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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N |
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管理番号 | 1207984 |
審判番号 | 不服2007-26835 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-01 |
確定日 | 2009-12-04 |
事件の表示 | 特願2002-72394「高分子固定化素子」拒絶査定不服審判事件〔平成15年9月25日出願公開、特開2003-270230〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年3月15日の出願であって、その請求項1ないし7に係る発明は、平成21年9月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「流動体がその内部を流れることの可能な内径100μm以下のキャピラリー内において、タンパク質、糖タンパク質、酵素、抗原、抗体、及び核酸からなる群より選ばれた機能性高分子を懸濁させた金属アルコキシド溶液をゲル化して得られる網目状構造を有するゲルマトリックスの網目構造内に、化学結合を介さずに該機能性高分子を包含固定化したゲル構造を有する機能性高分子固定化素子であって、該ゲル構造の成分組成が水が60から98%、該網目構造体が2から40%の範囲であることを特徴とする機能性高分子固定化素子。」(以下、「本願発明」という。) 2 引用刊行物の記載事項 当審における拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物1ないし刊行物6には以下の事項がそれぞれ記載されている。 (刊行物1:特開2001-178457号公報の記載事項) (1a)「【0003】又、例えばアクリルアミドやポリビニルアルコール、テトラメトキシシラン(TMOS)や有機基を有するシラン等のゾルないしはコロイド懸濁液を用い、そのゲル化反応を利用して酵素を固定化するゾルゲル法も、ある程度の酵素安定化効果は得られるが(川上ら J. Ferment. Bioeng., 84, 240-242, 1998)」 (1b)「【0024】〔ゲル化物質の網状構造〕構造ユニットに固定化された酵素を安定化させるゲル化物質の網状構造は、酵素の固定化後、ゾルゲル法により形成される。本発明において「ゾルゲル法」とは、高分子ゲル化物質を構成するべき低分子原料のゾルないしはコロイド懸濁液中に固定化酵素を共存させたもとで、前記低分子原料のゲル化を行う方法を言う。ゾルゲル法の実施により形成されたゲル化物質は、構造ユニットの開口部及び/又は内部空隙に、チャネルや隙間の多い網状構造体として形成される。 【0025】上記低分子原料の種類は限定されないが、例えば前記従来技術の項で記載したアクリルアミドやポリビニルアルコール、テトラメトキシシラン(TMOS)や有機基を有するシラン等を用いることができる。又、本発明に係る前記構造ユニットの構成原料、例えばケイ酸やアルミナ等の各種金属酸化物,ケイ酸と他種の金属との複合酸化物等,アルコキシシラン,シリカゲル,水ガラス,ケイ酸ソーダ等も、一般的に有効に利用することができる。 【0026】ゾルゲル法の実施条件、例えば緩衝溶液の使用,ゲル化すべきゾルないしはコロイド懸濁液中における低分子原料の濃度、pH調整,反応時の加熱もしくは冷却の要否等の点については、一律には限定されない。低分子原料としてアルコキシシランを用いる場合において、より好ましいゾルゲル法の実施条件として、ジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)を添加すること、DMDMOSとテトラメトキシシラン(TMOS)とを1:1?1:3の割合に添加すること、ゲル化の際のpHを5?8に上げること、等の点を挙げることができる。」 (1c)「【0036】〔実施例4:ゾルゲル法によるHRPの固定化〕テトラメトキシシラン(TMOS)0.6mL(8.16 m mol)とジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)0.187mL(2.72 m mol)とを、20mLのサンプル瓶中で4°Cで混合した。これを攪拌しながら、0.4mLの脱イオン水と40μMの塩酸水溶液10μLとを添加し、アルコキシドが完全に分解された後、pH7.5のリン酸緩衝溶液2mLを加えた。 【0037】続いて、別途準備した同上のリン酸緩衝溶液1mLに20mgのHRPを溶かした溶液を上記サンプル瓶に添加し1分間攪拌した後、このサンプル瓶を室温に戻して自然ゲル化させ、更に24時間エージングさせた後に室温で真空乾燥させ、0.76gの固体を得た。そしてこの固体に対して脱イオン水20mLを用いた洗浄を3回行った後、室温で真空乾燥させて0.54gのゾルゲル法による固定化酵素を得た。これをHRP/Gelと呼ぶ。」 (1d)「【0040】〔実施例6:各固定化酵素の耐熱安定性試験〕1.5mLのエッペンドルチューブに、実施例3?