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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800167 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E01C
管理番号 1208473
審判番号 無効2006-80054  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-31 
確定日 2009-10-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3583037号「コンクリートブロック及びその製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成19年2月26日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成19年(行ケ)第10125号平成19年7月13日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3583037号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
・平成11年 9月28日 出願
・平成16年 8月 6日 設定登録(特許第3583037号)
・平成18年 3月31日 無効審判請求(請求人 三菱マテリアル株式会社)
・平成18年 6月26日 答弁書及び訂正請求書(被請求人 株式会社四国総合研究所、東洋工業株式会社)
・平成18年 8月18日 弁駁書(請求人)
・平成18年11月10日 訂正拒絶理由通知
・平成18年12月14日 意見書(被請求人)
・平成19年 2月26日 審決
・平成19年 4月10日 審決取消訴訟提訴(平成19年(行ケ)第10125号)
・平成19年 5月16日 訂正審判(訂正2007-390061)請求(被請求人)
・平成19年 7月13日 審決取消決定(知財高裁)
・平成19年 8月 3日 訂正請求書(被請求人)
・平成19年 8月28日 訂正拒絶理由通知
・平成19年 9月29日 意見書、弁駁書(請求人)
・平成19年10月 3日 意見書(被請求人)
・平成19年12月13日 口頭審尋
・平成19年12月13日 意見書(被請求人)
・平成20年 1月21日 回答書(被請求人)
・平成20年 1月21日 回答書(請求人)
・平成20年 2月27日 無効理由通知書
・平成20年 3月31日 意見書(請求人)
・平成20年 3月31日 意見書、訂正請求取下書、訂正請求書(以上被請求人)
・平成20年 7月23日 弁駁書(請求人)
・平成20年 8月29日 答弁書(第2回)(被請求人)

2.訂正の可否
(1)訂正の内容
平成19年8月3日付けの訂正請求は、平成20年3月31日付けの訂正請求取下書によって取り下げられた。したがって、被請求人の求める訂正は、同日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することであり、その内容は、以下のとおりである。

訂正事項1.特許請求の範囲の請求項1および請求項2を削除し、請求項4を請求項1とする。これに伴い、請求項3を請求項2、請求項5を請求項3、請求項6を請求項4、請求項7を請求項5とする。

訂正事項2.特許請求の範囲の請求項1に記載された「光触媒として機能するNOx除去用の触媒」とあるのを「光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン」と訂正する。

訂正事項3.特許請求の範囲の請求項1に記載された「保持させた」とあるのを「バインダを用いずに保持させた」と訂正する。

訂正事項4.発明の名称および特許請求の範囲の請求項1-5の末尾に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。

訂正事項5.特許請求の範囲の請求項3及び4に記載された「触媒を含むスラリー」とあるのを「酸化チタンスラリー」(いずれも2カ所)と訂正する。

訂正事項6.明細書の段落0034の「また、この酸化チタンスラリーには、適宜のバインダーが添加されたものも使用することができる。」との記載を削除する。

訂正事項7.
(a)明細書の段落0001の「透水性を有するコンクリートブロック」とあるのを「透水性を有し、かつ、曲げ強さが大きい舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(b)明細書の段落0007に記載された「触媒を保持させたことを特徴とするコンクリートブロックである。」とあるのを「触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたことを特徴とする透水性を有するコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックは、透水係数が0.1cm/秒以上、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロックである。」と訂正する。
(c)明細書の段落0008に記載された「また、このコンクリートブロックは」とあるのを「また、このバインダを用いずに酸化チタンを保持させたコンクリートブロックは」と訂正する。
(d)明細書の段落0008に記載された「透水性を有するので、」を「透水係数が0.1cm/秒以上と十分に高いことにより、」と訂正するとともに、「雨水などに洗い流されて、」を「降水時などの雨水などにより安定層、路盤、路床、クッション層などの下層に洗い流されて、」と訂正する。
(e)明細書の段落0009及び0010の記載は、請求項2の削除に伴いその記載を削除する。
(f)明細書の段落0011に記載された「請求項3」を「請求項2」と訂正するとともに、末尾に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(g)明細書の段落0014、0015の記載を削除する。
(h)明細書の段落0016に記載された「請求項5」を「請求項3」と訂正するとともに、末尾に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(i)明細書の段落0016に記載された「触媒を含むスラリー」とあるのを「酸化チタンスラリー」(いずれも2カ所)と訂正する。
(j)明細書の段落0017に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(k)明細書の段落0018に記載された「請求項6」を「請求項4」と訂正するとともに、末尾に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(l)明細書の段落0018に記載された「触媒を含むスラリー」とあるのを「酸化チタンスラリー」(いずれも2カ所)と訂正する。
(m)明細書の段落0018の最下行に記載された「特徴とする」を「特徴とする請求項1」と訂正する。
(n)明細書の段落0019に記載された「請求項1に記載のコンクリートブロック」とあるのを「請求項1に記載の舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(o)明細書の段落0021に記載された「請求項7」を「請求項5」と訂正するとともに、「請求項6」を「請求項4」と訂正するとともに、末尾に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。
(p)明細書の段落0033に記載された「酸化チタンを含むスラリー」とあるのを「酸化チタンスラリー」(いずれも2カ所)と訂正する。
(q)明細書の段落0056に記載された「実施例3」とあるのを「参考例」と訂正する。
(r)明細書の段落0062に記載された「コンクリートブロック」とあるのを「舗装用コンクリートブロック」と訂正する。

(2)訂正の可否
訂正事項1.は、請求項1及び請求項2を削除し、請求項4を請求項1とすることに伴い、請求項3を請求項2、請求項5を請求項3、請求項6を請求項4、請求項7を請求項5と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項2.?5.はそれぞれ請求項に記載された「光触媒として機能するNOx除去用の触媒」、「保持させた」、「コンクリートブロック」、「触媒を含むスラリー」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6.及び7.は、上記特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

また、訂正事項1.?7.は、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正の可否のむすび
以上のとおり、上記訂正は、特許法第134の2第1項ただし書き及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項及び同条第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、本件発明1?5という)は、上記訂正が認められることから、平成20年3月31日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックは、透水係数が0.1cm/秒以上、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロック。
【請求項2】
前記骨材は、粒径5mm以上の粗骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロック。
【請求項3】
セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したコンクリートブロックに、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記コンクリートブロックを浸漬することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項4】
セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックまたは表面側を研磨して前記連通孔が表面に開口した平板状コンクリートブロックを形成し、この平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記平板状コンクリートブロックの表面を浸漬したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
前記バインダの使用量は、前記骨材100重量部に対して30重量部よりも少ない量で使用されていることを特徴とする請求項4に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。」

4.請求人の主張の概要
(1)請求人の特許無効の主張
請求人は、「特許第3583037号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、「本件特許の請求項1?請求項7に係る発明は、甲1第号証?甲5第号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。」と主張している。
また、平成20年7月23日付け弁駁書において、平成19年3月31日付け訂正請求が認められるとしてもなお無効理由を有する旨主張している。

(2)請求人の提出した証拠方法
請求人の提出した証拠方法は以下のとおり。

審判請求書
甲第1号証:特開平9-268509号公報
甲第2号証:野々山登、光触媒による自動車排気ガス浄化機能を持つ道路「フォトロード工法」の開発、資源環境対策、1999年、Vol.35、No.6、p.551-556
請求人は、審判請求書において、「『資源環境対策』 1999年Vol.35 No.6」を甲第2号証として提示しているが、請求人によって提出された書類からみて、より正確には上記箇所を意図していることは明らかである。
なお、請求人及び被請求人間で、甲第2号証の公知性について争われていないが、当審合議体で調査したところ、甲第2号証は資源環境対策1999年5月号に掲載されていることから、本件出願前に頒布された刊行物であることは明らかである。
甲第3号証:1999年3月23日付け日刊建設産業新聞
甲第4号証:特開平11-49556号公報
甲第5号証:コンクリート工学、1998年1月発行、Vol.36、No.1、p.33-35、「窒素酸化物(NOx)を吸収するコンクリート」
参考資料1:甲第1号証のコンクリートブロックについての試験結果

平成19年12月13日付け意見書
甲第6号証:特開平11-33413号公報
甲第7号証:インターロッキングブロック協会・インターロッキングブロック舗装研究委員会、「インターロッキングブロック舗装設計施工要領」、昭和62年10月、p.63-69

平成20年1月21日付け回答書
参考文献1:株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液に関するパンフレット
参考文献2:特許第2875993号公報

平成20年7月23日付け弁駁書
参考資料1:社団法人日本コンクリート工学協会、「コンクリート便覧(第二版)」、技報堂出版株式会社、1996年7月10日、p.725

