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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1207746
審判番号 不服2008-22979  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-08 
確定日 2009-11-25 
事件の表示 特願2003- 28130「電子写真用トナー、トナー評価方法及び現像方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月26日出願公開、特開2004-240100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年2月5日の出願であって、平成19年10月31日付けで通知された拒絶理由に対して、平成20年1月7日付けで手続補正書が提出されたが、同年8月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月8日付けで審判請求がなされたもので、その特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】トナー収納容器内のトナーを、直径3?15mmの管状体内を通して現像部に搬送させる方式の電子写真画像形成装置に用いられ、少なくとも樹脂と顔料からなる粉体の表面に添加剤を付着または固着させてなる電子写真用トナーであって、この粉体を予め圧密状態にして粉体層中の空間率を0.5?0.6にした後、頂角50°で、かつ表面に断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝を設けた、黄銅の円錐ロータを2rpmで回転させながら侵入速度5mm/minで20mm粉体層中を侵入させたときに発生するトルクの値が1.43?1.7mNmになるような流動性を有し、かつ円錐ロータ20mm侵入時の空間率-トルク特性の傾きが-30?-17.5mN/ε(ε:空間率)になるようにしたことを特徴とする電子写真用トナー。」


2.明細書の記載に関する原審の判断
〔1〕拒絶理由通知における審査官の指摘
原審における平成19年10月31日付け拒絶理由通知では、(理由2)で「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」として、次のとおり説示している。なお、下線は当審で付した。

「a)本願の請求項1に係る発明は、特定の条件で粉体層中に回転する特定の形状を有する円錐ロータを進入させたときに発生するトルク又は荷重の値でトナーを限定しようとするものである。
しかしながら、下記の点で、同じトナーを測定しても、本願発明の測定方法によるトルク又は荷重は一定の値に定まらないから、本願発明の構成は明確でない。
(1)本願の明細書の記載を参照するに、本願発明の評価方法において、トルクの値はトナー粉体層の空間率によって異なるところ、請求項1にはトナー粉体層の空間率については0.6以下と記載され、一定の値に定められていない。よって、トルク又は荷重は一定の値に定まらない。
(2)本願明細書の【0015】には、トルク又は荷重の値は円錐ロータの回転数によって異なり、【0021】には決められた回転数で評価するべき旨記載されているところ、請求項1には円錐ロータの回転数が記載されていない。よって、トルク又は荷重は一定の値に定まらない。
(3)本願明細書の【0013】には、円錐ロータ表面に溝を形成することができることが記載されているのに対し、請求項1には、円錐ロータの表面形状について、断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝とのみ記載され、その本数、深さ等については全く記載がない。
しかしながら、例えば、特開平8-271400号公報には、同様の粉体の流動性評価方法が記載されており、その【0014】には、溝数によってトルクが変わることが記載されている。してみれば、トルク又は荷重は一定の値に定まらない。
なお、出願人は、平成18年9月8日付け意見書において、溝にはトナー粉体が入り込み、円錐状のトナー粉体とその周辺トナー粉体の接触となるため、溝の数、大きさ、深さには影響を受けない旨主張しているが、円錐ロータのトナー粒子からうけるトルクは、結局は溝に入り込んだ部分のトナー粉体による反力を主とするから、その溝の数やトナー粉体との接触面積がトルクに影響するものと考えられる。
この点、反論のある場合は、意見書にて具体的な数値を示して説明されたい。
(4)請求項1には、円錐ロータの表面形状について、断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝とのみ記載され、その材質については記載がない。
出願人が平成18年9月8日付け意見書において主張するように、溝にトナー粉体が入り込むとしても、全く溝の中で動かないままでいるとは考えられず、ロータの回転により溝内あるいは溝外への移動画商ずることが十分に予測できる。
その際、円錐ロータとトナーとのあいだに摩擦画商ずるものと考えられる。そして、通常、摩擦係数は材質によって異なるものであるから、発生するトルクや荷重の値もまた、円錐ロータの材質によって異なることが予測できる。
この点、反論のある場合は、意見書にて具体的な数値を示して説明されたい。
よって、請求項1?18に係る発明は明確でない。」

