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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1208966
審判番号 不服2008-22814  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-04 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 特願2004-170918「現像ローラ及びそれを備えた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月22日出願公開、特開2005-352014〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月9日の出願であって、原審において、2回の拒絶理由の通知に対してそれぞれ意見書のみが提出され、さらに、平成20年5月8日付けで通知した拒絶理由に対して、同年7月14日付けで手続補正書が提出されたが、同年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月4日付けで審判請求がなされるとともに、同年10月6日付けで手続補正書が提出され、その後、当審の審尋に対する回答書が平成21年7月17日付けで提出されたものである。


第2 平成20年10月6日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年10月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)のを却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正には、特許請求の範囲の次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層とを備えた現像ローラにおいて、
前記樹脂層中に微粒子が分散含有されており、該微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.3?2.9であることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】前記紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層が、紫外線照射又は電子線照射の後に加熱して残存未反応化合物を硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】前記紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層が、紫外線照射又は電子線照射の後にマイクロ波加熱して残存未反応化合物を硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項4】前記微粒子の平均粒径が1?30μmであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】前記微粒子の粒径分布が1?50μmの範囲内であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】前記微粒子の含有量が前記樹脂層の樹脂100質量部に対して0.1?100質量部であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項7】前記樹脂層の厚さbが1?40μmであることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項8】前記微粒子がゴム又は合成樹脂の微粒子であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項9】前記微粒子が、シリコーンゴム微粒子、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、ウレタンエラストマー微粒子、ウレタンアクリレート微粒子、メラミン樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子、(メタ)アクリル系樹脂微粒子及びスチレン系樹脂微粒子の少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の現像ローラ。
【請求項10】前記微粒子がガラス状カーボン微粒子であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項11】前記樹脂層が導電剤を含有することを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項12】前記導電剤の含有量が前記樹脂層の樹脂100質量部に対して0.01?20質量部であることを特徴とする請求項11に記載の現像ローラ。
【請求項13】前記弾性層が金型中で成形されたものであり、外周面を研磨することなく前記樹脂層が外周面に形成されていることを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項14】現像ローラを備えた画像形成装置において、該現像ローラが請求項1?13のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。」
なお、請求項1は、平成20年7月14日付けの手続補正書により補正されたもの、請求項2?14は、出願当初の特許請求の範囲の請求項2?14に記載されたものである。

(補正後)
「【請求項1】シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層とを備えた現像ローラにおいて、
前記樹脂層中に微粒子が分散含有されており、該微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.3?2.9であり、
前記微粒子の粒径分布が4?35μmの範囲内であり、
前記樹脂層の厚さbが12?25μmである
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】前記紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層が、紫外線照射又は電子線照射の後に加熱して残存未反応化合物を硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】前記紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層が、紫外線照射又は電子線照射の後にマイクロ波加熱して残存未反応化合物を硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項4】前記微粒子の平均粒径が1?30μmであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】前記微粒子の含有量が前記樹脂層の樹脂100質量部に対して0.1?100質量部であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】前記微粒子がゴム又は合成樹脂の微粒子であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項7】前記微粒子が、シリコーンゴム微粒子、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、ウレタンエラストマー微粒子、ウレタンアクリレート微粒子、メラミン樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子、(メタ)アクリル系樹脂微粒子及びスチレン系樹脂微粒子の少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の現像ローラ。
【請求項8】前記微粒子がガラス状カーボン微粒子であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項9】前記樹脂層が導電剤を含有することを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項10】前記導電剤の含有量が前記樹脂層の樹脂100質量部に対して0.01?20質量部であることを特徴とする請求項9に記載の現像ローラ。
【請求項11】前記弾性層が金型中で成形されたものであり、外周面を研磨することなく前記樹脂層が外周面に形成されていることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項12】現像ローラを備えた画像形成装置において、該現像ローラが請求項1?11のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。」

