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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1208110
審判番号 無効2009-800080  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-15 
確定日 2009-11-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第4165980号発明「情報記録ディスクの収納ケース」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4165980号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
(1)本件特許第4165980号に係る発明は,平成11年12月20日に出願され,平成20年8月8日に特許権の設定登録がなされた。

(2)これに対し,請求人不二精機株式会社(以下,単に「請求人」という)は,平成21年4月15日に本件特許無効審判を請求した。

(3)当審において,平成21年5月22日付けで,被請求人明晃化成工業株式会社(以下,単に「被請求人」という)に対して,審判請求書の副本を送達(送達日:同月27日)し,期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが,被請求人からは何らの応答もなかった。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という)は,登録時の明細書(以下,「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】情報記録ディスク(100)の有機色素が塗布された情報記録面(102)側を覆う第1ケース体(2)と,この第1ケース体(2)との間に情報記録ディスク(100)を収納すべく前記情報記録面の反対面を覆う第2ケース体(3)とを有しており,前記第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)は共に透明な材料によって形成され,前記第1ケース体(2)の内面(2b)に,情報記録ディスク(100)の中央孔(101)に嵌る保持部(5)と,この保持部(5)を囲むリング形状となって隆起した中央載置部(6)と,この中央載置部(6)を囲むリング形状となって隆起した外周載置部(7)と,情報記録ディスク(100)の外周面を覆う部分に突出形成した円弧状壁(23)と,周縁部に突出形成した周壁(22)とが設けられ,前記第1ケース体(2)の内面(2b)又は外面(2c)には,前記情報記録ディスク(100)の有機色素が塗布された情報記録面(102)に当たる光を実質的に減少させるための微細な凹凸が形成されていることを特徴とする情報記録ディスクの収納ケース。
【請求項2】前記第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)は共に有色透明材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の情報記録ディスクの収納ケース。
【請求項3】前記凹凸は,第1ケース体(2)を成形するための成形型に形成された凹凸が転写されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録ディスクの収納ケース。」

第3 請求人の主張
1.請求の趣旨及び理由
請求人は,審判請求書において,「特許第4165980号発明は,これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由として次のように主張している。

(1)無効理由1
請求項1ないし2に係る特許発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。また,請求項3に係る特許発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証から甲第7号証において示される周知技術に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(2)無効理由2
請求項1記載の発明特定事項のうち,「有機色素が塗布された情報記録面(102)に当たる光を実質的に減少させるための微細な凹凸が形成されている」との記載は,特許を受けようとする発明が明確でないから,特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

2.証拠方法
請求人は上記主張を立証するため,次の証拠方法を提出している。
(1)甲第1号証;国際公開WO99/46185号
(2)甲第2号証;特開平10-305891公報
(3)甲第3号証;特開昭63-162454号公報
(4)甲第4号証;特開平10-310187号公報
(5)甲第5号証:特開平7-148016号公報
(6)甲第6号証;特開平7-68599号公報
(7)甲第7号証;「モールダーのための射出成形品の設計?射出成型材料・射出成形機・射出金型・後加工?」(森隆著)抜粋
(8)甲第8号証;「図解 プラスチック用語辞典(第2版)」(牧廣他編)抜粋
(9)甲第9号証;「デジタル用語辞典(2002-2003年度版)」(日経BP社出版局編)抜粋
(10)甲第10号証;「広辞苑(第6版)」抜粋

第4 当審の判断
1.無効理由2について
本件明細書には,以下の事項が記載されている。
(イ)「【0004】
一方,CD-Rは,記録面に有機色素が塗布され,ユーザがCD-Rドライブを用いて記録面にレーザ光線を当ててピットを刻むことで,データを書き込むものである。
このようにレーザ光線を用いてデータの記録が行われるCD-Rにおいては,記録面にはできるだけ不必要な光が当たらないほうが良い。すなわち,記録面にUV等の光が当たると記録面の色素が悪影響を受け,データ破壊が生じるおそれがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで,従来技術1の収納ケース(底体とカバー体がともに透明プラスチック)では,ケースが透明であるから記録面に当たる光を遮ることはできず,CD-Rにとって好適な保存環境とはいえない。」

