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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1209435
審判番号 不服2007-33429  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-12 
確定日 2009-12-28 
事件の表示 特願2003- 8551「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-221417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年1月16日に出願したものであって、平成18年12月1日付けの拒絶理由通知に対して、平成19年1月22日に意見書と補正書が提出され、これに対して、同年3月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して、同年5月14日に意見書と補正書が提出されたが、同年10月31日付けで前記5月14日提出の手続補正を却下すると共に拒絶査定がされ、これに対し、同年12月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月26日に手続補正がされたものである。

2.平成19年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(a)本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲については、補正前の請求項1に、
「【請求項1】半導体基板上に設けられた複数の接続パッドと、該接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する少なくとも1つの半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられた絶縁シートと、前記半導体構成体の外部接続用電極に接続されて設けられ且つ接続パッド部を有する少なくとも1層の上層再配線とを備え、前記上層再配線のうち、最上層の上層再配線の少なくとも一部の接続パッド部は前記絶縁シート上に対応して配置されていることを特徴とする半導体装置。」
とあったものを、
「【請求項1】半導体基板、該半導体基板上に設けられた複数の接続パッドと、前記半導体基板上に形成され前記接続パッドを露出する開口部を有する絶縁膜、前記絶縁膜上に設けられ前記開口部を介して前記接続パッドに接続された再配線、および該再配線の接続パッド部上に設けられた複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する少なくとも1つの半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられ、前記半導体構成体の前記封止膜の上面と面一な上面を有する絶縁シートと、前記絶縁シート上および前記半導体構成体の前記封止膜上に設けられた絶縁材と、前記絶縁材の開口部を介して前記半導体構成体の外部接続用電極に接続されて設けられ且つ接続パッド部を有する少なくとも1層の上層再配線とを備え、前記上層再配線のうち、最上層の上層再配線の少なくとも一部の接続パッド部は前記絶縁シート上に対応して配置されていることを特徴とする半導体装置。」
と補正しようとする事項を含むものである。

(b)すると、本件補正における、特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、(あ)補正前の請求項1に係る発明の「絶縁シート」について「前記半導体構成体の前記封止膜の上面と面一な上面を有する」という事項を付加すると共に、(い)補正前の請求項1に係る発明に「前記絶縁シート上および前記半導体構成体の前記封止膜上に設けられた絶縁材」という新たな構成要素を付加する補正事項を含むものである。
そして、これらの限定を付加した補正後の請求項1に係る発明は、審判請求書の請求の理由での主張、及び、平成19年12月26日付けの手続補正書によって補正された本願明細書の【0083】の記載によれば、「半導体構成体の封止膜の上面と半導体構成体の側方に設けた樹脂シートの上面とを面一とし、この両部材の上に絶縁材を設けているので、絶縁材の上面が平坦となり、上層配線と外部接続用電極の上面の高さ位置が均一となり、その接合の信頼性を向上することができる。」という効果を奏するものと認められれる。

(c)特許法第17条の2第4項第2号は、「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と定めているから、同号の事項を目的とする補正とは、「特許請求の範囲」を減縮するだけでなく、「発明を特定するために必要な事項」を限定するものであり、更に、補正前と補正後の対応する請求項に記載された発明の「産業上の利用分野及び解決しようとする課題」が同一であることを要するものと解される。そして前記「発明を特定するために必要な事項」とは、特許法「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから、特許法第第三十6条第5項の「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」との規定により請求項に記載した事項「すべて」のうちの「個々の事項」を意味するものと解される。

(d)補正事項(あ)について
補正前の請求項1は、前記(a)のとおりであるところ、絶縁シートの「半導体構成体の側方に設けられた」ことは記載されているが、「前記半導体構成体の前記封止膜の上面と面一な上面を有する」ことについては、全く記載されていない。
そして、「絶縁シート」の「半導体構成体の側方に設けられた」ことは、「絶縁シート」と「半導体構成体」との位置関係を特定することによって発明を特定することが必要であると特許出願人が認めたため、特許法第三十六号第五項の規定により、補正前の請求項1に記載された事項であり、一方、「前記半導体構成体の前記封止膜の上面と面一な上面を有する」は、補正前の請求項1に記載されていなかった「絶縁シート」の「形状」という概念において補正後の請求項1に係る発明を特定しようとする事項であるといえる。
そうすると、補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項として、絶縁シートの「形状」という概念において発明を特定しようとする事項が含まれていない以上、「絶縁シート」の「形状」を特定しようとする前記補正事項は、発明を特定するために必要な事項を限定するものとは認められない。

