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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1208041
審判番号 不服2008-909  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-11 
確定日 2009-12-02 
事件の表示 特願2002-299300「窒素酸化物測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月6日出願公開、特開2003-315220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年10月11日(優先権主張 平成14年2月19日)の出願であって、平成19年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月4日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年2月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「【請求項1】サンプルガスを採取するための採取部と、前記サンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータと、前記サンプルガス中のNO_(2) をNOに変換するためのNO_(2) コンバータと、サンプルガスをさらに冷却するための二次冷却器と、サンプルガス中のNO_(X) を定量分析するNO分析計とを上流側からこの順に備えている窒素酸化物測定装置において、前記ドレンセパレータは、ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形の高流速冷却型であり、また、前記ドレンセパレータの内容積(cm^(3) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が、10(1/min)以上で、かつ、前記ドレンセパレータ中に形成されたサンプルガス流路の内表面積(cm^(2) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が15(cm/min)以上となるように構成されており、さらに、前記採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ラインの上流側部分が加熱手段を備えた加熱配管により形成されているとともに、下流側部分が前記ドレンセパレータの入口付近のサンプルガスの温度が前記加熱配管内を流れるサンプルガスの温度よりも低く、かつ、そのサンプルガス中のドレンが結露しない温度に保たれるように保温性材料からなるホースにより形成されていることを特徴とする窒素酸化物測定装置。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「高流速冷却型」の「ドレンセパレータ」について、「ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形」、及び「前記ドレンセパレータの内容積(cm^(3) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が、10(1/min)以上で、かつ、前記ドレンセパレータ中に形成されたサンプルガス流路の内表面積(cm^(2) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が15(cm/min)以上となるように構成されており」との限定を付加するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされてる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物1ないし5には、以下の事項が図面と共に記載されている。

(1)刊行物1:実願平5-23502号(実開平6-78847号公報)のCD-ROMの記載事項
(1a)「【請求項2】サンプルガスを分析計に導入するためのサンプリングラインに三段構成の除湿手段を設けた煙道排ガス分析装置用のサンプリング装置であって、前記サンプリングラインのサンプルガス導入口とポンプとの間に配置されるドレンセパレータおよび10℃?20℃設定の1次電子冷却器と、そのポンプの下流側に設けられるコンバータと分析計との間に配置される2℃?5℃設定の2次電子冷却器とにより前記除湿手段を構成したことを特徴とするサンプリング装置。」
(1b)「【0002】
【従来の技術】
水に溶解しやすいSO_(2) やNO_(2) 等の定量分析をおこなう煙道排ガス分析装置のサンプリング装置には、水分のドレン化を防ぐための除湿手段が設けられている。
【0003】