(ロ)「【0008】
この構成によれば,透明な第2ケース体からは中の情報記録ディスク等が見える一方,光を実質的に減少させるための凹凸が形成されている第1ケース体は光があまり透過しない。したがって,情報記録ディスクの有機色素が塗布された情報記録面に当たる光を実質的に減少でき,記録面には光があまり当たらず,情報記録ディスクにとって良好な保存環境が得られる。
しかも,第1ケース体も第2ケース体も共に透明な材料で形成されているので,製造コストは従来技術1と同程度ですむ。」

(ハ)「【0021】
この凹凸は,すりガラスに見られるような非常に微細な凹凸として形成するのが好ましい。また,微細さを高めれば不透明に近づけることができるが,特に,すりガラス程度まである必要はなく,もっと粗い凹凸であってもよい。すなわち,底体2を光透過性が実質的に低下する程度の凹凸が形成されていればよい。」

上記記載事項(イ)及び(ロ)によれば,本件特許発明1は,「第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)は共に透明な材料によって形成され」との要件により,第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)の製造コストを抑え,第1ケース体(2)が透明な材料によって形成されるものでありながら,情報記録ディスクの有機色素が塗布された情報記録面にできるだけ不必要な光が当たらないよう,情報記録ディスクにとって良好な保存環境を得るために,「第1ケース体(2)の内面(2b)又は外面(2c)には,前記情報記録ディスク(100)の有機色素が塗布された情報記録面(102)に当たる光を実質的に減少させるための微細な凹凸が形成されている」との要件を備えるものであるということができる。本件特許発明1が,情報記録面(102)に当たる光を具体的にどれだけ減少させるかを課題とした発明でないことは,上記記載事項(ハ)からも明らかである。したがって,請求項1において,「実質的に」なる表現が用いられていることや,情報記録面(102)に当たる光を減少させる程度が具体的な数値をもって記載されていないからといって,本件特許発明1が不明確であるとするのは適当ではない。また,他に,本件特許発明1が不明確であるとする理由もないから,本件特許発明1が特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであるとする請求人の主張は採用できない。

2.無効理由1について
(1)刊行物に記載された事項
(a)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,国際公開WO99/46185号には,図面とともに次の事項が記載されている。
(a-1)
「本発明は,音楽,映像及びコンピュータ等に使用される光学的に読み取られるデジタル情報を記録した記録媒体用ディスクを収納するための収納ケースに関するものである。」(第1頁4?6行)
(a-2)
「図1及び図2に示すように,本発明に係る収納ケース1は,保持板2とカバー体3とが,それぞれの一端側に設けられたヒンジ部2a,3aを介して互いに揺動開閉自在に連結されたもので,これら保持板2とカバー体3とによって,記録媒体用ディスク100の両面を覆う収納状態とできるようになっている。これら保持板2やカバー体3は,それぞれ透明樹脂や不透明樹脂等により形成されている。
保持板2には,その板面の略中央部に,ディスク100の中央孔101に嵌まる保持部5が設けられている。また保持板2には,前記保持部5を囲むリング形状となって隆起した中央載置部6と,更にこの中央載置部6の外側を囲むリング形状となって隆起した外周載置部7とが設けられている。
これら中央及び外周載置部6,7は,図3に示すように,ディスク100の記録面102側に対し,その記録領域(図示は省略するが,ディスク100の中心付近及び外周付近を除いたドーナツ状の領域となっている)を除く部分に当接可能となるものである。」(第8頁17行?第9頁1行)
(a-3)
「前記保持板2上面の周縁部には,所定厚みの周壁22が突出成形されている。また,前記保持板上面には,ディスク100の外周面を覆う部分に,所定厚みの円弧状壁23が突出形成されている。これらのリブ20,21,周壁22,及び,円弧状壁23は,保持板2の補強部材としての作用を発揮し,保持板2の厚みを薄くしている。」(第11頁26?28行)
(a-4)
「図14?16に示すように,前記保持板2には,前記係合凹部28に連通する厚み方向に貫通した連通孔29が設けられている。このような連通孔29を保持板2に設けることにより,保持板成形用金型を上下2分割の型とすることができる。」(第12頁10?11行)
(a-5)
「本発明の記録媒体用ディスクの収納ケースは,コンピュータ関連,ゲームソフト関連,音楽関連,映画ビデオ関連等のCDを収納するケースとして最適である。」(第18頁12?13行」)
(a-6)
図26を参照すると,中央載置部6及び外周載置部7は,円弧状壁23及び周壁22と同じく,保持板2の上面に設けられることが見てとれる。
以上のことを総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という)が記載されているといえる。
「音楽,映像及びコンピュータ等に使用される光学的に読み取られるデジタル情報を記録した記録媒体用ディスク100を収納するための収納ケースであって,透明樹脂により形成された保持板2とカバー体3とが連結されてなり,保持板2とカバー体3とによって記録媒体用ディスク100の両面を覆う収納状態とすることができるもので,保持板2の上面には,記録媒体用ディスク100の中央孔101に嵌まる保持部5と,保持部5を囲むリング形状となって隆起した中央載置部6と,中央載置部6の外側を囲むリング形状となって隆起した外周載置部7と,ディスク100の外周面を覆う部分に突出形成された円弧状壁23と,周縁部に突出成形された周壁22とが設けられ,中央載置部6と外周載置部7は,記録媒体用ディスク100の記録面102側に対し,その記録領域を除く部分に当接可能であり,少なくとも保持板2は金型を用いて成形される収納ケース。」