(e)補正事項(い)について
同様に、補正前の請求項1に記載されていなかった、「前記絶縁シート上および前記半導体構成体の前記封止膜上に設けられた絶縁材」という構成要素を新たに付加する前記補正事項もまた、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとは認められない。
したがって、補正事項(あ)、(い)を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとは認められない。

(f)更に、特許法第17条の2第4項第2号の事項を目的とする補正とは、補正前と補正後の対応する請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを要するところ、補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題が「最上層の上層再配線の接続パッド部の数が増加しても、そのサイズおよびピッチを必要な大きさにすることが可能となる。」ことであるのに対して、これに対応する補正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題とは異なる「半導体構成体の封止膜の上面と半導体構成体の側方に設けた樹脂シートの上面とを面一とし、この両部材の上に絶縁材を設けているので、絶縁材の上面が平坦となり、上層配線と外部接続用電極の上面の高さ位置が均一となり、その接合の信頼性を向上することができる。」という課題をも含むものである。
そうすると、本件補正は「その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」という要件をも満たしていないといえる。
してみれば、本件補正はこの点においても特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとは認められない。

(g)したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、下記のとおりのものであると認める。
「【請求項1】半導体基板上に設けられた複数の接続パッドと、該接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する少なくとも1つの半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられた絶縁シートと、前記半導体構成体の外部接続用電極に接続されて設けられ且つ接続パッド部を有する少なくとも1層の上層再配線とを備え、前記上層再配線のうち、最上層の上層再配線の少なくとも一部の接続パッド部は前記絶縁シート上に対応して配置されていることを特徴とする半導体装置。」

(3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2002-246722号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開2001-250836号(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

特開2002-246722号公報(引用例1)
(1a)「【請求項1】コア基板に形成された通孔又は凹部にICチップを収容してなるプリント配線板において、前記通孔又は凹部とICチップとの間に介在させる充填樹脂の弾性率を250Kgf/mm^(2)以下にしたことを特徴とするプリント配線板。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「【発明の属する技術分野】本発明は、ICチップなどの電子部品を内蔵するプリント配線板に関するのもである。」(【0001】)

(1c)「それぞれに多層プリント配線板だけで機能を果たしてもいるが、場合によっては半導体装置としてのパッケージ基板としての機能させるために外部基板であるマザーボードやドーターボードとの接続のため、BGA、半田バンプやPGA(導電性接続ピン)を配設させてもよい。また、この構成は、従来の実装方法で接続した場合よりも配線長を短くできて、ループインダクタンスも低減できる。」(【0011】)

(1d)「本願発明に用いられるICチップなどの電子部品を内蔵させる樹脂製基板としては、エポキシ樹脂、BT樹脂、フェノール樹脂などにガラスエポキシ樹脂などの補強材や心材を含浸させた樹脂、エポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを積層させたものなどが用いられるが、一般的にプリント配線板で使用されるものを用いることができる。」(【0012】)

(1e)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の構成について、当該多層プリント配線板10の断面を示す図7を参照して説明する。図7に示すように多層プリント配線板10は、ICチップ20を収容するコア基板30と、層間樹脂絶縁層50、層間樹脂絶縁層150とからなる。層間樹脂絶縁層50には、バイアホール60および導体回路58が形成され、層間樹脂絶縁層150には、バイアホール160および導体回路158が形成されている。ICチップ20には、パッシベーション膜24が被覆され、該パッシベーション膜24の開口内に入出力端子を構成するダイパッド22が配設されている。パッド22の上には、主として銅からなるトランジション層38が形成されている。」(【0017】-【0019】)

