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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1210378
審判番号 不服2008-10895  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2010-01-15 
事件の表示 特願2004-206648「掃除具」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 66324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年7月14日(優先権主張、平成15年8月1日)の出願であって、平成19年12月5日付けで拒絶の理由が通知され、平成20年2月8日に手続補正がなされ、同年3月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年5月29日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成21年6月16日に審尋がなされ、同年8月19日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、明細書、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「電磁調理器の天板等に固着した汚れを取り除くために使用するシート状の掃除具であって、
シート状の基材と、
前記基材の少なくとも一方面の全面に接着剤を介して形成され、モース硬度が1以上4以下の研磨剤を含む研磨層とからなる、掃除具。」

(2)補正後
「電磁調理器の天板等に固着した汚れを取り除くために使用するシート状の掃除具であって、
シート状の基材と、
前記基材の少なくとも一方面の全面に直接接着剤を介して形成され、モース硬度が1以上4以下の研磨剤を含む研磨層とからなる、掃除具。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、基材に形成される研磨層について、「接着剤を介して」を「直接接着剤を介して」とするものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定で引用された本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭63-76955号(実開平2-1068号)のマイクロフイルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.明細書第2ページ第3?5行
「本考案は、ステンレス等の金属やタイル等の表面に付着した汚れを擦るだけで簡単に除去できる清掃用具に関するものである。」

イ.明細書第4ページ第1?14行
「即ち、本考案は、3デニール以上の繊維から構成された不織布の片面に水不透過性プラスチックフィルムが接着され、該不織布の反対側にモース硬度6以下の研磨剤と湿潤剤とを含有する洗浄剤組成物が施されていることを特徴とする清掃用具を提供する。
以下、添付図面を参照して本考案の清掃用具を説明する。先ず、第1図は本考案の清掃用具1の一実施例の拡大断面図を示すものであり、平均3デニール以上の繊維から形成された不織布2の片面に水不透過性プラスチックフィルム3が一体に付着され、該水不透過性プラスチックフィルムが付着さていない側4に洗浄剤組成物がコーティング及び/又は含浸されている。」

ウ.明細書第6ページ第4?11行
「第1図に示すように、本考案で不織布の水不透過性プラスチックフィルムが接着されていない側4にコーティング及び/又は含浸させる洗浄剤組成物はモース硬度6以下の研磨剤及び湿潤剤を必須成分として含有する。ここで、研磨剤としては、モース硬度が3?4のものを用いるのが望ましい。つまり、該硬度の研磨剤を用いると金属等の表面に一層傷が付きにくいからである。」

エ.明細書第7ページ第19行?第8ページ第2行
「本考案では該洗浄剤組成物を不織布に任意の量でコーティング及び/又は含浸させることができるが、不織布1m^(2)あたり50?200gの量でコーティング及び/又は含浸させるのがよい。」

オ.第1図
清掃用具1がシート状であることが看取できる。

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認める。

「金属の表面に付着した汚れを除去するために使用するシート状の清掃用具1であって、
シート状の不織布2及び水不透過性プラスチックフィルム3と、
前記不織布2の水不透過性プラスチックフィルムが接着されていない側4に、モース硬度が3?4の研磨剤が、コーティング及び/又は含浸されている清掃用具。」

(3)対比
補正発明と刊行物発明とを対比する。
刊行物発明の「清掃用具1」、「不織布2及び水不透過性プラスチックフィルム3」、「不織布2の水不透過性プラスチックフィルムが接着されていない側4」は、それぞれ補正発明の「掃除具」、「基材」、「基材の少なくとも一方面」に相当する。
刊行物発明の「金属の表面に付着した汚れを除去する」と、補正発明の「電磁調理器の天板等に固着した汚れを取り除く」とは、「表面に付着した汚れを取り除く」である限りにおいて、一致する。
刊行物発明の「モース硬度が3?4」は、補正発明の「モース硬度が1以上4以下」に含まれ、「モース硬度が3?4」において、一致する。
刊行物発明の「研磨剤が、コーティング及び/又は含浸されている」と、補正発明の「直接接着剤を介して形成され」る「研磨剤を含む研磨層」とは、「研磨剤を有する」限りにおいて、一致する。

したがって、補正発明と刊行物発明とは、次の点で一致している。
「表面に付着した汚れを取り除くために使用するシート状の掃除具であって、
シート状の基材と、
前記基材の少なくとも一方面に、モース硬度が3?4の研磨剤を有する、掃除具。」

そして、補正発明と刊行物発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:補正発明は、「電磁調理器の天板等に固着した汚れを取り除く」ものであるが、刊行物発明は、「金属の表面に付着した汚れを除去する」ものである点。
相違点2:研磨剤について、補正発明は、基材の「全面」に「直接接着剤を介して形成され」る「研磨剤を含む研磨層」であるが、刊行物発明は、「全面」であるか不明であり、「研磨剤が、コーティング及び/又は含浸されている」ものである点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
「金属の表面に付着した汚れ」も、「電磁調理器の天板等に固着した汚れ」に含まれると解されることから、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、「掃除具」が汚れを除去する対象の差違にすぎない。

相違点2について検討する。
研磨剤を、基材に「直接接着剤を介して形成され」る「研磨剤を含む研磨層」とするものは、特表平8-511733号公報の第3ページ第6?10行、図2、特開2003-71730号公報の段落0005、特開平1-193169号公報の第2ページ右上欄第1?8行、第3図にみられるごとく周知である。
また、研磨剤を、基材の「全面」に設けることは、研磨の効率向上の観点から、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。
よって、相違点2に係る事項に、格別の困難性は認められない。

請求人は、回答書において、(ア)原査定の周知例は、研磨剤が、基材に「直接」接着剤を介して形成されるものではない、(イ)さらに請求項2及び請求項4等の限定事項を取り込む補正をする用意がある、旨主張する。
(ア)については、上記のとおり、研磨剤が、基材に「直接」接着剤を介して形成されるものも、周知であるから、請求人の主張は採用できない。
(イ)については、補正希望の表明は、なんら法的効果がない。仮に、採用したとしても、請求項2で特定した事項、及び請求項4で特定した「研磨剤の付着量」は、上記刊行物1に記載されており、また、請求項4で特定した「粒径」は、前記特表平8-511733号公報の第8ページ第2?3行に記載されていることから、結論に変わりはない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成20年2月8日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定で引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-23 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-24 
出願番号 特願2004-206648(P2004-206648)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷井 雅昭  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 今村 亘
千葉 成就
発明の名称 掃除具  
代理人 葛西 泰二  

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