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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1208787
審判番号 不服2007-21681  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-06 
確定日 2009-12-16 
事件の表示 特願2004- 74247「酸素捕獲フィルムを作動化するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-262552〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成9年8月1日を国際出願日とする特願平10-508103号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成16年3月16日に新たな特許出願(パリ条約による優先権主張平成8年8月2日、米国)としたものであって、平成19年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年9月4日付けで特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。

2 平成19年9月4日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】a)酸化可能な有機化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素捕獲フィルムのロールを保持する巻き出しロールを供すること;
b)UV-C光を放射する一連のバルブを含み、かつ、該酸素捕獲フィルムが該バルブを通過する間に該フィルムを、UV-C光に曝露するようバンク内に該バルブが配列されている、該フィルムを作動化するための装置を供すること;
c)巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ伸びるフィルム通路を規定する一連のローラーによって、巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ該フィルムを前進させること;
d)バンク内に配置された一連のUVバルブを通してフィルムを通過させること;
e)作動化フィルムを提供するよう、該フィルムをUV-C光に曝露すること;
f)該作動化するための装置が物品を包装するための装置の中にインラインで取り込まれており、該作動化するための装置から作動化されたフィルムを成形されたウエブへ適用するシーリング/ガスフラッシュダイからなる物品を包装するための装置へ直接該作動化フィルムを前進させること;及び
g)該物品を包装するための装置において、該作動化フィルムを成形されたウエブへ適用して、該作動化フィルムを含む、該物品を包含するための包装物を製造すること;
を含む方法であって、それによって酸素捕獲包装物を提供するよう、該作動化フィルムが連続的に作動化され、かつ該包装物中に取り込まれる方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「物品を包装するための装置」について限定する「作動化されたフィルムを成形されたウエブへ適用するシーリング/ガスフラッシュダイからなる」との事項を付加するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開昭60-204409号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
a「気体あるいは水蒸気を透過しない帯状の外装袋材料用フイルムを一定方向に移送するとともに前記外装袋材料用フイルムの内面に対してあらかじめ両面ヒートシール性のある通気性材料をもつて小袋状に包装した品質保持剤収納袋を供給し、該品質保持剤収納袋を前記外装袋材料フイルムと一体にヒートシールせしめた後、該品質保持剤収納袋が内側に内装されるようにして前記外装袋材料フイルムを所要の包装体に形成してなる品質保持剤収納袋付き包装体の包装方法。」(特許請求の範囲)
b「本発明は食品等における品質保持剤収納袋付き包装体の包装方法に関する」(1頁左下欄下から3ないし2行)
c「7は内部に脱酸素剤、乾燥剤等の品質保持剤を封入した両面ヒートシール性のある通気性材料にて形成した連続状小袋からなる品質保持剤収納袋」(2頁右上欄3ないし6行)
d「第1?4図の深絞り型真空包装について説明すると、下側フイルムaは長手方向に間歇移送される間に成形装置1により容器状に成形され、…容器状部に内容物23を収納される。…連続状小袋からなる品質保持剤収納袋7は…小袋7’にカツトされ、…上側フイルムbの内側面側に押付けられ、…第4図示の如く一体にヒートシールされ、…さらに後段の上、下真空ボックス3,4側に移送されて、周知の手段にて前記上、下真空ボックス3,4により品質保持剤収納袋付き包装体(包装完成品)Pに形成される」(2頁左下欄下から3行ないし右下欄下から2行)
以上の記載及び第1図ないし第4図によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「巻き出されて移動する上側フイルムの内側面側に、脱酸素剤収納小袋を一体にヒートシールすること、
脱酸素剤収納小袋が一体にヒートシールされた上側フイルムを上、下真空ボックスに移送すること、
上、下真空ボックスにおいて、上側フイルムを、容器状に成形され内容物を収納した下側フイルムへ適用して、包装体を製造すること、
を含む包装体の包装方法。」
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、優先日前に頒布された刊行物である特開平5-194949号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】 酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する組成物を放射線に暴露することにより酸素捕捉を開始させることよりなる、酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する組成物による酸素の捕捉方法。
