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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D |
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管理番号 | 1207943 |
審判番号 | 不服2008-1772 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-23 |
確定日 | 2009-12-07 |
事件の表示 | 特願2003-295899「コイン払出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 63348〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年8月20日の出願であって、平成19年7月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月11日に手続補正がなされ、同年12月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成20年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年2月13日に明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成21年4月30日に審尋がなされ、指定期間内に応答がなかったものである。 第2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。 (1)補正前 「円周上に複数のコイン用の開口が形成されたコインディスクと、前記コインディスクを駆動する駆動モータとを備えたコインを1枚づつ払出す払出ユニットと、 前記払出ユニット上で着脱可能なバケットと、 前記バケットに着脱可能に取着され、前記バケットが前記払出ユニットに対して装着された際、前記コインディスクの円周縁に対向してコインディスクの浮き上がりを防止するディスク押さえと、 を有することを特徴とするコイン払出装置。」 (2)補正後 「円周上に複数のコイン用の開口が形成されたコインディスクと、前記コインディスクを駆動する駆動モータと、コインを1枚づつ押出す押出し機構と、前記押出し機構から押出されたコインが通過し、装置外に向けて形成される払出経路と、使用されるコインの大きさに応じて前記払出経路の幅を変更する着脱可能なガイド部材と、を備えたコインを1枚づつ払出す払出ユニットと、 前記払出ユニット上で着脱可能なバケットと、 前記バケットに着脱可能に取着され、前記バケットが前記払出ユニットに対して装着された際、前記コインディスクの円周縁に対向してコインディスクの浮き上がりを防止するディスク押さえと、 を有することを特徴とするコイン払出装置。」 2.補正の適否 本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、払出ユニットについて、「コインを1枚づつ押出す押出し機構と、前記押出し機構から押出されたコインが通過し、装置外に向けて形成される払出経路と、使用されるコインの大きさに応じて前記払出経路の幅を変更する着脱可能なガイド部材と」を有することを限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。 (2)刊行物に記載された発明 これに対し、原査定で引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-208099号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア.段落0001 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、投入されたバラ積み状態の円板体を、外部に一個ずつ送り出すための、円板体の払い出し装置に関する。具体的には、本発明は、貨幣である円板形のコイン、あるいは、ゲーム等に使用される円板形のメタルなど、バラ積みに投入された円板体を、強制的に一個づつ送り出すための、円板体の払い出し装置に関する。 ・・・。」 イ.段落0006?0007 「【0006】本実施例は、複数個の円板体をバラ積み状態で収容するための、ほぼ筒形のホッパーヘッド11を特徴としている。このホッパーヘッド11は樹脂成形品からなり、上方の開口部12は大きな角リング形であり、下方の開口部13はやや小さな円リング形であって、これらの間には、テーパ形状のスロープ部14が連成されている。下方開口部13の下縁内には、円周に沿って溝15が形成され、この溝15内には、図2に示されるように、円板体である硬貨Mを一個ずつ押し出すための、円形のディスク21が、回転自在に収納される。なお、溝15の一部には、硬貨Mの出口16が連通されている。言い換えると、溝15を形成する開口部13の一部が開口されて、硬貨Mの出口16が形成されている。円形のディスク21は、図2に示されるように、中央に回転軸22が貫通されて、この回転軸22により回転される。 【0007】ディスク21のほぼ全体には、円周方向に等間隔に形成された、硬貨Mの貫通孔23(図2を参照)が複数個設けられていると共に、ディスク21の下面には、硬貨Mを出口16に送り出すための、突起アーム24(図2を参照)が形成されている。図2の下方に示される箱形のものは、台装置25で、回転軸22を駆動するための、ギア列ならびに電気モータなど(図示を省略)が収納されている。なお、ホッパーヘッド11には、図1に示されるように、下方の開口部13の下縁には、外向きに三角形状のフランジ17が形成されており、このフランジ17には、ダルマ孔18が開口されている。このダルマ孔18を介在して、ホッパーヘッド11は、台装置25に植設された頭付きシャフト(図示を省略)によって、台装置25に、ほとんどワンタッチで取り付けられる。」 ウ.図2 上記イ.を踏まえ、図2を参照すると、ホッパーヘッド11が台装置25に対して装着された際、ホッパーヘッド11の開口部13の内フランジ部が、ディスク21の円周縁に対向していることが看取できる。 これら事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理する。 刊行物1の「ディスク21」、「電気モータ」、「突起アーム24」、及び「出口16」は、その機能からみて、全体として「コインを1枚づつ払出す払出機構」ということができる。 よって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認める。 