(b)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,特開平10-305891公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(b-1)
「【発明の属する技術分野】本発明は,例えばCD,CD-R,CD-ROM,DVD,DVD-VIDEO,DVD-AUDIO,DVD-ROM,DVD-R,DVD-RAM等の各種光ディスクを収納するディスクケースおよびそのパッケージング方法に関する。」(段落【0001】)
(b-2)
「また,ケース本体2,特に底板3を透明(無色透明)または半透明(有色透明)な樹脂材料で構成することもできる。この場合には,底板3の上面または下面のいずれか一方または両方が粗面化されているのが好ましい。これにより,外光が底板3に侵入し透過する際に,粗面により散乱されるので,光ディスクへの照射光量が減少し,前記と同様,光ディスクの記録面の保護等に寄与する。」(段落【0058】)
(b-3)
「このような蓋体8は,内部に装填されたブックレット等の視認性を確保するために,透明(無色透明)または半透明(有色透明)な樹脂材料で構成されているのが好ましい。」(段落【0068】)

(c)甲第3号証
請求人が甲第3号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,特開昭63-162454号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(c-1)
「前記凹凸面の形成及び白化の形成がブロー成形用金型内の粗面によって現出されている特許請求の範囲第(1)項記載のポリエステル樹脂容器。」(特許請求の範囲第2項)
(c-2)
「この本実施例はブロー成形用金型内を凹凸面に加工し,その凹凸面によって表面が凹凸面になったポリエステル樹脂容器であって,従来品に比べて約60%遮光されている。」(2頁左下欄下から2行?同頁右下欄2行)

(d)甲第4号証
請求人が甲第4号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,特開平10-310187号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(d-1)
「また,下ケース2の内面側であって開口部5との対向領域には,表面粗さを他の領域より粗くした粗面部6が形成されている。粗面部6は,金型面にシボ加工を施すことにより形成することができるが,例えば下ケース2の成形後に後加工で形成しても良い。」(段落【0011】)

(e)甲第5号証
請求人が甲第5号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,特開平7-148016号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(e-1)
「かかるシボ模様10は,容器本体4の成形と同時に,或いはその成形後に,公知の手法に従って形成されることとなるが,有利には,所定のシボ模様を成形金型の製品面に付与しておき,所定の合成樹脂材料の成形時に,成形金型のシボ面が得られる成形品の表面に転写されて,製品にシボ面が形成される手法が採用される。」(段落【0018】)
(e-2)
「この容器本体4の内面に形成されるシボ模様10におけるシボ(凹凸)の平均深さ(d)としては,一般に,10?100μm程度,望ましくは20?70μm程度とされる。」(段落【0020】)

(f)甲第6号証
請求人が甲第6号証として提出した,本件特許の出願前に頒布された刊行物である,特開平7-68599号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(f-1)
「表面にシボ面を形成するフロッピーデイスクのケースハーフ成形用金型において」(【請求項1】)
(f-2)
「そしてケースハーフ1の表面にはシボ加工が施されたラベル面2が形成されており,該ラベル面2にシボ加工を施すことによって図示しないラベルを容易に貼ることができるようになっている。」(段落【0002】)
(f-3)
「ところで,前記ケースハーフ1の成形用金型における前記ラベル面2を成形する部分にはシボ加工面が形成される。」(段落【0003】)

