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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47J
管理番号 1208488
審判番号 無効2008-800214  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-20 
確定日 2009-11-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4051692号発明「茶漉し付携帯保温容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4051692号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成10年 3月12日 特許出願。
平成19年12月14日 特許権の設定登録(請求項の数3)。
平成20年10月20日 無効審判請求。
平成21年 1月 9日 答弁書提出。
平成21年 2月13日 口頭審理陳述要領書(請求人)。
平成21年 3月 3日 口頭審理陳述要領書(被請求人)。
平成21年 3月 6日 第1回口頭審理。
平成21年 3月10日 無効理由通知。
平成21年 4月 9日 意見書。
平成21年 4月 9日 訂正審判請求(訂正2009-390049号 )。
平成21年 6月 2日 訂正審決(請求却下)。
平成21年 6月10日 無効理由通知。
平成21年 7月10日 意見書。
平成21年 7月10日 訂正請求。
平成21年 8月20日 弁駁書。

第2 訂正の適否に対する判断
(1)被請求人の求める訂正請求は、特許明細書を、平成21年 7月10日付けの訂正明細書のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであり、その内容は、次のとおりである。

(2)訂正の内容
訂正事項A
ア.特許請求の範囲の請求項1における「容器本体の上端開口部に着脱可能に装着される口部材」を「容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Bに対応する。)

イ.同上、「口部材の開口部を覆う断熱部を有する蓋体」を「口部材の開口部を密閉する断熱部を有する蓋体」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Bに対応する。)

ウ.同上、「保温容器」を「携帯保温容器」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Bに対応する。)

エ.特許請求の範囲の請求項2における「保温容器」を「携帯保温容器」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Cに対応する。)

オ.特許請求の範囲の請求項3における「保温容器」を「携帯保温容器」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Dに対応する。)

訂正事項B
ア.発明の詳細な説明中、段落【0005】の「容器本体の上端開口部に着脱可能に装着される口部材」を「容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Fに対応する。)

イ.発明の詳細な説明中、段落【0005】の「口部材の開口部を覆う断熱部を有する蓋体」を「口部材の開口部を密閉する断熱部を有する蓋体」と訂正するとともに、段落【0006】中の「口部材の開口部を覆う蓋体」を「口部材の開口部を密閉する蓋体」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Gに対応する。)

ウ.発明の詳細な説明中、段落【0004】、【0005】、【0017】の「保温容器」を「携帯保温容器」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Eに対応する。)

エ.発明の詳細な説明中、段落【0011】、【0013】、【0014】の「保温又は携帯する場合」を「保温携帯する場合」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Hに対応する。)

オ.発明の名称「茶漉し付保温容器」を「茶漉し付携帯保温容器」と訂正する。(訂正請求書の訂正事項Aに対応する。)

(3)訂正の適否
訂正事項Aアは、容器本体の上端開口部に着脱可能に装着する手段につき、特許明細書の段落【0008】中の「前記口部材3は、前記筒体10が前記容器本体2内に挿入されて前記ねじ部9に螺合される」との記載に基づいて、その態様を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項Aイは、口部材の開口部と蓋体との関係につき、特許明細書の段落【0011】、【0013】、【0014】「口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉する」、段落【0012】「口部材3に蓋体4を螺着して密閉し、」との記載に基づいて、その態様を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

なお、この点につき、請求人は、弁駁書(平成21年 8月20日)において、「口部材の開口部を密閉する断熱部」は、「密閉する」は続く「断熱部」を修飾しているとし、当該事項は、出願当初の明細書に記載されていない新規な事項である旨主張する(3頁12?24行)ので検討する。

確かに、出願当初の明細書又は図面において、断熱部そのものによって、口部材の開口部を密閉するとの記載は、見当たらない。

しかし、訂正明細書の特許請求の範囲、請求項3の「前記蓋体は・・・、内部に断熱部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の茶漉し付携帯保温容器。」、同明細書段落【0006】「口部材3の開口部を密閉する蓋体4」、段落【0011】「口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉する」の記載をみても、訂正事項Aイにおいて、「開口部を密閉する」は、「断熱部を有する蓋体」を修飾しているものと解するのが、整合しており、合理的である。

そうすると、「密閉する」は続く「断熱部」を修飾しているとする請求人の前記主張は、合理性がないので、採用できない。

訂正事項Aウ?オは、保温容器につき、特許明細書段落【0011】、【0013】、【0014】「煎じた茶を保温又は携帯する場合には、」の記載に基づいて、その構成を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項Bア?オは、特許請求の範囲の訂正に係る訂正事項Aア?オの訂正に伴い、発明の詳細な説明及び発明の名称について、特許請求の範囲との整合を計るため、明りょうでなくなった記載の釈明を目的とするものである。

そして、訂正事項A、Bの訂正により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第3 本件発明
平成21年 7月10日付けの訂正請求は適法なものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)。

「【請求項1】 内筒と外筒との間に断熱部を有する容器本体と、該容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材と、該口部材の開口部を密閉する断熱部を有する蓋体とで構成される携帯保温容器であって、前記口部材は、上部外周部には前記容器本体の外筒の開口部口縁を覆う肩部材が一体に接合されており、下端には茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体であり、前記蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させることを特徴とする茶漉し付携帯保温容器。
【請求項2】 前記容器本体の上端開口部において、前記口部材を容器本体の内筒に螺合させることを特徴とする請求項1記載の茶漉し付携帯保温容器。
【請求項3】 前記蓋体は栓体とカバー部材で形成されており、内部に断熱部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のいずれかに記載の茶漉し付携帯保温容器。」