5.被請求人の主張の概要
(1)被請求人の主張
被請求人は、平成18年6月26日付答弁書及び訂正請求書を提出し、その訂正された明細書の請求項1?7に係る発明について、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として、下記の参考資料1、2を提出するとともに、答弁書において、「本件発明1-7は、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては特許を無効にすることはできないので、本件審判の請求は、なり立たない。」旨主張している。
また、平成20年2月27日付け無効理由通知書に対応して、平成20年3月31日付けで訂正請求取下書を提出するとともに再度訂正請求書を提出した。その訂正された明細書の請求項1?5に係る発明について、「訂正事項1?6は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、また、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではなく、また、実質的な特許請求の範囲を拡張するものでもないので、特許法第134条の2第1項、及び第5項の規定を充足する。」旨主張するとともに、同日付け意見書で訂正後の本件発明1?5には無効理由がない旨主張している。
さらに、平成20年8月29日付け答弁書(第2回)においても、NOx除去機能を備えながら、所定の透水性と曲げ強さを備えたコンクリートブロックである点で訂正後の本件発明1?5には無効理由がない旨主張している。

(2)被請求人の提出した証拠方法
平成18年6月26日付け答弁書
参考資料1:本件発明と甲第1号証に記載するコンクリートブロックのNOx除去性能の比較
参考資料2:本件発明と甲第1号証に記載するコンクリートブロックの酸化チタンの使用量の比較

平成20年1月21日付け回答書
参考資料1:株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液に関するパンフレット
参考資料2:製品名TO-85に関する製品安全データシート 作成日平成10年12月1日
参考資料3:平成20年1月11日付け 元田中転写第二工場チタン事業部(役職部長)所属の藤井隆治が作成した酸化チタンの種類、主成分に関する証明書

平成20年3月31日付け意見書
参考資料1-1 特開平10-46512号公報
参考資料1-1 特開平10-96204号公報
参考資料2-1 特開2000-45207号公報
参考資料2-2 特開2000-45208号公報
参考資料2-3 特開2001-20208号公報

平成20年8月29日付け答弁書(第2回)
乙第1号証:日本規格協会、「JISハンドブック 11 土木I コンクリート製品 2008」、2008年7月、p.349、355-362

6.当審の判断
(1)本件発明
本件発明は、上記「3.本件発明」の項に示したように、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
本願出願前に頒布され、当審で引用された刊行物である特開平9-268509号公報(以下、「刊行物1」という。平成18年3月31日付け審判請求書に添付された甲第1号証。)には、以下の記載が図示とともにある。

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】コンクリート製基層上に、セメント100重量部、酸化チタン粉末5重量部?50重量部及び砂100重量部?700重量部からなる表面層を有することを特徴とする舗装用NOx 浄化ブロック。
【請求項2】表面層の厚みが15mm?2mmであることを特徴とする請求項1に記載の舗装用NOx 浄化ブロック。
【請求項3】砂の少なくとも1部分がガラス粒又は珪砂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の舗装用NOx 浄化ブロック。
【請求項4】表面層の表面が凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の舗装用NOx 浄化ブロック。
【請求項5】表面層の空隙率が10%?40%であり、透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の舗装用NOx 浄化ブロック。」

(b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、舗装用NOx 浄化ブロックに関し、更に詳しくは大気中のNOx を捕捉しかつその捕捉効率を上げかつ雨水による洗浄効率が向上し、更には良好な環境を得ることができると共に舗装用に供し得る耐すべり性並びに耐摩耗性を付与した舗装用NOx 浄化ブロックに関するものである。」

(c)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は、建築物の外壁に用いられるシートやパネルについて研究を続け、このパネルが舗装用に供せられる条件等を更に検討した結果、セメント、二酸化チタン粉末及び砂からなる混練物をコンクリート基材と組み合わせて舗装用ブロックとすることにより酸化チタンの触媒性能を損なわないばかりか効率よくNOx を除去することができ、舗装用に適する耐すべり性並びに耐摩耗性の優れたものが得られることを見出し、ここに本発明をなすに至った。したがって、本発明が解決しようとする第1の課題は、効率よくNOx を除去できると共に耐すべり性、耐久性に優れ、かつ自然環境上好ましい舗装用NOx 浄化ブロックを提供することにある。本発明が解決しようとする第2の課題は、NOx の除去効率を上げ、雨水による洗浄効果が促進されると共に耐すべり性、耐久性に優れ、かつ自然環境上好ましい舗装用NOx 浄化ブロックを提供することにある。」

(d)「【0006】 【発明の実施の形態】本発明において、舗装用とは、歩道や車道を含む意味であり、更に舗装用ブロックとは、歩道や車道に敷設されるブロックを意味する。本発明の舗装用NOx 浄化ブロックは、コンクリート製基層上に、セメント100重量部、酸化チタン粉末5重量部?50重量部及び砂100重量部?400重量部からなる表面層を有することを特徴とするもので、これによりコンクリート製基層であるので、耐久性を有すると共に更に酸化チタンの作用により除去されたNOx は硝酸イオンとなりコンクリート中のアルカリ成分と中和し安定化されるので、自然環境上好ましい。また砂を加えているので、酸化チタン粉末のすべり性を押さえ耐すべり性が得られる。更に表面層は、セメントと砂を含むので、耐すべり性及び耐久性に優れており十分舗装用に供されるものである。更にまた舗装用NOx 浄化ブロックの表面層の空隙率が10%?40%であり、透水係数が0.01cm/sec以上とすることにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができ、また透水率が大きいので、雨水による洗浄効果の増加したものが得られる。したがって経済効率に優れた舗装用NOx 浄化ブロックが得られる。
【0007】本発明において表面層の厚みは15mm?2mmであり、好ましくは10mm?2mmである。本発明において、表面層の厚みが15mmを越えると太陽光が浸透しにくくなりチタン層が無駄になる。またその厚みが2mm未満ではNOxの浄化効率が悪くなると共に耐久性が劣る。本発明において、砂として、光透過性の高いガラス粒や珪砂を用いる場合は、十分な光が奥深くまで浸透しNOx の浄化効率を良くする。また空隙率の大きい表面層を形成する場合には、できるだけ均一粒度の砂を使用し、砂の表面にセメントと酸化チタンの混合膜が形成される構造とし、これらの砂同士が被覆されたセメントと酸化チタンの混合物により結合されることが好ましい。このように構成することにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができので、NOx 浄化効率が向上し、かつ透水率大きいので、洗浄効果が増加する。砂の粒度は1.2?5mmが好ましい。砂に対して結合材であるセメントと酸化チタン粉末を多くし過ぎると空隙率が低下する。したがって、空隙率は、10%?40%が有効であり、更に15%?30%が好ましい。空隙率が、10%未満では十分な有効表面積が得られずNOx 浄化効率が悪い。空隙率が、40%を越えると、NOx 浄化効率は向上するが、強度が低下し舗装用ブロックとしての耐久性が低下する。空隙率を10%?40%の範囲にするには、砂と結合材との比率は、砂に対して結合材は18?100重量%の範囲が好ましい。
【0008】更に本発明おいては、表面層の下に光反射層を設けることによりNOx の浄化効率を上げることができる。この光反射層としては、セメントに二酸化チタン等の白色粒子又は白色顔料等を混合したものが好ましい。更に表面層は、その表面を凹凸にすることにより光の吸収性と大気との接触面積を増し、かつ耐すべり性を向上させることができる。この凹凸の形成は、成形時の型枠に凹凸を付けるかあるいは研削によっても可能である。研削方法はダイヤモンドブレードやその他の工具あるいはサンドブラスト法等適宜の方法でよい。この凹凸形状としては、ジグザグ型、波型又は台形型等が挙げられるが、他の凹凸形状や適宜の模様でも前記効果を損なわない限り用いることができる。凹凸の深さは2mm?7mmが好ましく、山と山との長さは4mm?10mmが好ましい。
【0009】本発明に用いられる表面層の酸化チタンの割合は、酸化チタンの種類、粒度等によって異なるが、セメント100重量部に対して、酸化チタン粉末5重量部?50重量部であり、好ましくは酸化チタン粉末10重量部?50重量部が用いられる。更に好ましくは酸化チタン粉末20重量部?50重量部である。本発明に用いられる表面層の成分割合がセメント100重量部に対して酸化チタン粉末は、5重量部より少ないとNOx の浄化効率が良くなく、50重量部を越えると耐すべり性が悪くなるばかりか耐摩耗性も劣る。またセメント100重量部に対して砂100重量部より少ないと耐すべり性並びに耐摩耗性が減少し、400重量部を越えると相対的に酸化チタン粉末が少なくなりNOx の浄化効率が劣る。本発明において好ましい表面層の成分割合は、セメント100重量部に対して酸化チタン粉末10重量部?50重量部、更に好ましくは20重量部?50重量部、及び砂50重量部?300重量部である。本発明に用いられる舗装用NOx 浄化ブロックは、適宜の方法で製造することができ、例えば型枠内にコンクリート混練物を投入して平にした後、表面層形成混練物をその上に投入して積層成形する方法(特開平3-169901号公報第1頁左欄14行?19行参照)が挙げられる。この他基礎コンクリート部分を成形硬化させ、別に表層部分を成形硬化させて作り、その後両者を合体させることにより製造することも可能であるが、好ましくは前記方法がよい。
【0010】(作用)本発明において、ブロックとしてコンクリート製基層を用いることにより耐久性を得ると共にNOx から得られた硝酸イオンがコンクリート中のアルカリ成分と中和する。また砂としてガラスや珪砂を用いることにより耐すべり性や耐摩耗性が得られると共に良好な光透過性が得られる。更に表面に凹凸を設けることにより全方向からの光の侵入を可能にする。更にまた表面層の空隙率が10%?40%であり、透水係数が0.01cm/sec以上とすることにより有効表面積が増加して光触媒の効率を上げることができ、また透水率が大きくなるので、洗浄効果が増加する。」