(g)甲第7号証
請求人が甲第7号証として提出した,本件特許の出願日よりも前の平成元年12月20日に発行されたと認められる刊行物である「モールダーのための射出成形品の設計?射出成型材料・射出成形機・射出金型・後加工?」(森隆著)の抜粋によれば,同刊行物には,次の事項が記載されている。
(g-1)
「そのため,ここに新たな形式により最近の技術の進歩を含めたプラスチック射出成形品の設計に関する基礎的に必要な条件をまとめて本書を執筆した。」(「まえがき」22?24行)
(g-2)
「射出成形品の表面をなし地にしたり,皮しぼ等のしぼ付けすることが要求されることがある。この場合,金型表面をこれ等の処理をすることが必要になる。」(82頁28?30行)

(h)甲第8号証
請求人が甲第8号証として提出した,本件特許の出願日よりも前の1994年11月27日に発行されたと認められる刊行物である「図解 プラスチック用語辞典(第2版)」(牧廣他編)の抜粋によれば,同刊行物には,次の事項が記載されている。
(h-1)
「しぼ加工 texturing 成形品しぼをつけるため,金型あるいは工具の表面にしぼ地を加工する作業」(338頁18?19行)

(i)甲第9号証の1,甲第9号証の2
請求人が甲第9号証の1及び甲第9号証の2として提出した,2002年3月18日に発行されたと認められる刊行物である「デジタル用語辞典(2002-2003年度版)」(日経BP社出版局編)の抜粋によれば,同刊行物には,次の事項が記載されている。
(i-1)
「コンパクトディスク[Compact Disc]直径12cmまたは8cmの光ディスクに,音楽などのデータをデジタル化して記録したもの。一般にCDと呼ばれる。・・・ディスク内部の小さな凹凸(ピット)にレーザー光線を当ててデータを読み取る。」(甲第9号証の1)
(i-2)
「CD-R[CD Recordable]1回限りの記録ができる書き込みCD。追記は可能だが,消去は不可能。1989年にソニーとオランダのフィリップスが発表した「オレンジ・ブック」で規定されている。有機色素をコーティングしたディスクにレーザー光を照射すると,ピットが形成され,情報が書き込まれる。書かれたCD-RはCD,CD-ROMと同等メディアとなり,それぞれの再生装置で読むことができる。」(甲第9号証の2)

(j)甲第10号証
請求人が甲第10号証として提出した,2008年1月11日に発行されたと認められる刊行物である「広辞苑(第6版)」の抜粋によれば,同刊行物には,次の事項が記載されている。
(j-1)
「《粗》ざらざらしてなめらかでない」

(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「記録媒体用ディスク100」,「保持板2」,「カバー体3」及び「保持板2の上面」は,それぞれ本件特許発明1の「情報記録ディスク(100)」,「第1ケース体(2)」,「第2ケース体(3)」及び「第1ケース体(2)の内面(2b)」に相当する。甲1発明は,保持板2の上面に設けられた中央載置部6と外周載置部7が,記録媒体用ディスク100の記録面102側に対し,その記録領域を除く部分に当接可能なものであるから,本件特許発明1の「情報記録ディスク(100)の情報記録面(102)側を覆う第1ケース体(2)」との要件を備え,また,甲1発明は,保持板2とカバー体3とによって記録媒体用ディスク100の両面を覆う収納状態とすることができるものであるから,本件特許発明1の「第1ケース体(2)との間に情報記録ディスク(100)を収納すべく前記情報記録面の反対面を覆う第2ケース体(3)とを有しており」との要件を備える。
したがって,両者は,「情報記録ディスク(100)の情報記録面(102)側を覆う第1ケース体(2)と,この第1ケース体(2)との間に情報記録ディスク(100)を収納すべく前記情報記録面の反対面を覆う第2ケース体(3)とを有しており,前記第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)は共に透明な材料によって形成され,前記第1ケース体(2)の内面(2b)に,情報記録ディスク(100)の中央孔(101)に嵌る保持部(5)と,この保持部(5)を囲むリング形状となって隆起した中央載置部(6)と,この中央載置部(6)を囲むリング形状となって隆起した外周載置部(7)と,情報記録ディスク(100)の外周面を覆う部分に突出形成した円弧状壁(23)と,周縁部に突出形成した周壁(22)とが設けられる情報記録ディスクの収納ケース。」の点で一致し,次の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1の収納ケースに収納される情報記録ディスク(100)は,情報記録面(102)側に有機色素が塗布されたものであり,第1ケース体(2)の内面(2b)又は外面(2c)には,該情報記録面(102)に当たる光を実質的に減少させるための微細な凹凸が形成されているのに対して,甲1発明の収納ケースに収納される記録媒体用ディスク100は,記録面102側に有機色素が塗布されたものであるか否か不明であり,保持板2の上面又は下面には微細な凹凸が形成されていない点。

