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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D
管理番号 1208946
審判番号 不服2008-7332  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-26 
確定日 2009-12-14 
事件の表示 平成 9年特許願第356491号「スペアタイヤ格納構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-180352〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年12月25日の出願であって、その請求項1から10に係る発明は、平成21年8月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1から10に記載されたとおりのものであって、請求項1に記載された発明は次のとおりのものであると認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】車両のホイールベース間のフロア下面側にスペアタイヤを略水平状態に保持するスペアタイヤ格納構造において、
車両の側部から取り出し可能なように前記フロア下面側に設けられた所定の格納位置に、前記スペアタイヤを係合可能に保持する保持部に結合された巻き上げワイヤを巻き取ることによって前記スペアタイヤを懸架状態で保持する格納手段と、
スペアタイヤの格納される前記車体の側に取り付けられるサイドドアとを備え、スペアタイヤは、車両横方向の一方側のサイドドア近傍に格納されるとともに、
前記格納手段は、巻き上げ用回転軸を有し、ハンドルにより巻き上げ用回転軸を回動操作することで、前記巻き上げワイヤの伸長を調整可能してスペアタイヤの自重に抗して該スペアタイヤを巻き上げるウインチ装置を備え、
該ウインチ装置は、前記サイドドア近傍で、車室内からのハンドルによる巻き上げ用回転軸の回動操作が可能となるように、該ウインチ装置の巻き上げ用回転軸が上下方向に延設し、該ウインチ装置の上端がフロアパネルのサイドドア近傍に位置して、スペアタイヤの脱着動作が車室内から可能になっているとともに
前記ウインチ装置から前記保持部に向かって延びるワイヤは、該ウインチ装置から略水平に延びるとともに、平面視で該ウインチ装置から離間した位置で保持部に向かって垂下し、
車両横方向の他方側において、燃料タンクが水平方向において前記車両横方向の一方側のスペアタイヤに並んで配置されており、
エンジンから後方に延びる排気管が、水平方向に見てスペアタイヤ及び燃料タンクとオーバーラップする位置関係で両者の間を前後方向に延びており、これによってスペヤタイヤの脱着操作時のスペヤタイヤと燃料タンクとの干渉を回避するように構成されたことを特徴とするスペアタイヤの格納構造。」

2.引用文献の記載事項
(1)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開昭61-36065号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。
a:「(1)収納位置と取扱い位置との間でスペア・タイヤを変位させるための車輌に備えられるスペア・タイヤ保持装置であって、
回転可能なドラム手段と当該ドラム手段上に巻取り可能であると共にスペア・タイヤに取外し自在に係合可能な手段を有するケーブル手段を備え、
前記スペア・タイヤは前記ドラム手段の一方への回転により前記取扱い位置から前記収納位置へと変位可能であり、前記ドラム手段の前記方向とは反対方向への回転で前記スペア・タイヤを前記収納位置から前記取扱い位置へと変位可能なスペア・タイヤ保持装置において、
前記ドラム手段には前記一方の回転により前記ケーブル手段が連続的に巻取られる軸方向に隣接した第1及び第2ドラム部を備え、前記第1ドラム部は前記第2ドラム部よりも直径が大きいことを特徴とするスペア・タイヤ保持装置。」(特許請求の範囲、FIG.1?10)

b:「〔産業上の利用分野〕
本発明は車輌の下側へのタイヤまたは車輪の収納に関するもので、特に車輌のシヤーシ下側の収納位置にスペア・タイヤを格納し車輌下側地面上の取り出し位置へと下降させ得るケーブルとドラム機構によるものである。こうした機構では、通常、ケーブルまたは他のフレキシブルなコネクタを巻き取りまたは繰り出すために相互に対向する方向に回転可能なリールまたはドラムを支持するロツドまたはパイプを備えている。これらのケーブルまたはコネクタはスペア・タイヤに取り外し可能に係合する自由端を備えており、ケーブルがドラムに巻き取られるとスペア-タイヤは車輌下側の収納位置へ収納される。ドラムを反対方向のワイヤ繰り出し方向に回転させるとスペア・タイヤは車輌下側の地面上に下降して、通常タイヤは車輌下側から引き出されて取り替え作業のためにケーブルから取り外される。」(2頁右上欄4行?左下欄2行)