(e)「【0011】 【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】〔実施例1〕コンクリート基層用混練物として、ポルトランドセメント100重量部、水31重量部、砕石190重量部、砂240重量部を配合し、混練する。一方、表面層用混練物として、砂、酸化チタン20重量部及びポルトランドセメント80重量部を配合し、混練する。ここで、砂のセメントに対する割合を表1に示す値にし、試料1?4を作製した。これらの試料1?4を用いて4種類の舗装用ブロックを次のように製造した。10×20cmの型枠にコンクリート基層用混練物を入れ、振動成形した後、その上に表面層用混練物を投入し、型板を置いた後、同様に加圧振動成形(加圧力0.25kg/cm2 、振動数3140r.p.m.振幅1.4mm、加圧振動時間3秒間)を行い、養生した後、縦20cm、横10cm、高さ8cmの試験体1?4が得られた。図1には得られたブロックの斜視図が示されている。このブロック1は、基層2に表面層3を有し、その表面層3の厚みは7mmである。得られた結果を表1に示す。」

(f)「【0018】〔実施例5〕実施例4に記載の表面層の表面をサンドブラスト法により粗面とした以外は、実施例4と同様にして試験体10を得た。得られた試験体10は、すべり抵抗性に優れていると共に光透過性にも優れ、効率的にNOx を除去することができた。
【0019】〔実施例6〕コンクリート基層用混練物として、ポルトランドセメント100重量部、水25重量部、砕石300重量部を配合し混練する。一方、表面層用混練物として、砕砂600重量部、酸化チタン30重量部及びポルトランドセメント100重量部、水25重量部を混合し混練する。10×20cmの型枠にコンクリート基層混練り物を入れ、振動成形した後、その上に表面層用混練り物を投入し、型板を置いた後、同様に加圧振動成形を行った。養生して舗装用ブロックを得た。得られたブロックは、基層7cm、表面層1cmの厚みであり、基層の空隙率は26%、表面層の空隙率は20%、透水性試験値は、0.10cm/secであり、更にすべり抵抗性87BPNと優れていると共に洗浄効果にも優れ、効率的にNOx を除去することができた。」

(g)上記(f)の〔実施例6〕において、表面層用混練物のうち、砕砂の粒度について明記されていないが、上記(d)の【0007】において、「砂の粒度は1.2mm?5mmが好ましい。」と記載されているから、砕砂として1.2mm?5mmのものが想定できる。

よって、上記(a)?(g)によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「コンクリート製基層と表面層からなる舗装用NOx 浄化ブロックであって、コンクリート基層用混練物として、ポルトランドセメント、水、砕石を配合し、表面層用混練物として、砂の粒度を1.2mm?5mmとした砕砂、酸化チタン及びポルトランドセメント、水を配合することで各層を形成した、基層の空隙率は26%、表面層の空隙率は20%、透水性試験値は、0.10cm/secである舗装用NOx 浄化ブロック。」(以下、「刊行物1記載発明」という。)

「コンクリート製基層と表面層からなる舗装用NOx 浄化ブロックの製造方法であって、コンクリート基層用混練物として、ポルトランドセメント、水、砕石を配合し混練し、表面層用混練物として、砂の粒度を1.2mm?5mmとした砕砂、酸化チタン及びポルトランドセメント、水を配合し混練し、コンクリート基層混練り物の上に表面層用混練り物を投入することで各層を形成する、基層の空隙率は26%、表面層の空隙率は20%、透水性試験値は、0.10cm/secである舗装用NOx 浄化ブロックの製造方法。」(以下、「刊行物1記載方法発明」という。)

(2-2)刊行物2
本願出願前に頒布され、当審で引用された刊行物である「野々山登、光触媒による自動車排気ガス浄化機能を持つ道路「フォトロード工法」の開発、資源環境対策、1999年、Vol.35、No.6、p.551-556」(以下、「刊行物2」という。平成18年3月31日付け審判請求書に添付された甲第2号証。)には、以下の記載が図示とともにある。

(h)「はじめに
近年の研究により,光触媒は太陽光エネルギーを利用して窒素酸化物(NOx)等の大気汚染物質を酸化して除去する働きがあることが解明されている。また光触媒活性の高い製品が開発されており,都心での自動車排気ガス等の新しい処理技術として期待されている。
これまでに道路用ガードレールや道路側壁,遮音壁などに光触媒を含む材料を用いることにより,大気浄化および汚れ防止効果を活用する建材および工法が開発されている。
通常,自動車排気ガスの処理対策として光触媒を適用する場合,側壁等の道路周辺に比べ発生源に近く汚染物質が拡散する前に接触する道路表面に光触媒を固定する方が効果的に働くことがシミュレーションによりわかっている。しかし,これまで道路面に光触媒を固定する方法は,走行する自動車タイヤとの摩擦に耐えられる耐摩耗性および光触媒による空気浄化作用を維持することができる固定化剤の開発などの問題点があった。
今回開発した「フォトロード工法」は,道路表面に光触媒を含む特殊なセメントで固定することにより,耐摩耗性および高い光触媒作用の維持が可能となりかつ道路表面が比較的凹凸であり,低騒音性および雨水の排水性を有する高機能舗装を下地とすることにより効果的に道路表面で空気浄化を行うものである。」(551頁左欄1行?右欄17行)

(i)「(3) 光触媒による自動車排気ガス処理機能
「フォトロード工法」は従来の高機能舗装に光触媒による空気浄化能力を持たせたもので,超高機能舗装ともいえるものである。
高機能舗装は通常,骨材として粒径が13mm以下の6号砕石を用い空隙率を20%以上とすることにより道路表面が凹凸状となっている。排水性を持たせるためには表面が凹凸であるほか,一定の割合で連続する空隙が必要である。「フォトロード工法」では,光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングすることにより施工する。高機能舗装表面に固定するSTコートの膜厚は0.3?0.5mm程度である。
・・・・・
・表面が凸凹のため空気浄化能力が大きく,自動車走行による光触媒の摩耗が少ない。
・・・・・
・自動車排気ガスの発生源の近くで浄化するため効果的な処理ができる。
・空気浄化作用のほか,自動車騒音の低減作用(低騒音性)および,雨水を透過する作用(排水性)がある。」(552頁右欄14行?553頁左欄5行)

(j)「「フォトロード工法」で使用している光触媒を含有するセメント系固化剤(STコート)では一酸化窒素を光触媒により硝酸体に速やかに酸化して硝酸カルシウムとして固定され、雨水により洗い流されることが確認されている。」(555頁左欄24行?右欄4行)

551頁の図面から以下の事項が見て取れる。
(k)高機能舗装の表層部の拡大図があり、骨材のまわりに光触媒が付着されていること。

(2-3)刊行物3
本願出願前に頒布され、当審で引用された刊行物である特開平11-33413号公報(以下、「刊行物3」という。請求人が提出した平成19年12月13日付け意見書に添付された甲第6号証。)には、以下の記載が図示とともにある。

(l)「【請求項1】酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成し、ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔体表面に含浸させ、乾燥することを特徴とする大気浄化用構造物の製造方法。」

