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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62J
管理番号 1209442
審判番号 不服2008-19120  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-28 
確定日 2009-12-28 
事件の表示 特願2005- 65010号「スクーター、自転車、二輪車ハンドル用防雨・防風カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-248300号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年3月9日の出願であって、平成20年6月27日付けで拒絶査定がされ、平成20年7月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものであり、その後、当審において、平成21年8月19日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成21年9月24日付け手続補正書により手続補正がされたものである。
本願の請求項に係る発明は、平成21年9月24日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 ハンドルの握り部分全体を被い、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開け、地面側になるカバー底部を幾分か傾斜(4)させ、内部に雨滴が進入しても滴が伝わって外部に落ちるように構成し、ハンドルを握る方向から手が入るように、ハンドルに固定できるようにする。ハンドル固定は、ハンドルの形状、取り付け部各種形状に合わせて対応できるようボタン、バンド、マジックテープ(登録商標)、ファスナー(3)を使う。バックミラーのある車体にはバックミラー取り付けバンド、ボタン、マジックテープ(登録商標)、紐(2)で固定できるようにした内部が雨で濡れても拭けば使用できる材質、塩化ビニール、プラスチック、ポリプロピレン等の合成樹脂材、合成ゴムなどの防水材料で成型する。以上を特徴とするスクーター、自転車、二輪車のハンドル用防雨・防風カバー。」(以下、この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用文献の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した文献は次のとおりである。
引用文献1;実願平4-55922号(実開平6-10092号)のCD-ROM
引用文献2;実公昭62-32948号公報
引用文献3;実願平4-9243号(実開平5-68792号)のCD-ROM

(1)引用文献1には、自転車のハンドルグリップ用カバーに関し、次の技術事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、自転車のハンドルグリップを覆うようにその前方側に装着し、走行中に乗車者の手を暖める自転車用防寒器具にかかる、自転車のハンドルグリップ用カバーに関するものである。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】
従来技術の以上のような問題点を解決するため、本考案は次のような構成を採用したものである。
即ち、発電機を備えた自転車のハンドルグリップ部において、グリップエンド側からみた横断面形状がほぼ湾曲状をなし、グリップ部及びブレーキレバーを、覆い隠すように設けたカバーであって、ハンドルバーへの取付け部であるU字状カラー部を一体に形成し、当該カバー本体の内面(グリップ側を向いた面)に発熱体と、熱線反射層と、断熱層と、を備えたことを特徴とする、自転車のハンドルグリップ用カバーにかかるものである。
そして、好ましくは、グリップエンド側からみた横断面形状がほぼ放物線形又は楕円形であって、その焦点軸近傍にハンドルグリップが位置するように装着された自転車のハンドルグリップ用カバーにかかる。
【0006】
ハンドルグリップ用カバーは、横断面が放物線形又は楕円形等の湾曲形状をなし、(面)発熱体、熱線反射層、断熱層等を内面側の凹面に支持、固定する骨組み部である。
そして、走行時に前方から風を受ける外面部は、空気抵抗を減じるために前方(風上)に向かって凸状の流線形をなし、又、カバーの外面部の表面は滑らかに形成したものがよい。かかるハンドルグリップ用カバーは、一体に形成しやすく表面が滑らかな射出成形用繊維強化合成樹脂(FRP)が材質的に適する。」
(ウ)図面、特に【図2】は、ハンドルグリップ用カバーの断面図であるが、この図によれば、明らかにカバー底部が傾斜していることが見てとれる。そして、このような図は、自転車の側面より見た形状を図面として描き、そのままの状態で掲載するのが通常であって、例えば、運転者の腕が地面と水平でなく15?20度傾斜していたとしても、この腕が水平状態となるように、わざわざ図面全体を傾斜させて載せるということは通常は考えられない。また、この図が主にカバーの形状構造を表していることからすれば、そのように傾ける必然性もなく、また、引用文献1の記載全体を参酌しても傾けることについて記載も示唆もない。ところで、自転車の種類や運転者の体型によっては、ハンドルグリップを握る運転者の腕が地面と水平ではなく15?20度斜めになるということもあるとは考えられるが、腕が水平となる状態も普通に存在することは日常的に経験されるところである。このことからしても、この図面は、自転車を側面からみたハンドル部分の断面図を傾斜させることなくそのまま掲載したものとみるのが相当である。さらに、このカバーについては、防風も考慮されているところ、その横断面が「放物線形又は楕円形等の湾曲形状」をなし、「走行時に前方から風を受ける外面部は、空気抵抗を減じるために前方(風上)に向かって凸状の流線形をなし」としていることからみても上記認定が妥当である。
すると、この引用文献1に記載のカバーは、地面側になるカバー底部が幾分か傾斜しており、その傾斜の程度から、内部に雨滴が進入したとしても滴が伝わって外部に落ちる程度のものといえ、ハンドルを握る方向から手が入るように、ハンドルに固定されるものであるといえる。

これら記載事項(ア)、(イ)及び図面に記載された事項(ウ)を総合すれば、引用文献1には、実質的に、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ハンドルグリップを被い、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開け、地面側になるカバー底部を幾分か傾斜させ、内部に雨滴が進入しても滴が伝わって外部に落ちるように構成し、ハンドルを握る方向から手が入るように、ハンドルに固定できるようにするものであって、ハンドル固定は取付金具を使い、材質として射出成形用繊維強化合成樹脂(FRP)で成形した自転車のハンドルグリップ用カバー。」

