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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1207614
審判番号 不服2007-35372  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 特願2002-226335「ガス濃度検知器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 69376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月2日の出願であって、平成19年11月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成20年1月24日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含み、出願当初の特許請求の範囲の請求項1を、以下のとおり補正するものである。(下線部は補正箇所を示す。)
「【請求項1】 ガスを検出するガスセンサ、センサ駆動用電源、及び作動増幅回路を有してガスセンサによるガス検出信号を増幅して出力する出力回路を備えたセンサヘッド部と、該センサヘッド部の出力回路から出力されるガス検出信号を演算してガス濃度に換算する演算部、演算されたガス濃度を数値表示する表示部、それらの駆動用電源及び操作部を備えた検知器本体部とを、物理的に着脱可能で、かつ、電気的に接続分離可能に構成していることを特徴とするガス濃度検知器。」(以下、「本願補正発明」という。)

上記補正は、発明特定事項である出力回路について、「作動増幅回路を有してガスセンサによるガス検出信号を増幅して出力する」という限定を付加したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-124734号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
[1a]「【請求項1】 測定部と、センサ部とを有し、前記センサ部が着脱可能な酸素濃度計であって、
前記測定部と前記センサ部との接続部分は、前記測定部又は前記センサ部のいずれか一方に設けられたプリント基板より成る第1の端子と、他方に設けられたピン状の第2の端子とを有し、
前記センサ部を前記測定部に装着することにより、前記第1の端子が前記第2の端子の方向に撓み、前記第1の端子と前記第2の端子とが電気的に接続されることを特徴とする酸素濃度計。」
[1b]「【0015】図1に示すように、本実施形態による酸素濃度計10は、測定器本体12と、測定器本体12から着脱可能なセンサホルダ14とにより構成されている。」
[1c]「【0018】測定器本体12の上面には、ユーザが操作入力を行うための操作スイッチ16と、酸素濃度を表示するための表示器18とが設けられている。
【0019】一方、センサホルダ14は、図2(a)に示すように、上側部材14aと下側部材14bとにより構成されており、センサホルダ14の先端部内には、図2(b)に示すように、酸素濃度を測定するための小型酸素センサ22が設けられている。」
[1d]「【0025】ところで、上述した小型酸素センサ22は、寿命に伴って交換する必要がある消耗品である。交換の容易さを考慮すると、小型酸素センサ22をセンサホルダ14内から取り外して、新しい小型酸素センサ22をセンサホルダ14内に取り付けるよりも、センサホルダ14ごと測定器本体12から取り外して、新しいセンサホルダ14を測定器本体12に取り付ける方が容易である。そこで、本実施形態では、センサホルダ14ごと交換するような構成としている。」
[1e]「【0038】まず、酸素濃度の測定を開始する際には、測定器本体12の操作スイッチ16をオンにする。操作スイッチ16をオンにすると、測定器本体12から小型酸素センサ20に電源が供給され、これにより酸素濃度の測定が開始される。
【0039】なお、空中の酸素濃度を測定する場合には、空気中にセンサホルダ14の開口部20を露出し、水中の溶存酸素を測定する場合には、センサホルダ14の開口部20を水中に浸漬する。
【0040】小型酸素センサ20には、酸素濃度に応じて電流が流れる。測定器本体12は、小型酸素センサ20に流れる電流値を検出し、この電流値から酸素濃度を換算して、酸素濃度を表示器に表示する。」
[1f]「【0051】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、ケーブルを用いることなく測定器本体とセンサホルダとを接続することができるので、軽くて、取り扱いが容易な酸素濃度計を提供することができる。
【0052】また、本発明によれば、センサホルダのプラグを測定器本体のソケットに差し込むだけで、プラグ側のコンタクトとソケット側のコンタクトとを接続することができるので、容易にセンサホルダを交換することが可能となる。」
上記[1a]?[1c]、[1e]の記載によれば、引用例には、
「測定器本体と、測定器本体から着脱可能なセンサホルダとにより構成されており、測定器本体の上面には、ユーザが操作入力を行うための操作スイッチと、酸素濃度を表示するための表示器とが設けられ、センサホルダの先端部内には、酸素濃度を測定するための小型酸素センサが設けられ、前記センサホルダを前記測定器本体に装着することにより電気的に接続され、操作スイッチをオンにすると測定器本体から小型酸素センサに電源が供給されて酸素濃度の測定が開始され、測定器本体は小型酸素センサに流れる電流値から酸素濃度を換算して表示する酸素濃度計。」の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願補正発明と引用例発明とを対比する。
(ア)引用例発明の「小型酸素センサ」は、本願補正発明の「ガスを検出するガスセンサ」に相当する。また、引用例発明の「センサホルダ」は、測定器本体に小型酸素センサに流れる電流値を出力するものであるから、引用例発明の「センサホルダ」と本願補正発明の「ガスを検出するガスセンサ、センサ駆動用電源、及び作動増幅回路を有してガスセンサによるガス検出信号を増幅して出力する出力回路を備えたセンサヘッド部」とは、「ガスを検出するガスセンサ及びガスセンサによるガス検出信号を出力する出力回路を備えたセンサヘッド部」である点で共通する。
(イ)引用例発明の「酸素濃度を表示するための表示器」は本願補正発明の「演算されたガス濃度を数値表示する表示部」に、引用例発明の「ユーザが操作入力を行うための操作スイッチ」は本願補正発明の「操作部」に、それぞれ相当する。
また、引用例発明の「測定器本体」は、「小型酸素センサに流れる電流値から酸素濃度を換算」していることから、本願補正発明の「該センサヘッド部の出力回路から出力されるガス検出信号を演算してガス濃度に換算する演算部」を備えているといえる。さらに、引用例発明の「測定器本体」は、「操作スイッチをオンにすると測定器本体から小型酸素センサに電源が供給されて酸素濃度の測定が開始され」ることから、本願補正発明の「駆動用電源」を備えているといえる。
以上より、引用例発明の「測定器本体」は、本願補正発明の「該センサヘッド部の出力回路から出力されるガス検出信号を演算してガス濃度に換算する演算部、演算されたガス濃度を数値表示する表示部、それらの駆動用電源及び操作部を備えた検知器本体部」に相当するといえる。
(ウ)引用例発明の「センサホルダ」は、「測定器本体から着脱可能」であり、「前記センサホルダを前記測定器本体に装着することにより電気的に接続され」ることから、引用例発明の「測定器本体」および「センサホルダ」は、本願補正発明の「センサヘッド部」および「検知器本体部」と同様に「物理的に着脱可能で、かつ、電気的に接続分離可能に構成」されているといえる。
したがって、両者は、
「ガスを検出するガスセンサ及びガスセンサによるガス検出信号を出力する出力回路を備えたセンサヘッド部と、該センサヘッド部の出力回路から出力されるガス検出信号を演算してガス濃度に換算する演算部、演算されたガス濃度を数値表示する表示部、それらの駆動用電源及び操作部を備えた検知器本体部とを、物理的に着脱可能で、かつ、電気的に接続分離可能に構成しているガス濃度検知器。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]センサヘッド部が、本願補正発明ではセンサ駆動用電源を備えるのに対し、引用例発明ではセンサ駆動用電源を備えていない点。
[相違点2]センサヘッド部が、本願補正発明では作動増幅回路を有してガス検出信号を増幅して出力する出力回路を備えるのに対し、引用例発明では出力回路が作動増幅回路を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
センサを駆動するための電源をどのように配置するかは当業者が適宜設計しうることであり、センサの近傍に配置することも様々なセンサにおいて周知である。例えば、特開平11-142397号公報には、従来溶存酸素などの測定が行われていた水質測定装置(段落【0001】、【0002】)において、ディスプレイ10の他に各種のキー11?17を備えたディスプレイ装置9とは別体として設けられたセンサ本体1に、電源2を内蔵すること(段落【0014】?【0021】)が記載されている。また、特開2000-97930号公報の段落【0010】?【0014】には、水質測定装置1において、データ処理が行われる計器本体11とは別体として設けられたセンサ部2に電源を内蔵することが記載されている。さらに、特開平8-145929号公報にも、半導体ガスセンサのセンサ回路に直流可変電源を備えることが記載されている(【請求項1】)。
したがって、引用例発明において、測定器本体に配置された電源のうち、小型酸素センサを駆動するために用いられる電源をセンサホルダに配置することは、当業者が適宜なし得ることである。

