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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1207440 |
審判番号 | 不服2007-8716 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-28 |
確定日 | 2009-11-19 |
事件の表示 | 平成11年特許願第129755号「医療用酸素濃縮装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-316975号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年5月11日の出願であって、平成19年2月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月28日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.補正の目的の適否と本願発明 平成19年3月28日付けで提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、平成18年12月28日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の、請求項の削除を目的とするものに該当する。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 空気から酸素を選択的に分離する分離手段と、該分離手段へ圧縮空気を供給するためのコンプレッサー手段と、分離手段から酸素濃縮気体を使用に供するための供給手段から少なくとも構成される在宅酸素療法のための医療用酸素濃縮装置において、装置の異常状態を監視するためのセンサーと、音声表示手段を設けるとともに、これらのセンサーにより検出した前記異常状態を区別して、異常発生部分を音声表示し、さらに警報灯もしくは警報ブザーを同時に作動させることを特徴とする医療用酸素濃縮装置。(以下、「本願発明」という。)」 3.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-104190号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「… 【請求項10】 酸素濃縮空気の流量調整および各種警告を表示するための操作パネルと,空気取入口を介して室内から装置内部に取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を送出するコンプレッサーと,前記コンプレッサーで圧縮した圧縮空気を冷却する圧縮空気冷却器と,前記圧縮空気冷却器で冷却した圧縮空気を取り込み,前記圧縮空気から窒素を選択的に吸着して酸素濃縮空気を送出する吸着器と,を備えた酸素濃縮装置において,前記コンプレッサーで圧縮した圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと,前記吸着器から送出される酸素濃縮空気の酸素濃度に対応した電圧を出力する電池式の酸素センサと,前記酸素センサからの出力電圧を入力して酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と,前記圧力センサで検出した圧力および前記酸素濃度検出手段で検出した酸素濃度に基づいて,装置本体の動作の異常判定および前記酸素センサの異常判定を行う判定手段と,を備え,前記判定手段が,前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以上の場合に,正常動作であると判定し,前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以下の場合に,異常動作であると判定し,前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以下の場合に,前記酸素センサに起因する異常であると判定することを特徴とする酸素濃縮装置。 【請求項11】 請求項10記載の酸素濃縮装置において,前記操作パネルが,前記判定手段の判定結果に基づいて,正常動作の表示,異常動作でかつ前記酸素センサが正常の表示,異常動作でかつ前記酸素センサが異常の表示の3種類の表示を行うことを特徴とする酸素濃縮装置。 … 」(特許請求の範囲) (イ)「【発明の属する技術分野】 本発明は,呼吸器疾患患者の在宅酸素療法等で使用されている酸素濃縮装置に内蔵された酸素センサや,その酸素濃縮装置の酸素濃度検出精度・利便性の向上を図った酸素センサを用いた酸素濃度検出方法,酸素センサの異常判定方法,酸素濃縮装置の異常判定方法および酸素濃縮装置に関する。」(段落【0001】) (ウ)「〔実施の形態1〕 図1(a),(b)は,実施の形態1の酸素濃縮装置の外観図を示す。図示の如く,酸素濃縮装置100は,取り外し可能な前部パネル101と,取り外し可能な後部パネル102と,後述する装置各部を載置した本体底部ボックス103から成るボックス型の筐体で構成されている。 前部パネル101には,酸素濃縮装置100で生成した酸素濃縮空気を取り出すためのアウトレット104を有する窪み部105が設けられており,必要に応じてこの窪み部105に湿潤器(図示せず)を配置可能な構成である。