(m)「【0004】 そこで、本発明者等は、前記の欠点乃至問題点を更に詳しく検討した結果、構造物の表面に被覆や積層するのではなくその表面に、均一に分散された酸化チタン含有スラリーを含浸させることにより酸化チタンが強固に固定され、長期間触媒効果を有する大気浄化用構造物が得られることを見出し、本発明はこの知見に基づいてなされたものである。したがって、本発明が解決しようとする第1の課題は、含浸性に優れた酸化チタン含有スラリーを使用する大気浄化用構造物の製造方法を提供することにある。また本発明が解決しようとする第2の課題は、酸化チタンが強固に固定され、長期間触媒効果が維持される大気浄化用構造物の製造方法を提供することにある。」

(n)「【0010】 本発明において、大気浄化用構造物を構成する材料は、含浸性を有するものであれば特に限定されるものではなく、コンクリート、モルタル、レンガ、セラミックス板、スレート、珪酸カルシウム板、押出成形板(例えば、押出成形セメント板等)、吸音板(特にポーラスコンクリート製)等の無機系多孔質体であればよい。この多孔質体の空隙径は、10?200nmであることが好ましい。
【0011】 本発明の大気浄化用構造物の製造方法は、酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成し、ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔質体表面に含浸させ、乾燥することを特徴とするものであるが、酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成するには、酸化チタン粒子と水とを十分混合撹拌することにより均一に分散された酸化チタン含有スラリーが得られる。水に対する酸化チタン粒子の割合は、20重量%?60重量%であり、好ましくは30重量%?50重量%である。」

(o)「【0016】 また本発明では、無機系多孔質体表面に酸化チタン含有スラリーを含浸させる手段としては、刷毛やロールによる塗布、デップ塗布、流し込み、吹き付け、ブレード塗布、型枠成形法、押出成形法、ブレス成形法等の中から適宜の方法を選択して被覆を形成することができる。またこの際、超音波振動又は熱振動を与えることもでき、超音波振動を与える場合には、塗布前、塗布中及び塗布後のいずれの時期に超音波振動を与えてもよく、塗布前とは塗布前から振動を与え塗布後含浸が終了するまでの間をいい、また塗布中とは塗布直前から振動を与え塗布後含浸が終了するまでの間をいい、更に塗布後とは塗布直後から含浸が終了するまでの間をいう。更に本発明では、裏面より真空吸引手段を用いて吸引することにより含浸を促進することができる。また既存建築物等の外壁の場合には、刷毛やロールによる塗布、吹き付け法を用いるのが好ましい。
【0017】 また超音波振動は、従来公知の装置を用いて通常の方法で行えばよく、また熱振動は、例えば赤外線、遠赤外線等を使用して通常の方法で与えればよい。本発明では、酸化チタン含有スラリーを含浸後、乾燥するが、この乾燥は、天日、熱風、電熱等による乾燥手段が好ましい。この乾燥時間は、2日以内で十分乾燥され、好ましくは30分?24時間である。
【0018】 本発明の大気浄化用構造物の製造方法により得られた構造物には、各種のものがあり、特に限定されるものではないが、建材、舗装用ブロック、舗装構造物、吸音部材等がある。また大気浄化用構造物における大気浄化の対称となる物質としては、NOxのほか、SOx、その他の有害物質(例えば、メルカプタン、硫化水素、アンモニア、アミン類、アルデヒド類等)が挙げられる。本発明の大気浄化用構造物の製造する際、酸化チタン含有スラリー中に、更に他の添加剤を加えてもよく、例えば活性炭、ゼオライト、マガディアイト、ペタライト、粘土等の吸着材料のうちの1種以上を加えることにより大気浄化性能を向上させることができる。」

(p)「【0020】〔実施例1〕酸化チタン粉末(アナターゼ型、比表面積200m^(2) /g、粒径50μm)50重量部、ポイズ521、花王(株)製(ポリアクリル系分散剤)0.1重量部、シリカゾル(スノーテックス20、コロイダルシリカ、平均粒子径10?20nm、透明膠質液、日産化学株式会社製)20重量部、水50重量部を撹拌混合し、その後超音波分散機で10分間分散処理して均一に分散された酸化チタン含有スラリーを製造した。ついで、このスラリーをコンクリート多孔質体の表面に300g/m^(2)塗布し、100℃の熱風を1時間吹き付けて乾燥し、試験体を得た。この試験体を図1に示されるNOx浄化性能測定装置を用いて、以下のNOx浄化性能試験を行ない、NOx浄化率を測定した。」

(q)「【0023】〔実施例2?8〕実施例1に記載の無機系多孔質体の種類、酸化チタンの種類、成分比率、スラリー混合方法を、表1に示すものに代えた以外は、実施例1と同様にして試験体を作製し、実施例1と同様にして試験した。得られた結果を表1に示す。」

(r)【0024】【表1】からは、実施例7、8の酸化チタン含有スラリーが、酸化チタン粉末(アナターゼ型、比表面積200m^(2)/g、粒径50μm)50重量部、水50重量部からなることが看取できる。

(s)「【0028】 【発明の効果】 本発明の大気浄化用構造物の製造方法は、酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成し、ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔質体表面に含浸させ、乾燥することを特徴とするもので、このように含浸させることにより、構造物の材料の多孔質体組織中に埋め込まれて固定され、長期間にわたり大気浄化性能を保持することができる。また本発明の製造方法において、酸化チタン含有スラリーに分散剤を添加し、超音波処理することにより、酸化チタンを水中に均一に分散することができる。更に本発明の製造方法では、酸化チタン含有スラリーに、固定化剤を添加することにより、多孔体の空隙中でいっそう強固に固定される。」

(2-4)刊行物4
本願出願前に頒布され、当審で引用された刊行物である特許第2875933号公報(以下、「刊行物4」という。請求人が提出した平成20年1月21日付け回答書に添付された参考文献2。)には、以下の記載が図示とともにある。

(t)「【請求項1】 アナターゼ分散液において、表面をペルオキソ基で修飾したアナターゼ微粒子が、水中に分散していることを特徴とするアナターゼ分散液。」

(u)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、基体上に酸化チタンを含む保護被膜膜、光触媒被膜等の形成に使用することが可能な安定なアナターゼ分散液に関するものである。」

(v)「【0010】 本発明のアナターゼ分散液は、粒径50nm以下の微細なアナターゼ微粒子からなるものであり、アナターゼ微粒子の粒径が50nmよりも大きくなると、微粒子に作用する重力による効果が大きくなり、沈降しやすくなる。このアナターゼ分散液は、常温において非常に安定で、溶媒である水以外には特別な助剤を必要とせず、有機物やハロゲンなどを含まない。また、アナターゼ分散液は、ほぼ中性であり、酸によって腐食を受けやすい金属や建材等の材料にも利用できる。さらに、基体上に塗布して酸化チタン膜を形成する場合には、基体に対する密着性が良く、低温で緻密化し易い特徴がある。したがって、塗布乾燥あるいは加熱処理のみにより、従来より低い温度でアナターゼ膜を形成でき、乾燥のみでも十分実用に耐えるものを得ることができる。」

(w)「【0014】 本発明のアナターゼ分散液は、チタン以外に酸素と水素しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変性する場合に水と酸素しか発生しないため、従来のアナターゼ分散液の製造方法では、混入を避けることができなかった炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、従来より低温でも比較的密度の高い結晶性のアナターゼ膜を作製することができる。また、pHは中性なので、使用時の人体への影響や基体の腐食などの問題を考慮する必要がない。さらに、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐える。」

(x)「【0023】 【発明の効果】 本発明のアナターゼ分散液は長期安定であり、従来よりも高密度の密着性に優れたアナターゼ膜を低温で作製可能であり、焼成によって有害な副生成物が出ず、中性なので取り扱いやすく、種々の基体上に塗布することができる。」

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
(3-1-1)本件発明1における「酸化チタンをバインダーを用いずに保持させた」についての検討
本件発明1に記載された「酸化チタンをバインダーを用いずに保持させた」点について以下検討する。

本件明細書の段落【0034】、【0044】には、透水性コンクリートブロックの実施例として、以下の記載がある。

「【0034】 酸化チタンスラリーは、酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である。このスラリー中の酸化チタン濃度としては、数%程度からその1/10程度が望ましい。その溶液中(スラリー中)の酸化チタン濃度を変化させることによって、コンクリートブロックへの酸化チタンが付着する量を容易に調節することができる。このコンクリートブロックへの酸化チタンの保持量は、単位表面積あたり数十g/m^(2)?数百g/m^(2)程度でよい。」
「【0044】 この透水性コンクリートブロックの一表面に酸化チタンの塗布量が100g/m^(2)となるように酸化チタンスラリー液(株式会社田中転写製、固形分濃度0.85%)を噴霧し、自然乾燥し、本発明に従うNOx除去能力のある透水ブロックを得た。」