この補正事項は、補正前の請求項7(樹脂層の厚さbの範囲を特定)において請求項5(微粒子の粒径分布の範囲を特定)及び請求項1を引用している部分を、新たな請求項1とするとともに、さらに、微粒子の粒径分布を4?35μmの範囲内に限定し、樹脂層の厚さbを12?25μmに限定するものである。
そして、補正前の請求項5,7は削除されるとともに、補正前の請求項6,8?14は、請求項5?12に繰り上がるものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮、及び同項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。


2.独立特許要件の判断
本願補正発明は、「樹脂層中に微粒子が分散含有されており、該微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.3?2.9であり、前記微粒子の粒径分布が4?35μmの範囲内であり、前記樹脂層の厚さbが12?25μmであること」を発明特定事項に含むものである。
ここで、「微粒子の最大粒径a」とは、樹脂層中に多数の微粒子が分散含有されており、その多数の微粒子のうち、粒径が最大である微粒子についての当該粒径を意味することは明らかである。
また、「樹脂層の厚さb」とは、「弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層」(本願補正発明の記載)であって、微粒子の存在していない部分の樹脂層の厚さ、を意味するものと一応考えられる。
そこで、本願補正発明において「微粒子の最大粒径a」に着目した理由、「a/b」を規定する技術的意義を検討する。

(1)「a/b」に関する明細書での説明
本願の明細書には、次の記載がある。
「【0020】
本発明の現像ローラ1においては、樹脂層4が微粒子5を含有するため、微粒子5の濃度及び粒径を適宜調整することで、樹脂層4の表面に微小凹凸を適度に形成することができ、所定量のトナーを均一に外周面に保持することができる。さらに詳述すると、樹脂層4に微粒子5を分散させる目的は、上記のごとく、現像ローラ1最表面のトナー担持性を向上させるために、該表面に所望の凹凸を付与することにあるが、樹脂層4の厚さが分散させた微粒子5の粒径よりも大きいと、樹脂層4表面に凹凸を十分形成できないことがある。本発明者らはこの点に注目し、鋭意研究の結果、現像ローラ1最表面に、トナー担持に最適な凹凸を付与することに成功し、本発明を完成させるに到ったものである。
【0021】
具体的に記すと、樹脂層の厚さよりも分散させる微粒子の最大径が小さいと、樹脂層中への微粒子の分散状態によっては、微粒子が樹脂層中に埋没してしまい、表面に所望の凹凸が得られないことがある。一方、樹脂層中に分散させる微粒子の粒径分布によっては、樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さより大きな粒子は、その表面が樹脂の薄い被膜を有しつつも、樹脂層の表面に一部が突出することになり、結果として、樹脂層の表面、すなわち現像ローラの最表面に、トナー担持に好ましい凹凸を付与することができる。また、樹脂層の厚さよりも粒径が大きい微粒子であっても、樹脂への分散を十分に図れば、前記のように微粒子の表面はたとえ薄い膜であっても、樹脂に被われており、現像ローラとしての使用時に受ける摺動力で微粒子が樹脂層表面から脱落してしまうこと
がない。ここで、樹脂層に分散させる微粒子の最大粒径をa、樹脂層の厚さをbとした場合、本発明の現像ローラは、現像ローラ最表面にトナー担持性を更に向上させることが可能な凹凸を形成する観点から、a/bが1.3?2.9の範囲にある。a/bが1.0未満では、最大径の微粒子であっても、樹脂層への分散状態によっては該樹脂層中に微粒子が埋没してしまい、所望の表面凹凸を形成できない場合がある。一方、a/bが5.0を超えると、樹脂層表面の凹凸が大きくなりすぎ、トナー担持性が向上してトナー搬送量が多くなるものの、トナーの帯電量が不足し、結果として、画像に地カブリや階調不良といった不具合が発生してしまう。」(なお、【0021】の記載は、平成20年7月14日付けの手続補正書により補正されたもの。)

