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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1208852
審判番号 不服2007-9392  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-04 
確定日 2009-12-17 
事件の表示 平成 9年特許願第313308号「無機塩含有廃液焼却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月28日出願公開、特開平11-141840号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年11月14日の出願であって、平成19年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同月16日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月16日付け手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「焼却炉の下端は空気管を内蔵する空気予熱器と連結し、該空気予熱器の側壁とボイラーの側壁とが連結部で連通する無機塩含有廃液焼却装置であって、
前記空気予熱器の空気管は空気供給器と連設し、
前記ボイラーはその頂部に横設する蒸気ドラムと、ボイラーの底部に前記蒸気ドラムと平行に横設する水ドラムと、前記蒸気ドラムと水ドラムとに連設する水管と、前記蒸気ドラムと水ドラムとの中央部に横設された外壁に多数の細孔が穿設されたスートブロー用配管とを内蔵することを特徴とする無機塩含有廃液焼却装置。」

第3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-32210号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
1.「【発明の属する技術分野】
この発明は、化学工場等から産業廃棄物として発生する難燃性廃棄物を燃焼させてその排ガスから熱回収を行う廃棄物燃焼システムに関する。
【従来技術とその問題点】
化学工場等から製造工程の残留物、廃棄処分品等として発生する例えば塩化ビニール、農薬、PCB等を含む液状、固形状の有機系産業廃棄物は通常は焼却処分され、このための廃棄物燃焼システムとして廃棄物の燃焼炉、熱回収を行う蒸気発生ボイラ、サイクロン、電気集塵機等を組合せてシステムを構成し、廃棄物を燃焼させた後にその排ガスから積極的に熱回収し、さらに燃焼に伴って生じた排ガス中のダストを除去して大気中に放出するようにした廃熱回収システムを兼ねた廃棄物燃焼システムが公知である。」(第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第9行)
2.「第1図はこの発明の実施例による廃棄物燃焼システムの系統図、第2図は第1図における熱交換器の構成図を示すものであり、図において1は固形状廃棄物の燃焼を行う一次燃焼炉、2は液状廃棄物の燃焼を行う一次燃焼炉、3は前記一次燃焼炉の後段に接続された二次高温分解炉であり、これら一次炉と二次炉を組合せて廃棄物燃焼手段を構成している。また前記廃棄物燃焼手段の後段には排ガス中に含まれているダストを除去するサイクロン4を経て排ガス/空気熱交換器5、水管ボイラ6、煙管ボイラ7等の組合せから成る熱回収手段と、さらに電気集塵機8、排風機9を経て煙突10に至る排ガス処理手段が設備されている。また前記一次燃焼炉1、2および二次高温分解炉3のバーナに対しては、助燃油タンク11よりポンプ12を経て配管された助燃油供給ライン13を通じて助燃油が供給され、かつ燃焼空気としてはブロア14より前記の排ガス/空気熱交換器5に送気して高温加熱され、さらに煙管ボイラ7を経て配管された燃焼空気供給ライン15を通じて高温空気が各炉のバーナに供給される。また前記の二次高温分解炉3は一次燃焼炉から送り込まれる排ガスの入口が円筒形の炉体に対して偏心して開口しており、該入口を通じて炉内導入される排ガスは燃焼ガスとともに炉体内部を旋回しながら上昇して出口端に至るようになる。
一方、前記の水管ボイラ6、煙管ボイラ7で発生した蒸気はアキュムレータ17を経て熱利用系18に送られる。さらに19は廃棄物の排ガス中に含まれている塩化水素等の腐食性のある有害物質を中和する例えば炭酸力ルシュウム等の中和剤を収容した中和剤バンカであり、ブロア20を通じて空気搬送により中和剤を二次高温分解炉3の出口側に導入するようにしている。
次に上記構成のシステムによる廃棄物の燃焼プロセスに付いて説明すると、まず固形状、液状の廃棄物は一次燃焼炉1、2に導入され、バーナへの助燃油、高温燃焼空気の供給により炉内燃焼温度600?1100℃で燃焼してガス化され、その排ガスが二次高温分解炉3に導入される。この高温分解炉3では助燃油とともに燃焼空気を加圧供給し、助燃油を炉内に向けて噴霧して燃焼を行う。ここでバーナを通じて炉内に供給される助燃油、空気量を調節することにより燃焼温度を高温、好ましくは1200℃以上となるようにコントロールして排ガスを高温加熱する。これにより一次燃焼炉から送りこまれた排ガスは高温分解炉の炉内を流れる過程で万遍なく高温に晒され、前述したような排ガス中に含まれる有害物質は充分に高温熱分解されるようになる。
続いて高温分解炉3から出た排ガスをサイクロン4に導いて排ガス中のダスト成分を分離除去し、さらに排ガス/空気熱交換器5へ導入してブロア14を通じて供給された空気と熱交換させる。ここで高温加熱された空気は煙管ボイラ7に導かれて熱回収を行った後に先述のように燃焼空気供給ライン15を通じて一次炉、二次炉のバーナへ供給される。一方、熱交換後の排ガスは温度が下がった状態で後段の水管ボイラ6に導入され、ここで熱回収が行われる。なおこの水管ボイラ6の入口では排ガス温度が300℃前後に低下しており、水管ボイラ6の金属伝熱管を腐食させる恐れはない。さらに水管ボイラ6を出た排ガスは電気集塵機8で微粒ダストが除去され、排風機9、煙突10を経て大気中に放出される。」(第2頁右下欄第5行?第3頁左下欄第9行)
3.「排ガス/空気熱交換器5の構成は第2図に示すごとくであり、内面に耐火物51を内張したシェル52の内部に多数のセラミック製伝熱管53を配管し、その両端に空気導入側のマニホールド54、および加熱空気排出側のマニホールド55を配備して構成されている。」(第3頁右下欄第1?6行)
4.「この熱交換器5を水管ボイラ6の前段に介装したことにより、排ガス/空気の熱交換が高温の下で行われるので、熱交換器は伝熱面積が少なくて小形に構成でき、かつ前段のサイクロンに続いて熱交換器内でもダストが伝熱管上に造粒して排ガス中より除去されるので後段の水管ボイラに対する耐蝕性を高める利点が得られる。」(第3頁右下欄第14?20行)
5.図1、図2の記載及び上記2.の「ブロア14より前記の排ガス/空気熱交換器5に送気して高温加熱され」るとの記載によれば、「セラミック製伝熱管53」は「排ガス/空気熱交換器5」に内蔵されているといえ、また、「セラミック製伝熱管53」は「ブロア14」に連設しているといえる。

