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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625545 審決 特許
不服20051624 審決 特許
不服200721854 審決 特許
不服200627219 審決 特許
不服200510192 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1207418
審判番号 不服2008-24905  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-29 
確定日 2009-11-18 
事件の表示 特願2004-142553「置換チアゾリジンジオン誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月24日出願公開、特開2004-359676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本願は、平成5年9月1日(優先権主張1992年9月5日、英国)を国際出願日とする特願平6-506983の一部を、新たに平成10年6月2日に特願平10-152828号として分割し、この分割した出願の一部を、また新たに平成13年8月6日に特願2001-238154号として分割し、この分割した出願の一部を、更に平成16年5月12日に新たに分割した出願であって、平成20年5月13日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、請求の範囲の請求項1?5に係る発明は請求の範囲に記載されたとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は
「 水系および固体状態にて優れた安定性を示す、医薬上許容される無機酸または有機酸から形成される塩の形態の、5-[4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン化合物又はその互変異性体、あるいはその医薬上許容される溶媒和物(ただし、マレイン酸塩を除く)。」
と認められる。

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願の優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな特開平1-131169号公報(以下、引用例という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「 式(I)
(化学構造式 省略)
[式中A^(1) は置換又は未置換の芳香族複素環式基を表し;
R^(1) は水素原子、アルキル基……を表し;
R^(2) 及びR^(3) はそれぞれ水素を……表し;
A^(2) は……ベンゼン環を表し;そして
nは2……を表す]
の化合物又はその互変異性体及び/又はその製薬上許容しうる塩及び/又はその製薬上許容しうる溶媒和物。(特許請求の範囲の請求項1)」
(2)「本発明は……このような化合物を含む製薬組成物……に関する。」(4頁左下欄[産業上の利用分野]の項)
(3) 5-(4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル)-2,4-チアゾリジンジオン(融点153?5℃、MeOH)を製造したこと。(27頁右上欄、実施例30)

3.対比・判断
本願発明と引用例に記載の5-(4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル)-2,4-チアゾリジンジオン(上記(3))(以下、「引用発明」という。)とを対比する。
本願発明の「5-[4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン」と、引用発明の「5-(4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル)-2,4-チアゾリジンジオン」とは表記方法が異なるだけで同一化合物を表すことは明らかであるから、両者は、「5-[4-[2-(N-メチル-N-(2-ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン化合物である点で一致し、前者は医薬上許容される無機酸または有機酸から形成される塩の形態(ただしマレイン酸塩を除く)であるのに対して、後者は遊離型の化合物である点(相違点1)及び、前者は、水系及び固体状態にて優れた安定性を示すとの特定がなされているのに対して、後者はこの特定がなされていない点(相違点2)で相違する。

そこで、これらの相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明は、製薬組成物の有効成分である引用例の特許請求の範囲の請求項1に記載された化合物発明(上記(1)、(2))の製造実施例であり、この請求項1には、「式(I)(化学構造式 省略)・・・の化合物・・・又はその製薬上許容しうる塩」と遊離型の化合物とともにその製薬上許容しうる塩が記載されている。
そして、引用発明の化合物は遊離型の化合物であるが、その化学構造を見れば明らかなとおり分子内に弱塩基性であるピリジル基及びアミノ基を有しており、これらの弱塩基性の基が、酸と塩を形成しうることは当業者にとって技術常識である。
ところで、一般に、医薬の有効成分である化合物が塩を形成しうる化合物である場合は、医薬としてより好ましい性質を有するようにその種々の塩について検討することは当業者が通常行うことである。
してみると、上記のとおり引用例には引用発明の化合物について、その上位概念の化合物発明について、遊離型の化合物のみならずその製薬上許容しうる塩の形態の化合物も記載されていることも勘案すれば、引用発明において、遊離型の化合物に代えて、その医薬上許容される無機酸または有機酸から形成される塩の形態(ただしマレイン酸塩を除く)とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
なお、請求人は、審判請求書において、「引用例の第6頁右下欄第4行ないし第7頁右上欄第5頁において、チアゾリジンジオン部分またはカルボキシ基の塩として金属塩を示すが、酸付加物塩について、また、酸付加物塩を形成することの利点についてはなんら記載してない。」と主張するが、上記のとおり、引用発明の化合物が酸付加物を形成しうることは明らかであり、また、医薬の有効成分である化合物について、より好ましい性質を有するように種々の塩について検討することは当業者が通常行うことである。

(相違点2について)
本願発明は、「水系及び固体状態において優れた安定性を示す」との事項を発明の構成に欠くことができない事項とするものであるが、「優れた安定性」の意味が不明瞭であるので本願明細書の発明の詳細な説明を検討するに、安定性について、「水系での良好な安定性および固体状態での良好な安定性を示し、これらの化合物のある種のものは特に安定である。」(段落【0003】)と説明されているだけであり、安定性の程度を示す具体的な記載はなく、また、「ある種のものは特に安定である」と記載されているが、「ある種のもの」とはどのような化合物なのか、「特に安定」とはどのように安定なのかについてはなんら説明がなされていない。そして、安定性の測定方法について、「本発明化合物の安定性を、慣用的な定量分析法を用いて調べることができる。例えば・・・クロマトグラフィー法を用いて行うことができる。」との一般的な説明がなされているだけであり(段落【0013】?【0015】)、安定性を調べた具体的な試験例は記載されていない。なお、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明である医薬上許容される無機酸または有機酸から形成される塩の形態(ただしマレイン酸塩を除く)の化合物については、その製造実施例は全く記載されていない。
そうすると、上記の本願発明の「水系及び固体状態において優れた安定性を示す」との事項は、ある具体的な基準を超える安定性を示すというものではなく、本願発明の塩の形態の化合物が、医薬の有効成分として使用できる程度に水系及び固体状態において安定であることを意味するものであると認められる。
一方、医薬の有効成分である化合物について、水系及び固体状態での安定性を確認することは当業者が通常行うことである。そして、引用例には、引用発明の化合物が医薬の有効成分であること(上記(2))、及び、引用発明の化合物をメタノールから結晶化させて製造したこと(上記(3))が記載されており、このことは、引用発明の化合物が、メタノール中及び結晶状態すなわち固体状態で安定であることを示している。
してみると、遊離型の化合物である引用発明の、医薬上許容される無機酸または有機酸から形成される塩の形態(ただしマレイン酸塩を除く)の化合物である本願発明の化合物が、医薬の有効成分として使用できる程度に水系及び固体状態で安定であることは当業者が容易に予測し得ることである。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-20 
結審通知日 2009-04-21 
審決日 2009-07-08 
出願番号 特願2004-142553(P2004-142553)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平林 由利子胡田 尚則  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 置換チアゾリジンジオン誘導体  
代理人 水原 正弘  
代理人 西野 満  
代理人 冨田 憲史  
代理人 田中 光雄  
代理人 元山 忠行  
代理人 山崎 宏  

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