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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1208045
審判番号 不服2008-23291  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-11 
確定日 2009-12-02 
事件の表示 特願2004-145318「電磁弁」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-325940〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年5月14日の出願であって、平成20年8月4日付けで拒絶査定がされたところ、平成20年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年4月18日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
流路を切り換えるための弁部材を備えた主弁部と、上記弁部材を操作するための電磁操作部とを有し、
上記電磁操作部が、励磁コイルが巻かれた中空のボビンと、このボビンの内孔内に固定的に設置された固定鉄心と、上記ボビンの内孔内に可動に配設されて上記弁部材に連結され、上記励磁コイルへの通電により発生する磁気吸引力で固定鉄心に吸着される可動鉄心と、この可動鉄心を固定鉄心から離反する初期位置に復帰させる鉄心復帰ばねとを有し、上記固定鉄心と可動鉄心とが、互いに同一形状及び同一寸法に形成されると共に、相互に互換性を有し、
上記両鉄心が、一定の断面形状を有する主体部と、この主体部の軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが上記主体部よりも短いフランジ部とを有し、
上記固定鉄心のフランジ部側の端面が磁気カバーの天板部の内面に当接すると共に、上記フランジ部が上記ボビンの天板側の段部に係止されて、該段部と天板部との間に該フランジ部が挟持されて固定され、
上記可動鉄心のフランジ部に、上記鉄心復帰ばねのばね座となるリング状をしたキャップが主体部側から当接した状態で、上記可動鉄心に該キャップが嵌め付けられている、ことを特徴とする電磁弁。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明及び記載事項
(1)刊行物1:特開2003-56740号公報
(2)刊行物2:実願昭46-95780号(実開昭48-52064号)のマイクロフィルム

(刊行物1)
刊行物1には、「電磁弁用ソレノイドの可動鉄心及びその製造方法」に関して、図面(特に、図1及び2を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本発明は、電磁弁において弁部を駆動するソレノイド部の可動鉄心及びその製造方法に関するものである。」(第2頁第1欄第30及び31行、段落【0001】参照)
(b)「図1は、本発明に係る可動鉄心を電磁弁用ソレノイドに装着した一実施例を示すもので、この電磁弁1は、3ポート弁を構成しする弁部2に、該弁部2の弁体を駆動するソレノイド部3を取り付けることにより構成されている。上記ソレノイド部3において、4は磁性体ケースであり、弁部2が装着される開口を備え、側壁部と端壁とが一体となって縦断面が略U字状に形成されていると共に、図示を省略するが、横断面は略長方形に形成されている。そして該磁性体ケース4内には、略楕円または長円形断面を有する柱状の鉄心12とそれに嵌め込まれたストッパ13とで構成された可動鉄心5と、同じ楕円または長円形断面の鉄心部6a及びそれと一体に形成されたフランジ部6bを備えた固定磁極部材としての固定鉄心6と、コイル7が外周に巻回されると共に中心に略楕円形の鉄心孔8aが形成されたボビン8、及び該ボビン8と同じ略楕円形の鉄心穴9aが穿設された磁性体プレート9とが内装され、上記鉄心孔8a及び上記鉄心穴9aによって形成された中心孔に上記可動鉄心5及び固定鉄心6が嵌挿されている。そうすることにより、上記コイル7が巻回されたボビン周りに磁路が形成されている。
更に詳しく述べると、上記固定鉄心6のフランジ部6bの一面側を上記磁性体ケース4の端壁に当接すると共に、該フランジ部6bの他面側には、鉄心孔8aの周囲に設けられたシール部材10を介して上記ボビン7の一端を配置することで、端面に磁極面6cを有する上記固定鉄心6の鉄心部6aが上記鉄心孔8aの略中央部まで嵌挿されており、該鉄心部6aの端面に形成された磁極面6cが中心孔内で上記可動鉄心5の端面と対向するようになっている。一方、ボビン8の他端側すなわち上記磁性体ケース4の開口側には、鉄心孔8aの周囲に配設されたシール材11を介して上記磁性体プレート9が配置され、該磁性体プレート8の側部を上記磁性体ケース4の側壁内周面に対して溶接等の手段で固定することにより、同時に上記固定鉄心6及びボビン8が上記磁性体ケース4内に固定されると共に、上記鉄心穴9aと上記鉄心孔8aによって連続した中心孔が形成される。