その除湿手段は、装置内温度でサンプルガス中の水分を飽和させるドレンセパレータと、分析計の直前に配置される2℃?5℃設定の電子冷却器とにより二段に構成されていた。」
(1c)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかるに、上述のような従来のサンプリング装置では、1日の温度差が大きくなる季節には、ドレンセパレータの後段でしばしばドレン化が進み、そのドレン水にSO_(2) やNO_(2) が溶解して分析計の指示値に誤差が発生することがあった。
【0005】
本考案はこのような実情に鑑みてなされ、サンプリングライン中でのドレン化を発生させずSO_(2 )やNO_(2) の溶解を防止して分析精度の向上を図れるサンプリング装置を提供することを目的としている。」
(1d)「【0010】
第2の考案では、比較的水分が少ないサンプルガスに適し、ドレンセパレータと1次電子冷却器とによってポンプに至るまでに10℃以上で飽和する水分を除去してしまい、ポンプによる加圧や昇温があってもコンバータに至るまでにドレン化させないようにしている。」
(1e)「【0011】
【実施例】
以下に本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は煙道排ガス分析装置におけるサンプリング装置の一実施例を示し、符号1はサンプリングライン、1aはサンプルガス導入口、2はサンプルガス中の水分を装置内温度で飽和させるドレンセパレータ、3はドレントラップ、4はサンプルガス吸引用のポンプ、5は10℃?20℃設定で冷却・除湿をおこなう1次電子冷却器で、これにより、ポンプ4で加圧され、かつそのポンプ4により昇温されてドレン化しやすくなっているサンプルガス中の水分を除去することができる。7はNO_(X) 計用のためにNO_(2) をNOに還元するためのコンバータ、8は2℃?5℃設定で冷却・除湿をおこなう2次電子冷却器、11はNO_(X) ・SO_(X) を定量分析するための分析計である。なお、符号6は開閉弁、9はドレントラップである。
【0012】
上述のように、本サンプリング装置では、ドレンセパレータ2と、1次電子冷却器5および2次電子冷却器8とで三段構えの除湿手段を構成し、これにより温度条件の如何を問わず、サンプリングライン1中でのドレン化を効果的に阻止している。
【0013】
より詳細には、まず、ドレンセパレータ2によって、室内温度に略等しい装置内温度で飽和する水分を除去することができ、次いで、10℃?20℃で飽和する水分を1次電子冷却器5で除去する。この二段階の除湿手段によって、10℃以上の温度域でドレン化しやすい水分をサンプルガス中から除去しておくことができ、コンバータ7に至るまでの間にドレン化を進行させないようにすることができる。
【0014】
ところで、コンバータ7の前段でドレン水が生成されると、前述のように、NO_(2) がそのドレン水に溶解し、そのドレン水がコンバータ7内に入るとそのドレン水が蒸発して一時的に高濃度のNO_(2) がNOとなり分析計11のNO_(X) 指示値に誤差が発生するが、上述のように、ドレンセパレータ2と1次電子冷却器5とによる効果的な除湿で、このような不具合を解消している。」
(1f)「【0018】
図2は、ポンプ4の前段に1次電子冷却器5を配置した異なる実施例を示し、この場合、比較的水分の少ないサンプルガスに適し、ドレンセパレータ2と1次電子冷却器5とによってポンプ4に至るまでに10℃以上で飽和する水分を除去してしまい、ポンプ4による加圧や昇温があってもコンバータ7に至るまでにドレン化させないようにしている。」
(1g)「【0019】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案のサンプリング装置によれば、三段構成の除湿手段によって、段階的に除湿をおこない、サンプリングライン中でのドレン化を阻止できるので、NO_(X) 指示値やSO_(X) 指示値の精度を向上させ、装置の信頼性を著しく向上させることができる。」
(1h)図2には、サンプリングライン(1)を介して、サンプルガス導入口(1a)、ドレンセパレータ(2)、1次電子冷却器(5)、ポンプ(4)、コンバータ(7)、2次電子冷却器(8)、分析計(11)を順次配置したサンプリング装置が記載されている。

(2)刊行物2:特開2000-206014号公報の記載事項
(2a)「【0021】そして、図1および図2において、8は第1の管4内にガス導入口4aから挿入される螺旋状のガス案内部材で、例えばPTFE(ポリテトラフロロエチレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)、四フッ化エチレン樹脂、ポリプロピレンなど耐腐食性材料よりなる棒状体9の表面に適宜の幅および深さを有する角溝10を螺旋状に形成してなり、第1の管4内に導入される試料ガスG_(W)を下方にスムーズに案内するものである。前記棒状体9は、その外径が第1の管4の内径より若干小さく、その両端が図2に示すように、熱交換ブロック1の上下端よりやや突出する程度の長さを有しており、第1の管4の内部に突出するように形成された突起部10’に当接するようにして保持される。」