また,106は酸素濃縮空気の流量調整および各種警告を表示するための操作パネルを示し,後述する本体底部ボックス103に固定された遮蔽隔壁110(図2参照)に取り付けられている。 また,後部パネル102には,装置内部に空気を取り入れるための空気取入口107が設けられている。この空気取入口107には,空気中の汚れを除去するための防塵フィルター(図示せず)が配設されている。 図2(a),(b)は,酸素濃縮装置100の内部構造を示し,本体底部ボックス103上には,空気取入口107を介して室内から装置内部に取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を送出するコンプレッサー108と,コンプレッサー108で圧縮した圧縮空気を冷却する圧縮空気冷却器としての熱交換器(図示せず)と,熱交換器で冷却した圧縮空気を取り込み,該圧縮空気から窒素を選択的に吸着する吸着器109と,空気取入口107および吸着器109を配置した領域とコンプレッサー108を配置した領域とを隔てる遮蔽隔壁110と,遮蔽隔壁110によって隔てられた空気取入口107および吸着器109を配置した領域からコンプレッサー108を配置した領域へ空気を送るための空気通路111と,空気通路111を介してコンプレッサー108側へ効率的に空気を取り入れるためのシロッコファン112と,コンプレッサー108を収納したコンプレッサーボックス108aと,吸着器109を支持固定するために吸着器109の下部に配置された支持固定台113と,から構成される。」(段落【0027】?【0030】) (エ)「正常(酸素濃度)ランプLEDbは,グリーンのLEDからなり,後述する制御回路207からの正常・異常判定信号にしたがって,点灯・消灯する。この正常(酸素濃度)ランプLEDbが点灯中は,酸素濃度および圧力が正常であり,装置が正常動作していることを示している。 また,異常(酸素濃度)ランプLEDcは,レッドのLEDからなり,後述する制御回路207からの正常・異常判定信号にしたがって,点灯・消灯する。この異常(酸素濃度)ランプLEDcが点灯中は,圧力が異常であり,装置が異常動作しているので,直ぐにサービスマン等を呼んで,装置の修理を行う必要があることを示している。 また,O_(2)センサランプLEDdは,イエローのLEDからなり,後述する制御回路207からの酸素センサ警報信号にしたがって,点灯・消灯する。このO_(2)センサランプLEDdが点灯中は,圧力は正常であるが,酸素センサが異常であることを示している。ただし,一般的には,圧力が正常である場合には,酸素濃縮装置の構造上,酸素濃度は正常(一定濃度以上,通常は85%以上)に出力されていることが多く,経験的に継続して使用可能であることが判っているので,出来るだけ早くサービスマン等を呼んで,装置の点検を行うように警告するものである。」(段落【0033】?【0035】) 以上の記載事項からみて、引用刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。 「圧縮空気から窒素を選択的に吸着して酸素濃縮空気を送出する吸着器と、装置内部に取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を送出するコンプレッサーと、酸素濃縮装置で生成した酸素濃縮空気を取り出すためのアウトレットから構成される在宅酸素療法等で使用されている酸素濃縮装置において、前記コンプレッサーで圧縮した圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと、前記吸着器から送出される酸素濃縮空気の酸素濃度に対応した電圧を出力する電池式の酸素センサと、前記酸素センサからの出力電圧を入力して酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、前記圧力センサで検出した圧力および前記酸素濃度検出手段で検出した酸素濃度に基づいて、装置本体の動作の異常判定および前記酸素センサの異常判定を行う判定手段と、を備え、前記判定手段が、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以上の場合に、正常動作であると判定し、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以下の場合に、異常動作であると判定し、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以下の場合に、前記酸素センサに起因する異常であると判定し、操作パネルが、前記判定手段の判定結果に基づいて、正常動作の表示、異常動作でかつ前記酸素センサが正常の表示、異常動作でかつ前記酸素センサが異常の表示の3種類の表示をランプの点灯により行う酸素濃縮装置。」 4.対比・判断 (a)本願発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると、その構造又は機能からみて、引用刊行物記載の発明の「酸素濃縮空気」は、本願発明の「酸素濃縮気体」に相当し、以下同様に、「在宅酸素療法等で使用されている酸素濃縮装置」は「在宅酸素療法のための医療用酸素濃縮装置」に、「酸素濃縮装置」は「医療用酸素濃縮装置」に相当する。 (b)引用刊行物記載の発明の「圧縮空気から窒素を選択的に吸着して酸素濃縮空気を送出する吸着器」は、その機能からみて、本願発明の「空気から酸素を選択的に分離する分離手段」に相当する。 (c)引用刊行物記載の発明の「コンプレッサー」は、「圧縮空気を送出する」ものであり、上記「3.(ア)」の記載から「圧縮空気」が当該「コンプレッサー」の下流にある本願発明の「分離手段」に相当する「吸着器」へ供給されていることから、本願発明の「分離手段へ圧縮空気を供給するためのコンプレッサー手段」に相当する。 (d)引用刊行物記載の発明は、「酸素濃縮装置で生成した酸素濃縮空気を取り出すためのアウトレット」を備えていることから、本願発明の「分離手段」に相当する「吸着器」から酸素濃縮気体を使用に供するための供給手段を備えているといえ、上記において引用刊行物記載の発明と本願発明は共通する。 (e)引用刊行物記載の発明の「前記コンプレッサーで圧縮した圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと、前記吸着器から送出される酸素濃縮空気の酸素濃度に対応した電圧を出力する電池式の酸素センサと、前記酸素センサからの出力電圧を入力して酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、前記圧力センサで検出した圧力および前記酸素濃度検出手段で検出した酸素濃度に基づいて、装置本体の動作の異常判定および前記酸素センサの異常判定を行う判定手段と、を備え、前記判定手段が、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以上の場合に、正常動作であると判定し、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以下の場合に、異常動作であると判定し、前記圧力センサで検出した圧力が所定の圧力以上かつ前記酸素センサで検出した酸素濃度が所定の濃度以下の場合に、前記酸素センサに起因する異常であると判定し、操作パネルが、前記判定手段の判定結果に基づいて、正常動作の表示、異常動作でかつ前記酸素センサが正常の表示、異常動作でかつ前記酸素センサが異常の表示の3種類の表示をランプの点灯により行う」という記載からみて、上記「圧力センサ」及び「酸素センサ」は、本願発明の「装置の異常状態を監視するためのセンサー」に相当し、引用刊行物記載の発明は、これらのセンサーにより検出した異常状態を区別して、異常発生部分を表示手段により表示するといえ、上記において引用刊行物記載の発明と本願発明は共通する。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、本願発明と引用刊行物記載の発明とは、 「空気から酸素を選択的に分離する分離手段と、該分離手段へ圧縮空気を供給するためのコンプレッサー手段と、分離手段から酸素濃縮気体を使用に供するための供給手段から少なくとも構成される在宅酸素療法のための医療用酸素濃縮装置において、装置の異常状態を監視するためのセンサーと、表示手段を設けるとともに、これらのセンサーにより検出した前記異常状態を区別して、異常発生部分を表示する医療用酸素濃縮装置。」という点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明は、表示手段として「音声表示手段」を設け、該表示手段とともに「警報灯もしくは警報ブザーを同時に作動させ」ているのに対して、引用刊行物記載の発明は、表示手段として「ランプ」のみを設けている点。 そこで上記相違点について検討する。 異常状態の表示手段として、音声表示手段又は警報灯を設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-299485号公報(【0025】)、当審において新たに示す実願昭61-105031号(実開昭63-12292号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲)に記載されているように、周知の技術であり、音声表示手段と、点灯又は点滅表示する手段、あるいは、警報灯を組み合わせて用いることも、例えば、上記特開平9-299485号公報(【0024】)、上記実願昭61-105031号(実開昭63-12292号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲)に記載されているように、周知の技術である。よって、引用刊行物に記載された発明において、表示手段として音声表示手段を設け、警報灯を同時に作動させることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明による効果も、引用刊行物記載の発明及び周知の技術から、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-17 |
結審通知日 | 2009-09-24 |
審決日 | 2009-10-07 |
出願番号 | 特願平11-129755 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 敏長 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
黒石 孝志 増沢 誠一 |
発明の名称 | 医療用酸素濃縮装置 |
代理人 | 中務 茂樹 |
代理人 | 森 廣三郎 |
代理人 | 森 寿夫 |
代理人 | 松浦 瑞枝 |