この記載によれば、本件発明1に記載された「酸化チタンをバインダーを用いずに保持させた」とは、「酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリー液(株式会社田中転写製、固形分濃度0.85%)を噴霧し、自然乾燥させることにより付着させる」ことを含んでいるものと認められる。

平成19年12月13日に行った口頭審尋「本件明細書に記載される実施例1に使われている株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液の成分は、どのようなものか」に対し、 平成20年1月21日付け回答書において、請求人、被請求人双方より、株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液に関するパンフレットが提出された(請求人:参考文献1、被請求人:参考資料1)。
これらより、本件明細書【0044】に記載された実施例1に使われている株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液は、バインダーを含まず、ペルオキソチタン酸と二酸化チタンの混合水溶液であって、佐賀県が特許第2875993号(上記刊行物4)として特許権を有する発明に係るものであることが認められる。

以上より、本件発明1は、
「セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに付着力のある水溶液を用い、自然乾燥により保持させたコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックは、透水係数が0.1cm/秒以上、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロック。」と認定できる。

(3-1-2)刊行物1記載発明と本件発明1との対比
(i)刊行物1記載発明の「酸化チタン」、「舗装用NOx浄化ブロック」は、それぞれ本件発明1の「NOx除去用の触媒としての酸化チタン」、「舗装用コンクリートブロック」に相当することは明らかである。
(ii)「【0019】〔実施例6〕 ・・・ 養生して舗装用ブロックを得た。得られたブロックは、基層7cm、表面層1cmの厚みであり、基層の空隙率は26%、表面層の空隙率は20%、透水性試験値は、0.10cm/secであり、更にすべり抵抗性87BPNと優れていると共に洗浄効果にも優れ、効率的にNOx を除去することができた。」(摘記2.(1)(f))の記載からみて、刊行物1記載発明は本件発明1の「骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロック」との技術事項を有することは明らかである。
(iii)上記(ii)の本件発明1の「骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロック」との技術事項を有する点、及び「【0007】 ・・・ また空隙率の大きい表面層を形成する場合には、できるだけ均一粒度の砂を使用し、砂の表面にセメントと酸化チタンの混合膜が形成される構造とし、これらの砂同士が被覆されたセメントと酸化チタンの混合物により結合されることが好ましい。このように構成することにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができので、NOx 浄化効率が向上し、かつ透水率大きいので、洗浄効果が増加する。砂の粒度は1.2?5mmが好ましい。砂に対して結合材であるセメントと酸化チタン粉末を多くし過ぎると空隙率が低下する。」(摘記2.(1)(d))の記載からみて、刊行物1記載発明は本件発明1の「コンクリートブロックの表層付近に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを付着させた」との技術事項を有することは明らかである。
したがって、両者は、
「セメントを主バインダとして骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを付着させた透水係数が0.1cm/秒以上の舗装用コンクリートブロック」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本件発明1では、「粒径1mm以上の骨材同士を接合」していると特定されているのに対し、刊行物1記載発明では、表面層の骨材である砂の粒度が1.2mm?5mmであるものの基層の骨材の粒径については明らかでなく前記特定を有しない点。

相違点2:
本件発明1では、「コンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを、バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い、自然乾燥により」付着させたと特定されているのに対し、刊行物1記載発明では、前記特定を有しない点。

相違点3:
本件発明1では、コンクリートブロックは、「JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板である」と特定されているのに対し、刊行物1記載発明では、前記特定を有しない点。

(3-1-3)本件発明1についての判断
上記相違点1につき検討する。
刊行物1記載発明において、表面層用骨材についてではあるが、「【0007】 ・・・ 砂の粒度は1.2?5mmが好ましい。砂に対して結合材であるセメントと酸化チタン粉末を多くし過ぎると空隙率が低下する。したがって、空隙率は、10%?40%が有効であり、更に15%?30%が好ましい。空隙率が、10%未満では十分な有効表面積が得られずNOx 浄化効率が悪い。」(摘記2.(1)(d))と記載されている。本件発明1の骨材の粒径についての規定は、コンクリートブロック全体についてのものであるか、あるいはコンクリートブロックの表面層部分についての規定であるか、必ずしも明らかでない。ここで、表面層部分のみについての規定であるとすれば、刊行物1記載発明における砂の粒度を1.2mm?5mmとする規定と相違しない。一方、コンクリートブロック全体についてのものであるとしても、骨材の粒径が大きい方が大きな空隙を形成できることは明らかである。すると、刊行物1記載発明においても基層は表面層と同程度の空隙を有しているから(摘記2.(1)(f)【0019】)、空隙率を考慮しつつ、基層についても粒径1mm程度以上の骨材を用いることは格別なことではなく、相違点1に係る構成と替えることは、当業者が必要に応じて、適宜、設定し得る設計事項にすぎない。

上記相違点2につき検討する。
刊行物2においては、「光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングすることにより施工」(摘記2.(2)(i))と記載されているように、舗装形成後に高機能舗装の表面の空隙にNOx除去用の触媒としての酸化チタンを噴霧することで、骨材のまわりに光触媒がコーティングされ、空隙部に光触媒が付着されている(摘記2.(2)(k))。
また、刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、共に透水性を有するNOx除去用舗装という同一の技術分野に属し、しかも、舗装の表層部にNOx除去用の触媒としての酸化チタンを付着させる点でも一致している。すると、触媒の付着方法として、刊行物2に記載された方法を刊行物1記載発明に適用し、本件発明1のようにNOx除去用の触媒としての酸化チタンを骨材間に形成された空隙に付着させることは、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
また、酸化チタンを含む液を噴霧する際に、どのような液を選択するかは、必要に応じ適宜選択し得るものであり、酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを噴霧し、自然乾燥させて付着させる点は、刊行物3、4に記載されているから、酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを選択し、「光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを、自然乾燥させることにより付着させる」ことも、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
さらに、株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液は、実施例1に使われ、本件出願前製造販売されていたことは明らかであり、本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明といえるから、酸化チタンを含む液として、この酸化チタンスラリー液を使用することも当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

上記相違点3につき検討する。
請求人が平成20年7月23日付け弁駁書にて提出した参考資料1に明らかなように、舗装用コンクリート平板において「長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板である」とすることは、JISA5304(1994)の規格そのものであり、また、コンクリートブロックにある程度の強度が要求されることは自明なことでもあるので、コンクリートブロックをJISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さの下限値を12kNと設定することは、当業者が必要に応じて、適宜、選択しうる設計事項にすぎない。

以上のとおり、本件発明1は、刊行物1?4に記載された事項、または刊行物1、2に記載された事項及び本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

また、本件発明1によってもたらされる効果は、刊行物1?4に記載された事項が当然に奏する程度、または刊行物1、2に記載された事項及び本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明が当然に奏する程度であり、格別のものとはいえない。

(3-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「粒径1mm以上の骨材」を「粒径5mm以上の粗骨材を主体とする」ことと限定するものであるが、例えば特開平11-49556号公報(平成18年3月31日付け審判請求書に添付された甲第4号証)には、【請求項1】に、「表層部と基層部とからなる2層型平板であって、該表層部は、粒径2.5?10mmの骨材を ・・・ 該基層部は、2.5?5mmの骨材をセメントペーストで被覆してなる粒体同士が、該セメントペースト部分を介して結合されているものであり、・・・ 2層型高機能透水平板。」と記載されているように、透水性コンクリートブロックの技術分野において、粒径5mm以上の骨材を用いることは周知である。そして、骨材の粒径が大きい方が大きな空隙を形成できることは自明のことであり、要求される空隙にあわせて、粒径の下限値を5mm以上と定めることは、当業者が必要に応じて、適宜、選択しうる設計事項にすぎない。

(3-3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の「透水性を有するコンクリートブロック」を製造するにあたって、「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記コンクリートブロックを浸漬する」ことを限定する製造方法に関するものである。
そして、刊行物2には「・・・ 光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングすることにより施工する。・・・」(摘記2.(2)(b))と記載されており、刊行物2の「光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤」が本件発明3の「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー」に相当することは明らかであるので、刊行物2に記載された発明は、本件発明3の「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧する」との技術事項を有しているということができる。

(3-4)本件発明4について
(3-4-1)刊行物1記載方法発明と本件発明4との対比
本件発明4は、選択的記載があるので、選択的記載の一部を除いた、
「セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックを形成し、この平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの製造方法。」
について、以下検討する。