(2b)「【0024】上記構成のガス分析用除湿器においては、サーモモジュール2に通電してこれを動作させることにより、熱交換ブロック1が冷却され、これにより、第1の管4も冷却される。この状態でガス導入口4aを経て第1の管4内に、サンプリングされ、水分を含んだ(除湿処理前の)試料ガスG_(W) を導入すると、この試料ガスG_(W) は、第1の管4内に設けられたガス案内部材8の螺旋状の角溝10に沿って第1の管4の内壁に長く接しながら下方に流れる。この流下過程において、前記試料ガスG_(W)は、所定の温度(例えば5℃±1℃、または2.5℃±1℃)まで冷却され、それに含まれている水分が凝縮されてドレンDとなる。」

(3)刊行物3:実願昭62-89757号(実開昭63-199048号公報)のマイクロフィルムの記載事項
(3a)「2.実用新案登録請求の範囲
除湿器本体に設けられたガス供給用の管体内に、この管体とガスとの熱接触を長くするための除湿部材が設けられたガス分析用除湿器において、前記管体の断面積よりも小さい断面積にされ、かつ管体の軸線とほぼ同方向のガス通過孔が設けられた、ガス流速を高めるべく調整するガスの流路調整部材が、除湿部材の上流側に配置されたことを特徴とするガス分析用除湿器。」(第1頁4行?11行)
(3b)「{従来の技術}
ガスに含まれた湿気を除去する除湿器として、例えば実開昭52-1233664号公報(当審注:実開昭52-123364号公報の誤記である。)に開示されたものが知られている。
この除湿器は、除湿器本体に設けられた熱交換用の管体内に、その管体とガスとの熱接触を長くするための、スクリュウ状に構成された除湿部材が分離可能に挿入され、かつこの除湿部材の下流側で前記管体が、ドレン排出部とガスの流出部とに分岐されたものである。
この除湿器によるガスの除湿は、前記管体に供給されたガスが、前記除湿部材を通過する間にかくはん作用を受けて、管体との間で熱交換を行いながら通過する。この除湿部材を通過する間の熱交換によつてガスから水分を除き、それをドレン排出部から排出し、ガスはその流出部から流出させるものである。
{考案が解決しようとする問題点}
前記従来の除湿器は、除湿を行うことに対してはほぼ問題はなく、その目的を達成することができる。
しかし、前記除湿ブロックに設けられた管体に供給されたガスは、その流れが除湿部材のためにやや阻止されるから、前記除湿部材の上流側ではやや滞留した状態に大きく流速が低下する。しかも、この除湿部材の上流側で流速が大きく低下したガスは、除湿器本体による熱交換の影響を受けやすい。したがって、前記流速が低下したガスに含まれている湿気が管体の内面に結露しやすく、かつガスの流速が低いから、前記結露した水分は流れることなくその位置などに止まって成長し、水滴になって落下する場合が生じる。
そして、このような除湿器をガス分析器の上流側に配置して測定ガスの除湿をした場合において、測定ガスにSO_(2)ガスその他の水溶解性のガスが含まれていると、これらの溶解性ガスが、前記管体の内面に付着した水滴に溶解する。
したがって、測定成分ガスが、SO_(2)ガスその他の水溶解性のガスであつた場合において、前記の管体内面に付着した水滴に前記測定成分ガスが溶解してガス損失が生じやすい。このため、ガス分析器の分析指示に、マイナスの異常指示が不定期に出力され、分析結果に対する信頼性が低くなるなどの問題が生じる。」(第1頁下から2行?第4頁2行)
(3c)「本考案は、前記のような問題を解決するものであって、前記除湿部材の上流側において、ガスを流通させる管体の内面に付着した水分が、その位置などに止まって成長しないようにして、測定成分ガスが水に溶解性のガスであっても、そのガスの溶解損失が生じないガス分析用の除湿器をうることを目的とするものである。」(第4頁3行?9行)
(3d)「{作用}
このガス分析用除湿器は、管体に供給されたガスの流速を、除湿部材の上流側に配置された流路調整部材で高めることによって、流路調整部材を通過するガスに対する除湿器本体における熱交換の影響を小さくし、かつ流路調整部材のガス通過孔の周面に付着した水分を、それを流動するガスの圧力で流動させて順次に排出し、前記ガス通過孔の周面に付着した水分が、その位置などに止まって成長することをなくする。これによって、水とガスとの接触を極力少なくして、ガスが水に溶解することの損失を防ぐものである。」(第4頁末行?第5頁11行)
(3e)「{実施例}
本考案のガス分析用除湿器の実施例を第1?3図について説明する。