〔2〕拒絶査定における審査官の指摘
そして、拒絶査定では、上記〔1〕の「a)(3)」について、次のとおり説示している。

「備考
<理由2について>
出願人は、意見書において、以下のように主張している。
本願発明の円錐ロータは断面3角形の凹凸からなりますので、円錐体側端部とその外周の粉体とは線接触となり、上記公報のように溝数の影響は極めて少なくなっており、また、評価対象となる流動性の良好なトナーにおけるトルク変動幅は、流動性の悪いトナーに比較して小さくなり、トルクの値が、溝の数、大きさ、深さに全く影響を受けないということはいえないが、少なくとも、ほとんど影響を受けないということができ、本願請求項1におけるように、円錐ロータの形状、侵入深さ、侵入速度、回転速度、材質、および測定対象の空間率を規定していれば、十分であり、トルクの測定値の変動幅は極めて少なく、一定の値に定まる。
以下、上記主張につき検討する。
出願人は、本願発明の円錐ロータは断面3角形の凹凸からなり、円錐体側端部とその外周の粉体とは線接触となるためトルクの値が溝数の影響は極めて少なくなる旨主張する。出願人の主張する線接触及び面接触の意味するところは定かでないが、例えば本願の図3(a)のロータのように溝の深さが浅く本数が少ない場合や逆に(b)のように深い場合と、本願の図2(a)のように溝の深さが浅く本数が多い場合とで、トナーとロータの溝との接触の仕方が同じになるものとは考えられない。
そして、請求項1には、円錐ロータの表面形状について、断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝とのみ記載され、その本数、深さ等については全く記載がないのであるから、本願発明の測定方法によってトナーのトルク又は荷重は一定の値に定まらず、モノであるトナーを特定することができない。
加えて、出願人は、流動性の良好なトナーを測定するため、溝の数、大きさ、深さによるトルクの測定値の変動幅は極めて少ない旨の主張もするが、その変動幅がどの程度かについて意見書には具体的に示されておらず根拠が不明であるから、その主張を採用することができない。」


3.請求人の主張
請求人は、請求の理由において、審査官の上記指摘に対して、本願の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たす理由として、以下のとおり反論する。なお、下線は当審で付した。

「理由2について
(1)本出願人は、この理由に関し、以下の実験結果を示します(図1)。
この実験は円錐ロータの溝有り無しの場合におけるロータ侵入距離とトルク特性を測定したもので、この実験に使用した円錐ロータは黄銅材質で、溝有の円錐ロータの溝本数は48本で、頂角はそれぞれ50°であります。円錐ロータの測定条件を以下に示されます。
・円錐ロータの頂角:50°
・円錐ロータの回転数:2rpm
・円錐ロータの侵入速度:5mm/min
グラフの縦軸表示は指数表示で1.8×E-03Nmは1.8mNmを意味します。図1のトナーは実施例と異なり、添加剤にシリカ微粉末(約20nm径)の他に大粒径シリカ(約150nm径)が入っています。

図1中、(a)と(b)は、空間率ε0.53付近においてロータの溝がある場合とない場合を示し、(c)と(d)空間率ε0.55付近においてロータの溝がある場合とない場合をそれぞれ示すものです。