これらの記載事項を総合して、本願発明の記載に沿って整理すると、引用例には、
「二次高温分解炉3の上部の出口端はセラミック製伝熱管53を内蔵した排ガス/空気熱交換器5と連結し、該排ガス/空気熱交換器5と水管ボイラ6とが連通する廃棄物燃焼システムであって、
前記排ガス/空気熱交換器5のセラミック製伝熱管53はブロア14と連設した
廃棄物燃焼システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

第4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、その機能、構造からみて、後者の「二次高温分解炉3」は前者の「焼却炉」に相当し、以下同様に、「セラミック製伝熱管53」は「空気管」に、「排ガス/空気熱交換器5」は「空気予熱器」に、「水管ボイラ6」は「ボイラー」に、「ブロア14」は「空気供給器」にそれぞれ相当する。また、後者の「廃棄物燃焼システム」は、二次高温分解炉3は液状廃棄物の燃焼を行う一次燃焼炉2に接続されており液状廃棄物の燃焼も行うものであるから、前者の無機塩含有廃液焼却装置と「廃液焼却装置」で共通する。

したがって、両者は
「焼却炉は空気管を内蔵する空気予熱器と連結し、該空気予熱器とボイラーとが連通する廃液焼却装置であって、
前記空気予熱器の空気管は空気供給器と連設した
廃液焼却装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