「円周上に複数のコイン用の貫通孔23が形成されたディスク21と、前記ディスク21を駆動する電気モータと、コインを1枚づつ押出す突起アーム24と、前記突起アーム24から押出されたコインが通過し、装置外に向けて形成される出口16と、を備えたコインを1枚づつ払出す払出機構と、 前記ディスク21が回転自在に取り付けられる台装置25上でワンタッチで取り付けられるホッパーヘッド11と、 前記ホッパーヘッド11に設けられ、前記ホッパーヘッド11が前記台装置25に対して装着された際、前記ディスク21の円周縁に対向する開口部13の内フランジ部と、 を有するコイン払出装置。」 (3)対比 補正発明と刊行物発明とを対比する。 刊行物発明の「貫通孔23」、「ディスク21」、「電気モータ」、「突起アーム24」、「出口16」、「ワンタッチで取り付けられる」、「ホッパーヘッド11」は、それぞれ補正発明の「開口」、「コインディスク」、「駆動モータ」、「押出し機構」、「払出経路」、「着脱可能な」、「バケット」に相当する。 刊行物発明の「払出機構」及び「台装置25」と、補正発明の「払出ユニット」とは、「ディスク保持部材」である限りにおいて一致する。 刊行物発明の「ホッパーヘッド11に設けられ」る「内フランジ部」と、補正発明の「バケットに着脱可能に取着され」る「コインディスクの浮き上がりを防止するディスク押さえ」とは、「バケットに設けられ」る「内フランジ部」である限りにおいて一致する。 したがって、補正発明と刊行物発明とは、次の点で一致している。 「円周上に複数のコイン用の開口が形成されたコインディスクと、前記コインディスクを駆動する駆動モータと、コインを1枚づつ押出す押出し機構と、前記押出し機構から押出されたコインが通過し、装置外に向けて形成される払出経路と、を備えたコインを1枚づつ払出すディスク保持部材と、 ディスク保持部材上で着脱可能なバケットと、 前記バケットに設けられ、前記バケットが前記ディスク保持部材に対して装着された際、前記コインディスクの円周縁に対向する内フランジ部と、 を有するコイン払出装置。」 そして、補正発明と刊行物発明とは、以下の点で相違している。 相違点1:補正発明は、「使用されるコインの大きさに応じて前記払出経路の幅を変更する着脱可能なガイド部材」を有するが、刊行物発明は、かかる部材を有さない点。 相違点2:「ディスク保持部材」について、刊行物発明は、「払出機構」及び「台装置25」からなり、「ホッパーヘッド11(バケット)」は「台装置25」に着脱可能であるが、補正発明は、「払出ユニット」であり、「バケット」は「払出ユニット」に着脱可能である点。 相違点3:「バケットに設けられ」る「コインディスクの円周縁に対向する内フランジ部」について、補正発明は、「バケットに着脱可能に取着され」る「コインディスクの浮き上がりを防止する」ものであるが、刊行物発明は、バケットに設けられるが「着脱可能」でなく、「コインディスクの浮き上がりを防止する」ものであるか明らかでない点。 (4)相違点の検討 相違点1について検討する。 コイン払出装置において、「使用されるコインの大きさに応じて払出経路の幅を変更する着脱可能なガイド部材」を有するものは、特開2002-208057号公報の段落0021、特開2003-132389号公報の要約、特開平6-180777号公報の段落0008にみられるごとく周知である。 よって、刊行物発明において、かかる周知技術を適用し、相違点1に係るものとすることに困難性は認められない。 請求人は、審判請求理由において、「公知文献(周知技術を開示した公知文献)には、払出経路の幅を変更するガイド部材を着脱可能にする、という構成が、開示、示唆されていない以上、たとえ当業者であっても、本願発明の構成は容易に想到できるものではない」と主張するが、上記のとおり、請求人の主張は採用できない。 相違点2について検討する。 刊行物発明の「払出機構」及び「台装置25」は、バケットを支え、回転駆動するコインディスクの固定側部材としての機能を有するものであるから、全体として、補正発明の「払出ユニット」に相当するものである。 部材を一体とするか別体とするかは、装置の製造、補修等の観点から、適宜考慮すべき設計的事項であるから、刊行物発明の「払出機構」及び「台装置25」を一体として「払出ユニット」とすることは、適宜なしうる設計的事項にすぎない。 そして、一体とすることにより、「バケット」は「払出ユニット」に着脱可能なものとなる。 よって、相違点2は、格別なものではない。 相違点3について検討する。 刊行物発明の「コインディスクの円周縁に対向する内フランジ部」は、図2を参照すると、その配置上、「コインディスクの浮き上がりを防止するディスク押さえ」としての機能を有することは明らかである。 ディスク押さえをバケットに「着脱可能」に取着する点は、原審の拒絶査定で示した特表平9-511349号公報に見られるように周知であり、この点については、請求人も審判請求理由で、「ディスク押さえをバケットに着脱可能に取着するという点は、例示された文献に見られるように周知技術であるとした認定、及び判断については、本審判において争うものではない」としている。 よって、相違点3は、格別なものではない。 また、これら相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。 以上から、補正発明は、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし2に係る発明は、平成19年9月11日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。 2.刊行物等 これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。 3.対比・検討 本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。 そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-06 |
結審通知日 | 2009-10-07 |
審決日 | 2009-10-23 |
出願番号 | 特願2003-295899(P2003-295899) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G07D)
P 1 8・ 575- Z (G07D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堅田 多恵子 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 今村 亘 |
発明の名称 | コイン払出装置 |
代理人 | 水野 浩司 |