[相違点2]について
出力回路に信号を増幅して出力する作動増幅回路を設けることも周知である。例えば、特開平6-201649号公報の段落【0007】には、潤滑油劣化検出措置1に作動増幅回路を設けることが記載されている。また、特開2001-50932号公報の段落【0022】?【0023】には、電極において測定された電位が作動増幅器に入力され、作動増幅器から出力された電位差が演算処理部に出力されることが記載されている。
したがって、引用例発明において、出力回路に作動増幅回路を設け、信号を増幅してから出力するように構成することは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、引用例の[1d]および[1f]に記載されているように、引用例発明は寿命に伴って交換する必要がある消耗品である小型酸素センサを容易に交換するために、容易にセンサホルダを交換できるようにしたものであるから、本願補正発明の効果は、引用例に記載された発明および上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものであるとはいえない。
なお、請求人は、審判請求書の請求の理由において、引用例が寿命に達した酸素センサをセンサホルダ毎使い捨てにしようとするものを開示しているに過ぎず、寿命に達した酸素センサをセンサホルダから取り外して交換したり再調整したりするものを開示も示唆もしないと主張している。しかしながら、本願補正発明はセンサヘッド部と検知器本体部とを、物理的に着脱可能で、かつ、電気的に接続分離可能に構成していることを規定するのみであり、さらに、ガスセンサをセンサヘッド部から取り外して交換したり再調整することを限定したものではないため、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。

以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明
1.本願発明の認定
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?4に係る発明は、本願出願時の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】 ガスを検出するガスセンサ、センサ駆動用電源及びガスセンサによるガス検出信号の出力回路を備えたセンサヘッド部と、該センサヘッド部の出力回路から出力されるガス検出信号を演算してガス濃度に換算する演算部、演算されたガス濃度を数値表示する表示部、それらの駆動用電源及び操作部を備えた検知器本体部とを、物理的に着脱可能で、かつ、電気的に接続分離可能に構成していることを特徴とするガス濃度検知器。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「第2 2.引用刊行物記載の発明」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明における限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4.判断」に記載したとおり、引用例に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-14 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-13 
出願番号 特願2002-226335(P2002-226335)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄柏木 一浩  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 宮澤 浩
秋月 美紀子
発明の名称 ガス濃度検知器  
代理人 鈴江 正二  

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