また、図2にも示すように上記可動鉄心5は、鉄心12と、その弁部に作用する一方の端部に嵌合圧入される合成樹脂製の環状ストッパ13とから構成されており、上記鉄心12は、上記一方の端部から所定幅形成された大径部12aと、該大径部12aとほぼ垂直な段部12bを介して連設され、上記固定鉄心6の磁極面6cに面する他方の端部まで延びる小径部12cとからなっている。
一方、環状ストッパ13は、上記鉄心部9の大径部12aに嵌合圧入された大径孔13aと、上記鉄心12の段部12bと当接する係合部13bを介して一体に連設され、上記小径部12cに嵌合される小径孔13cと、上記大径孔13a側の端部周縁に形成され、上記磁性体プレート9との間に縮設された復帰バネ14の一端を支持するための鍔部13dと、上記小径孔10c側の端部に形成され、上記可動鉄心5の往復動により上記磁性体プレート9に対して当接と離間を繰り返す当接部13eとからなっている。
このような可動鉄心5を組み立てるにあたっては、上記環状ストッパ13の大径孔13a側から上記鉄心12の小径部12cを挿入していき、更にストッパ13の該大径孔13aに鉄心の大径部12aを嵌合圧入し、必要に応じて、上記鉄心12の段部12bと上記環状ストッパの係合部13bとを互いに当接させて、上記鉄心12に環状ストッパ13を組み付ければよい。
そして、上記可動鉄心5は、鉄心12の小径部が上記鉄心孔8a及び鉄心穴9aからなる中心孔に上記磁性体プレート9側から摺動自在に嵌挿され、その端面がボビン8側から上記中心孔に嵌挿された上記固定鉄心6の磁極面6cと対向している。また、上記環状ストッパ13の鍔部13dと磁性体プレート9との間には、復帰バネ14が縮設され、可動鉄心5を上記磁性体ケース4の開口方向すなわち上記弁部2の方向に常時付勢している。
このような構造を有するソレノイド部3は、コイル7が非通電状態においては、可動鉄心5には固定鉄心6による吸着力が作用しないので、可動鉄心5は上記復帰バネ15の付勢力により、図1の左半分に示すような固定鉄心6と離間した位置、すなわち上記ストッパ13が上記磁性体プレート9と離間した位置において後述する弁部2のプッシュロッド19に当接してそれを押圧し、また、コイル7に通電されると、図1の右半分に示すように、上記復帰バネ15の付勢力に抗して、固定鉄心6が可動鉄心5を吸着し、可動鉄心7が上記プッシュロッド19の押圧を解除する方向に動作することにより、上記弁部2を駆動する。その際、上記ストッパ13の当接部13eは上記磁性体プレート9に当接している。」(第3頁第3欄第47行?第4頁第5欄第32行、段落【0012】?【0018】参照)
(c)「上記実施例において、筒状カバー4の断面形状は略長方形に限られず、必要に応じて種々の形状とすることができる。また、上記中心孔を形成する鉄心孔9a及び鉄心穴10aの形状、並びに上記中心孔に嵌挿する各鉄心の断面についても略楕円形に限定されるものではなく円形等であっても良い。」(第4頁第6欄第38?43行、段落【0025】参照)
(d)図2から、固定鉄心6と可動鉄心5が、一定の断面形状を有する鉄心部6a及び小径部12cと、この鉄心部6a及び小径部12cの軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが鉄心部6a及び小径部12cよりも短いフランジ部6b及び大径部12aとを有している構成が看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【引用発明】
流路を切り換えるためのポペット弁18を備えた弁部2と、上記ポペット弁18を操作するためのソレノイド部3とを有し、
上記ソレノイド部3が、コイル7が巻かれた中空のボビン8と、このボビン8の鉄心孔8a内に固定的に設置された固定鉄心6と、上記ボビン8の鉄心孔8a内に可動に配設されて上記ポペット弁18に連結され、上記コイル7への通電により発生する磁気吸引力で固定鉄心6に吸着される可動鉄心5と、この可動鉄心5を固定鉄心6から離反する初期位置に復帰させる復帰バネ14とを有し、
上記固定鉄心6が、一定の断面形状を有する鉄心部6aと、この鉄心部6aの軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが上記鉄心部6aよりも短いフランジ部6bとを有し、
上記可動鉄心5が、一定の断面形状を有する小径部12cと、この小径部12cの軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが上記小径部12cよりも短い大径部12aとを有し、
上記固定鉄心6のフランジ部6b側の一面側が磁性体ケース4の端壁の内面に当接すると共に、上記フランジ部6bが上記ボビン8の端壁側の段部に係止されて、該段部と端壁との間に該フランジ部6bが挟持されて固定され、
上記可動鉄心5の大径部12aに、上記復帰バネ14のばね座となるリング状をした環状ストッパ13が小径部12c側から当接した状態で、上記可動鉄心5に該環状ストッパ13が嵌め付けられている電磁弁1。