第4 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証?甲第9号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項に違反してなされたものであるから無効である(審判請求書第2頁3行?第10頁最下行。)として、審判請求時に甲第1?9号証を提示し、平成21年2月13日付け口頭審理陳述要領書において同様の主張をする(第1頁?第4頁)とともに、参考資料A、Bを提示している。
さらに、弁駁書において、周知例として甲第10号証を提示している。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平9-299253号公報
甲第2号証:実願昭63-46571号(実開平1-149744号)のマ イクロフィルム。
甲第3号証:実公平6-16566号公報
甲第4号証:実用新案登録2577689号公報
甲第5号証:実公平7-27000号公報
甲第6号証:実公平2-48366号公報
甲第7号証:実公平1-37558号公報
甲第8号証:特開平10-43064号公報
甲第9号証:実公平2-32198号公報
甲第10号証:意匠登録第958340号公報
参考資料A:特開平9-19371号公報
参考資料B:実公平8-1699号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求の無効理由は存在しない旨の主張をしている(平成21年1月9日付無効審判答弁書、平成21年3月3日付口頭審理陳述要領書、平成21年4月9日付及び平成21年7月10日付意見書)。

第5 当審無効理由
(1)当審において、平成21年 3月10日付け、及び平成21年 6月10日付けで、無効理由を通知した。

その内容は、前者においては、「特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載では、蓋体と口部材との関連構成が不明瞭であって、発明の詳細な説明に記載されたような本件各発明の技術的意味が不明瞭となる結果、本件の特許を受けようとする発明が不明確となっている。 したがって、本件特許は、特許法第36条第2項(「第36条第6項第2号」の誤記である。)の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきものである。」(以下「当審無効理由1」という。)とし、後者においては、「特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載では、本件の特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、明確ではない。
1.発明の詳細な説明の記載では、第1ないし第3の使用方法(段落【0011】?【0014】)が可能であると共に、茶漉し網で漉された茶を飲むことのできる(段落【0014】)保温容器であるとの記載があるが、請求項1ないし3の記載では、このようなことのできる発明が反映されているとはいえない。
2.請求項1中の「上端開口部に着脱可能に装着される口部材」の記載では、口部材と上端開口部との関連構成は、不明確である。
以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第1項及び第2項(「第36条第6項第1号及び第2号」の誤記である。)の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきものである。」(以下「当審無効理由2」という。)とする内容のものである。

(2)被請求人の主張
被請求人は、いずれも、本件訂正により、無効理由は解消している旨の主張をしている。(平成21年4月9日付及び平成21年7月10日付意見書。)

第6 当審の判断
当審は、前記の無効理由は、いずれも理由がないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1.容易想到性について
請求人は、本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び周知の技術(甲第5号証、参考文献A、甲第10号証)に基づいて、本件発明2、3は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第5号証、参考文献A、甲第10号証)に加えて、甲第2?4、6?9号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している(弁駁書第6?8頁「III.被請求人が訂正請求書で求めた訂正請求が、認められたと仮定した場合の本件特許発明の無効性について」、審判請求書「6.請求の理由」)と認められるので検討する。
ここで、請求人は、本件発明1について、甲2?4、6?9号証に基づいた主張を撤回していないものとも思われる(弁駁書p6?8「III、IV」)。

(1)甲各号証の記載
甲各号証のうち、甲第1号証および甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

1)甲第1号証記載の発明
請求人の提示した甲第1号証には、図面と共に、以下の記載がある。

ア「【発明の属する技術分野】本願発明は、コーヒー、ジュース、お茶等の液体を収容して、そのまま直に飲むタイプの液体容器に関するものである。」(段落【0001】)

イ「【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような構成のものでは、飲む度にキャップを取り外さねばならず、使い勝手が良くないという不具合があった。
そこで、前記キャップに飲み口を設けるとともに、該飲み口を開閉蓋で開閉するようすることが考えられが、開閉蓋による飲み口の閉塞状態が完全に得られない場合が生じ、内部の液体漏れが心配になるという新たな問題が生ずる。
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、注液通路の入口と出口とを同時に開閉できるようにすることにより、注液操作を容易にするとともに、液漏れをも防止できるようにすることを目的とするものである。」(段落【0003】?【0005】)

ウ「この液体容器は、胴部1aと口部1bとがほぼ同径とされた容器本体1と、該容器本体1の口部1bに対して螺着脱自在とされ且つ内部に前記容器本体1内に通じる入口3aから外部へ通じるとともに特定方向に向けて開口する出口3bに至る注液通路3を形成してなる栓体2とを備え、前記容器本体1内の液体を前記注液通路出口3bから直に飲むタイプとされている。
前記容器本体1は、ステンレス鋼製の有底円筒状の内外容器4,5からなる真空二重構造とされており、保温あるいは保冷を行い得るものとされている。また、この容器本体1は、カン、ビン等の飲料用容器Xを1本だけ収納し得る容積を有している。このようにすれば、ジュースカンあるいはジュースビン等をそのまま収納する使用形態を選択することが可能となり便利である。また、この容器本体1は、栓体2を取り外した状態においてはコップとして使用できるようになっており、従来と同様な使用形態も選択できる。符号7は容器本体1の底部を覆う合成樹脂製の底カバーである。」(段落【0018】、【0019】)

エ「即ち、栓体2を螺脱して容器本体1の口部1bを開放した状態で、容器本体1内に液体(例えば、コーヒー、ジュース、お茶等)を入れ、栓体2を螺着して容器本体1の口部1bを密栓するとともに蓋部材8を閉操作すれば、野外等へ携帯しても、前述したように液漏れを起こすおそれがない。」(段落【0028】)