(i)刊行物1記載方法発明の「酸化チタン」、「舗装用NOx浄化ブロック」は、それぞれ本件発明4の「NOx除去用の酸化チタン」、「舗装用コンクリートブロック」に相当することは明らかである。
(ii)「【0019】〔実施例6〕 ・・・ 養生して舗装用ブロックを得た。得られたブロックは、基層7cm、表面層1cmの厚みであり、基層の空隙率は26%、表面層の空隙率は20%、透水性試験値は、0.10cm/secであり、更にすべり抵抗性87BPNと優れていると共に洗浄効果にも優れ、効率的にNOx を除去することができた。」(摘記2.(1)(f))の記載からみて、刊行物1記載方法発明は本件発明4の「骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロック」との技術事項を有することは明らかである。
(iii)上記(ii)(a-2)の本件発明4の「骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロック」との技術事項を有する点、及び「【0007】 ・・・ また空隙率の大きい表面層を形成する場合には、できるだけ均一粒度の砂を使用し、砂の表面にセメントと酸化チタンの混合膜が形成される構造とし、これらの砂同士が被覆されたセメントと酸化チタンの混合物により結合されることが好ましい。このように構成することにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができので、NOx浄化効率が向上し、かつ透水率大きいので、洗浄効果が増加する。砂の粒度は1.2?5mmが好ましい。砂に対して結合材であるセメントと酸化チタン粉末を多くし過ぎると空隙率が低下する。」(摘記2.(1)(d))の記載からみて、刊行物1記載方法発明は本件発明4の「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタン」を有するコンクリートブロックとの技術事項を有することは明らかである。

したがって、両者は、
「セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックを形成し、この平板状コンクリートブロックが、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンを有する舗装用コンクリートブロックの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本件発明4では、「平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥する」のに対し、刊行物1記載方法発明では、表面層用混練物に酸化チタン粉末を配合したとされるのみである点。

(3-4-2)本件発明4についての判断
上記相違点につき検討すると、刊行物2には、「・・・ 光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングすることにより施工する。・・・」(摘記2.(2)(b))と記載されており、刊行物2の「光触媒(酸化チタン:TiO_(2))を含むセメント系固化剤」が本件発明4の「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー」に相当することは明らかであるので、刊行物2に記載された事項は、本件発明4の「平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥する」との技術事項を有しているということができる。そして、刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、共に透水性を有するNOx除去用舗装という同一の技術分野に属し、しかも、舗装の表層部にNOx除去用の触媒を保持させる点でも一致しているので、触媒の施工方法として、刊行物2に記載された方法を刊行物1記載方法発明に適用し、本件発明4のように平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥することは、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
また、本件発明4によってもたらされる効果は、刊行物1、2に記載された事項が当然に奏する程度のものであり、格別のものとはいえない。
なお、酸化チタンスラリーがバインダーを含まないものと解釈したとしても、バインダーを含まない酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥して保持させる点については、上記刊行物3、4に記載されているから、バインダーを含まない酸化チタンスラリーであったとしても、同様に当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
さらに、株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液は、実施例1に使われ、本件出願前製造販売されていたことは明らかであり、本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明といえるから、酸化チタンを含む液として、この酸化チタンスラリー液を使用することも当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

(3-5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明4の「バインダ」の使用量を「骨材100重量部に対して30重量部よりも少ない量で使用されていること」と限定する製造方法に関するものである。そして、刊行物1には「【請求項1】コンクリート製基層上に、セメント100重量部、酸化チタン粉末5重量部?50重量部及び砂100重量部?700重量部からなる表面層を有する・・・」(摘記2.(1)(a))と記載されており、表面層に関するものではあるが、本件発明5の数値限定の範囲を含んでおり、また、骨材に対するバインダの量が多すぎると空隙が形成しにくいことは自明であるので、要求される空隙にあわせ使用するバインダの上限を決定することは、当業者が必要に応じて、適宜、選択しうる設計事項にすぎない。

7.むすび
以上のとおり、本件発明1?5は、刊行物1?4に記載された事項、本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。

