プリント出力口21からプリントアウトされるプリンタ装置20と合体して使用される、前記液晶パネル14を含む液晶ディスプレイ10」と、
本願補正発明の「表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を入射窓から入射させて、前記表示画面を印刷する印刷装置と共に用いられ、前記表示画面を備える表示装置」とを対比すると、

ア 引用発明の「液晶パネル14」、「(液晶層を通った)読み出し光」、「液晶パネル14に表示されている像が・・・プリントアウトされる」、「プリンタ装置20」、「合体して」、「使用され」及び「液晶ディスプレイ10」は、それぞれ、本願補正発明の「表示画面」、「(表示画面を透過した)光」、「表示画面を印刷する」、「印刷装置」、「密着して」、「共に用いられ」及び「表示装置」に相当する。

イ 引用発明の「光学像伝達手段22,シャッタ24,感光フィルム26を含み、シャッタ24を「開」とすると、液晶パネル14に表示されている像が光学像伝達手段22,シャッタ24をそれぞれ介して感光フィルム26に投影され」と、本願補正発明の「入射窓から入射させて」とは、共に「(光学像光を)入射させる」点で一致する。

以上ア?ウから、両者は「表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を入射させて、前記表示画面を印刷する印刷装置と共に用いられ、前記表示画面を備える表示装置」の点で一致する。

(2)引用発明の「前記プリンタ装置20として、
前記感光フィルム26を装填し、
前記感光フィルム26の露光時間の制御を行う前記シャッタ24と、
前記液晶パネル14と感光フィルム26の間に配置される色温度変換を行うフィルタと、
液晶パネル14の出力を測定する露出計と
前記露出計によって測定された液晶パネル14の出力に応じて、シャッタスピードを自動制御する手段と、
を有し、」と、
本願補正発明の「前記印刷装置として、
感光材料を収納する筐体と、
前記筐体に形成され、表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を前記感光材料の感光面へ入射させる入射窓と、
前記入射窓と前記感光材料との間に配置され、前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
前記シャッタを通過する光の色相を補正する複数の補正フィルタと、
前記表示画面を透過する光の色相に適応する前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、
前記表示画面に表示されたバーコードを読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた前記バーコードの情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御し、又はフィルタ配置手段を作動させる露光制御手段と、
を有し、」とを対比すると、

ア 引用発明の「プリンタ装置20」は、本願補正発明の「印刷装置」に相当する。

イ 引用発明の「感光フィルム26」は、本願補正発明の「感光材料」に相当する。また引用発明の「感光フィルム26」において、「液晶パネル14」の像が結像されるのは「感光フィルム26」の表面であることは、引用例1の図1からみても明らかであるから、引用発明の「感光フィルム26」(の表面)は、本願補正発明の「感光面」にも相当するものである。

ウ 引用発明の前記「プリンタ装置20」は前記「感光フィルム26」を装填するものであり、また上記ア及びイの相当関係を考慮すれば、引用発明の「プリンタ装置20」は、本願補正発明の「感光材料を収納する筐体」にも相当すると言える。

エ 引用発明の「シャッタ24」は、「感光フィルム26の露光時間の制御を行う」ものであり、これを言い換えると、当該「感光フィルム26」に対して液晶パネル14の透過光(光学像光)を遮断及び通過させる制御であるから、上記ア?ウの相当関係を踏まえれば、引用発明の「シャッタ24」及び「感光フィルム26の露光時間の制御を行う」は、それぞれ本願補正発明の「シャッタ」及び「感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させる」に相当する。

オ 引用発明の「色温度変換を行うフィルタ」は、入射した光の色を補正する光学フィルタのことであるから、本願補正発明の「光の色相を補正する・・・補正フィルタ」に相当する。
したがって、引用発明の「前記液晶パネル14と感光フィルム26の間に配置される色温度変換を行うフィルタ」と、本願補正発明の「前記シャッタを通過する光の色相を補正する複数の補正フィルタと、
前記表示画面を透過する光の色相に適応する前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段」とは共に、
「光の色相を補正する補正フィルタと、
前記補正フィルタを配置するフィルタ配置手段」である点で一致する。

カ 引用発明の「露出計」は、センサの一種であるから、本願補正発明の「センサ」に相当する。また、引用発明の「シャッタスピードを自動制御する手段」とは、シャッタ開閉時間の制御を意味するから、本願補正発明の「シャッタの開放時間を制御し・・・露光制御」に相当する。
また、引用発明の「露出計」は「液晶パネル14の出力を測定する」ものであるから、液晶パネル14上の表示自体を読み取るものであるとも言える。
これらから、引用発明の「液晶パネル14の出力を測定する露出計と
前記露出計によって測定された液晶パネル14の出力に応じて、シャッタスピードを自動制御する手段」と
本願補正発明の「前記表示画面に表示されたバーコードを読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた前記バーコードの情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御し、又はフィルタ配置手段を作動させる露光制御手段」とは共に、
「表示画面の表示を読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御する露光制御手段」である点で一致すると言える。