(相違点1)
本願発明では、焼却炉と空気予熱器が焼却炉の下端で連結しているのに対し、引用発明では、焼却炉と空気予熱器が焼却炉の上部の出口端で連結している点。
(相違点2)
本願発明では、空気予熱器の側壁とボイラーの側壁とが連結部で連通しているのに対し、引用発明では、空気予熱器とボイラーの連通の構造が明らかでない点。
(相違点3)
本願発明では、ボイラーはその頂部に横設する蒸気ドラムと、ボイラーの底部に前記蒸気ドラムと平行に横設する水ドラムと、前記蒸気ドラムと水ドラムとに連設する水管と、前記蒸気ドラムと水ドラムとの中央部に横設された外壁に多数の細孔が穿設されたスートブロー用配管とを内蔵するのに対し、引用発明では、ボイラーの構造が明らかでない点。
(相違点4)
本願発明では、焼却対象の廃液が無機塩含有であるのに対し、引用発明では、無機塩含有か否か明らかでない点。

第5 判断
1.相違点1について
焼却炉の下流に配置される部材は、焼却炉の燃料供給口から遠い位置で連結されるものであるから、焼却炉とその下流に配置される部材との連結部を焼却炉の下端とすることは焼却炉の構造により決定される事項にすぎず、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、設計事項として当業者が容易に想到し得たことである。

2.相違点2について
空気予熱器とボイラーの連通のための構造は、装置全体の配置にともない適宜設計される事項であり、両者の連通構造として側壁同士を連結部で連通することも両者を横に配置した時の連通構造の一つであって、当業者が格別創意工夫を要するものとはいえないから、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3.相違点3について
ボイラーの構造として、頂部に横設する蒸気ドラムと、ボイラーの底部に前記蒸気ドラムと平行に横設する水ドラムと、前記蒸気ドラムと水ドラムとに連設する水管と、前記蒸気ドラムと水ドラムとの中央部に横設された外壁に多数の細孔が穿設されたスートブロー用配管とを内蔵する構造は、周知(特開昭53-56869号公報、実願昭60-38681号(実開昭61-154427号)のマイクロフィルム)であり、引用発明においてボイラーを相違点3に係る構造とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、請求人は、引用文献1は、スートブロー用配管を必要としない装置でありますから、たとえ、蒸気ドラムと水ドラムと水管とスートブロー用配管とを内蔵するボイラが周知であっても、引用文献1記載の装置にスートブロー用配管を配設して、本願発明の無機塩含有廃液焼却装置を構成することは、あり得ない旨主張しているが、引用文献1には、「熱交換器内でもダストが伝熱管上に造粒して排ガス中より除去されるので後段の水管ボイラに対する耐蝕性を高める利点が得られる」(第3の4)との記載のとおり、熱交換機内で排ガスからダストが除去されるがそれにより耐食性が高められるだけであって、スートブロー用配管を必要としないとはいえず、さらに水管ボイラの後段には微粒ダストを除去する電気集塵機8が設備されていることからも、スートブロー用配管を設けることを阻害するものではない。

4.相違点4について
引用文献には、廃棄物に無機塩が含有している旨の記載はないが、「化学工場等から製造工程の残留物、廃棄処分品等として発生する例えば塩化ビニール、農薬、PCB等を含む液状、固形状の有機系産業廃棄物」は多くの場合無機塩も含有しているものと考えられ、また、中和剤が投入されることで発生する塩化カルシュウムが後段のサイクロン4、電気集塵機8で除去されるものであるから、廃液に塩化カルシュウム(無機塩)が含まれているものへの適用を阻害するものではなく、引用発明を無機塩含有の廃液に適用して、本願発明の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-14 
結審通知日 2009-10-20 
審決日 2009-11-05 
出願番号 特願平9-313308
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山城 正機長崎 洋一  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 豊島 唯
長浜 義憲
発明の名称 無機塩含有廃液焼却装置  
代理人 渡邊 敏  

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