(1f)「引き続き、図7を参照して上述した多層プリント配線板の製造方法について、図1?図6を参照して説明する。(1)先ず、図1(A)に示す多数個取り用ICチップを、ダイシングにより図1(B)に示すように個片に切断すると共に、角部20aを研磨により半円状に面取りする。(2)一方、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層した絶縁樹脂基板(コア基板)30を出発材料として用意する(図2(A)参照)。次に、コア基板30の片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成する(図2(B)参照)。ここでは、ザグリ加工により凹部を設けているが、開口を設けた絶縁樹脂基板と開口を設けない樹脂絶縁基板とを張り合わせることで、収容部を備えるコア基板を形成できる。・・・(4)そして、ICチップ20の上面を押す、もしくは叩いて凹部32内に完全に収容させる(図2(D)参照)。これにより、コア基板30を平滑にすることができる。」(【0030】-【0035】)

(1g)「(8)上記工程を経た基板に、厚さ50μmの熱硬化型樹脂シートを温度50?150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm^(2)で真空圧着ラミネートし、層間樹脂絶縁層50を設ける(図4(B)参照)。真空圧着時の真空度は、10mmHgである。」(【0041】)

(1h)「(14)次いで、上記(8)?(13)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層150及び導体回路158(バイアホール160を含む)を形成する(図6(A)参照)。」(【0048】)

(1i)「次に、第1実施形態の第4改変例に係る多層プリント配線板について、図11を参照して説明する。上述した第1実施形態では、多層プリント配線板内にICチップを収容した。これに対して、第4改変例では、多層プリント配線板内にICチップ20を収容すると共に、表面にICチップ120を載置してある。内蔵のICチップ20としては、発熱量の比較的小さいキャシュメモリが用いられ、表面のICチップ120としては、演算用のCPUが載置されている。」(【0077】)

(1j)図11は、第1実施形態の第4改変例に係る多層プリント配線板の断面図であって、同図からは、該多層プリント配線板は最上層に導体回路158を備え、該導体回路は半田バンプ76Uが形成された領域を5カ所備えること、及び該領域のうち、紙面左側から2番目と4番目の領域はICチップ20上の両端のダイパッド22と電気的に接続すると共に、両領域がコア基板30上に対応する領域に配置されていることを読み取ることができる。

特開2001-250836号公報(引用例3)
(2a)「【請求項1】 基板上に該基板よりもサイズの小さいCSPが1段または複数段設けられ、前記CSPの周囲における前記基板上に樹脂封止層が設けられ、前記CSP下に中継配線が設けられ、前記CSPのうち最上段のCSP上に再配線が設けられ、前記樹脂封止層中に前記中継配線と前記再配線とを接続する層間配線ポストが設けられていることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)

(2b)「【発明の実施の形態】図1はこの発明の第1実施形態における半導体装置の断面図を示したものである。この半導体装置は下部CSP1を備えている。下部CSP1は、図2に示すように、平面方形状のシリコン基板2の上面外周部に複数の接続パッド3が設けられ、接続パッド3の中央部を除くシリコン基板2の上面に絶縁膜4が設けられ、絶縁膜4に設けられた開口部5を介して露出された接続パッド3の上面から絶縁膜4の上面の所定の箇所にかけて配線6が設けられ、配線6の先端パット部上に電極ポスト(バンプ電極)7が設けられ、電極ポスト7の周囲において配線6を含む絶縁膜4の上面に樹脂封止層8が設けられた構造となっている。この場合、配線6はベタ状ではないが、図1においては、図示の都合上、ベタ状としている。なお、この第1実施形態において後述するCSP13、23も、基本的には、上記と同様な構造となっている。下部CSP1の上面には第1の中継配線11が設けられている。この場合も、第1の中継配線11はベタ状ではないが、図1においては、図示の都合上、ベタ状としている。そして、第1の中継配線11は下部CSP1の電極ポスト7に接続されている。また、第1の中継配線11は下部CSP1の上面周辺部まで延出され、この延出端部によって延出端パット部11aが形成されている。第1の中継配線11の延出端パット部11aの内側において第1の中継配線11を含む下部CSP1の上面には接着剤12を介して平面方形状の第1のCSP13が設けられている。この場合、第1のCSP13のサイズは下部CSP1のサイズよりも小さくなっている。第1のCSP13は、簡単に説明すると、シリコン基板14の上面に設けられた絶縁膜15の上面に配線16が設けられ、配線16の先端パット部上に電極ポスト17が設けられ、電極ポスト17の周囲に樹脂封止層18が設けられた構造となっている。」(【0007】-【0009】)