以上ア?カをまとめると、両者は、
「前記印刷装置として、
感光材料を収納する筐体と、
前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
光の色相を補正する補正フィルタと、
前記補正フィルタを配置するフィルタ配置手段と、
表示画面の表示を読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御する露光制御手段と、
を有し、」の点で一致する。

(3)引用発明の「前記感光フィルムに結像し前記液晶パネル14を含む液晶ディスプレイ10と合体して前記液晶パネル14に表示されている像をプリントするプリンタ装置20が着脱可能となっている液晶ディスプレイ10」と本願補正発明の「前記感光面に結像される前記表示画面に密着して前記表示画面を印刷する印刷装置が適用可能とされ、
前記表示画面の余白部分に、前記印刷装置に設けられたセンサが読み取る複数種類のバーコードを表示することを特徴とする表示装置」とを対比すると、引用発明の「プリンタ装置20」は「液晶ディスプレイ10」に「着脱可能」なものであり、かつ、「液晶ディスプレイ10」の「液晶パネル14」の像を「感光フィルム26」上に結像して印刷するものであるから、「液晶ディスプレイ10」に適用可能なものであると言える。
したがって、上記(1)及び(2)で考察した、引用発明及び本願補正発明の各構成要素の相当関係を考慮すれば、両者は、
「前記感光面に結像される前記表示画面に密着して前記表示画面を印刷する印刷装置が適用可能とされる表示装置」である点で一致する。

したがって、上記(1)?(3)の対比考察から、本願補正発明と引用発明とは、
「表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を入射させて、前記表示画面を印刷する印刷装置と共に用いられ、前記表示画面を備える表示装置であって、
前記印刷装置として、
感光材料を収納する筐体と、
前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
光の色相を補正する補正フィルタと、
前記補正フィルタを配置するフィルタ配置手段と、
表示画面の表示を読み取るセンサと、
前記センサによって読み取られた情報に基づいて、前記シャッタの開放時間を制御する露光制御手段と、
を有し、
前記感光面に結像される前記表示画面に密着して前記表示画面を印刷する印刷装置が適用可能とされる表示装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
表示画面を透過した光が、印刷装置(及び感光材料の感光面)に入射する際に、本願補正発明では印刷装置(印刷装置筐体)の「入射窓」を通して入射するものであり、「入射窓」が筐体に形成され、表示画面に密着しているのに対して、引用発明ではその点明記されていない点。

相違点2
感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタの配置が、本願補正発明では、「入射窓と感光材料との間」であるのに対し、引用発明ではその点記載されていない点。

相違点3
光の色相を補正する補正フィルタについて、
(1)本願補正発明では、当該フィルタの配置はシャッタが光を透過させる部分であるのに対し、引用発明ではその点明記されていない点。
(2)本願補正発明では、当該フィルタが複数あるのに対し、引用発明では、その点明記されていない点。
(3)本願補正発明では、当該フィルタが表示画面を通過する光の色相に適応するものであるのに対し、引用発明ではその点明記されていない点

相違点4
印刷装置の「センサ」が読み取る表示画面の表示内容が、本願補正発明では「バーコード」情報であるのに対して、引用発明では「液晶パネル14の出力」である点。
またあわせて、本願補正発明の上記バーコードは複数種類であり、これらは表示画面の余白部分に表示されているのに対し、引用発明ではその点記載されていない点。

4.当審の判断

前記相違点1?4について、検討する。

(1)相違点1、2について
表示装置の表示画面に映し出された画像を直接撮像し、それを印刷するプリンタ装置の技術分野において、プリンタ装置内の撮像部の各構成要素の保護を図るため、該プリンタ装置のハウジング(筐体)の入射光入り口部に保護ガラスなどの入射窓を設ける手段、及び、該撮像時に前記入射窓を撮影対象となる表示画面に対面配置させる手段(表示画面に密接させる態様とも言える)は、共に従来周知の手段である(例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-90513号公報(以下、「周知例1」という)に記載された、「撮像部の保護ガラス11」(段落【0018】)、及びこれと液晶ディスプレー6との密接配置の描出(【図1】、【図2】)等を参照のこと。)。
したがって、同じく表示画面を直接プリントするプリンタ装置の技術である、引用発明のプリンタ装置にも、上記周知の手段を設けることは、当業者であれば適宜なす程度の事項である。
そして、上記入り口部にそのような入射窓を設ける場合、プリンタ装置の「シャッタ」も撮像部の構成要素であるから、これを保護するため、通常プリンタ装置内部(すなわち、入射窓と感光材料との間)に配することは、当業者であれば自明である。

(2)相違点3((1)?(3))について
光の色相を補正する補正フィルタは、感光材料よりも入射光側に配すればよいのであるから、当該補正フィルタの位置をシャッタが光を通過した部分(すなわち、シャッタよりも感光材料側の部分)にすることは、当業者にとって単なる設計的事項にすぎない。
また、入射光(撮影光)の状況に応じ、複数種類の色相補正フィルタを使い分けることは、印刷技術の分野では従来周知の手法(例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-281230号公報(以下「周知例2」という)の第1頁右下欄第11行目乃至第2頁第5行目等を参照のこと)であるから、引用発明の色相補正フィルタも上記周知の手法を採用し、複数種類の色相補正フィルタを揃え、入射光(撮影光)の状況に応じたフィルタを適宜選択して用い、シャッタを通過する色相に適応するものとすることは当業者であれば容易に想到するものである。