オ「第5の実施の形態(請求項8に対応)
図16ないし図18には、本願発明の第5の実施の形態にかかる液体容器が示されている。
この場合、容器本体1の口部1bには、内部に前記容器本体1内に通じる入口3aから外部へ通じる出口3bに至る注液通路3を形成してなる栓体2が着脱自在に取り付けられている。該栓体2は、容器本体口部1bに着脱される栓部2aと、該栓部2aに対して固定されるとともに注液通路出口3bを有する注液部2bとによって構成されている。なお、注液通路出口3bは、栓体2の上面全面に開口されている。
そして、前記栓体2の一端には、前記注液通路3の入口3aおよび出口3bを同時に閉塞する蓋部材8がスプリング26により開方向に付勢した状態でヒンジピン27を介して開閉自在に枢支されている。なお、該ロック部材28は、押圧時に弾性変形する樹脂バネにより構成されている。また、該蓋部材8の反枢支点側には、前記栓体2に設けられたロック部材28に係合する係合片29が一体に突設されている。
つまり、図16に示すように、係合片29をロック部材28に係合させた状態においては、蓋部材8が注液通路3の入口3aおよび出口3bを同時に閉塞し、ロック部材28を押圧して鎖線図示のように弾性変形させると、蓋部材8は、スプリング26の付勢力によりヒンジピン27を回動中心として矢印M方向に回動せしめられ、図17に示すように、注液通路3の入口3aおよび出口3bが同時に開放されることとなっているのである。
従って、ロック部材28を押圧操作するだけで、注液通路出口3bと入口3aとを同時開閉できることとなり、注液操作が容易且つ確実に得られる。」(段落【0038】?【0042】)

そして、【図16】からみて、蓋体8は、中空部を有するものであり、前記ウの記載からみて、同様の実施形態である第5実施形態のものも保温液体容器は、携帯用として使用できるものと理解できる。

以上の記載及び図面によると甲第1号証には、
「ステンレス鋼製の有底円筒状の内外容器4,5からなる真空二重構造とされた携帯用容器本体1と、容器本体1の口部1bに、螺着脱自在に取り付けられる栓体2と、該栓体2の一端に出口3bを密閉するよう設けた中空部を有する蓋部材8とで構成される携帯用保温液体容器であって、前記栓体2は、容器本体口部1bに着脱される栓部2aと、該栓部2aに対して固定されるとともに注液通路出口3bを有する注液部2bとによって構成され、注液部2bは外容器5の外縁を覆うものである携帯用保温液体容器。」(「甲第1号証記載の発明」)が記載されている。

2)甲第5号証
同じく、甲第5号証には、図面と共に、以下の記載がある。

ア「この考案は、携帯用魔法瓶等の携帯用容器のコップを兼ねる上蓋を有する魔法瓶に関する。」(第1頁左下欄第13?14行)

イ 第2?4図、第7?12図によると、ネジ18を部分的に設けた上蓋本体12が示されている。

そうすると、甲第5号証には、「ネジ18を部分的に設けた上蓋本体12を有する携帯用魔法瓶。」(以下「甲第5号証記載の事項」という。)が記載されている。

3)参考文献A
請求人が提示した参考文献Aには、図面と共に、以下の記載がある。
ア「急須の使用に際しては、内部に茶葉が投入されている内殻4に熱湯を注いだ後に、内蓋3を内殻4に載置して使用される。これにより、内殻4内で煎じられた茶を茶碗に注ぎ出すとき、茶葉は濾過網Nにて漉される。」(段落【0011】)

イ「 次いで、図8に示すように、外殻5を手で把持して茶碗等に茶をつぐ。すると、茶葉が内蓋3の濾過網Nの作用により内殻4内に留まる。従って、茶碗には茶葉が入ることなく、茶のみが注がれる。前述したように、内殻4から外殻5への熱伝導は極めて低い状態にあるため、外殻5を把持した手に熱さが伝わることはない。」(段落【0018】)
ウ 【図8】によると、携帯用急須の外殻5から、濾過網Nを通して茶葉を留めるようにすることが開示されている。

そうすると、参考文献Aには、「茶葉を濾過網Nで漉すことができる茶葉収容用機能を備えた携帯用急須。」(以下「参考文献A記載の事項」という。)が記載されている。

4)甲第10号証
甲第10号証には、次の記載がある。
ア「(54)意匠に係る物品 携帯用魔法びん」

イ「(55)説明 本物品の上部にはコップとドリッパー(こし器)が着脱自在に装着してあり、ドリツパーによつて紅茶や日本茶、あるいはペーパーフイルターを用いてコーヒーをいれることができるものである。背面図は正面図と対称にあらわれる。」

以上によると、甲第10号証には、「こし器が上部に着脱自在に装着されている携帯用魔法びん」(以下「甲第10号証記載事項」)が記載されている。

5)甲第4号証
請求人の提示した、甲第4号証には、図面とともに、以下の記載がある。

ア「【産業上の利用分野】本考案は、茶こし器を備えたポットに関するものである。」(段落【0001】)

イ「【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づき説明する。
茶こし器付ポット1は内容器2を囲んだ上部外装体3と下部外装体4と、この内容器2の口元を覆う蓋体5と内容器内に装填する浅型の茶こし器6と、この浅型の茶こし器と重ね合った深型の茶こし器7とから構成されている。8はハンドル、9は締上げ部材である。
内容器2は広口のガラス、ステンレス製の真空二重瓶である。10はチップで、11はシ-ルパッキンである。」(段落【0008】)

ウ「上部外装体3は肩部材を一体成形しており、その上端中央に内容器の口元と連通する中央開口12を備えた受部13と、この受部の前壁を貫通して前方に延びた液注出路14を備えた嘴部15とを設けている。
受部13は中央開口12を形成する周壁に後述の蓋体を螺着する雌ネジを刻設し、この周壁の下端にこの中央開口12よりも直径の小さい環状段部16を設け、この環状段部16下端内周壁が内容器2の口元と連通している。この環状段部16はその上端と中央開口12の周壁下端との間を後述の蓋体の下端が圧入できるように中央に向けて斜め下がりの傾斜辺17としている。」(段落【0009】)