……
【請求項13】 上記の放射線が約200ないし400nmの範囲の波長を有する化学作用放射線であることを特徴とする請求項1記載の方法。
……
【請求項15】 上記の組成物がフィルム中に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
……
【請求項18】 上記のフィルムが酸素感受性製品用の包装材の形状であることを特徴とする請求項15記載の方法。」
「【0009】酸素感受性の製品、特に食品および飲料製品を含有する多層物品中で酸素の捕捉を開始する方法を提供することも目標の一つである。」
「【0048】…本発明記載の方法は酸素捕捉を開始させるためにこの組成物、層状体または物品の放射線への暴露を使用する。酸素捕捉の誘導期を有意に減少または消失させるように酸素捕捉剤中で酸素捕捉を開始させることを、本件明細書中では捕捉を促進すると定義する。上記のように、誘導期は捕捉用組成物が有用な捕捉性を示すまでの時間である。…」
「【0050】酸化捕捉用の層状体または物品を使用する場合には、放射線への暴露は層状体または物品の製造中であっても製造後であってもよい。得られる層状体または物品を酸素感受性製品の包装に使用するならば、暴露は包装の直前であっても包装中であっても、包装後であってもよいが、いずれにせよ、放射線暴露は層状体または物品の酸素捕捉剤としての使用の前であることが必要である。放射線を最大限に均一にするためには、暴露は層状体または物品が平坦なシートの形状である加工段階で行うべきである。」
「【0066】…実施例8
この実施例は、より短い波長のUVへの暴露(UVBおよびUVC)により、光開始剤を使用した場合にも(実施例2および3)、使用しない場合にも(実施例4)酸素捕捉をより短い時間内に開始させ得ることを示すものである。…」
「【0067】実施例2-4に記載した4枚のフィルムを、中圧水銀アーク灯を用いるコーライト(COLIGHT^(R))紫外線装置で照射した。これらの試料は2種の方法の一方で照射した。方法Aにおいては、フィルムの一片を反射性の剛体裏板に付着させ、毎分10メートル(m/分)で上記のアーク灯の下を通過させた。方法Bにおいては、フィルムのロールを10m/分の速度でアーク灯の下(枠から枠まで)を通過させた。上記の速度では紫外線装置は約180mJ/cm^(2)を与えた。…」
以上の記載によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する、食品等の酸素感受性製品用の包装フィルムを、包装中に且つ酸素捕捉剤としての使用の前に、UVCに暴露することにより、酸素捕捉をより短い時間内に開始させ得る、酸素の捕捉方法。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「上、下真空ボックス」及び「包装体」は、本願補正発明の「物品を包装するための装置」及び「物品を包含するための包装物」に相当し、さらに引用例1記載の発明の「脱酸素剤収納小袋が一体にヒートシールされた上側フイルム」は、脱酸素剤によって酸素を捕獲するフィルムといえるから、引用例1記載の発明の「包装体の包装方法」は、本願補正発明の「酸素捕獲包装物を提供するよう、フィルムが該包装物中に取り込まれる方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「酸素を捕獲するフィルムを成形されたウエブへ適用する、物品を包装するための装置へ、直接フィルムを前進させること;及び
該物品を包装するための装置において、該フィルムを成形されたウエブへ適用して、該フィルムを含む、該物品を包含するための包装物を製造すること;を含む方法であって、それによって酸素捕獲包装物を提供するよう、該フィルムが該包装物中に取り込まれる方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願補正発明では、a)酸化可能な有機化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素捕獲フィルムのロールを保持する巻き出しロールを供すること;
b)UV-C光を放射する一連のバルブを含み、かつ、該酸素捕獲フィルムが該バルブを通過する間に該フィルムを、UV-C光に曝露するようバンク内に該バルブが配列されている、該フィルムを作動化するための装置を供すること;
c)巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ伸びるフィルム通路を規定する一連のローラーによって、巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ該フィルムを前進させること;
d)バンク内に配置された一連のUVバルブを通してフィルムを通過させること;
e)作動化フィルムを提供するよう、該フィルムをUV-C光に曝露すること;
f)該作動化するための装置が物品を包装するための装置の中にインラインで取り込まれており、該作動化するための装置から作動化されたフィルムを成形されたウエブへ適用するシーリング/ガスフラッシュダイからなる物品を包装するための装置へ直接該作動化フィルムを前進させること;及び
g)該物品を包装するための装置において、該作動化フィルムを成形されたウエブへ適用して、該作動化フィルムを含む、該物品を包含するための包装物を製造すること;を含む方法であって、それによって酸素捕獲包装物を提供するよう、該作動化フィルムが連続的に作動化され、かつ該包装物中に取り込まれる方法、であるのに対して、引用例1記載の発明では、そのような事項を備えていない点。