(2c)「また、上記各実施形態では、下部CSP1上に第1および第2のCSP13、23を順次積層した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図25に示すこの発明の第5実施形態のように、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、シリコン基板等からなる大型回路基板71上に第1および第2のCSP13、23を順次積層するようにしてもよい。ここで、大型回路基板71とは、上述したウエハレベルCSPに対応するもので、ダイシングストリート41に沿ってダイシングすると、複数の個片の回路基板71Aを得ることができるものである。」(【0052】)

(2d)「上記各実施形態では、下部CSPまたは回路基板上にCSPを積層した場合について説明したが、これに限らず、ベアチップを積層するようにしてもよい。」(【0061】)

(3-2)当審の判断
(3-2-1)引用例1に記載の発明
引用例1の上記摘記(1a)-(1b)、(1d)-(1j)をまとめると、引用例1には、
「(a)パッシベーション膜24が被覆され、該パッシベーション膜24の開口内に入出力端子を構成するダイパッド22が配設されているICチップと、
(b)ガラスエポキシ樹脂などの補強材や心材を含浸させた樹脂、エポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを積層させたものなどからなる絶縁樹脂基板の、片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成したか、開口を設けた前記絶縁樹脂基板と開口を設けない樹脂絶縁基板とを張り合わせることで、収容部を備えるようにしたコア基板と、
(c)コア基板の前記凹部32内に、ICチップ20の上面を押す、もしくは叩いて完全に収容して平滑にしたものに、厚さ50μmの熱硬化型樹脂シートを温度50?150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm^(2)で真空圧着ラミネートして設けた層間樹脂絶縁層50とを備えた多層プリント配線板であって、
(d)前記多層プリント配線板は最上層に導体回路158を備え、該導体回路は半田バンプ76Uが形成された領域を備え、少なくとも一部の前記領域はICチップ20のダイパッド22に電気的に接続されると共に、コア基板30上に対応する領域に配置されている多層プリント配線板」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-2-2)対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
(a)引用例1発明の「入出力端子を構成するダイパッド22」は、本願発明の「半導体基板上に設けられた複数の接続パッド」に相当する。また、ICチップが半導体基板によって構成されていることは技術常識である。そうすると、引用例1発明のICチップと本願発明の半導体構成体は「半導体基板上に設けられた複数の接続パッドを有する半導体構成体」の範囲で一致する。

(b)引用例1発明の「片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成したか、開口を設けた絶縁樹脂基板と開口を設けない樹脂絶縁基板とを張り合わせることで、収容部を備えるようにした」コア基板は、本願発明の「半導体構成体の側方に設けられた絶縁シート」に相当する。

(c)引用例1発明の「最上層に導体回路158」、「半田バンプ76Uが形成された領域」、「コア基板30上に対応する領域に配置されている」は、それぞれ順に、本願発明の「最上層の上層再配線」、「接続パッド部」、「第1の絶縁シート上に対応して配置」に相当する。

(d)引用例1発明の「多層プリント配線板」と、本願発明の「半導体装置」は、「構造物」の範囲で一致する。

そうすると、本願発明と引用例1発明は、
「半導体基板上に設けられた複数の接続パッドを有する少なくとも1つの半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられた絶縁シートと、前記半導体構成体の接続パッドに接続されて設けられ且つ接続パッド部を有する少なくとも1層の上層再配線とを備え、前記上層再配線のうち、最上層の上層再配線の少なくとも一部の接続パッド部は前記絶縁シート上に対応して配置されていることを特徴とする構造物。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明が「半導体装置」に係る発明であるのに対して、引用例1発明が「多層プリント配線板」に係る発明である点。

相違点2:本願発明の半導体構成体が「接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する」のに対して、引用例1発明のICチップは、このような部材を具備するとは記載されていない点。