エ「蓋体5は上蓋19と下蓋20とからなり、内部中空に形成されており、その下蓋20の外周壁に受部13の蓋体用の雌ネジに螺着する雄ネジを刻設している。この蓋体5の内部中空内に断熱材を充填してもよい。」(段落【0011】)

オ「浅型の茶こし器6は茶葉を入れる網目状のボ-ル状部とボ-ル状部より上方に延びた側壁部と、この側壁部上端より外方に延びた環状のフランジ部21とを設けている。浅型の茶こし器6のボ-ル状部は後述の深型の茶こし器内に入るような大きさの形状に形成されている。
このフランジ部21は受部13の環状段部16上面に載置するような外径を備えており、後述の深型の茶こし器7のフランジ部上面に載置するようにしている。
深型の茶こし器7は内容器の底部近くにまで至る網目状の深ボ-ル状部と、ボ-ル状部より上方に延びた側壁部と、この側壁部上端より外方に延びたフランジ部22とからなっている。
この深型のフランジ部22は環状段部16の上面に載置するような外径を備え、上面に浅型の茶こし器6のフランジ部21を載置している。
内容器2内に入る浅型の茶こし器6は深型の茶こし器7とは、それぞれ単独で内容器に入れることもできる。
この浅型と深型の茶こし器6、7は重ね合って、そのフランジ部21、22が共に蓋体5の雄ネジ下端で受部13の環状段部16上面との間に挟み込まれて保持している。」(段落【0012】?【0014】)

以上の記載及び図面からみて、甲第4号証には、
「真空二重瓶からなる内容器2を有する茶こし器付ポットにおいて、肩部材を一体成形し、中央開口12を形成する周壁を有する受部13を設けた上部外装体3を備え、前記周壁に蓋体を螺着する雌ネジを刻設し、この周壁の下端に環状段部16を設け、該段部下端の上面に茶こし器6のフランジ部21を載置するようにした茶こし器付ポットであって、蓋体5は、下蓋20と上蓋19とで形成されており、内部に断熱材を充填した茶こし器付ポット。」(以下「甲第4号証記載の発明」という。)が記載されている。

6)甲第9号証
同じく、甲第9号証には、次の記載がある。

ア「この考案は、魔法瓶等の金属製液体容器、殊に、螺着栓体を開栓して器体を傾けることにより注液する、傾倒注液型の金属製液体容器に関するものである。」(第1頁1欄10?13行)
イ「注液路11の通路断面積は大きいほどスムースな注液を可能にするが、この注液路11は金属製真空二重器体1の内容器口部2aの雌螺子7形成部を外容器口部3a側に凹陥させて形成していることにより、真空断熱空間を有効利用し器体の大型化や外まわりの異形化等なく通路断面積の大きな注液路11を得ることができる。
栓体6の注液ガイド鍔6aは、第1図仮想線の如き開栓状態において、注液路11を通じて注出される内容液が、器体1の口部から前方へ勢いよく飛び出すのを抑え、仮想線矢符のようにやや横向きに静かに流出するように案内する。」(第2頁3欄26?37行)

以上の記載から、甲第9号証には、
「栓体6を螺着した金属製容器の内容器口部2aの雌螺子7形成部を凹陥させて注液路11を形成し、器体1の口部から内容液が前方へ勢いよく飛び出すのを抑えること。」(以下「甲第9号証記載の事項」という。)

7)甲第2号証
同じく、甲第2号証には、図面とともに次の記載がある。

ア 「(1) 中央部に茶葉導入路(5)を形成するとともに下部に茶こし(6)を備えた茶こし受体(4)を、容器本体(1)の下口(3)に取り外し可能に載置するとともに、茶こし受体(4)の茶葉導入路(5)は栓体(10)により閉塞するように設けたことを特徴とする茶こしポット。・・・」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「この考案は、緑茶や紅茶等の茶葉の茶こしを備えた茶こし付ポットに関する。」(第2頁6?7行)

ウ 「(1)は容器本体であって、この容器本体(1)は本体部(1a)と肩部(1b)と底部(1c)とからなり、容器本体(1)の内部には内溶液を収納する真空二重瓶等の断熱体(2)が内装されている。・・・。また、容器本体(1)には本体部(1a)と肩部(1b)とが一体形成されているものでもよく、その具体的構成は任意である。
前記容器本体(1)の肩部(1b)上部に形成した下口(3)には、中央部に茶葉導入路(5)を形成するとともに下部に茶こし(6)を備えた茶こし受体(4)が、とり外し可能に載置されている。・・・。前記栓体(10)は栓本体(11)と中栓(21)とからなっている。栓本体(11)は、中央部に茶こし(6)と連通する空所(12)が形成されているとともに、容器本体(1)の下口(3)側壁に螺合される外筒(13)と内筒(14)の上部間にヘリコイド結合(15)等により固定されかつ外筒(13)と内筒(14)間の空間(16)を被蓋するキャップ部(17)とからなっている。」(第5頁19行?第7頁第2行)

そして、茶こし受体(4)は、筒状体であることが理解できる。
そうすると、甲第2号証には、
「容器本体(1)の肩部(1b)上部に形成した下口(3)に筒状体の茶こし受体(4)を取り外し可能に載置し、茶こし受体(4)の下部に茶こし(6)を着脱自在に設けた茶こし付ポット。」(以下、「甲第2号証記載の事項」という。)が記載されている。

8)甲第3号証
同じく、甲第3号証には、図面とともに次の記載がある。

ア「断熱容器の肩部の開口部に茶こしのつばを係合させ、そのつば下方の栓挿入部及び栓挿入部の下方に設けられた茶こし部を断熱容器内に挿入し、肩部に螺合させたポットの栓の下端部を上記の栓挿入部に挿入すると共に、栓を茶こしのつばに押し当てるようにした茶こし付ポットにおいて、上記茶こしの栓挿入部外面を断熱容器開口部に接近させ、茶こし部からつばにわたる流出用凹所を形成し、その凹所と連続した開口を栓挿入部に設け、上記栓挿入部に挿入されるポットの栓の部分に上記凹所の内面と係合する係合部を設けたことを特徴とする茶こし付ポット。」(【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】)