これによれば、トルクの値は、空間率が同1条件下では、溝の数、形状、深さ等にほとんど影響しないことがご理解頂けると思います。
本願請求項1で規定される発明(以下、本願発明という。)の円錐ロータは明細書〔0013〕?〔0015〕に記載しているように、円錐の頂点からまっすぐ底辺方向に溝を切ったもので、その溝の断面が三角形の凹凸からなるのこぎり歯形状をしております。この場合、円錐ロータ材質面とトナー粒子との接触は、三角溝の山の先端部分のみとなり、ほとんどが溝に入り込んだトナー粒子とその周辺のトナー粒子との接触となります。つまり、トナー粒子同士の内部摩擦成分を測定することになるわけであります。図1の結果は、本願発明で用いた黄銅などの帯電性を帯びない材質でできた円錐ロータの場合、トナー粒子と円錐ロータの表面との外部摩擦成分の測定においては溝無し円錐ロータと溝有り円錐ロータのトルク特性はほぼ同一となることを示します
これは、ロータ最表面(最近傍)のトナーがロータと連れ回り現象を生じて、それらのトナーとその周辺のトナーとの摩擦力を測っているので、同じトルク特性が生じたのです。連れ回り現象が生じる原因として、トナーの付着性やロータの細かい表面粗さなどが考えられます。
なお、請求項1でロータに溝を設けることを規定したのは、トナー同士の内部摩擦をより正確に測定することができるためであり、クレームを明確にするためでもありますが、本来は溝無しでも同様に測定できます(本願[0013]には「溝が切ってある方がよい」と記載されております)。
すなわち円錐ロータの頂角を規定しておけば、本願発明で規定する測定条件においては円錐ロータの溝本数などの影響は小さくなることが実験的に確認されております。

(2)一方、下記図2(粒径8μmのアルミナ粉体のトルク特性、粉体工学会誌 Vol.31 No.11 p.783,Fig.3)によると、侵入深さ20mmで溝本数が17本以上であるとトルク特性に影響がないことが分かり、それより少なくなると影響が出てくることが分かります。

しかし、上記のグラフは、ローター回転速度が0.1rps(6rpm)で、本願規定値(2rpm)の3倍速いため、溝本数が少ない場合の影響が大きく出ていると考えられます。本願発明のトナーのような極めて流動性の高い粉体の場合、液体を攪拌するイメージであり、ゆっくり攪拌する方が、液体の抵抗が小さく、溝の本数の影響が極めて小さくなります。
ここで、トルク特性に与える影響の大きいローター側の要因は、(1)形状(円錐体)、(2)円錐形の頂角(50°)、(3)回転速度(2rpm)、(4)侵入速度(5mm/min)、(5)表面形状(のこぎり歯状の溝)、(6)溝本数、(7)ロータ材質、・・・の順となることが分かっています(本願クレームでは影響の大きい(1)?(5)を規定)。つまり、トルク特性に与える影響が「(6)溝本数」よりも大きい「(3)ローター回転速度」を小さくすると、溝本数による影響は無視できるほど小さくなります。それゆえ、本願において特に、本願発明のような非常にゆっくりとした回転速度で測定する場合には、図3(a)や(b)のようなローターを用いてもトルク特性にさほど大きな影響はない、ということがいえます。
測定データの解析を行なう際には、トナーとの接触面を円錐体として解析を行なうため、上記(1)を保障しつつ表面に溝を設ける場合、(6)は当然細かい溝を設けて円錐形からの歪みを小さくするようにすることが望まれます。つまり、(1)を規定することにより、(4)の溝本数は20本以上の本数にすることが必要となり、(1)の規定で溝本数もおおよそ規定されることになります。
一方、本願発明においては円錐ロータと規定しているように、その形状は頂角50°の円錐として把握できるものでなければなりません。これに対して、原査定で指摘する図3(b)のような形状は、円錐と呼ぶにはかけ離れたものであります。すなわち、本願発明のロータの形状は頂角50°の円錐として把握できるものであり、その表面に断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝を設けたものであることからいえば、その溝は細かくなくてはならず、溝の本数は少なくとも20本を超えるものと解するのが普通で有ります。そうであれば、本願発明の測定方法によってトナーのトルク又は荷重は、少しは増減しますが、一定の範囲内におさまるものであることは明らかであり、この一定の範囲内にあるトナーは、いずれも流動性に優れ、管状体内の移送に適したものであります。
したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たしているものと思料いたします。」