この記載の【0021】には、「樹脂層の厚さよりも分散させる微粒子の最大径が小さいと、樹脂層中への微粒子の分散状態によっては、微粒子が樹脂層中に埋没してしまい、表面に所望の凹凸が得られないことがある。」という説明(以下、「説明A」という。)があり、それは、樹脂層の厚さよりも分散させる「微粒子の最大粒径」が小さいと、弾性層の表面と微粒子の間に樹脂が介在せず、微粒子が弾性層の表面に直に当接するような場合には、微粒子が樹脂層中に埋没してしまい、樹脂層の表面に所望の凹凸が得られないことを説明しようとしているものといえる。なお、例えば、弾性層の表面と微粒子の間に樹脂が介在して硬化した場合や、微粒子の上に樹脂が載って盛り上がった場合などでは、樹脂層の表面に多少なりとも凹凸は生ずるとも考えられる。
したがって、この説明は一応理解できる。

次に、明細書の上記記載には、「説明A」に続いて、「樹脂層中に分散させる微粒子の粒径分布によっては、樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さより大きな粒子は、その表面が樹脂の薄い被膜を有しつつも、樹脂層の表面に一部が突出することになり、結果として、樹脂層の表面、すなわち現像ローラの最表面に、トナー担持に好ましい凹凸を付与することができる。また、樹脂層の厚さよりも粒径が大きい微粒子であっても、樹脂への分散を十分に図れば、前記のように微粒子の表面はたとえ薄い膜であっても、樹脂に被われており、現像ローラとしての使用時に受ける摺動力で微粒子が樹脂層表面から脱落してしまうことがない。」という説明(以下、「説明B」という)もあり、それは、「樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さより大きな粒子」に着目すると、その粒子の「表面が樹脂の薄い被膜を有しつつも、樹脂層の表面に一部が突出すること」で、樹脂層表面に凹凸を形成することができることを説明しており、この限りでは、一応理解できる。
しかし、「説明B」では、「樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さより大きな粒子」について述べているが、「微粒子の最大粒径a」については述べていない。

明細書の上記記載は、「説明A」「説明B」に続いて、「ここで、樹脂層に分散させる微粒子の最大粒径をa、樹脂層の厚さをbとした場合、本発明の現像ローラは、現像ローラ最表面にトナー担持性を更に向上させることが可能な凹凸を形成する観点から、a/bが1.3?2.9の範囲にある。a/bが1.0未満では、最大径の微粒子であっても、樹脂層への分散状態によっては該樹脂層中に微粒子が埋没してしまい、所望の表面凹凸を形成できない場合がある。一方、a/bが5.0を超えると、樹脂層表面の凹凸が大きくなりすぎ、トナー担持性が向上してトナー搬送量が多くなるものの、トナーの帯電量が不足し、結果として、画像に地カブリや階調不良といった不具合が発生してしまう。」と説明している(以下、「説明C」という)。
「説明C」中、前半の「a/bが1.0未満では、最大径の微粒子であっても、樹脂層への分散状態によっては該樹脂層中に微粒子が埋没してしまい、所望の表面凹凸を形成できない場合がある。」との説明は、「説明A」と符合するものである。
しかし、「説明C」の後半の「a/bが5.0を超えると、樹脂層表面の凹凸が大きくなりすぎ、トナー担持性が向上してトナー搬送量が多くなるものの、トナーの帯電量が不足し、結果として、画像に地カブリや階調不良といった不具合が発生してしまう。」との説明は、内容からみて、「説明B」とは符合せず、別の事項(「微粒子の最大粒径a」に関する事項)を説明しているものというべきである。