イ 「この考案は茶こし付きポットに関するものである。」(第1頁左下欄15行)

ウ「第1図から第4図に示す実施例のポットは、前述の場合と同様に、真空二重びんの開口部上にパッキン22を介在して肩体23の開口部を合致させることにより断熱容器21を構成し、その肩体23の開口部に茶こし24のつば25を係合させると共に、茶こし24の茶こし部26を断熱容器21内に挿入し、肩体23に螺合した栓27に装着したパッキン28を上記のつば25に押し当てるようにしている。」(第2頁3欄第48行?4欄第5行)
エ「栓27は、第1図に示すように、その下端に断熱部42が形成され、その断熱部42の内側に前述の断熱材29の下端部が挿入される。この断熱部42は茶こし24の栓挿入部34にすき間無く挿入される。断熱部42の外周面の一部には係合部43が形成される(第3図参照)。・・・
実施例のポットは以上のように構成され、その使用に際しては、茶葉を入れた茶こし24を断熱容器21内に挿入し、そのつば25を肩体23の開口部の周縁に係合させ、その後湯を注ぐ。次に、栓27を肩体23に嵌め、適宜角度回転させると、断熱部42の係合部43が茶こし24の栓挿入部34の凹所39と合致し、断熱部42が栓挿入部34に挿入される。」(第2頁3欄第30?48行)

以上の記載及び図面の記載によると、甲第3号証には、
「ポットの肩体23の開口部に茶こし24のつば25を係合させると共に、肩体23に螺合した栓27の下端に形成される断熱部42の外周面の一部に形成される係合部43と、茶こし24の栓挿入部34の凹所39とで合致させ挿入させる茶こし付ポット。」(以下「甲第3号証記載の事項」という。)が記載されている。

9)その他
参考文献Bには、熱伝導度の低い空気層を具備する断熱調理器が、甲第6号証には、液体容器の栓体が、甲第7号証には、栓付容器が、甲第8号証には、液体容器のコップ取付構造が、それぞれ、示されている。

(2)対比・判断
<本件発明1について>
本件発明1(前者)と甲第1号証記載の発明(後者)とを対比すると、後者の「内容器4」は前者の「内筒」に相当し、以下同様に、「外容器5」は「外筒」に、「真空二重構造とされた」は「断熱部を有する」に、「口部1b」は「上端開口部」に、「螺着脱自在に取り付けられる」は「着脱可能に装着される」に、「栓体2」は「口部材」に、「出口3b」は「開口部口縁」に、「閉塞する」は「覆う」に、「蓋部材8」は「蓋体」に、「保温液体容器」は「保温容器」に、「栓部2a」は「筒体」に、「栓部2b(注液部)」は「肩部材」に、「固定される」は「一体に接合され」に、それぞれ相当している。

したがって、両者は、
「内筒と外筒との間に断熱部を有する容器本体と、該容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材と、該口部材の開口部を密閉する蓋体とで構成される携帯保温容器であって、前記口部材は、上部外周部には前記容器本体の外筒の開口部口縁を覆う肩部材が一体に接合されている筒材である携帯保温容器。」の点で一致し、次の点で相違している。

相違点ア
蓋体について、本件発明1では、蓋体が断熱部を有するものであるのに対し、甲第1号証記載の発明では、中空部を有するものではあるが、断熱部を有するものであるか不明である点。

相違点イ
口部材について、本件発明1では、下端には茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体であり、蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させるのに対し、甲第1号証記載の発明では、該構成を具備しない点。

前記相違点について検討する。
相違点アについてみると、保温容器において、蓋体を、断熱部を有するものとすることは、従来周知の技術である(例えば、請求人の提示した甲第2号証、甲第3号証記載の事項参照。)。

また、甲第1号証の蓋部材8の中空部も、閉じた状態では、空気を収容するものである。

そうすると、蓋体を断熱部を有するものとすることは、周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たことである。

次に、相違点イについて検討する。
本件発明1は、「保温容器内で煎じた茶をそのまま保温することができるとともに、飲む際に茶葉が口に入らない茶漉し付保温容器を提供すること」を目的とするものであるが、甲第1号証記載の発明は、注液操作を容易とし、液漏れを防止すること等を目的とするものである(前記「(1)1)イ」)。

このことを踏まえ、まず、「下端には茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体であり」の構成について検討する。

前記のとおり、甲第10号証には、「こし器が上部に着脱自在に装着されている携帯用魔法びん」が記載され、参考文献Aには、「茶葉を濾過網Nで漉すことができる茶葉収容用機能を備えた携帯用急須。」が記載されている。

そうすると、「茶漉し網を着脱自在に設ける茶漉し付携帯保温容器。」は、本件出願前周知であったといえる。

しかし、本件発明1におけるように、容器本体に着脱可能に装着されるものである口部材の下端に、茶漉し網を着脱自在に設けることまで記載し、示唆するものではない。

そうすると、茶漉し網を着脱自在に設ける茶漉し付携帯保温容器が周知であるからといって、甲第1号証記載の発明において、口部材の下端に茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体とすることが、容易に想到し得たものとはいえない。

また、請求人は、甲2?4号証に基づいた主張をしているので、これらが前記の構成を具備し、甲第1号証記載の発明に容易に適用できるかについて検討する。

甲2号証記載の発明における「茶こし受体(4)」は、筒状であり、その下部に茶こしを着脱自在に設けたものであるから、「下端に茶こし網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体」であるといえる。