(2)引用文献2,3に記載されている事項
引用文献2には、自動二,三輪車の操向ハンドルのグリップに取り付けられるハンドカバーに関し、寒さや他物との衝突等より保護するものであって、硬質又は半硬質合成樹脂により形成されたものが記載されている。そして、図面より、ハンドルのグリップ全体が被われ、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開けたものが記載されていると認められる。
引用文献3には、二輪車等のハンドルグリップに取り付けられるハンドルグリップカバーに関し、雨水や風が侵入するのを阻止するものであって、このカバーをハンドルバーにゴム紐で取り付けた例、バックミラーに紐で取り付けた例などが記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことが明らかである。
・引用発明の「ハンドルグリップ」は、本願発明の「ハンドルの握り部分」に相当する。
・引用発明の「射出成形用繊維強化合成樹脂(FRP)で成形」した点は、本願発明の「内部が雨で濡れても拭けば使用できる材質、塩化ビニール、プラスチック、ポリプロピレン等の合成樹脂材、合成ゴムなどの防水材料で成型」した点に相当する。
・本願発明の「スクーター、自転車、二輪車のハンドル用防雨・防風カバー」と、引用発明の「自転車のハンドルグリップ用カバー」とは、「自転車のハンドル用カバー」との点で概念上共通する。

すると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。
(1)一致点
「ハンドルの握り部分を被い、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開け、地面側になるカバー底部を幾分か傾斜させ、内部に雨滴が進入しても滴が伝わって外部に落ちるように構成し、ハンドルを握る方向から手が入るように、ハンドルに固定できるようにするものであって、内部が雨で濡れても拭けば使用できる材質、塩化ビニール、プラスチック、ポリプロピレン等の合成樹脂材、合成ゴムなどの防水材料で成型した自転車のハンドル用カバー。」

(2)相違点
相違点1;本願発明のカバーが、「ハンドルの握り部分全体を被」い、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開けているのに対して、引用発明のそれは「ハンドルグリップを被」ってはいるものの、全体を被っているものではない点。
相違点2;本願発明のハンドル固定に使用するものが、「ハンドルの形状、取り付け部各種形状に合わせて対応できるようボタン、バンド、マジックテープ(登録商標)、ファスナー(3)」であって、「バックミラーのある車体」には、「バックミラー取り付けバンド、ボタン、マジックテープ(登録商標)、紐(2)で固定できるように」しているのに対して、引用発明は「取付金具」であって、バックミラーは存在しない点。
相違点3;本願発明が「スクーター、自転車、二輪車のハンドル用防雨・防風カバー」であるのに対して、引用発明は「自転車のハンドルグリップ用カバー」である点。

(3)相違点についての検討・判断
ア 相違点1について
引用文献2のものは、自動二,三輪車に関するが、ハンドカバー自体は通常の自転車にも適用できるものであることは明かである。そして、この引用文献2のものは、防寒機能を有するのであって、その機能は、グリップエンド側をふさぎ、運転者側にあたる面のみを開けているカバー構造によって高められていることが明かである。
ここで、引用発明のものも、防寒が主に考慮されているのであるから、このカバーについても、引用文献2の技術を参考にして、グリップエンド側をふさぎ、運転者側にあたる面のみを開けた構造とすることは容易に考えられることである。
すると、引用発明におけるカバーの構造に関し、ハンドルの握り部分全体を被うようにして、ハンドルを握る方向から手が入るように運転者側にあたる面を開けるようにすることは、当業者にとって容易想到の範囲ということができる。

イ 相違点2について
カバーのハンドルへの固定については、そのハンドルの形状等により、種々考えられるところであるが、通常の固定という点では、バンド、紐などが考えられ、また、ボタン、マジックテープ(登録商標)、ファスナーなどの周知の固定手段も採用可能であることが明らかである。
また、自転車などでも、バックミラーの備えられているものもあり、このような車体にあっては、このバックミラーに、周知の固定手段であるバンド、ボタン、マジックテープ(登録商標)、紐などで固定することも容易に考えられる。
ここで、引用文献3には、硬質のカバーではないが、ハンドルの根元部分にゴム紐などでカバーを固定したもの、また、バックミラーに紐で固定したものなどが記載されている。
すると、引用発明のカバーを、取付金具による固定に代えて、上記周知の固定手段を用いてハンドルバーやバックミラーに固定するようにすることは格別のことではない。

ウ 相違点3について
引用発明のものは、自転車のハンドルグリップ用カバーであるが、この種のカバーはハンドルバーに取り付けるのであって、そのハンドルバーは、自転車に限らず、スクーター、二輪車においてもほぼ同様の形状を有しているのであるから、ほぼそのまま自転車と同じく取付けが可能であることは明かである。そして、引用発明のカバーは主に防寒であるが、通常この種のカバーが防寒とともに防雨用としても使用できるものであることは明かである。特に引用発明のカバーは、その形状からみても射出成形用繊維強化合成樹脂(FRP)製であることからみても、防水機能があり防雨としての機能があるといい得るのである。
すると、引用発明のカバーを、スクーターや二輪車のハンドル用として、防雨・防風のためのカバーとすることも当業者にとって容易想到ということができる。

そして、本願発明の効果も、引用発明、引用文献2,3に記載された事項及び周知の技術が有する効果の総和を超えるものではなく、当業者が予測し得た範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2,3に記載された事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-20 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-09 
出願番号 特願2005-65010(P2005-65010)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
金丸 治之
発明の名称 スクーター、自転車、二輪車ハンドル用防雨・防風カバー  

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