(2)適度な微小凹凸とは何か。
本願の目的は、明細書記載の「【0007】そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、量産に長い乾燥ラインを必要とせず、弾性層の研磨工程が不要で且つ樹脂層が表面に適度な微小凹凸を有する現像ローラを提供することにある。」であるが、ここでは、樹脂層表面に形成される「適度な微小凹凸」が具体的に何かについては特定されていない。
明細書の他の記載をみると、「【0047】本発明の現像ローラの表面粗さは、JIS 10点平均粗さ(Rz)が1?30μmであるのが好ましく、1?20μmであるのが更に好ましい。現像ローラのJIS 10点平均粗さ(Rz)が1μm未満では、トナー担持性が低下してトナー搬送量が不十分になり、30μmを超えると、トナー搬送量が増加する傾向があるものの、トナーの帯電量が不足し、画像に地カブリや階調不良を発生させてしまう。」とあるから、「適度な微小凹凸」とは、現像ローラの表面粗さとして、JIS 10点平均粗さ(Rz)が1?30μm、あるいは1?20μmの程度を請求人は念頭においているものと一応考えられる。
このことは、実施例におけるRzが9?10μmであるのに対し、比較例におけるRzが1?2μmや20μmであることからもいえる。但し、Rzの値が、実施例及び比較例から外れる範囲(2?9,10?20μm)であっても良好な評価結果が得られるかどうかは確認されていない。

(3)本願補正発明が規定する「a/b」により、常に、適度な微小凹凸が得られるか。
適度な微小凹凸を、例えば10点平均粗さ(Rz)で表すとしても、表面粗さの程度に対して影響を与える要素は、「微粒子の最大粒径a」だけでななく、「最大粒径aの微粒子」を除いた、他の「樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さより大きな粒子」(以下、「他の大きな微粒子」という。)も重要であるというべきである。
そして、例えば、「最大粒径aの微粒子」の数が非常に少ない場合には、「他の大きな微粒子」がどの程度存在するのかが重要になってくるというべきである。その際、「他の大きな微粒子」の数も少ないときには、微粒子の添加量にもよるが(なお、本願補正発明は、微粒子の添加量は規定していない。)、Rz等の表面粗さは非常に小さいものになり、不適な凹凸となることは明らかである。例えば、本願の実施例6において、樹脂層の厚さb25μmに対して、「微粒子の最大粒径a」は32μmであるが、仮に25?32μmの微粒子の数が非常に少ないものであれば、Rzが10μm(【表1】の実施例6の数値)よりもはるかに小さい値となる可能性を否定することができない。
逆に、「最大粒径aの微粒子」の数が多いうえに、「他の大きな微粒子」の数も多い場合には、Rz等の表面粗さは非常に大きくなり、不適な凹凸となることは明らかである。例えば、本願の実施例4において、樹脂層の厚さ12μmに対して、「微粒子の最大粒径a」は35μmであるが、仮に35μm付近の微粒子の数が多いものであれば、Rzが9μm(【表1】の実施例4の数値)をはるかに超える可能性を否定することができない。
つまり、実施例4,実施例6の例をみるように、本願の実施例は、添加する微粒子が適切な粒度分布(粒径の幅ではない)を有することを前提としている。そして、a,bの値が実施例のとおりであっても、微粒子の粒度分布が実施例のものとは異なる場合には不適な凹凸となる可能性を否定することができない。
そうすると、本願補正発明は、粒度分布を示すことなく(実施例でも特定されていないのであるが)、「微粒子の最大粒径a」のみに着目して、「微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.3?2.9」と規定するが、その規定により適度な微小凹凸が必ず得られるとは言い難いので、その規定の技術的意義が不明確であるというほかない。

また、本願補正発明には、「a/b」以外に、微粒子の粒径分布(粒径の幅)を4?35μmの範囲内とし、樹脂層の厚さbを12?25μmとする規定があるが、そのような規定があったとしても、「a/b」により生じる不明確さを解消するものでないことは、実施例4,実施例6に関する上記検討からみて、明らかである。