しかし、甲2号証記載の、茶こし受体が着脱自在である容器本体は、把手等の記載からみても、明らかに、携帯用のものとは形態が相違する。

甲第3号証記載のものにおいて、茶こし部は、筒状の肩体に係合されているが、肩体は、容器本体の一部を構成するものであり、また、栓27の下端の係合部43と合致させるものではあるが、栓27が螺合される肩体のポットは、明らかに、携帯用のものとは、形態が相違する。

さらに、甲第4号証記載の発明において、環状段部16下端の上面に茶こし器6のフランジ部22を設けた構成は、環状段部6が筒状であり、茶こし器6が網状であることを考慮すると、「下端に茶漉し網を着脱自在に係合するための係合部を備えた筒体」であるといえる。

しかし、環状段部16は、容器本体であるポットの一部を構成するものであって、本件発明1のような、容器本体に着脱自在に装着される口部材とは、異なる。加えて、当該容器本体は、明らかに、携帯用のものとは、形態を異にするものである。

そうすると、下端に茶漉し網を着脱自在に係合するための係合部を備えた筒体が示された甲2号証記載の発明、甲第3号証記載のもの、甲第4号証記載の発明を、甲第1号証記載の発明における口部材に適用することが容易にできたものであるとはいえない。

次に、相違点イの「蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させる」構成について検討する。

甲第9号証には、内容液を流出させる部材(「口部3a」として記載。)のねじ部を部分的に配することにより(「雌螺子7形成部を凹陥させて」)、脈動なしに流出させる(「内容液が前方へ勢いよく飛び出すのを抑える」)ことが記載されている。

しかし、このねじ部は、栓体6に対するものであって、蓋体に対するものではない。

そうすると、蓋体に対して口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させるという構成は、甲第9号証に記載されているとはいえない。

この点につき、請求人は、甲3、5?8号証にも同様の記載がある旨主張(審判請求書第8?9頁「(ニ)構成Dに関して」)している。

しかしながら、いずれの証拠にも、部分的なねじの記載はあるものの、蓋体に対して口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させるとの構成は見当たらない。

そうすると、「蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させる」構成は、甲第3号証、甲第5?9号証記載のものを甲第1号証記載の発明に適用することが容易にできたものであるとはいえない。

以上のとおり、相違点イの構成は、甲第2?10号証、参考資料Aのいずれの証拠に基づいても容易に想到し得たものとはいえない。

また、相違点イの構成について、甲各号証及び参考資料Aにおいて、部分的に充足するものは見られるが、これらを組み合わせることに、示唆があるともいえない。

そして、本件発明1は、当該構成を具備することにより明細書記載の効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第10号証、参考資料A、Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

<本件発明2、3について>
本件発明2、3は、いずれも本件発明1を限定したものである。
そうすると、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第10号証、参考資料A、Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである以上、それを限定した本件発明2、3も、同様に、甲第1号証ないし甲第10号証、参考資料A、Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものである。

2.当審無効理由(記載不備)について
当審無効理由の内容については、前記したとおりである。

(1)当審無効理由1について
まず、当審無効理由1についてみると、本件訂正により、「容器本体の上端開口部に着脱可能に装着される口部材」から「容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材」と訂正され、このことにより、蓋体と口部材との関連構成が明確となり、「口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉することにより、おいしい味と香りを維持することができる」(【0011】)、「口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉し、湯の温度を維持することにより、茶葉に適した煎じ具合とすることができる。」(【0012】)という技術的意味が明りょうとなったものである。

請求人は、弁駁書において、何ら対応した訂正がなされていない旨主張(第4頁27行?第5頁17行)しているが、前記のとおりであるので、この主張は、採用できない。

(2)当審無効理由2について
当審無効理由2の2.は、前記「(1)当審無効理由1」と同じ内容であるので、ここでは、1.を中心に検討する。
本件訂正により、「保温容器」から「携帯保温容器」と訂正され、「装着される口部材」を「螺合装着される口部材」と訂正され、「開口部を覆う」を「開口部を密閉する」と訂正されている。

これらは、発明の詳細な説明の段落【0011】「飲み終わった後に、再び茶を煎じる場合には、蓋体4を取り外した口部材3を容器本体2に螺着して、・・・。煎じた茶を保温又は携帯する場合には、・・・、口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉することにより、おいしい味と香りを維持することができる。」、段落【0012】「第2の方法は、容器本体2に茶漉し網13が浸かる位置まで湯を注ぐ。・・・このときに、茶葉の種類によっては、口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉し、湯の温度を維持することにより、茶葉に適した煎じ具合とすることができる。」、段落【0013】「・・・また、口部材3に螺着している蓋体4は、口部材3とともに取り外すこともできる。飲み終わった後に、再び茶を煎じる場合には、容器本体2に茶漉し網4が浸かる位置まで湯を注ぎ、取り外した口部材3を容器本体2に螺着して茶漉し網13の茶葉を湯に浸すことにより、二番煎じ茶を煎じることができる。煎じた茶を保温又は携帯する場合は、上記第1の方法と同じである。」、段落【0014】「第3の方法は、容器本体2内に茶葉と湯を入れて茶を煎じ、茶を飲む時に、茶漉し網13を係合した口部材3を容器本体2に螺着し、口部材3に口を付けて飲むか、あるいは口部材3から茶碗に注いで飲む。このときに、容器本体2内の茶葉は、茶漉し網13にて漉されるから、茶葉が口に入らずに飲むことができる。また、口部材3のねじ部17を部分的に配することにより、茶を脈動無しに流出させることができる。さらに、湯の温度を維持しながら茶葉を煎じる場合は、容器本体2内に茶葉と湯を入れた後、口部材3と蓋体5を容器本体2に螺着して容器本体2を密閉する。飲み終わった後に、再びお茶を煎じる場合には、容器本体2に湯を注ぐことにより、容器本体2内に残った茶葉から二番煎じ茶を煎じることができる。煎じた茶を保温又は携帯する場合は、前記茶漉し網13を係合した口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉することにより、おいしい味と香りを維持することができる。」との記載と対応するものであり、当審無効理由2は、解消したものといえる。