(4)相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する食品等の酸素感受性製品用の包装フィルム(本願補正発明の「酸素捕獲フィルム」に相当。)を、包装中に且つ酸素捕捉剤としての使用の前に、UVC(本願補正発明の「UV-C光」に相当。)に暴露することにより、酸素捕捉をより短い時間内に開始させ得る、酸素の捕捉方法の発明が記載されており、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、共に、酸素を捕獲することにより、食品等の内容物の品質を保持する包装の技術に関するものであるから、引用例1記載の発明に引用例記載の発明を適用して、酸素を捕獲する機能を有する、脱酸素剤収納小袋が一体にヒートシールされた上側フイルムに代えて、引用例2に記載の、酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する包装フィルムを用い、該包装フィルムをUVCに暴露するための装置(本願補正発明の「酸素捕獲フィルムを作動化するための装置」に相当。)を、物品を包装するための装置の中に配置、すなわち、インラインで取り込むことは、当業者であれば容易に着想し得ることである。
そして、フィルムをUVC等の紫外線に暴露するに当たって、紫外線を放射するバルブを配置した装置内で、フィルムが一連のバルブを通過する間に、フィルムを紫外線に曝露させることは、本願の優先日前において慣用手段(例えば、特開昭51-44092号公報、実願昭57-177063号(実開昭59-80207号)のマイクロフィルム参照。)であり、また、フィルムの移送に当たって、フィルムのロールを巻き出しロールに保持することや、一連のローラーによってフィルムの通路を規定することも、本願の優先日前において慣用手段(例えば、引用例1の第1図参照。)であるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用する際に、上記慣用手段を採用して、相違点における本願補正発明のa)ないしe)の事項とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
また、物品を包装するための装置として、シーリング/ガスフラッシュダイからなる装置を用いることは、本願の優先日前に周知の技術(例えば。特開昭61-93023号公報参照。)である。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用して、脱酸素剤収納小袋が一体にヒートシールされた上側フイルムに代えて、引用例2に記載の、酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する酸素捕獲フィルムを用い、酸素捕獲フィルムを作動化するための装置を、物品を包装するための装置の中にインラインで取り込み、酸素捕獲フィルムを作動化するための装置に関して慣用手段を採用し、物品を包装するための装置に周知の技術を採用して、相違点に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が格別の困難性を伴うことなく容易に想到し得たことといえる。

しかも、本願補正発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明、慣用手段及び周知の技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2記載の発明、慣用手段及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成19年1月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】a)酸化可能な有機化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素捕獲フィルムのロールを保持する巻き出しロールを供すること;
b)UV-C光を放射する一連のバルブを含み、かつ、該酸素捕獲フィルムが該バルブを通過する間に該フィルムを、UV-C光に曝露するようバンク内に該バルブが配列されている、該フィルムを作動化するための装置を供すること;
c)巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ伸びるフィルム通路を規定する一連のローラーによって、巻き出しロールから該フィルムを作動化するための装置へ該フィルムを前進させること;
d)バンク内に配置された一連のUVバルブを通してフィルムを通過させること;
e)作動化フィルムを提供するよう、該フィルムをUV-C光に曝露すること;
f)該作動化するための装置が物品を包装するための装置の中にインラインで取り込まれており、該作動化するための装置から物品を包装するための装置へ直接該作動化フィルムを前進させること;及び
g)該物品を包装するための装置において、該作動化フィルムを成形されたウエブへ適用して、該作動化フィルムを含む、該物品を包含するための包装物を製造すること;を含む方法であって、それによって酸素捕獲包装物を提供するよう、該作動化フィルムが連続的に作動化され、かつ該包装物中に取り込まれる方法。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「物品を包装するための装置」について限定する「作動化されたフィルムを成形されたウエブへ適用するシーリング/ガスフラッシュダイからなる」との事項を除去したものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例1及び引用例2記載の発明、慣用手段及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1及び引用例2記載の発明、慣用手段及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-14 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-04 
出願番号 特願2004-74247(P2004-74247)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65B)
P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 酸素捕獲フィルムを作動化するための方法  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 渡邉 千尋  

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