審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
舗装用コンクリートブロック及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたコンクリートブロックであって、
前記コンクリートブロックは、透水係数が0.1cm/秒以上、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロック。
【請求項2】
前記骨材は、粒径5mm以上の粗骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロック。
【請求項3】
セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したコンクリートブロックに、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記コンクリートブロックを浸漬することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項4】
セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックまたは表面側を研磨して前記連通孔が表面に開口した平板状コンクリートブロックを形成し、この平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記平板状コンクリートブロックの表面を浸漬したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
前記バインダの使用量は、前記骨材100重量部に対して30重量部よりも少ない量で使用されていることを特徴とする請求項4に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、歩道等に舗装として設置された際に、NOx除去の効果及び透水性を有し、かつ、曲げ強さが大きい舗装用コンクリートブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等から排出される排気ガスに含まれているNOxによる大気の汚染は、自動車数の増加、それに伴う交通渋滞などで増加している。このようなNOxを除去する目的で、酸化チタン(二酸化チタン)などの光触媒を外壁や舗装用ブロックの表面に保持させてNOxを除去することが提案されている。
【0003】
例えば、特開平9-268509号公報や特開平10-46512号公報によれば、コンクリート製基層上に、酸化チタン粉末を含むモルタルを表面層として被覆している。
【0004】
また、特開平10-96204号公報によれば、舗装ブロックのモルタル表面層を叩きによって凹凸模様に形成させ、その凹凸模様に酸化チタンを含有する表面層を付与している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酸化チタンを外壁に用いる場合には長期間の使用でも、光触媒機能は低下しないが、舗装材料としてこのコンクリートブロックを使用すると光触媒機能の経時低下が激しい。これは、舗装材料としての使用中に路面が汚れたり、また、その路面が踏まれるなどして表面の酸化チタン層が剥離してしまうためと考えられる。
【0006】
そこで、この発明は、長期間の使用に際しても、光触媒機能の低下の少ない、コンクリートブロックを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載の発明は、セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたコンクリートブロックであって、前記コンクリートブロックは、透水係数が0.1cm/秒以上、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロックである。
【0008】
本発明によれば、透水係数が0.1cm/秒以上という透水性を有するコンクリートブロックであって、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上という曲げ強さが大きい平板である舗装用コンクリートブロックが得られるので、このコンクリートブロックは、透水性のある舗装用コンクリートブロックとして利用できる。
また、本発明によれば、粒径1mm以上の骨材を用いることにより、骨材間に触媒を保持するに十分な空隙を設けることができ、これにより透水性を保持させることができる。
また、酸化チタンなどの光触媒は、粒子径の大きな骨材間により形成された表層付近の空隙に保持されるので、触媒面に光が到達されて光触媒として機能する。
また、この触媒が保持されている面は空隙であるので、汚れることが少なく、また、ブロックの表面が踏まれたり、摩擦されたりしても、触媒は骨材間に形成された空隙に保持されるので、外力が直接触媒に働くことがなく、したがって触媒が剥がれることが少ない。
また、このバインダを用いずに酸化チタンを保持させたコンクリートブロックは透水係数が0.1cm/秒以上と十分に高いことにより、光触媒作用により生成する硝酸イオンは、表面側から裏面側に流下する降水時などの雨水などにより安定層、路盤、路床、クッション層などの下層に洗い流されて、硝酸イオンが蓄積することなく、酸化チタンの高い触媒活性が維持される。
これにより、長期間の使用によっても光触媒効果の低下の少ない舗装用コンクリートブロックを提供することができる。
【0009】
削除
【0010】
削除
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記骨材は、粒径5mm以上の粗骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックである。
【0012】
ここで、5mm以上の粗骨材を主体とするとは、いわゆる粗骨材を意味し、この粒子径が5mm未満の細骨材も15%未満程度で有れば、実質的に透水性に影響を与えないので、含まれていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、一般的な粗骨材を用いることにより、この粗骨材間に触媒を保持するに十分な空隙を設けることができる。
【0014】
削除
【0015】
削除
【0016】
請求項3に記載の発明は、セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したコンクリートブロックに、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記コンクリートブロックを浸漬することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である。
【0017】
このように構成すれば、請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックを容易に製造することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックまたは表面側を研磨して前記連通孔が表面に開口した平板状コンクリートブロックを形成し、この平板状コンクリートブロックの表面から、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥するか、または、光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に、前記平板状コンクリートブロックの表面を浸漬したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である。
【0019】
このように構成すれば、セメントをバインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合した平板状コンクリートブロックを形成させた際に、連通孔の一部は表面に開口されるが、骨材から遊離した状態のセメントが表面付近に多く含まれている場合にはこの連通孔の一部または全部は表面に開口されていない場合がある。そのような場合を含めて、その表面を研磨により除去すれば、より多くの連通孔が表面に開口される。このようにして得た平板状コンクリートブロックの表面に形成された開口から、触媒をその骨材間で形成された空隙に保持させることができるので、請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックを容易に製造することができる。
【0020】
また、表面を研磨したコンクリートブロックは、透水性能に優れ、また、表面側が研磨されているので、この研磨面を上にして施工すれば、表面の歩行性が優れる。また、骨材の研磨断面がこの表面に露出されることにより外観も美麗となる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記バインダの使用量は、前記骨材100重量部に対して30重量部よりも少ないことを特徴とする請求項4に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である。
【0022】
このように構成すれば、骨材間に十分に広い空隙に基づく連通孔が形成されるので、このコンクリートブロックの透水性が優れる。これにより、NOx除去により生じた硝酸イオンをこの連通孔を介して下層に洗い流すことのできる平板状のコンクリートブロックを得ることができるので、光触媒活性の低下の少ない舗装用コンクリートブロックを得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る実施の形態を透水平板を一例として図面に基づいて説明する。
【0024】
この発明の実施の形態に係るコンクリートブロック1は、図1に示すように、長さL、幅Wが数十cm程度(例えば、15cm又は30cmなど)、高さHが数cm(例えば、60mm)に規格化された方形寸法であり、歩道、コミュニティ広場、駐車場、建物周辺、ガレージ、公園、庭園、プールサイド、親水施設などにおいて、透水性の路床、路盤、砂などのクッション層を介して併設敷設されて使用されるものである。
【0025】
このコンクリートブロック1は、粒子径の大きな骨材2…同士がセメントなどのバインダ(不図示)により接合され、表面1a側に配置される骨材2の表面2aには、光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン3が保持されている。また、この骨材2の粒径が大きいことにより、骨材2…間には、多数の空隙4…が形成されている。また、この空隙4…は表面1a及び裏面1bまで連通されており、表面1aに形成された開口5から酸化チタン3まで光が届くように構成されている。
【0026】
この骨材2としては、粒子径が、例えば、粒径1mm以上、特に2.5mm以上であることが好ましい。粒子径を大きくすることにより、骨材2間に酸化チタン3を保持するに十分な空隙4を設けることができ、また、透水性を保持することができる。この粒子径が小さい砂では空隙率を高めても十分に大きな空隙を保持することができない。このような骨材としては、例えば、砕石、玉砕石、川砂利等が挙げられる。
【0027】
この骨材2として、粒径5mm以上のいわゆる粗骨材を用いることもできる。ここで、粗骨材とは、5mm以上の粒子径を主体とする骨材であり、この粒子径が5mm未満の細骨材も15%未満程度で有れば、実質的に透水性に影響を与えないので、含まれていてもよい。これにより、酸化チタンは、粒子径の大きな骨材2間により形成された空隙4に保持されるので、踏まれたりしても、酸化チタン3が剥がれることが少ない
また、この骨材2を接合させるバインダとしては、通常の透水平板に用いられるバインダがそのまま用いられ、例えば、白色ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、エコセメントなどが用いられる。これらのセメントを主体としてバインダに使用することにより、平板状に成形しても、曲げ強さの大きな、踏まれたりしても耐久性のあるコンクリートブロックを得ることができる。これにより、例えば、JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm、幅W300mm、高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上と曲げ強さを大きくすることにより、舗装用平板として利用できる。
【0028】
また、このように構成されたコンクリートブロック1は、透水係数が0.1cm/秒以上であることが好ましい。透水係数が0.1cm/秒以上と高いことにより、NOx除去により生じた硝酸イオンは、降水時などの雨水により安定層、路盤、路床、クッション層などの下層に流すことができる。
【0029】
酸化チタンの表面に硝酸イオンが蓄積されると、その酸化触媒作用が低下することがある。このような場合、反応生成物である硝酸イオンは、吸着剤により除去することが好ましいが、この透水性を有するコンクリートブロックによれば、その表面に水をかけることにより容易に硝酸イオンを連通孔を通じて下層に洗い流すことができる。これにより、雨水に晒される状態で敷設されて使用される透水平板では、硝酸イオンは、雨水により連通孔を通して流されるので、酸化チタンの高活性は維持されることになる。この硝酸イオンは、少量で有れば地中に流されても、地中の微生物により分解されて無害化される。
【0030】
このようなコンクリートブロック1は、例えば、市販の透水平板の表面に酸化チタンを保持させることにより容易に得ることができる。ここで、透水平板とは、セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し、骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したものであり、このような透水平板は、例えば、粒子径の大きな骨材の表面にセメントを主バインダにより被覆し、接着性を有している状態でその骨材同士を接合して骨材間の空隙を連通孔により形成することにより製造することができる。