c:「ドラムシャフト34の上端部にはラチエツト輪38と柱状部40が設けられ、この柱状部40によりドラム・シヤフトはクランク・アームを構成する適切な工具が取付け可能であり、ドラム・シヤフトとドラム32は垂直ドラム軸36を中心に回転可能となつている。」(4頁左下欄7?12行)

d:「ドラム・ユニツト12の取付は位置は柱状部40が車輌のフロア・パネル10に隣接するよう調整されており、フロア・パネル10の開口部から前記柱状部40及び爪部材に接近可能としている。この開口部は通常は、取外し可能なカバー50で覆われている。後段で詳述するが、第3図で示したようにケーブル・ドラム32を時計回りに回転させるとケーブル14がケーブル・ドラム32に巻取られ、ラチェット輪38の歯は爪のカギ部44に関してケーブル・ドラム32が巻取つたケーブル14をゆるめないよう係合されている。」(4頁左下欄19行?4頁右下欄10行)

e:「パンクしたタイヤを取り替える等でスペア・タイヤを収納位置から取り外す場合には、操作レバ48で爪をピン42を中心に回転させてカギ部44をラチエツト輪38から外し、ケーブル・ドラム32をワイヤ繰り出し方向に回転可能とする。ケーブル・ドラム32はタイヤTの荷重でワイヤ繰り出し方向に回転して第8図に示したような位置となる。こうして、タイヤは収納位置下の地面に降下して、取扱い可能となる。」(5頁右上欄20行?5頁左下欄9行)

f:FIG.1及びFIG.7から10、さらに記載事項cを参照すれば、車両のフロアの下面にスペアタイヤが略水平状態に格納されており、スペアタイヤを係合可能に保持するケーブルを巻き取ることによってスペアタイヤを懸架状態で保持する手段を備え、その手段は、巻き上げ用回転軸を有し、クランクアームにより巻き上げ用回転軸を回動操作することで、ケーブルの伸長を調整してスペアタイヤの自重に抗してスペアタイヤを巻き上げる装置を備え、その装置からスペアタイヤを保持する部分に向かって延びるケーブルは、その装置から略水平に延びるとともに、平面視でその装置から離間した位置で保持部に向かって垂下しているものである。
また、一般に自動車等の車両の両側にはサイドドアが設けられているのであるから、FIG.1において、スペアタイヤが収納されている側のいずれかの場所には当然サイドドアが設けられているものである。

上記の各記載及び図面の記載を参照すると、引用例1には、
「車両のフロア下面側にスペアタイヤを略水平状態に保持するスペアタイヤ保持装置において、
車両から取り出し可能なようにフロア下面側に設けられた所定の収納位置に、スペアタイヤを係合可能に保持する保持部に結合されたケーブルを巻き取ることによってスペアタイヤを懸架状態で保持する保持手段と、
スペアタイヤの収納される車体の側に取り付けられるサイドドアとを備え、スペアタイヤは、収納されるとともに、
収納手段は、巻き上げ用回転軸を有し、クランクアームにより巻き上げ用回転軸を回動操作することで、巻き上げワイヤの伸長を調整可能してスペアタイヤの自重に抗してスペアタイヤを巻き上げる装置を備え、
スペアタイヤを巻き上げる装置から保持部に向かって延びるケーブルは、スペアタイヤを巻き上げる装置から略水平に延びるとともに、平面視でスペアタイヤを巻き上げる装置から離間した位置で保持部に向かって垂下するように構成されたスペアタイヤの保持装置。」が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