請求人は、弁駁書において、全く対応がとられていない旨主張(第5頁18行?第6頁6行)しているが、前記のとおりであるので、この主張は、採用できない。

(3)まとめ
以上のとおり、当審無効理由1、2は、いずれも本件訂正により解消し、理由はない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法並びに当審における無効理由通知の無効理由によっては、本件発明1ないし本件発明3を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人が負担すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
茶漉し付携帯保温容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内筒と外筒との間に断熱部を有する容器本体と、該容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材と、該口部材の開口部を密閉する断熱部を有する蓋体とで構成される携帯保温容器であって、前記口部材は、上部外周部には前記容器本体の外筒の開口部口縁を覆う肩部材が一体に接合されており、下端には茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体であり、前記蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させることを特徴とする茶漉し付携帯保温容器。
【請求項2】前記容器本体の上端開口部において、前記口部材を容器本体の内筒に螺合させることを特徴とする請求項1記載の茶漉し付携帯保温容器。
【請求項3】前記蓋体は栓体とカバー部材で形成されており、内部に断熱部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のいずれかに記載の茶漉し付携帯保温容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保温容器内で緑茶、うーろん茶、紅茶等の茶葉からお茶を煎じてそのまま保温することができる茶漉し付携帯保温容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、茶を保温容器で保温するには、別の容器で煎じた茶を保温容器に移して保温する方法や、茶葉を入れた茶漉し網を保温容器の上部開口部に配して、茶葉に湯を注いで保温容器に茶を煎じて保温する方法、あるいは、保温容器に直接茶葉と湯を入れ、保温容器内で茶を煎じて保温する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、保温した茶を飲み終えた後、再び茶を保温容器で保温するには、上述の方法を繰り返す必要がある。また、保温容器に直接茶葉と湯を入れて煎じると、飲む際に茶と一緒に茶葉が口に入ることがある。
【0004】
そこで本発明の目的は、保温容器内で煎じた茶をそのまま保温することができるとともに、飲む際に茶葉が口に入らない茶漉し付携帯保温容器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内筒と外筒との間に断熱部を有する容器本体と、該容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材と、該口部材の開口部を密閉する断熱部を有する蓋体とで構成される携帯保温容器であって、前記口部材は、上部外周部には前記容器本体の外筒の開口部口縁を覆う肩部材が一体に接合されており、下端には茶漉し網を着脱自在に係合するための茶漉し網係合部を形成した筒体であり、前記蓋体に対して前記口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動なしに流出させることを特徴とする茶漉し付携帯保温容器である。さらに、前記容器本体の上端開口部において、前記口部材を容器本体の内筒に螺合させるものである。また、前記蓋体は栓体とカバー部材で形成されており、内部に断熱部が形成されているものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す一実施形態例に基づいてさらに詳細に説明する。保温容器1は、断熱構造の容器本体2と、該容器本体2の開口部に着脱可能に装着される口部材3と、該口部材3の開口部を密閉する蓋体4とで構成されている。
【0007】
前記容器本体2は、金属製の有底内筒5及び有底外筒6の上端開口部同士を一体に接合したもので、両筒5,6の間には真空断熱構造の断熱部7が形成されている。外筒6の底部外側には、衝撃等を吸収する底部材8が取付けられている。内筒5の上端開口部よりやや下方の内周部には、口部材3を螺着するねじ部9が形成されている。なお、内筒5及び外筒6は合成樹脂製でもよく、また、断熱部7は、低熱伝導率ガスを封入した断熱構造、無機系の充填物を充填した断熱構造、若しくは発泡スチロール等の有機系の充填物を充填した断熱構造でもよい。
【0008】
前記口部材3は、筒体10と、該筒体10の上部外周部に一体に接合されている肩部材11とで構成されている。前記口部材3は、前記筒体10が前記容器本体2内に挿入されて前記ねじ部9に螺合されることにより、前記肩部材11が前記容器本体2の開口部口縁から外筒6の上部外周部を覆う。前記筒体10の下端に茶漉し網係合部12が形成されている。該係合部12は、茶漉し網13が着脱可能に設けられている。該茶漉し網13は、前記係合部12に係合可能なリング状の茶漉し網フランジ部14と、該フランジ部14に取付けられた40?60メッシュの網15とで構成されている。また、前記口部材3の筒体10には、前記容器本体2の内壁に密着する止水パッキン16を有している。前記肩部材11は、口部材3を容器本体2に着脱するときの把持部となる。
【0009】
前記筒体10は、上部内周部に蓋体4が螺合するねじ部17が形成されている。該蓋体4は、栓体18とカバー部材19とで構成され、これらの間には発泡スチロール等の有機系の充填物を充填した断熱部20が形成されている。また、断熱部20は、低熱伝導率ガスを封入した断熱構造や無機系の充填物を充填した断熱構造であってもよい。前記栓体18の外周には、前記ねじ部17に螺合するねじ部21が形成されている。なお、口部材3のねじ部17と蓋体4のねじ部21とは、全周に亘って部分的に形成する。前記栓体18の下端外周部には、前記口部材3の内壁に密着する止水パッキン22を有している。また、前記蓋体4は、前記茶漉し網13との間に空間Cを存して前記口部材3に係合するよう構成されている。