(4)よって、本願補正発明は、明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願の請求項1の記載
平成20年10月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14の記載は、平成20年7月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、及び出願当初の特許請求の範囲の請求項2?14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の紫外線照射又は電子線照射で硬化させた樹脂層とを備えた現像ローラにおいて、
前記樹脂層中に微粒子が分散含有されており、該微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.3?2.9であることを特徴とする現像ローラ。」

2.記載要件の適否について
(1)原審の拒絶理由の内容
原審における平成20年5月8日付けの拒絶理由通知には、次の指摘がある。
「[1]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に係る発明の作用効果は、明細書の段落[0018]の記載を参照すると、「量産に長い乾燥ラインを必要とせず、樹脂層が表面に適度な微小凹凸を有する現像ローラを提供することができる」点であると考えられ、さらに、平成20年4月21日付け意見書の記載を参照すると、「樹脂層の表面に微小凹凸を適度に形成して、所定量のトナーを現像ローラの外周面に均一に保持することが可能」とする点であると考えられる。
一方、請求項1に係る発明は、樹脂層中に微粒子が分散含有されており、該微粒子の最大粒径aと樹脂層の厚さbとの比a/bが1.0?5.0であることを特定することによって、上記の作用効果を実現しようとしているが、技術常識を参酌すると、樹脂層の上面の微小凹凸は、微粒子の最大粒径によって決まるものではなく、微粒子の粒度分布によって決まると考えられ、微粒子の最大粒径と樹脂層の厚さの範囲のみを規定することによって、普遍的に良好な作用効果が得られる現像ローラが得られるとは考えられず、上記のa/bの数値範囲のみを規定することの技術的意義が不明であり、請求項1に係る発明の構成が明確に把握できない。
請求項1の記載を引用する請求項2?14に係る発明についても同様である。
よって、請求項1?14に係る発明は明確でない。」

また、拒絶査定では、次の指摘がある。
「しかしながら、出願人が主張する「樹脂層の表面に微小凹凸を適度に形成」するという作用効果を奏するためには、最大粒径と樹脂層の厚さの関係を規定するだけでなく、樹脂層の厚さより大きな粒子がどの程度含まれているかの規定が必要なことは明らかである。
確かに、出願人が意見書において主張しているとおり、「樹脂中に分散させた微粒子のうち粒径が樹脂層の厚さbより大きな粒子は、表面に樹脂の薄い被膜を有しつつ、樹脂層の表面に一部が突出して、現像ローラの最表面に微小凹凸を付与できる」と考えられるが、最大粒径の規定だけでは、例えば、添加される全微粒子の中で、1個だけ突出して粒径が大きい粒子が存在し、その1個だけが、a/bが1.3?2.9となる条件を満たし、他のすべての微粒子の粒径が樹脂層の厚さ以下である場合も含まれることになるが、そのような例が、出願人が主張するような作用効果を奏しうるとは到底認められない。
すなわち、粒度分布を全く考慮しないで、最大粒径と樹脂層の厚さとの条件のみを規定した請求項1に係る発明の技術的意義は依然として不明であり、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項2?14に係る発明についても同様である。」

(2)当審の判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、本願補正発明(上記「第2 1.(補正後)」参照)から、「前記微粒子の粒径分布が4?35μmの範囲内であり、前記樹脂層の厚さbが12?25μmである」という事項を省いたものである。
また、本願補正発明について上記「第2 2.」で示した判断は、原審の拒絶理由で示した判断と同様の内容である。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2.」に記載したとおり、発明として明確でないものであるから、本願発明1も、同様の理由で、発明として明確でないものである。

3.むすび
したがって、本願は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-08 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-26 
出願番号 特願2004-170918(P2004-170918)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 一宮 誠
伏見 隆夫
発明の名称 現像ローラ及びそれを備えた画像形成装置  
代理人 来間 清志  
代理人 澤田 達也  
代理人 冨田 和幸  
代理人 杉村 憲司  

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