第1?3図において、1はサーモモジュールを使用した電子冷却除湿器その他の除湿器本体、2は除湿器本体1に、それを貫通する状態にして設けられたガス供給用の管体、3はスクリュウ状に構成された除湿部材で、その一端に連結状態にしてガスの流路調整部材4が設けられている。この流路調整部材4は、第2図に示したように、棒状体5に、それを貫通した小径のガス通過孔6を複数設けたものである。
そして、前記除湿部材3と流路調整部材4とが、除湿部材3を下流側とし、かつこの除湿部材3を除湿器本体1内に位置させて、管体2に分離可能に挿入されている。
7は管体2のドレン排出部、8は除湿部材3よりも下流側において管体2から分岐されたガスの流出管で、この流出管8がガス分析器(図示省略)に接続される。
・・・(中略)
このガス分析用除湿器による測定ガスの除湿は、管継手10側から管体2に測定ガスが供給される。そして、前記ガスが流路調整部材4に達すると、ここからはガスの流路としてのガス通過孔6の断面積が小さくなるから、通過するガスの流速が高められる。すなわち、流路調整部材4を通過するガスの量が、除湿部材3を通過するガス量とほぼ同じ程度またはその差が小さくなり、流路調整部材4のガス通過孔6では、ある程度を維持して常にガスが流動する。
したがって、流路調整部材4を通過するガスが、除湿器本体1による熱交換の影響を受けることが少なくなるとともに、ガスに含まれた水分がガス通過孔6の周面に付着しても、その水分は流動しているガスの圧で順次に流され、ガス通過孔6の周面に止まつて水滴に成長することはほぼ不可能であつて、水滴に溶解することによるガス損失を防ぐことができる。
流路調整部材4を通過したガスは、除湿部材3を通過する間に熱交換が進み除湿される。ガスから除かれた水分は、ドレン排出部7から排出され、一方、除湿されたガスはガスの流出管8からガス分析器に送られて分析される。
このため、例えば、この除湿器に供給される測定ガスの測定成分ガスが、水に溶解性のSO_(2)ガスであつたとしても、このSO_(2)ガスが、結露した水分に溶解することに起因するガス分析器の異常指示をほぼなくすることが可能である。」(第5頁12行?第8頁6行)

(4)刊行物4:特開平6-123682号公報
(4a)「【0002】
【従来の技術】ボイラ排ガス中の全窒素酸化物(NO_(x) )(NO+NO_(2) )の濃度測定方法としてはPDS法(JIS K0104)などがJIS法として規定されており、また機器分析法としては、化学発光法(ケミルミ法)もJIS B7982に採用されている。この機器分析法は、ボイラ排ガスのように、NO_(2) の比率が低く、またNOの濃度が低く、共存酸素の濃度が低い場合は、精度よくNO濃度が測定できる。なお、この化学発光法はもともとNOを測定するものであり、NO_(x)濃度が必要な場合は、NO_(x) コンバータで、NO_(2) をNOに変換させた後、全NOを測定することでNO_(x) 濃度を計測していた。」
(4b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のNO_(x) 濃度測定方法をそのまま、ディーゼル機関排ガスなどのようにNO_(2 )の比率が高い場合に適用すると、次に示すような問題点がある。
(1)NO_(2)の濃度、比率が高い場合、水分を除去する前処理工程で除湿水分にNO_(2) が溶けることにより、負の影響を与える。
(2)NO,O_(2)の濃度が高い場合、サンプリング?測定までの間で反応して、NO_(2) を生成し、これが測定値に対して負の影響を与える。
【0004】本発明は、ディーゼル機関,化学プラント等からの排出ガスの如くNO_(2) が高い場合における上記従来のNO_(x)濃度測定方法の問題点を解決し、連続してしかも簡単にガス中NO_(x)濃度を測定できる装置を提供することを目的とするものである。」
(4c)「【0005】
【課題を解決するための手段】サンプリング時にNO_(2) がガス中水分のドレン化と共に除かれないようにするため、サンプリング用の管路は保温を確実に行なう対策を行なう・・・このようにガス中のNO_(2)成分を全てNOにした状態で急冷しガス中の水分をドレン化し除湿する。その後さらに第二のNO_(x)コンバータを経由し、化学発光法(ケミルミ法)でNO濃度を測定する。」
(4d)「【0008】
【実施例】本発明の実施例を図1,図2により説明する。図1において、ガスサンプルは、サンプリングプローブ1によりサンプリングされ、保温されドレン防止対策が施工された管路2を経て、第一NOx コンバータ3に導入される。」

(5)刊行物5:特開昭51-19583号公報
(5a)「本発明は煙道排ガス中の有害ガス、例えばイオウ酸化物、窒素酸化物などを連続的に測定するために、ガス検出器まで導くサンプリング方法に関するものである。
従来の排ガス連続分析計の一構成例を第1図に示す。これにより従来の排ガスサンプリング方法を説明する。図において1は煙道である。煙突2の排ガス取付部に一次フィルタの付いたプローブ3を取付け、テフロンに加熱用ヒータを巻いた配管4で分析計本体11まで排ガスを導き、まず、一次ドレンセパレータ5に入れ、配管4内に凝縮した水を除去し、更に水分を除去するためにポンプにより除湿器7に導き、ここで露点2℃までガスを冷却し、2次フィルタ8でばい塵を除去し、9の流量調節部で流量調節し、10の検出部で測定対象ガスを分析している。