(刊行物2)
刊行物2には、「小型電磁接触器」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。
(e)「本考案は可動鉄芯が横方向に移行する所謂プランジャ式の小型電磁接触器に係り、そのプランジャと固定鉄芯とが全く同一のもので兼用出来る様にし構造の簡素化を計ったものである。」(第1頁第15?18行)
(f)「本考案を実施例として掲げた図面に基いて説明すると、1は下開口の上蓋、2は上開口の下筺で両者1,2にて接触器体Zを構成する。Xは下筺2の底部に位置したプランジャ式電磁石装置でコイルC、巻枠3、継鉄4、継鉄4に連結された固定鉄芯5、横移行式プランジャ6にて構成されている。而して固定鉄芯5、プランジャ6は同一製品となっており、互いに対向して位置する。而して両者5,6は一端に細くなった首部7,7を設け、この首部7,7には貫通孔8,8を穿っている。従って固定鉄芯5の首部7が継鉄5の側板4aの横孔9に貫通し、かつ首部7にて一定以上は入り込まない。10は固定鉄芯5に固着された隈取りコイル、11は固定鉄芯5の首部7の貫通孔8に挿通したバネ板で両端11a,11aが側板4aに引掛る。従って、固定鉄芯5は抜け外れない。12は中央を下筺2に枢支された反転枠、13は枢支軸、14は下端子で前記プランジャ6の貫通孔8に通った連結ピン15に連係する。而してこのプランジャ6の吸引移行により軸13を中心として上端子16が反転する。17は可動接触子18・・・・を装備する絶縁物製の可動台でプランジャ6の移行にて逆移行作動する様上蓋1に装備される。19は電磁石装置Xと可動台17とを隔離する隔離板で上蓋1と下蓋2との間に介置する。20は可動台17の一端に設けられた前記反転枠12の上端子16との係合突子、21・・は上蓋1の上面に装設された入出力端子で前記可動接触子18・・・・が離合する固定接触子22・・を上蓋1内に垂下している。23は可動台17の復帰バネである。尚、実施例中、プランジャ6と固定鉄芯5との貫通孔8,8は丸、角等任意である。
先ず本考案に掛る小型電磁接触器の動作を説明すると、第1図はプランジャ6が吸引されていない状態であって、図ではオフ状態にある。
上記状態に於て、コイルCが励磁すると、コイルC、継鉄4、固定鉄芯5、プランジャ6が吸引移行(図では右方向に)し、反転枠12の下端子14も追随する。従って反転枠12の上端子16は反対側(図では左方向)に反転し、可動台17をプランジャ6の吸引方向とは反対側に移行させ、オン状態となる。
勿論コイルCの励磁が解放されると、復帰バネ23にて可動台17が復帰移行し、プランジャ6も元の状態となる。
本考案は上記の如く、プランジャ6と固定鉄芯5とを同一形状とし、そのプランジャ6の貫通孔8には反転枠12との連結ピン15を挿通し、且つ固定鉄芯5の貫通孔8に抜け止め用のバネ板11を挿通したから、プランジャ6と固定鉄芯5とが同一製品にて兼用出来、もって部品管理の面からも好都合で、且つ構造も簡単となる効果がある。」(第1頁第18行?第4頁第9行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「ポペット弁18」は本願発明の「弁部材」に相当し、以下同様に、「弁部2」は「主弁部」に、「ソレノイド部3」は「電磁操作部」に、「コイル7」は「励磁コイル」に、「ボビン8」は「ボビン」に、「鉄心孔8a」は「内孔」に、「固定鉄心6」は「固定鉄心」に、「可動鉄心5」は「可動鉄心」に、「復帰バネ14」は「鉄心復帰ばね」に、「鉄心部6a」及び「小径部12c」は「主体部」に、「フランジ部6b」は「フランジ部」に、「一面側」は「端面」に、「磁性体ケース4」は「磁気カバー」に、「端壁」は「天板部」または「天板」に、「環状ストッパ13」は「キャップ」に、「電磁弁1」は「電磁弁」に、それぞれ相当するので、両者は、下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
流路を切り換えるための弁部材を備えた主弁部と、上記弁部材を操作するための電磁操作部とを有し、
上記電磁操作部が、励磁コイルが巻かれた中空のボビンと、このボビンの内孔内に固定的に設置された固定鉄心と、上記ボビンの内孔内に可動に配設されて上記弁部材に連結され、上記励磁コイルへの通電により発生する磁気吸引力で固定鉄心に吸着される可動鉄心と、この可動鉄心を固定鉄心から離反する初期位置に復帰させる鉄心復帰ばねとを有し、
上記固定鉄心と可動鉄心とが、一定の断面形状を有する主体部を有し、
上記固定鉄心が、この主体部の軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが上記主体部よりも短いフランジ部を有し、
上記固定鉄心のフランジ部側の端面が磁気カバーの天板部の内面に当接すると共に、上記フランジ部が上記ボビンの天板側の段部に係止されて、該段部と天板部との間に該フランジ部が挟持されて固定され、
上記可動鉄心のフランジ部に、上記鉄心復帰ばねのばね座となるリング状をしたキャップが主体部側から当接した状態で、上記可動鉄心に該キャップが嵌め付けられている電磁弁。