相違点1について検討する。甲第2号証には,CD-R等の光ディスクを収納するディスクケースにおいて,ケース本体2の底板3を透明(無色透明)または半透明(有色透明)な樹脂材料で構成するとともに,底板3の上面または下面を粗面化することにより,外光の光ディスクへの照射光量を減少させ,光ディスクの記録面を保護することが記載されている(記載事項b-1及びb-2参照)。ここで,甲第9号証の2によれば,CD-Rは,書き込みが可能なコンパクトディスクであって,記録面に有機色素がコーティングされたものであることが,本件特許の出願前において技術常識として知られていたことが窺われる(記載事項i-2参照)。したがって,甲1の収納ケースを,記録面に有機色素がコーティングされたCD-Rの収納に適したものとなるよう,保持板2の上面又は下面を粗面化すること,すなわち相違点1は,甲第2号証及び技術常識を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明を対比すると,前記相違点1で相違するほか,次の点で相違する。
[相違点2]
本件特許発明2の第1ケース体(2)及び第2ケース体(3)は,共に有色透明材料によって形成されているのに対して,甲1発明の保持板2及びカバー体3は,透明材料によって形成されるものの,有色か無色かは特定されていない点。

相違点1については既に述べたので,相違点2について検討する。甲第2号証には,ケース本体2の底板3は,半透明(有色透明)な樹脂材料で構成することができること,そして,蓋体8は,内部の視認性を確保するために,半透明(有色透明)な樹脂材料で構成することが好ましいことが記載されている(記載事項b-2及びb-3参照)。この「底板3」及び「蓋体8」は,それぞれ本件特許発明2の「第1ケース体(2)」及び「第2ケース体(3)」に相当するものであるから,甲1発明の保持板2及びカバー体3を有色透明材料によって形成すること,すなわち相違点2は,甲第2号証を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。

(4)本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明を対比すると,前記相違点1で相違するほか,次の点で相違する。
[相違点3]
本件特許発明3は,第1ケース体(2)の内面(2b)又は外面(2c)に形成される微細な凹凸は,第1ケース体(2)を成形するための成形型に形成された凹凸が転写されたものであるのに対して,甲1発明は,保持板2の上面又は下面に微細な凹凸が形成されておらず,凹凸の形成方法とは関わりがない点。

相違点1については既に述べたので,相違点3について検討する。金型を用いて成形される製品の表面にシボ加工を施したり,微細な凹凸を形成して粗面とするために,金型に形成したシボ面や凹凸面を製品に転写することは,甲第3号証ないし甲第7号証に示されるように,従来からよく知られた周知技術である。甲1発明において,保持板2の上面又は下面を粗面化することは,甲第2号証及び技術常識を参酌することにより当業者が容易に想到し得たことは既に述べたところであり,甲1発明の保持板2は,金型を用いて成形されるものであるから,保持板2の上面又は下面を粗面化するに際して,金型に形成した凹凸面を製品に転写すること,すなわち相違点3は,上記周知技術を参酌することにより,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件特許発明1及び2は,甲第1号証,甲第2号証及び技術常識を参酌することにより,当業者が容易に発明することができたものであり,また,本件特許発明3は,甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証ないし甲第7号証に示される周知技術及び技術常識を参酌することにより,当業者が容易に発明することができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本件特許発明1ないし3はいずれも,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
そして,審判に関する費用については,特許法第162条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-05 
結審通知日 2009-10-07 
審決日 2009-10-20 
出願番号 特願平11-361505
審決分類 P 1 113・ 121- Z (B65D)
P 1 113・ 537- Z (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 鈴木 由紀夫
佐野 健治
登録日 2008-08-08 
登録番号 特許第4165980号(P4165980)
発明の名称 情報記録ディスクの収納ケース  
代理人 辻 淳子  
代理人 中村 理紗  
代理人 井▲崎▼ 康孝  
代理人 山崎 道雄  
代理人 野口 繁雄  
代理人 辻村 和彦  
代理人 片桐 務  
代理人 安田 幹雄  
代理人 国立 久  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 安田 敏雄  
代理人 堀家 和博  
代理人 井口 喜久治  
代理人 福田 あやこ  
代理人 藤野 睦子  
代理人 宇田 浩康  
代理人 森本 純  
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