(2)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開昭60-38268号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。

g:「図に示す自動車は、・・・小型乗用車であって、・・・(2a)は前輪、(2b)は後輪、(3)はステアリングホイールである。・・・前記フロントフロア部(4a)の下部に、燃料タンク(11)及びスペアタイヤ(12)が収容可能な収容部(40)を形成し、該収容部(40)内に前記燃料タンク(11)とスペアタイヤ(12)とを並設するのである。」(2頁左上欄6行?右上欄4行、第3図)

(3)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された、特開平6-179381号公報(以下、「引用例3」という)には、以下の事項が記載されている。

h:「【請求項1】座席下方のフロア面に下方に向って凹部が設けられ、該凹部の車室内側にスペアタイヤが収納されてなることを特徴とする車両の下部車体構造。
・・・
【請求項4】上記スペアタイヤ収納用凹部が車幅方向の一側に片寄せて設けられ、かつ他側にも収納用凹部が設けられ、上記両凹部間に形成された空間を通って排気管および/またはプロペラシャフトが車体前後方向に延設されてなることを特徴とする請求項1乃至3記載の車両の下部車体構造。」(【特許請求の範囲】、図3、図6?8)

i:「【0020】図3から明らかなように、上記2つの凹部10,11の各車幅方向内方の壁部10a,11a は所定の間隔をおいてフロア面5から垂設されていて、壁部10a ,11a 間に車体前後方向に延びるチャンネル状の空間18が形成され、車体前部のエンジンから導出された排気管19が上記空間18を通って後方へ延長されている。また、凹部10,11の下方はそれぞれ底壁10b ,11b 上によって閉塞されている。」
j:図3には、スペアタイヤ、燃料タンク及び排気管の位置関係が示されており、車両横方向の他方側において、燃料タンクが水平方向において車両横方向の一方側のスペアタイヤに並んで配置されており、エンジンから後方に延びる排気管が、水平方向に見てスペアタイヤ及び燃料タンクとオーバーラップする位置関係で両者の間を前後方向に延びている。

3.対比
引用発明の「スペアタイヤ保持装置」は本願発明の「スペアタイヤの格納構造」に相当し、引用発明の「ケーブル」は本願発明における「巻き上げワイヤ」に相当し、引用発明の「スペアタイヤを巻き上げる装置」は本願発明の「ウインチ装置」に相当するものと認められる。また、引用発明においては「収納」という語が用いられているのに対し本願発明では「格納」という語が用いられているが両者は実質的に同義である。

これらの点を考慮して、本願発明と引用発明とを対比すると、
両者は、「車両のフロア下面側にスペアタイヤを略水平状態に保持するスペアタイヤ格納構造において、
車両から取り出し可能なように前記フロア下面側に設けられた所定の格納位置に、前記スペアタイヤを係合可能に保持する保持部に結合された巻き上げワイヤを巻き取ることによって前記スペアタイヤを懸架状態で保持する格納手段と、
スペアタイヤの格納される前記車体の側に取り付けられるサイドドアとを備え、スペアタイヤは、車両横方向の一方側に格納されるとともに、
前記格納手段は、巻き上げ用回転軸を有し、ハンドルにより巻き上げ用回転軸を回動操作することで、前記巻き上げワイヤの伸長を調整可能してスペアタイヤの自重に抗して該スペアタイヤを巻き上げるウインチ装置を備え、
前記ウインチ装置から前記保持部に向かって延びるワイヤは、該ウインチ装置から略水平に延びるとともに、平面視で該ウインチ装置から離間した位置で保持部に向かって垂下しているスペアタイヤの格納構造。」である点で一致し、下記の点で相違している。

相違点1:本願発明では、スペアタイヤの格納される位置が、車両のホイールベース間のフロア下面側であって、車両横方向の一方側のサイドドア近傍に格納されるものであるのに対し、引用発明では、スペアタイヤの格納される位置が、車両のフロア下面側ではあるがホイールベース間ではなく、車両横方向の一方側に格納されるものではあるがサイドドア近傍ではない点。