この場合問題になるのは、煙道排ガスの露点は120℃程度であるので、分析計本体11までガスを導く配管の加温である。この配管4は長いもので50mに及ぶものがあり、この加温配管を行うためには多大の費用を要し、かつ維持費も多くかかる。また、加温配管を行わない場合もあるが、その場合配管の閉塞があつたり、測定対象ガスの損失が大きくなつたりして、分析上大きな問題を生じる。」(第1頁左下欄下から9行?右下欄下から5行)
(5b)「本発明の目的は従来技術の欠点をなくし、配管設備および維持管理費を低減させ、かつ測定対象ガスの損失をより少なくすることを考慮した排ガスサンプリング方法を提供することである。
本発明は重油専焼ボイラーなどの煙道排ガスを分析する方法において、煙道よりの排ガス取出部で水分を露点10℃?40℃まで除去し、同時にばい塵を除去し、ガス流路系を水分が凝縮しないようにガスの露点以上に保温するものである。これにより、従来排ガス取出部から分析計までの配管を煙道排ガスの露点120℃程度まで加温していたのを、排ガス取出部で水分を露点10℃?40℃まで除去することにより、配管の加温を10℃?50℃程度まででよいことにした。このため配管費用大幅が低減が可能となり、また維持費も安くなる。」(第2頁左上欄4行?19行)
(5c)「排ガス取出部よりの配管14はポリエチレンなどの耐熱性の余りない材料でも十分使用可能である。ガス流路系の保温は例えば塩ビ絶縁テープヒータによる加温で十分である。」(第2頁左下欄第13行?第16行)

3 対比・判断
刊行物1の記載事項(特に上記(1e)(1f)(1h))から、刊行物1には、
「サンプルガス導入口(1a)と、サンプルガス中の水分を室内温度に略等しい装置内温度で飽和させるドレンセパレータ(2)と、10℃?20℃設定で冷却・除湿を行う1次電子冷却器(5)と、サンプルガス吸引ポンプ(4)と、サンプルガス中のNO_(2)をNOに変換するためのコンバータ(7)と、2℃?5℃設定で冷却・除湿を行う2次冷却器(8)と、サンプルガス中のNO_(X)を定量分析する分析計(11)とを、サンプリングライン(1)を介して上流側からこの順に備えているサンプリング及び分析装置」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「サンプルガス導入口」、「サンプルガス中のNO_(2)をNOに変換するためのコンバータ」、「2℃?5℃設定で冷却・除湿を行う2次冷却器」、「サンプルガス中のNO_(X)を定量分析する分析計」、「サンプリング及び分析装置」は、本願補正発明の「サンプルガスを採取するための採取部」、「サンプルガス中のNO_(2) をNOに変換するためのNO_(2) コンバータ」、「サンプルガスをさらに冷却するための二次冷却器」、「サンプルガス中のNO_(X) を定量分析するNO分析計」、「窒素酸化物測定装置」にそれぞれ相当する。
(イ)刊行物1発明の「サンプルガス中の水分を室内温度に略等しい装置内温度で飽和させるドレンセパレータ」と本願補正発明の「サンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータ」とは、「サンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータ」である点で共通している。
(ウ)刊行物1発明の「サンプルガス導入口」と「サンプルガス中のNO_(2)をNOに変換するためのコンバータ」との間の「サンプリングライン」は、本願補正発明の「採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ライン」に相当する。
したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
サンプルガスを採取するための採取部と、採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ラインと、前記サンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータと、前記サンプルガス中のNO_(2) をNOに変換するためのNO_(2) コンバータと、サンプルガスをさらに冷却するための二次冷却器と、サンプルガス中のNO_(X) を定量分析するNO分析計とを上流側からこの順に備えている窒素酸化物測定装置である点。

(相違点1)