4.当審の判断
(1)まず、請求書で示す実験結果である図1をみると、次の4つの曲線(a)?(d)が記載されている。
(a)溝有り(48本)のロータ、空間率ε=0.535
(b)溝なしのロータ、空隙率ε=0.533
(c)溝有り(48本)のロータ、空間率ε=0.553
(d)溝なしのロータ、空間率ε=0.550
ここで、ロータの侵入距離が20mmにおける各曲線のトルク量をみると、いずれも、1.3mNm未満であり、本願の請求項1で規定する1.43?1.7mNmには該当しないものである。
図1の実験で、請求人が、あえて請求項1で規定するトナーよりも、トルクが小さくて流動性が高いトナー(いわば比較例に相当する)を使用した理由は、請求書では説明されておらず、不明である。
したがって、図1の実験結果からは、請求項1で規定する程度の流動性を有するトナーの場合に、「溝有り(48本)のロータ」と「溝なしのロータ」とでは、流動性の測定値(トルク)にほとんど差がないことになるかどうかは、立証されていない。
つまり、本願発明の範囲外のトナーを用いて測定した結果を示しても、本願発明の限定範囲内のトナーに関して同様の成果が得られるかどうかは明らかではない。

(2)しかも、図1の記載自体が、不鮮明であり(例えば(a)を構成する点と(b)を構成する点が混在してよくみえない)、「溝有り(48本)のロータ」と「溝なしのロータ」との間に有意な差があるのかないのかよくわからない。

(3)また、請求人は、上記のとおり、
「本願請求項1で規定される発明(以下、本願発明という。)の円錐ロータは明細書〔0013〕?〔0015〕に記載しているように、円錐の頂点からまっすぐ底辺方向に溝を切ったもので、その溝の断面が三角形の凹凸からなるのこぎり歯形状をしております。この場合、円錐ロータ材質面とトナー粒子との接触は、三角溝の山の先端部分のみとなり、ほとんどが溝に入り込んだトナー粒子とその周辺のトナー粒子との接触となります。つまり、トナー粒子同士の内部摩擦成分を測定することになるわけであります。図1の結果は、本願発明で用いた黄銅などの帯電性を帯びない材質でできた円錐ロータの場合、トナー粒子と円錐ロータの表面との外部摩擦成分の測定においては溝無し円錐ロータと溝有り円錐ロータのトルク特性はほぼ同一となることを示します。これは、ロータ最表面(最近傍)のトナーがロータと連れ回り現象を生じて、それらのトナーとその周辺のトナーとの摩擦力を測っているので、同じトルク特性が生じたのです。連れ回り現象が生じる原因として、トナーの付着性やロータの細かい表面粗さなどが考えられます。」と説明する一方で、
「本願発明のトナーのような極めて流動性の高い粉体の場合、液体を攪拌するイメージであり、ゆっくり攪拌する方が、液体の抵抗が小さく、溝の本数の影響が極めて小さくなります。」とも主張する。

しかし、極めて流動性が高いトナーであり、流体を攪拌するイメージであるあるのならば、円錐ロータに設けた溝が、下図(A)や本願の図3(a)のように、溝の開き角度が大きいものにおいて、溝内に存在するトナー粒子がすべて「連れ回り」されるとは限らない。
たしかに、溝数が多くて狭角な溝(下図(B)参照)であれば、ほぼ溝全体をトナーが埋めて、それらトナーがロータと連れ回りすることとなり、各溝の山の先端を結ぶ面までトナーで覆われて、各溝の山の先端を除けば、まるでロータ表面をトナーが覆うようなものになり、トナーが付着したロータは、「溝なしロータ」(下図(C)参照)と、全体形状としてみれば、ほとんど変わらないかもしれない。
しかし、溝数が少なくて広角な溝を持つロータ(例えば、下図(A)や本願の図3(a)参照)であれば、溝全体を埋めることなく、溝表面に薄くトナーが付着する程度のものとなる蓋然性が高く、トナーが付着したロータは、溝の形状を反映した凹凸が表れたものとなることが予想される。そのような凹凸の存在の下で、測定されたトルクは、凹凸による抵抗の影響を当然に受けるから、単にトナー粒子間の付着力(粒子同士の内部摩擦)だけを反映するものではないと考えられる。しかし、請求書の図1では、溝数が少なく広角な溝については、実験していない。