実施例5に係る各固定化酵素、具体的にはFSM70/HRP,HRP/Gel及びFSM70/HRP/Gelを、それぞれHRP換算で0.5mg相当分秤量して入れ、50mMのトリス-NaOAc緩衝溶液(pH4.0)を200μL加え、70°Cで1時間熱処理した後、10分間遠心分離した。得られた遠心分離の残渣を更に500μLの50mMトリス-HCl緩衝溶液(pH7.5)で2回洗浄し、遠心分離して上清を捨てた。 【0041】こうして得た遠心分離の残渣に、50mMトリス-HCl緩衝溶液(pH7.5)200μL、5000ppmのフェノール水溶液4μL、30%の過酸化水素水1μLをそれぞれ加え、37°Cで30分間反応させた後に10分間遠心分離した。次にその上清を50μL取り、50μLの1%フェリシアンカリウム/1Mグリシン液(pH9.6)と混ぜ、そして100μLの1%4-アミノアンチピリン/1Mグリシン液(pH9.6)を加え、490nmで吸光度を測定して、酵素活性を算出した。 【0042】各固定化酵素における酵素活性の算出は、上記70°Cでの1時間の熱処理を受けていない固定化酵素における上記同様の測定値に対する相対的な酵素活性低下率(%)で算出した。又、比較例として、固定化していないネイティブなHRPについても、同上の耐熱安定性試験における酵素活性低下率を算出した。 【0043】その結果、酵素活性低下率は、ネイティブなHRPが76.8%、HRP/Gelが30.7%、FSM70/HRPが16.2%、FSM70/HRP/Gelが1.8%であった。」 (刊行物2:特開平11-287791号公報の記載事項) (2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】内径1000μm以下の毛細管内に0.5?5μmサイズの細孔(スルーポア)と、2?50nmサイズの細孔(メソポア)を有するシリカ骨格が絡み合った構造を持つ2重細孔構造のシリカゲルを形成してなるキャピラリーカラム。」 (2b)「【0011】本発明のカラムは、反応溶液にあらかじめ熱分解する化合物を溶解させ、ゾル-ゲル法により、平均直径100ナノメートル以上の3次元網目状に連続した溶媒に富む溶媒リッチ相と無機物質に富み表面に細孔を有する骨格相とからなるゲルを、内径1ミリメートル以下の毛細管中において調製し、次いで湿潤状態のゲルを加熱することにより、ゲル調製時にあらかじめ溶解させておいた化合物を熱分解させ、ゲルを乾燥し、加熱して作製することができる。この手段において、望ましいのは、無機物質をシリカSiO_(2) とし、あらかじめ共存させる熱分解する化合物を熱分解によって液性を塩基性に変える尿素等のアミド系化合物とする場合である。 【0012】同じく上記カラムは、水溶性高分子、熱分解する化合物を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行い、内径1ミリメートル以下の毛細管中において生成物が固化した後、次いで湿潤状態のゲルを加熱することにより、ゲル調製時にあらかじめ溶解させておいた低分子化合物を熱分解させ、次いで乾燥し加熱することにより作製できる。」 (2c)「【0014】加水分解性の官能基を有する金属化合物としては、金属アルコキシド又はそのオリゴマーを用いることができ、これらのものは例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数の少ないものが好ましい。また、その金属としては、最終的に形成される酸化物の金属、例えばSi、Ti、Zr、Alが使用される。この金属としては1 種又は2 種以上であっても良い。一方オリゴマーとしてはアルコールに均一に溶解分散できるものであればよく、具体的には10量体程度まで使用できる。 【0015】また、酸性水溶液としては、通常塩酸、硝酸等の鉱酸0.001規定以上のものが好ましい。毛細管は、例えば、シリカガラスからなり、内径は1 000μm以下、好ましくは30?200μmである。 【0016】加水分解は、原料を混合し0?40℃で、5?60分間攪拌することにより行う。相分離、ゲル化にあたっては、毛細管中に溶液を室温40?80℃で0.5?5時間保存することにより達成できる。」 (刊行物3:特開平7-75576号公報の記載事項) (3a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】複数種のオリゴヌクレオチドが固定されたカラムを通過する時間の違いから複数種の核酸断片を分離,分取することを特徴とする核酸断片分取法。 【請求項2】請求項1において、前記オリゴヌクレオチドが前記カラム中に充填された微粒子に固定されている核酸断片分取法。 【請求項3】請求項1において、前記オリゴヌクレオチドが前記カラムの内壁表面に固定されている核酸断片分取法。」 (3b)「【0018】カラムへのオリゴヌクレチドの固定化法は、微粒子にオリゴヌクレオチドを固定して、これをカラムに充填してもよいし、また、カラムの内壁に直接オリゴヌクレオチドを固定化してもよい。前者の場合には、溶出液中の核酸試料断片と固定化されたオリゴヌクレオチドとの相互作用の機会を大きくできる。また、後者の場合は、特にカラムの内径が小さいときに、溶出液中の核酸試料断片と固定化されたオリゴヌクレオチドとの相互作用の機会を大きくでき有効である。」 (3c)「【0027】本発明の一実施例を図3により説明する。本実施例では、カラム16を内径100μm,外形350μmm,長さ1mの細管に、長さ8のランダムな配列を有する3000種類のオリゴヌクレオチドを合成し、これを第一の実施例と同様な手段で、表面処理をした石英製の細管の内面に固定した。」 (刊行物4:国際公開第01/73121号の記載事項) (4a)「請求の範囲 1.単一色素分子検出によって核酸の塩基配列を決定する方法であって、 (1)固体表面に核酸分子を固定するステップ、 (2)該核酸分子に、その配列の一部分と相補的な配列を有するプライマーをアニーリングさせるステップ、 (3)DNAポリメラーゼと1種類の色素標識dNTP(N=A,TもしくはU,GまたはC)、あるいはRNAポリメラーゼと1種類の色素標識NTP(N=A,U,GまたはC)、を含む液を該固定された核酸分子に提供して、該プライマーの3’末端にヌクレオチドを反応させ、このとき該ポリメラーゼは反応部位と向かい合う塩基と塩基対を組むヌクレオチドを取り込むステップ、 (4)結合した色素標識dNTPまたはNTPの存在を検出するステップ、 (5)該結合した色素標識dNTPまたはNTPの色素分子を破壊するステップ、 (6)色素標識dNTPまたはNTPの種類を順次変えて上記ステップ(3)から(5)を繰り返し、該核酸分子のヌクレオチドと塩基対を形成するdNTPまたはNTPを順次結合させるステップ、 (7)該結合されたdNTPまたはNTPの種類に基づいて該核酸分子の塩基配列を決定するステップ を含む、上記方法。 ・・・ 3.前記固体表面がキャピラリーの内壁である、請求項1または2に記載の方法。」(第12頁1行?第13頁8行) (4b)「 固体表面は核酸分子もしくはプライマーが固定されうるものであればいかなる材質のものでもよく、例えばそのような材質としてガラス、石英、樹脂等を挙げることができる。また固体表面の形状は平面、曲面等のいずれの形状でもよい。固体表面として、例えばキャピラリー(例えばガラス、石英、樹脂製)の内壁を使用することができる。キャピラリーは、キャピラリーの内部に核酸分子もしくはプライマーを固定したあと、その内部に色素標識dNTPまたはNTPとポリメラーゼ酵素を含む液を自動的に送り込むのに適している。キャピラリーの内径は例えば約100?約250μmであり、また長さは通常約10?約50mmで十分であるが、内径および長さはこれらに限定されないものとする。」(第4頁最終行?第5頁8行) (刊行物5:特開平10-33173号公報の記載事項) (5a)「【請求項17】DNA試料又はプライマーが内面に固定されたキャピラリーと、反応液を前記キャピラリーに供給する供給手段とを有し、前記キャピラリー内部でそれぞれ独立してDNAポリメラーゼ反応を行なうことを特徴とするDNA試料調整装置。」 (5b)「【0002】 【従来の技術】キャピラリーゲル電気泳動は高速・高感度な分析法として普及してきている。」 (5c)「【0028】(第3の実施例)第3の実施例はキャピラリー管を反応槽を用いる例である。図5は、キャピラリー管を反応槽に利用した第3の実施例を示す、(a)試料DNA注入を説明する図、(b)反応液の注入を説明する図、及び(c)分析用キャピラリーアレーへ試料を移動する操作を説明する図である。キャピラリー反応管18には市販の石英管を用いたが、プラスチック管等でも良い。反応表面積を大きくするためにここでは内径0.05mmの管を50mmの長さと長くして用い、キャピラリー内面にストレプトアビジンを固定化した。」 (刊行物6:特開昭61-161455号公報の記載事項) (6a)「本発明の反応容器は、両端に開口部を有し、これら開口部を結ぶ通路(反応路)・・・ 本発明において使用する反応容器は、反応路を有する。反応路には測定対象の抗原(抗体)と特異的に反応する抗体(抗原)が固定化されているか、測定対象物が吸着するような吸着剤が被覆化されているか、または吸着するような材質で構成されている。反応路を形成する材質は、抗体(抗原)が固定化可能、または吸着剤が被覆可能な性質、もしくは抗体(抗原)が吸着するような性質を持つ物質であって、例えば合成樹脂、金属、ガラス等が使用できる。好ましくは、塩化ビニル、ポリスチレンアクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は吸着剤の被覆等が容易であればよい。反応路の直径は0.2mm以上であれば特に限定されないが、通常は0.5?1.5mmが採用される。反応路の路長は5cm以上であれば特に限定されないが、通常は10?100cmが採用される。また、反応路の形態は特に限定されない。」(第3頁左上欄10行?右上欄13行) 3 対比・判断 上記刊行物1の記載事項から(特に上記(1c))、刊行物1には、 「テトラメトキシシランとジメチル-ジメトキシシランとの混合液に、HRPを溶かした溶液を添加し自然ゲル化させた後、室温で真空乾燥させて形成された、ゾルゲル法による固定化酵素」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められるところ、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。 (ア)刊行物1発明の「テトラメトキシシランとジメチル-ジメトキシシラン」、「HRP」は、本願発明の「金属アルコキシド溶液」、「酵素」にそれぞれ相当する。 (イ)刊行物1発明の「固定化酵素」は、刊行物1(上記(1b))に、ゲル状物質が網状構造であることが記載されること、及び固定化酵素の製造方法の記載(上記(1c))からみて、ゲル状物質の網状構造に酵素を化学結合を介さずに包含固定しているといえ、この「ゲル状物質の網状構造」は、本願発明の「金属アルコキシド溶液をゲル化して得られる網目状構造を有するゲルマトリックスの網目構造」に相当する。 (ウ)刊行物1発明の「固定化酵素」と本願発明の「機能性高分子固定化素子」とは、ゲル構造を有する機能性高分子固定化物である点で共通している。 したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。 (一致点) タンパク質、糖タンパク質、酵素、抗原、抗体、核酸から選ばれる機能性高分子を懸濁させた金属アルコキシド溶液をゲル化して得られる網目状構造を有するゲルマトリックスの網目構造内に、化学結合を介さずに該機能性高分子を包含固定化したゲル構造を有する機能性高分子固定化物である点。 (相違点1) ゲル構造を有する機能性高分子固定化物が、本願発明では、流動体がその内部を流れることの可能な内径100μm以下のキャピラリー内に含有された機能性高分子固定化素子であるのに対して、刊行物1発明では、キャピラリー内に含有されていない固定化酵素である点。 (相違点2) 本願発明は、ゲル構造の成分組成が、水が60から98%、網目構造体が2から40%の範囲であるのに対して、刊行物1発明は、ゲルを真空乾燥させたものである点。 そこで、上記相違点は、相互に関連するのでまとめて検討する。 (相違点1及び2について) 刊行物2(上記(2a)(2b)(2c))には、内径30?300μmのキャピラリー内で金属アルコキシドをゲル化することが記載されている。また、核酸、酵素、抗原や抗体といった機能性高分子をキャピラリー内に固定化して分析や分離の高速化、高精度化を図ることは、刊行物3?6、さらに、特開昭56-144085号公報(特許請求の範囲、第2頁左下欄15?17行)、特開2001-61497号公報(【請求項1】、【0032】)に記載されるように本願出願前の周知技術であるから、刊行物1発明のゾルゲル法による酵素の固定化を、キャピラリー内で行うことを想到することは、当業者にとって格別の困難性を要するということはできない。 そして、刊行物1(上記(1d))には、室温で真空乾燥した固定化酵素HRP/Gelに、緩衝液を加え、遠心分離で上清を捨てた残渣を用いて酵素活性を測定することが記載されており、刊行物1発明の固定化酵素を使用する時には、水分を十分に含有させ、水分率は不明であるものの、酵素がその機能を発揮できる状態にしている。また、刊行物2に記載されるようなキャピラリーカラムでは、その充填剤中を液体が通過可能な構造とすることは、当然のことである。 そうすると、刊行物1発明のゾルゲル法による酵素の固定化をキャピラリー内で行い、キャピラリーカラムの使用時に、酵素が活性を発揮でき、液体がゲルの内部を通過できるように、水分率とゲル構造体率を最適化し、本願明細書の記載からみて、最適化以上の格別の臨界的意義があるということもできない数値である、ゲル構造の成分組成を水が60から98%、該網目構造体が2から40%の範囲とし、流動体がその内部を流れることの可能なキャピラリー内に機能性高分子を包含固定化したゲル構造を有する機能性高分子固定化素子とすることは、当業者が容易になしえたものといえる。 さらに、機能性高分子固定化素子の使用法等に応じて、キャピラリーの内径を100μm以下とすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (本願発明の効果について) 本願明細書の記載及び技術常識からみて、ゲルを乾燥させずに所定の水分率とした場合と、室温で真空乾燥したゲルを所定の水分率に含水させた場合とで、作用効果上の格別の差異があるということはできない。 そして、本願発明の、形成プロセスが単純で、物質を高分解能、高効率、広い選択性で、分離、反応させることができ、分析時間の短縮、操作の簡便化が可能であるという効果は、刊行物1、2の記載事項から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。 4 むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明及び刊行物3ないし6に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-29 |
結審通知日 | 2009-10-06 |
審決日 | 2009-10-19 |
出願番号 | 特願2002-72394(P2002-72394) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮澤 浩 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
岡田 孝博 松本 征二 |
発明の名称 | 高分子固定化素子 |
代理人 | 石井 良夫 |