ドレンセパレータが、本願補正発明では、ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形の高流速冷却型であり、ドレンセパレータの内容積(cm^(3) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が、10(1/min)以上で、かつ、前記ドレンセパレータ中に形成されたサンプルガス流路の内表面積(cm^(2) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が15(cm/min)以上となるように構成されているのに対して、刊行物1発明では、サンプルガス中の水分を室内温度に略等しい装置内温度で飽和させるドレンセパレータでありその構造が明らかでなく、ドレンセパレータの後段に10℃?20℃設定で冷却・除湿を行う1次電子冷却器を備えている点。

(相違点2)
採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ラインが、本願補正発明では、上流側部分が加熱手段を備えた加熱配管により形成されているとともに、下流側部分がドレンセパレータの入口付近のサンプルガスの温度が加熱配管内を流れるサンプルガスの温度よりも低く、かつ、そのサンプルガス中のドレンが結露しない温度に保たれるように保温性材料からなるホースにより形成されているのに対し、刊行物1発明では、サンプリングラインの加熱や保温について規定していない点。

そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物2、3にも記載されるように、ガス分析用のサンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータであって、ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形の高流速冷却型のものは、本願優先日前に周知のものであり、刊行物3(上記(3d))には、上記のような高流速冷却型のドレンセパレータは、供給されたガスの流速を高めることによつて、螺旋状流路調整部材を通過するガスに対する除湿器本体における熱交換の影響を小さくし、かつ螺旋状流路調整部材のガス通過孔の周面に付着した水分を流動するガスの圧力で排出し、付着した水分が、その位置などに止まつて成長することをなくし、水とガスとの接触を極力少なくして、ガスが水に溶解することの損失を防ぐという作用効果を有するものであることが記載されている。
そして、刊行物1には、発明の課題として、排ガスのサンプリング装置では、ドレンセパレータの後段でドレン化が進み、ドレン水にSO_(2) やNO_(2) が溶解して分析計の指示値に誤差が発生することがあることが記載され、そのため、サンプリングライン中でのドレン化を発生させずSO_(2 )やNO_(2) の溶解を防止して分析精度の向上を図ることを目的とすることが記載され(上記(1b)(1c))、この課題を解決するために、刊行物1発明では、ドレンセパレータの後段に1次冷却器を設け、冷却・除湿して、コンバータまでの間でドレン化するのを防止しているが、上記のとおり、効率的に除湿ができるドレンセパレーターは周知であるから、刊行物1発明において、室内温度に略等しい装置内温度で水分を除去するドレンセパレータに代えて、ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形の高流速冷却型のものを採用して効率的に除湿を行い、それに伴い、ドレンセパレータの後段でのドレンの発生を防止するために採用している1次冷却器を省くことは当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、刊行物3には、螺旋状流路調整部材のガス通過孔の周面に付着した水分を、ガスを高流速で流すことにより排出することが記載されているが、同じ流速のガスを流した場合、ドレンセパレータの容積及びガス流路の内表面積が大きいほど、ドレンセパレータ内部にガスが滞留する時間が長くなることは、例えば、特開2001-4503号公報(【0012】)にも記載されるように技術常識といえ、ガスの滞留により、刊行物3に記載されるように、結露とガスの溶解損失の問題が生じるから、ガスの流速は、ドレンセパレータの容積及びガス流路の内表面積に応じて最適化する必要があるといえ、刊行物1発明において、刊行物3に記載されるような周知のドレンセパレータを採用する際に、ドレンセパレータの容積及びガス流路の内表面積に応じてガスの流速を最適化し、ドレンセパレータの内容積(cm^(3) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が、10(1/min)以上で、かつ、前記ドレンセパレータ中に形成されたサンプルガス流路の内表面積(cm^(2) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が15(cm/min)以上となるように構成とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(相違点2について)