(A) (B) (C)

なお、上図のうち、下側は、それぞれ図(A)(B)(C)のロータの形状(局部)と、それへのトナーの付着状態の模式図である。

(4)また、請求書の図1の「溝なしのロータ」(上図(C))でも、ロータ表面にトナーが付着する(下図(C)の下側を参照)等して、「ロータ表面付近のトナー」がロータと連れ回りするかどうかは、そもそも不明である。
すなわち、管状体(管状体内をトナーは現像部に搬送される)への付着力が小さいトナーであれば、「溝なしのロータ」においても、ロータ表面に付着するトナー粒子は少ないものと考えられるから、トナー粒子間の摩擦力が測定されるのではなく、ロータ表面の材質である黄銅面とトナー粒子の摩擦力が測定される可能性がある。
そのため、「溝なしのロータ」と「溝有り(48本)のロータ」との測定結果に有意な差が出ないとする主張に疑問がある。

(5)なお、請求人は、「測定データの解析を行なう際には、トナーとの接触面を円錐体として解析を行なうため、上記(1)を保障しつつ表面に溝を設ける場合、(6)は当然細かい溝を設けて円錐形からの歪みを小さくするようにすることが望まれます。つまり、(1)を規定することにより、(4)の溝本数は20本以上の本数にすることが必要となり、(1)の規定で溝本数もおおよそ規定されることになります。一方、本願発明においては円錐ロータと規定しているように、その形状は頂角50°の円錐として把握できるものでなければなりません。これに対して、原査定で指摘する図3(b)のような形状は、円錐と呼ぶにはかけ離れたものであります。すなわち、本願発明のロータの形状は頂角50°の円錐として把握できるものであり、その表面に断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝を設けたものであることからいえば、その溝は細かくなくてはならず、溝の本数は少なくとも20本を超えるものと解するのが普通で有ります。」とも主張する。
しかし、請求人が説明するように「測定データの解析を行なう際には、トナーとの接触面を円錐体として解析を行なう」としても、「頂角50°で、かつ表面に断面3角形の凹凸からなるのこぎり歯状の溝を設けた、黄銅の円錐ロータ」(請求項1)ということから、「溝の本数は少なくとも20本を超えるもの」とされるという請求人の理屈は、溝数が8本や10本でも全体形状は円錐状といえるのであるから、理解されるものではない。
実際、本願の明細書には、「【0018】円錐ロータ(1)の形は、前述したように頂角が20?150°のものが好ましい(図2参照。)。円錐ロータ(1)の長さは、円錐ロータ部分が充分トナー層の内部まで入るように長くする必要がある。溝の形状は、どのような形状でも良いが、円錐ロータを交換したためにトルクや荷重の値が再現しなくなるということがないように注意する必要があり、そのために、円錐ロータの溝形状は単純で、同じ形状のロータが何度でも造れる形の方が良い(図3参照。)。」「【図面の簡単な説明】・・・【図3】本発明の流動性評価装置に設ける他の円錐ロータ例の側面図と断面図である。」との記載があり、また、図3の(a)(b)ともに、図面上に「円錐ロータ」との記載が認められ、しかも、図3の円錐ロータ(a)(b)における溝の本数は、明らかに20本を超えるものではなく、溝が20本未満の円錐ロータもあり得るものであり、請求人の主張は、明細書の記載内容に一致しないのである。

(6)以上のことから、ロータの溝の本数、寸法を含めた形状の特定がない測定法を規定する、本願の請求項1に係る発明は、依然として、測定の結果が一義的に定まらず、「電子写真用トナー」が特定されないのである。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たしておらず、上記2.の原審の判断に誤りはない。


5.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-18 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-14 
出願番号 特願2003-28130(P2003-28130)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伊藤 裕美
中田 とし子
発明の名称 電子写真用トナー、トナー評価方法及び現像方法  
代理人 武井 秀彦  

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