(相違点)
本願発明は、「上記固定鉄心と可動鉄心とが、互いに同一形状及び同一寸法に形成されると共に、相互に互換性を有し」、上記可動鉄心が「この主体部の軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが上記主体部よりも短いフランジ部」を有しているのに対し、引用発明は、固定鉄心と可動鉄心とが相互に互換性を有しておらず、可動鉄心5が小径部12cの軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが小径部12cよりも短い大径部12aを有している点。
そこで、上記相違点について検討する。
(相違点について)
引用発明及び刊行物2に記載された発明は、ともに固定鉄心と可動鉄心を備えた装置に関する技術分野に属するものであって、刊行物2には、「本考案は可動鉄芯が横方向に移行する所謂プランジャ式の小型電磁接触器に係り、そのプランジャと固定鉄芯とが全く同一のもので兼用出来る様にし構造の簡素化を計ったものである。」(上記摘記事項(e)参照)、及び「固定鉄芯5、プランジャ6は同一製品となっており、互いに対向して位置する。・・・本考案は上記の如く、プランジャ6と固定鉄芯5とを同一形状とし、そのプランジャ6の貫通孔8には反転枠12との連結ピン15を挿通し、且つ固定鉄芯5の貫通孔8に抜け止め用のバネ板11を挿通したから、プランジャ6と固定鉄芯5とが同一製品にて兼用出来、もって部品管理の面からも好都合で、且つ構造も簡単となる効果がある。」(上記摘記事項(f)参照)と記載されている。
刊行物2には、上記記載からみて、固定鉄心と可動鉄心とが、互いに同一形状及び同一寸法に形成されると共に、相互に互換性を有する構成が記載または示唆されるとともに、固定鉄心と可動鉄心とが同一製品にて兼用出来、もって部品管理の面からも好都合で、且つ構造も簡単となる効果があるとの記載または示唆もされている。
また、刊行物1に記載された固定鉄心6の「フランジ部6b」の形状や寸法を良好な磁路の形成作用が行われるように適切なものとすることや、可動鉄心5の「大径部12a」の形状や寸法を環状ストッパ13を良好に係止できるように適切なものとすることは、当業者が適宜なし得る設計変更の範囲内の事項にすぎない。
してみれば、引用発明の可動鉄心5に、刊行物2に記載された発明を適用することにより、固定鉄心6と可動鉄心5とを互いに同一形状及び同一寸法に形成すると共に、相互に互換性を有するようにし、可動鉄心5が小径部12c(本願発明の「主体部」に相当)の軸線方向の一端に外周方向に張り出すように形成され、軸線方向の長さが小径部12cよりも短いフランジ部を有するようにして、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
また、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明、及び刊行物2に記載された発明の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】を補正した平成20年10月10日付けの手続補正書(方式)において、「原審における意見書においても主張しているように、このような鉄心のフランジ部は、固定鉄心における磁路の拡大及び可動鉄心におけるばね座形成用キャップの係止に共用可能に形成することができて、その場合に、固定鉄心における上記磁路の拡大及び可動鉄心におけるばね上記座形成用キャップの係止効果が十分に得られることを確かめた結果、本願発明をなすに至っている。」(「3.本願発明が特許されるべき理由」「(1)本願発明について」「(1-2)」の項参照)と主張している。
しかしながら、上記(相違点について)において述べたように、引用発明に、刊行物2に記載された発明を適用することは当業者が容易に想到し得たものであるところ、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた効果を併せたものとは異なる、相乗的で、当業者が予測できる範囲を超えた格別の効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の上記主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?4に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-10-13 
出願番号 特願2004-145318(P2004-145318)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 刈間 宏信  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 藤村 聖子
常盤 務
発明の名称 電磁弁  
代理人 林 宏  
代理人 堀 宏太郎  
代理人 林 直生樹  

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