相違点2:本願発明では、スペアタイヤが車両の側部から取り出し可能であるのに対し、引用発明では、スペアタイヤを取り出す位置については記載がない点。

相違点3:本願発明では、ウインチ装置は、サイドドア近傍で、車室内からのハンドルによる巻き上げ用回転軸の回動操作が可能となるように、該ウインチ装置の巻き上げ用回転軸が上下方向に延設し、該ウインチ装置の上端がフロアパネルのサイドドア近傍に位置して、スペアタイヤの脱着動作が車室内から可能になっているのに対し、引用文献1に記載された発明では、そのような記載がない点。

相違点4:本願発明では、車両横方向の他方側において、燃料タンクが水平方向において前記車両横方向の一方側のスペアタイヤに並んで配置されており、エンジンから後方に延びる排気管が、水平方向に見てスペアタイヤ及び燃料タンクとオーバーラップする位置関係で両者の間を前後方向に延びており、これによってスペヤタイヤの脱着操作時のスペヤタイヤと燃料タンクとの干渉を回避するように構成されているのに対し、引用発明では、そのような記載がない点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
本願発明では、スペアタイヤの格納される位置が、車両のホイールベース間のフロア下面側であって、車両横方向の一方側のサイドドア近傍に格納されるものであるが、そのようなスペアタイヤの格納位置は、引用例2及び3に記載されるように公知の事項であって、そのような位置にスペアタイヤを格納することは当業者が容易になし得ることにすぎない。

(2)相違点2について
引用発明では、スペアタイヤを取り出す位置について特に記載がないが、記載事項eに記載されているように、「パンクしたタイヤを取り替える等でスペア・タイヤを収納位置から取り外す場合には、・・・第8図に示したような位置となる。こうして、タイヤは収納位置下の地面に降下して、取扱い可能となる。」ものであり、地面に降下したタイヤを取り出すのは取り出しやすい場所から取り出せばよいものであって、車両横方向の一方側に格納されているスペアタイヤは、取り出す際にはその下方の地面に降下するのであるから、車両の側部から取り出し可能とすることに何ら困難性は認められない。

(3)相違点3について
本願発明では、ウインチ装置は、サイドドア近傍で、車室内からのハンドルによる巻き上げ用回転軸の回動操作が可能となるように、該ウインチ装置の巻き上げ用回転軸が上下方向に延設し、該ウインチ装置の上端がフロアパネルのサイドドア近傍に位置して、スペアタイヤの脱着動作が車室内から可能になっている。
引用発明におけるウインチ装置(スペアタイヤを巻き上げる装置)には、ドラム・ユニット12があり、フロア・パネル10に隣接して設けられており、フロア・パネルの開口部から接近可能となっているのであるから、引用発明においても、スペアタイヤの脱着動作が車室内から可能になっているものである。
また、引用発明においてもウインチ装置の巻き上げ用回転軸が上下方向に延設されているし、ウインチ装置を設ける場所についても、操作がしやすい位置に設けることは当然のことであり、サイドドア近傍に設けることは単なる設計事項にすぎない。
よって、相違点3に係るような限定をすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。

(4)相違点4について
本願発明1では、車両横方向の他方側において、燃料タンクが水平方向において前記車両横方向の一方側のスペアタイヤに並んで配置されており、エンジンから後方に延びる排気管が、水平方向に見てスペアタイヤ及び燃料タンクとオーバーラップする位置関係で両者の間を前後方向に延びており、これによってスペヤタイヤの脱着操作時のスペヤタイヤと燃料タンクとの干渉を回避するように構成されている。
しかし、燃料タンク、スペアタイヤ及び排気管の配置に関し、このような配置とすることは引用例3に記載されているように公知の配置であって、当業者が容易になし得ることである。

そして、出願人が主張する効果についても何ら格別のものとは認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-09 
結審通知日 2009-10-15 
審決日 2009-10-27 
出願番号 特願平9-356491
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沼田 規好  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 金丸 治之
中川 真一
発明の名称 スペアタイヤ格納構造  
代理人 大塚 文昭  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 西島 孝喜  
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