【0031】
このコンクリートブロックの製造においては、バインダーとして例えば、白色ポルトランドセメント又は普通ポルトランドセメントを用いるのが好ましいが、この添加量は、骨材2の全表面を濡らすに必要かつ十分の量であることが好ましい。この発明では、骨材間に十分な空隙を備えることが必要であるので、このバインダの使用量は、骨材2に対して必要以上に多く用いてはいけない。
【0032】
このバインダの使用量は、通常、骨材100重量部に対して30重量部よりも少なく、好ましくは、骨材100重量部に対して、バインダーは20重量部以下であることがよい。これにより、骨材間に十分に広い空隙に基づく連通孔が形成されるので、このコンクリートブロックの透水性が優れ、NOx除去により生じた硝酸イオンをこの連通孔を介して下層に洗い流すことのできる平板状のコンクリートブロックを得ることができる。
【0033】
このコンクリートブロックの開口付近の骨材の表面には光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンが保持される。この保持方法は限定されないが、例えば、酸化チタンスラリーを噴霧するか、または、酸化チタンスラリー液の中にこのコンクリートブロックを浸漬し、開口付近の骨材の表層に酸化チタンを保持させればよい。
【0034】
酸化チタンスラリーは、酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である。このスラリー中の酸化チタン濃度としては、数%程度からその1/10程度が望ましい。その溶液中(スラリー中)の酸化チタン濃度を変化させることによって、コンクリートブロックへの酸化チタンが付着する量を容易に調節することができる。このコンクリートブロックへの酸化チタンの保持量は、単位表面積あたり数十g/m^(2)?数百g/m^(2)程度でよい。
【0035】
本発明において用いられる酸化チタンは、ルチル型、アナタース型どちらでもよいが、活性の高いアナタース型が好ましい。また、この酸化チタンの保持量は、それぞれの酸化チタンの光触媒活性により適宜選択される。通常、数十g/m^(2)?数百g/m^(2)程度の保持量により所望とする触媒性能を得ることができるので、骨材の粒子を透水性が十分に保持される程度に選択することにより、この触媒の保持により著しく、透水性能が低下することはない。
【0036】
ここで、このコンクリートブロック1はそのまま使用することもできるが、適宜の段階で表面を研磨して、図2に示すように、表面1aに骨材2に基づく平滑面2aが露出された平板としてもよい。このように表面1を研磨すれば、コンクリートブロックの製造工程で、骨材から遊離した状態のセメント分が表面付近に多く含まれていても、その表面部分が研磨により除去されるので、内部に形成された連通孔(空隙4)は、表面1aに大きな開口5を形成させる。
【0037】
また、表面を研磨して得られたコンクリートブロック1は、表面側が研磨されているので、この研磨面を上にして施工すれば、表面の平滑性が優れ、さらに、骨材22の研磨断面22aがこの表面1aに露出されることにより外観も美麗となる。
【0038】
また、その表面1aを研磨しても、研磨面には、連通された空隙の作用により表面1aには常に開口5が形成される。これにより、この研磨されたコンクリートブロック1を路面に施工すれば、表面1aの大きな開口5の作用により、透水性が優れ、また、歩行性も優れる。
【0039】
ここで、酸化チタンはコンクリートブロックを研磨した後に保持させてもよい。この方法によれば、研磨により得られた大きな開口5から、酸化チタン3をその空隙4に保持させることができるので、透水性に優れたコンクリートブロック1を容易に製造することができる。
【0040】
また、酸化チタンを保持させた後にコンクリートブロック1の表面を研磨してもよい。この発明に係るコンクリートブロックでは酸化チタンは表層近傍の空隙に保持されているので、コンクリートブロック1の表面を強く研磨して平滑化させても、空隙に保持された酸化チタンは剥離することがない。
【0041】
これにより、このコンクリートブロックの空隙に酸化チタンを保持させれば、長期間に亘って路面に使用することにより、コンクリートブロックの表面が摩耗しても、酸化チタンの光触媒作用が維持されることが容易に理解される。
【0042】
以下、実施例に基づき、この発明の効果を具体的に説明する。
【0043】
【実施例1】
骨材として粒径5?2.5mmの7号砕石を主体として用い、この砕石間に空隙をもたせるように、砕石の100重量部に対して20重量の普通ポルトランドセメントを主体とするバインダと適量の水を配合して型枠に流し込んで養生を行うことにより骨材間が接合されてブロック全体に亘って透水性可能な幅20cm、長さ10cm、厚み15cmの透水性コンクリートブロックを得た。
【0044】
この透水性コンクリートブロックの一表面に酸化チタンの塗布量が100g/m^(2)となるように酸化チタンスラリー液(株式会社田中転写製、固形分濃度0.85%)を噴霧し、自然乾燥し、本発明に従うNOx除去能力のある透水ブロックを得た。
【0045】
この透水ブロックを試験体として、酸化チタンが保持された表面を上にして空気導入口と出口とを備えた密閉容器に入れ、透水ブロック表面に一酸化窒素(NO)を1ppmの濃度で含む空気を0.5L/分の流量で通気した。紫外線ランプにより、透水ブロック表面に0.6mW/cm^(2)となるように間欠的に紫外線を照射させ、出口から排出されるガスを化学発光方式のNO濃度計に導き出口ガス中のNO濃度を連続的に測定した。結果を図3に示す。
【0046】
図3から、紫外線を照射しない初期には、NOは分解されないが、紫外線照射を開始すると、急激にNO濃度は低下し、最終的にはNO濃度はゼロとなった。次いで、この紫外線の照射を停止すると、NO濃度は急激に上昇し、導入口のNO濃度(1ppm)に達した。このことから、酸化チタンを表面部に保持させた透水平板が、紫外線照射のもとでNOを高い除去率で分解することが確かめられた。
【0047】
次に、この透水ブロックの表面を厚さ1mmで研磨して図2に示す透水ブロックとした。上記と同様なNOx除去試験を行ったところ、図3に示す結果と同様な結果を得ることができた。これにより、この実施例に従う透水ブロックでは、摩擦などにより表面が研磨されても、光触媒効果が劣化されないことが確認された。
[実施例2]
この実施例2においては、透水性コンクリートブロック1は、図4に示すように、その表面側1aに外観性の良好な表層部20とその表層部20の下方に連続した下層部30とから構成される2層構造からなる。
【0048】
表層部20を構成する骨材22としては、色彩の美しい石を小割りして、ふるいで粒径範囲を10mm?5mmに選別した砕石からなる表層用骨材を用いた。この表層用骨材の100重量部を30?20重量部の白色ポルトランドセメントと、結合補助剤としてのヘキスト合成株式会社製の商品名モビニールDM200と、増粘剤としてのヘキスト合成株式会社製の商品名チローゼMHと、白色ポルトランドセメントの約1/3重量の水とをミキサに投入して混合する。
【0049】
また、下層部30を構成する材料は、粒径5?2.5mmの7号砕石を主体とする骨材32を用いた。この骨材32の100重量部を30?20重量の普通ポルトランドセメントと、表層材料と同様の結合補助剤と、普通ポルトランドセメントの約1/3重量の水とをミキサに投入して混合する。
【0050】
一方、鋼製型枠内の底部にまず遅延紙を敷き込み、この遅延紙上に表層材料を1?2cmの厚さに敷きならし、むらのないように押さえ、鋼製型枠の底部に沿って表層材料からなる薄層を形成する。この遅延紙は、セメント凝固の遅延剤を紙材に浸透させたものである。
【0051】
次に、この表層材料の上側に、下層材料を4?5cmの厚さで敷きならし、締め固め機械により振動締め固めを行うことによって表層部20と下層部30とを形成する。
【0052】
このように型込めされたブロック材料は、1昼夜室内で養生させた後型枠を外す。ブロック1の表面1aの凝固の遅延したセメント分をブラシ等で表面から除去し、さらにブロック1の養生を行い,型込め工程からおよそ1週間後の適度な強度が発現した時点で、ブロック表面の研磨工程を行う。これにより、骨材22が露出して凹凸状となっているブロックの表面1aにおいて、突出している骨材22の凸部を削り落とし、平坦面22aが露出した厚み6cmの透水ブロック1の製造が完了する。
【0053】
このようにして得られた透水ブロック1は、表層部20と下層部30からなり、その表層部20中の骨材22同士は白色ポルトランドセメントにより互いに接着され、下層部30中の骨材32同士は、普通ポルトランドセメントにより互いに接着され、表層部及び下層部の骨材同士も互いに接着されて一体化している。
【0054】
そして、骨材22や骨材32は、いずれも粒子径が大きいので、バインダーによる接合は、その接点部分で行われ、その他の部分には空隙4が形成されている。この空隙4は表面1aまで連通されて開口5が形成され、この開口5により透水性を備える。
【0055】
この透水性ブロック1の踏面となる表面1aは研磨してある。これにより、鋼製型枠中において、最も底部に位置したことにより、セメント分が過多の状態となっていたおそれのある部位はブロック1から除去されている。ブロック1の踏面となる表面1aが平坦であることにより、その上の歩き心地が良好であるとともに、透水性をもたらす開口5が微細孔なので、その微細孔により滑り止めの効果がある。また、この外表面は色彩の美しい表層用骨材22が研磨されて研磨面22aが露出されているので、美麗である。
【0056】
このようにして製造された透水性コンクリートブロックの表面1aに酸化チタンの塗布量が100g/m^(2)となるように酸化チタンスラリーを噴霧し、自然乾燥する。この表面は、必要により研磨仕上げされる。これにより、得られた透水平板は実施例1と同様にNOx除去効果が期待される。また、この透水コンクリートブロックは、磨きだしテラゾータイプの透水平板として、公園、遊歩道などの外観を重視した場所での使用に適したものとされる。
[参考例]
表層用材料として、骨材、白色ポルトランドセメント、結合補助剤、増粘剤、水、に加えて白色ポルトランドセメントの100重量部に対して5?50重量部のアナタース型チタンを混合したものを用いた以外は、実施例2に準じて2層構造のコンクリートブロックを得た。
【0057】
このコンクリートブロックの表層部20は、骨材22同士はその接触点で白色ポルトランドセメントにより接着されている。この白色ポルトランドセメントの中にアナタース型チタンが含まれているので、表面1aに開口5を設ければ、この開口5からの光の作用によりNOx除去能が得られることが期待される。
【0058】
また、このようにして構成された透水平板は、表面を研磨しても、連通孔が常に露出されて開口となり、この開口からの光は、白色ポルトランドセメントまで達して、光触媒作用を有する。これにより、このようなコンクリートブロックでは、長期間の使用時に表面を磨き出しをして研磨して使用しても、その表面には、常に開口5が形成され、その開口5部近傍には光触媒活性のある酸化チタン3が人などが踏みつけても、摩擦を生じない程度の深さの空隙(窪み)に保持されているが、その保持部までは、常に十分に光が届くように構成されるので、恒久的な触媒作用のある透水平板として使用できることが期待される。
【0059】
以上の実施例3では、表層部と下層部との2層構造とした透水平板に関するものであるが、本願発明は、これに限らず、3層以上の構造であってもよい。例えば、表層部を2層として、最表層部にのみ酸化チタンを配合して、この最表層部を触媒活性層としてもよい。これにより、必要な厚みの触媒活性層を得ることができるとともに、酸化チタンを不要に多く配合させる必要がない。
【0060】
また、以上の実施例では、透水平板を例にして説明したが、この形状、大きさは、製造法は特には制限されず、例えば高速道路等に施工される場合には、直接、道路表面にコンクリートブロックを形成させて、その表面に酸化チタンを噴霧するなどして骨材間の空隙に酸化チタンを保持させてもよい。
【0061】
削除
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、長期間の使用に際しても、光触媒機能の低下の少ない、舗装用コンクリートブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る透水性コンクリートブロックの説明図である。
【図2】実施の形態に係る透水性コンクリートブロックの説明図である。
【図3】実施例にかかる透水性コンクリートブロックのNOx除去能を確認する図である。
【図4】実施例に係る透水性コンクリートの説明図である。
【符号の説明】
1 コンクリートブロック
2 骨材
3 酸化チタン(NOx除去用の触媒)
4 空隙
5 開口
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-08-29 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2007-02-26 
出願番号 特願平11-273776
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (E01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
七字 ひろみ
登録日 2004-08-06 
登録番号 特許第3583037号(P3583037)
発明の名称 舗装用コンクリートブロック及びその製造方法  
代理人 西脇 民雄  
代理人 西脇 民雄  
代理人 千葉 博史  
代理人 西脇 民雄  

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