(3-2-3)判断
(あ)相違点1について
引用例1の上記摘記(1c)には、「それぞれに多層プリント配線板だけで機能を果たしてもいるが、場合によっては半導体装置としてのパッケージ基板としての機能させるために外部基板であるマザーボードやドーターボードとの接続のため、BGA、半田バンプやPGA(導電性接続ピン)を配設させてもよい。また、この構成は、従来の実装方法で接続した場合よりも配線長を短くできて、ループインダクタンスも低減できる。」と記載されている。
してみれば、多層プリント配線板だけで機能を果たす「多層プリント配線板」に係る引用例1発明に、引用例1の上記摘記(1c)における示唆を適用して、「多層プリント配線板」を、半導体装置としてのパッケージ基板として機能させるために、外部基板であるマザーボードやドーターボードとの接続のためのBGA、半田バンプやPGA(導電性接続ピン)を前記「多層プリント配線板」に配設して、引用例1発明の「多層プリント配線板」を「半導体装置」となすことは、当業者が容易に想到し得たことであると認められる。また、そのような構成としたことによる効果も当業者が予測する範囲のものである。

(い)相違点2について
引用例3の上記摘記(2a)-(2c)をまとめると、引用例3には、
「基板上に該基板よりもサイズの小さいCSPが設けられ、前記CSPの周囲における前記基板上に樹脂封止層が設けられ、前記CSP上に再配線が設けられた半導体装置であって、
前記CSPは、平面方形状のシリコン基板の上面外周部に複数の接続パッドが設けられ、接続パッドの中央部を除くシリコン基板の上面に絶縁膜が設けられ、絶縁膜に設けられた開口部を介して露出された接続パッドの上面から絶縁膜の上面の所定の箇所にかけて配線が設けられ、配線の先端パット部上に電極ポストが設けられ、電極ポストの周囲において配線を含む絶縁膜の上面に樹脂封止層が設けられた構造を有する半導体装置。」
の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。

そして、本願発明と、引用例3発明とを対比すると、
(a)引用例3発明の「平面方形状のシリコン基板」、「電極ポスト」、「電極ポストの周囲において配線を含む絶縁膜の上面に設けられた樹脂封止層」、「CSP」、「再配線」は、それぞれ本願発明の「半導体基板」、「接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極」、「外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜」、「半導体構成体」、「上層再配線」に相当する。
(b)引用例3発明の「CSPの周囲における基板上に設けられた樹脂封止層」と、本願発明の「半導体構成体の側方に設けられた絶縁シート」は、「半導体構成体の側方に設けられた絶縁材」の範囲で一致する。

そうすると、引用例3には、
「半導体基板上に設けられた複数の接続パッドと、該接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する少なくとも1つの半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられた絶縁材と、前記半導体構成体の外部接続用電極に接続されて設けらた上層再配線とを備えた半導体装置。」に係る発明が開示されているといえる。

一方、引用例3の上記摘記(2d)には、「上記各実施形態では、下部CSPまたは回路基板上にCSPを積層した場合について説明したが、これに限らず、ベアチップを積層するようにしてもよい。」と記載されており、引用例3において「CSP」と「ベアチップ」とが、互いに置き換え可能な部材として認識されていたことが理解できる。

してみれば、引用例1と引用例3に接した当業者であれば、引用例1と引用例3に「半導体基板上に設けられた複数の接続パッドを有する半導体構成体と、該半導体構成体の側方に設けられた絶縁材と、前記半導体構成体の接続パッドに接続されて設けらた上層再配線とを備えた構造物」という点において同一の技術分野に属する発明が記載されており、また、引用例1の「ICチップ」が引用例3の「ベアチップ」に相当することから、引用例3の前記「CSP」と「ベアチップ」が互いに置き換え可能な部材であるとの示唆に基づいて、引用例1発明の「ICチップ」、すなわち「ベアチップ」を、「CSP」、すなわち「半導体基板上に設けられた複数の接続パッドと、該接続パッドに接続された複数の柱状の外部接続用電極と、該外部接続用電極の周囲に設けられた封止膜とを有する少なくとも1つの半導体構成体」に置き換えることは、当業者が容易になし得たことであると認められる。また、このような構成を採用したことによる効果も当業者が予測する程度のものに過ぎない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-02 
結審通知日 2009-11-04 
審決日 2009-11-17 
出願番号 特願2003-8551(P2003-8551)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭宮崎 園子  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 國方 康伸
加藤 浩一
発明の名称 半導体装置  
代理人 鹿嶋 英實  
代理人 鹿嶋 英實  

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