刊行物4、5にも記載されるように、排ガス採取部からドレンセパレータに至るまでの管路が結露することによる測定ガスの溶解損失を防止するために、ガス採取部からドレンセパレータに至るまでの管路を加熱手段で、結露が起こらないように、少なくともガスの露点程度の温度に加温或いは保温することは、本願優先日前の周知技術であるから、刊行物1発明において、結露が起こらないように、サンプルガス導入口からドレンセパレータに至る管路を、サンプルガス中のドレンの露点程度の温度に保たれるように加熱手段を設けることに何ら困難性はない。そして、管路の結露を防止するために加熱が必要であっても、結露が起こらない程度に温度が保たれれば、それ以上に加熱する必要はなく保温で足り、保温するには、管路周囲を保温材で巻くだけでなく、管自体を、例えば、刊行物5(上記(5c))にも記載されるポリエチレン等の保温性材料で構成すること、また、管路に続くドレンセパレータでは、冷却によりドレンを分離することから、ドレンセパレータに導入されるガスは露点に近い方が効率がよいことは、技術常識であるから、ガス採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ラインの上流側部分については、加熱手段を備えた加熱配管により形成されるようにし、下流側部分については、ドレンセパレータの入口付近のサンプルガスの温度が加熱配管内を流れるサンプルガスの温度よりも低くてもサンプルガス中のドレンが結露しない温度に保たれるように保温性材料からなるホースにより形成されるように構成することは、当業者が容易になし得たものといえる。

(本願補正発明の効果について)
本願補正発明のNO_(2)の吸着や溶解によるロスを抑え高精度の測定を行えるという効果は、刊行物1ないし5の記載事項から予測し得るのものであり、格別顕著なものとはいえない。

4 まとめ
したがって、補正発明は、本願出願前に国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされてる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成19年10月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】サンプルガスを採取するための採取部と、前記サンプルガス中のドレンを分離するためのドレンセパレータと、前記サンプルガス中のNO_(2)をNOに変換するためのNO_(2)コンバータと、サンプルガスをさらに冷却するための二次冷却器と、サンプルガス中のNO_(X)を定量分析するNO分析計とを上流側からこの順に備えている窒素酸化物測定装置において、前記ドレンセパレータが高流速冷却型であり、さらに、前記採取部からドレンセパレータに至るまでのサンプルガスの導入ラインの上流側部分が加熱手段を備えた加熱配管により形成されているとともに、下流側部分が前記ドレンセパレータの入口付近のサンプルガスの温度が前記加熱配管内を流れるサンプルガスの温度よりも低く、かつ、そのサンプルガス中のドレンが結露しない温度に保たれるように保温性材料からなるホースにより形成されていることを特徴とする窒素酸化物測定装置。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1ないし5及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第1 1」において検討した本願補正発明の、「ドレンセパレータ」の限定事項である「前記ドレンセパレータは、ほぼ円形状の貫通流路の内部に螺旋状流路が形成され、この螺旋状流路内をサンプルガスが通る間に冷却されるようなスパイラル形の高流速冷却型」であるとの構成、及び「前記ドレンセパレータの内容積(cm^(3) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が、10(1/min)以上で、かつ、前記ドレンセパレータ中に形成されたサンプルガス流路の内表面積(cm^(2) )に対するドレンセパレータの内部を通るサンプルガスの流量(cm^(3) /min)の比が15(cm/min)以上となるように構成されており」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-28 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-19 
出願番号 特願2002-299300(P2002-299300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄榎本 吉孝  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 岡田 孝博
宮澤 浩
発明の名称 窒素酸化物測定装置  
代理人 藤本 英夫  

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