(3)相違点4について
印刷の露光条件に関する種々の情報を、複数種類のバーコードに一旦置き換えて、これを印刷対象となる画像と共にその画像領域外(例えば表示の余白部分など)に表示し、このバーコードを印刷装置側に読み取らせてプリント制御を行う手法は印刷技術分野において従来周知の手法である(例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-297533号公報(以下「周知例3」という)の第1頁左下欄第4行目乃至第8行目、第3頁左上欄第11行目乃至右上欄第11行目、及び第2図等を参照のこと。))。
そこで、引用発明の「液晶パネル14の出力」も(印刷装置側のセンサで読み取り可能な)印刷制御に用いられる露光条件に関する情報の一種と言えるから、これに上記従来周知の手法を採用して、上記表示装置側からの「出力」情報を一旦バーコード情報に置き換えて画面上の画像領域外(余白部分)に表示し、液晶ディスプレイ側とプリンタ装置側との間での露光条件の情報の伝達を行うことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、伝達する情報の種類が複数存在する場合には、これに対応して、前記バーコードを複数種類に分ける程度のことも当業者であれば適宜為す程度の設計的事項にすぎない。
さらに、情報送り手側の表示画面上に画像に関する情報をバーコード形態により直接表示し、情報受け手側にこれを読み取らせる手法も、従来周知の手法(例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-36815号公報(以下「周知例4」という)の段落【0012】(「上記のように、第4の発明によれば、画像信号に、画像情報をバーコード化したバーコード信号を合成して、表示手段において画像上に画像情報を含んだバーコード図形を重ねて表示する。これにより、バーコード図形の読み取り手段を用いて、表示画面上から容易に関連する情報を取得・利用することが可能となる。」))等を参照。)であるから、上述したように、引用発明の液晶ディスプレイとプリンタ装置間の情報伝達をバーコードを介して行うとした場合、この周知の手法を用いることも、当業者であれば適宜選択する程度の事項である。

また、本願補正発明によってもたらされる効果は引用例1の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

まとめ

よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び

以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成20年8月25日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1及び6に係る発明は、本願の出願当初明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び6に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項3】 感光材料を収納する筐体と、
前記筐体に形成され、表示画面に密着して前記表示画面を透過した光を前記感光材料の感光面へ入射させる入射窓と、
前記入射窓と前記感光材料との間に配置され、前記感光面へ入射する光を遮断し、又は通過させるシャッタと、
前記シャッタを通過する光の色相を補正する複数の補正フィルタと、
前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、
前記表示画面が備えられた表示装置の種類によって有する色相特性に適応する前記補正フィルタが、前記シャッタが光を通過させる部分に配置されるように前記フィルタ配置手段を手動で操作させるフィルタ切換え操作部と、
を有することを特徴とする印刷装置。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「第2」「2.引用例」において、「引用例1」に関し記載したとおりである。
また同様に、「周知例1」乃至「周知例4」についても、前記「第2」「4.当審の判断」において指摘したとおりである。

3.対比・判断

上記「第2」「3.対比」及び「4.当審の判断」で検討した本願補正発明は、本願発明の「印刷装置」の構成要素である、「感光材料を収納する筐体と、・・・
前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、」・・・「を有することを特徴とする印刷装置」の部分をすべて包含するものである。
ただし、残る本願発明の構成要素の
「前記表示画面が備えられた表示装置の種類によって有する色相特性に適応する前記補正フィルタが、前記シャッタが光を通過させる部分に配置されるように前記フィルタ配置手段を手動で操作させるフィルタ切換え操作部」は、「第2」「3.対比」及び「4.当審の判断」で定義した引用発明と相違する点である(以下「相違点A」という)。
ただし、この相違点Aについては、前記「第2」「4.当審の判断」の「(2)相違点3((1)?(3))について」でも述べたように、
入射光(撮影光)の状況に応じ、複数種類の色相補正フィルタを使い分けることは、印刷技術の分野では従来周知の手法であり(例えば、周知例2等を参照のこと)、前記「第2」「2.引用例」で定義した引用発明の色相補正フィルタも上記周知の手法を採用し、複数種類の色相補正フィルタを揃え、入射光(撮影光)の状況に応じたフィルタを適宜選択して用いることは当業者であれば容易に想到するものである。
また、このフィルタの選択を自動で行うか手動で行うかも、当業者が適宜選択する程度の設計的事項にすぎない。

そうすると、本願補正発明に含まれる、本願発明の発明特定事項である「感光材料を収納する筐体と、・・・
前記補正フィルタを前記シャッタが光を通過させる部分に配置するフィルタ配置手段と、」・・・「を有することを特徴とする印刷装置」の部分を含む点については、前記「第2」「4.当審の判断」で判断したとおり当業者が容易に想到し得たことであり、また、上記相違点Aについても、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-18 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-28 
出願番号 特願2003-84518(P2003-84518)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
越河 勉
発明の名称 印刷装置、及び表示装置  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 西元 勝一  

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