【0010】
このように構成された保温容器1は、次の各方法により茶を煎じて飲むことができる。第1の方法は、口部材3に係止した茶漉し網13に茶葉を入れ、肩部材11を把持して口部材3を容器本体2に螺着した後に、茶漉し網13の茶葉に湯を注いで容器本体2内に茶を煎じる。なお、茶漉し網13の茶葉が湯に浸かるまで湯を多く注いでしまった場合は、口部材3と茶漉し網13を容器本体2から取り外すか、あるいは茶葉が湯に浸らない程度まで湯を捨てることにより、茶葉の煎じすぎを防止できる。
【0011】
茶を飲む時は、肩部材11を把持して口部材3を回転することにより、口部材3、茶漉し網13及び蓋体4を容器本体2から取り外し、容器本体2に口を付けて飲むか、あるいは容器本体2から茶碗に注いで飲む。飲み終わった後に、再び茶を煎じる場合には、蓋体4を取り外した口部材3を容器本体2に螺着して、茶漉し網13の茶葉に湯を注ぐことにより、二番煎じ茶を煎じることができる。煎じた茶を保温携帯する場合には、茶漉し網13の茶葉をそのまま保持してもよいし、茶漉し網13の茶葉を捨てるかあるいは茶漉し網13を口部材3から取り外し、口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉することにより、おいしい味と香りを維持することができる。
【0012】
第2の方法は、容器本体2に茶漉し網13が浸かる位置まで湯を注ぐ。注ぎ量の目安として容器本体2の内壁に線を設けておくとよい。次いで、口部材3に係止した茶漉し網13に茶葉を入れ、肩部材11を把持して口部材3を容器本体2に螺着し、茶漉し網13の茶葉を湯に浸して茶を煎じる。このときに、茶葉の種類によっては、口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉し、湯の温度を維持することにより、茶葉に適した煎じ具合とすることができる。この際に、蓋体4と茶漉し網13の間に空間Cがあるので、茶葉が水分を吸収して膨張しても茶葉を圧することがない。
【0013】
煎じ具合の調整は、ちょうど良い煎じ具合の時点で、口部材3と茶漉し網13を容器本体2から取り外すか、あるいは茶葉が湯に浸らない程度までお湯を捨てることにより、茶葉の煎じすぎを防止しておいしい味と香りを維持することができる。茶を飲む時は、上記第1の方法と同じである。また、口部材3に螺着している蓋体4は、口部材3とともに取り外すこともできる。飲み終わった後に、再び茶を煎じる場合には、容器本体2に茶漉し網4が浸かる位置まで湯を注ぎ、取り外した口部材3を容器本体2に螺着して茶漉し網13の茶葉を湯に浸すことにより、二番煎じ茶を煎じることができる。煎じた茶を保温携帯する場合は、上記第1の方法と同じである。
【0014】
第3の方法は、容器本体2内に茶葉と湯を入れて茶を煎じ、茶を飲む時に、茶漉し網13を係合した口部材3を容器本体2に螺着し、口部材3に口を付けて飲むか、あるいは口部材3から茶碗に注いで飲む。このときに、容器本体2内の茶葉は、茶漉し網13にて漉されるから、茶葉が口に入らずに飲むことができる。また、口部材3のねじ部17を部分的に配することにより、茶を脈動無しに流出させることができる。さらに、湯の温度を維持しながら茶葉を煎じる場合は、容器本体2内に茶葉と湯を入れた後、口部材3と蓋体5を容器本体2に螺着して容器本体2を密閉する。飲み終わった後に、再びお茶を煎じる場合には、容器本体2に湯を注ぐことにより、容器本体2内に残った茶葉から二番煎じ茶を煎じることができる。煎じた茶を保温携帯する場合は、前記茶漉し網13を係合した口部材3に蓋体4を螺着して容器本体2を密閉することにより、おいしい味と香りを維持することができる。
【0015】
この形態例は、茶漉し網13が口部材3に係合するから容器本体2に接触せず、容器本体2に傷がつきにくく美観を維持できる。また、口部材3の着脱は、容器本体2の外側の肩部材11を把持して行うことができるから衛生的である。さらに、口部材3、茶漉し網13及び蓋体5が着脱可能であるから、洗浄が容易で衛生的である。また、茶漉し網13に40?60メッシュの網を用いているから目詰まりを起こさない。
【0016】
なお、上記実施形態例では、茶葉を煎じるのに湯を用いて説明したが、茶葉の種類によっては熱いミルク等を用いてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の茶漉し付携帯保温容器は、断熱部を有する容器本体の上端開口部に着脱可能に螺合装着される口部材に形成された筒体の下端に茶漉し網係合部を形成し、該係合部に茶漉し網を設けたから、保温容器内で茶を煎じてそのまま保温でき、おいしい味と香りを維持できる。また、保温容器を密閉した状態で茶葉を煎じることができるから、保温容器を密閉して湯の温度を維持することにより、茶葉に適した煎じ具合とすることができる。さらに、茶漉し網にて茶葉を漉しているから、茶葉が口に入らずに飲むことができる。また、飲み終わった後に、再びお茶を煎じる場合には、湯を注ぐだけで二番煎じ茶を煎じることができる。また、口部材のねじ部を部分的に配することにより、茶を脈動無しに流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例を示す保温容器の一部断面図である。
【図2】茶漉し網を係止した口部材と蓋体の分解斜視図である。
【符号の説明】
1…保温容器、2…容器本体、3…口部材、4…蓋体、5…容器本体の内筒、6…容器本体の外筒、7…容器本体の断熱部、10…口部材の筒体、11…口部材の肩部材、12…茶漉し網係合部、13…茶漉し網、16…口部材のパッキン、17…ねじ部、18…蓋体の栓体、19…カバー部材、20…蓋体の断熱部、22…蓋体のパッキン、
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-09-28 
結審通知日 2009-10-01 
審決日 2009-10-14 
出願番号 特願平10-60837
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
豊島 唯
登録日 2007-12-14 
登録番号 特許第4051692号(P4051692)
発明の名称 茶漉し付携帯保温容器  
代理人 吉田 正義  
代理人 牛木 護  
代理人 吉田 正義  
代理人 外山 邦昭  
代理人 清水 栄松  
代理人 清水 榮松  
代理人 外山 邦昭  
代理人 牛木 護  

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